やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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今回は総武からのゲストが来ます。

原作では顔なじみですが、この世界では初対面となります。

ちょっと彼女に対しての辛口な表現があります。


125話

神奈川県横須賀にて行われている大規模イベント、遊戯祭。

 

この遊戯祭は毎年、横須賀、呉、舞鶴、佐世保がローテーションで行われている大イベントで今年は横須賀が舞台であり、横須賀女子の学生、横須賀女子に留学している留学組が他校の生徒をもてなす。

 

ただ、この遊戯祭に招かれているのは他校の生徒だけではなく、ブルーマーメイド関係者の他に一般からの外来客も来ている。

 

遊戯祭はブルーマーメイドフェスタと異なり横須賀の町全体が会場となるので参加に関して入場制限をしていない為、近隣の県からも沢山の人が横須賀の地に集まる。

 

そんな、遊戯祭に来たとある女子学生が居た‥‥

 

(流石、日本でも随一の海洋学校‥‥文化祭の規模も凄い‥‥)

 

(まぁ、今年の総武高校の文化祭は中止になっちゃいましたけどね‥‥)

 

(まったく高校生初めての文化祭だったのに、実行委員が仕事をサボって中止なんて、本当に進学校なのかな?)

 

女子学生は遊戯祭の規模と母校である総武高校との違いを比較して、今になり入学する高校を間違えた事を後悔した。

 

去年、受験の際に彼女は総武高校を選んだ。

 

彼女が総武高校を選んだのは、自宅から通える距離だった事、共学で男子高校生が居る事だった。

 

だが、入学して初めての年で文化祭にて実行委員が仕事をサボり文化祭が中止となった。

 

これは総武高校設立以来の大失態となった。

 

この大失態を見て、この女子学生は千葉の高校紹介の本や情報において総武高校が進学校と言う事実に疑問を持っていた。

 

(うーん、これだけ大きなお祭りだと色々と目移りしちゃうなぁ~‥‥荷物持ちに戸部先輩でも連れて来ればよかったかな?)

 

しかし、彼女は遊戯祭の雰囲気にあっさりとのまれ総武高校に対する疑問を忘れ、荷物持ちとなるアッシーを連れて来ればよかったと思いながら遊戯祭の会場を歩き始めた。

 

 

 

 

外国からの外来客であるスーと共にタコ焼き、焼きそばを食べていると明乃と真白の携帯に古庄教官からメールが入り、何やら話があるみたいで明乃と真白は古庄教官の下に向かった。

 

二人を見送った後、シュテルはまだ休憩時間があったので、時間内はスーと共に遊戯祭を回ることにした。

 

所持金が三十円しかないスーは日本で働いていると言う父親が来るまで遊戯祭を楽しめないだろうと思ったからだ。

 

それに前世では日本人だったが、今の自分がドイツに籍を置いているドイツ人‥外国人同士、シンパシーみたいなモノを無意識の内に感じたのかもしれない。

 

シュテルはスーと共に屋台を練り歩き、射撃や輪投げなどのゲームをプレイしたり、綿あめを食べた。

 

「シュー!!コレ、雲なの!?」

 

「いや、ザラメって言う砂糖を細かい糸状にしたお菓子だよ」

 

「お菓子?甘いノ?」

 

「ああ」

 

スーは今回、綿あめが初めてだったのか見た目にも味にも興奮していた。

 

その後もスーと共に歩いていると、

 

「ねぇ、いいじゃん。どうせ一人で来たんだろう?」

 

「で、ですから、私、友達と一緒に来ていて待ち合わせを‥‥」

 

(ヤッバ、変な人たちに絡まれちゃったなぁ~‥‥)

 

(咄嗟に待ち合わせをしているなんて嘘ついちゃったし、どうしよぉ~)

 

「そんなんほっとけばいいじゃん」

 

 

「そうそう、俺たちと楽しいことしようぜ」

 

「ん?」

 

「シュー。あの人、困っテイルミタイ」

 

「あぁ~今時、まだあんな手でナンパする奴が居たんだぁ~‥‥成功率ゼロの無理ゲーじゃねぇ?」

 

シュテルが呆れるような目で絡まれている少女と男たちを見ていると、

 

「シュー!!あの男達キット人攫いだ!!」

 

「えっ?いや、違うんじゃないかな?」

 

シュテルは質の悪いナンパだと思っているのだが、スーは人攫いだと言い出す。

 

流石に人攫いは無いだろうとシュテルは否定する。

 

「絶対にソウダッテ!!スーの国、ヨクアル!!早クタスケナイトあの人、何処かに売ラレチャウ!!」

 

それでもスーは人攫いだと主張する。

 

「なにそれ!?スーの故郷、怖っ!?」

 

スーの発言から彼女の母国の治安の悪さを垣間見た。

 

(まさか、スーの故郷ってロア〇プラなのか?)

 

そして、シュテルはスーの故郷がタイ南部にある世界中の悪という悪が集まった港町出身なのかとさえ思えた。

 

シュテルがスーの故郷にドン引きしている間、スーは件のナンパ現場に向かうと、

 

「コラ!!その人カラ離レロ!!」

 

大声で注意した。

 

「あん?」

 

「なんだ?このガキ?」

 

男たちはスーをギロッと睨む。

 

(あぁ~もう、仕方ない)

 

このまま黙っている訳にはいかないのでシュテルもその場に向かうと、

 

「こ、小町ちゃん。お待たせ~」

 

と、先程女子学生が誰かと待ち合わせをしていたと言っていたので、それを利用してさりげなく彼女をこの場から連れ出そうとした。

 

(待ち合わせしている人には悪いが、彼女をこのままこの場に残すのは確かにマズいな‥‥ナンパ男たちが人攫いではなくとも‥‥)

 

そして、咄嗟に出た偽名に前世の妹の名前を使った。

 

シュテルはもしかしたら、本当に彼女が誰かとこの場で待ち合わせをしているのかもしれないが、あのままナンパ男たちの前に彼女を置いておくのはマズいと思ったのだ。

 

スーが言うように人攫いではないだろうが、ガラの悪そうなナンパ男たちを見る限り、ホイホイついて行けば女性ならばどうなるかなんて性教育を受けた者ならば分かる。

 

後は彼女をこの場から連れ出すだけだったのだが、

 

「コマチ?誰ですか?お米?」

 

何と彼女は空気を読まずに聞き返してきた。

 

(ちょっ、おまっ!?空気を読めよ!!)

 

「お米じゃないよ!!」

 

女子学生が空気を読まない発言からシュテルの計画が瓦解した。

 

「なんだ?お前?」

 

「いきなりなんなんですかねぇー?」

 

「俺らの邪魔をすると痛い目に遭うぞ、コラ!」

 

「なに?それとも君、俺たちと一緒に遊びたいの~?」

 

ナンパ男たちは不満そうな顔をする者、

 

下衆な笑みを浮かべている者など反応は様々だ。

 

「すいません、私はこの子がいつまでたっても戻ってこないものなんで探しに来たんですよ」

 

「あん?でも、彼女はお前の事を知らねぇみたいだが?」

 

ナンパ男は先程のシュテルと彼女の反応を見逃さずその矛盾を突いてきた。

 

「人の話は最後まで聞きなさい。私と彼女は離れて暮らしていたから、初対面っぽくなっているんだよ。ほら、この子なんて見る限り日本人っぽくないでしょう?」

 

シュテルはスーを引き合いに出す。

 

「ほら、早く行こう」

 

多少、流れが違ったが彼女をこの場から連れ出せれば結果オーライなので、このまま彼女を連れ出そうとする。

 

「そ、そうだったね。もう~久しぶりに会うからすっかり忘れちゃったよぉ~」

 

女子学生は、今度は空気を読んでシュテルに近づく。

 

少なくとも目の前にいるナンパ男たちよりもスーと一緒に居る同性のシュテルの方がまだ信用が置けたみたいだ。

 

(あざとい‥‥)

 

シュテルはこの女子学生の態度に対して演技とは言え、あざとさを感じた。

 

「おい、ちょっと待てよ。こっちの要件はまだ終わってねぇぞ」

 

「そうそう」

 

ナンパ男たちはまだ諦めていない様子で絡んでくる。

 

「こっちは貴方たちに用はないから」

 

シュテルは少しでも早くこの場からスーとこの女子学生を連れ出そうとする。

 

「んだと!?こらぁ!?」

 

「こっちが下手に出ていれば調子に乗りやがって!!」

 

(どこが下手だよ?)

 

「はぁ~‥‥あのなぁ、あまりそう言う態度は控えた方がいいぞ」

 

シュテルはナンパ男たちに最後通告をするが、

 

「何言ってんだ?お前?」

 

「ビビって苦し紛れの言い訳か?」

 

「‥‥こういう大規模イベントには当然、警備員が配置されるし、その中には私服の警備員もいるんだよ‥‥ほら、お前さんたちの後ろに居る屈強そうな私服の男たち‥‥アレ、私服警備員じゃないのか?」

 

「「えっ?」」

 

ナンパ男たちがシュテルの指摘に対して後ろを振り返ると、そこにいたのは着ぐるみのクマとトラだった。

 

着ぐるみたちは小さな子供たちに風船を配っていた。

 

(いまだっ!?)

 

シュテルはスーと女子学生の手を取るとその場から一目散に走りだす。

 

「あっ!?テメェ!!」

 

「だましやがったな!?」

 

ナンパ男たちがようやく気づいたみたいだが、シュテルは人混みの中に紛れた。

 

(えっ?なんで私、こんなにもドキドキしているんだろう?相手は同じ女の人なのに‥‥?)

 

ナンパ男たちから逃げている間、女子学生は何故かこの現状に対して胸がドキドキする感覚があった。

 

彼女には自分の手を引くこの女の人が一瞬男の人に見えた。

 

 

「ふぅ~‥‥ここまで来れば大丈夫かな?」

 

シュテルは周囲を確認し、あのナンパ男たちが後を追いかけていないことを確認する。

 

「ハァ‥‥ハァ‥‥走るなら‥‥ハァ‥‥一声かけて‥‥くださいよぉ~‥‥」

 

女子学生は息を切らしながら抗議してくる。

 

女子学生は息を切らしているが、スーの方は全然息を切らしていない。

 

どうみてもシュテルや女子学生よりも年下にしか見えないのに体力だけはあるようだ。

 

これも彼女の国の環境が影響しているのだろうか?

 

「でもね、こうでもしないと上手く逃げ切れなかったかもしれないじゃない。それで、なんであんな男たちに絡まれていたの?」

 

シュテルは女子学生に何故、男たちに絡まれていた理由を訊ねる。

 

「あれは、あの人たちが一方的に絡んできたんですよぉ~」

 

「へぇ~そうなの‥‥てっきり、貴女があの男たちに声をかけたんだと思った」

 

「ちょっと、私の事をどんな人だと思っているんですか!?」

 

女子学生は頬をぷくぅ~と膨らませる。

 

「いや、さっきの態度の中で貴女からはあざとさを感じたから」

 

「あ、あざと‥‥」

 

シュテルにあざといと言われ顔を引きつらせる女子学生。

 

「貴女、普段の学校生活でもそんな態度で過ごしているの?」

 

「わ、私は一色いろはって言う名前があるんです!!」

 

女子学生こと、一色いろははシュテルに自身の名を名乗る。

 

シュテルが前世で修学旅行後の生徒会選挙の依頼まで生きていたら、いろはの顔を見て何かしらのリアクションをしていただろうが、修学旅行後~生徒会選挙前に命を絶ったので、シュテルはいろはの顔を見ても何のリアクションは取らなかったが、もし、八幡の時にいろはを見てもきっと『あざとい』と言っていただろう。

 

「あぁ~そう‥‥」

 

「それで?貴女はどこの誰なんですか?」

 

いろはは今度シュテルに名前を聞いてきた。

 

「私は、ドイツ・キール校のシュテル・H・ラングレー・碇」

 

「スーはスーって言ウノ!!」

 

シュテルはいろはに名を名乗り、ついでにスーも名乗る。

 

「それで、一色さんは普段でもあんなあざとい態度なの?」

 

「いいじゃないですか!?私だってぴちぴちの女子高生なんだし、若さと容姿で男子にも夢を与えられるし、私は私で宿題や掃除当番を代わってもらえるし、お互いにwin-winじゃないですか」

 

「‥‥」

 

いろはの主張にシュテルは呆れ、

 

「イロハ!!自分の仕事ハ、チャント自分デヤラナイトイケナイゾ!!」

 

と、スーはいろはに注意する。

 

「一色さん、学校で同性の友達居ないだろう‥‥?」

 

と、シュテルは哀れんだ目でいろはを見る。

 

「な、なんですか?その目は!?そんな目で私を見ないでくださいよ!?そ、それに同性の友達ぐらい‥‥い、居ますよ」

 

いろはは最初の部分は声を荒げながら言うが、友達の部分には何故かシュテルから目を逸らし口ごもるように言う。

 

「そう思うならそのあざとさを潜めろ。それと、友人が居ない事が全然隠せていないぞ」

 

「そもそも、友人の定義ってなんですか?‥‥どういった存在が友人と言うカテゴリーなんですか?」

 

「ああ、もういい。それ、絶対に友人が居ない人の言い訳だわ」

 

(この人、顔は良いのに、あのあざとい性格のせいで小町みたいなハイブリッドボッチなんだろうな‥‥)

 

先程の言動からいろはが同じ学年からの同性からの受けは決してよくないだろうと判断した。

 

(それに友人の定義って、雪ノ下と同じことを言っている時点でボッチ決定だな)

 

かつて、自分が八幡だった頃、初めて奉仕部の部室に連れて行かれた時、雪ノ下と言い合いになり、彼女は八幡に友人が居ない事を指摘し、逆に八幡も雪ノ下に友人が居るのかを問うと、彼女は八幡に『友人の定義』を聞いていた。

 

八幡はその時点で、彼女も自分と同じボッチなのだと察した。

 

雪ノ下は確かに胸を除けば彼女が言う通り美少女であった。

 

しかし、家柄のせいなのか人一倍プライドが高く、自分が言動こそが絶対に正しいと思い込んでいる節があった。

 

その性格が彼女を孤独にしていた。

 

だが、その原因は元々小学生の頃、葉山が原因でクラスメイトたちからいじめを受けた事がそもそもの発端だったのかもしれない。

 

「ゆ、友人くらい、実習になれば嫌でも出来ますよぉ~」

 

「実習?」

 

「はい。私、総武高校の海洋学科の学生なんです」

 

「総武高校‥‥」

 

いろはが通っている学校を聞いてシュテルは固まる。

 

(一色いろはなんて、奴は知らないな‥‥少なくとも2-Fには居なかったな‥‥)

 

八幡の頃はあまりクラスメイトや同級生たちとの交流を持たなかったので、いろはが実は自分の一個下であることも知らないシュテル。

 

「今は友人が出来なくても、実習で海に出れば嫌でも友人の一人や二人ぐらい‥‥」

 

シュテルが固まっている間にもいろはは実習さえ始まれば自分にも友人は出来ると高を括っているみたいであるが、

 

「無理だよ」

 

シュテルはそれを否定する。

 

「ど、どうしてですか!?」

 

「それじゃあ、一つ問題」

 

「問題?」

 

「バラバラで纏まりの無い人たちを団結するにはどうすればいいでしょうか?」

 

「えっ?」

 

シュテルの問題に首を傾げるいろは。

 

「ウーン‥‥」

 

スーも考え込んでいる。

 

「‥‥うーん‥‥分かりません」

 

「スーモワカンナイ」

 

「それで、答えは何ですか?そもそも、そんな方法があるんですか?」

 

「答えは共通の敵を作る事‥‥一色さん。貴女、これまで色んな男たちに手を出してきたんじゃない?そして、その中には彼女持ちの男もいた筈‥‥」

 

「‥‥」

 

いろはは気まずそうに顔をそむける。

 

反対にスーは意味が分かっていない様子。

 

「その男の彼女がもし、一色さんのクラスに居たとしたら?‥‥貴女の男をとっかえひっかえしている噂がクラス女子たちに知られているとしたら?‥‥そんな状況で海へ実習なんて行っても友人なんて出来ると思う?それどころか、命の危険もあるんじゃないかな?」

 

「い、命の危険って‥‥何ですか?ソレ、脅しているんですか?それとも口説いているんですか?ごめんなさい。ほんのついさっきはときめきかけたけど冷静になるとやっぱり無理です。私は同性愛者ではないので無理です。ごめんなさい」

 

「オォ~イロハ、モノスゴイ早口」

 

「‥‥よく、その長いセリフを噛みもせずに息切れを起こさずに言えたね。それに私だって貴女のようなあざとい人はごめんだよ」

 

八幡時代にこのような事を言われたら呆れて何も言えなかっただろうが、今のシュテルでは、これまでの環境と艦長と言う立場から物事はきっぱりと言えるようになっていた。

 

「それで命の危険ってどういうことですか?」

 

「実習は学生艦で教官は乗艦せずにクラスメイトたちのみで行うんでしょう?」

 

「はい」

 

「‥‥それだと実習中に貴女がうっかり海に転落するかもしれないね」

 

「えっ?私、そんな間抜けなじゃありませんよ」

 

「貴女が間抜けだろうと関係ない‥‥クラスメイトたちが貴女を襲って海に放り投げ、その後、証拠を捏造し、殺人ではなく事故死として片付ける事だって可能なんだよ。教官が居ない学生艦ではね」

 

「‥‥」

 

シュテルの言葉を聞いて自分の事を嫌っているクラスメイトならばあるいは‥‥なんて事がいろはの脳裏を過ぎる。

 

雪ノ下の場合も同じことが言えるが、いろはと雪ノ下の違いは実家の財力と権力の差である。

 

雪ノ下の実家の雪ノ下建設はこの世界において、千葉県では絶大な権力を誇っている。

 

そんな家の一人娘である雪ノ下の身に何かあれば、例え白でも雪ノ下家から黒にされてしまう恐れがあるためクラスメイトは雪ノ下に手を出すに出せない状況だった。

 

(まぁ、こういう状況も考えられるから、学生だけでの実習には思うところがあるんだよね)

 

シュテルは教官が別の艦に乗り、学生のみでの演習には色々な危険が含まれていると危惧していた。

 

しかし、一艦それぞれに教官を乗せるには人員の問題もあるので、現状は難しい状況だった。

 

「海洋学科のクラスに在籍しているのならもっと周りとの協調性を大事にしないと‥‥私の友人に『海の仲間は家族』を信念にしている子がいるけど、貴女の場合、同性のクラスメイトからは家族としても仲間としても見られていないでしょう?」

 

「うぅ‥‥」

 

(どうやら図星だったみたいだな‥‥)

 

最早ぐぅの音も出ないいろは。

 

「まぁ、まだ実習まで時間があるみたいだし、もし自分の行いに対して罪悪感を感じているのであれば、今からでもやり直すのは遅くはないんじゃない?」

 

「は、はい‥‥」

 

シュテルの言葉に完全にしょげているいろは。

 

「‥‥」

 

そんないろはの姿を見てシュテルはいろがは総武高校に通っている点やこうして接点を持ったことで見捨てるのも目覚めが悪かった。

 

「はいコレ」

 

「えっ?」

 

シュテルは自分のスマホを渡す。

 

ディスプレイにはシュテルの電話番号とメールアドレスが表示されている。

 

「こうして会ったのも何かの縁だし、何か困った事があれば相談には乗るよ」

 

いろはは一瞬呆然とした顔でいたが、直ぐに正気に戻ると、

 

「何ですか傷心に付け込んで口説いているんですかごめんなさいまだ無理です」

 

と、一礼して早口で言う。

 

「だから、違うって‥‥それとそう言う所を直しなさいよ」

 

もし、この現場をシュテルを慕う者たちが居たら、いろははきっとトラウマ級のO・H

A・NA・SHIをされていたことだろう。

 

いろはも口ではシュテルの親切を断っているように見えるが、やはり同性の知り合いが出来た事や自分の現状に手を差し伸べてくれた事に感謝しているのか、自分のスマホにシュテルの電話番号とメールアドレスを登録した。

 

その後、いろははシュテルのスマホに自分のスマホの電話番号が書かれたメールが送られた。

 

「これが私のメアドと電番です」

 

「確認した。ありがとう」

 

シュテルとしては、総武高校に通っているいろはとこうして交流を持つことが出来たのは瓢箪から駒が出るようなモノだった。

 

いろはからこの世界に居ると思っているもう一人の自分の事を聞こうと思っていたからだ。

 

「そう言えば、一つ聞いても良いかな?」

 

「なんですか?」

 

「今年の総武高校の文化祭が中止になったってホームページで見たんだけど、原因は知っている?」

 

シュテルはいろはから総武高校の文化祭が中止になった原因を訊ねる。

 

「ああ、今年の文化祭ですね。私も初めての高校の文化祭だったんで、楽しみにしていたんですけど、実行委員の人たちがほとんどサボって準備に間に合わなかったみたいです」

 

(やっぱり、この世界でも相模のサボり宣言があったのか‥‥)

 

実行委員のサボりの原因は前世同様相模のサボり宣言が発端になっていたことは同じであったが、結末が前世とこの世界では180度異なる。

 

「今年の文化祭が初めてって事は一色さん、高校一年なんだ‥‥」

 

「はいそうです。そう言えば、貴女は何年なんですか?」

 

「二年」

 

「えっ!?嘘!?先輩だったんですか!?すみません、私タメ口を聞いちゃって‥‥」

 

「そこまで驚く事?でもまぁ、気にしてないしいいよ」

 

「そうですか」

 

「それで、一色さんは実行委員じゃなかったんだよね?」

 

「はい。違いましたよ。と、言っても教室でもほとんどやることがなかったんですけどね」

 

まぁ、今のいろはの現状ではクラスから浮いている存在であるので、クラスメイトからは頼られていなかったのだろう。

 

むしろ、実行委員を押し付けられなかったことが不思議である。

 

「そっか‥‥」

 

いろはが一年年下で文化祭の実行委員ではなかったことで実行委員の中に八幡が居なかったのかを確認しづらかった。

 

いきなり、『2-Fに比企谷八幡と言う男子生徒が居るかを確かめてくれ』 なんてことは頼みにくかった。

 

いろはに頼むとしてももう少し、彼女と信頼関係を築く必要があった。

 

 

いろはと連絡先を交換したシュテルは再びスーを連れて、遊戯祭を回るが、そろそろ休憩時間も終わる頃になった。

 

「それじゃあ、スー、私はこの後、戻らないといけないからここでお別れだ」

 

「ワカッタ、シュー!!アリガトウ!!」

 

「コレ、少ないけど」

 

そこでシュテルはスーに五千円札を渡し、シュテルは店に戻った。

 

流石に持ち金三十円で父親が来るまでは足りないだろうからだ。

 

店に戻ると、店内の明かりは薄暗くなっており、ステージ上のクリスにスポットライトが当てられている。

 

ステージにはクリスがギターを弾きながら歌を歌い始める。

 

「~♪~~♪~~~♪」

 

クリスが歌い始めてからお客の何人かが目に涙を浮かべていた。

 

クリスの歌声を聞いているとシュテルの脳裏にも自分が八幡だった頃の光景がフラッシュバックしてきた。

 

(えっ?ど、どうして‥‥?あの頃の光景が‥‥?)

 

シュテルの目にも自然と涙が浮かんでくる。

 

クリスが歌い終わると、店内は一瞬静寂に包まれるも、お客からは拍手された。

 

バックヤードに戻ると、

 

「あっ、シュテルン、お帰り!!休憩どうだった?楽しかった?」

 

「あぁ、うん、色々あった‥‥クリス、さっきの歌‥‥」

 

「ああ、ちょっと夜のバーみたいな感じにしてみたんだ」

 

「いや、そうじゃなくて‥‥」

 

「ん?」

 

「‥‥」

 

クリスに行ったところでさっきのは自分が見たのはきっと幻覚だったので、シュテルは口をつぐんだ。

 

「さあ、次はシュテルの演奏だよ。頑張って!!」

 

「この湿っている感じの空気の中で演奏して盛り上げるって結構ハードなんじゃないか?」

 

「シュテルンなら大丈夫だって」

 

根拠のないクリスの言葉に押されてシュテルはヴァイオリンを持ち、ステージに立つのであった。

 

 




後半クリスが歌っていた歌は、作者のイメージでは劇場版銀河鉄道999の挿入歌、かおりくみこ さんの やさしくしないで です。

本編でも歌を聴いていた酒場の客、ホステスは皆泣いており、鉄郎も脳裏に母との最後の思い出である雪原が浮かんでいたので、シュテルは前世の辛い思い出が脳裏にフラッシュバックしました。


劇場版はいふりの冒頭の遊戯祭オープニングセレモニーにて、真雪が説明していたブルーマーメイドに導入予定の超甲巡 あずま です。


【挿絵表示】


手持ちの完成予想図では煙突とカタパルトの間には何もなかったのですが、劇場版の画像では煙突とカタパルトの間には構造物がありました。

さらに水上機が無い世界にもかかわらず、あずま にはカタパルトが設置されていました。

恐らく、あずまのカタパルトは水上機ではなく、スキッパーを射出するためのモノだと推察され、この推察から煙突の後ろの構造物はスキッパーの格納庫だと思われます。
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