やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

122 / 161
121話

 

九月に横須賀にて行われる遊戯祭‥‥

 

まだ夏休みが開けていない中、横須賀女子の学生たちは準備に余念がない。

 

まさか、遊戯祭が行われる同じ月に千葉の総武高校では文化祭の実行委員のメンバーが仕事を総出でサボって文化祭が中止になるなんてこの時は誰も予想が出来ていなかった。

 

晴風クラスも最初の航海でミーナの歓迎会や赤道祭を行ったりと意外とイベント好きな者たちが多いので、遊戯祭への出し物の意見が多数寄せられて簡単にまとまらなかった。

 

(遊戯祭‥‥文化祭か‥‥やっぱり、この時期になるとあの時の事を思い出すな‥‥)

 

シュテルとしてはどうしても、この時期になると前世の文化祭の事を思い出してしまう。

 

シュテルは、この世界に存在しているのではないかと思っているこの世界の自分が平塚先生から勝手に実行委員にされて、同じく相模も葉山と戸部にちやほやされてノリで実行委員となり、挙句の果て実行委員長になり、奉仕部に自分の仕事を丸投げして、楽に自分の実績と内申を稼ごうとする。

 

八幡は奉仕部の概念にそぐわない依頼だし、由比ヶ浜は実行委員でない。

 

よって相模の依頼は受けるべき依頼ではなかったのに雪ノ下は個人で受けた。

 

しかし、相模は雪ノ下の人となりを理解していなかった。

 

雪ノ下は相模の仕事を補佐ではなく仕事と実績を奪う。

 

相模は委員長らしいところを見せて目立とうとしたのか、雪ノ下の姉である陽乃のアドバイス?を間違った方向に受け取り、実行委員のサボりを誘発した。

 

現状打開のため、八幡はスローガン決めの時に自らにヘイトを集め実行委員を戻し、更には最終日には相模は逃げ出し、閉会式の表彰で支障をきたす恐れが出てきて、そこでも八幡は一人泥を被り相模を戻すも自身に悪評が着くようになった。

 

そこから修学旅行の依頼だ‥‥

 

(この世界の俺も前世と同じやり方をするのだろうか?)

 

シュテルはやはり、この世界に居るかもしれない八幡の事がこの時期になるとどうしても気になった。

 

(遊戯祭の日と総武高校の文化祭の日は違うから総武の文化祭を見に行ってみるかな‥‥?三浦と付き合っている戸塚を見るのは辛いけど‥‥)

 

この世界に存在しているかもしれないもう一人の自分の事が気になり、総武高校の分化祭の日に様子を見に行きたいと思いつつも三浦と付き合っている戸塚の姿を見るのも辛かったが、やはりこの世界の自分の事が気になるので行くことにした。

 

 

そんな中、納沙と何故か晴風クラスではないはずのミーナが演劇を提案するも、準備や練習の時間の関係から演劇は難しいと判断され、そこで納沙は自主映画という事で手を打った。

 

とりあえず真白はそのシナリオを見て判断するとして、納沙とミーナは早速自主映画のシナリオを書き始める。

 

 

納沙とミーナの二人は遊戯祭の出し物を決める話し合いが終わった後、ずっと学生寮の納沙の部屋に籠もり自主映画のシナリオを書いている。

 

なにせ締め切りが翌日なのだから、一分一秒も時間を無駄には出来ない。

 

そんな中、真白はシナリオの進捗が気になって納沙の部屋を訪れる。

 

「納沙さん、少し良いだろうか?」

 

真白は部屋の扉をノックして中に居るであろう納沙に声をかける。

 

「あっ、はい。どうぞ」

 

「失礼する」

 

中から返答を聞き、真白は納沙の部屋に入る。

 

納沙の部屋にはミーナも居り二人はパソコンのキーボードをひたすら打ち込んでいた。

 

テーブルの上にはシナリオの下書きや登場人物の設定なのか、何やら文字だらけの紙がいくつも散らばっていた。

 

「シナリオの進み具合はどうだ?」

 

「まぁ、ミーちゃんがいるので順調と言えば順調です」

 

趣味が絡んでいる為なのか納沙の顔はなんか生き生きしている。

 

それはミーナも同じだった。

 

「少し拝見してもいいだろうか?」

 

「ええ、いいですよ。といってもまだ途中ですけどね」

 

納沙の許可を得て真白は書きかけのシナリオに目を通す。

 

内容は任侠物が好きな二人が書いたシナリオなだけあって、その手の内容の映画になっている。

 

「ふむ‥見たところエキストラを含め、クラスの人数以上の人員を使うように感じるのだが?」

 

真白は登場人物が晴風クラスよりも多い人数を使用していることを指摘する。

 

「人員に関しては、ワシら留学生組を動員するつもりじゃ」

 

足りない分の人員はシュペーのクラスメイトからも動員するというミーナ。

 

「なにしろ、映画の中ではチャカ(拳銃)も使用するからな。銃器の扱いに慣れた者が取り扱う方がいいじゃろう」

 

「ちゃ、チャカ?」

 

真白はミーナの言う 『チャカ』 が何なのか分からない様子で首を傾げる。

 

「あっ、チャカは拳銃の事です」

 

そんな真白に納沙が 『チャカ』 の説明をする。

 

「け、拳銃!?」

 

『チャカ』 の正体を聞いて驚く真白。

 

「なお、短刀の事は 『ドス』 って表現します」

 

納沙は補足説明で真白に 『ドス』 についても説明する。

 

「そ、それはどうでもいい知識だが、拳銃の使用は流石にマズいんじゃないか?」

 

「使用する弾は模擬弾じゃから当たっても死にはしない。まぁ、銃器が全てドイツ製なのは違和感があると思うがそれはやむを得ない妥協点じゃな」

 

「‥‥」

 

真白はこの二人のシナリオの映画を本当に許可してもいいのかと一瞬判断に戸惑う。

 

だが、真白の中である展開が脳裏を過ぎる。

 

(ん?銃器の取り扱いに慣れている‥‥確か碇艦長も銃を使っていたな‥‥)

 

真白は自身が誘拐された時、シュテルが慣れた手つきで銃を使用していたのを思い出す。

 

(シュペークラスの先輩方に手伝ってもらうのであれば、ヒンデンブルクの先輩たちも‥‥という事は碇艦長も手伝ってもらうのもアリだな‥‥)

 

そう思い、真白はシナリオを読み返す。

 

「は、配役は決まっているのか?」

 

納沙に配役を訊ねる。

 

「まぁ、主役クラスの役は私たち晴風クラスのみんなにやってもらうつもりです。あっ、もちろん、シロちゃんにもちゃんとセリフがある役を用意してありますよ」

 

「シュペークラスの方々にも協力してもらうとして‥‥ひ、ヒンデンブルクの方々にも協力を仰ぐのだろうか?」

 

ミーナは自分のクラスメイトたちにも協力してもらう予定だったが、同じドイツからの留学とは言え、ヒンデンブルクは学校が異なるので、ヒンデンブルクのクラスメイトたちに協力してもらうには改めて頼まねばならない。

 

「どうします?」

 

「うーん‥‥そうじゃなぁ‥‥」

 

納沙もミーナもシュペーのクラスは兎も角、ヒンデンブルクのクラスメイトに協力を仰ぐかは未定だった。

 

「聞いた話では碇艦長は去年、ダートマス校の演劇祭にも出たみたいだ。役者としては十分なのではないだろうか?」

 

真白はさりげなく不自然さを感じさせないように納沙とミーナにシュテルを推薦する。

 

本人が聞けば嫌がりそうなのだが、真白としてはシュテルと共演してみたかったのだ。

 

「まぁ、確かにヒンデンブルクの方々は銃器の取り扱いにも慣れていましたし、人数が増えれば規模も大きくできますしね‥‥」

 

真白の言う事も一理あると納沙もヒンデンブルクのクラスメイトたちの共演には前向きな様子だった。

 

「で、では‥この若頭役には碇艦長はどうだろうか?」

 

真白はシュテルにある役を推薦する。

 

「は、はぁ~‥‥」

 

「それで、私はこの役をやりたいのだが‥‥」

 

そして、真白もやりたい役があるのか納沙にこの役をやりたいと立候補してきた。

 

しかし、真白はまだこのシナリオの自主映画が決定されたという訳ではないことを忘れていた。

 

その後、何故か真白も手伝って自主映画のシナリオを書き続けた。

 

納沙はミーナの他に自身の中で好感度が高い真白と共にシナリオを書けて満更でもない様子だった。

 

きっと真白もこの自主映画には賛同してくれているのだろうと思っていたのだ。

 

まぁ、納沙の予想もある意味間違ってはいなかった。

 

 

 

 

翌日‥‥

 

 

「もかちゃんのクラスは遊戯祭の出し物、何にするか決まった?」

 

シュテルはもえかと朝食を摂っており、会話の中で遊戯祭の話題を出して、もえかのクラスが何をするのかを訊ねる。

 

「私のクラスは、この前の親睦会で開いた蕎麦会が好評だったから、遊戯祭でもやろうかと思っているよ」

 

もえかのクラスは蕎麦の模擬店を出すみたいだった。

 

「シューちゃんのクラスは何をやるの?」

 

「私のクラスはシュペーのクラスの人たちと一緒にドイツ料理を提供する模擬店と楽器の生演奏をする予定」

 

「へぇ~生演奏ってシューちゃんがヴァイオリンで演奏するの?」

 

「うん、そのつもり」

 

もえかと朝食を摂っていると、

 

「あ、あの‥い、碇艦長」

 

「ん?」

 

シュテルは声がした方へと視線を向ける。

 

そこには真白が居た。

 

「あれ?宗谷さん。どうしたの?」

 

「あ、あの‥実は…その‥‥」

 

シュテルに声をかけた真白は何故か、シュテルから視線を逸らし、もじもじしている。

 

「「?」」

 

真白の挙動不審な行動に首を傾げるシュテルともえか。

 

真白自身もいつまでももじもじしている訳には行かないと思い、意を決した様子で、シュテルに視線を合わせると、

 

「あ、あの!!碇艦長!!」

 

「は、はい」

 

「その‥‥協力してもらえませんか!?」

 

「えっ?何に?」

 

いきなり協力してくれと言われ、自分は一体何に協力するのかを聞いてからでないと返答できない。

 

真白はシュテルに晴風クラスの出し物の一つに納沙とミーナがシナリオを書いた自主映画を撮ることになったので、その映画の撮影に協力してくれという頼みだった。

 

シュペーのクラスメイトたちもこの自主映画の撮影には参加するみたいだ。

 

「うーん‥‥」

 

去年に続いてまたもや演劇関係に参加するかもしれないというシュテル。

 

しかも自主映画という事は遊戯祭の最中ずっと上映されてしかも他校の生徒を始めとして大勢の人に見られるのかもしれない。

 

とは言え、演劇祭の時みたいに役があるとは限らない。

 

協力すると言っても役者という訳ではなく、裏方やカメラ、音響など、映画は役者だけで作ることは出来ないのだから‥‥

 

それに主役はあくまでも晴風クラスのメンバーの筈なので、シュテルはきっと裏方としてのスタッフが足りないと思った。

 

この時は‥‥

 

「撮影に協力するのはまぁ、私個人は良いけど‥‥」

 

「本当ですか!?ありがとうございます!!」

 

「えっと‥‥でも、晴風クラスの出し物はその自主映画でもう決まりなの?」

 

もえかが真白に遊戯祭における晴風クラスの出し物はその自主映画で既に決定されているのかを問う。

 

「決めてみせます!!宗谷の名に懸けて!!」

 

「そ、そう‥‥」

 

「頑張ってね」

 

真白は意気揚々した様子で去って行った。

 

 

「では、第二回晴風クラスの出し物会議!!」

 

昨日に引き続き、晴風の教室にて遊戯祭の出し物についての話し合いが再び行われた。

 

「ココちゃん、映画のシナリオは出来た?」

 

明乃は納沙に自主映画のシナリオは出来たか訊ねる。

 

「もちろんです!!ミーちゃんとシロちゃんの三人で書いた力作です!!」

 

「えっ?宗谷さんも!?」

 

映画のシナリオの執筆に真白が関係したという事実に黒木が真っ先に反応する。

 

「えっ?シロちゃんも!?」

 

黒木の他に明乃も納沙が推す自主映画に真白が協力したことにちょっと驚いた。

 

「シロちゃんも協力したってことは、シロちゃんも映画に賛成なの?」

 

「ま、まぁ‥そう言う事ですね‥‥」

 

「ふぅ~ん」

 

昨日はそこまで納沙の自主映画に積極的には見えなかったのに、あれから何があったのか分からないが真白は納沙の自主映画に賛成の様子。

 

真白が賛成するのであれば、

 

「宗谷さんがやるなら私もやるわ!!」

 

黒木も賛成する。

 

とは言え、他のクラスメイトたちからもこれをやってみたいという意見もあり、その結果‥‥

 

「じゃあ、みんなやろう!!」

 

明乃はクラスメイトたちから上がった提案を出来るだけやろうと言った。

 

「じゃあ、早速準備しないとね!!」

 

話し合いを早々に切り上げ、晴風クラスは遊戯祭に向けての準備を始めた。

 

シュペーにはミーナが赴き自主映画の件を伝えるとテアに協力を求めた。

 

そして、ヒンデンブルクには真白が赴きシュテルに話し合いで決まったことを伝えて改めて協力を求めた。

 

晴風クラスにはあの航海でミーナが世話になったので、テアは協力することにし、シュテルの方も朝、協力すると言った手前、今更撤回などすることはせずに協力した。

 

ただ‥‥

 

「えぇぇーっ!?裏方のスタッフとかじゃないの!?」

 

シュテルはてっきり裏方のスタッフかと思いきや真白から役者として自主映画に出てくれと頼まれた。

 

晴風クラスの出し物なのだから、出演者は晴風クラスのメンバーで自分たちはカメラや衣装、小道具制作の裏方のスタッフだと思っていたのだ。

 

「どうしてもこの役のイメージにぴったりなのは碇艦長なんです」

 

「ど、どんな役なの?」

 

シュテルが真白から台本を受け取ると、内容はヤクザっぽい内容のシナリオで、真白がシュテルにやって欲しいという役はヤクザの若頭の役だった。

 

「‥‥こ、この役を私に?」

 

「はい。お願いできませんか?」

 

「いや、でも‥こういうのは確か同じクラスの野間さん?が適任の様な気が‥‥」

 

「野間さんには別の役があり、他のクラスメイトたちもこの役のイメージにはちょっとズレている感じで‥‥だからどうしても碇艦長にやってもらいたいんです!!」

 

「えっ?いや‥でも‥‥」

 

「碇艦長‥協力するって言ったじゃないですか」

 

「あ、あれは‥てっきり、裏方のスタッフだと思って‥‥」

 

「でも、言いましたよね?」

 

「うっ‥‥」

 

よく確認せずに 『協力する』 と言ってしまった手前、無下に断れない状況に追い込まれてしまった。

 

 

「で?引き受けちゃった訳?」

 

「シュテルン将来大丈夫?詐欺とかに引っかからないか私、心配だよ」

 

晴風クラスの自主映画に参加することをシュテルはクリスとユーリに伝えると二人からは同情する様な視線を送られた。

 

「まぁ、去年もやったし、台本を見る限りそんなに登場時間も長くはないから別にいいけど‥‥」

 

「どんな役なの?」

 

二人はシュテルがどんな役をやるのか気になりシュテルに訊ねる。

 

すると、シュテルは二人に台本を手渡す。

 

二人は手渡された台本に目を通す。

 

「「‥‥」」

 

クリスとユーリの二人はジッと台本を読んで行く。

 

そして読み終えたのか、

 

「‥‥これ、シュテルン死に役じゃん」

 

「うん‥まぁ、そうなんだけど死に役なら去年ダートマス校の演劇でも経験したから」

 

台本を見た二人からの意見では、どうやらシュテルが演じる役は死に役みたいだ。

 

死に役だが去年のダートマス校での演劇祭で経験もあるし、シュテルは出演時間が短いからシュテル本人にしては別に文句はなかった。

 

「でも、死に間際のこのシチュエーションはちょっと‥‥」

 

ユーリはシュテルが演じる役の死に際のシチュエーションに思う所があるみたいだ。

 

「まぁ、演劇だし‥‥」

 

「「‥‥」」

 

シュテルは死に際のシチュエーションに関してもなんか割り切っている様子だった。

 

 

それから各クラスは残り少ない夏休みを返上で遊戯祭の準備に取り掛かる。

 

去年のダートマス校の演劇祭、母校キール校の文化祭の様子を見てもやはり、前世最後の文化祭が異常に感じる。

 

(やっぱり、普通はこんな感じだよな‥‥)

 

準備しながらそう思うシュテルだった。

 

 

晴風クラスの自主映画は、銃器に関してシュペー、ヒンデンブルクから模擬弾を装填した銃器を使用し、使用者も取り扱いに慣れているシュペー、ヒンデンブルクのクラスメイトが務める。

 

もっとも銃器を使うのはほぼわき役の様な役だし、レギュラー役である晴風クラスが使うのは発火モデルのモデルガンを使用する。

 

それなら発火モデルのモデルガンを使えばいいじゃないかと思うのだが、やはり銃口から弾が出て来る方がリアリティを出すという事でやはり模擬弾装填された実銃を使用したのだ。

 

衣装に関しては青木と例の明石クラスに在籍している衣装マニアの人から借りた。

 

晴風クラスは科や個人によって遊戯祭の出し物が多いのだが、こうして自主映画の撮影にも協力している辺り、やはり晴風クラスの結束は強い。

 

ミーナに頼まれたのかテアも裏方のスタッフではなく、役者としてこの自主映画に出演した。

 

テアの役は組長かその組長の妻役なのか、左肩から背中にかけて刺青を意識したボディーペインティングを施されていた。

 

まさか、本当にテアの身体に刺青を入れる訳にはいかない。

 

テアの衣装に関して組の幹部役という事で着物を身に着けるので、シュペークラスで親日家のレオナが嬉々としてテアの衣装を選んでいた。

 

小道具でもレオナのコレクションの中で小柄のテアでも扱いやすい模造刀の小太刀を貸し出した。

 

こうして準備が整い晴風クラスの自主映画の撮影が行われた。

 

 

 

 

『ここだと治外法権で、警察も手出せないんですよ』

 

『そうか‥‥じゃあ、カジノやらした方が金になるよな』

 

『カジノ!?カジノ出来ないよ』

 

『もっと儲かるじゃねぇか!バカヤロー!』

 

『うるせぇんだよ、この野郎!こっちが決めるんじゃぁ、ボケ!』

 

『うるせぇんだよ!馬鹿野郎!』

 

『なんだ、てめぇまで調子に乗りやがって、この野郎!』

 

『だから、証拠見せろって言ってんだよ、この野郎』

 

『てめぇはいつもトロいんだよこの野郎!』

 

『ただじゃおかねぇ!ぶち殺すぞ、ゴラァ!』

 

 

『イカサマやっていたんで、腕折ってやったんです』

 

『そんなこと聞いているんじゃ、ねぇんだよ!てめぇ、あんま調子乗っていると、またムショぶち込むぞ!こらぁ!』

 

 

『これからは合法的にデカい金を動かしていく』

 

『この前、聞いた話なんですけど。どうやら○○って、ヤクザが生きているらしいですよ』

 

『例えば同じ売春でもチマチマやらねぇで、外務省の悪人とつるんで国際的なマーケットにするんだよ』

 

 

『ガタガタうるせぇんだよ!ぶち殺すぞ!こらぁ!てめぇ、一体誰に向かって、喋ってんだ!?この野郎!』

 

『自分が何やっとるのか、分かっとる、ちゅーのか!?』

 

『ふざけんな、この野郎!』

 

『魚の餌にしちまうぞ、このヤロウー!』

 

 

 

 

自主映画の撮影現場では台本のセリフとは言え、女子高校生らしからぬセリフが飛び交う。

 

ただそんな中でもやはり、鈴は普段のなよなよした様子とは180度異なり、完全に役者になりきっていた。

 

(やっぱり、知床さんは女優に向いているよな‥‥)

 

鈴の演技を見て、やはり鈴には女優としての才能があると思うシュテルだった。

 

そして、いよいよシュテルの撮影場面となる。

 

 

 

 

テアが所属する鉄十字組と万里小路が所属する万里小路組‥‥

 

二つの組がシマを巡り段々と対立が表面化していき、二つの組の抗争がいつ起きてもおかしくはなく、不穏な空気が漂う中、鉄十字組の若頭であるシュテルこと、『霧島一馬 (きりしま かずま)』 は抗争前に恋人である宗谷真白こと、『神代深雪 (かじろ みゆき)』 と出かけていた。

 

深雪は霧島が当然、極道の人間である事を承知の上で彼と交際していたし、もし彼と夫婦となれば自分は一般人から極道関係者になることも覚悟していた。

 

ただ、抗争前‥しかも霧島が若頭という事で護衛も念のため護衛も着けていた。

 

このキャストに対して明乃は、

 

「シロちゃんいいなぁ~ヒロイン役でぇ~」

 

と、ヒロイン役であることを羨み、

 

一方、黒木は、

 

「なんで!?宗谷さんの恋人役が私じゃないの!?」

 

と、配役に不満がある様子だった。

 

「えっと‥‥この役は死に役だし‥‥」

 

「宗谷さんのためなら、死に役でも良いわ!!」

 

「それに銃も取り扱うし‥‥」

 

「私は危険物取扱者免状も煙火消費保安手帳も持っているから銃ぐらい取り扱えるわ!!」

 

と、最後まで不満を零していた。

 

 

霧島と深雪が街中を歩いていると、急に前方から黒いセダンが止まる。

 

ダン!!

 

「ぐあっ!!」

 

すると、黒いセダンから狙撃手が護衛を狙撃する。

 

「っ!?」

 

霧島は咄嗟に深雪を庇うように抱きしめる。

 

その直後、

 

ダダダダダダダダ‥‥!!

 

黒いセダンに乗っていた者たちはシュマイザーを構えると撃ってくる。

 

「き、霧島さん!?霧島さん!!」

 

霧島にギュッと抱きしめられた深雪は叫ぶ。

 

(い、碇艦長に抱きしめられている‥‥碇艦長に抱きしめられている‥‥)

 

場面では逼迫しているのだが、真白は心の中でも緊張していた。

 

 

銃弾は深雪を庇った霧島の背中に何発も命中する。

 

「うわぁぁぁぁぁー!!」

 

ダン!!ダン!!ダン!!ダン!!ダン!!ダン!!ダン!!ダン!!

 

深雪を庇い、抱きしめながら霧島はルガーP08で襲撃者に向けて反撃する。

 

霧島が撃った弾丸は襲撃者を一人倒す。

 

一人やられたが、あれだけの銃弾を身体に受けたのだから、霧島は助からないと予想した襲撃者たちは早々に撤収して行く。

 

「はぁ‥‥はぁ‥‥はぁ‥‥なんだよ‥‥結構、当たんじゃねぇか‥‥」

 

「き、霧島さん‥‥」

 

「若ぁ!!」

 

撃たれた護衛は腕を撃たれたが命には別状みたいだ。

 

「なんて‥声‥出していやがる‥‥」

 

「で、でも‥‥」

 

「大丈夫だ‥‥俺は‥‥鉄十字組、若頭霧島一馬だぞ。こんくれぇなんてこたぁねぇ」

 

大丈夫という霧島であるが、足元には血だまりが出来ている。

 

「わ、私のせいで‥‥」

 

「惚れた女を守るのは当然の事だ‥‥」

 

もちろんこれは本物の血ではなく、スーツの下に血糊が仕込んである防弾チョッキを着ており、その血糊の部分に模擬弾があたり、血糊が入ったパックが破けて出来たモノだ。

 

「深雪‥‥すまねぇが‥‥次のデートはちょっと長くなりそうだ‥‥」

 

「き、霧島さん‥‥」

 

「おい、行くぞ‥‥万里小路組の奴らに‥‥この落とし前をきっちりと付けさせてやる」

 

ゆっくりとした足取りで歩き始める霧島。

 

「わ、若‥‥」

 

「早く来い‥‥俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!だからよ、止まるんじゃねぇぞ‥‥」

 

しかし、出血多量で等々霧島は力尽きる。

 

霧島暗殺事件‥‥これが鉄十字組と万里小路の抗争の火種となり、両者は互いに血で血を洗う抗争へと発展していくのであった‥‥

 

 

 

 

「うわぁっ、血糊でべったりだ‥‥」

 

撮影が終わり、血糊が着いたスーツを脱ぐシュテル。

 

「あっ、宗谷さんの顔にも血糊が着いちゃったね」

 

シュテルは真白の頬に付着した血糊をハンカチで拭う。

 

「‥‥」

 

シュテルに頬を拭ってもらった真白は顔を真っ赤にしている。

 

その様子を黒木はまるで親の仇を見るようにシュテルを睨んでいた。

 

(えっ?なんで?睨まれているの!?)

 

シュテルとしてはどうして黒木に睨まれるのか分からなかった。

 

こうした小さなトラブルがあったものの、自主映画の撮影は事故もなく順調に進んで行った。

 

胸の部分に晒しを巻き、着物を半裸状態で身に纏い小太刀を手に持つテアと高そうな着物を身に纏い薙刀を手にした万里小路との殺陣はまさに迫真の演技だった。

 

 

晴風クラス以外にも各クラス、遊戯祭へ向けての出し物の準備は着々進んで行った。

 

 

遊戯祭の日程が迫る中、九月になりシュテルは総武高校の文化祭が中止になると言う衝撃的な事実を知ることになる。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。