やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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ギリギリでスーを出すことが出来た‥‥


124話

九月にて横須賀で行われた遊戯祭。

 

横須賀以外にある呉、舞鶴、佐世保の海洋学校の学生、ブルーマーメイド、そして大勢の一般客がこの遊戯祭に来た。

 

それは夏に行われたブルーマーメイドフェスタ以上の規模だった。

 

(確かミケちゃんが他校の生徒の出迎えに行ったんだっけ?)

 

シュテルとしては何故、この後世世界の総武高校の文化祭が中止になってしまったのかその謎が解けないまま今日の遊戯祭を迎えたのだ。

 

明乃たちが他校の生徒たちを出迎えに行き、他校の生徒たちが横須賀に集まると海上スタジアムにてオープニングセレモニーが始まる。

 

全ての学生とは言わないが、こうして横須賀女子、呉、舞鶴、佐世保、自分たち留学組が集まると女子高生の人数はかなりの数になる。

 

(キール校は夏服のデザインが違うが、テアたちヴィルヘルムスハーフェン校は同じデザインなのか‥‥いや、横須賀女子も同じか‥‥)

 

シュテルは横目でチラッと隣に整列するテアたちヴィルヘルムスハーフェン校の生徒を見る。

 

自分たちキール校は春、秋、冬の制服の他に夏用の制服があり、現在シュテルたちキール校の生徒は夏服を着用している。

 

一方テアは、コートは着ていないが身に纏っている制服は見慣れた黒いヴィルヘルムスハーフェン校の士官制服である。

 

九月とは言え、まだまだ残暑が厳しいこの中であんな厚着の制服なんて着ていたら熱中症になる。

 

その為、デザインは変わらないが生地はきっと薄手なのだろう。

 

それは明乃たち横須賀女子の学生も同じであった。

 

オープニングセレモニーで真雪が横須賀に集まった他校の生徒たちを労い、横須賀のドックにて間もなく就航するブルーマーメイドの最新鋭艦 『あずま』 の概要を説明し、翌日の日程等を伝えるとオープニングセレモニーは終わり、横須賀女子の学生と留学組は他校の生徒や一般客をもてなすために自分たちのクラスの出し物が展示、出店している場所へと向かう。

 

当然、シュテルも留学組が出店しているドイツ料理を提供する店舗へ向かった。

 

 

「‥‥もしかして受験に失敗したんでしょうか?」

 

呉、舞鶴、佐世保から来た尾張級の艦長たちは横須賀に所属している尾張級の艦長がどんな人物なのか気になり、制服からもえかがお目当ての艦長だと判断し声をかける。

 

当初は宗谷家の三女が今年横須賀女子に入学した事からこれまでの経緯‥‥長女の真霜、次女の真冬が尾張級の艦長を務めてきたことから、宗谷家の三女が尾張級の艦長かと思ったのだが、クラスメイトから『宗谷』ではなく『知名』と呼ばれていた事から、横須賀女子の尾張級の艦長が宗谷家の三女ではなかったことに呉の宮里は宗谷家の三女である真白が受験に失敗したと思った。

 

「そこまで極端な事ではないだろう‥‥多分」

 

千葉はそんな宮里にツッコミを入れた。

 

そんな中、

 

カチャッ‥‥

 

金属がこすれるような音‥‥

 

鍔鳴りの音がした。

 

宮里たちが振り返るとそこには白を基調としたブレザータイプの制服を身に纏い、腰には金色のサーベルをぶら下げた一人の女子学生が歩いていた。

 

その女子生徒が身に纏っている制服から自分たちの母校でも、横須賀女子の生徒でもない。

 

身に纏っている制服や年齢からブルーマーメイドでもない。

 

よって導き出される結論は、他国からの留学だと判断した宮里たち。

 

 

(お店についたら、制服着替えないとな‥‥)

 

シュテルたち留学組は制服で接客するのではなく、ドイツの民族衣装であるディアンドルにて接客をするので、貸し切った店についたらまずは制服からディアンドルに着替えなければならなかった。

 

そんな中、

 

「あっ、そこの貴女、ちょっといいかしら?」

 

シュテルは誰かに呼び止められた。

 

「はい?」

 

シュテルが振り向くとそこには異なる制服を着た四人の学生たちが居た。

 

「なんでしょう?」

 

(デザインが異なる制服‥‥呉、舞鶴、佐世保の生徒か‥‥)

 

シュテルは彼女たちが着ている制服から他校からの生徒だと判断する。

 

「その制服とサーベル‥‥もしかして、貴女はドイツのキール校の生徒かしら?」

 

「ええ、そうですけど‥‥」

 

「あっ、私は呉海洋女子の宮里十海と申します」

 

「私は舞鶴の阿部亜澄」

 

「私は佐世保の千葉沙千帆って言うんだ。あっ、私を含めて皆、尾張級の艦長なんだ」

 

(佐世保で?千葉‥‥なんか、ややこしいな)

 

シュテルは千葉の名前を聞いて地名を含む名字はややこしいと思った。

 

「あっ、ご丁寧にどうも。私はドイツ・キール校所属、ヒンデンブルク艦長のシュテル・H・ラングレー・碇です」

 

「キール校のヒンデンブルクって言うとあのRat事件を解決に導いたって聞きましたけど‥‥?」

 

「は、はぁ~‥‥まぁ、あの事件には巻き込まれたと言うか、友人たちがその被害に遭って‥‥」

 

あのRat事件では友人であるテアともえかが巻き込まれた事件だったのでシュテルとしては事件解決よりも事件に巻き込まれた友人たちを助けたかったことの方が動機としては強かった。

 

(ん?そう言えば佐世保って‥‥)

 

シュテルは佐世保海洋女子と聞いてあることを思い出した。

 

「あ、あの‥千葉さん」

 

「ん?なに?」

 

「確か佐世保海洋女子にもイタリアのタラント校からの留学生が居ましたよね?」

 

シュテルは日本へ向かう途中、地中海で海賊による足止めをくらい、その最中にイタリアのタラント校の生徒と交流する機会があり、彼女たちは佐世保海洋女子に向かう途中だった。

 

遊戯祭で佐世保海洋女子の生徒たちも来ているのだからもしかしたら、タラント校の生徒たちも来ているかもしれない。

 

「ん?イタリアのタラント校?ああ、あの連中か!!」

 

当然、佐世保海洋女子所属の千葉も知っているみたいだった。

 

「今日の遊戯祭にも来ているんですか?」

 

「あぁ~‥‥」

 

千葉はなんか言いにくそうに頬をかいている。

 

「ん?何かあったんですか?」

 

千葉の態度から何かあったのかは明白だった。

 

「あっ、いや、本当はこの遊戯祭に来る予定だったんだけど‥‥」

 

「だけど?」

 

「‥‥遊戯祭の少し前にあった演習でエンジントラブルを起こして居残りになっちゃって‥‥」

 

「‥‥」

 

地中海でもイタリアのタラント校所属のリンチェ艦長のアンネッタはチェスの腕前はプロ級なのに艦長としてはポンコツで、地中海を航行中に余計な事をしてエンジンをお釈迦にしたことがあった。

 

千葉の話を聞く限り、今回の遊戯祭を欠席する羽目になったリンチェのエンジントラブルにはアンネッタが何らかの形で関係しているのかと思ったシュテルだった。

 

「ん?アンタ、あの連中と知り合いなの?」

 

千葉がシュテルにイタリアのタラント校の生徒たちの事を知っていることからアンネッタたちと知り合いなのかと訊ねてきた。

 

「え、ええ‥‥日本に来る途中、地中海で‥‥」

 

「およ?そうなんだ。何か迷惑とかかけなかった?他の連中は兎も角、あのリンチェの艦長はどうもトラブルメーカーな所があって‥‥」

 

「あぁ~分かります。私も地中海の時も色々とやられましたから‥‥」

 

「アンタもか‥‥」

 

「「‥‥」」

 

やはり、千葉もアンネッタには色々とやらかされたみたいで、シュテルと千葉は見つめ合い‥‥

 

「「はぁ~‥‥」」

 

互いに深いため息をついた。

 

 

「そ、それより確かサーベルはキール校高等部の首席の証と聞きました。すると、貴女は‥‥」

 

宮里が話を変えようとシュテルの腰をぶら下げているサーベルに注目する。

 

「は、はい。高等部二年の首席を務めています」

 

「Rat事件解決の立役者にキール校の首席‥‥こりゃあ、明日の共闘遊戯会‥‥宮里さんの他に強敵出現ってところかな?」

 

阿部がシュテルの成績と実績から明日行われる共闘遊戯会で呉海洋女子の他にシュテルも強敵認定した。

 

「そうですね。明日の共闘遊戯会、楽しみにしていますわ。お互い頑張りましょう」

 

宮里はそう言って微笑むと右手を差し出す。

 

「は、はい」

 

シュテルも右手を差し出し、ギュッと宮里の右手を握った。

 

宮里たち他校の生徒と別れた後、

 

「あっ、碇さーん!!」

 

シュテルはまたもや誰かに声をかけられた。

 

「ん?」

 

シュテルは声がした方を振り向くと、そこにはもえかと同じ白い詰襟タイプの制服を着たみほだった。

 

「あっ、西住さん」

 

当然みほも横須賀女子の学生なのだからこの遊戯祭には参加していた。

 

夏休みの自走式気球の実習以来、互いにあれこれと忙しくて会う機会が無かったが、こうして久しぶりに二人は出会った。

 

「実習以来だね、元気だった?」

 

「うん、ごめんね、色々忙しくて連絡とか取れなくて‥‥」

 

「ううん、私の方も遊戯祭の準備とかで忙しくて連絡できなくてごめんね」

 

「西住さんのクラスはどんな出し物をするの?」

 

「私のクラスはメイド喫茶だよ」

 

「えっ?それって西住さんもメイド服着るの?」

 

「う、うん‥‥恥ずかしいけど‥‥」

 

「えぇーそんなことないよ、きっと似合うって、西住さん可愛いもん」

 

「そ、そうかな?」

 

「そうだよ!!西住さん!!自分に自信をもって!!」

 

「う、うん‥ありがとう‥‥碇さんのクラスは何をやるの?」

 

みほはシュテルに留学組の出し物を訊ねる。

 

「私のクラスは、もう一つのドイツからの留学組と合同でドイツ料理のお店をやるの」

 

シュテルとみほは歩きながら遊戯祭の準備の時の事など世間話をしながら歩いて行く。

 

そんな二人の後ろをモジャモジャ髪の女子生徒が悔しそうな顔をしていた。

 

「うぅ~西住殿~」

 

そう、秋山優花里だった。

 

あのポテト発言以降、たまにみほが自分に向ける視線がキツイ時がある。

 

今、シュテルと話しているみほは満面の笑みを浮かべている。

 

きっと自分が声をかければみほの世界を壊してしまう。

 

そう思った秋山はみほに声をかけるにかけられなかった。

 

 

シュテルが宮里たちに声をかけられている時、クリスとユーリは一足先に留学組が貸し切った店舗へと向かっていた。

 

その最中、

 

「ちょっと、小耳に挟んだけどさ‥‥」

 

「なに?なに?どんな話?」

 

「この遊戯祭に来たブルマーの人ってさぁ、なんでもスカウトを兼ねているって話だよ」

 

「えっ?それって活躍したら卒業した時、お声がかかるってこと?」

 

「ありそうな話ね」

 

晴風クラスの若狭と駿河の話内容を聞いた二人。

 

「‥‥ねぇ、クリス」

 

「ん?なに?」

 

「今の話、本当かな?」

 

「さあ?どうなんだろう?でも、どうしたの?気になるの?」

 

「う、うん‥‥だってさぁ、実績で判断すると、シュテルンって此処に居る学生の中でもトップの実績を誇っているんじゃない?」

 

「あぁ~確かに‥‥まぁ、実績と言うよりも巻き込まれ体質ながらも功を奏したって感じだけどね」

 

確かにRat事件の他にシュテルは中等部時代にはイタリアにおけるマフィアの件、ドーバー海峡での海賊事件、ダートマスでの切り裂き事件、地中海、南シナ海での海賊事件、宗谷真白の誘拐事件など、数々の事件解決の実績がある。

 

これらの実績をブルーマーメイドが知らない筈がない。

 

先程の若狭たちの話がもし、本当ならば真霜たちブルーマーメイドがシュテルにスカウトの話をこの遊戯祭の最中にするのではないだろうか?

 

ユーリとしては一足先にシュテルがブルーマーメイド入りを確実にしてしまうと自分もシュテルと一緒にブルーマーメイドになれるのかと言う不安があった。

 

「だ、大丈夫だよ。まだあの子たちの話が本当だとは限らないんだし‥‥」

 

クリスはユーリに若狭たちの話が真実だとは限らないと慰める。

 

「そ、そうかな?」

 

ユーリの不安をよそにそのシュテルは今、みほと共に歩いていた。

 

「そう言えば、西住さんが所属する学生艦ってどの艦なの?」

 

シュテルはみほに横須賀女子のどの学生艦に所属しているのかを訊ねた。

 

これまでのみほとの交流で、みほがどの艦に所属しているかを知らなかった。

 

しかし、夏休みに自走式気球の操縦実習に参加していた事から飛龍か龍驤の飛行船支援艦に所属しているのかと思ったが、

 

「私は大型直接教育艦の赤城の艦長なの」

 

「えっ?そうなの!?」

 

みほは、飛行船支援艦ではなく、大型直接教育艦の赤城の艦長だと言う。

 

みほが艦長を務める赤城‥‥

 

横須賀女子に所属し、大型直接教育艦となっているが、シュテルがまだ八幡だった頃の世界では、赤城は航空母艦として名を馳せた艦だった。

 

赤城は当初、天城型巡洋戦艦の二番艦として設計・建造された艦であったが、ワシントン軍縮条約にて巡洋戦艦から空母に改装された。

 

一番艦の天城は関東大震災にて船台が崩れそのまま廃艦処分となり、天城の代わりに加賀が空母へと改装された。

 

空母に改装された赤城は当初、三段の甲板を持つ独創的な艦影をしていたが、1935年11月15日、赤城は三段式甲板から一段全通式甲板に変更する大改装が佐世保海軍工廠で開始され1938年8月31日、赤城の改装が完了し、一段全通式空母となる。

 

太平洋戦争時には南雲機動部隊の旗艦となり、真珠湾攻撃を始めとして多くの海戦に参加し、ミッドウェー海戦にて加賀、蒼龍と共にアメリカ軍の急降下爆撃を受け、大破し最後は味方駆逐艦の雷撃処分にて沈没した。

 

しかし、この後世世界では飛行機も存在していなければ、太平洋戦争も起きておらず、更にはワシントン軍縮条約もなかった為、飛行船支援艦に改装されることなく巡洋戦艦として建造された。

 

日露戦争以降、日本が地盤沈下した為か、前世では関東大震災の影響で廃艦処分となった天城もこの世界では処分されずに巡洋戦艦として建造され、赤城同様学生艦として使用されている。

 

「ただ、今は長期のドック入りをして、今月末にドックから戻る予定なの」

 

「あぁ~なるほど‥‥」

 

Rat事件の折も赤城はドック入りをしていた為、みほは歯がゆい思いをした。

 

「それじゃあ、私はこっちだから」

 

「うん。もし時間があったら来てね。色々とサービスするよ」

 

「うん」

 

みほと別れ、シュテルは留学組が貸し切った店舗へ向かう。

 

店に来るとシュテルはバックヤードで制服からディアンドルへと着替える。

 

「黒いディアンドルだから何だかメイド服にも見えるな」

 

着替えた黒いディアンドルは見方によってはメイド服にも見える。

 

その後、開店し接客組は客の案内や外でチラシを配り、シュペーとヒンデンブルの主計科の生徒は厨房で料理を作る。

 

ドイツ料理と生演奏を提供する予定であるが、静かな環境で食事をしたいと言う人もいるだろうから、チラシには店舗の場所の他に演奏する時間も書かれていた。

 

シュテルも演奏の時間までは通常の接客業務をこなしていた。

 

やがて、時刻も昼時の時間になり、

 

「シュテルン、そろそろ着替えて」

 

「あっ、うん」

 

演奏する時、奏者はディアンドルではなく別の服に着替えることになっていた。

 

「ちょっと、ごめんね」

 

「ううん、いいよ」

 

シュテルは他の接客をしている生徒に一声かけた後、再びバックヤードに戻り、今度はディアンドルから黒いシックなワンピースへと着替えた。

 

本当はタキシードみたいなフォーマルな衣装が良かったのだが、クリスやユーリたちクラスメイトたちから、『男装よりも着飾る数少ない機会だから』 と言われ衣装を用意された。

 

「皆様、これより、ヒンデンブルク有志の生演奏をお聴きください」

 

司会役の生徒が店に入っているお客に演奏が始まることを伝える。

 

シュテルたちが店に設置されているステージへと上がると拍手が沸き上がる。

 

(あっ、ミケちゃんたちも来ていたんだ‥‥)

 

その中に明乃と真白の姿もあった。

 

ステージに上がったシュテルたち演奏隊は、クラシックやアニソンのアレンジ曲を演奏した。

 

シュテルがヴァイオリン、ジークがギター、メイリンがピアノを弾き、ボーカルはクリスとユーリが務める。

 

(素人ながらもこうして自分たちの音楽を聴いてもらえるのは、やっぱり嬉しいかな)

 

ヴァイオリンを弾きながら、自分たちが演奏している音楽を聴いてもらえることに嬉しさを感じるシュテル。

 

一方、シュテルたちの演奏を聞いている明乃と真白は、

 

「シューちゃんがヴァイオリンを弾いている姿、初めて見たけど凄く上手だね」

 

「え、ええ‥‥」

 

明乃は少し興奮気味でシュテルたちの演奏を聴き、真白は完全にヴァイオリンを弾いているシュテルに目を奪われていた。

 

(碇艦長、女性としての包容力‥‥そして、何故か感じる男性の様な逞しさ‥‥あの人は真霜姉さん以上の完璧な人だ‥‥)

 

同性ながらも真白が感じる真冬とは異なる力強さ‥‥そうまるで異性の様な感じ‥‥

 

真白の心は大きく揺れた。

 

演奏が終わると溢れんばかりの拍手が店内に響いた。

 

演奏が終わりバックヤードに戻り、ヴァイオリンをケースへと戻す。

 

「ふぅ~‥‥」

 

ヴァイオリンをケースに戻すと一息をつくシュテル。

 

「シュテルン、お疲れ~」

 

「お疲れ~」

 

「みんな~交代で休憩に入っているから、みんなも休憩に入って~」

 

ローザから休憩に入っていいよと言われたので、シュテルは休憩に入る。

 

「あぁ~‥‥着替えるのも面倒だな~‥‥」

 

今から制服に着替えるのも面倒であり、外をディアンドルで回るのも恥ずかしいので、このままワンピース姿で外に出た。

 

みほと約束したので、シュテルはまず、みほのクラスがやっているメイド喫茶に向かった。

 

「いらっしゃいませ~お嬢様~」

 

入店したのが女子だったので、メイドに扮した赤城のクラスメイトたちは『お嬢様』といって出迎える。

 

男子の場合はきっと『ご主人様』なのだろう。

 

「ようこそ、お嬢様」

 

みほがシュテルを接客する。

 

「やっぱり、西住さんメイド服がとても似合っているよ」

 

シュテルはみほのメイド服を褒める。

 

「あ、ありがとう‥‥い、碇艦長もその服、とても似合っているよ」

 

「あぁ~さっき、クラスの出し物で、演奏をしていてね。これはその時の衣装‥‥無精だけど、着替えるのが面倒だったからそのままで来ちゃった」

 

みほは仕事があるので、長々と世間話をする訳にもいかないので、注文を聞いて厨房へと向かう。

 

シュテルが店内を見渡すと、当然みほ以外のクラスメイトもメイド服を着て接客している。

 

(材木座の奴がこの場に居たら狂喜乱舞していただろうな‥‥)

 

前世で川崎の依頼を解決する際、『エンジェル』と名の点く店を調査するにあたって、総武高校周辺に『エンジェル』と名の点く店が二店ヒットした。

 

その一つがメイド喫茶だった。

 

八幡同様、普段から女性に声をかけられることもなかった材木座は仕事上の社交辞令とは言え自分に声をかけてくれるメイドさんに歓喜を出していた。

 

シュテルが見る限り赤城のクラスメイトはレベルの高い女子ばかり‥‥

 

非リア充にとってはパラダイスみたいな空間に違いない。

 

「おまたせしました」

 

シュテルが思考の海に浸っていると注文した品が到着した。

 

注文した品が来たので、シュテルは早速、注文したカフェオレと生クリームが乗ったホットケーキを食べた。

 

「ご馳走様、美味しかったよ」

 

「ありがとう」

 

「それじゃあ、西住さんお仕事頑張ってね」

 

「うん、碇艦長もね」

 

みほのクラスがやっているメイド喫茶を後にしたシュテルは休憩時間が終わるまで遊戯祭・歓迎の部を楽しむことにした。

 

(ブルーマーメイドフェスタもそうだが、この世界の祭りは規模がデカいな‥‥)

 

横須賀の街中を歩いていると、前世でもこれほどの大きな規模の祭りは地元千葉では開かれたことはないのではないかと思う。

 

もっともまだ自分が八幡の頃ではインドア派だったので、仮に今回の遊戯祭と同じ規模の祭りが開催されても行く事はなかっただろう。

 

「ん?」

 

すると、シュテルの視界にタコ焼きの屋台をジッと見つめている一人の女の子が映る。

 

彼女は背中に大きなリュックサックを背負っている。

 

よほど遠くから来たのか?それともコミックマーケットみたいに今回の遊戯祭で沢山の買い物があるのか?

 

シュテルがジッと見ていると、女の子はがま口の財布を高くかかげ、そのままの勢いでがま口を開け、中を確認すると、がま口の中に入っていたのは三十円のみ‥‥

 

これではタコ焼きは買えない。

 

よほどタコ焼きを食べたかったのか、持ち金三十円と言う現実にがっくりとしょげる女の子。

 

上目遣いで同情を誘っているのか、店員も気まずそうだ。

 

「やれやれ」

 

首を振り、シュテルはタコ焼きの屋台に近づき、

 

「すみません、タコ焼き一皿ください」

 

「はいよ」

 

ポケットから財布を取り出し、タコ焼きの料金を差し出し、代わりに出来たてのタコ焼きを受け取ると、

 

「はい、食べる?」

 

女の子にタコ焼きの皿を差し出す。

 

女の子は当初、シュテルの行動が理解できなかったのか、固まっていたが、シュテルが自分にタコ焼きをくれると言う行為を理解したのか、

 

「わぁ~アリガトウ、アリガトウ」

 

と礼を言ってきた。

 

(片言の日本語‥‥この子、日本人じゃないのか?)

 

女の子の日本語はダートマス校のカレンみたいに片言の日本語だった。

 

彼女の片言の日本語を聞いて、女の子が日本人ではないのかと思うシュテル。

 

シュテルの思惑とは裏腹に女の子はタコ焼きを美味しそうに頬張っている。

 

「えっと‥‥貴女、名前は?」

 

「モグモグ‥‥ゴクン‥‥ワタシ、スー!!」

 

(やっぱり、日本人ではなかったか‥‥)

 

名前聞いて、彼女の名前からやはり彼女は日本人ではなかった。

 

「えっと‥‥家族の人は?近くに居るの?」

 

「スーだけ、トオクカラキタ。日本ハジメテ」

 

「えっ?一人で!?」

 

見た感じ、高校生には見えない。

 

しかし、テアみたいに小柄な高校生もいるので、一概にそうとも言い切れない。

 

だが、いくら日本の治安が良いとは言え、女の子一人が海外旅行なんて、何か訳ありのようにも思える。

 

シュテルが残りのタコ焼きを頬張っている女の子こと、スーを見ていると、

 

「あれ?シューちゃん?」

 

「ん?」

 

振り返るとそこには明乃と真白の二人が居た。

 

「ああ、ミケちゃん」

 

「どうしたの?その子?シューちゃんの知り合い?」

 

「あっ、いや、今知り合った?のかな?」

 

「「?」」

 

シュテルとスーの関係を聞き、首を傾げる二人。

 

 

「初めまして、私は岬明乃、ミケって呼んで」

 

「ミケ!!」

 

「こっちはシロちゃん」

 

「シロ!!」

 

「で、こっちはシューちゃん」

 

「シュー!!」

 

明乃はスーに自身と真白、シュテルの紹介をする。

 

「それにしてもスーちゃん日本語上手いね」

 

明乃は片言ながらもスーが日本語を理解し、話せることに感心する。

 

「確かに‥‥お父さんかお母さんが日本の人なの?」

 

シュテルはスーが日本語が堪能なのは、両親のどちらかが日本人なのではないかと思い、スーに聞いてみた。

 

「教わった。パパは日本で働いている」

 

「じゃあ、君は日本に居るお父さんに会いに来たの?」

 

「‥‥」

 

スーが外国から一人で日本に来たのは日本で単身赴任している父親に会いに来たのかと思われたのだが、シュテルの問いにスーは関心が無く、彼女の関心はタコ焼きの屋台の隣にあるやきそばの屋台に目がいっていた。

 

「‥‥買ってあげようか?」

 

三十円では、当然やきそばも買えない。

 

シュテルがスーにやきそばも奢ってやると言うと、彼女はキラキラした目でシュテルを見てきた。

 

「ミケちゃんと宗谷さんも食べる?」

 

(む、宗谷さん‥‥艦長は仇名呼びなのに‥‥)

 

真白は自分は仇名や名前ではなく他人行儀な名字呼びだったことに胸にチクリとした痛みを感じた。

 

「えっ?」

 

「でも‥‥」

 

「気にしなくていいよ」

 

「じゃ、じゃあ‥‥」

 

という事で、四人は近くのベンチでやきそばを食べる。

 

ついさっき、みほのクラスのメイド喫茶でホットケーキを食べたシュテルであるが、こういうお祭りの雰囲気で食べる屋台の食べ物は満腹を忘れさせる魔力がある。

 

よほどお腹が空いていたのかスーはやきそばを僅か三口で食べてしまった。

 

「ココ、イイ所、美味しいモノ沢山アルシ、海が近イ」

 

「スーちゃん、海が好きなんだね」

 

「うん」

 

「遠くから来たって言ってたけど、どこから来たの?泊まる所はあるの?」

 

シュテルがスーにどこから来たのか?今日の宿はあるのかを訊ねる。

 

「ダイジョーブ」

 

スーはどこから来たのかは教えてくれなかったが、今日の宿は確保してあるのか大丈夫だと言う。

 

(まぁ、父親に会いに来たわけだし、夕方にはその父親が迎えにくるのかな?)

 

スーの来日目的から夜は父親の所に泊まるのだろうと判断したシュテル。

 

そんな中、明乃と真白の携帯に一通のメールが届いた。

 

メールの送り主は古庄教官だった。

 




今回、みほが所属するクラスは横須賀女子に所属している赤城と言う設定です。

史実では空母になった赤城ですが、建造当初は巡洋戦艦として設計・建造されており、はいふり世界では飛行機がなく、各校に所属する学生艦からワシントン軍縮条約も恐らくなかったものと推察されます。


【挿絵表示】


建造当初の艦影はかなり簡素な艦影だったので艦影に関しても、金剛級、扶桑級、伊勢級、長門級が何度も改装工事を受けてきたことから、天城級も改装工事を受けた可能性は高いので、艦影が建造当初より異なっています。


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