やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

127 / 161
あけましておめでとうございます。

今年最初の投稿となります。

まだ不定期な投稿が続きますが、今年もよろしくお願いします。


126話

 

 

遊戯祭の最中、クラスの出し物を一通り見て回った明乃と真白はシュテルと共に出会った異国の少女、スーと時間を共にしていると、突如古庄教官からの呼び出しのメールが届いた。

 

明乃と真白は後ろ髪を引かれる思いながらも古庄教官からの呼び出しを無視する訳にもいかなかったので、二人は校舎に向かった。

 

横須賀女子海洋学校の校長室で明乃と真白は古庄教官と対面する形でソファに座る。

 

「ごめんなさいね、歓迎祭の最中に呼び出して」

 

古庄教官は遊戯祭の中、こうしてわざわざ呼び出してしまった事に対して謝罪する。

 

「いえ」

 

「あの‥如何いったお話でしょう?」

 

古庄教官がわざわざ自分たちを呼び出したのだから、世間話をする訳ではなく、何か重要な要件があるからに違いない。

 

しかし、その要件がなんなのか当然二人は知る筈もないので、真白は何故自分たちが呼ばれたのか古庄教官に問う。

 

「宗谷真白さん‥‥貴女、艦長になる気はある?」

 

「えっ?」

 

「‥‥」

 

呼び出された理由‥‥それは、真白へ晴風副長から他艦の艦長への昇進の話だった。

 

当然、その話を聞いた真白は鳩が豆鉄砲を食ったように驚き、明乃は呆然とする。

 

「実は比叡の艦長が病気療養で休学する事になって、それで今回、真白さんには比叡の艦長に就かないかって話なのよ」

 

真白の晴風副長から比叡艦長昇進話は、現在の比叡艦長が病気療養で休学するので、その穴埋めを真白にしてもらいたいという事だった。

 

オープニングセレモニーの時、古庄教官が真雪に言っていた『例の件』と言うのはこの事だった。

 

真白に艦長として就いてもらいたい比叡はあのRat事件に巻き込まれ、艦長が病気になり療養‥‥

 

去年のブルーマーメイドフェスタではエンジン不良を起こす。

 

もう、比叡に疫病神が取りついているかのように思える不幸だ。

 

そんな不運が続いている比叡であるが、

 

「あの‥‥何故私が艦長に?」

 

何故自分が艦長に推薦されたのか古庄教官に訊ねる真白。

 

彼女自身気づいていないが、不運な人生を歩んできた真白と不運な事が続いている比叡‥‥意外と似合っているような気もする。

 

それはともかく、真白自身優等生であるが他にも優秀な人材はこの横須賀女子にも沢山いる。

 

それこそ、駿河の副長を比叡の艦長に昇進させることも可能だ。

 

ただ、この話が入学初期に来た場合、真白はすぐに飛びついただろう。

 

しかし、晴風副長としてあの航海を明乃たちと共に経験した今の真白にとって、当初は苦手と思っていた晴風クラスは騒がしいながらも今では頼れるクラスメイトであり、仲間であるので複雑な心境となっていた。

 

「比叡の艦長、副長を含め、複数の生徒から嘆願が出ているのよ。是非、貴女を艦長にと‥‥」

 

自分に比叡の新艦長に推薦してきたのは、意外にも休学する事になる比叡の艦長や比叡の副長、さらには比叡を含む同級生からの嘆願が来ていたと言うのだ。

 

「えっ!?でも私は‥‥」

 

晴風クラス以外だと、明石、間宮のクラスメイト、時津風、天津風の艦長と副長、そしてドイツからの留学組くらいの面識しかないにもかかわらず、意外にも真白は人気があるという事だ。

 

それか、校長である宗谷真雪の娘と言うブランド目当てなのかもしれない。

 

「貴女、入学試験では実力を発揮できなかったみたいだけど、定期考査は学内トップレベルの成績よ。おまけにあの状況で一ヵ月、晴風の副長をやりきった実績もある。急な話で申し訳ないけど、なるべく早めに返事を貰えると助かります」

 

入学試験では解答欄を間違えてしまい晴風副長と言う成績となった真白であるが、それ以外のテストでは好成績を叩きだしていた真白。

 

もし、入学試験でもこの調子ならば晴風クラスではなく、駿河の副長あたりになっていたかもしれない。

 

「シロちゃんが他の艦の艦長さんに‥‥」

 

明乃も真白同様、複雑な心境だった。

 

友人の艦長昇進の話は本来ならばめでたいことなのだが、真白が比叡の艦長になるという事は、真白が晴風から居なくなる事を意味する。

 

そう思うと、明乃は素直に喜べなかった。

 

恐らく黒木がこの場に居たら明乃と同じ心境になっていただろう。

 

「‥‥」

 

一方、真白本人は神妙な顔つきで黙っていた。

 

上の姉二人と比べると自分は航洋艦の艦長ではなく副長‥‥

 

三姉妹の中で一番下の成績だ。

 

駿河ではないにしろ、大型直接教育艦の艦長ならば、姉たちと並ぶ立場だ。

 

しかし、比叡クラスとはほとんど面識がなく未知の環境‥‥

 

そんな環境下で自分は明乃やシュテルのように艦長として振る舞えるか?

 

そんな不安が真白にはあった。

 

 

 

 

「ふぅ~‥‥」

 

「お疲れ、シュテルン」

 

「お疲れ‥‥」

 

真白が今後の自分の進退に困惑している中、ドイツからの留学組の店は無事に閉店時間を迎えた。

 

来店してくれたお客さんたちはドイツ料理に舌鼓を打ち、シュテルたち演奏組の演奏も楽しんでもらえたみたいで、特に問題もなく終わることが出来た。

 

片付けが終わり、あとは個々で夕食を摂り明日の共闘遊戯祭に備えるだけとなるが、シュテルは休憩時間に出会った異国の少女スーの事が気になった。

 

「ん?シュテルン、どこ行くの?」

 

「ちょっと、気になることがあってね」

 

ユーリにお茶を濁すような言葉を残し、シュテルはスーと出会った海岸へと向かった。

 

「ん?魚?」

 

海岸線の遊歩道を歩いていると、シュテルの鼻腔にきな臭い匂いと魚を焼く匂いがしてきた。

 

シュテルが周囲を見回ると、公園の一角から黒い煙が立ち上がっている。

 

「煙?えっ?火事!?」

 

シュテルが急いで煙が立っている場所へと向かうと、そこに居たのは焚火をしながら魚を焼いているスーの姿だった。

 

「わっ!?ちょっと!!スー!!」

 

「シュー!!一緒にこれ食べ‥‥」

 

「ちょっと、何やっているの!?」

 

シュテルは慌ててスーの下へと駆け寄った。

 

 

 

 

シュテルがスーの下に駆け寄る少し前、

 

明乃と真白も海岸線の遊歩道を歩いていた。

 

「シロちゃ‥‥」

 

「艦長!」

 

「「あっ‥‥」」

 

明乃と真白は互いに声をかけようとして重なってしまい、気まずそうに言葉をつぐんでしまう。

 

「艦長、どうぞ」

 

「ううん、シロちゃんからどうぞ」

 

先程の古庄教官からの真白の比叡移籍についてお互いに気持ちを言おうとしたが、二人は言葉が出ない。

 

明乃は、本当に真白はこのまま比叡艦長の話を受けてしまうのか?

 

真白は、自分に比叡艦長の昇進話について、どう思っているのだろうか?

 

互いに疑心暗鬼に近い感情となっている中、

 

「あっ‥‥」

 

「うん?」

 

明乃が何かを見つけて指さす。

 

真白もつられて明乃が指さした方向を見る。

 

すると、その方向から黒い煙が立ち上がっているのが見えた。

 

「もしかして火事!?」

 

「た、大変!?」

 

明乃と真白は黒い煙が立つ方向へと向かった。

 

そして、やってくると、

 

「わっ!?ちょっと!!スー!!」

 

「シュー!!一緒にこれ食べ‥‥」

 

「ちょっと、何やっているの!?」

 

シュテルが慌てて先程出会った異国の少女、スーの下に走り向かっている姿があった。

 

「シューちゃん!?」

 

「碇艦長!?」

 

「あっ、ミケちゃん!!宗谷さん!!丁度よかった!!消火手伝って!!」

 

「「は、はい!!」」

 

明乃と真白もシュテルと共に急いで焚火の消火を手伝った。

 

三人がどうしてこんなにも慌てているのかスーには分からなかった。

 

「此処は、焚火禁止だ!!」

 

真白はスーにこの場は焚火禁止と書かれた看板を指して怒る。

 

真白に怒られて、スーは涙目になりしまいには泣いてしまう。

 

泣き出してしまうスーを見て明乃はオロオロ、真白はやってしまったという顔になる。

 

「えっと‥‥もしかしてスーは漢字が読めないの?」

 

シュテルがスーの頭を撫でながら漢字が読めなかったのかと訊ねる。

 

「スー。カンジ、ムリ‥‥」

 

スーは日本語を理解することが出来、話すことは出来るが、漢字の読み書きは出来なかった。

 

「スーちゃん、ここで何しているの?」

 

明乃が焚火をして、此処で何をするつもりだったのかを訊ねる。

 

「スー、ココデ晩ゴ飯食ベル」

 

如何やらスーは、この公園で夕食を摂るつもりだったみたいだ。

 

(此処でご飯食べるって、スーの親父は何しているんだ?)

 

まだ迎えに来ていないスーの父親に対してまだ迎えに来ていないのかとちょっとイラっとする。

 

「ホテルは取ってないのか?」

 

真白はスーにホテル等の宿を確保していなかったのかと訊ねる。

 

「シテナイ!!」

 

「「えっ?」」

 

スーの返答に唖然とする明乃と真白。

 

「それじゃあ、お父さんの下宿先に泊まるの?」

 

シュテルはスーの父親がこの後、彼女を迎えに来るのだから、父親が日本で確保しているアパートかマンションに帰るのかと思ったが、彼女の返答は驚愕する内容だった。

 

「今日、ココニ泊ル!!」

 

「「「えっ!?」」」

 

なんと、スーは此処で野宿すると言うのだ。

 

「泊るところないのか?」

 

スーの野宿発言に突っ込む真白。

 

「だったら、私たちの寮に泊まっていけば良いよ!」

 

それに対して、明乃は自分たちが住んでいる学生寮に泊まるようスーに薦めるが、

 

「NO!!ココガイイ!!海ガヨクミエルカラ!!」

 

スーはあくまでもこの場で野宿すると言う。

 

「しかし此処で、一人で泊まると言うのは、流石に‥‥」

 

真白はいくら日本でも未成年の野宿は危ないのではないかと危惧する。

 

「じゃあ、私も此処で寝るよ!」

 

すると、明乃はスーと共に此処で野宿すると言う。

 

「「えええー!!」」

 

明乃の提案に驚くシュテルと真白。

 

「ホント?ウレシイ!!」

 

スーは明乃の提案を聞いて喜んでいる。

 

しかし、流石に二人だけこの場に泊まらせる訳にはいかない。

 

「はぁ~だとすると寝具が心もとないなぁ‥‥」

 

「目覚まし時計やクラスメイトにも電話をしないとね」

 

真白とシュテルも明乃とスーと共にこの場に野宿することにした。

 

「えっ?シロちゃん?シューちゃん?」

 

「明け方は冷え込むし、全員分の寝袋持ってきます。」

 

「あとは上掛けか毛布かな?」

 

「ありがとう!!」

 

真白とシュテルの心遣いに明乃は感謝していた。

 

「それじゃあ、私は全員分の寝具を確保してきますね」

 

「じゃあ、私たちはテントを張ろうか?」

 

「そうだね」

 

真白が全員分の寝具の確保に向かっている中、この場に残ったシュテルたちは宿となるべくテントの準備をする。

 

「よし、こんなもんだろう」

 

「完成!!」

 

明乃もシュテルも意外とアウトドア派なので、テントはすぐに建てられた。

 

しかし、まだ真白は帰ってきていない。

 

「シューちゃん」

 

「ん?」

 

「私はシロちゃんを待っているから、今の内にスーちゃんをお風呂に連れて行ってあげて」

 

「お風呂?」

 

「うん、ウチのクラスの機関科の人たちがお風呂屋さんをやっているから」

 

「分かった」

 

明乃はテントで寝具を持ってくる真白を待つことになり、シュテルはスーを連れて晴風クラスの機関科がやっているというお風呂屋さんに行くことになった。

 

おそらくスーは母国から日本に来る間、お風呂には入っていないだろうから寝る前にはちゃんと洗わないと衛生的に色々とマズい。

 

横須賀女子各クラスの出し物や出店は日没時にほとんどの展示が終了していたが、晴風クラス機関科のお風呂屋は日没後も営業をしていた。

 

やはり、お風呂屋という事で、日中他校の生徒や外来客をもてなしていた横須賀女子の生徒らは仕事が終わった後の入浴を楽しみにしており、晴風クラス機関科のメンバーもそれを見越して日没後もこうして営業を続けていた。

 

シュテルやスーにとっても彼女たちの心配りは有り難い。

 

「へぇ~‥‥結構本格的な作りになっているなぁ~‥‥」

 

シュテルは晴風クラス機関科の出し物であるお風呂屋を見て思わず感嘆の声をもらす。

 

晴風クラス機関科のお風呂屋は災害時における自衛隊の仮設風呂とほぼ同規模のモノだった。

 

(そう言えば、大西洋で潜水艦クラスの人を出迎えた時、ヒンデンブルクの後部甲板で似たような事をやったな‥‥)

 

日本に来る前、大西洋にいる時、同じ学校の潜水艦クラスに補給や会合した時、ヒンデンブルクの後部甲板では防水シートや添え木で簡易的な大風呂を作り、潜水艦クラスの生徒を入れていた。

 

男子校で使用されている伊号潜と比べるとUボートは一回り小型でそんな狭い空間では浴室は元よりシャワー室もない。

 

公海上で雨が降る時、甲板に出て身体を洗う以外の方法しかない。

 

その雨だって自然相手なので自分たちが望んでいる時に雨が降るとは限らない。

 

その為、ヒンデンブルクとの会合時は潜水艦クラスの生徒にとって確実に温かいお湯で身体を洗える機会なのだ。

 

(潜水艦クラスの生徒との会合の時、クリスは人が変わったように指揮を執っていたなぁ~‥‥)

 

潜水艦クラスの生徒との会合の際、潜水艦クラスの生徒は何日もお風呂に入っていないので当然、体臭が酷かった。

 

その臭いが気に入らないのか、クリスは潜水艦クラスの生徒との会合日は普段の人柄と異なり、鬼気とした感じで大風呂の用意を指揮していた。

 

「シュードウシタノ?」

 

「あっ、いや、なんでもないよ」

 

晴風クラス機関科のお風呂屋を見て大西洋での出来事を振り返っていたシュテルにスーが声をかける。

 

スーの声を聞いて現実に戻るシュテルは、スーの手を繋いだままお風呂屋に入った。

 

「オォォー」

 

脱衣所で服を脱ぎ、浴室に来るとスーはその光景に目を輝かせている。

 

「す、スー、身体にタオルを巻かないと」

 

シュテルは慌ててスーに声をかける。

 

その手にはバスタオルがあった。

 

スーは身体にタオルを巻くことなく、全裸のまま浴室に居た。

 

まぁ、浴室に居るのは当然同性なので問題はないのだが、一応女子なのだからそうした羞恥心を持った方が良い。

 

「湯船に入る前に身体と頭を洗わないとね」

 

シュテルはスーの身体にバスタオルを巻いてシャワーの前にあるバスチェアに座らせ備え付けのシャンプーでスーの頭を洗い始める。

 

「目は閉じていてね」

 

「ウン」

 

シュテルがワシャワシャとスーの髪を洗いながら、

 

「痒い所とかない?」

 

と、訊ねる。

 

「大丈夫」

 

スーの髪を洗い、シャワーでシャンプーの泡を洗い落とす。

 

シャンプーの泡が全て洗い落とされると、

 

「‥‥」 プルプル

 

「わっ‥‥」

 

スーは首を勢いよく左右に振り、髪についた水滴を落とし始める。

 

(犬かよっ!?)

 

スーの行為に犬を連想したシュテル。

 

前世最後の夏休み、由比ヶ浜から犬を預かった時、お風呂に入れたのだが、その際由比ヶ浜家の愛犬、サブレは体を思いっきり、振り水滴を自分の毛皮から振り落とした。

 

サブレの体を洗っていた八幡は当然びしょ濡れになった。

 

スーの行動を見て思わずその時の事を思い出すシュテルだった。

 

頭を洗った後はタオルに備え付けのボディーソープを着け、スーの背中を洗う。

 

頭や身体を洗っている中、スーは大人しくバスチェアに座っていた。

 

「じゃあ、私も頭と身体を洗うけど、その間湯船で大人しくしていてね。広いからって泳いじゃダメだよ」

 

「ワカッタ!!」

 

シュテルはスーの頭と身体を先に洗い、次は自分の番なのだが、自分の頭と身体を洗い終えるまでスーをバスチェアに座らせたまま待たせるのも思う所があるので、スーには先に湯船に入ってもらうことにした。

 

ただ、簡易的な風呂とは言え、湯船もそれなりの大きさがある。

 

スーの事だから先に注意をいれておかないと、湯船で泳いでしまいそうだ。

 

それは他の入浴客にも迷惑がかかる。

 

シュテルが先に注意をいれた為かスーは湯船に入り、物珍しそうに見渡している。

 

シュテルは自分の身体には弾痕があるので周囲の入浴客の目線に注意しながらも頭と身体を洗わなければならなかった。

 

やがて、頭と身体を洗ったシュテルが湯船に入ってくる。

 

勿論弾痕を隠す為、身体にはバスタオルを巻いている。

 

(入浴のマナーには反するかもしれないけど、流石に周囲の入浴客に弾痕を見せる訳にはいかないし、他の人も巻いている人もいるし大丈夫だよね?)

 

スーは湯船の中ではバスタオルを巻かず、全裸のままで入っているが、シュテルの他に何人かの入浴客は身体にバスタオルを巻いている。

 

「ふぅ~」

 

休憩時間があったとは言え、半日は立ったままであり、身体は疲れ切っていた。

 

そんな中で全身を包み込む温かい湯は疲れていた身体を癒してくれる。

 

思わずふやけた声が出てしまう。

 

「‥‥」

 

「ん?」

 

そんな中、辺りを見渡していたスーがシュテルの近くまで来ると、シュテルの胸を凝視していた。

 

「どうしたの?スー」

 

シュテルはスーが自分の胸を凝視している事は気づかず、スーの行動が理解できずに首を傾げている。

 

「‥‥シューノオッパイ、ミケヤシロヨリモオッキクテ真っ白デ綺麗~」

 

「えっ?おっぱい!?」

 

何故、スーがシュテルの事を凝視しているのかを知ったシュテルは思わず声が裏返る。

 

そんなシュテルにお構いなしにスーはシュテルの胸に手を置く。

 

「ちょっ、スー!?」

 

当然、シュテルはスーの行動に驚く。

 

バスタオルの上からスーに胸を揉まれるシュテル。

 

「いやっ、ちょっ、やめ‥‥スー‥‥」

 

周囲の入浴客に知られないように声を抑えるが、スーはシュテルの胸を揉む。

 

シュテルにとっては拷問に近い時間であったが、我慢した。

 

「‥‥お風呂に入ったはずなのになんか物凄く疲れた」

 

脱衣所で着替えていると、

 

「あれ?艦長?」

 

「ん?あっ、ジーク」

 

そこへ、お風呂に入りに来たジークと出会う。

 

「ジークは今からお風呂?」

 

「はい。艦長はもうお風呂を済ましたんですか?」

 

「うん、ついさっきね‥‥あっ、そうだ。ジーク」

 

「ん?」

 

「みんなに伝言を頼めるかな?」

 

「なんでしょう?」

 

「私、今日はこの子と晴風の艦長と副長の三人で泊まるから」

 

「えっ?」

 

シュテルの外泊宣言にジークは着替えていた手が止まる。

 

「それじゃあ、よろしくね」

 

シュテルはそんなジークを尻目にスーの手を繋いでお風呂屋を後にした。

 

 

テントが張ってある公園に戻ると既に真白も寝具を持って戻っていた。

 

真白は寝具の他に歯ブラシと歯磨き粉も用意していたので、公園の水道場で歯磨きをした後、テントの中に用意された寝袋の中に入る。

並びはシュテル 真白 スー 明乃となっている。

 

「お父さんやお母さんと一緒に来れば良かったのに‥‥」

 

寝袋に入り、横になっていると明乃がスーに遊戯祭に来るなら両親と一緒に来ればよかったのにと言うが、

 

「ママ病気、ズット病院二居ル‥‥パパ、コノ国ノ何処二居ルノカ分ラナイ」

 

「「「えっ?」」」

 

スーの返答に驚く三人。

 

「お父さんに招待されたんじゃないの?」

 

シュテルはスーの父親が遊戯祭の事を教えて旅費を渡したのだと思った。

 

「パパト連絡ツカナイ‥‥スーハ、パパノ事捜シテイル」

 

スーが日本に来た目的の一つが行方不明の父親を捜す事だった。

 

「そうだったのか‥‥」

 

それを聞いた真白は、納得し、

 

「私にできる事が有ったら言って、何でも手伝うよ!」

 

明乃は、自分にできる事が有るなら手伝うとスーに言う。

 

(スーの父親が旅費を渡した訳じゃなく、母親は母国の病院に入院中‥‥スーの話を聞く限り、決して彼女の家は裕福とは言えないみたいだ‥‥それじゃあ、一体誰が彼女に旅費を渡したんだ?それにパスポートの発行にだってお金はかかるし‥‥)

 

一方、シュテルはスーが日本へ来るための旅費やパスポートの発行料金を誰が出したのか気になった。

 

「ありがとう!」

 

スーは明乃の行為に感謝する。

 

「じゃあ、スーは、ずっと一人で暮らしているのか?」

 

両親の事を聞いて、真白はスーがずっと一人で暮らしているのかと思ったが、

 

「NO 兄弟、沢山居ル。皆仲ヨシ!」

 

スー本人が言うには、故郷には兄弟が沢山居るらしい。

 

「そうか‥‥」

 

スーが一人じゃない事に真白は、一安心する。

 

ちょっと湿っぽい空気となったが、その後話題を変えていく内にテント内に熱がこもり始める。

 

「ちょっと暑くなってきたね‥‥」

 

「スー、もうちょっと下がれない?」

 

「ン?ナニガ?」

 

「小っちゃいんだから」

 

「ハァ?モウ、ギリギリダヨ」

 

「何が?」

 

「シロ、モットムコウデショウ?」

 

「いや、これどう見ても半分でしょう?」

 

「真ン中ジャナイデショウ」

 

「艦長、艦長、もうちょっと向こうに行けませんか?」

 

「こっちももう限界だよ」

 

「コレ、寝返リガウテナイ」

 

「寝返り何て打ったら大変だよ。寝返り打つときは艦長から順番ですよ」

 

「私とシューちゃんは端でさぁ~‥‥それよりもう早く寝よう」

 

「チョット、ウゴカナイデ」

 

「手も降ろせないの?ここ‥‥腕組んで寝るのか?」

 

「シロ、ワタシモ腕組ンデネテイル」

 

「あれ?シューちゃん?さっきから黙っているけど、どうしたの?起きている?」

 

「‥‥」

 

「‥‥シュー、シンデルノ?」

 

「いや、寝ているだけだから」

 

明乃と真白、スーはどこぞのバラエティー番組のトークの内容みたいな感じになる中、シュテルは沈黙を貫いていた。

 

真白が確認すると、シュテルは既に寝ている。

 

やがて、スーも眠気が襲って来たみたいで寝てしまう。

 

「寝入っちゃったね、スーちゃん」

 

「ええ‥‥」

 

スーが寝入っちゃった後、明乃と真白は特に話すこともなく両者の間に沈黙した時間が流れる。

 

そんな中、真白はこうして並んで寝ていると幼少期に体験したある出来事を思い出す。

 

それは、真白が小学生低学年の頃の事‥‥

 

「今日は三人で寝るもん!」

 

ある夜、真白が突然、二人の姉と一緒に寝ると言い出した。

 

そこで、真冬と真霜は真白の部屋に布団を敷いて三人、川の字で寝ることにした。

 

「ハハ、困った奴だな、シロは‥‥」

 

我儘を言う真白に真冬は、笑っていたが、

 

「貴方がホラー映画なんて見せるからでしょう」

 

真霜が呆れたように言う。

 

真白が姉二人と一緒に寝ようと言い出したのは真冬が真白にホラー映画を見せたのが原因みたいだ。

 

「見せてねぇよ。シロがいきなり部屋に入ってくるから」

 

しかし、真冬が言うには真白に故意にホラー映画を見せた訳ではなく、真冬が自室でホラー映画を見ていると、そこに真白が来てしまったらしい。

 

「うぅ~ついてないよぉ~」

 

自分がつくづく不幸体質な事を嘆く真白。

 

「おいおい、あんなもんにビビってたらブルーマーメイドには、ましてや艦長には、なれねぇぞ」

 

そんな真白に真冬がホラー映画如きにビビってたらブルーマーメイド…艦長には、なれないと忠告にするが、

 

「なるもん!」 

 

真白は反論するかのように艦長になると言い張る。

 

「フフ‥‥真白は頑張り屋さんだから、きっと良い艦長になれるわ!」

 

真霜は、真白を褒める。

 

「やったあ!」

 

真霜に褒められて真白は嬉しく思った。

 

「ふぅ~」

 

昔の事をつい思い出してしまい、真白は貯め息を吐く。

 

あの時、自分は艦長になると言ったが、今は艦長ではなく晴風の副長と言う地位にいる。

 

しかし、意外な形で自分に艦長になれるかもしれない話が舞い込んだ。

 

確かに艦長にもブルーマーメイドにもなりたい。

 

だがその反面、真白は今の晴風の環境からも離れたくはないと言う思いもある。

 

古庄教官からはなるべく早くに結論を出して欲しいと言われている。

 

最低でもこの遊戯祭が終わるまでにはその結論を出さなければならない。

 

真白が決めかねていると、

 

「ン‥‥ン‥‥」

 

「ん?」

 

寝ているスーが真白の腕を握り、

 

「‥‥ママ」

 

スーは『ママ』と一言言う。

 

「ふぇっ!?」

 

スーの寝言を聞いた真白は思わず驚愕する。

 

「フフ、夢を見ているのかも?」

 

「そ、そうなのか?」

 

「きっとママの事を思い出しているんだよ。シロちゃん、頼りになるから」

 

明乃は、スーが真白の腕を握りながら、故郷の母親の事を思い出していると思う。

 

更に真白は頼りになる人物だと評する。

 

「私は、そんな‥‥」

 

それに対して真白は、否定するが

 

「シロちゃん、本当に頼りになるから、でも‥‥」

 

明乃は本当に真白が頼りになると確信していた。

 

「あっ‥‥」

 

「私たちシロちゃんが居なくても、しっかりやらなきゃね!」

 

「あっ‥‥」

 

明乃は真白の能力と人格ならば十分に艦長が務まると判断し、きっと比叡の艦長になると思っていた。

 

「ホントはね、私‥‥」

 

明乃が、真白に何を言ったのかは分からない。

 

「え?」

 

「おやすみ‥‥」

 

明乃が何かを呟き、真白は硬直する。

 

その後、明乃はそそくさと真白から顔を背け眠りにつき、二人は何も言えずに眠りについた。

 

真白にとってはモヤモヤとした思いを抱いたまま、遊戯祭の一日目は終わった‥‥

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。