やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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13話

 

キール海洋学校中等部の卒業前の遠洋航海実習でイタリアのナポリへとやって来たシュテル達。

ユーリとクリスは本場イタリアのピッツァとパスタを心ゆくまで堪能する事にしてレストランで食い倒れており、シュテルは二人の食欲にはついていけず、一人でナポリの街を観光しながら、イタリア南部最大の港町、ナポリの街並みを写真に収めていた。

その最中、シュテルはクラスメイトの一人、ジークリンデ・エレミアと偶然鉢合わせをする。

エレミアは特に誰かと一緒にナポリの街を観光するわけでもなく、一人でスナック菓子片手にブラブラと歩いていたので、シュテルと共にナポリの街を観光する事になった。

折角、外国の街へと来たのだから、家族へのお土産でも買おうと、二人でショッピングする姿は年頃の女子の姿であった。

ただ、街中にある掲示板には港にあったのと同じ探し人のチラシが沢山貼ってあったが、シュテルもエレミアもその掲示板には気づかなかった。

 

ショッピングをして少し疲れた二人はあるカフェへと立ち寄る。

そこで二人はジェラートを食べた。

ジェラートはアイスクリームと比べると密度が濃く、味にコクがあり美味しかった。

ジェラートを食べている中、シュテルはエレミアにどうしても気になる事があったので、聞いてみた。

 

「ねぇ、エレミアさん」

 

「ん?なんや?」

 

「エレミアさんの言葉ってちょっと独特の訛りがあるよね?」

 

「あっ、気づいた?」

 

「うん」

 

「なんか、変やろうか?ウチの言葉遣い」

 

「いや、そこまで変じゃないよ。ただちょっと気になっただけ」

 

口ではちょっとと言うが、シュテルにしてみれば、実はかなり気になっていた。

 

「実はウチ、小学校に上がる前までは、日本の大阪っちゅう所で生まれて、そこで育ったんよ」

 

「へぇ~‥‥エレミアさんは大阪の生まれなんだ‥‥」

 

(なるほど、だから独特の訛りみたいなのがあったのか‥‥ん?でも、なんでドイツ語なのに関西弁でアフレコされているみたいに聞こえるんだろう?)

 

エレミアが生まれも育ちも日本の大阪生まれで、その影響でドイツ語に独特の訛りみたいなのがあるのは分かったが、それがどうして関西弁でアフレコされているように聞こえるのかシュテルにはそれがどうしても分からなかった。

 

「ん?碇さんは大阪を知っとるの?」

 

「実際に行ったことはまだないけど、おじいさんとおばあさんが京都って所で働いているんだ」

 

「へぇ~京都に‥‥」

 

以外にも自分の故郷の一つでもある日本の大阪の傍に縁がある人と知ってエレミアは少し嬉しそうだった。

 

 

カフェで休憩した後、シュテルとエレミアの二人は再びガイドマップを手に持ち次に何処へ行くかを決めかねていた。

そんな二人を背後から見ている男達がいた。

 

「おい、アレなんかどうだ?」

 

「うむ、年格好も丁度いい‥ん?‥あの制服‥ドイツのキール海洋学校の制服だ」

 

「外国人か‥‥」

 

「そのようだ‥それに、あの様子‥いかにもこの街に慣れていない観光客ってところだな」

 

男達はシュテルとエレミアが纏っているキール海洋学校の制服と手にしているガイドマップからシュテルとエレミアが観光客で、このナポリの街の地理に不慣れだと判断した。

 

「おあつらえ向きだ。やるぞ‥‥」

 

「ああ、手早くな‥‥」

 

そう言うと男達は足早にシュテル達に近づく。

そんな男達の存在に気づかずにシュテルとエレミアの視線はガイドマップに集中していた。

 

「う~ん‥次は何処に行こう‥‥エレミアさんは何処か行ってみたい所とかってある?」

 

「ウチは別に何処でもええよ」

 

「もう、投げやりだな‥‥」

 

シュテルとエレミアが次の行き先を決めかねている時、二人の背後から怪しげな男達が近づき、そして‥‥

 

「うっ‥‥」

 

「むっ‥‥」

 

二人の視線がガイドマップに集中していると、突然シュテルとエレミアの鼻と口が布で塞がれ、武骨な男の手がガシッと体を押さえつける。

口と鼻を塞ぐその布には予め特殊な薬品が染み込ませてあったようで、その匂いを嗅いでいると段々と意識が遠のいていった。

おまけに口を塞がれているので声をあげることもできない。

やがて二人の身体はガクッと糸が切れた操り人形のように意識を失った。

 

「よし、うまくいったぞ」

 

「早いとこ運び出すぞ」

 

男達は意識を失ったシュテル達を担ぎ上げその場から急いで走り去っていった。

男達のあまりの手際の良さと、シュテルとエレミアが声を出さなかった事で周囲の人らは気づくことは無かった。

 

 

それから時間が過ぎ、門限となる一八〇〇時に迫ろうとしていた。

マルクグラーフのタラップには教官がおり、帰還した生徒達の名前を確認し、誰が帰って来たかを名簿でチェックする。

 

「うっぷ‥‥流石に食べ過ぎたね‥‥」

 

「うん‥ちょっと無理し過ぎた‥‥うぇ~‥‥なんか気持ち悪い~‥‥」

 

「当分、ピッツァとパスタは食べたくもないし、見たくもないかな‥‥」

 

そこへ、本場のイタリアン料理を堪能したクリスとユーリが戻って来た。

ただ食べ過ぎたみたいで二人とも顔色が少し悪い。

一体どれくらいの量のピッツァとパスタを食べた事やら?

 

「あら?エブナーさんにエーベルバッハさん。珍しいわね、二人なんて」

 

教官の間でもユーリとクリスはシュテルと三人で居ると言う認識があった。

そんな三人組の中でシュテルが不在で、ユーリとクリスの二人で行動していた事が意外だった。

 

「私達は本場のイタリア料理を堪能していたんですが、碇さんは途中でギブアップして一人で観光に出たんですけど‥‥」

 

「まだ戻って来ていないんですか?」

 

「ええ、まだね‥‥」

 

教官は生徒名簿を確認してシュテルがまだ戻って来ていない事を二人に伝える。

 

「もうすぐ門限なのにまだ帰って来ていないなんて‥‥」

 

「どうしたんだろう?シュテルン‥‥」

 

時間に関しては厳しい海の世界。

基本15分前行動は当たり前なので、門限が一八〇〇時でも皆は大抵門限の15分前の一七四五時には戻って来る。

しかし、門限の一八〇〇時を過ぎてもシュテルとエレミアがマルクグラーフに戻って来る事はなかった。

 

「ねぇ、クリス。いくらなんでも可笑しいよ」

 

「そうね。あのシュテルンが門限を破るなんて‥‥」

 

「もしかして、何かあったんじゃないかな?」

 

「それにシュテルンの他にエレミアさんも帰って来ていないみたいだし‥‥」

 

「エレミアさんも?」

 

クリスとユーリを始めとするシュテルと同じクラスメイト達は心配しているが、

 

「主席と言っても碇さんは混血だからねぇ~」

 

「全く、他の人種が混じっている人は時間も守れないのかしら?」

 

「エレミアさんもきっとあの混血種の我儘に巻き込まれたのよ」

 

「エレミアさんも気の毒にねぇ~」

 

と別クラスの血統主義の生徒はシュテルが門限に遅れて帰るに帰れないと思っているらしくシュテルに対して侮蔑の言葉を吐いている。

シュテルのクラスメイト達はそれを聞いて顔を顰めるが、彼女らがシュテルを侮蔑するのは混血種に負けていると言う嫉妬から来るものだった。

ミーナ教官は当然、シュテルとエレミアの携帯にも電話をかけたが、どちらも応答しない。

そして門限を二時間も過ぎた、二〇〇〇時になってもシュテルとエレミアは戻ってこないし、相変わらず携帯にも出ない。

いくらなんでも可笑しいと判断した教官らは地元警察に連絡して二人の捜索を依頼した。

 

その頃、シュテルとエレミアは‥‥

 

「う、うぅ~ん‥‥」

 

シュテルは重い瞼を開けると、そこは薄暗い大きな倉庫の様な所だった。

しかもこの倉庫内はなんだか肌寒い。

この肌寒さがシュテルの意識を覚醒させるきっかけとなった。

 

「私‥どうして‥‥」

 

さっきまでナポリの市街地に居た筈が何でこんな所にいるのかはっきり思い出せない。

しかも手足は縄で縛られていた。

ふと隣を見ると、そこには一緒に市街地を観光していたエレミアの姿もあった。

彼女はまだ眠っており、自分同様、手足を縄で縛られている。

ただ、呼吸はしているので、生きている事は確かだ。

 

「エレミアさん、エレミアさん、起きて‥‥」

 

幸い猿ぐつわはされていなかったので、シュテルは声を出し、縛られながらも両足でエレミアの身体を突っついて彼女を起こす。

 

「う~ん‥‥もう、食べられへよぉ~」

 

「な、なんてベタな寝言を‥‥」

 

エレミアはシュテルに突っつかれながらベタな寝言を吐き、それに呆れるシュテル。

しかし、このまま寝かせておくわけにはいかないので、シュテルは引き続きエレミアを突っついて彼女を起こす。

 

「起きて!!おい、起きろ!!」

 

声を荒げ、足蹴りの勢いをあげると、

 

「うっ、うん?」

 

ようやく意識が戻り体を起こし、声をあげる。

 

「ん?あっ、碇さん‥おはよう‥‥って、此処はどこや!?」

 

エレミアは目が覚めると自分の四肢は縄で縛られており、しかも見慣れない場所に居る事に驚き、声をあげる。

 

「分からない‥‥でも、見たところどこかの倉庫みたい」

 

シュテルは当初、事態が把握出来ずに驚いていたが次第に冷静さを取り戻し、此処が何処なのかを確認する。

 

「で、何でウチらは此処で縛られてこんな倉庫に居るんやろう?」

 

「分からない‥でも、人為的に‥‥誰かに誘拐された事は確かみたい」

 

「ゆ、誘拐やて!?」

 

シュテルの誘拐と言う言葉に反応するエレミア。

 

「兎も角、縄から抜けないとまともに動けないから、まずはこの縄を何とかしよう」

 

「そうやね」

 

「エレミアさん、こっちに背中をむけて」

 

「ん」

 

エレミアは縛られている手をシュテルの正面に向けるとシュテルは歯を使って器用にエレミアの手を縛っている縄の結び目を緩めた。

結び目が緩んだ事によりエレミアは自分の手を縛っていた縄が解けた。

手が自由になったことで、エレミアは自分の足を縛っている縄を解き、次にシュテルの縄も解いた。

 

「ともかく此処が何処なのかを確かめないとね」

 

「そやな、どうやら携帯も取られてもうたみたいやし」

 

ポケットの中を確認してみると、入れていた筈の携帯がない。

どうやら誘拐犯が抜き取ったみたいだ。

誘拐犯としたら、シュテル達が外部と連絡を取れないようにしたみたいで、誘拐犯としては当然の行動だろう。

シュテルとエレミアは此処が何処なのかの確認の為、倉庫になった荷物の上に乗る。

そこから天窓から外を確認した。

すると、この倉庫は何処かの港にある倉庫みたいだった。

 

「港と言う事はマルクグラーフが停まっている近くかもしれへんな」

 

「うん。早く此処から出よう」

 

「そうやね」

 

天窓から外を確認し、誘拐犯が此処に戻って来る前になんとかこの倉庫から脱出してマルクグラーフに戻らなければならない。

 

「それにしてもこの荷物、一体何が入っとるんやろう?」

 

エレミアがこの倉庫にある荷物が気になり、コンテナの一つを開ける。

 

「エレミアさん、今は倉庫の荷物なんてどうでもいいから、早くここをでましょう」

 

シュテルはこの倉庫にある荷物なんてどうでもいいのだが、エレミアは気になる様子。

エレミアがコンテナをあけると‥‥

 

「ん?なんや、中身は寝袋かいな」

 

「寝袋?」

 

エレミアが言うにはコンテナの中身は寝袋だと言う。

シュテルも気になり、エレミアと共にコンテナの中にあると言う寝袋を見る。

 

(ん?こ、これは寝袋なんかじゃない‥‥これは‥‥)

 

シュテルはこの袋を見た事がある。

この前、ユーリやクリスと一緒に見た刑事モノの映画で似たような袋が登場したシーンがあったのだ。

当然映画ではその中身も描かれていた。

 

「ん?この寝袋、中に何か入っとるな」

 

「エレミアさん、待って!!」

 

シュテルは止めようとしたが、間に合わず、エレミアはその寝袋のジッパーを下に降ろす。

すると、その中にあったのは‥‥

 

「ん?‥‥うわぁぁぁぁぁぁぁー!!」

 

エレミアは寝袋の中身を見て思わず声をあげる。

彼女は寝袋の中身を見て反射的に身体を引くとそのままバランスを崩し、コンテナの上から落ちた。

袋に入っていた中身と共に‥‥

 

「エレミアさん」

 

「い、碇さん‥‥し、死体‥死体や!!」

 

エレミアは自分の上に乗っかった死体を指さしながら震えた声をあげる。

 

「‥‥」

 

そう、コンテナの中身は寝袋ではなく、死体袋だったのだ。

シュテルはエレミアの上に乗っかった死体をどけると、他のコンテナも開けてみた。

すると、他のコンテナにも死体袋が詰まっていた。

中を見ていないが、どの死体袋にも中身があるようだ。

 

(人気のない倉庫‥‥それに袋詰めにされた死体‥‥このコンテナの中身は全部、死体?)

 

(でも、なんでこんな所に?葬儀会社の遺体保存庫と言う訳ではなさそうだし‥‥)

 

自分でも死体に驚かず冷静に辺りを分析しているシュテル。

シュテルが倉庫の中の箱を見渡し、現状を分析していると、

 

「おやおや、箱の中身を見てしまいましたか?」

 

倉庫のドアが開き、そこからサングラスと帽子を被った男を先頭に何人もの男達が入ってきた。

 

「全く貴方達は不手際が多すぎますよ」

 

「す、すみません。それにしてもどうやって縄をほどいたてんだ?アイツ?」

 

彼らの会話からどうやらサングラスに帽子の男がリーダーのようだ。

服装や言動、そしてこの倉庫にある死体の数々‥‥

 

(こいつら‥‥まさか、イタリアマフィアか!?)

 

「なんや?アンタ達は?」

 

「恐らく、イタリアマフィアだ」

 

「マフィアやて!?」

 

シュテルがエレミアに男達の正体を伝えると、エレミアは驚いていた。

マフィアはイタリアのシチリア島を起源とする組織犯罪集団である。

19世紀から恐喝や暴力により勢力を拡大し、イタリア国内では四大犯罪組織と称されている。

そんな犯罪集団が目の前にいるにもかかわらず、シュテルは表面上冷静な態度でいた。

 

「それで貴方達の目的は何?他の世界に奴隷として私たちを売る?それとも殺してから積荷にして運ぶ?」

 

シュテルは取り敢えず彼らの目的を聞いた。

どう見ても彼らが葬儀社の社員には見えないし、先程エレミアと共に落ちた死体の首には紐状の何かで絞め殺した形跡もある。

つまりこの死体は事故や病死ではなく他殺された死体ということになる。

もっとも自殺した死体という可能性も捨てきれなかったが、この後、リーダーの発した言葉によってその可能性も消えた。

 

「ほぉ~この状況で随分冷静なお嬢さんだ。これはビジネスだ」

 

「ビジネス?」

 

「そう、世界には新しい臓器を待っている患者が沢山居る。我々はそんな病気の人達を助ける為、こうして臓器の確保をしているのです‥‥とは言え、臓器移植を待っている人は多く、臓器も死体となってからは長くは持たないので、常にフル稼働しなければならない大変な仕事なのです」

 

「‥‥まさかと思うが、この街のあちこちに沢山貼ってあった探し人は‥‥」

 

シュテルはこの街に沢山貼られていた探し人のチラシ‥‥

あのチラシにあった人達はコイツ等のビジネスとやらの犠牲に‥‥

 

「世の為、人の為に協力できたのだ。我々はそれに協力ついでにお小遣いを稼いでいるだけに過ぎない」

 

「なんや、それ!?結局は人を殺して金を設けているだけやないか!?そんな下らないモンの為に‥‥」

 

エレミアはマフィアの悦に浸った御高説に食って掛かる。

 

「イヤぁ~私も残念だ。出来れば殺さず生かしたまま連れて帰りたかった。それならば移植用の臓器として高く売れた他に中東や欧州の金持ちの愛玩として売れそうだったのに‥‥しかたありません。多少値は落ちますが‥‥」

 

「黙れ!!外道が!!」

 

「五月蝿いですね‥‥黙らせなさい‥‥永遠にね‥‥」

 

「はっ」

 

リーダーの後ろにいた男達の内一人の男がナイフを抜きながらシュテルとエレミアに近づいてきた。

拳銃では銃声がして周りに気づかれてしまい、場所によっては売れ物にならなくなるので、ナイフで牽制し、此処にある死体の様に絞殺しようと言う魂胆だろう。

 

「小娘の喉を切るのは、温かいバターを切るようだぜ」

 

ナイフを手に持ちにじり寄ってくる男達。

確かに首の頸動脈を斬れば死ぬし、臓器には傷がつかない。

するとエレミアが男達へと駆け出し、一人の男に掴みかかり、その勢いを殺すことなく投げ飛ばす。

それを見た連中はリーダーの男以外の連中が一斉に襲いかかってきた。

エレミアは男達のナイフの突きや斬撃を躱し、低空タックルで足を掴みスイングして投げ、また別の男には喉に突き刺さるエルボーをして倒し、別の男には鳩尾に強烈な拳を叩きつけ、また別の男には男の急所を思いっきり蹴り飛ばすなどして、次々と男達を倒していき、最終的にはエレミア一人でその場に居たマフィア全員を倒してしまった。

マフィアが少人数だった事と拳銃を使えなかった事を差し引いてもこれは凄い。

 

「‥‥エレミアさん‥強いね‥‥」

 

シュテルもエレミアの体術は予想外で乾いた声で訪ねるしか出来なかった。

 

「ウチ、幼少の頃から格闘技をやっとったからね、こんなチンピラに毛が生えた程度の連中に負けるつもりはないで、ましてやこんな外道な連中は許す訳にはアカンからな‥‥さて、どうする?」

 

「とりあえず、コイツ等の誰かの携帯を使って教官と警察に電話しよう」

 

「うっ‥くっ‥‥」

 

シュテルとエレミアがこの後の事を話していると、リーダー格の男が薄っすらと目を開ける。

エレミアの攻撃がこの男には浅かったのか、それともタフなのか、他の男達よりも一早くに意識を取り戻した。

 

(くそっ、このままじゃ、すまさねぇぞ‥‥もう、商品なんてどうでもいい‥‥身体に傷がついてもアイツらは此処で確実に殺す!!)

 

リーダー格の男は懐に手を入れると、そこから拳銃を取り出す。

そして、まずはエレミアに銃口を向ける。

それに気づいたシュテルは、

 

「エレミアさん!!危ない!!」

 

「えっ?」

 

エレミアを突き飛ばす。

その直後、

 

バキューン!!

 

‥‥チャリン

 

倉庫に一発の銃声と薬莢が落ちる事が木霊する。

 

「がはっ‥‥」

 

ドサッ

 

そして、シュテルは車に轢かれたように弾け倒れる。

 

「碇さん!!」

 

「このアマぁ、殺してやる!!」

 

リーダー格の男は拳銃を構え起き上がる。

 

「このっ!!」

 

シュテルが撃たれた事に憤慨したエレミアはリーダー格の男へとかけて行く。

 

「馬鹿め!!」

 

そんなエレミアにリーダー格の男は銃口を再び向ける。

 

「くっ‥‥このっ‥‥」

 

倒れていたシュテルは最後の力を振り絞って倉庫の床に落ちていたパイプをリーダー格の男に向けて投げる。

すると、パイプはリーダー格の男に当たり、その痛みと衝撃で照準がズレる。

その隙をエレミア見逃さずにリーダー格の男の腹に一発入れて倒すとそのまま馬乗りとなり、マウントポジションをとると、男の顔を何発も殴った。

 

「や、やめ‥‥だ、だじげで‥‥」

 

「お前はそうやって命乞いする人達を一体何人殺したんや?お前に命乞いをする資格なんてない!!」

 

そう言ってひたすら殴り続けるエレミア。

 

「エレ‥ミアさん‥‥やめ‥‥やめて‥‥」

 

「っ!?」

 

倒れていたシュテルの声を聞いてエレミアはそこでやっと殴るのを止めた。

リーダー格の男の顔は血と涙と涎と鼻水でぐちゃぐちゃになり、歯はボロボロになり、麻酔無しの強制整形をする羽目になった。

当然意識はもうない。

エレミアはマフィアの懐から携帯を奪うと、急いでミーナ教官へ電話を入れる。

シュテルの意識も出血の為かもうなく、倉庫の床で倒れている。

 

マルクグラーフに居たミーナ教官の携帯に見知らぬ番号の着信が来た。

ミーナ教官は一瞬、出ようか迷ったが、地元警察からの連絡かと思い、出てみると、

 

「はい、もしもし‥‥」

 

「ヴィルケ教官!!」

 

「エレミアさん?‥貴女、今何処にいるの?碇さんも一緒なの?」

 

「は、はい!!マフィアに誘拐されて‥‥それで碇さんが銃で撃たれて‥‥きょ、教官、どないしよう‥‥」

 

熱が冷めてシュテルが銃で撃たれた事実に気が動転しているエレミア。

 

「えっ?マフィア?誘拐?それに碇さんが銃で撃たれたってどう言う事なの!?」

 

「碇さんと一緒に街を見ていたら、マフィアに誘拐されて‥‥」

 

エレミアは涙声ながらもミーナ教官に事情を説明した。

 

「分かりました。警察の方には此方から連絡しておきますからの、エレミアさんは碇さんの応急処置をしてあげて」

 

「は、はい」

 

電話を切り、エレミアは自らのジャージを切り、シュテルの傷に押し当てて止血をして警察を待った。

やがて、遠くからパトカーや救急車のサイレンの音が聞こえてきた。

 




原作のエレミアはDSAAインターミドル世界代表戦優勝ですし、某バーロ探偵に登場する女子高生も空手で犯人を伸す事があるので、この世界のエレミアも強い設定です。

エレミアが強かった事、あの場に来たマフィアが少人数だった事が今回、シュテルとエレミアが危機を脱することが出来た要因です。
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