やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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今回は視点を横須賀から千葉の総武に変えます。

後世、総武文化祭編スタートです。

八幡が居ない総武は果たして文化祭を開催できるのだろうか?


119話

 

ここで、視点は神奈川県の横須賀から、千葉へと視線を移し、時期は夏休みが終わり、二学期となる。

 

 

普通科と国際教養科にとっては長い夏休みであったが、海洋学科にとっては短い夏休みが終わり、新学期が始まる。

 

総武高校は二学期の頭に大きなイベント‥文化祭が控えていた。

 

文化祭が控えている中、奉仕部の部室では、

 

「はぁ~夏休みも終わっちゃったかぁ~‥‥」

 

由比ヶ浜がまだ夏休みボケが抜けていないのか、机にダラ~と突っ伏している。

 

「由比ヶ浜さん、いつまでも夏休み気分でいてはダメよ」

 

「分かっているんだけど、やっぱり二学期の最初はねぇ~‥‥」

 

「そ、それより、そろそろ文化祭だけど‥‥」

 

葉山が間もなく控えている文化祭について二人に話題を振る。

 

「あぁ~そう言えばそうだね‥‥」

 

「だ、大丈夫かな?って思って‥‥」

 

葉山としては、前世の高校二年生の文化祭は色々と問題が起きた文化祭だった。

 

生徒会長の城廻めぐりが文化祭の外部からの出し物の有志募集で姉の陽乃を招待して、彼女は文化祭実行委員の会議室にやって来た。

 

その時、陽乃が相模に余計な事を言ったことが引き金となり、相模がサボり公認ともいえる発言をしたせいで文化祭実行委員会のメンバーの内、三分の二以上のメンバーが翌日から文実の作業をサボり始めその結果、雪ノ下が過労で倒れた。

 

このままでは文化祭の開催さえ危ぶまれた時、スローガン決めの日‥‥実行委員のメンバー全員がそろった時、八幡が自らにヘイトが集まる発言をしてサボっていた文化祭実行委員メンバーを引き戻すことに成功した。

 

しかし、八幡の行動の意味に気づく者は居なかった。

 

それは、生徒会長の城廻も例外ではなく、八幡のおかげでサボっていたメンバーが戻ったにも関わらず彼女は八幡に対して、

 

「君は不真面目で最低だね」

 

と評した。

 

その後、なんとか遅れていた作業を巻き返し文化祭は開催することが出来た。

 

しかし、最終日のエンディングセレモニーにて相模は集計結果が書かれた書類を持って逃げた。

 

陽乃、雪ノ下、由比ヶ浜を含めた葉山グループ、平塚先生が即興グループを組んでライブをして時間を稼ぎ八幡が相模を探す羽目になった。

 

八幡は相模を見つけることは出来たが当然、八幡の説得で相模が戻る筈がなかった。

 

閉会式の時間が押している中、八幡は再び自己犠牲の方法をとり、相模に暴言を投げかけ、相模をバカにするような感じにして彼女を体育館へと戻した。

 

その際、現場に来た葉山は、

 

「どうして?君はそんな方法しか取れないんだ!?」

 

と、八幡のやり方を否定するが後の修学旅行の時、葉山は八幡のこの自己犠牲精神を利用した‥‥

 

この文化祭で一番の被害者はやはり八幡であった。

 

文化祭実行委員会を決める時も八幡は平塚先生の独断で勝手に決められた。

 

この時、寝ていた八幡にも非があるが、その後も拒否権を無視して強制的に実行委員にさせられた。

 

そして最初に行われた文化祭実行委員の会議の時に相模は自身が目立ちたいが為に委員長に立候補した。

 

翌日の放課後に相模は奉仕部の部室を訪れた。

 

この時も相模は奉仕部メンバーを小馬鹿にしたような顔で見ていた。

 

そして、相模は奉仕部に実行委員の補佐を頼んだ。

 

雪ノ下はその依頼を個人で受けると言い出した。

 

だが、雪ノ下が行ったのは相模の補佐ではなく、自らが主導で動いた。

 

恐らくそちらの方が効率が良いと考えたのだろうが、雪ノ下は相模の依頼を個人的に受けたにもかかわらず、完全に依頼の内容を忘れている様子だった。

 

そんな雪ノ下に対して、相模は自分が目立たないことに嫉妬して陽乃の提案を受けいれサボり公認の提案をした。

 

そのせいで文実のメンバーは仕事をサボるようになり、その結果、雪ノ下は過労で倒れ、最終日のエンディングセレモニーでは相模自身は逃げた。

 

本来ならば相模を探しに行くのは依頼を受けた雪ノ下の筈なのに、彼女はその役を八幡に押し付けた。

 

文化祭は無事に行われた事と相模が戻り、エンディングセレモニーが行われた事で雪ノ下本人は無事に依頼を達成できたと思い込んでいるが、雪ノ下は相模の依頼を全くこなしてはいなかった。

 

そもそも、相模の依頼自体が奉仕部の理念に反していたにも関わらず、彼女は相模の依頼を個人的に受けたにもかかわらず、結局は八幡がその尻拭いをした結果となっている。

 

だが、雪ノ下は八幡のその行為に気づいてはいなかった‥‥

 

この文化祭の結果で八幡には 『相模を泣かせた』 『相模に暴言を吐いた』 と言う悪評がつき、サボっていた相模はまさに悲劇のヒロインとなり、サボりの事実はなくなり、周囲の人から同情されちやほやされていた。

 

まさに正直者が馬鹿を見る文化祭となったのだ。

 

 

葉山はこの後世世界でも文化祭が似たような展開になるのではないかと不安に思っていた。

 

この世界には八幡が居ない‥‥

 

よって、責任を押し付ける駒が居ない‥‥

 

もしかしたら、文化祭を開くことが出来ないのではないかと思っていた。

 

「大丈夫じゃないかしら?」

 

しかし雪ノ下は、この後世世界では文化祭には何の問題がないと断言する。

 

「ど、どうしてそう思うんだい?」

 

「そもそもこの世界には姉さんがいないから、あんな馬鹿な提案をする人が居ないし、これまでの経緯から前の世界と同じことが起きるとは限らないじゃない」

 

「そ、そうだね」

 

雪ノ下の言葉を聞いて、これまでの経緯や陽乃が居ない事からこの世界の文化祭も前世と同じ展開にはならないと葉山自身もそう思った。

 

そもそも前世で相模を実行委員に推薦したのは戸部と自分であり、この世界では自分が相模を実行委員に推薦しなければいいのだ。

 

自分が推薦しなければクラスのみんなも、相模自身も実行委員にならないだろう。

 

相模が実行委員にならなければ、文化祭の準備で遅れることもない。

 

そもそも雪ノ下が言うようにこの世界では陽乃は存在しないのだから‥‥

 

それらの要素から葉山もこの世界では前世の文化祭と異なる展開になるだろうと思い始めてきた‥‥

 

そう、文化祭実行委員のメンバーを決める日までは‥‥

 

 

 

 

翌日の朝礼にて‥‥

 

「今日は文化祭実行委員のメンバーを決めるが、立候補者は居るか?各クラス男女一人ずつなんだが‥‥」

 

平塚先生が教室内を見渡すが、誰も手を上げない。

 

この世界には八幡も存在しないので、朝礼で寝ている男子生徒がいないので平塚先生が独断で決めることもなかった。

 

「葉山、君は確か去年の文化祭では実行委員をやっていたな‥どうだ?今年もやらないか?」

 

平塚先生は葉山に去年の文化祭実行委員だったので、今年もやってみないかと言われたが、

 

「去年やったので、今年は文化祭を楽しみたいです」

 

「そうか‥‥では、帰りのホームルームでこの件はもう一度話し合うことにしよう」

 

と、平塚先生は切り上げた。

 

前世では戸部が相模を推薦したが、この世界では相模が葉山グループに所属しており前世の三浦以上の我儘女王となっていたので、戸部は相模に対して苦手意識を持っており、そのせいかこの後世では彼女を推薦しなかったのだ。

 

もし、推薦していたら、

 

「戸部、お前何余計な事をしてんだよ!?」

 

なんて言われそうだったからだ。

 

葉山は戸部が相模を推薦しなかったことにホッと胸をなでおろすと共にやはりこの世界では前の世界と歴史の流れが違うのだと改めて認識した。

 

そして帰りのホームルームにて、

 

「では、朝礼で言った通り文化祭の実行委員を決める。男女それぞれこの箱の中の紙を一枚取り、印がある者は実行委員になってもらう」

 

平塚先生はクジを用意しておりクラスメイトたちは男女に別れ箱の中の紙を一枚ずつ引いていく。

 

(く、クジ引きだと!?‥‥くそっ、独神の奴め!!余計な事を!!‥‥だ、だがこれだけ大勢いるんだ、相模さんが当りを引く確率は低いだろうし大丈夫だろう‥‥)

 

クジでは運の要素も絡んでくるが、このクラスの女子の人数だってそれなりの人数なので、そこから相模一人が当たるなんてかなりの確率であるので、葉山はまさかその確率を相模が引き当てるとは思ってはおらず、自らもクジを引いた。

 

自分が引いたクジには何も書かれていなかったことから今年は文化祭実行委員の仕事をしなくても済んだ。

 

ただその反面、

 

(雪乃ちゃんは今年も実行委員をやるのかな?)

 

と、去年に引き続き雪ノ下は文化祭実行委員になるんじゃないかと思いつつ彼女と一緒に過ごすことが出来ない事を残念がっていた。

 

クジ引きはつつがなく進んで行き、

 

「あっ、何も書いてない」

 

由比ヶ浜も文化祭実行委員にはならなかった。

 

男子の文化祭実行委員は戸部でも大岡でもなく、モブなクラスメイトが当たった。

 

一方、女子の方は‥‥

 

「えぇぇっー!!ウチが実行委員!?」

 

「なっ!?」

 

相模が実行委員の当たりクジを引いてしまった。

 

それを聞いて葉山は唖然とする。

 

(男にだらしのないヴァカ女が!!何、当たりクジを引いているんだよ!!)

 

そして、当たりクジを引いた相模に対して葉山は内心罵倒した。

 

「男子は‥‥で、女子は相模‥っと‥‥」

 

平塚先生はクジで当たったのだから諦めろと言わんばかりにこのクラスの文化祭実行委員の名前を黒板に書いた。

 

(くそっ、このままじゃあ前の世界と同じになってしまうのか‥‥?で、でもこの世界には陽乃さんが居ないからまだそうと決まった訳ではないと思うが‥‥あぁ~こんなことなら、朝礼でそこら辺の女子を適当に推薦しておくべきだった‥‥)

 

前世同様、このクラスの文化祭実行委員には相模が選ばれてしまった。

 

葉山は朝礼の時に相模以外の女子を適当に推薦しておくべきだったと今になって後悔した。

 

自分が強く推薦すれば、前世の相模同様クラス全員がその女子を推しただろう。

 

しかし、まだこの世界の文化祭が前世と同じになるとは言い切れなかった。

 

八幡が居ないようにこの世界には陽乃も存在していない。

 

似た声を持つ人物は居たが、その人は総武高校のOGではない。

 

OGでもない人が文化祭実行委員に余計なアドバイスをするとは思えない。

 

ましてや、その人物はブルーマーメイドでもかなりの地位の人物なのだから‥‥

 

「では、文化祭実行委員は今日の放課後から会議があるので出席するように」

 

平塚先生はそう言い残し教室から出て行った。

 

 

翌日の放課後‥‥

 

奉仕部の部室にて、

 

「昨日、文化祭実行委員の会議で相模さんが来たわ」

 

雪ノ下は去年と同じく文化祭実行委員になっていた。

 

勿論、去年の事があるので、その事を知っている他の実行委員からは煙たがられていたが雪ノ下自身はそうした視線に慣れているのか気にも留めていなかった。

 

「あ、ああ‥クジを引きで、相模さんが当たってね」

 

「それで、前の世界と同じ文化祭実行委員長に立候補していたわ」

 

雪ノ下は昨日の会議の内容を葉山に伝える。

 

「‥‥」

 

相模が文化祭実行委員となり、更には委員長にまでなっていた。

 

此処までの流れは完全に前世と同じだ。

 

葉山が文化祭の行き先に不安を感じていると、

 

コン、コン、

 

奉仕部の部室の扉がノックされる。

 

「どうぞ」

 

雪ノ下が入室を許可すると、

 

「しつれーしまーすー」

 

相模が部室に入ってきた。

 

「えっ、は、葉山君!?葉山君がどうしてここに!?」

 

相模は奉仕部の部室に葉山が居ることに驚いている。

 

「俺もこの部活の部員なんだ」

 

「えっ!?葉山君が!?」

 

葉山が奉仕部の部員であることを今初めて知った相模は雪ノ下と由比ヶ浜をチラッと睨む。

 

「それで何か用かしら?相模さん」

 

「えっと‥‥」

 

相模は葉山のことをチラッと見つつ、雪ノ下に依頼をしてきた。

 

その内容は前世と同じ、文化祭実行委員長として自身の成長を促したいので、そのサポートをしてくれというモノだった。

 

前世の事もあるし、雪ノ下は断るかと思っていたが、葉山の不安をよそに雪ノ下は相模らからの依頼を引き受けた。

 

相模が部室を出て行った後、

 

「どうして相模さんの依頼を受けたんだい?これじゃあ、前世と同じ流れに‥‥」

 

葉山は雪ノ下に何故、相模の依頼を受けたのかと問う。

 

「大丈夫よ。たとえ相模さんが実行委員長になってもサボりの原因となる姉さんが居ないんだもの」

 

雪ノ下はあくまでも陽乃が居ないのだから大丈夫だと言い切っていた。

 

それから数日後の放課後、文化祭実行委員の会議室にて、

 

「それでは、定例のミーティングを始めます。じゃあ、宣伝広報、お願いします」

 

「掲示予定の七割を消化し、ポスター制作についても大体半分終わっています」

 

「そうですか、いい感じですね」

 

報告に対し相模はそのように述べるが、

 

「いいえ、少し遅い。来客がスケジュール調整する時間を考慮に入れればこの時点で既に完了していないといけないはずです。掲示箇所の交渉、HPのアップは既に済んでいますか?」

 

雪ノ下はそれに反論し、パソコン関連で文化祭の準備は整っているのかと問う。

 

「ま、まだです‥‥」

 

去年の雪ノ下の文化祭実行委員の事を聞いているのか、パソコン関連の実行委員はビクビクしながらまだ作業が終わっていないことを伝える。

 

「急いでください。受験志望の中学生やその保護者は結構こまめにチェックしていますから」

 

「は、はい」

 

「相模さん、続けて」

 

「う、うん。じゃあ、有志統制、お願いします」

 

「はい。有志参加団体は現在十団体」

 

「けっこう増えたね。地域賞のおかげかな?次は──」

 

「それは校内のみですか ? 例年、地域との繋がりという姿勢を掲げている以上、地域の参加団体減少は避けないといけません。それから、ステージの割り振りはもう済んでいますか?タイムテーブルを一覧にして提出をお願います」

 

「は、はい」

 

「次、記録雑務」

 

「特にないです」

 

「じゃあ、今日は───」

 

相模が今日の作業予定を伝えようとした時、

 

「記録は当日のタイムスケジュールと機材申請を出しておくように。それから来賓対応は生徒会でいいんですか?」

 

雪ノ下が勝手に会議を進めてしまった。

 

「うん、生徒会で大丈夫だよ~」

 

「では委員長」

 

「は、はい。今日も作業を頑張ってください」

 

結局、相模がしたのは号令をかけるだけだった。

 

雪ノ下はこの後世でも同じ失敗を繰り返そうとしていたのだが、彼女の信条は既に前世と同じく、相模を補佐するよりも自分主導で動いた方が早いと勝手に判断していた。

 

「いやぁ~雪ノ下さんはやっぱりすごいね~」

 

「いえ、大したことではありません」

 

生徒会長の言葉に謙遜する雪乃。

 

書類を見ている相模の耳に城廻が雪ノ下を褒めているその言葉が聞こえる。

 

(なんで、雪ノ下さんばかり‥‥委員長はウチなのに!!)

 

相模は雪ノ下ばかり褒められているのを見て悔しがる。

 

翌日も昨日までの進捗状況と今日の予定確認でも昨日と同じく相模ではなく雪ノ下が主導権を握り会議を進行していた。

 

「‥‥」

 

その後の作業も雪ノ下が指示を出して、相模がすることは書類確認と判子を押す事、号令をかける事だけだった。

 

やはり陽乃が存在していないため、相模に余計な事を言う人物がおらず、相変わらず雪ノ下主導で文化祭の準備が進んでいき、今日の作業が終わった頃、

 

「皆さん、ちょっといいですかー!?」

 

手を叩き相模が何やら言い出す。

 

「少し考えたんですけど、文実は文化祭を楽しんでこそかなって思って、やっぱり文化祭を最大限に楽しむには、クラスのほうも大事だと思うんですよ。作業の方も順調にクリアしているし少し仕事のペースを落とすっていうのはどうですかぁ?」

 

「なっ!?」

 

相模の発言を聞いて、雪ノ下は驚愕した。

 

(ど、どうして!?姉さんはこの世界には居ないのに‥‥!?)

 

前世では、相模は陽乃の、

 

『実行委員も文化祭を楽しまなくちゃダメ』

 

みたいな発言を相模が別の意味でとらえたことにより、彼女は実行委員にサボり公認の発言をした。

 

しかし、後世では、陽乃の存在と言葉無しでこの発言をしてきた。

 

(い、いけない!!何としてでもこの発言を撤回させないと!!)

 

雪ノ下はこの発言の意味の恐ろしさを知っている。

 

このままでは、実行委員の仕事に支障が出る。

 

「相模さん!!それはダメよ!!今そんなことをされたら文化祭に間に合わなくなるかもしれないのよ!?」

 

雪ノ下は慌てて相模を説得するが、

 

「でもぉ~やはり皆もクラスのほうも楽しみたいと思うしぃ~私はいいと思うんだけどなぁ~‥‥みんなはどう?」

 

相模は雪ノ下の言葉に耳を貸そうともしない。

 

「そうだ、そうだ!!俺たちもクラスのほうに顔を出したい!!」

 

「私もクラスのほうが気になる!!」

 

元々、相模をはじめとして実行委員には雪ノ下への反発心もあったことから、次々と相模の意見に賛成の姿勢を示す。

 

「ほらぁ~皆もクラスに行きたがっているじゃないですかぁ~それに、仕事だって十分進んでいるんだしぃ~ちょっとぐらいクラスの方に顔を出しても問題ないんじゃない?」

 

「くっ‥‥城廻先輩、先輩からも止めて下さい!!」

 

雪ノ下は生徒会長である城廻からも相模の発言を撤回するように求める。

 

「うーん‥‥でも、相模さんの言っている事も間違っていないし‥‥委員の皆もクラスの方は気になるだろうから‥‥それに仕事もここまでは順調に進んでいるみたいだし、大丈夫じゃないかな?」

 

「なっ!?」

 

城廻さえも相模の意見に賛成している。

 

「ほら、生徒会長さんも賛成みたいだしぃ~」

 

相模はニヤリと口元をイヤらしく歪め、雪ノ下を小馬鹿にした目で見ながら言う。

 

ここで、相模は初めて雪ノ下に勝ったと思ったのだろう。

 

「それでも‥‥」

 

雪ノ下は是が非でも相模の提案を却下させようとするが、

 

「じゃあ、多数決を取ろう。ウチの意見に賛成の人!!」

 

相模が多数決を取り、圧倒的な数で相模の提案が採用された。

 

「‥‥」

 

雪ノ下は、悔しそうに顔を歪めた。

 

 

「‥‥」

 

翌日の実行委員の会議室は昨日とは打って変わって、あからさまに変化があった。

 

会議室に来ていた実行委員の人数が物凄く減っていた。

 

会議室に居たのはわずか、十数名‥‥

 

その人数さえ日々を重ねるごとに減っていき、最終的には五、六人にまで減っていた。

 

(やっぱり、前の世界と同じ結果になったわね‥‥)

 

書類を片付けながら雪ノ下はこれまでの奉仕部の依頼は前の世界と異なる展開だったのだが、文化祭でまさか前世と同じ展開になるなんて誰が予想できただろうか?

 

しかも、文化祭のサボりの原因である雪ノ下陽乃がこの世界では存在しないのに‥‥

 

相模の行動は前世と同じサボり公認の発言の他に委員長が採決に必要な判子も副委員長であった雪ノ下に手渡して等々会議室にも来なくなった。

 

まぁ、元々あのサボり公認の発言から相模は一日も来ていないが‥‥

 

その他の実行委員もクラスの出し物と文実委員の仕事の二つをやり繰りする筈なのに文実の仕事は一切することがなかった。

 

 

相模が文実でサボり公認の発言する少し前、葉山、由比ヶ浜が所属するクラスでは文化祭の出し物を決める話し合いが行われた。

 

出し物は前世と同じ海老名が脚本の演劇だった。

 

主人公は戸塚と葉山の二人‥‥

 

この世界で戸塚の彼女である三浦は、彼氏が演劇の主役という事で嬉しいのだが、毛嫌いしている葉山と組むことでなんか不安であり、それなら異性同士のラブロマンスの内容だったら良かったと思い、同性同士の脚本を書いた海老名にちょっと引いた。

 

三浦は衣装担当になったので、主役の戸塚の為に目一杯素敵な衣装を作ってあげようと気合を入れて戸塚の衣装を作り始めた。

 

サイズを図っている時、三浦に密着され戸塚は顔を赤らめていた。

 

こうしてクラスでは、文化祭の出し物である演劇の準備が進められていく中、少ししてから何故か教室内で文化祭実行委員の筈の相模の姿をよく見るようになった。

 

「ねぇ、三浦さん」

 

「ん?何?彩加」

 

「最近相模さん教室に居すぎだと思うんだけど‥‥?」

 

戸塚が三浦に教室で覚えた違和感を口にする。

 

「あぁ~確かに‥アイツ文実でしょう?教室でスマホを弄っていて大丈夫なのかな?」

 

相模は教室に居てもクラスの出し物である演劇の準備の手伝いをする訳でもなく、スマホを操作しているか仲のいいクラスメイトと駄弁っている。

 

「少し気になるなぁ~」

 

実行委員の筈の相模がこうして連日、会議室にも行かずに教室で準備の手伝いもせずにサボっているだけで、実行委員の仕事の方は大丈夫なのだろうか?

 

クラスの準備が出来ても実行委員の準備が出来ていなければ、文化祭は開催出来ない。

 

(マズい‥‥マズい‥‥マズい‥‥これは限りなくマズい‥‥)

 

そんな中、一番焦っていたのは葉山だった。

 

相模が文化祭の実行委員になった事、

 

文化祭の実行委員長になった事、

 

そして、陽乃が居ないにも関わらず、文実の会議でサボり公認の発言をした。

 

その結果、文実の機能は完全に崩壊した。

 

会議室を覗いてみれば、そこに居たのは雪ノ下と生徒会メンバーを含めて片手で数える程度しかいない。

 

そこで、葉山は急いで相模に文実の仕事をしないのかとやんわりと訊ねてみる。

 

「さ、相模さん。最近、教室にずっといるみたいだけど、文実の仕事はいいのかい?」

 

「大丈夫、大丈夫。ウチ~文実の実行委員長になったけど、ウチ~が居なくても雪ノ下さんが補佐してくれているから全然大丈夫だよ。採決に必要な判子もちゃんと渡してあるから、書類も滞りなく採決されている筈だから」

 

「そ、そう‥‥」

 

「あっ、葉山君、帰りにサーティーワンのアイス食べて帰らない?なんか新作のアイスが出たみたいだし」

 

「い、いや、今日は家の手伝いがあって早く帰らないといけないんだ」

 

「えぇ~」

 

葉山は顔を引き攣らせながら言うが、会議室に顔を出しておらず文実の現状を全然理解していない相模は既に文実が崩壊している事を知らない。

 

それどころか、放課後に葉山を遊びに誘う始末だった。

 

葉山自身もクラスメイトが大勢いる中で相模を怒鳴り散らすと下手に目立ってしまう為、相模に注意らしい注意をすることはなかった。

 

由比ヶ浜も戸部同様、この世界の相模に苦手意識を持っていたので、注意することもなかった。

 

他のクラスメイトたちも実行委員の相模が 『大丈夫』 と言っているのなら、大丈夫なのだろうと、文実の実情を確認することもなく、その言葉を信じてクラスの準備を進めていた。

 

文実の崩壊の決定打は雪ノ下が前世と同じく過労で倒れ、翌日には等々会議室に実行委員の姿は消えて、城廻ら生徒会の数名だけが文実の仕事をしていた。

 

「はぁ~こんなことなら、あの時に雪ノ下さんが言う通り、相模さんの提案を止めていればよかったなぁ~」

 

山の様に積まれた書類を見ながら、城廻もあの時、何故雪ノ下があそこまで相模の提案に反対したのかを理解したが、今となっては文字通り後の祭りだった。

 

実行委員のメンバーたちの大半は文化祭のスローガン決めの日まで会議室に集まることはなかった。

 

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