やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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132話

横須賀女子にある大講堂にて行われていた図上競技の決勝戦‥‥

 

この決勝戦に上り詰めたのは、今年入学したばかりの一年生同士‥‥

 

しかも同じクラス同士‥‥

 

晴風の艦長である明乃と副長である真白の二人‥‥

 

二人の試合は一進一退の攻防の中、戦局はいよいよ大詰めとなり、戦況から真白の勝利がほぼ確定となり、ラストターンとなった時、外から轟音と衝撃が大講堂を襲う。

 

学生たちが大講堂から外に出てみると、港の出入り口を塞ぐように午前中の競技に使用した廃棄フロートが爆沈、着底していた。

 

ただの事故かと思われたが、これは現在海上で起きているプラントと海上要塞を占拠している海上テロ事件と関わりがあると一部の学生は判断していた。

 

廃棄フロートの着底により、港内に停泊していたブルーマーメイドの艦艇は出航不能の事態となってしまった。

 

この事態を見た一部の学生たちは独自で動くことにして動き始めていた。

 

 

メイリンから連絡を受けたヒンデンブルク機関長のジークは、言われた通り、機関科のメンバーを集めてヒンデンブルクに向かっていた。

 

「機関長、なんで急に出航準備をするんです?」

 

機関科のメンバーの一人がジークに急な出航用意の理由を訊ねる。

 

「私もよくわからへんけど、なんかシュテルからの指示なんや」

 

「艦長からの?」

 

「そうや‥なんや、大きな事件が起きているみたいやで‥‥」

 

ジークは港口で着底している廃棄フロートをチラッと見た。

 

 

「爆沈したフロートの操舵を行っていたと見られる少女を保護しました。他に怪我人はありません。ただ、水路が塞がれた為、横須賀港内のブルーマーメイドは全て出航不能です」

 

横須賀女子の会議室にて、校長秘書の老松は、港口で着底したフロートの状況を真雪に報告する。

 

あの大きさのフロートが爆発し着底した事態だが、死傷者はなく、フロートを曳航していたタグボートを操船し、爆発の衝撃で海へと転落したスーも無事に保護されていた。

 

ただ、人的被害は無くとも事態は深刻で港内のブルーマーメイド艦艇が港に封じ込められてしまった。

 

これでは、プラントへブルーマーメイドを派遣できない。

 

「やられたわ!対処できるまとまった戦力は、ホワイトドルフィンだけに‥‥」

 

真霜もこの事態がただの事故ではなく、海上テロと関係があると判断した。

 

「うっ‥‥」

 

真雪の報告をした真霜も報告を受けた真雪も顔を歪める。

 

港口がフロートで閉塞されたため、ブルーマーメイドの艦艇が出港不能となり、直ぐに動かせるのがホワイトドルフィン艦隊だけとなる。

 

ホワイトドルフィン艦隊だけでプラントと海上要塞の二つを相手にするにはいささか戦力不足となった。

 

 

フロートの爆風と衝撃波で海中へ放り出されたスーはブルーマーメイドのスキッパー隊により救助され病院に運ばれていた。

 

しかし、意識は回復していないスー。

 

そんな彼女はある夢を見ていた。

 

それは、日本に来る少し前のこと‥‥

 

スーの故郷はシュテルが予測していたタイのマフィア街ではないが、治安は日本より低く、また貧富の差が激しい所だった。

 

父親は日本と言う国へ単身で出稼ぎに行き、故郷には重い病気で入院する母‥‥

 

スーはその日の食う分と母の入院費を稼ぐために割かし稼ぐことのできる海の仕事をしていた。

 

そんなある日、一人の男がスーに仕事を持ちかけてきた。

 

「Knowing your skill  I‘ve got a favor to ask (お前の腕を見込んで、頼みたい仕事がある)」

 

「what is it (どんなの?)」

 

スーにとって仕事は自分の食扶ちと母のためなので喜んでやるつもりであるが、あまりにもヤバい仕事や犯罪関係の仕事は母に迷惑が掛かるのでやめようとしていたが、まずは仕事の内容を確認してからだ。

 

「I want you to move the float at a specific time I‘ll prepare the tugboat (所定の時間にフロートを動かしてほしい。タグボートは用意する)」

 

男はスーにタブレットを渡し、仕事内容を伝える。

 

「Is that it? (それだけでいいの?)」

 

男の言う仕事の内容は危険でもないし、犯罪関係でもなく、ただ決められた時間に決められた場所へフロートを動かすだけの仕事。

 

「As you can see  the beam of the float fits just with the berth the depth around it is also shallow An ordinary sailor would crash it but you‥‥ (見ての通り、停船位置に配してフロートの幅はギリギリだ。並みの船乗りならぶつけちまうが、お前なら‥‥)」

 

「It will be easy (簡単だわ)」

 

男の仕事内容から危険でも犯罪性も感じられなかったスーはこの男の仕事を受けることにした。

 

「Heh、 thought so! (ふっ、さすがだな)」

 

「So where are we? (でも、これどこなの?)」

 

スーはこの仕事の現場を訊ねる。

 

タブレットに表示されている一部の海図だけではこの仕事場がどこなのか分からない。

 

「Were in a port Japan called YOKOSUKA (ああ、ヨコスカと言う日本にある港だ)」

 

「Japan‥‥(日本‥‥)」

 

男の言った仕事の現場、日本‥‥

 

それは父親が出稼ぎに行った国の名前‥‥

 

この時、スーは日本に行けば父親に会えるかもしれないと言う期待を抱いていた。

 

日本に行ったっきり、父とは音信不通となっていたからだ。

 

「We‘ll take care of the immigration tuff and you`ll be well rewarded (出入国の段取りはこちらでやるし、報酬もはずむ)」

 

「I don`t need money! (お金はいらない!)」

 

当初は普通の仕事同様、お金は貰うつもりだったが、仕事の現場を聞いてスーは報酬はいらないと言う。

 

「Can we go look for my dad in Japan instead? (その代わり、日本にいる私のお父さんを探せるかな?)」

 

スーは、お金の代わりに日本へ出稼ぎに行ったきり戻ってこない父親を捜す手伝いをして欲しいと要求する。

 

「Ahh it`s a piece of cake  (ああ、そんな事ならお安い御用だ)」

 

男はニヤっと怪しい笑みを浮かべ、スーの要求を呑む。

 

「Really? Then I`ll do the job leave it to me (ほんと?じゃあやる!任せて)」

 

「but do it so nobody sees you it`s supposed to be a surprise there`s gonna be a festival close by and we`re shooting up fireworks from the float for people to see (但し、この仕事は誰にも気づかれない様にやってくれ。サプライズなんだ‥近くでフェスティバルがあってな、その客にフロートから打ち上げる花火を見せるんだ)」

 

男は仕事における注意事項とその理由をスーに話す。

 

その内容からもスーはこの男が横須賀で行われる祭りの関係者なのだと思った。

 

しかし、先程男が浮かべた笑みを見る限りこの男のいう事が果たして本当なのかと疑いたくなるが、この時スーは日本に行ける事と、男が自分の父親を探すのを手伝ってくれると言う言葉を信じ疑わなかった。

 

 

「あっ‥‥」

 

男とのやり取りが終わると同時にスーは夢の世界から現実の世界へと引き戻された。

 

「ココ‥ドコ‥‥?」

 

「大丈夫?貴女に聞きたい事が有るのだけど、あのフロートを動かしていたのは貴女で間違いない?」

 

スーが眠っていたベッドの脇にはパイプ椅子に座る古庄教官が居た。

 

「‥‥」

 

スーは簡単な仕事で、なおかつ自分の父親も探すのを手伝ってくれる仕事だと思ったが、自分が運んだフロートが爆発した光景を見たことから、あの男が自分に行ったフロートで花火を上げると言う仕事内容が嘘だったと悟るスー。

 

そんな中、

 

「ドアから離れなさい!」

 

「学生は会場で待機よ!」

 

何やらもめ事が起きているのか、病院の通路に居るブルーマーメイド隊員が声を荒げている。

 

「お願いします!入れて下さい!あの子は私達の友達なんです!」

 

「どうか、お願いします!」

 

声を荒げるブルーマーメイド隊員の他にスーにとっては聞き慣れた声もした。

 

「ミケ、シロ!」

 

スーはこの声の主が誰なのか分かったみたいで声をあげる。

 

「あの子たちと知り合いなの?」

 

「ウンウン」

 

古庄教官はあのフロートを座礁させた眼前の子と自分の教え子二人が知り合いだったことに驚く。

 

どうみてもスーとあの二人の教え子と共通点が見つからなかったので、古庄教官が驚くのも無理は無かった。

 

「その二人を通して」

 

古庄教官は明乃と真白が居れば、スーが素直に事情を話すと思い、ブルーマーメイド隊員に二人を病室に通すように頼む。

 

古庄教官が病室への入出許可を出すと、スーの病室に明乃と真白が入ってきた。

 

「ミケ!シロ!」

 

病室に入ってきた明乃と真白の姿を見て、スーは思わず二人に抱き着く。

 

「古庄教官、スーちゃんの容体は?」

 

明乃は古庄教官にスーの容態を訊ねる。

 

「かすり傷程度の傷はあるけど、命に別状はないわ」

 

「良かった!」

 

明乃はスーの容態を聞いてホッとする。

 

「う‥‥うう‥‥うわぁぁー‥‥!!」

 

すると、スーは明乃に抱き着きながら声をあげて泣き始める。

 

よほど怖い目に遭ったからなのかと思ったが、

 

「仕事チャントスレバ、パパを捜シテクレルッテ‥‥うわぁぁー‥‥!!」

 

スーはこの事態になり、自分がテロリストに利用されたことに気づく。

 

当然、自分があの男に出した条件‥日本で自分の父親を探す件も反故にされたと悟る。

 

「そんなっ!?それじゃあ、スーちゃんは‥‥」

 

明乃は、スーの言動から、彼女がテロリストに利用され、騙されていたのだと気づく。

 

「テロリストの奴ら、スーの事を騙して利用したんだ‥‥なんて奴らだ‥‥」

 

真白はスーが今回の作戦‥‥港口に廃棄フロートを着底させる作戦にスーはテロリストに利用されたのだと判断し、憤慨する。

 

古庄教官はスーから詳しい事情を聞く。

 

故郷にて、一人の男が自分に接触し、仕事を持ちかけてきたこと、

 

その仕事の内容が今回の廃棄フロートを港口へ運ぶこと、

 

そして、その仕事の目的が、横須賀の町で祭りがあり、花火を打ち上げるために廃棄フロートを港口に移動させてほしいというモノで、この時自分は男の話に疑いを抱かなかった。

 

男はそれなりの報酬を払うと言ってきたが、自分は仕事の現場が日本という事で父が居るかもしれない国だったことからその仕事を受けた。

 

その理由が、自分の父親は日本へ出稼ぎに行ったまま音信不通で行方不明になっていた。

 

だから自分は父親と再会できるかもしれないこのチャンスに賭けてその仕事を受けたのだ。

 

自分は、仕事の報酬をお金ではなく、父親を捜すのを手伝ってもらう条件を出した。

 

男はその条件を了承し、日本までのパスポートと旅費を用意し自分は日本へ来たこと、

 

そして、予定時刻に自分は仕事の内容通り、港口に廃棄フロートを移動させている中、最初は男と連絡が取れていたのだが、フロートが港口付近になると連絡が取れなくなってしまったことを古庄教官に語った。

 

スーから事情を聞いた古庄教官は、早速事の経緯を真雪に伝える。

 

「少女は海賊に利用されていました」

 

「父親に会いたいと思う少女を利用するなんて‥‥」

 

老松は真白同様、スーを利用したテロリストたちに憤慨する。

 

「自分たちの目的のためならば、手段を問わず、利用できるものは何でも利用する‥‥海賊やテロリストの常套手段よ」

 

ブルーマーメイドとして、過去に様々な凶悪事件をその身で体験してきた真雪だからこそ、出たセリフであった。

 

「なお、日本に来る前に海賊の依頼を受けて、海上要塞でも仕事をしていたそうです。今、要塞の内部構造を話して貰っています」

 

古庄教官はスーが日本に来る前、例の海上要塞で何らかの仕事をして内部の構造を知っている事を伝える。

 

ただ、どんな事情があったのか分からないが、テロリストたちはそこで大きなミスをした。

 

大方、テロリストたちは廃棄フロートを港口で着底させたスーはブルーマーメイドによって身柄を拘束されると判断し、例え彼女が要塞の内部情報を知っていても彼女からの情報を活用しないだろうと思ったに違いない。

 

「その子は、要塞の構造に詳しいのね?」

 

「はい」

 

アメリカ側からは海上要塞の武装を外したことは国土保全委員会、海上安全整備局、ブルーマーメイド、ホワイトドルフィンには通達されたが、要塞内部の詳細はアメリカ側から詳細は送られてきていなかった。

 

現在は使用されていなかったとは言え、モスボール状態でいつまた使用するか分からなかったので、他国である日本にアメリカは海上要塞の内部等の詳細を教えていなかった。

 

プラント同様、海上要塞に対しても内部へ突入し、制圧することも考えられることから、要塞の内部の造りを知っているスーの情報は貴重な情報源であった。

 

「その子は動けるの?怪我は?」

 

真雪は古庄教官にスーの容態を訊ねる。

 

「大きな外傷はありません。脳波と内臓も異常なしです」

 

古庄教官は真雪のスーの容態が軽傷であることを伝える。

 

「‥‥その子を駿河に乗せられないかしら?」

 

「えっ?」

 

「なっ!?」

 

真雪の言葉に古庄教官と老松は啞然とする。

 

真雪はシュテルの思惑通り、自身が駿河に乗り海上要塞攻略の陣頭指揮を考えていた。

 

「こ、校長まさか‥‥」

 

「無茶です!!駿河一隻で海上要塞へ向かうなんて!!」

 

残存のホワイトドルフィンと真冬が艦長を務めるべんてんはプラントへと向かう。

 

となれば、海上要塞への着手が手薄になってしまう。

 

そこで、真雪は海上要塞への攻略に無事だった学生艦に乗り込んで攻略する決心をしたのだ。

 

勿論、乗員は自分以外には港内のブルーマーメイド艦の乗員を乗せるつもりだった。

 

「ですが、誰かが行かなければなりません‥プラントの奪還も急務ですが、海上要塞をこのまま海賊に占拠させておくわけにも‥‥よって、此処は私が行きます。要塞の内情を知っている少女がいる今、落とせる見込みがあります」

 

例えプラントを奪還しても海上要塞をそのままテロリストたちの手に置いておけば、他国のプラントを襲いかねない。

 

いや、海上要塞そのものを使ってテロや海賊行為を行うかもしれない。

 

いずれにせよ、海上要塞をそのままの状態にしておくわけにはいかなかった。

 

真雪に根負けした古庄教官はスーと真雪の駿河乗艦を認めるしかなかった。

 

太陽が水平線に沈みかけている中、桟橋では古庄教官、真雪、スーの三人の姿があり、駿河行きの内火艇も用意されていた。

 

真雪とスーが内火艇に乗艇しようとした時、

 

「待って下さい!!」

 

それに待ったを掛けて来るかのように明乃と真白が駆け寄ってきた。

 

「学生は全員、会場で待機と命令が出ている筈よ」

 

真雪は例え自分の娘である真白相手でもここは公人として接し、厳しい口調で問う。

 

「スーちゃんを連れて行くなら、私たちも行かせてください!!」

 

「その子を一人で行かせたくないんです!!」

 

「「お願いします!!」」

 

明乃と真白は深々と頭を下げて真雪に自分たちも今回の事件解決のために海上要塞へ向かいたいと言う。

 

「ミケ、シロ‥‥」

 

「スーちゃんは私たちの友達なんです!!」

 

「そばに付いていたいんです。同じ艦に乗るのが無理なら、せめて晴風で随伴を!」

 

「随分、はっきり物を言う様になったわね‥真白」

 

真雪は娘の成長を感じた。

 

小学生の時、自分もブルーマーメイドになると言った以降、真白は真雪に対してどうも本音を隠すみたいに感じていた。

 

その真白が母親である自分に自身の思いをぶつけてきた。

 

「じゃあ私たちも一緒に‥‥」

 

真白は真雪が自分たちも一緒に連れて行ってくれるのかと思ったが、

 

「それとこれとは話が別よ」

 

しかし、真雪はあくまでも今回の事件に学生を連れて行くつもりはなかった。

 

「貴女たちを連れて行く訳には‥‥」

 

だが、沖合に停泊している学生艦の煙突からは黒煙が出ており、出航準備をしていた。

 

「罐に火が?」

 

自分の知らぬ間に学生艦が出航準備をしていることに驚愕する真雪。

 

「私たちに行かせてください!」

 

「我々、留学生組も行きます」

 

「もかちゃんとシューちゃん!?」

 

「知名艦長、碇艦長!?」

 

「シュー!!」

 

桟橋にもえかとシュテルが来ると、自分たちも海上要塞へ向かう旨を真雪に伝える。

 

「いつでも出港出来る様に機関科の子たちには、先に動いてもらいました」

 

「各艦、出航準備は完了しいつでも出航可能です」

 

「学生を危険にさらす訳にはいかないわ」

 

出航準備が整っても教育者として真雪はあくまでも学生たちの参戦を渋る。

 

「それに要塞の武装は使えない状態にあると聞きました・・・ですから、私達が事態に臨んでも危険は大きくないと見積もります」

 

(実際はあると思うけどね‥‥)

 

シュテルともえかは海上要塞には武装が施されていると想定しているが、あくまでも表向きの情報を真雪に伝え、武装されていない海上要塞相手ならば自分たち学生でも十分に対処できると言う。

 

出航の許可が出て海に出れば、いくらでも対処は出来る。

 

「貴女!何処でそれを‥‥!?」

 

真雪はもえかがブルーマーメイドと自分たち教官の一部しか知らない情報を持っていたことに驚く。

 

(まさか、海上安全整備局のコンピューターをハッキングしたなんて言えないよな‥‥)

 

真雪がもえかに情報の出所を訊ねようとした時、

 

ピピ‥‥!ピピ‥‥!

 

タイミング良く?真雪のスマホが鳴る。

 

「宗谷です」

 

「国土保全委員会から宗谷真雪校長に緊急要請です」

 

電話の向こう側からは真霜の声が聞こえ、

 

「二正面作戦の困難性を鑑み宗谷真雪に統合作戦参謀として協力していただきたい。この要請は海上治安維持法第十一条に基づくものである」

 

「‥‥十一条」

 

真霜はあくまでも国土保全委員会からの命令を伝達しただけなのであるが、真雪はその命令を聞いて悔しさからか顔を歪める。

 

「ブルーマーメイド及びホワイトドルフィン関係者を一時的に強制的に任用する条文ね」

 

「ご協力をお願いします。宗谷校長」

 

真霜もあくまでも公人として真雪に協力を仰ぐ。

 

「シューちゃんの予想通り、国土保全委員会は十一条を出してきたね」

 

もえかがシュテルに小声で耳打ちする。

 

「ああ‥当たってほしくない悪い予感に限って当たるから、嫌なんだよね‥でも、ここまで来たらもう一押しだよ、もかちゃん」

 

「うん。時間がありませんし、学生艦の扱いに慣れている私たちが乗った方が良いと思うんです。砲の偏差も舵の癖も毎日触って知っていますから」

 

もえかは、もう時間がないので、自分たち学生に行かせてほしいと真雪にお願いする。

 

「艦隊編成と作戦概要です。他のクラスの子達と先輩達にも賛同して頂いています」

 

もえかは、艦隊編成と作戦概要を記したタブレットを真雪に見せる。

 

「いつの間に‥‥」

 

この短時間に艦隊編成と作戦概要をたてたもえかに驚く真白。

 

(シューちゃんとメイリンさんが手伝ってくれたから、短時間で出来たんだよね)

 

「宗谷さんとミケちゃんは、スーちゃんの所に居たから伝えるのが今になっちゃったんだよ」

 

シュテルが明乃と真白に作戦概要を伝えるのが遅くなってしまった訳を話す。

 

「よく出来ているわ‥‥ただし、ブルーマーメイドの宗谷真霜を現場責任者として乗せます。分かっているわね?」

 

「はい、指揮に従います」

 

こうして、シュテルの予想通り、真霜が駿河に乗艦し海上要塞鎮圧へは学生艦隊が向かうことになった。

 

 

「それじゃあ、ミケちゃん、宗谷さん、時間合わせをしよう」

 

シュテルは明乃と真白に腕時計を見せて時間合わせを行うと言う。

 

単独ではなく、横須賀、呉、舞鶴、佐世保、ドイツからの留学生組の他に真冬たちプラント奪還組との連合及び二正面なので、連携が必要不可欠であり、時間を合わせる事は大事な事だった。

 

「他の学校の方々とはついさっき、時間合わせはやったから、ミケちゃんたちもやっておかないとね」

 

「わかりました」

 

「はい」

 

シュテルともえかはここに来る前に宮里たちと時間合わせはしたが、明乃と真白はスーの病室にお見舞いに行ったので作戦の概要についても時間合わせもしていなかった。

 

一応、もえかもシュテルや宮里たちと時間合わせをしたが、念のため、もえかも明乃と真白の二人と時間合わせをした。

 

もえか、シュテル、真白は腕時計を‥明乃は懐中時計をそれぞれ見せるように出すと、

 

「現在時刻、○○時××分△△秒‥‥誤差無し」

 

「「「誤差無し」」」

 

「艦に戻ったら艦橋員とも時間合わせはしておいて、特に要塞を攻撃する砲術長とは特にね」

 

「はい」

 

「わかりました」

 

時間合わせをした四人は各々の艦へと向かった。

 

 

もえが駿河の艦橋に向かう中、甲板にはもえかの他に真霜の姿もあった。

 

彼女としては横須賀女子卒業以来に歩く駿河の甲板であった。

 

「ねぇ、知名さん?」

 

「えっ?」

 

もえかは真霜から不意に声をかけられる。

 

「貴女も行きたがるのは、お母さんの事があるから?私たちもかつて憧れた‥凄腕のブルーマーメイド」

 

真霜は、今は故人となっているもえかの母親について語る。

 

新人時代、真霜はもえかの母親と面識があるのか?

 

それとも今は真雪や真冬の実績に隠れてしまったが、もえかの母親の実績を知って憧れていたのだろうか?

 

「ありがとうございます。母の事を覚えていてくださって‥‥」

 

故人になってしまったことなのか、もえかの母親のブルーマーメイドでの実績や人物像は今となっては覚えている者も少なくなっているのかもしれない。

 

しかし、真霜は覚えていた。

 

その事実が嬉しかったのか、もえかは真霜に礼を言う。

 

「私も海にいる皆を守りたいんです。道は遠いけど、いつかは‥‥」

 

もえかは水平線を見ながらいつかは自分の母親のような立派なブルーマーメイドになりたいと真霜に告げる。

 

その姿は自分や妹の真白に通ずるモノがあった。

 

 

一方、晴風に向かう内火艇では、

 

「はぁ~艦長との勝負はつかなかった‥‥」

 

あと一ターンで勝敗がついた図上演習が今回の騒動で中止になってしまい、真白としては完全に不完全燃焼だった。

 

「けど、結論は出さなければならない」

 

図上演習の経緯はどうあれ、比叡クラスへ移籍か?それとも晴風クラスに残留か?

 

その決断はこの事件を解決した後には下さなければならなかった。

 

 

出撃する学生艦に所属する学生たちが各々の学生艦に向かう中、シュテルも自ら艦長を務めるヒンデンブルクへ向かおうとした時、

 

「い、碇艦長」

 

「ん?あっ、西住さん。もしかして見送りに来てくれたの?」

 

「う、うん」

 

シュテルに声をかけたのはみほだった。

 

「その‥海上テロの鎮圧に向かうって‥‥」

 

「うん‥ブルーマーメイドの艦艇があの通り、出撃出来ないからね」

 

シュテルはチラッと港口で着底している廃棄フロートを見る。

 

みほもシュテル同様、着底している廃棄フロートを見る。

 

「相手は海上要塞を占拠したテロリストってきいたけど‥‥」

 

「うん。ブルーマーメイドの主力が出撃出来ない今、私たち学生艦の艦が事件解決の力になからね」

 

「で、でも‥危険じゃないかな?相手は要塞を占拠するくらいの凶暴なテロリストなのに‥‥」

 

「確かに、Rat事件と比べると危険度は高いかな?」

 

Rat事件でRatに操られた学生ではなく、今回の相手は要塞を占拠したテロリスト‥向こうはこちらを殺す覚悟で攻撃してくるだろう。

 

とは言え、ヒンデンブルクはこれまで二度に渡り海賊を相手にしているので、今回要塞攻略に向かう学生艦の中では経験が豊富である。

 

「‥‥」

 

みほは気まずそうに視線を逸らす。

 

本音を言えば、みほはヒンデンブルクに‥シュテルに今回の作戦には参加してほしくはなかったのかもしれない。

 

「‥‥」

 

シュテルはみほのその仕草を見て、何かを察すると徐に被っていた艦長帽を脱ぎ、

 

「大丈夫だよ。ヒンデンブルク一隻で行く訳じゃないから」

 

「えっ?」

 

そう言ってみほの頭に被っていた艦長帽を被せる。

 

「私はその帽子を取りに必ず戻ってくるから」

 

ニッと笑みを浮かべ、シュテルはみほに戻ってくると伝える。

 

「う、うん‥‥」

 

「では、いってきます」

 

シュテルは姿勢を正し、みほに敬礼して出撃する旨を伝える。

 

「は、はい。ご武運を!!そして、ヒンデンブルクの帰還を待っています!!」

 

みほも慌てて返礼し、ヒンデンブルクの武運を祈った。

 

内火艇でヒンデンブルクへと向かうシュテルを桟橋から見るみほはシュテルの艦長帽を抱きしめながら、

 

(もう少し、赤城のドック明けが早ければ、私も碇艦長と一緒に戦えたのに‥‥)

 

と、自身が艦長を務める赤城がまだドックに入っている事を残念がっていた。

 

 

夕陽を背に海上要塞へ向かう学生艦が出撃する時間は刻々と迫っていた。

 




作中にて、真霜がもえかの母親について知っている様な場面‥あれは何かの伏線のように思えました。
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