やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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ブルーマーメイドフェスタ編終了。

そして、シュテルがこの世界の歴史の違いを知ります。

それはすなわちシュテルの初恋の終了を意味します。


114話

 

 

夏休み期間中に行われたブルーマーメイドフェスタ‥‥

 

主役はその名の通り、ブルーマーメイドであるが、横須賀女子の学生たちもその手伝いでフェスタ会場へと赴く。

 

ドイツからの留学生組もそれは例外ではなかった。

 

特にシュテルが艦長を務めるヒンデンブルクは午後の部の体験航海の目玉となっていた。

 

そんなブルーマーメイドフェスタに以前、高校の行事の一つ‥職業見学にて今回のブルーマーメイドフェスタのペアチケットをビンゴでゲットした三浦は彼氏の戸塚を誘ってやってきた。

 

午前中、迷子のお世話と言うイレギュラーな事態があったが、三浦も戸塚もブルーマーメイドフェスタを楽しんだ。

 

昼食は間宮で摂った。

 

自分たちと同じ学生たちが作った料理であるが、その味はなかなかの味であり、二人は十分満足できた。

 

 

午後には自分たちがフェスタの来場客を乗せて体験航海予定のヒンデンブルク。

 

すると、隣の港に午前の部の体験航海を終えた駿河が入港してきた。

 

港に着岸し、タラップが接舷され、体験航海に参加した来場客が駿河を降りてくる。

 

(もかちゃんに体験航海の事を色々と聞いてみるか‥‥)

 

先に体験航海を行ったもえかに体験航海中、どんな事をしたのかを聞くため、もえかにメールを入れた。

 

『もかちゃん、今よろしいですか?』

 

すると、少しして、

 

You've Got Mail‥‥

 

もえかから返信のメールが来た。

 

『うん、大丈夫だよ。何かな?』

 

『体験航海について聞きたいから、ウチの艦でお昼ご飯を食べながら色々と聞かせて欲しいんだけど、ダメかな?』

 

『分かった。少ししたら、シューちゃんの艦に行かせてもらうね』

 

『うん、待っているよ』

 

もえかとメールのやり取りをして、体験航海の話をしながら、彼女と昼食を摂る約束をした。

 

それからしばらくして、もえかがヒンデンブルクを訪れた。

 

「いらっしゃい、もかちゃん」

 

もえかは春の時と同じく、白い詰襟の上着に艦長帽、プリーツスカート姿にストッキングを穿いた姿であった。

 

「お招きありがとうね、シューちゃん。あれ?シューちゃんの制服、この前と違うね」

 

反対にもえかを出迎えたシュテルは春の航海時とは異なる格好をしていた。

 

今のシュテルは金色のダブル六つボタンで白い上着に白いズボン、灰色のワイシャツに黒ネクタイを身に着けていた。

 

勿論、腰にはサーベルをぶら下げている。

 

入学当初は腰にぶら下げる事を面倒くさがっていたシュテルであるが、月日が経つにつれ、艦長としての自覚を覚えてきたので、サーベルを腰に帯びるようになった。

 

「うん、キール校の士官服、夏服バージョン‥‥ワイシャツとズボンだけでも良いんだけど、この後、体験航海で来場客が来るからね」

 

ワイシャツとネクタイにズボンというラフな夏服でも良いのだが、今回はヒンデンブルクに自分たち学生の他に来場客も乗艦するので、身なりはきっちりとする必要があった。

 

シュテルの他にユーリやクリスら士官たちもサーベルを除いて、シュテルと同じ格好をしており、普通の生徒らは白いセーラー服に水色のスカーフを巻いている。

 

「じゃあ、さっそく食堂に案内するよ」

 

シュテルはもえかを食堂へと案内する。

 

もえかとしては、体験航海が終わり、今から昼食を摂るにしても間宮はおそらく満員御礼状態だろうし、外の出店も似たり寄ったりの状態。

 

駿河で用意してもらっても良かったのだが、せっかくシュテルからのお誘いが来たので、こうしてもえかはヒンデンブルクに赴いたのだ。

 

「肉料理と魚料理どちらにする?」

 

シュテルはもえかに昼食となる料理は肉をメインにする料理と魚をメインにする料理、どちらにするかを訊ねる。

 

「それじゃあ、お肉にしようかな。以前、ミケちゃんから聞いたんだけど、ドイツ艦のソーセージはとっても美味しかったって言っていたから」

 

「わかった」

 

「艦長はどうしますか?」

 

ヒンデンブルクの主計科のクラスメイトがシュテルに肉と魚、どちらにするかを訊ねる。

 

「私は魚料理を貰おうかな?」

 

「わかりました。スープは海老のスープとジャガイモのスープがありますが、どちらになさいますか?」

 

「私はジャガイモのスープをください」

 

肉料理を注文したもえかはジャガイモのスープを頼み、

 

「私は海老のスープ」

 

魚料理を頼んだシュテルはスープも海産系の海老を頼んだ。

 

注文を聞き、主計科のクラスメイトは厨房へと向かった。

 

やがて、もえかとシュテルの下にはヒンデンブルクの主計科のクラスメイトたちが腕によりをかけた料理が運ばれる。

 

もえかの頼んだ肉料理の皿には、

 

グリューンコールと塩付豚のあばら肉、コールヴルスト、シュバイネバッケ、ローストカルトッフェルが乗っており、スープ皿にはハンブルク風ジャガイモスープが入っていた。

 

そして、サラダは生ハムとアボカドのサラダとなっている。

 

一方、魚料理を頼んだシュテルの皿には、

 

鮭フィレ・白ワインクリームソース ニシンのマリネ。

 

スープ皿には、ハンブルク風海老スープが入っており、サラダはトマト抜きのグリーンアスパラのサラダとなっている。

 

飲み物もソフトドリンクの他にノンアルコールビールもあった。

 

「「いただきます」」

 

昼食を摂りながら、シュテルはもえかに体験航海について話を聞いた。

 

それによると、もえかは体験航海中、主計科のクラスメイトと共に来場客をもてなすホスト役をしていたと言う。

 

「来場客のホスト役か‥‥」

 

「うん。艦長さんだからって、副長に言われてね」

 

「うーん‥‥私も体験航海中はもかちゃん同様、来場客のホスト役をしたほうがいいのかな?」

 

シュテルは、もえかの様に体験航海中は操艦よりも来場客をもてなす側になった方が良いのかと自問する。

 

「いいんじゃないですかね?」

 

すると、航海長のレヴィがシュテルの自問に対して、賛成の意向を示す。

 

「艦長は、この艦の責任者でもあり、顔でもあるんですから、来場された人をもてなすのも艦長の仕事の一つなのではないでしょうか?艦の操艦に関しては、私と副長がいるので大丈夫ですよ」

 

と、体験航海中、艦橋には航海長である自分と副長のクリスが居るので、艦長であるシュテルは来場客をもてなすホスト役をしていても大丈夫だと言う。

 

確かにレヴィの言っている事もあながち間違いではない。

 

「もかちゃんのところもそうだったの?」

 

「うん。私も航海中、艦の操艦は航海長と副長に任せていたよ」

 

「そうなんだ‥‥」

 

やはり、体験航海中、艦長は来場客をもてなすホスト役をするみたいだ。

 

「‥‥」

 

なお、シュテルは何となくスルーしていたが、もえかは昼食の飲み物の中で一番多く飲んでいたのは、ノンアルコールビールだった‥‥

 

もえかが将来、飲兵衛となりアル中にならないかちょっと心配だ。

 

「ごちそうさま。ドイツ料理は、今回初めて食べたけど、とても美味しかったよ」

 

もえかと同じクラスメイトの小林、角田、吉田の三人がもえかについて話していた時と同じ様に、もえかは初めてのドイツ料理も 『美味しい』 と言って満足そうだった。

 

「満足できた様子でなにより‥それに体験航海の事も色々ありがとう」

 

「いいよ。それじゃあ、午後の体験航海頑張ってね」

 

「うん、ありがとう」

 

昼食が終わり、もえかはヒンデンブルクを後にした。

 

そして、シュテルはこの後控える体験航海の最終チェックをクラスメイトたちと共にした。

 

それから時間が経ち、いよいよ午後の体験航海の時間が近づいていた。

 

戸塚と三浦は午後に行われるヒンデンブルクの体験航海に参加するために、会場へと赴いた。

 

「これがドイツ艦‥‥」

 

「ヒンデンブルク‥‥」

 

三浦と戸塚は港に停泊しているヒンデンブルクを見て、唖然とする。

 

自分たちが通っている総武高校にもアメリカから購入したレキシントン級やアラスカ級も在籍しており、これらの艦も大きいが、ヒンデンブルクもその大きさから無言の威圧感がある。

 

 

午前の部での横須賀女子の学生艦である駿河の体験航海では、ブルーマーメイドの音楽隊による音楽で駿河は見送られた。

 

当然、ヒンデンブルクもブルーマーメイドの音楽隊によるパレードで見送られた。

 

駿河の時は、『軍艦行進曲』 であったが、ヒンデンブルクはドイツ艦という事で、 『ケーニヒグレッツ行進曲』 で見送られた。

 

 

「皆さま、本日はヒンデンブルクへの乗艦、誠にありがとうございます。短い間ではありますが、ヒンデンブルク乗員一同、皆様の乗艦を歓迎いたします」

 

シュテルは艦長として、主計科のクラスメイトたちと共に来場客たちに一礼し、ヒンデンブルクへの乗艦を歓迎した。

 

その後、シュテルと主計科のクラスメイトは来場客たちをヒンデンブルクの艦内を案内する。

 

「このヒンデンブルクはドイツのH級戦艦に分類され‥‥」

 

「建造はドイツの‥‥」

 

「全長は266m、全幅は37m、最大速力は31ノット、主砲の口径は‥‥」

 

シュテルは来場客を案内しながら、ヒンデンブルクのスペック紹介を行う。

 

本来ならば、これは軍事機密にあたる事項なのだが、ヒンデンブルクは軍艦ではなく、学生艦なので、ヒンデンブルクのスペックや建造経緯などを一般人に説明しても何ら問題はなかった。

 

「I'm the king of the world!」

 

艦首に来た時、三浦と戸塚は某有名な豪華客船の悲劇と恋愛を描いた映画の中で、主人公が言った有名なセリフとヒロインとのポーズをした。

 

ただ、背丈の関係から主人公の位置が三浦、ヒロインの位置に戸塚と真逆の位置関係だった。

 

この時、シュテルは三浦と戸塚の二人に気づかず、別の乗船客の質問に答えていた。

 

 

艦内を一通り、案内した後、後部甲板に設けられたデッキチェア、デッキテーブル席で来場客たちは東京湾の光景を見ながら、主計科のクラスメイトたちが用意したお茶とお菓子を飲食しつつ、午後のひと時を楽しんだ。

 

 

今回、ヒンデンブルクの主計科のクラスメイトたちが用意したお菓子は、

 

ドイツのお菓子としてすぐに名前が上がるバウムクーヘンを始めとして、

 

大きなドーナツ状の形になっている伝統的なバタークリームと酸味のあるベリー系のジャムが間に入り、上部はクロカンと呼ばれるアーモンドやクルミ入りのカラメルで覆われているランクフルト名物のフランクフルタークランツと言われるケーキ。

 

酸味のあるサワーチェリーのシロップ漬けを使い、甘い生クリームとバランス感のある味わいのサクランボのクリームケーキ。

 

香ばしく炒めたパン粉をバターと砂糖でまとめ、そこにりんごとレーズンを混ぜ合わせた物を薄い生地で巻いて焼きあげ、皿にはバニラソース、ホイップクリームやバニラアイスが添えてあるアプフェルシュトゥルーデル。

 

その他にもシュークリームやイチゴを使ったケーキ、飲み物もコーヒ、紅茶、ソフトドリンクの他に、ノンアルコールビールも提供された。

 

後部甲板にて、東京湾を見ながらのお茶会が開かれていると、

 

「やあ、ヒンデンブルク艦長」

 

「ん?」

 

シュテルは変わった呼び名で呼び止められると、そこにはデッキテーブルの上に沢山のケーキが乗った皿に紅茶のカップを手にした明石艦長の杉本珊瑚の姿があった。

 

「杉本艦長!?どうして此処に!?」

 

ブルーマーメイドフェスタでは、明石は特殊学生艦として展示されており、艦長である珊瑚は明石に居て、来場客のホスト役をしていると思ったのだ。

 

「間宮艦長から噂で、ヒンデンブルクの体験航海ではドイツのお菓子を食べられると聞いてね」

 

お茶会のお菓子の用意をする為、ヒンデンブルクの主計科のクラスメイトは間宮から食材を提供してもらっていた。

 

「なるほど‥‥」

 

「ああ、それとちょうどいいから、いつぞや頼んだヴァイオリンの生演奏を頼めるかな?」

 

珊瑚は、シュテルにちょうどいい機会だから、ヴァイオリンの演奏も出来ないかと聞いてきた。

 

「まぁ、ヴァイオリンは私の船室にあるので、出来ると言えば出来ますけど‥‥」

 

シュテルの船室にヴァイオリンはあるので、珊瑚の言う通り、生演奏は出来ると言う。

 

「じゃあ、頼めるかい?」

 

「わ、分かりました」

 

あまり目立ちたくはないが、以前珊瑚と約束をしていたので、丁度いいと思いシュテルは一度、部屋にヴァイオリンを取りに行き、再び後部甲板にて、珊瑚のいるテーブルの傍に立ち、ヴァイオリンを構える。

 

他の来場客たちもシュテルがヴァイオリンを弾こうとしているのを興味津々な様子で見ている。

 

~♪~~♪~~~♪

 

~♪~~♪~~~♪

 

シュテルは明るめの音楽をヴァイオリンで奏で始めた。

 

珊瑚も周りの来場客たちもシュテルのヴァイオリンの音に聞き入っている。

 

やがて、演奏を終えると、来場客たちからは拍手が送られ、シュテルは一礼してヴァイオリンを部屋に戻してくる。

 

「噂通り、上手いね」

 

戻ってきたシュテルに珊瑚はヴァイオリンの腕を褒める。

 

「ありがとう。それじゃあ、残りの航海も楽しんでね」

 

「ああ、そうさせてもらうよ」

 

珊瑚はケーキにフォークを指して、口へと運ぶ。

 

シュテルが、来場客たちが居る後部甲板を歩いていると、来場客たちが先程のシュテルのヴァイオリンの腕を褒めてくれた。

 

そんな中、シュテルはある再会を果たした。

 

「あ、あれはっ‥‥!?」

 

シュテルの視線の先には、デッキチェアにちょこんと座った小柄で腕も腰も脚も細く、肌も抜けるように白い女子‥‥ではなく、戸塚が居た。

 

(ま、間違いない‥‥あれは‥‥あの姿は‥‥戸塚だ!!)

 

シュテルは転生してからずっと会いたいと思っていた戸塚が今、自分の目の前にいる‥‥

 

しかし、いざ戸塚に話しかけようとしても足も口も動かない。

 

今の自分は比企谷八幡ではなく、総武高校の生徒でもなく、ドイツ・キール校のシュテル・H(八幡)・ラングレー・碇だ‥‥

 

つまり、自分と戸塚は今日初対面になる。

 

初対面なのにいきなり、馴れ馴れしく話しかけたら変人にみられるかもしれない。

 

それに戸塚が此処に居るという事はこの世界の自分が居るかもしれない。

 

もう一人の自分と対面するのも勇気がいる。

 

しかし、シュテルはこの時、前世でこの頃は、群馬県の千葉村に行っている筈だった。

 

それはこの後世でも同じで、現に奉仕部+葉山グループの一部は千葉村に行っている。

 

だが、シュテルはブルーマーメイドフェスタの準備等で詳しい日時を忘れており、ここに戸塚が居ることに違和感を覚えなかった。

 

シュテルが戸塚の姿を見て、動くに動けない中、戸塚がシュテルに気づき、

 

「あっ、艦長さん」

 

戸塚の方がシュテルに話しかけてきた。

 

(戸塚が‥‥戸塚が、話しかけてくれた!!こ、これは絶好のチャンス!!このチャンスを逃す手はない!!)

 

「な、なんでしょう?」

 

シュテルは興奮を抑えながら、必死に笑みを浮かべながら戸塚に近づく。

 

「さっきのヴァイオリン、とっても上手でした。何て言う曲なんですか?」

 

「あ、あれは‥‥」

 

(戸塚が、戸塚が、俺のヴァイオリンの腕を褒めてくれている!!)

 

心臓がもうバクバクと鼓動を打っている中、シュテルは戸塚の質問に答える。

 

そこへ、

 

「彩加、おまたせ」

 

お手洗いから三浦が戻ってきた。

 

(えっ!?三浦!?なんで!?戸塚と一緒に!?お前は、葉山一筋じゃなかったのか!?)

 

前世では葉山loveだった筈の三浦が戸塚の下にやってくる。

 

戸塚と親しそうにしている三浦の姿にシュテルは困惑した。

 

「あん?さっき、ヴァイオリンを弾いていた人じゃん。どうしたの?」

 

三浦は当然、戸塚の傍にいるシュテルの存在に気づく。

 

「あっ、三浦さん。さっき、この艦長さんのヴァイオリンが上手だったから、その事を話していたんだよ」

 

「へぇ~‥そうなんだ」

 

戸塚の話を聞いて三浦は、表面上は納得しているみたいだが、それでも嫉妬めいた視線を送ってくる。

 

「お、お二人はご友人ですか?」

 

シュテルは話題を変える事、戸塚と少しでも話す事、そして戸塚と三浦の関係を知るために二人に聞いた。

 

「あっ、彩加はこんなナリですけど、女子ではなく、男ですよ」

 

(うん、知っている)

 

三浦は午前中に出会った迷子が戸塚を女子と間違えたようにシュテルも戸塚の性別を勘違いしているのと思い、戸塚の本当の性別を教え、更に驚愕の事実をシュテルに伝えた。

 

「それと、あーしの彼氏なの」

 

「えっ!?」

 

シュテルはまさに雷を受けたような衝撃を受けた。

 

(三浦が戸塚の彼氏だと!?そんなバカなっ!?‥‥アイツは葉山一筋の筈じゃないか!?まさか、戸塚と葉山‥二股をかけているのか!?)

 

シュテルは三浦が戸塚と葉山、二人の男と二股をかけているのかと思い、前世の経験を駆使して、三浦からもう少し詳しい事情を聞くことにした。

 

「あ、あの‥先日、個人的な用事で私、千葉の総武高校の近くに行ったんですけど、そこで、同い年ぐらいの金髪イケメン男子がいたんですけど‥‥」

 

「金髪イケメン?」

 

「同い年?‥‥もしかして葉山の事?」

 

シュテルの言った特徴を聞いて三浦は当てはまる人物の名を口にする。

 

「なに?もしかして、アンタ、葉山に一目惚れしたの?止めときな、あんな軽薄な男。あの男はこの前‥‥」

 

すると、三浦は葉山の性格を臆することなくシュテルに話す。

 

その話を聞いて、シュテルは、

 

葉山はこの世界でも葉山だった‥‥

 

前世と同じく、テニス部に乱入してきたみたいだが、ここで前の世界とは異なり、三浦はテニス部のマネージャーであり、自分と戸塚が付き合ってからまもなく一年が経過経とうとしていたことも聞いた。

 

あの葉山loveだった筈の三浦が葉山の事をここまでボロクソに悪く言っている事から、どうやら本当にこの世界の三浦は戸塚と付き合っており、葉山と二股をかけている様子には見えなかった。

 

だが、三浦が戸塚と付き合っている事実に二人の会話はあまり耳に入ってこない。

 

「ご、ご忠告ありがとうございました」

 

戸塚と三浦が付き合っている事実を知り、シュテルは顔色が悪いし声も震えている。

 

「アンタ、大丈夫?なんか、顔色が悪いけど‥‥?」

 

「い、いえ、大丈夫です。お気遣いありがとうございます」

 

フラフラとした足取りでその場から去るシュテル。

 

「‥‥あーしなんか、悪い事しちゃったかな?」

 

「うーん‥‥もしかして、三浦さんの言う通り、あの艦長さん葉山君に一目惚れしていて、葉山君の本性を知ってショックだったのかも‥‥」

 

「でも、付き合った後にアイツの本性を知って傷つくよりは、知り合いになる前に知って、新しい恋を見つけた方が、あーしは良いと思うけど‥‥」

 

戸塚も三浦もシュテルが葉山に一目惚れしたのに、彼の本性‥‥八方美人な一面があることを知り、ショックを受けたのかと思っていた。

 

「す、すまないが、あとの事を頼んでいいかな?」

 

シュテルは近くに居た主計科のクラスメイトに残りのホスト役を頼んだ。

 

「え、ええ‥構いませんけど‥艦長、大丈夫ですか?顔色が悪いですよ」

 

「だ、大丈夫‥‥」

 

大丈夫と言うが、とても大丈夫には見えない。

 

主計科のクラスメイトは心配そうにシュテルの後姿を見ていた。

 

 

その後、午後のヒンデンブルクの体験航海も特にトラブルなく、無事に終わり戸塚、三浦を始めとする来場客たちはヒンデンブルクを降りていく。

 

ただ、来場客たちを見送るシュテルの顔色はやはり、顔色が悪かった。

 

やがて、楽しかったブルーマーメイドフェスタも終わりの時間を迎えた。

 

迷子やスリなどの小さなトラブル等が起きたが、テロ等の大きな事件もトラブルもなく、今年のブルーマーメイドフェスタは終わり、明乃を始めとする今回ブルーマーメイドフェスタに初参加した者たちも満足し、楽しんだ様子だった。

 

しかし、全員が全員、今回のブルーマーメイドフェスタを楽しめた訳ではなかった。

 

『‥‥』

 

ヒンデンブルクの食堂では主計科のクラスメイトたちが、ちょっとドン引きと言うか、声をかけづらそうな顔をしている。

 

その訳は‥‥

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁー!!ど~づ~が~ぁ~!!」

 

食堂のテーブルの一つで、シュテルが珍しく大荒れしていたのだ。

 

シュテルの居るテーブルには沢山のノンアルコールビールの瓶が置かれている。

 

そして、シュテルはクラスメイトたちが見ている中でも気にせずに大声を上げて泣いている。

 

「ど、どうしたの?シュテルンは‥‥?」

 

そこへ、クリスが来て、主計科のクラスメイトに何故、シュテルがあそこまで荒れているのかを訊ねる。

 

「は、はぁ~‥‥なんでも、艦長‥その‥‥失恋したみたいで‥‥」

 

主計科のクラスメイトはクリスにこっそりと耳打ちをして、何故シュテルがあそこまで荒れているのかを教える。

 

「失恋!?シュテルンが!?」

 

クリスはシュテルが失恋した事に驚くが、

 

(まぁ、知っていたけどね‥‥この世界の戸塚さんが三浦さんと彼氏・彼女の仲になっていた事をね‥‥)

 

心の中で、クリスは既に戸塚には彼女が居たことを知っているみたいだった。

 

「うぅ~‥‥ど~づ~が~ぁ~!!‥‥グビグビグビグビ‥‥」

 

シュテルは戸塚の名を叫ぶと、ノンアルコールビールの瓶に口をつけると、グビグビとノンアルコールビールを煽る。

 

「シュテルン、どうしたの?随分と荒れているみたいだけど‥‥?」

 

クリスはシュテルの隣に座り、宥めるように声をかける。

 

「うぅ~‥‥く~り~す~ぅ~‥‥戸塚がぁ‥‥俺の戸塚がぁ‥‥うぅ~‥‥」

 

目から大粒の涙をながしながら、クリスに抱き着くシュテル。

 

「俺と戸塚は前世から、運命の赤い糸でつながっていた筈なんだ‥‥そして、やっと戸塚と一緒になれると思っていたのにぃ~‥‥」

 

「ちょっ、落ち着いてシュテルン、何を言っているの?酔っているの?」

 

クリスは何故か事情を知っているが敢えて知らない振りをしている。

 

「前の世界じゃあ、戸塚はフリーの筈だったのにぃ~‥‥ど~づ~が~ぁ~!!」

 

これまで、奉仕部は前世からの知識と一部を除く人間が同じことからこの後世世界でも前世と同じことが起きるだろうと思い込み、失敗を繰り返してきたが、シュテルも今回の戸塚と三浦の仲を実際にこの目で見て、前世と後世の違いを思い知った。

 

「ど~づ~が~ぁ~!!」」

 

前世と合わせると精神年齢がアラサーなシュテルは自棄酒している完全に酔っ払いの様だった。

 

ノンアルコールビールを瓶ごとがぶ飲みしたシュテルはそのままテーブルに突っ伏したまま泣き寝入りしてしまった。

 

『では、次の曲は、ラジオネーム、独神のシェルブリットさんからのリクエスト、河〇英五さんの 「酒と泪と男と女」 です』

 

~♪~~♪~~~♪

 

~♪~~♪~~~♪

 

食堂にあるラジオのスピーカーからは、河島〇五の 『酒と泪と男と女』 がまるで、シュテルの心の声を代弁するかのように空しく曲を奏でていた。

 

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