やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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142話

時津風クラスの長澤が企画した肝試しに飛び入り参加することになった真白とシュテル。

 

まず、長澤が探索側のメンバーに使い捨てカメラを配り、今回の肝試しにおけるルールを説明し、次にシュテルが前座として怖い話をした後、いよいよ肝試しが始まった。

 

その頃、森の中にある探索路のある地点ではお化け役の二人の女子学生が居た。

 

「じゃあ、改めて段取りを確認しよう。探索組がココを通ったら‥‥」

 

隣にいるお化け役の相棒に語り掛ける天津風クラス所属の天津風砲術長である大指紀子(通称:のりちゃん)。

 

「お化け衣装に身を包んだ私たちが‥‥」

 

自分たちの役割の確認をするのは時津風クラス所属、時津風航海長の加茂つつじ (通称:かもちゃん)。

 

「「驚かす!!」」

 

「シンプル・イズ・ハードボイルド‥だぜ!」

 

「私がソッコーで驚かしてやるよ!!」

 

肝試しにハードボイルドを求める大指とやる気満々の加茂。

 

二人ともお化け役として気合十分だった。

 

しかし、そんな彼女たちの背後から‥‥

 

「あんたたちオバケ役?」

 

カシャ!!

 

大指と加茂に声をかけ、二人の姿を使い捨てカメラで撮影する高橋。

 

「これで早速、ポイントゲットね!!」

 

(オバケの格好をしていないけど、これ、ポイントになるのかな?)

 

「「‥‥」」

 

高橋はいきなりのポイントゲットで機嫌が良さそうだが、山辺は確かに大指と加茂はお化け役であるが、二人ともお化け役の格好をしていないので、ポイントに加算されるのか疑問に思った。

 

大指と加茂はそんな高橋の姿に唖然とする。

 

折角、肝試しのお化け役でやる気満々だったにもかかわらず、こうして出鼻を挫かれたのだから、唖然となるのも分かる。

 

「えっと‥‥のりちゃんと加茂さん。貴女たちも参加していたのね」

 

明乃が自分のクラスのクラスメイトの内、誰が参加しているのか知らないように山辺も自分のクラスのクラスメイトが一体誰が何人、参加しているのかを知らず、大指が参加していることに対して意外そうに言う。

 

「おやおや、舞台裏を覗くなんていけないぜ、ベイビー」

 

大指は呆れる様子で高橋と山辺に無粋だと注意する。

 

「何が舞台裏よ。と言うか、ここ開始地点から全然離れてない‥‥と言うより、ほぼ開始地点なんだけど‥‥」

 

そんな大指に対してツッコミを入れる高橋。

 

高橋の指摘通り、何と大指と加茂が隠れていたのは開始地点から目と鼻の先だった。

 

「そりゃあ、誰よりも脅かしたいからね。そのためには出来るだけスタート地点に近づかなきゃと思ったんだよ」

 

加茂は何故、この地点を選んだのか、その理由を高橋と山辺に伝える。

 

確かにこの地点ならば、他のお化け役のクラスメイトよりも先に脅かすことが出来る。

 

加茂も大指も探索側を少しでも驚かしたかったみたいだ。

 

「度が過ぎるでしょう!!」

 

「ある意味驚いたけどね‥‥」

 

やる気があるのはいいのだが、驚かす場所があまりにも開始地点に近すぎるため意味が無いように思える。

 

「それより大指!!今回はいいけど、次は晴風の艦長と副長、それからドイツの先輩が来るからその時はちゃんとやりなさいよね!!」

 

高橋はクラスメイトの大指に次に来るシュテルたちにはちゃんとお化け役としての役割を果たせと釘を刺す。

 

「OK。キャップ。任せときな」

 

「天津風クラスの実力を見せつけるのよ!!」

 

「仕切り直すぜ、ベイビー!!」

 

お化け役の大指と加茂、先発の探索側‥と言うか、高橋がワイワイと盛り上がっているが、大指と加茂の二人が居たのは開始地点のすぐそば‥‥

 

よって、

 

「もう少し離れたところでやってくれ‥‥」

 

開始地点で次の出発を待っているシュテルたちからも彼女たちのやり取りは聞こえており、真白はそんな天津風クラスのやり取りに対してツッコミを入れた。

 

 

「あの調子なら他のお化け役も大したことなさそうね」

 

のっけから全く恐くないお化け役を見たところから、この先で待ち受けているお化け役も大して怖くないだろうと判断した高橋。

 

意気揚々と探索路を歩いている。

 

「見つけ次第、撮って、撮って、撮りまくるわよ!!」

 

お化け役のクラスメイトたちを撮影してポイントを稼ぎ、勝利を目指す高橋。

 

「ダメよ。ちーちゃん」

 

しかし、山辺はそれに待ったをかける。

 

「‥何でよ。写真で点数が増えるんだから多く撮った方が有利じゃない」

 

「使い捨てカメラって最初から撮れる枚数が決まっているの。このカメラは二十七枚」

 

「二十七枚!?」

 

「折り返し地点まで行った証拠でそこでも一枚撮らないといけないから実質二十六枚」

 

「ぬぬぬ‥‥」

 

使い捨てカメラはデジカメと異なり、フィルムの枚数には限りがあるので、撮れる写真にも限りがある。

 

お化け役のクラスメイトたちが一体何人居るのか分からないし、点数配分も分からない。

 

その為、点数が大きそうなお化けを見極めて写真を撮らなければならないのだ。

 

「むやみに撮らないでちゃんと的を絞っていかないと」

 

山辺は高橋にこの肝試しのルールの本質を教える。

 

「それから、一枚撮る度にここのダイヤルを回して‥‥あと暗いとフラッシュ使わないと写らないよ」

 

「そう言う事はもっと早く言いなさいよ!!」

 

デジカメの場合、フラッシュ機能はちゃんと有しているが、設定である程度の暗さでもちゃんと撮ることが出来るが、使い捨てカメラを今回初めて使うのか、高橋は山辺の説明を聞いて声を荒げる。

 

「まさか、使い方を教える前に出るとは思わなくて‥‥」

 

山辺としても高橋に使い捨てカメラの使い方を教える前に大指と加茂が開始地点からあんなにも至近距離に居たのは予想外だった。

 

「さっきのは!?さっきのはちゃんと撮れているの!?」

 

高橋は大指と加茂の姿を映した時、フラッシュを焚いていなかったので、ちゃんとあの二人の姿が撮れているのか気になった。

 

折角のポイントゲットも真っ暗な写真では意味がない。

 

「まぁ、さっきのは写っていても写っていなくてもポイントにならないかも」

 

山辺は大指と加茂の二人を見た時の疑問からお化けの衣装を身に纏っていないので、例え写真に写っていてもノーカンになるだろうと予測した。

 

「意味ないじゃない!!」

 

一人熱くなっている高橋と冷静な山辺‥‥その背後には次なる刺客が二人を捕捉していた。

 

「おっ、来た、来た、あれは天津風クラスの艦長・副長コンビだね」

 

高橋と山辺を捕捉したのは晴風クラスの砲術員の三人だった。

 

「肝試しの定番コンニャク‥‥に限りなく近い温度と感度を再現したコンニャクモドキ(ヒメちゃん作)でバキューンとヒヤッとさせちゃうよー!!」

 

日置が釣り竿の糸の先に吊るしたコンニャクモドキを用意する。

 

「今更だけど、本物のコンニャクじゃダメだったの?」

 

武田が日置にコンニャクモドキではなくコンニャクを用意できなかったのかを訊ねる。

 

「ミカンちゃんがダメだって」

 

小笠原が武田に本物のコンニャクを用意できなかったわけを話す。

 

「この日の為に練習を重ねて思い通りの場所にコンニャクを飛ばせるようになった成果‥‥とくと見よ!!」

 

長澤から肝試しの企画を持ちかけられた時から日置は練習をしてきたみたいで、勢いよく釣り竿を振りかざす。

 

日置が振ったコンニャクモドキは狙い通り、高橋の背中の中に入る。

 

「ひっ!!‥‥ひゃぁぁぁぁぁぁー!!」

 

森の中に高橋の悲鳴が木霊する。

 

「なななななんか冷たくてツルツルしたものが背中にぃぃー!!」

 

「お、落ち着いて、ちーちゃん」

「取って、あゆみ!!早く取って!!」

 

「わかったから、暴れないで、服も脱がなくて大丈夫だから」

 

高橋は完全にパニック状態となっていた。

 

「「「大成功」」」

 

高橋のリアクションを見て、大満足な日置たちだった。

 

そして、日置たち三人の写真を収める高橋。

 

しかし、彼女の顔は不満そうだった。

 

「全然お化けじゃないじゃない!!」

 

三人がお化けの仮装をしていないので、先程の大指と加茂のようにポイントにならないのではないかと思ったのだ。

 

「ごめんねーでも、驚いていたじゃん」

 

「背中にコンニャク入れられたら誰でもああなるわよ!」

 

小笠原は高橋にナイスリアクションみたいに言うが、高橋としてはコンニャクを背中に入れられたら驚くし、悲鳴も上げると憤慨する。

 

「もっとこう‥パッと出たお化けをパパっと撮りたかったのに」

 

「でも、そう言うタイプもいるらしいよー」

 

武田がお化けらしいお化け役もちゃんといるとヒントを出す。

 

その時、

 

チョン、チョン、

 

高橋の肩が叩かれる。

 

「何よ、あゆみ」

 

高橋は山辺が自分の肩を叩いたのかと思い振り返ると、

 

フランケンシュタイン風のメイクを顔に施して額にお札を張った野間が木から逆さ吊りの状態で現れた。

 

「‥‥」

 

更に追い打ちをかけるように、

 

「マッヂィィィィ~」

 

お化けの仮装をした等松が現れた。

 

「ギャァァァァァァァァー!!」

 

再び高橋の悲鳴が森の中に木霊した。

 

 

折り返し地点‥‥此処でもお化けの衣装に身を包んだ二人のクラスメイトが居た。

 

虚無僧の衣装を着ているのは時津風クラス書記の西郷里乃亜 (通称:りのちゃん)

 

目玉とリボンがあしらわれたお化けの衣装を着ているのは時津風クラス電信員の塩崎佳弥 (通称:かやちゃん)

 

「お疲れ様でーす!!」

 

「にゃー?あっ、きみちゃん、つーちゃん、おつおつ」

 

「どうも」

 

塩崎は明るいノリでやって来た長澤と榊原に声をかけ、西郷は被っていた編み笠を脱いぎながら声をかける。

 

「問題ない?」

 

「はい。幽霊の一つも出ていません」

 

榊原が西郷に問題は無いかと訊ねると問題は無く順調だと返答する。

 

「さっきねぇ、天津風の艦長たちが来て折り返して行ったよー。つーちゃんたちは会わなかった?」

 

塩崎が二人に高橋がこの折り返し地点に来たことを伝える。

 

それと同時にこの折り返し地点に来た時に高橋たちとすれ違わなかったかと訊ねる。

 

「私たちは見回りをしつつテキトーに巡回しているレアキャラですからね」

 

「すれ違いだったみたいね」

 

長澤と榊原はちゃんと肝試しが安全に行われているのかチェックをしていたのだか、二人の巡回路では高橋たちとは会わなかったみたいだ。

 

「高橋艦長も面白い人だったなぁ」

 

「リアクションが素晴らしいですよね。あの人は」

 

塩崎はお化けの衣装を着た自分を見た時の高橋のリアクションを思い出し、長澤はお化け役のクラスメイトを見た時の高橋のリアクションを思い浮かべ、互いに笑みをこぼす。

 

「今度の艦内ラジオで今日のことをネタにしようかと思うんですけど」

 

「いいですねぇ。また私もゲストに呼んでください」

 

今回の肝試しにおける高橋の行動が時津風クラスのラジオで語られそうで、もし艦内ラジオで放送されたら、きっと時津風クラスの生徒から他のクラスに伝わり、高橋自身の耳に入るのも時間はかからないだろう。

 

「あの二人は盛り上がっているわね‥‥ふぅ~」

 

榊原は肝試しの中、盛り上がっている二人の様子を見て少し呆れる。

 

「そう言えば、りのちゃんもゲストで出たわね」

 

「おすすめ本の紹介で一度だけ‥‥」

 

長澤以外にも西郷も時津風の艦内ラジオでゲストに呼ばれたことがあるみたいだ。

 

「それでは、この後は晴風クラスのお二人とドイツの先輩が来ます。引き続きお願いしますね~」

 

「はいはーい!」

 

高橋たち天津風クラスに続いて、明乃と真白の晴風クラスとシュテルの三人が開始地点から折り返し地点を目指して森の中を進む。

 

「シロちゃんはホラーとか苦手だっけ?」

 

「へっ!?べ、別にそんなことはありませんが‥‥!‥艦長こそ、あまり得意ではないのでは?」

 

「確かに幽霊とかはちょっと怖いけど、キミちゃんも言っていたでしょう?お化け役はクラスの皆だって、だから楽しいかなって‥シューちゃんはどう?」

 

「あぁ~私の場合、経験則からお化けや幽霊よりも人間の方が怖いかな‥‥平気で人を利用し、裏切るし、一方的に理不尽なこと言って殴ってくるし‥‥おまけに人伝の噂を一方的に信じて真実を知ろうともしない」

 

「「‥‥」」

 

シュテルの発言を聞いて明乃も真白もなんだか重い。

 

「ん?」

 

その時、シュテルが何かに気づく。

 

「ど、どうしたの?」

 

「シッ!」

 

シュテルは唇に人差し指をあてる。

 

「「‥‥」」

 

「‥何か聴こえる」

 

「えっ?」

 

(ま、まさか‥例のサイレンじゃあ‥‥)

 

真白は肝試し前にシュテルから聞いた話で例のサイレンが聴こえたのかとビビるが、

 

「ううううう‥‥ううぅ‥‥」

 

「女の子の泣き声‥‥!?」

 

聴こえてきたのはサイレンではなく、女の子の泣き声だった。

 

「うううう‥‥ぴぇぇぇぇ‥‥」

 

「いや‥女の子というより、この声‥‥知床さんの泣き声じゃないか!!」

 

「あっ、ほんとだ!!」

 

「いや、ウチのユーリの声かもしれない」

 

真白はこの泣き声の正体がすぐに分かったようで怯えるどころか不機嫌そうにツッコミを入れる。

 

シュテルは鈴と声が似ているユーリの方かもしれないと言うが、あのユーリが泣くなんてちょっとありえない。

 

「リンちゃんに何かあったのかも」

 

「これも仕掛けの一つだと思いますが‥」

 

「でも、知床さん結構怖がりだし、一人で放置されているのかも」

 

「とにかく探しますか」

 

明乃とシュテルは鈴の身に何かあったのかもしれないとして、三人は鈴を探す。

 

すると、茂みの影にラジカセが置いてあり、鈴の泣き声はこのラジカセから流れていた。

 

「ラジカセから声が‥‥」

 

「よかった、泣いているリンちゃんは居なかったんだ‥‥そうだ、写真を撮っておかないと」

 

「これ、ポイントになるのかな?」

 

そもそも真白よりもビビりな鈴が肝試しに参加するわけがなかった。

 

彼女は小学校の時、肝試しに参加した際、あまりの恐怖からパートナーを墓地に置いて逃げ出してしまった過去があるので、そんな過去を持つ鈴が今回の肝試しに参加しているとは考えにくい。

 

明乃はラジカセの写真を撮るが変装していなかった大指と加茂と同じく、ラジカセの写真はポイントに加算されるのか微妙だった。

 

ラジカセの写真を撮っている明乃を見ているシュテルと真白。

 

そんな中、

 

「「っ!?」」

 

二人は背後から人の気配を感じた。

 

(な、なんだ?背後から気配が‥‥)

 

(誰か来たな‥‥)

 

三人が人の気配がする背後を見ると、そこには両手で顔を隠し、白いワンピースを着た山下の姿があった。

 

「や、山下さん‥‥?」

 

「あっ、しゅうちゃん!!」

 

(この人のあだ名、そっくりだな)

 

真白は恐る恐る山下に声をかけ、明乃は普通に声をかける。

 

そして、シュテルは山下と自分のあだ名が似ていると思った。

 

「‥‥」

 

山下は二人から声をかけられても返事をせずに両手で顔を覆ったまま‥‥

 

両手を退けるとそこには上目遣いで普段よりも目を大きく見開いた山下の顔があった。

 

「うわぁぁぁぁー!!」

 

目を大きく見開いた山下の顔を見て真白は反射的に悲鳴を上げ、明乃はカメラのシャッターをきる。

 

「二人とも、彼女は目を大きく見開いてだけだよ」

 

シュテルは冷静に真白に驚くことではないと伝える。

 

「あっ、そうでした‥‥」

 

「お疲れ様ぞな」

 

「バッチリ良かったよ」

 

すると、茂みから勝田と内田が姿を現す。

 

「あれ?知床さんは?」

 

晴風航海科の中で鈴の姿だけが見えなかったので、真白が鈴の事を訊ねると、

 

「ああ~リンちゃんは怖がりだから‥‥」

 

「肝試しのお誘いが来た時に涙目になって全力で断っていたぞな」

 

「だから、声だけならってことでラジカセに泣いている声を録音させてもらったの」

 

((やっぱりな))

 

何となく予測は出来たが、まさに予想通りの展開にシュテルと真白は納得してしまう。

 

「終わったら写真見せてね~」

 

晴風航海科のメンバーと別れ、折り返し地点を目指す三人。

 

「珍しい写真が撮れたね」

 

「まぁ、ある意味貴重な写真かもね」

 

目を見開いた山下の写真はシュテルの言う通りある意味では貴重なのかもしれない。

 

「これ、ポイントになるのでしょうか‥‥?とにかく、先を急ぎましょう」

 

ポイント配分が分からないので、山下の姿も果たしてポイントになるのか疑問に感じる真白だった。

 

その後も三人は、逆さづりになった野間やお化け役衣装の等松。

 

そして、お地蔵様が祀られている所に体育座りをしている時津風砲術長の槇村美春 (通称:みはるちゃん)と出会ったり、都市伝説の一つ、くねくね をモチーフにした同級生と出会い、折り返し地点にて、目印の看板を写真に収め、開始地点へと戻る。

 

その最中、茂みがガサっと揺れると茂みの影から五十六が姿を現した。

 

「わぁっ!!」

 

これに明乃も驚いた。

 

「なんだ、五十六かぁ~びっくりした~」

 

「こんな所に‥‥」

 

「肝試しももうすぐ終わりだし、カメラもあと一枚残っているから撮っちゃおう」

 

フィルムのラストは五十六に決めた明乃。

 

復路はどうせ、お化け役のクラスメイトたちも脅かしては来ないだろうと判断したのだ。

 

「完全に一枚無駄にしましたね」

 

「猫相手にフラッシュは危ないから、懐中電灯の明かりを照らして取った方がいいよ」

 

「じゃあ、私が照らします」

 

「ありがとう、シロちゃん」

 

こうして、五十六を撮り、あとは開始地点に戻るだけとなった三人。

 

明乃の予想通り、復路ではお化け役のクラスメイトたちからの脅かしはなく、夜の静寂な森が続いている。

 

「それにしても脅かし役が来ないと本当に静かだ」

 

シュテルが周囲を見渡しながら、夜の森の静寂さを口にする。

 

「え、ええ‥‥風に揺れる草や葉っぱ、それと虫の鳴き声しか聞こえませんね」

 

「ちょっと風流みたいな感じはするけど、静かすぎるって言うのもなんか怖いね‥‥」

 

「し、静か過ぎるのは、やはり‥‥」

 

「じゃあ、シューちゃん。何か他にも怖い話って知っている?」

 

「えっ?よりによってここで怖い話!?」

 

明乃はシュテルにこの状況下で怖い話をしてくれと言う。

 

真白はむしろ、何故この状況下で怖い話をするのかと声を上げる。

 

「うーん‥‥ただ、怖い話をするだけじゃなくて、クイズっぽい感じにしよう」

 

「クイズっぽい怖い話?」

 

「うん‥‥俗に言う『意味が分かると怖い話』ってヤツ‥‥意味が分からなければ、怖くないでしょう?」

 

「ま、まぁ‥それなら‥‥」

 

真白は完全に納得しては居ないが、意味を理解しなければ怖くないという事で渋々聞くことにした。

 

シュテルは歩きながら二人に意味が分かると怖い話を聞かせ始めた。

 

 

ある大学の山岳部のメンバー四人が、雪山を登山している最中に遭難してしまった。

 

夕方になって吹雪が強まり、四人があてもなく彷徨っていると、山の頂上に一軒の山小屋があるのを見つける。

 

助かったと思い、四人はその山小屋へと避難する。

 

しかし、その山小屋は無人でしかも暖房器具はおろか照明器具の類もない。

 

このまま夜を迎えれば睡魔に負けて眠りこけ、そのまま凍死してしまうだろう。

 

そこで四人は眠らないために一計を案じた。

 

ここで彼らを便宜上、A、B、C、Dと呼ぼう。

 

まず部屋の四隅に、A、B、C、Dの四人がそれぞれ陣取る。

 

まずAが壁を伝ってBの元に行き、Bの肩を叩く。それを合図にBは同様に壁を伝い、Cの元に行く。AはBが元々いた場所に残る。

 

Cの元に行ったBは、Cの肩を叩く。それを合図にCは壁を伝い、Dの元に行く。BはCの元々いた場所に残る。

 

Cに肩を叩かれたDは壁を伝って…

 

こうして順繰りに肩を叩きつつ、四角い部屋を壁沿いにぐるぐる回ることで睡魔を払い、彼らは無事に朝を迎え下山することが出来た。

 

後日、四人のメンバーの一人が友人にその時の体験談を話すと、その友人は青い顔をした。

 

その時、友人はこう言ったのだ。

 

「そんな‥バカな‥‥そんなことはあり得ない」

 

と‥‥

 

 

「さて、この友人は何故、青い顔をしてあり得ないと言ったのだと思う?」

 

シュテルが怖い話?をして、この話の中に登場する大学生の友人がどうして、あり得ない事だと言ったのかを明乃と真白に訊ねる。

 

「うーん‥‥」

 

明乃は意味が分からない様子で首を傾げる。

 

「‥‥っ!?ま、まさか‥‥」

 

一方、真白は考えなければいいのに、真面目な気質なのか、つい考えてしまい、答えが分かったようで、顔を青くする。

 

「あれ?シロちゃん。分かったの?」

 

真白の様子を見て明乃は、彼女はこの話の怖い点に気づいたのかと訊ねる。

 

「は、はい‥‥」

 

「えぇぇっー!!そうなの?ねぇ、教えて!!答えは何なの?」

 

明乃はまだ分からないらしく、答えが分かった真白に答えを訊ねる。

 

「えっ?本当に分からないんですか?」

 

「うん。だから聞いているんだよ」

 

「‥‥」

 

真白としては答えを口にするのも恐いが明乃がこうして正解を求めてきているのでこたえなければならない。

 

そこへ、

 

「じゃあ、解説しよう」

 

シュテルが真白に代わってこの話の解説を買って出てくれた。

 

シュテルはまず、地面に長方形を描き、それを山小屋に見立て、次に大学生四人を石で見立てる。

 

そして、その石を話の通り、動かしていく。

 

「ねっ、こうして動かしていくと、四人では一周で終わってしまう‥‥でも、話の中で大学生たちは朝までこの運動をして一夜を過ごしている‥‥この運動を続けるにはもう一人のメンバー‥五人目が必要なのさ」

 

「ホントだ!!」

 

「これは、降霊術の一つでもある『スクエア』と呼ばれる術で、霊能力の無い一般人でも霊を降霊させることが出来るとされているけど、大変危険な行為だから、絶対に真似はしないようにね」

 

シュテルは明乃に解説すると同時に、この真似は絶対にしないようにと注意した。

 

「ねぇ、ねぇ、他にはないの?」

 

明乃はシュテルにまだ他にも意味が分かると怖い話はないのかと聞いてくる。

 

「ま、まだやるんですか?」

 

真白としてはもう十分なのだか、明乃は怖がっている様子がない。

 

「だって、シロちゃんは答えが分かったけど、私は分からなかったんだよ。なんかちょっと悔しいし‥‥」

 

高橋の癖がうつったのか、明乃は意味が分かると怖い話の意味を解き明かしたい様子だった。

 

「えっ?それじゃあ‥‥」

 

明乃にせがまれ、シュテルは次の話を語る。

 

ただ、この時シュテルは、肝試しの開始時、自身が言った言葉‥‥

 

肝試しや怖い話をすると、霊が寄ってくる‥‥

 

その事をすっかり忘れていたのだった‥‥

 

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