やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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140話

横須賀女子で行われた遊戯祭の最中に起きた二つの海上テロ事件‥‥

 

テロ自体は大規模なモノであったが、ブルーマーメイド、ホワイトドルフィン、そして海洋学校の学生たちの活躍により一日で終息した。

 

その海上テロ事件が解決した後、シュテルは真白から一緒に出掛ける約束をした。

 

そして、海上テロ事件後の初めての休日にシュテルは真白と一緒に出掛けた。

 

お出かけ先はシュテルがみほから茨城県の大洗にあるミュージアム施設のチケットを貰ったので、二人は朝早くに横須賀女子の学生寮を出て茨城の大洗へと出かけた。

 

出かけた先は茨城県、大洗にあるボコミュージアム‥‥

 

メインゲートには包帯塗れのクマが出迎え、更に建物自体が老朽化している印象を受けたため、閉園しているかのような出で立ちのボコミュージアムに一抹の不安を抱いた。

 

中にあるアトラクションも千葉の浦安にある某ネズミの国にあるアトラクションのパクリみたいなアトラクションだらけだった。

 

しかし、来場客が少なかったので、二人は並ぶことなく園内のアトラクションに乗ることが出来た。

 

そして、中央広場にある舞台にてボコのショーが行われ、粗方園内のアトラクションを乗りつくした二人はそのショーを見た。

 

内容は、このボコミュージアムのメインキャラであるボコが他の動物に絡み、ボコボコに返り討ちに遭う内容であったが、真白はボコられながらも何度も立ち上がるボコの姿勢に共感してボコのファンになった。

 

園内にあるお土産屋にて、真白はボコのぬいぐるみを購入し、ご満悦な様子だった。

 

ぬいぐるみの他に真白はボコの着ぐるみと記念写真も撮った。

 

 

ボコミュージアムを後にした二人は次に水族館へとやってきた。

 

まず、最初にやってきたのは大水槽の中に様々な種類の海の魚が居る海水魚ゾーン。

 

「おぉ、中々大きな水槽」

 

「流石、茨城県の中でも有数な港町‥魚の種類も豊富ですね」

 

普段から海に接する機会が多い二人であるが、魚をこうして見る機会は意外と少なく、せいぜい、航海中に釣りで魚を釣る時か、食事に出た時ぐらいであり、こうして大きな水槽で泳いでいる魚の姿を見ると、なんだか心が現れると言うか妙に落ち着く。

 

「あっ、宗谷さん。見て、見て、ダイバーの人がこっちに手を振っているよ!」

 

「エサやりみたいですね」

 

大水槽の中には水族館の職員がダイバー姿で来客たちに手を振ると、魚たちに餌をやり始める。

 

すると、魚たちは職員の下に集まってきた。

 

「そう言えば、私、ダイビングってやったことが無いんだとね。海に出ているのに‥‥宗谷さんはダイビングをやったことある?」

 

「私は長期休暇中に何度か嗜む程度に‥‥って言うか、真冬姉さんに強制的に連れられて無理矢理やらされたことが‥‥」

 

シュテルはこれまでの人生の中で前世を含めてダイビングの経験がないが、真白は長期休暇中に真冬に連れられてダイビングの経験があった。

 

「でも、楽しそう」

 

「ま、まぁ、いい経験にはなりますが‥‥」

 

「あっ、こっちにはウミガメが居る」

 

「本当ですね」

 

「まるで、こっちに手を振っているみたい」

 

ウミガメの泳ぎ方から、まるでウミガメがシュテルと真白に向かって手を振っているようにも見えた。

 

思わず反射的にウミガメに手を振るシュテル。

 

水槽内の魚たちを見ながら二人はどんどん水族館の中を進んで行った。

 

多くの種類のクラゲがいる幻想的なクラゲが居る水槽と深海の生物や大陸棚に生息する生物の水槽が並ぶ深海の海ゾーン。

 

日本一の大きさを誇るマンボウ専用の水槽と種類の多さが日本一を誇るサメの水槽が並ぶ大型魚ゾーン。

 

海の生物のことを学べる海の生き物科学館が存在するミュージアムゾーン1。

 

アシカやアザラシの海洋哺乳類ゾーン。

 

数多くのペンギンたちを展示するペンギンゾーン。

 

茨城の川に生息する淡水魚やザリガニたちが並ぶ川ゾーン。

 

大きな水草水槽やクジラやアザラシ、海鳥の骨格標本、世界最大級のウバザメやウミガメ、イルカ、ペンギン、海鳥の剥製が並ぶミュージアムゾーン2。

 

ありとあらゆる海の生物達の姿と生態を目で堪能するシュテルと真白。

 

普段から海と接している筈なのだが、こうして意識して海に生息する生物たちと接すると、どの水槽も実に好奇心や興味をそそられる。

 

二人は水槽を食い入るように観覧し、海の生物や愛くるしい海獣やペンギンたちを見ては一挙一動に思わず表情が緩んでしまう。

 

やがて、二人は最後のゾーンにやってきた。

 

そこは‥‥

 

 

ザバアアアアアァァァァ――――ン!!

 

 

「「おおおおぉぉぉぉぉ――――っ!!」」

 

巨大な水槽から天井に達するかのような大ジャンプで姿を現した二頭のイルカに興奮と驚愕の声を上げたシュテルと真白。

 

このオーシャンアクアゾーンにあるオーシャンシアターではイルカやアシカのショーが催されている。

 

ボコミュージアムのショーも真白は楽しんだが、着ぐるみではなく、生のイルカによるショーもまた別の面白さがある。

 

イルカと調教師とのコンビネーションもばっちりだ。

 

二人は前列付近の席に座っていた。

 

はじめこの席に着いた時、真白は、

 

(きっと、ずぶ濡れになるんだろうな‥‥)

 

自身の不幸体質のこれまでの経験から水槽に近いこの席では、必ずイルカに水をぶっかけられると予感していた。

 

しかし、水族館側もちゃんとこのような場合を想定しているので、ショーの前に雨合羽が配られており、それを着ていた。

 

「「わぶっ!?」」

 

すると、真白の予想通り、一頭のイルカが水槽の縁の方から顔を出すように飛び出した途端、大量の水しぶきが二人を襲った。

 

前列にいたためモロに掛かってしまい、髪などがずぶ濡れになってしまった。

 

「あぁ~やっぱり‥‥ついてない‥‥」

 

雨合羽を着てもあまり意味がなかったことに真白は自身の不幸体質を呪う。

 

しかし、シュテルの方は‥‥

 

「アッハッハッハッハッハッ!!」

 

当初はいきなり海水を浴びて呆然としたままであったが、すぐに滑稽な姿の自分に思わず大笑いしてしまった。

 

「い、碇艦長?」

 

「いやぁ~笑っちゃうね。イルカさんとしてはちょっとしたサービスだったのかな?ある意味、こうしてイルカさんに水をぶっかけられたのはついているんじゃないかな?ハッハッハッハッハッ!」

 

「は‥ハハハハハ‥‥」

 

シュテルに釣られて真白からも笑みが零れた。

 

その後も、次々と繰り出すイルカのショーを堪能し、名残惜しくもショーはすべて終了してしまった。

 

一応、イルカから水をぶっかけられた二人は係員からタオルを借りて濡れた箇所を拭いた。

 

「はぁ~名残惜しいけど、すごく楽しかったね。宗谷さん」

 

「はい。イルカショーで水をかけられた時は、不幸だと思いましたけど、それを差し引いても十分に楽しめました」

 

「あっ、そろそろお昼ご飯を食べようか?」

 

時刻はまもなく十二時‥‥

 

お昼ご飯にするにはちょうどいい時間だ。

 

「そうですね」

 

二人は水族館内にあるレストランへと入った。

 

昼時という事でレストランはそれなりに混んでいた。

 

多少待ったが、二人は店員の案内の下、席に着きメニュー表へと目を通す。

 

しばらく悩んだ後、店員を呼び注文する。

 

注文した料理が届くまで、二人はお冷の水を飲みながら談笑に花を咲かせる。

 

やがて、注文した料理が届く。

 

「それじゃあ‥‥」

 

「はい」

 

「「いただきます!!」」

 

二人は手を合わせて食事前の挨拶をして、目の前の料理に手を伸ばした。

 

茨城の中でも有数の港町である大洗。

 

その地元である大洗漁港で水揚げされたばかりの、新鮮でおいしい魚をこうして刺身にしてホカホカの白いご飯の上に乗せて食べる‥‥

 

二人が注文したのは地元大洗で捕れた魚を使用した海鮮丼だった。

 

水族館で海鮮丼を食べると言うのはいかがなものかと思ってしまうが、それでもメニュー表に『地元大洗漁港直送!!とれたて海の幸を使用した海鮮丼』と書かれていては食べない訳にはいかない。

 

「このお刺身美味しい!!」

 

「生しらすとカツオもなかなかの絶品です!!」

 

「味噌汁も海老や貝の出汁が利いていて深みのある味になっている」

 

地元、大洗で捕れた海の幸を使用した海鮮丼に舌鼓を打ちながら食事をしていると、近くの海でスキッパーに乗っている人たちの姿が見えた。

 

どうやら、近くの港でスキッパーのレンタルをしているみたいだ。

 

何気なく海を見てスキッパーに乗っている人たちが目に入った真白は、

 

「あ、あの、碇艦長」

 

「ん?」

 

「その‥‥実は、私、夏休み中にスキッパーの免許を取りまして‥‥」

 

「あっ、そう言えば夏休み前にスキッパーの練習をしていたもんね」

 

「は、はい‥‥それで‥その‥‥食事は終わったら、一緒に乗りませんか?スキッパーに‥‥」

 

「えっ?スキッパーに?」

 

「はい。碇艦長に改めて私のスキッパーの腕を見てもらいたくて‥‥ダメでしょうか?」

 

「いや、いいよ。何事も経験と継続が力だからね」

 

「ありがとうございます!!」

 

スキッパーの免許を取ったら、初めての相手はシュテルと一緒に乗りたいと思っていた。

 

しかし、真白が夏休み明けにクラスメイトたちにスキッパーの免許を取得した事を伝えると、何故か納沙が目を輝かせ、真白が運転するスキッパーの後部座席に座り、真白との二人っきりの時間を楽しんだ。

 

初めての二人乗りは納沙になってしまったが、こうしてシュテルと二人っきりでお出かけをしたのだから、シュテルとスキッパーの二人乗りが出来るのは今日がまさに絶好のチャンスなのだから、この機会を見逃す手はなかった。

 

 

食事を終えると、二人は早速レンタルスキッパーがある港へ向かう前に此処でもお土産屋を覗く。

 

シュテルはイルカとウミガメのぬいぐるみを購入し、真白もイルカのぬいぐるみを購入した。

 

水族館を後にした二人はレンタルスキッパーがある港に来ると、レンタルスキッパー屋にて受付を行う。

 

受付では真白が自分の名前、住所を受け付け用紙に記入し、店の従業員にスキッパーの免許を提示する。

 

受付が終わると、二人はボコミュージアムと水族館で購入したぬいぐるみを受付で預かってもらい、二人は救命胴衣を受け取り身に着けるとレンタルスキッパーへと乗る。

 

スキッパーは、晴風やヒンデンブルクに搭載されているスキッパーと同型のスキッパーで運転席には真白、後部座席にはシュテルが座った。

 

「では、いきます」

 

「OK」

 

準備が整い、真白はスキッパーのエンジンを起動させた。

 

二人を乗せたスキッパーはエンジン音を奏で、白波を立てながら大洗の海を走りだす。

 

納沙を乗せた時もそうであるが、今このシーンを黒木が見たら発狂するだろう。

 

「上手いよ、宗谷さん。安定な運転をしている」

 

「は、はい。ありがとうございます!!」

 

後部座席からシュテルが真白の運転を褒める。

 

しかし、真白は一見冷静にスキッパーの運転をしているかと思いきや、内心はかなり緊張していた。

 

その理由が、

 

(い、碇艦長が私に抱き着いている‥‥碇艦長が私に抱き着いている‥‥)

 

スキッパーで二人乗りしているので、後部座席に座るシュテルは真白の腹回りに腕を回して、身体を密着させていた。

 

ボコミュージアムのボコーテッドマンションではその中身があまりにもチープで真白はシュテルとのボディータッチに失敗したが、スキッパーに乗ることでシュテルとのボディータッチを成功するに至ったのだった。

 

シュテルはまさか、真白がそんなことを思っているなんて知る由もなく大洗の海の風景を楽しんだ。

 

真白にとっては、まさに至高の時間であったが、楽しい時間というモノは短く感じられ、レンタルスキッパーのレンタル時間となってしまいレンタルスキッパーを港に返した。

 

 

真白とシュテルが大洗へ遠出して楽しんでいる頃、横須賀では‥‥

 

「シロちゃん、居る?」

 

横須賀女子の学生寮にある真白の部屋を明乃が尋ねた。

 

しかし、部屋の主である真白は留守だった。

 

「あれ?シロちゃん居ないの?‥‥うーん‥今日は休みだし、実家に帰っちゃったのかな?」

 

真白は、大抵休日は部屋で勉強しているか実家に帰省しているかのどちらかであった。

 

部屋に居なかったことから、明乃は真白が実家に帰省しているのかと思った。

 

そこで、管理人室へ出かけ、管理人に聞いてみた。

 

「宗谷真白さんですね、ちょっと待ってください‥‥あっ、宗谷さんは帰省ではなく、朝早くに出かけていますね」

 

「えっ?朝早くから‥‥わかりました」

 

(朝早くからお出かけなんて、シロちゃんにしては珍しいなぁ~)

 

真白が朝早くから出かけるなんて珍しいと思いつつ、明乃は真白に電話を入れた。

 

Prrrr‥‥

 

「ん?‥艦長から?」

 

大洗にいる真白に明乃から電話がきた。

 

「もしもし」

 

「あっ、シロちゃん?寮に居なかったから電話をしたんだけど‥‥」

 

「は、はい。ちょっと所用で出かけていまして‥それで、何か用ですか?」

 

「その事なんだけど、今日の夜、空いている?」

 

「えっ?今日の夜ですか?」

 

「うん」

 

「まぁ、大丈夫ですけど‥‥」

 

「じゃあ、ちょっと、付き合ってほしいんだけど‥‥」

 

「わかりました」

 

明乃は今日の夜、自分に付き合ってほしいと真白に頼む。

 

真白はこの時、以前、納沙と明乃に宿題を教えた事があったので、明乃が宿題か参考の書の問題が分からない箇所があるので、それを自分に聞きたいのだと思っていた。

 

そのため、今日の夜は明乃に付き合うことにした。

 

「電話、明乃ちゃんから?」

 

「あっ、はい。夜、付き合ってほしいみたいで‥‥きっと、宿題か参考書の問題で分からない所があるから聞きたいのでしょう」

 

「そっか」

 

「さっ、次に行きましょう」

 

「そうだね」

 

シュテルと真白は時間が許す限り、大洗の町を日帰り観光するように楽しんだ。

 

 

一方、真白と電話を終えた明乃はスマホをしまうことなく、別の誰かに電話をかける。

 

「あっ、きみちゃん?私、明乃‥うん、ウチの副長も参加できるって‥‥うん、そう‥‥じゃあ、夜にね」

 

と、明乃は時津風副長の長澤に電話を入れ、今日の夜になにかをやる様子だった。

 

 

そもそもの発端は昨日の夜に遡る‥‥

 

シュテルと真白が大洗へ遠出する前日の夜‥‥

 

時津風艦長の榊原がお風呂から寮の自分の部屋に戻ると、ベッドの掛け布団が変に盛り上がっていた。

 

「また‥‥」

 

榊原はベッドに長澤が隠れているのだと思い、呆れながらベッドに寄り、掛け布団を捲ろうとする。

 

これまでの学生生活で、長澤が榊原の部屋に隠れて彼女を脅かす行動は幾度もあり、今回もその類だと思ったのだ。

 

そして、いざ掛け布団を捲ろうした時、

 

「艦長~~!!」

 

カーテンの裏から長澤が飛び出してきた。

 

「そっち!?」

 

掛け布団の下に潜んでいると思ったら、長澤はカーテンの裏に隠れていた。

 

では、ベッドの掛け布団の下の盛り上がりは何なのか?

 

榊原が掛け布団を捲ってみると、そこには自分がこれまで編んだ毛糸のセーターが詰め込まれていた。

 

「いや~布団から登場程度ではっもう驚いてくれないじゃないですか」

 

「それはそれでどうかと思うけど‥‥」

 

長澤はカーテンの裏から登場した理由を榊原に伝える。

 

これまで何度も榊原を驚かせようと試行錯誤をしてきたのだが、掛け布団の下からの登場はすでにワンパターン化しており、何より掛け布団の下に隠れていては、掛け布団が盛り上がっていては簡単にバレてしまう。

 

榊原の意表を突くため、掛け布団にセーターを詰め込んで、囮にして自身はカーテンの裏に隠れ、榊原の目がベッドに集中した所でカーテンの裏から飛び出したのだ。

 

長澤の読みは当り、榊原の意表を突くことが出来た。

 

「それで、どうしたの?」

 

榊原は長澤に何故、夜に自分の部屋を訪れたのかをもてなしの紅茶を出しながら聞く。

 

「ああ~そうでした、そうでした。夏休み前にちょっと話したじゃないですか。あっ、紅茶、ありがとうございます」

 

「夏休み前って、色々話たからどの話なのか‥‥?」

 

夏休み前には色々話をした。

 

期末試験や夏休み中の予定など、話題は尽きなかったので、長澤が言う『夏休み前の話』と言われてもどの話題を指しているのか榊原は分からなかった。

 

「肝試しですよ、肝試し。ほら~夏休みの予定を話していた時に‥‥」

 

「ああ‥‥そう言えば、そんな話もしたわね」

 

「あっ、ちなみに今の『ほら~』は肝試しのホラーとかかっていますよ」

 

「気づきがたい‥‥」

 

長澤のダジャレは分かりにくかった。

 

「まぁ、それは置いておきまして‥‥あれから少しずつ話してみて人数が集まったので近々実行に移す形で進行中です」

 

「えっ?本当にやるの‥‥?」

 

長澤は肝試しをやる気満々の様子であり、榊原が知らぬ間に着々と準備を進めていた。

 

「安心してください。肝試しと言っても心霊スポットとかに行くわけじゃないですから。今のところの、分かっている参加メンバーはうち(時津風)と天津風、晴風のメンバーです。それで、脅かし役と探索側に分かれます。つまりオバケはみんな人間なので呪いとか祟りとかの心配はいりません」

 

肝試しの舞台は近場の森で決して心霊スポットではなく、しかも脅かし役のお化けも同級生たちがやるので、危険はないと榊原に説明する。

 

「そういう心配をしているわけじゃないけど‥‥肝試しなんて平穏な気がしないわ。ふぅ~‥‥」

 

「まぁ、まぁ、楽しいですよ。きっとちなみに私も艦長も脅かし役です」

 

「あっ、そうなのね」

 

「探索側がよかったですか?」

 

「どっちでもいいわよ。もう‥‥」

 

「それならよかったです。差し当たり、艦長に似合いそうな可愛い衣装を身繕いましょう!!」

 

「オバケ役よね?」

 

オバケ役なのに可愛い衣装とは?

 

榊原はなんだか、長澤が企画した肝試しが何だか心配になった。

 

「はぁ~楽しかった~」

 

大洗の町を堪能したシュテルと真白は現在、横須賀への帰路についていた。

 

その最中、真白は今日のお出かけの感想を呟く。

 

「朝早くから出かけたけど、大丈夫?疲れてない?」

 

「少し‥でも、それを差し引いても今日はとても楽しかったです。ありがとうございます」

 

「それは良かった。でも、無理はしないでね。この後、明乃ちゃんと勉強なんでしょう?」

 

「は、はい」

 

「眠くなったら遠慮しないで言ってね。流石にこの状況下では膝は貸せないけど、肩は貸せるから」

 

「はい」

 

朝、横須賀から大洗へ向かったので、時間がかかることは分かっていた。

 

それは復路も同じで、しかも復路は大洗の町を彼方此方見て回った事や朝が早かった事、更に横須賀行きの船の揺れが心地よく真白の瞼が閉じるのに時間はかからなかった。

 

 

「うっ‥うーん‥‥」

 

ふとした揺れで真白が目を覚ますと、真白は自分がシュテルの肩に頭を乗せている事に気づく。

 

シュテルは真白が目を覚ました事に気づかずにスマホの電子書籍を見ている。

 

「っ!?」

 

真白は慌てて飛び起きようとしたが、このシチュエーションを自ら放棄するのはあまりにもおしい。

 

横須賀に着くまでまだ時間がありそうだ。

 

それならば、ギリギリまでこうしてシュテルの匂いを堪能しながらもうひと眠りするのも悪くない。

 

真白は再び瞼を閉じた‥‥

 

 

「‥‥さ‥ん‥‥む‥ね‥‥さん‥‥宗谷さん、起きて」

 

耳元でシュテルの声が聞こえてくると、真白の意識が覚醒してくる。

 

「ん?‥‥うん?」

 

真白が目を覚ますと、先程と同じく自分はシュテルの肩に頭を乗せていた。

 

「もうすぐ横須賀に着くよ」

 

「えっ?あっ、は、はい」

 

シュテルから横須賀に到着する旨を伝えられ、真白はシュテルの肩から頭を退けた。

 

横須賀に着いた二人は学生寮へと戻るとロビーで、

 

「あっ、シロちゃん」

 

明乃と出会った。

 

「あっ、艦長」

 

「‥もしかして、シューちゃんと出かけていたの?」

 

「えっ?あっ、は、はい」

 

「ふーん‥‥」

 

明乃はなんか納得がいかない様な少し不満な様子。

 

「うぅ~‥‥」

 

真白としてはなんかちょっと気まずい。

 

「ま、まぁ、今日、宗谷さんとのお出かけは私の提案なんだよ」

 

気まずい空気を読んでシュテルが明乃に今日、真白を連れ出したのは自分であると言う。

 

「えっ?シューちゃんが!?」

 

「うん。知り合いの人にボコミュージアムのチケットを貰って、宗谷さんがボコ好きって言っていたから」

 

今日出かけようと言い出したのは真白であったが、行き先を決めたのはシュテルであり、ボコミュージアムのチケットを出したのもシュテルであったので、今日の予定を全て立てたのは自分にしたことにしたのだ。

 

「ボコ?」

 

どうやら明乃はボコの事を知らないみたいだ。

 

シュテルと真白も今日までボコと言う名のキャラを知らなかったので、明乃が知らなかったのも不思議ではない。

 

「あっ、これだよ」

 

シュテルは真白のボコのぬいぐるみを指さす。

 

「うわっぁ!!可愛い!!」

 

「えっ?」

 

真白に関しては今日、ボコミュージアムでボコのネバーギブアップ精神に感動してボコのファンになったのだが、明乃はボコのぬいぐるみを一目見ただけで可愛いと言う。

 

シュテルとしてはボコのどこが可愛いのか、理解できなかった。

 

「それで、艦長。この後の予定ですが‥‥」

 

真白は昼間に明乃からの電話でこの後、明乃と勉強するモノだと思っていたのだが、この後明乃から発する言葉に凍り付いた。

 

「あっ、実はこの後、時津風クラスと天津風クラスの人たちと一緒に肝試しをやるんだよ」

 

「えっ!?き、肝試し!?」

 

明乃が発した『肝試し』と言う単語に真白は驚愕する。

 

「ちょ、ちょっと待ってください艦長!!何で肝試しなんてするんですか!?」

 

「えっ?だって、今日の夜、付き合ってほしいって言ったら良いって‥‥」

 

「肝試しなんて聞いていません!!」

 

「だって、シロちゃん、肝試しなんて言ったら来てくれないと思って‥‥」

 

「当たり前です!!」

 

「でも、付き合ってくれるって‥‥」

 

「ぬぅ~‥‥」

 

「まぁ、宗谷さんも明けちゃんの要件を聞かなかったのも悪いし、明乃ちゃんも要件を言わなかったのも悪いよ」

 

「「は、はい」」

 

「‥‥そ、それじゃあ、碇艦長も一緒に来てもらえますか?」

 

「えっ?」

 

「うん、それがいいよ!!シューちゃんも一緒に来てくれない?飛び入りでも多分大丈夫だろうし!!」

 

明乃と真白からこの後の肝試しに来てくれと頼まれたシュテルはなし崩し的に肝試しに飛び入り参加することになった。

 

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