やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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130話

図上演習競技が始まった頃、ユーリに絡まれていたシュテルは何とかその場から逃れ、もえかからのメールを確認すると、もえかとの待ち合わせ場所が書かれていた。

 

シュテルはもえかとの待ち合わせ場所に向かう前にあるクラスメイトを呼び出し、彼女と共にもえかとの待ち合わせ場所へと向かった。

 

「お待たせ、もかちゃん」

 

「あっ、シューちゃん‥‥っと‥‥」

 

もえかはシュテルの他にもう一人の女子生徒に気づく。

 

「あっ、この子は私のクラスの同級生の‥‥」

 

「初めまして、ヒンデンブルク記録係のメイリン・ホークです」

 

そう、シュテルはもえかとの待ち合わせ場所にメイリンを連れてきたのだ。

 

「えっと‥それで、艦長。私はどうして呼ばれたのでしょう?」

 

メイリン自身、何故シュテルに呼ばれたのか分からず、呼ばれた理由をシュテルに訊ねてくる。

 

「とりあえず、場所を変えよう。そこで、事情を話すから」

 

「は、はぁ‥‥」

 

三人は校舎内にあるコンピューター室へと向かった。

 

「シューちゃん、どうしてコンピューター室なの?」

 

「艦長、何が起こっているんですか?」

 

もえかも何故、コンピューター室に来たのか分からず首を傾げている。

 

「まずは、メイリン‥‥実は、さっき‥‥」

 

シュテルはメイリンに先程、校舎内ですれ違った真霜たちブルーマーメイドの隊員たちの様子に違和感を覚え、もえかと共に何か大きな事件が起きているのではないかと推測した事を伝える。

 

「は、はぁ~‥‥それでどうしてコンピューター室に?」

 

「だからこそ、メイリンを連れてきたんだよ」

 

「「?」」

 

「メイリン‥今から、海上安全整備局のメインコンピューターにハッキングをかけて」

 

「「えっ!?」」

 

シュテルの発言にメイリンはもちろんの事、もえかも目が点になるくらいに唖然としている。

 

「しゅ、シューちゃん、ハッキングって‥‥なにもそこまでしなくても‥‥」

 

「そ、そうですよ、艦長」

 

「でも、メイリンならそれぐらいは出来るでしょう?」

 

「で、出来ますけど‥‥」

 

(出来るんだ‥‥)

 

シュテルの問いにメイリンは平然と答え、もえかは心の中で平然とハッキングが出来るメイリンの腕にやや引いていた。

 

もえかとしては真霜たちブルーマーメイド隊員たちや真雪の話を盗聴でもして確認をしようとしていたのだが、まさか海上安全整備局のコンピューターにハッキングをかけて何が起きているのかを確認しようとするなんて、かなり大胆な事だった。

 

「何事もなければ取り越し苦労なんだけど、もし、何か重大な事件が起きていたら‥‥あのRat事件みたいなことが起きたら大変だからね」

 

「わ、分かりました」

 

メイリンは制服のポケットからUSBを取り出し、コンピューター室のパソコンを起動させる。

 

「これは自作ですけど、ハッキングの痕跡を残さないソフトが入っています」

 

(常にそんな危ないソフトが入ったUSBを持ち歩いているの!?)

 

もえかは顔には出さなかったけど、メイリンが、ハッキングソフトが入っているUSBを常に持ち歩いている事にもちょっと引いた。

 

しかし、それだからこそ、シュテルはメイリンをこの場に連れてきたのだ。

 

メイリンはUSBをコネクトに差し込み、起動したパソコンのキーボードを操作し始める。

 

画面には自分たちでは理解できない英文字や数字の羅列が高速で表示され、やがてお目当てのページが表示された。

 

「こ、これはっ!?」

 

「うーん‥‥」

 

「まさか、こんなことが起きているなんて‥‥」

 

三人は海上安全整備局が現在、秘匿している情報を見て思わず顔が強張った。

 

「これは確かにブルーマーメイドの人たちの様子が変だったのも頷けるよ」

 

パソコンの画面には、先日完成した海上プラント施設がテロリストに占拠されたという内容が書かれていた。

 

しかもプラントを占拠したテロリストたちは、そのプラントとモスボールされたアメリカの海上要塞とドッキングさせて自給自足が可能な海上テロリストの拠点に改造しようとしていた。

 

「ですが、これだけの事件です。すでにブルーマーメイドの方たちも知っているなら、ブルーマーメイドとホワイトドルフィンの人たちで十分に対処できるのではないでしょうか?」

 

真霜たちブルーマーメイドの隊員たちが知っているならば、当然この情報はホワイトドルフィンにも伝えられている。

 

ブルーマーメイドとホワイトドルフィンがこの事件の対処にあたるのであれば、自分たち学生は関係ないのではないだろうか?

 

「当然、犯人たちもこれだけの事件を起こした連中だ‥‥ブルーマーメイドとホワイトドルフィンが事件の対処に動くことは分かっている‥‥ならばこそ、プラントと海上要塞のドッキングが終わるまで時間稼ぎのためになんらかの妨害工作はしてくるんじゃないかな?」

 

「私もそう思います」

 

シュテルはこの情報だけだが、今回の事件の犯人たちはこの事件の他になんらかの妨害工作も仕込んでいる可能性を指摘し、もえかも同じ意見だった。

 

この作戦はプラントと海上要塞がドッキングしてからではないと意味がない。

 

プラントも海上要塞もその大きさ故に海上を移動することが可能でもその速度は早いとは言えない。

 

ならば、テロリストたちはドッキングするまでなんとしてでもブルーマーメイドとホワイトドルフィンの介入を阻止しなければならない。

 

となると、テロリストたちがブルーマーメイドとホワイトドルフィンになんらかの妨害工作を仕掛けているのは不思議ではない。

 

「もし、犯人たちの妨害工作で、ブルーマーメイドとホワイトドルフィンが早期に対処できなければ、これはかなりマズい‥‥念のため、私たち学生の艦でも対処できるように作戦を練っておこう」

 

「はい」

 

「わかりました」

 

「とりあえず、メイリン。プラントと海上要塞周辺の海図をコピーしてくれ」

 

「了解」

 

シュテルはこの事件が起きている海域の海図を用意させた。

 

 

 

 

その頃、外では‥‥

 

スーは競技に使用した廃棄フロートを曳航準備しているタグボートに接近し、ゴムボートからタグボートへと乗り移るとタグボートのブリッジへと向かう。

 

このタグボートは午前の部における内火艇の障害物レースに使用した廃棄フロートを移動させるために用意されていたのだが、まだ予定時刻ではなかったのかブリッジには人の姿はなかった。

 

タグボートの操船席に座るとスーは備えてある無線機のスイッチをいれる。

 

「HOW‘s the float‘s engine? (フロートの機関は?)」

 

そして、スーは無線機に向かって流暢な英語で質問する。

 

明乃たちが居たらきっとスーの英語力を見てビックリしただろう。

 

『Already standby (いつでも動かせるぜ)』

 

すると、無線機のスピーカーから男の声が聴こえてきた。

 

男も流暢な英語で答えている。

 

「SO set her to three knots and stop engine once the float makes headway After I stop the tugboat have the float move dead slow astern (じゃあ速力は3ノットで、行き足が付いたら停止。私がタグボートでを止めたらフロートも少し後進をかけて止めて)」

 

『Aye (わかった)』

 

「then let‘s begin (じゃあ、始めよう)」

 

スーは誰かと無線でやり取りした後、泊まっていたタグボートを操船し始めた。

 

故郷で水先案内人をやっているスーにとってタグボートの操船なんて自転車に乗る事と変わらなかったのかもしれない。

 

タグボートは大きさが小さく見えるが、それでも何万トンという巨大な船を引っ張るほどの強い力がある。

 

そのため、一隻のタグボートの力でも廃棄されたフロートはゆっくりだが確実に動き始めた。

 

 

スーがタグボートを操船している間にも横須賀女子の大講堂では、図上演習が進んで行き演習はいよいよ決勝となる。

 

決勝まで上り詰めたのは真白と明乃という晴風のクラスメイト同士‥‥

 

今年の遊戯祭の図上演習はまさに大穴万馬券が出た時の競馬並みの予想外な展開となっていた。

 

まさか、今年入学した同じ艦の新入生たちが経験豊かな呉、舞鶴、佐世保の先輩方を破り、図上演習の決勝戦まで上り詰めるなんて誰が予想しただろうか?

 

「それでは図上演習競技の決勝戦を開始します!」

 

「シロちゃんは残ると思っていたよ!」

 

「私も艦長が残ると信じていました」

 

明乃も真白も互いに戦いたい相手がいる‥‥

 

その信念から年上に先輩方相手にも決して緊張に呑まれることなく順調に駒を進めてきたのだ。

 

二人はタッチパネルを操作して陣形、コマンドを入力していく。

 

サイコロが振られ、先攻、後攻が決まると先攻は明乃となり、明乃の戦艦が砲撃を行い、真白の駆逐艦を砲撃し、駆逐艦を撃沈する。

 

その後も二人はタッチパネルにコマンドを入力していく。

 

一年生‥‥同じクラスメイト同士の戦いなのに明乃も真白も真剣な顔で一歩も譲らない。

 

「うちの艦長と副長で決勝戦とはなぁ‥‥」

 

同じクラスメイトなので、どっちを応援していいのか分からない柳原は腕を組みながら渋い顔をする。

 

「でも、あの二人はまるで、こうなる事を分かっていたみたいな雰囲気だね」

 

山下は、二人がこうなる事を分かっていたと察する。

 

それもその筈、エントリー前に真白が明乃に『戦ってくれ』と言った展開がまさに目の前で繰り広げられている。

 

「いや、まさか‥そんな‥‥」

 

内田は信じられないと思う。

 

そりゃあ、経験豊かな先輩方が大勢居た中、こうして決勝戦まで勝ち進んできたのだからまさにスポコンな漫画・アニメのような展開だ。

 

「で、どっちが勝つぞな?」

 

勝田が内田と山下にどっちが勝つのか予想を訊ねる。

 

明乃と真白‥‥

 

どちらが勝つのか?

 

経験は同じだが、

 

学術で言えば真白が上‥‥

 

運では明乃が上‥‥

 

どちらが勝ってもおかしくはない状況‥‥

 

「これで予想してみる」

 

すると、八木がいつも使用しているダウジング棒を取り出し、どっちが勝つかを予想すると言う。

 

「ハハッ‥‥」

 

八木と付き合いが長い宇田もこうなると予想は出来た筈なのだが、乾いた笑みを浮かべながら呆れる。

 

「宗谷真白も知名もえか、岬明乃と並んで指揮官の素養を十分に備えていますね」

 

職員席から古庄教官が隣に座る真雪に声をかける。

 

やはり、真白も宗谷家の娘‥‥

 

宗谷の優秀な血をちゃんと引き継いでいた。

 

ただ、真白の場合、明乃、もえか以上に不幸体質なだけであり、その不幸体質がなければ十分に明乃、もえかと並ぶ優秀な人材であることは間違いなかった。

 

 

大講堂で図上演習競技の決勝戦が行われている時、コンピューター室では、

 

「予想されるドッキングポイントはココ‥‥」

 

「そして、これがプラントの予想針路‥‥こっちが海上要塞の予想針路‥‥」

 

海図にはプラントと海上要塞が辿るであろうコースが描かれている。

 

(もし、私自身がこの事件の犯人ならば、どうやって時間を稼ぐ‥‥)

 

プラントと海上要塞のドッキングまでの時間稼ぎの方法を考えるシュテル。

 

(ブルーマーメイドとホワイトドルフィンと同じ規模の艦隊を用意する?)

 

(いや、一介のテロリストにそれだけの規模の艦隊を用意できるとは思えない‥‥)

 

(この世界では飛行機がないから、航空機による航空攻撃は無い‥‥ならば、潜水艦による狼群戦術‥‥)

 

(いや、狼群戦術並みの潜水艦を揃えなくても数隻だけでも十分足止めは出来るか‥‥)

 

日本に向かう途中、地中海にて廃棄予定のUボートが奪われ、武装商船の攻撃と共に雷撃攻撃を受け、あの航海で東舞鶴海洋学校の伊201による雷撃も受けた事があるので、潜水艦からの攻撃も十分に考えられる。

 

海中のどこから魚雷が迫ってくるのか分からない不安と恐怖。

 

速力を出して振り切りたいところでもどこに潜んでいるのか分からないのではプラント、海上要塞への攻撃中に海中から魚雷攻撃を受ける確率が高い。

 

故にどうしても潜水艦の排除は必要となる。

 

テロリストたちにとってブルーマーメイドとホワイトドルフィン艦隊の殲滅が目的ではなく、あくまでもプラントと海上要塞のドッキングが終わるまで時間を稼げればそれで良いのだから‥‥

 

(あとは機雷敷設による足止め‥‥)

 

同じくあの時の航海では航路封鎖を目論んだ古い機雷で一晩足止めをくらったこともあり、午前中の第一競技である内火艇レースで機雷は足止めの障害物として使用された。

 

(潜水艦による狼群戦術か奇襲‥それと機雷を敷設しての航路封鎖による足止め‥‥今、思い当たる足止め方法はこれぐらいか‥‥)

 

シュテルはテロリストたちがブルーマーメイドとホワイトドルフィンの艦隊を足止めする方法が潜水艦による狼群戦術または奇襲攻撃と機雷敷設かと推測したが、まさかテロリストたちがあの様な方法で足止めをしてくるとはこの時は思いもよらなかった。

 

「万が一、ブルーマーメイドとホワイトドルフィンがテロリストたちの妨害工作で足止めをされた場合、学生艦でプラントと海上要塞‥この二つを対処しなければならないと思う」

 

「うん、そうだね‥‥シューちゃんはどんな方法で、テロリストたちは足止めをしてくると思う?」

 

「考えてみたけど、テロリストの規模から、ブルーマーメイドとホワイトドルフィンと同等の艦隊を用意するのは不可能」

 

「うん、そうだろうね」

 

「次に思いついたのが、潜水艦による狼群戦術か魚雷による奇襲攻撃と機雷敷設による航路封鎖‥‥この二つかな?」

 

「プラントと海上要塞を占拠するぐらいの規模のテロリストなら確かにそれぐらいの潜水艦と機雷ぐらいは用意できるかもね‥‥」

 

「潜水艦にしても狼群戦術とは言わず、数隻でも用意できればブルーマーメイドとホワイトドルフィンの艦隊の足を鈍らせることぐらいは出来る」

 

「テロリストたちの目的はあくまでもプラントと海上要塞をドッキングさせるためだもんね」

 

「ああ、無理をしてでもブルーマーメイドとホワイトドルフィンの艦隊を殲滅する必要はないからね」

 

もえかもシュテル同様、テロリストたちの足止め方法が潜水艦と機雷だと納得した。

 

「いずれにせよ、次はブルーマーメイドとホワイトドルフィンの艦隊がテロリストたちの妨害で出撃出来ず、私たち学生艦を使用する場合の作戦だね」

 

「うん。本来ならばこれから立てる作戦が実行されないことが一番良いんだけどね」

 

続いてもえかとシュテルは万が一、ブルーマーメイドとホワイトドルフィンで対処できずに学生艦で対処する場合となった時の作戦をたてた。

 

シュテルの言う通り、本来ならば自分たちがこれから立てる作戦が実行されないことが一番安全であり、遊戯祭が無事に終わる事態なのだが、テロリストたちの妨害が考えられる中、作戦を立案しないわけにはいかなかった。

 

「この作戦を立てるにあたって、前提としてブルーマーメイドとホワイトドルフィンの艦艇が使用不可能という事を含んで考えないとね」

 

「そうだね」

 

二人はブルーマーメイドとホワイトドルフィンの艦艇が使用不可能であることを前提として作戦を立案し始める。

 

「プラントと海上要塞‥共に動きは遅いけど、プラントの方が海上要塞よりも若干、速度が速いか‥‥」

 

「海上要塞の方はアメリカの情報ではモスボール扱いされているから武装は全部取り除かれているって公表されているけど‥‥」

 

「いや、その情報はあまり当てには出来ないな」

 

シュテルは海上要塞が非武装だという情報に対して懐疑的だった。

 

「どうして?」

 

「自給自足が出来るプラントをドッキングさせて難攻不落の海上要塞にするわけだから、武装がなければ簡単にブルーマーメイドとホワイトドルフィンに鎮圧されてしまう。アメリカは確かに海上要塞の武装を撤去したかもしれないけど、テロリストたちが自前で用意したかもしれないし、『撤去しました』と言いながらすぐに要塞として使用できるようにアメリカが要塞内に秘匿しているかもしれない」

 

そもそも、モスボールは兵器などの機器を予備役にすること‥‥再使用を考慮して極力劣化を防ぐため、開口部を防水加工し保管することであり、必要に応じて現役復帰したり、海外に売却されたり、あるいは実艦標的として海没処分となる。

 

海没処分はともかく、共産圏である中華人民共和国のアジア共産化、北朝鮮による戦争の脅威を防ぐためにアメリカが即座に対応できるように海上要塞には武器が秘匿されている可能性は十分にあった。

 

もし、要塞に武器が秘匿されている場合、海上要塞を占拠しているテロリストたちがそれを見つけないはずがない。

 

例え、アメリカが言う通り海上要塞の武装を撤去したとしてもテロリストたち自前で武器を用意している可能性は十分にあり、砲台など砲があれば構造上簡単に設置できる筈だ。

 

「となると、海上要塞の方は武装されていると考えた方がいいね」

 

「ああ」

 

「プラントの方は構造上、砲台を設置することが出来ない‥‥」

 

「でも、プラントには技術者さんや研究員さんたちが居た筈‥‥」

 

「テロリストたちは彼らを人質にしているから、プラントの制圧に関しては、海上からの艦砲射撃は最後の手段で出来ればプラントの機関を止めて人質を救出するのが目的だから、白兵戦に持ち込んで内部から制圧しなければならないな‥‥」

 

(‥‥もしかして、人質になっている技師の中にスーの父親がいるかもしれないな)

 

シュテルは昨日出会った異国の少女のスー‥‥

 

彼女が言うには、スーの父親は日本に単身赴任している技術者‥‥

 

もしかしたら、スーの父親はテロリストたちに占拠されているあのプラントで人質になっている技師の中にいるのではないかという推測が脳裏を過ぎった。

 

「それでも、牽制としてある程度の火力と速力は必要だね」

 

「うん‥‥メイリン」

 

「はい」

 

「遊戯祭に参加して航行可能な横須賀、呉、舞鶴、佐世保の学生艦の一覧表を見せて」

 

「は、はい‥‥こちらです。どうぞ」

 

「ありがとう」

 

メイリンが今回の遊戯祭に参加している学校の学生艦の一覧表を印刷し、シュテルに手渡す。

 

「「うーん‥‥」」

 

シュテルともえかは一覧表に目を通す。

 

「ある程度の火力と速力がある艦となると‥‥」

 

「やっぱり、金剛級かな?」

 

「だろうね‥‥舞鶴の榛名、佐世保の霧島、横須賀の比叡、そして、ドイツのシュペー‥‥このほかに速力がある巡洋艦の戦隊を組んでプラント奪還の艦隊を組んで‥‥」

 

「海上要塞の方はやっぱり‥‥」

 

「ああ、武装もしているだろうから火力が高く、足の速い艦を必然的に組むとなると‥‥」

 

「尾張級‥‥」

 

「それと、私のヒンデンブルクだね」

 

「指揮権についてはどうする?」

 

「ん?」

 

「横須賀女子だけで対応するならともかく、今は遊戯祭で他の学校の先輩たちもいるけど‥‥」

 

もえかの言う通り、Rat事件の時は被害にあったのが横須賀女子の学生艦とドイツからの留学生艦だったので、シュテルと晴風クラスが中心に動くことが出来た。

 

しかし、今回の事件に関しては学校の垣根を越えるほどの規模の事件であり、横須賀女子の学生艦のみでは解決に導けない。

 

他校の学生艦の協力がどうしても必要だ。

 

ただ、他校の学生艦は二年、三年の先輩方が艦長をしている学生艦。

 

いくら、作戦を立案したのが自分たちだからと言って指揮権まで自分たちが執るという訳にはいかない。

 

先輩方の中には当然、何かしらの異議を唱える可能性は十分にある。

 

「旗艦はプラント奪還の方は横須賀の比叡、海上要塞の方は‥もかちゃん、君の艦だ」

 

「わ、私の!?」

 

シュテルは二つの拠点に向かわせる艦隊旗艦を横須賀女子の学生艦に設定した。

 

「でも、他の学校の先輩方がそれを許すかな?」

 

航海経験や射撃練度で言えば、佐世保の千葉、舞鶴の阿部たち三年生たちが自分たちよりも経験豊富だ。

 

その先輩方を差し置いて、一年生である自分たちの艦を旗艦に設定するなんて出来るだろうか?

 

「いや、その心配はない‥‥十中八九、横須賀女子の艦が旗艦に設定される」

 

しかしシュテルは、旗艦は横須賀女子の艦に設定されると確信をもっていた。

 

「どうして?」

 

「この事態において、学生だけを行かせるとなれば、宗谷校長が陣頭指揮を取ろうとする。となれば、旗艦は横須賀女子の学生艦に当然設定すると思う」

 

「た、確かに‥‥」

 

「でも、宗谷校長は陣頭指揮を執れない」

 

「えっ?」

 

「確かに宗谷校長は昔ブルーマーメイドだったけど、今は一海洋学校の校長‥‥民間人だ。プライドだけは高い官僚はそれを『良し』とはしない‥‥絶対に国土保全委員会から『待った』をかけられる。そもそも、今回の作戦はプラントと海上要塞の二正面作戦‥‥となると、宗谷校長には、『横須賀に残って二つの作戦の統合作戦の指揮を執れ』とでも言ってくるさ」

 

「た、確かにそれはありえそう‥‥」

 

「となれば、宗谷校長が国土保全委員会に要請するのが‥‥」

 

「海上治安維持法第十一条‥‥」

 

「正解」

 

海上治安維持法第十一条‥‥それは、ブルーマーメイド及びホワイトドルフィンの隊員を一時的、強制的に指揮下に置き、治安維持活動のため動かすことが可能という法律だ。

 

横須賀で現場に赴くことが出来ない真雪は必ずこの法律を使い、今回の遊戯祭にゲストとして呼んだ真霜、真冬らブルーマーメイドの隊員らを自らの指揮下に置く筈だ。

 

「宗谷校長が真霜さん、真冬さんを指揮下に置いたら、真霜さんを駿河へ、真冬さんを比叡に乗艦させ、自らの代理として指揮官として任命するはずだよ。まぁ、その逆もあり得るかもしれないけどね」

 

シュテルの話はあくまでも仮定の話であるが、この話を聞いたもえかは十分にあり得る話だと思った。

 

「先輩方が旗艦の件でごねる様だったら、今の仮定の話を聞かせてやればいい」

 

「えっ?聞かせてやるって‥‥?」

 

「今回の作戦は、もかちゃん‥‥君が立てたことにしてくれ」

 

「えっ!?」

 

シュテルの頼みを聞いて、もえかは驚く。

 

「で、でも‥どうして‥‥」

 

「まぁ、一番なのはこの作戦が実行されない事だけど、万が一、起きた場合、作戦を立案したもかちゃんの株も上がるでしょう。もかちゃんは横須賀女子の首席‥いわば、横須賀女子の代表でもあるんだから」

 

「で、でも‥‥」

 

「責任については大丈夫‥あくまでも作戦の立案をしただけであって、最終的に決断を下すのは宗谷校長とブルーマーメイドの人だから」

 

シュテルは責任に関しては問題無いと言うが、もえかにはここまで立案した作戦を自分一人の手柄にしてしまっていいのかという罪悪感があった。

 

「でも、折角シューちゃんも一緒に立てた作戦なのに‥‥」

 

「後輩に華を持たせるのも先輩の仕事の一つだし、必ずしもこの作戦が実行されるとは限らないんだし、ね?」

 

「う、うん‥‥」

 

「メイリンもこの件は黙っていてね」

 

「分かりました」

 

もえかとしては煮えきらない思いがあったが、シュテルの言うとり、この作戦が絶対に実行されるとは限らないし、自分たちが立てたのはあくまでも予測‥‥

 

ブルーマーメイドとホワイトドルフィンがプラントと海上要塞をテロリストたちから奪還することだって十分に考えられる。

 

しかし、事態は全て二人が描いた通りとはいかないまでも、似た状況へと動くことになるのをもえかもシュテルもこの時は知る由もなかった‥‥

 




映画を見た当初、スーの父親がプラントで人質にされ、ラストで再会できるか、テロリストのボスが実はスーの父親かと思っていましたが、結局謎のままで終わり不完全燃焼‥‥それともこれは、はいふり二期の伏線なのかとも思いました。

豪華パンフレットについてくるドラマCDのもかちゃんはまるで銀英伝のヤンみたいに先読みが凄かった。

原作ではあの作戦を一人で立案したもかちゃんは軍師・参謀として将来活躍しそう。
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