やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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115話

 

 

神奈川県の横須賀にて、ブルーマーメイドフェスタが開催されている中、北海道の某所で行われたピアノコンクールでは、

 

「優勝は‥‥エントリーナンバー、〇〇番、渚カナデさんです!!」

 

すべての演奏が終わり、集計・結果発表が行われ、このコンクールに参加したカナデが見事に優勝した。

 

優勝者の名前が発表され、優勝者であるカナデが舞台に立ち観客たちに一礼する。

 

観客たちは優勝者であるカナデに祝福の拍手を送った。

 

コンクール終了後にカナデは、

 

「今回のコンクールに優勝したから、シュテルとまたお出かけできるかな‥‥」

 

先日、南船橋のららぽーとで、シュテルと一緒にショッピングした際、カナデはまたシュテルと出かけたかった為、再びシュテルを誘うと、シュテルは条件を出し、このコンクールにて、上位の成績を出せば、また一緒に出掛けると言う約束をした。

 

そして、カナデは見事このコンクールで優勝という文句なしの成績を叩きだした。

 

これなら、シュテルも文句は言わないだろう。

 

そう思ってカナデは今回の結果を知らせるため、シュテルに連絡を取ろうとしたが、

 

「あっ、でも今の時間帯は確かブルーマーメイドフェスタの最中か‥‥色々忙しいだろうし、また後で連絡するか‥‥そうだ、ついでにどこに行くかあらかじめ調べておくかな」

 

時計を見るとまだブルーマーメイドフェスタが開催されている最中‥‥

 

参加しているシュテルはきっと色々と忙しいに違いない。

 

シュテルの邪魔をしてはいけないと思い、この場ではシュテルに連絡をいれず、シュテルと共にどこに出かけるかを先に決めてからシュテルに連絡を入れることにした。

 

しかし、カナデは知らなかった‥‥

 

シュテルがこの日‥失恋した事を‥‥

 

シュテルがまさか、失恋しているとは知らずにカナデは今度、シュテルと共にどこへ出かけようかとスマホでイベントを調べた。

 

すると、一件ヒットした。

 

 

 

千葉みなと花火大会

 

 

 

「花火か‥‥いいかも‥‥」

 

カナデは千葉みなとの花火大会の日程等を調べ、明日にでもシュテルを誘おうと思った。

 

 

ブルーマーメイドフェスタ翌日‥‥

 

「ん?‥‥ん?」

 

シュテルは重い瞼をあけると、そこはヒンデンブルクの艦長室‥‥シュテルの部屋のベッドの中に居た。

 

服装も上着とネクタイ、ズボンは脱がされており、ワイシャツと下着姿‥‥

 

しかもワイシャツも第二ボタンまで開けられている。

 

「あれ?‥‥いつ、ベッドに‥‥?昨夜は確か‥‥あっ‥‥」

 

シュテルは昨夜の記憶を手繰り寄せ、思い出せる所まで思い出す。

 

昨夜は戸塚と三浦が前世と異なり、彼氏・彼女の仲であったことで、シュテルは大きなショックを受けた。

 

前世では同性同士なので、決して実らぬ恋であったが、この後世では、自分は女性で戸塚は前世と同じ男‥‥この世界では異性同士なので、彼氏・彼女の仲、ひいては結婚も可能な性別だった‥‥

 

日本から離れた遠くドイツに住んでいながらも、戸塚に会うために今回の日本への留学のため、ミーナ教官からの心配をも退けて日本に来たのに結果がこれだ‥‥

 

シュテルがショックを受けるのも無理はなかった。

 

精神年齢がアラサーなシュテルは、ノンアルコールビールで自棄酒をしていた。

 

今でも思い返せば、その姿は自分がかつての母校の教師であり部活の顧問である平塚先生の姿を連想させる光景だった。

 

「‥‥」

 

そう思うとなんか、複雑な思いだった。

 

でも、あの時は自棄酒でもして現実を忘れたかったのだ。

 

しかし、自分が覚えているのはそこまでで、どうやって自分は部屋に戻ったのだろうか?

 

思い出そうとしてもその点は思い出せない。

 

シュテルが、昨夜の事を必死に思い出そうとしていると、

 

「うぅ~ん‥‥」

 

シュテルの隣から声がした。

 

視線を向けてみると、そこには眠っているクリスの姿があった。

 

しかも、クリスの服装も今のシュテルと同じく、ワイシャツに下着姿だった。

 

「えっ?クリス!?」

 

クリスが隣で眠っている事にギョッとするシュテル。

 

「ん~?‥‥あっ、シュテルン、おはよぉ~」

 

シュテルが驚いていると、クリスが身をよじりながら目を覚ます。

 

「お、おはよ‥‥ねぇ、どうして私は部屋に戻っているの?それに何故、クリスが隣で寝ているの?」

 

「ん?あぁ、それはね‥‥」

 

クリスはシュテルに昨夜の事を話した。

 

昨夜、シュテルが失恋したショックからノンアルコールビールで自棄酒をして、そのまま泣き寝入りをしてしまい、現状を見たクリスはシュテルを艦長室まで運んだ。

 

制服のまま横にしては制服にシワが寄るので、上着とズボンを脱がし、首元が苦しくなるだろうと思い、ネクタイを外してワイシャツのボタンも緩めた後でベッドに横たえた。

 

だが、シュテルの様子が気になったクリスはそのままシュテルと同じベッドで眠ったのだと言う。

 

「それで大丈夫?」

 

「ん?」

 

「昨日の夜、結構荒れていたから‥‥」

 

「あっ‥うん‥‥大丈夫‥と言えば嘘になるかな‥‥」

 

シュテルは俯き自嘲めいた笑みを浮かべる。

 

「‥‥ねぇ、シュテルン、世間では略奪愛って愛もあるよ」

 

クリスはなんとシュテルに三浦から戸塚を奪う提案をチラつかせるが、

 

「略奪愛か‥‥いや、ないな‥‥」

 

「ん?どうして?諦めるの?」

 

「例え、戸塚を振り向かせることが出来たとしてもそれは真の愛じゃない‥‥そんな愛は私が望む本物じゃない‥‥せめてあの二人が幸せになってくれればそれでいい‥‥三浦が戸塚を不幸にしなければ‥‥戸塚が幸せになってくれれば‥‥」

 

「‥‥」

 

略奪愛で戸塚を振り向かせることが出来ても、それは仮初の愛であり、そんなモノはいつか簡単に破綻してしまう。

 

戸塚は優しい男だ‥‥それにそんな事をすれば、戸塚だって三浦に対して罪悪感を抱く筈だ。

 

シュテルにとってはそんな恋愛は意味がなく、欲しくもなかった。

 

「はぁ~‥‥やっぱり、失恋は嫌なモノだな‥‥」

 

前世の中学生時代にも自分は本気で折本に告白したが、結果は玉砕も玉砕、大玉砕。

 

その結果、自分は中学時代いじめられることになった。

 

「‥‥」

 

「‥‥でもね、クリス‥‥私は戸塚が相手なら、彼にレ〇プされてもいい‥‥彼との子を身籠ってもいいとさえ思っていたんだよ‥‥」

 

「ちょっ!?シュテルン!!」

 

シュテルの言葉に思わずクリスは反応する。

 

「分かっているよ‥‥自分でもバカな事を言っているって‥‥それにあの戸塚がそんな事をする筈がないさ‥‥アイツは‥‥アイツは‥‥うぅ‥‥うわぁぁぁぁぁぁぁー!!」

 

やはり、戸塚の事をそう簡単に忘れる事が出来ず、昔の思い出を振り合えると涙が流れる。

 

「‥‥よし、よし、辛かったね‥‥」

 

クリスはそんなシュテルの頭を撫でる。

 

シュテルは前世とこの後世世界の歴史の違いを知ると共にまた一歩、成長したのだろう。

 

 

ザァー!!

 

「はぁ~‥‥酷い顔‥‥」

 

あの後、一頻りクリスの腕の中で泣いた後、シュテルはクリスの勧めでお風呂に入る。

 

シャワーのノズルの先からはお湯が出ており、シュテルはそのお湯を頭から浴びながら、鏡に映る自分の顔を見て一言呟く。

 

自分で言うように今の自分の顔は泣いたせいで目が晴れており、昨夜は遅くまでノンアルコールビールで自棄酒をしていたので目の下にはクマが出来ている。

 

艦長としてあるまじき姿であるが、この後はブルーマーメイドフェスタの会場であったブルーマーメイドの基地から横須賀女子の港湾区画へと戻るだけの短い航海なので、ちょっと気まずい思いはするが大したことはない。

 

シャワーを浴び終えて、制服に着替える。

 

「ふぅ~‥‥」

 

「少しは気分が晴れた?」

 

脱衣所にはクリスが待っていた。

 

「まぁ‥ほんの少しは‥‥でも、まだもう少し、引きずりそう‥‥」

 

シュテルが完全に受け入れるまでにはもう少し時間が必要みたいだった。

 

 

ブルーマーメイドフェスタの後片付けも終わり、学生艦と学生たちはブルーマーメイドの基地から母校である横須賀女子へと戻った。

 

「艦長、大丈夫ですか?」

 

艦橋に上がったシュテルを心配そうな表情と声で訊ねるメイリン。

 

メイリンの他に艦橋員は皆、心配そうにシュテルの顔を見ている。

 

昨夜の自棄酒をしたことは艦内では結構有名な話になっているみたいだ。

 

「あ、ああ‥‥皆には心配をかけたね‥‥ごめん‥‥」

 

「いえ、そのような事は‥‥」

 

「そう、そう」

 

「でも、艦長も人の子だったんだね」

 

舵を握りながらレヴィが、なんだか安心したように言う。

 

「ん?どういうこと?」

 

「いや、艦長も恋するんだなぁ~‥‥って、思って‥‥」

 

「私だって、ちゃんと恋だってするよ‥‥まぁ、失恋しちゃったけど‥‥」

 

「‥‥でも、シュテルンを振るなんてソイツ、良い度胸しているじゃん」

 

ユーリが死んだ魚みたいな目でシュテルの失恋の原因である男に怒っていた。

 

「ユーリ、気にしなくていいよ。元々私の一方的な一目惚れだったんだし‥‥」

 

シュテルは前世から知っているのだが、そんなことをみんなに言ったところで信じはしないだろうから、一目惚れって事にした。

 

「でも、シュテルンの告白を断ったんでしょう?」

 

「‥‥してない」

 

「えっ?」

 

「‥‥告白‥していない‥‥」

 

「えっ?そうなの!?」

 

てっきり、シュテルが告白して断られたのかと思ったのに、シュテルは告白をしていないと言う。

 

「告白していないのに、どうして失恋するの?」

 

「‥‥その‥一目惚れした相手に彼女が居て‥‥」

 

「あぁ~‥なるほど」

 

シュテルの話を聞いて何となく納得した艦橋メンバーだった。

 

 

ブルーマーメイドフェスタの会場から何事もなく、横須賀女子の港湾区画へと到着したヒンデンブルクは、岸壁に着岸すると便乗者を降ろした後、ヒンデンブルクのクラスメイトたちは各部のチェックを行い、ヒンデンブルクを退艦する。

 

「さあて、次は来月行われる遊戯祭か‥‥」

 

これで、夏休み中の予定は終わり、残りわずかながらも後は夏休みとなる。

 

次の大きなイベントは九月にあるブルーマーメイド、横須賀、呉、舞鶴、佐世保の海洋学校の生徒が一堂に横須賀に集結する遊戯祭である。

 

「色々あって、夏休みが短くなったけど、あまり羽目を外さないようにね」

 

シュテルはヒンデンブルクのクラスメイトたちに注意事項を伝えた後、彼女たちを見送った。

 

「さて、私も降りようかな」

 

シュテル自身も荷物をまとめ、ヒンデンブルクを退艦しようとする。

 

その時、

 

prrrr‥‥prrr‥‥

 

シュテルの携帯が鳴った。

 

「ん?カナデから?」

 

ポケットから携帯を取り出すと、ディスプレイに 『渚 カナデ』 と表示されていた。

 

ピッ

 

「もしもし?カナデ?」

 

「あっ、シュテル、今いいかな?」

 

「ああ、かまわないぞ」

 

「その‥‥この前の約束覚えているかな?」

 

「ん?約束?」

 

「もう、忘れたのかい?ほら、ピアノコンクールで上位の成績になったら、またどこかに出かけようって、約束したじゃないか」

 

「あっ、ああ‥そうだな‥‥」

 

(そう言えば、そんな約束したな‥‥)

 

ブルーマーメイドフェスタや戸塚に失恋したことでカナデに言われるまでその約束を忘れていたシュテルだった。

 

「それで?連絡してきたってことはコンクールではなかなかの成績を出せたのかい?」

 

「ああ、優勝したよ。これが、証拠の賞状とトロフィーだよ」

 

You got mail‥‥

 

「ん?」

 

シュテルのスマホが画像付きのメールを受信する。

 

メールボックスを開き、添付されていた画像を開くとカナデがタキシード姿で賞状とトロフィーを手に持っている写真だった。

 

その賞状に書かれているコンクール名は確かに、ららぽーとに行った時、カナデが出場するコンクールで間違いなかった。

 

その事実から確かにカナデはピアノのコンクールで優勝したみたいだ。

 

カナデは約束?した通り、ピアノコンクールで結果を出した。

 

勝者には勝者の待遇を‥‥

 

シュテルも約束をしたのだから、それを果たさなければならない。

 

戸塚との失恋の後に別の男と出かけるのは世間的にはどうかと思われそうだが、シュテルにとってカナデは確かに異性であるが、同時に身内でもあるので、シュテルはカナデの事を異性として強く意識したことはなかった。

 

しかし、二人ともまだ若いので、今後の展開次第でカナデの努力が実を結ぶかもしれない。

 

「まっ、約束は約束だからな‥‥それで、どこか行きたいところがあるの?」

 

「実は、今度千葉みなとで花火大会があるんだ」

 

(あぁ~‥‥あの花火大会か‥‥)

 

シュテルにとって、その花火大会は前世でも馴染みがある花火大会だった。

 

前世では、千葉村から帰ってきた後、由比ヶ浜が家族旅行当日、いきなり来て、愛犬であるサブレを預かってくれといきなり押し付けてきた。

 

ペットホテルに預ければいいものを、サブレの宿泊代をケチる‥もとい、節約するために八幡の家にやって来たのだ。

 

雪ノ下は元々犬が苦手なので、預かれない。

 

当時所属していた葉山グループのメンバーも夏休み中という事で葉山たち男子たちは部活で忙しく、三浦や海老名には頼みづらかった。

 

残るは同じ奉仕部のメンバーであり、夏休み暇そうにしている八幡だけとなり、預けに来たのだ。

 

八幡は渋々ながらもサブレを預かり、数日後、旅行から帰って来た時、サブレは飼い主である筈の由比ヶ浜を威嚇していた。

 

やはり、犬は飼い主に似るのだろうか?

 

たった数日で自分の飼い主の顔を忘れるのだから‥‥

 

そして、サブレを引き取った由比ヶ浜から花火大会に誘われた。

 

八幡だった頃の自分は態々、夜に人が多い所へ出かけるなんて面倒だった。

 

夏の夜に外に出るという事は蚊に刺されるリスクもある。

 

面倒だったが、由比ヶ浜とその話を聞いていた小町に押され、渋々八幡はその花火大会へ行くことになった。

 

いざ、会場に行ってみると、由比ヶ浜は同じクラスである相模と再会する。

 

相模は由比ヶ浜と世間話をするが、遠巻きに八幡に対する皮肉を由比ヶ浜に語る。

 

何となく空気を察した八幡は由比ヶ浜の面子を保つため、一声かけた後、屋台の方へと向かう。

 

それから少しして由比ヶ浜は八幡と合流した。

 

その後、花火が始まるまで、二人は屋台を練り歩く。

 

その姿はぎこちないながらもカップルの様に見えた。

 

二人の仲はとてもいい雰囲気だったのだが、その僅か数ヶ月後に八幡は由比ヶ浜に裏切られる形となる。

 

八幡はその事実をこの時は知る由もなかった。

 

そして、花火大会が始まると辺りは混雑し始めた。

 

このまま立ち見確定かと思われたが、地元の有権者である雪ノ下家の名代として会場に来ていた陽乃に誘われ貴賓席で座ってみることが出来た。

 

前世ではそのような経緯がある花火大会だった。

 

その花火大会を今度はカナデがシュテルに誘って来た。

 

雪ノ下、由比ヶ浜、葉山、相模たちの地元で行われる花火大会なので、総武高校のメンバーと鉢合わせする可能性がある。

 

雪ノ下、葉山、相模は当然シュテル=八幡と言う事は知らないが、由比ヶ浜は例え自分が前世からの転生者であるという事を知らなくても、先日のららぽーとでの一件から、シュテルはカナデを奪う泥棒猫として認識されているので、見つかれば別の意味で面倒な奴だ。

 

シュテルは迷ったが、あの広い会場で人一人と出会う可能性は低いだろうし、前世と同じ様に由比ヶ浜があの花火大会に来ると言う確証もない。

 

それにカナデとの約束もあるので、

 

「‥‥分かった。それで、何時にどこで待ち合わせをすればいい?」

 

シュテルはカナデとの約束を守るため、千葉みなとで行われる花火大会に行くことにした。

 

 

シュテルがカナデとの約束を果たすため、千葉みなとで行われる花火大会に参加することを決めた頃、千葉では‥‥

 

千葉村での一件を雪ノ下家の財力で何とかうやむやにすることに成功した雪ノ下たちは、何故千葉村の一件が大きな問題にならなかったのか、知る筈もなく夏休みを過ごしていた。

 

そんな中、

 

prrrr‥‥prrr‥‥

 

一人暮らししているマンションで雪ノ下のスマホが着信を知らせる。

 

ディスプレイには 『由比ヶ浜さん』 と表示されている。

 

「由比ヶ浜さんから?」

 

ピィッ!

 

通話ボタンを押して、耳に当てると、

 

「もしもし、ゆきのん?」

 

「由比ヶ浜さん、どうしたの?」

 

「あのね、ゆきのん、今度千葉みなとでやる花火大会に行かない?」

 

由比ヶ浜は雪ノ下を千葉みなとで行われる花火大会に誘った。

 

「花火大会?」

 

「うん、千葉みなとで‥‥」

 

由比ヶ浜は雪ノ下に千葉みなとで行われる花火大会の日にちを伝えるが、

 

「ごめんなさい、由比ヶ浜さん。ちょっと人が多い所は‥‥」

 

雪ノ下は、八幡同様、人混みな所に行く事を渋る。

 

人混みも苦手だし、雪ノ下自身方向音痴なので、人が多い所に行って迷子になれば由比ヶ浜と合流不可能な事態になりかねない。

 

前世でも雪ノ下はこの花火大会には親の代わりで行く事を拒否していた。

 

「そう‥分かったよ。ゆきのん」

 

由比ヶ浜から連絡を受けたそのすぐあと、雪ノ下は両親からもこの花火大会への顔出しを頼まれたが、前世同様断った。

 

雪ノ下から花火大会への参加を断られた由比ヶ浜は本音を言えばカナデを誘いたかったが、肝心のカナデの連絡先をしなかった為、誘うに誘えなかった。

 

葉山を誘うと必ず相模もついてくるだろう。

 

前世でも相模にはどこか苦手意識を持っていた由比ヶ浜だったが、後世ではそれが更に拍車がかかっている。

 

三浦が前世と異なり、テニス部のマネージャーをしていることから、この後世では三浦の代わりに相模が葉山グループのメンバーとなっているため、相模のわがままな言動は前世よりもひどい。

 

むしろ、三浦の方がマシだったと思えるレベルだ。

 

現に同じグループメンバーだった筈の大和は相模が実質グループから追放した。

 

ほんの些細な綻びが自身の命取りになるのは川崎の一件から伺える。

 

葉山グループからの追放は学校からの追放を意味するのは大和の一件を見たら一目瞭然だ。

 

初めての海洋実習の際、由比ヶ浜と相模は同じ科であり、同じグループメンバーであることを良い事に、相模は仕事を由比ヶ浜に押し付けてきた。

 

そして由比ヶ浜が手こずっていると、ネチネチと嫌味を言ってくる。

 

あまり波風を立てたくなかった由比ヶ浜はただ黙って相模の嫌味にただ耐え続けた。

 

そして、今回の花火大会で葉山を誘えば彼の事だ、『みんなで行こう』 とか言っくるだろう。

 

葉山が来るのであれば当然、相模も来る。

 

彼女が来たら、色々とマウントを取られてグチグチと嫌味を言われそうだったので、由比ヶ浜は今年の花火大会へ行くのを諦めた。

 

由比ヶ浜が今年の花火大会への参加を諦めたことが偶然にもカナデとシュテルとの障害が自然と解消できることとなった。

 

 

シュテルがカナデと千葉みなとで行われる花火大会に行く事になり、反対に由比ヶ浜が不参加となった頃、晴風クラスでは、

 

「はぁ~やっとブルーマーメイドフェスタが終わった~」

 

西崎が両手をうーんと上げて背伸びをする。

 

「あっ、そうだ!!ねぇ、折角だし旅行にでもいかない?」

 

明乃が旅行に行かないかと提案する。

 

「いいね、旅行!!賛成!!」

 

期末テスト前、松永の実家が温泉旅館であり、夏の温泉についての効能などを聞いていた事を思い出し、ブルーマーメイドフェスタもこうして無事に終わり、来月の遊戯祭‥そしてその準備までわずかながらも時間が出来た。

 

高校生となっての初の夏休みであり、あの実習で絆が他のクラスよりも強くなった。

 

思い出作りとして夏休みにクラスメイトだけの旅行と言うのもなかなか乙なモノだ。

 

明乃の提案に西崎は賛成した。

 

「タマも行くよね?」

 

「うぃ」

 

「じゃあ、他にも行けそうな人に声をかけようか?」

 

「おおー!!」

 

西崎と立石以外にも旅行に行ける人が居ないか探すことにした。

 

その結果、行けるのが、明乃、西崎、立石、真白、美波、鈴のメンバーとなった。

 

やはり、残り僅かな夏休み期間に、明乃の急な提案だったので、ほとんどの生徒が実家に帰省するか、他のクラスメイトと既に予定をいれていた。

 

それでも、これだけの人数が集まったのだから良しとしよう。

 

美波を誘った時、当初は旅行への話に難色を示したが、ウルスラが、気分転換になるので、行ってくると良いと美波に旅行を勧めた。

 

真白の場合、美波同様最初は、旅行には渋っていたが、明乃にシュテルもその旅行に来るのかを訊ねると、明乃はシュテルも当然誘うつもりだと言うと、真白も旅行に来ることになった。

 

なお、明乃はもえかにも声を当然かけたが、もえか自身もやはり、一学期にRat事件に巻き込まれたことで、長野の実家に心配をかけたという事で帰省すると言われ、明乃ももえかも残念がっていた。

 

そして、シュテルの方も明乃たちの旅行期間と千葉みなとの花火大会が被ってしまったことで、カナデとの約束が先約のため、シュテル自身もなくなく、明乃との旅行を諦めた。

 

シュテルが来ないと知って真白はショックを受けていたが、一度行くと決めてしまった手前、やっぱり行かないとは言えず、結局そのまま旅行に行くことになった。

 

家族からも行ってらっしゃいと勧められていたのも要因の一つだった。

 

その後、旅行に行くメンバーたちは、その後旅行の行き先を相談した。

 

西崎と立石の二人は旅行先には、温泉は外せないと言う事で、旅行先には手軽に行ける距離の海と温泉という事で、千葉の房総に行くことになった。

 

当初は、松永の実家の旅館も候補に挙がったのだが、彼女の実家が群馬であり、近くに海が無いことから距離と立地条件から今回は見送られた。

 

日本が地盤沈下したとはいえ、日本全土全てが海に沈んだ訳ではなく、内陸や山間部は今でも残っている。

 

松永の実家である群馬はそのほとんどの土地が沈むことなく残っていたので、周りに海がなかった。

 

彼女が海に強い憧れを抱いたのは、生まれ故郷の立地条件に影響があったのかもしれない。

 

残り僅かな夏休みであるが、それぞれが様々な形で残りの夏休みを満喫しようとしていた。

 

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