やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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143話

時津風クラス所属の長澤が企画し、他のクラスメイトたちも参加し始まった肝試し‥‥

 

先発した天津風クラス所属の高橋、山辺コンビは既に折り返し地点を通過して開始地点に戻っており、次発の明乃、真白、シュテルの三人も折り返し地点に辿り着き、到達した証拠の写真を撮った後、開始地点へと戻り始める。

 

往路では脅かし役である晴風、時津風、天津風の各クラス所属のお化け役のクラスメイトたちは気合入れて探索側のメンバーを脅かしに来たが、復路ではその姿はなく、静寂な時間だけが過ぎていく。

 

夜の森は静かで聴こえる音と言えば時折吹く風とその風によって揺れる葉音、そして虫の声のみ‥‥

 

例え、この森が心霊スポットではなく普通の森だとしてもやはり外灯もない夜の森は不気味である。

 

そんな中、明乃がシュテルに怖い話をリクエストしてきた。

 

肝試し前に前座としてシュテルが怖い話を今回の肝試しの参加者に語ったが、その内容が船乗りである自分たちにとってあまり縁起がいいモノで無かったのだが、それでも明乃は怖いもの見たさなのかシュテルに怖い話をリクエストして来たのだ。

 

シュテルは真白がホラーやオカルトの類が苦手なことを考慮して、ただの怖い話をするだけではなく、意味が分かると怖い話を語った。

 

こうすれば、真白が意味を理解しなければ、怖くないだろうとシュテルなりの気づかいだった。

 

そして、シュテルが語った意味が分かると怖い話は、降霊術の一つであるスクエアを基にした山小屋の四人の話をした。

 

真白がオカルト・ホラーの類が苦手な事を配慮して語った意味が分かると怖い話であったが、肝心の明乃の方は、山小屋の四人の話の怖い部分の意味が分からず、逆に真白の方はすぐに話の意味が分かってしまった。

 

そこで、意味を理解出来ていなかった明乃にシュテルは山小屋の四人の意味を教える。

 

その後、明乃は再びシュテルに意味が分かると怖い話をリクエストしてきた。

 

開始地点まではまだ距離があり、明乃はこのまま放置してもせがみ続けてくるだろうから、シュテルはもう一つ、意味が分かると怖い話を話し始めた。

 

 

ある若者たちが怖いもの見たさで幽霊が出ると噂されるトンネルに肝試しに行った。

 

彼らは大雨が降る真夜中に、車で目的地の心霊スポットであるトンネルに向かった。

 

長く暗い山道をしばらく走っていくと、ようやく例のトンネルに到着した。

 

夜中で雨が降っているためか、若者たちの前に姿を見せた例のトンネルは噂以上におどろおどろしい雰囲気を醸し出しており、そんなトンネルを前にしてさすがの彼らも一瞬怖気づきましたが、意を決して彼らはトンネルの中を車に乗ったまま進んで行った。

 

 

(行くなよっ!! 引き返せぇ!?)

 

(何で、わざわざ幽霊が出るかもしれないと噂される心霊スポットなんかに行くんだよ!?)

 

真白はフィクションだと知りながらもシュテルの話を聞きながら、話の中に登場する若者たちに対して心の中でツッコミを入れる。

 

 

このトンネルの心霊現象は真夜中、トンネルの中でクラクションを三回鳴らすと心霊現象が起きるというモノだった。

 

若者たちはトンネルの中間地点で車を止めると、クラクションを三回鳴らす。

 

 

プッ――――!!

 

プッ――――!!

 

プッ――――!!

 

 

トンネルの中に車のクラクションが大きく木霊する。

 

若者たちは雨が降る中、トンネルの中で何か出ないか目を凝らして注意深く外を見つめた。

 

当初は本当に幽霊が出るかもしれないとドキドキしながら幽霊が出る瞬間を待つ若者たち。

 

しかし、意外にも彼らの前に幽霊どころか、特におかしい出来事もなくただ時間だけが空しく過ぎていく。

 

そして、それと同時に天候も回復することなく相変わらず車の天井には雨粒が当たっている。

 

いくら待っても幽霊も心霊現象も起きないことに対して若者たちは段々と白けてくると、時間も遅いことだし帰ろうと言うことになった。

 

 

「な、何もなかったんですか?」

 

真白が話の最中であるが、シュテルに質問する。

 

「うん、何もなかった」

 

「えぇぇー!!何もなかったの?」

 

シュテルの回答に明乃は何だか、物足りない様子。

 

「うん‥‥今の所ね‥‥」

 

「今の所?」

 

明乃が首を傾げる。

 

(本当は既に怖い部分を語っているんだけどね‥‥)

 

「話を続けるよ」

 

「あっ、うん」

 

「はい‥‥」

 

シュテルは再び口を開き、話を続ける。

 

 

結局、何も出なかったことに少しガッカリした若者たちであったが、それが却って気を良くしたのか、雑談をしたりして盛り上がっていた。

 

運転する若者はどうせ、この真夜中の時間帯に山奥のトンネルに自分たち以外の車は通らないだろうと思い、ノロノロ運転でトンネルの中を進んで行く。

 

そして、外の雨音だけに寂しさを感じた若者たちは、音楽を掛けて気を紛らわそうとする。

 

そんな中、若者の一人が急に運転する若者に声をかける。

 

「な、なぁ、早くこのトンネルを出ようぜ」

 

と‥‥

 

 

「「えっ?」」

 

此処まで聞いて、明乃と真白は息を呑む。

 

いよいよ、ここからがホラーな部分だと思ったのだ。

 

 

突然の言葉に全員がその若者を見ると、言葉を発した若者は顔を真っ青にして身体をガタガタと震わせて怯えている。

 

「お、おい、どうした?急に‥‥」

 

「なんだ?気分でも悪いのか?」

 

「それとも、俺たちをビビらせようとしているのか?」

 

他の若者たちは何故、その若者が顔色を悪くしているのか分からず、てっきり彼が自分たちをからかっているのかと思い、他の若者たちはゲラゲラと笑っている。

 

「いいから早く!!早く!!トンネルから出ろ!!」

 

突然の豹変ぶりに他の若者たちはその若者に何があったのか聞いても、その若者はただ早くトンネルを出ろとしか言わない。

 

やむなく、運転をする若者は車のスピードを上げてトンネルを出た。

 

 

「何が起きたんだろう!?」

 

「い、一体彼は何を見たんだ?」

 

明乃と真白は豹変した若者の様子が気になるみたいだ。

 

恐がっているという事は彼が何かを見たのだと思ったからだ。

 

若者たちの車はトンネルから出て、麓のコンビニに到着すると、顔色が悪い若者に事情を聞く。

 

するとその若者は、最初は顔色を悪くし、暫くの間は震えて黙っているだけであったが、意を決したのか恐る恐る口を開いた。

 

 

「「ゴクッ………」」

 

いよいよ、話のオチとなり、明乃と真白は思わず生唾を飲んで耳を傾ける。

 

一体彼は何を見たのだろうか?

 

この時点で明乃も真白もまだこの話の意味に気づいていなかった。

 

そして、シュテルはこの話のオチを口にする。

 

 

「なぜ、車に雨が当たっていたんだ!?」

 

と‥‥

 

 

「えっ?」

 

「ん?」

 

話のオチを聞いて、明乃は首を傾げ、真白は眉をひそめる。

 

二人はまだこの話の結末の意味をイマイチ理解出来ていない様子だが、少しして‥‥

 

「ああっ!?」

 

またもや、真白がこの話の意味を理解してしまった様で顔色を悪くする。

 

「も、もしかして‥‥」

 

「あれ?シロちゃんまた分かったの?」

 

「は、はい」

 

「ええーっ、何で?どうして?幽霊は出てこなかったんだよ?」

 

「か、艦長、気づいていないんですか?」

 

「何が?」

 

(やっぱり、気づいていない!?)

 

真白の問いかけに対してもやはり、明乃はこの話の怖い部分に気づいていない。

 

「艦長、話をよく、思い返してみてください」

 

「ん?」

 

「いいですか?まず、話の中に登場する若者たちは雨が降る中、幽霊が出るというトンネルに入って、何も無かったから引き返して出て行こうとした?ここまではいいですね?」

 

今度は真白が明乃に分かるようにシュテルが話した意味が分かると怖い話をかいつまんで説明していく。

 

「うん、そうだね。でも、幽霊は出てこなかったんでしょう?」

 

「‥‥幽霊を待っている時、若者たちの車はどこにありました?」

 

「えっと‥‥確かトンネルの中だっけ?」

 

「はい。そうです‥‥ただ、その時、車の天井には雨が当たっていましたよね?」

 

「うん‥‥でも、外は雨が降っていたんだし、車の天井に雨が当たるって普通のことじゃあ‥‥」

 

「艦長は、トンネルの中でも傘をさすんですか?」

 

「えっ?‥‥あっ!!そうか!!」

 

真白の説明を聞き、ようやく意味を理解した明乃。

 

「確かに雨が降っていてもトンネルの中じゃあ、雨は降ってこないよね!?」

 

「はい‥‥というよりも、雨が車の天井に当たるはずが無いですよ!?」

 

「じゃあ、車の天井には何が当たってたんだろう‥‥?」

 

「わかりませんし、知りたくもありません!!」

 

「まぁ、所詮はフィクションだから、二人とも、そこまで深く考えなくてもいいよ」

 

シュテルは二人に話しておいて何だか、あくまでもシュテルが知っている都市伝説と言うか、フィクションな話なので、若者たちの車の天井に一体何が当たっていたかなんて知る由もないし、真相は分からない。

 

「どうだったかな?意味が分かると怖い話は?」

 

そして、シュテルは二人に語った二つの意味が分かると怖い話の感想を訊ねる。

 

「私は意味が解けなかったから、怖いと言うよりも悔しかったかな」

 

明乃は怖がると言うよりも意味を理解することが出来なかったので、悔しそうだった。

 

「それは艦長の読解力がないだけでしょう」

 

(あっ、そう言えば、艦長は書類仕事が苦手でしたもんね‥‥)

 

真白は明乃とは違い、意味をいち早く理解してしまったので、怖い思いをしてしまった。

 

そして、明乃が意味を理解出来なかったのは明乃自身が文章の読解力が足りないことが原因であると言う。

 

「今度、もかちゃんに話してみようかな」

 

明乃は後日、もえかにもこの意味が分かると怖い話を語ってみようと思った。

 

「艦長と違って、知名艦長なら、分かると思いますけど‥‥」

 

真白は明乃とは違って、もえかは優秀なのだから、自分と同じくすぐに意味を理解するだろうと予測した。

 

「ねぇ、シューちゃん。他にはないの?」

 

明乃はシュテルに他の意味が分かると怖い話を知らないかと訊ねる。

 

「艦長、もういいでしょう」

 

真白は明乃にいい加減にしろと言う。

 

「碇艦長がいくら話しても艦長の読解力では、理解できませんよ、きっと」

 

「えぇぇーシロちゃん、ヒドイ!!」

 

真白としては明乃が意味を理解する前に自分が理解して怖い思いをするので、怖い話はもうやめようと言う。

 

そんな中、

 

ポタ‥‥ポタ、ポタ、ポタ‥‥ザァァー‥‥

 

怖い話の中で雨の話題を振ったせいか、突如雨が降り始めてきた。

 

「うわぁ、雨だ‥‥」

 

「ついてない」

 

肝試しが始める時、空は星が輝く快晴だったのに、いつの間にか空は曇っていたのか?

 

兎に角、その時シュテルたちは傘を持っていなかった。

 

「走ろう」

 

「うん」

 

「はい」

 

多少濡れるがこのまま歩いているよりは多少マシだと思い、開始地点まで走る三人。

 

「「「ハァ‥‥ハァ‥‥ハァ‥‥」」」

 

しかし、いくら走っても何だか同じ場所をグルグルと回っている様な感覚で、一向に開始地点に辿り着かない。

 

(おかしい‥これだけ走っているのにまだ開始地点につかないなんて‥‥)

 

(道を間違るほど、入り組んではいなかった筈なのに‥‥)

 

いくら、夜道で雨が降って居るとは言え、道を間違えるほど、この森の山道は入り組んではない。

 

それに女子の足とは言え、まだ開始地点に辿り着かないなんておかしい。

 

シュテルの不安は当然、明乃と真白も感じていた。

 

「何か、おかしくないですか?」

 

「うん‥‥まだ、開始地点につかないなんて‥‥」

 

「それに、折り返し地点から開始地点までこんなに離れていたっけ?」

 

シュテルは自分が抱いた疑問を口にする。

 

「確かに‥こんなに離れてはいなかった筈‥‥」

 

この雨のせいで順路を間違えて森の奥深くへ、入り込んでしまったのだろうか?

 

「ひとまず、あの木の下で雨宿りしよう」

 

「そうだね」

 

「はい」

 

このまま走り回ってもただ濡れるだけなので、目に入った大きな木の下で一時雨宿りをして道を確認することにした。

 

「うわぁ~びしょ濡れ~」

 

「雨でベタベタするぅ~」

 

「まったく、肝試しを企画するなら、ちゃんと決行日の天気予報もチェックしておかないとは抜けているぞ」

 

三人は焼け石に水であるが、ハンカチで濡れた顔や髪を拭き、真白は今回の肝試しを企画した長澤に不満を零す。

 

「とりあえず、現在位置を確認して‥‥ん?」

 

シュテルはスマホを取り出して現在位置を確認しようとしたが、スマホの画面を見て眉をひそめる。

 

「どうしたの?」

 

「‥‥スマホが圏外になっている」

 

シュテルは二人にスマホの画面を見せる。

 

そこには確かに『圏外』と表示されていた。

 

「じゃあ、私がきみちゃんに電話をして‥‥あれ?」

 

明乃がシュテルに代わって企画者である長澤に連絡をとろうとすると、明乃も自分のスマホの画面を見て首を傾げる。

 

「どうしたました?艦長」

 

「私のスマホも圏外になっている‥‥」

 

シュテルのスマホが圏外だったように明乃のスマホも圏外になっていた。

 

「‥‥」

 

真白もポケットから自分のスマホを取り出し画面を見てみると、やはり二人のスマホ同様、真白のスマホも圏外になっていた。

 

「肝試しが始まる前は確かに使えたのに‥‥」

 

「同じ森の中に居るのに圏外だなんて‥‥」

 

「これでは、現在位置の確認も誰かに連絡することも出来ませんね」

 

「「「‥‥」」」

 

三人は圏外になっているスマホをポケットに入れ、雨が降りしきる空を見上げる。

 

しかし、雨は止む気配はなく、心なしか雨脚もなんだから強くなってきている。

 

木の下に居るとはいえ、雨脚が強くなると横殴りの雨となり木の下に居ても意味がなくなってくる。

 

このまま雨の中を突っ切って開始地点まで行きたいところだが、道が分からないのでは意味がない。

 

三人があたりを見回していると、

 

「ん?」

 

シュテルが何かを見つけたのか小さく声をもらし、目を細める。

 

「どうしたの?」

 

「何かありました?」

 

「‥‥あそこに何かある」

 

シュテルが何かを見つけ、その方向を指さす。

 

明乃と真白の二人もシュテルが指さす方向を見る。

 

すると、確かに何か建造物みたいなモノがそこにはあった。

 

「何かの建物みたいだね‥‥」

 

「あそこにあんな建物あったっけ‥‥?」

 

ここがどこなのか分からないが少なくともこの森にあんな建物があったなんて気づかなかった。

 

「ねぇ、雨も凄いし、あそこで雨宿りしない?」

 

明乃は雨の勢いも段々と勢いを増していくので、このまま此処に居るよりあの建物で雨宿りしようと提案する。

 

「「えっ?」」

 

明乃の提案を聞いて、一瞬唖然とするシュテルと真白。

 

「えっ?でも‥‥」

 

「雨、まだ止みそうにないし、このまま此処に居ても濡れるだけだよ」

 

「た、確かに‥‥」

 

明乃がいう事も最もであり、このまま此処に居てもいつ上がるか分からない雨に打たれ続けていると風邪をひいてしまう。

 

シュテルと真白の二人にとっては不本意ながらも明乃の提案に乗り、三人は雨宿りの為に森の中にポツンと佇む建物へと向かった。

 

バシャ‥‥バシャ‥‥

 

雨でぬかるんでいる森の中を走っていると、

 

ブチッ!!

 

「あっ!?」

 

真白の髪を止めていたリボンが突如、はち切れてしまった。

 

「シロちゃん、どうしたの?」

 

「り、リボンが」

 

真白が慌ててリボンの留め具を探すが、夜間の雨が降っている森の中で小さなリボンの留め具を探すのは難しく諦めるしかなかった。

 

「はぁ~ついてない‥‥」

 

「‥‥」

 

髪をおろした真白の姿はそこはかとなく雪ノ下に似ていた。

 

姉である真霜の声が魔王こと、雪ノ下陽乃に似ている事も髪を下ろした真白が雪ノ下に似ている要因でもあった。

 

「どうかしましたか?」

 

シュテルの視線に気づいた真白は困惑した様子。

 

「あっ、いや、なんでもない‥‥」

 

咄嗟にシュテルはお茶を濁すように口ごもる。

 

そして、ようやくついた目的地であるが、木の下でこの建物を見つけた時に明かりが確認できなかったから三人は何となく、予感していたようにこの建物は廃墟だった。

 

ただ廃墟と行っても一般家屋ではなく、建物は鉄筋コンクリート造りの二階建ての建物で、窓には鉄格子が着いていた。

 

(窓に鉄格子‥‥?)

 

(なんなんだ?この建物は‥‥?)

 

窓についている鉄格子を見て、不気味さを感じるシュテル。

 

三人は建物の出入り口に辿り着く。

 

玄関の構造と窓にある鉄格子からこの建物は研究所か精神病院の廃墟みたいだ。

 

「木の下で見つけた時から何となくですが思っていましたけど‥‥」

 

「うん、この建物は‥‥」

 

「廃墟みたいだね‥‥」

 

建物を見上げる三人はやはり、この建物が廃墟なのだと改めて認識する。

 

「こんな廃墟だと通常は出入り口が封鎖されて‥‥」

 

真白が廃墟を見上げながら出入り口は封鎖されているだろうと呟く。

 

まぁ、この出入り口の部分にも屋根があるので、木の下よりは風雨を防げる。

 

「あれ?開いているよ」

 

そんな中、明乃が出入り口の扉のノブに手をやると、この廃墟の建物は封鎖されておらず、開いていた。

 

そして、明乃は廃墟の中に入ろうとしている。

 

「ちょっ、艦長!!勝手に入ってはマズイのでは!?」

 

真白は明乃の行動に慌てて『待った』をかける。

 

いくら廃墟とは言え勝手に入っては住居不法侵入となる。

 

「でも、お化け役の皆も、もしかしたらここに雨宿りに来ているかも」

 

「そ、それはそうかもしれませんが‥‥」

 

確かにこの急な雨の中で肝試しのお化け役の学生たちも自分たち同様、開始地点まで戻る途中にこの廃墟を見つけて中で雨宿りをしているかもしれない。

 

スマホが使えない現状、連絡をとることも出来ない。

 

よって、この廃墟の中でお化け役の学生たちが雨宿りしているのかも確認できない。

 

だが、明乃の言う通りお化け役の学生たちがこの廃墟で雨宿りしているのであれば、心強い。

 

「見たところ、監視カメラは設置されていないし、警備会社のシールは貼っていないから入ったところですぐに誰か来るわけじゃ無いだろうし、明乃ちゃんが言うようにもしかしたら、お化け役の人たちも中に居るかもしれないし‥‥」

 

シュテルも明乃が言ったようにもしかしたら、お化け役の学生たちがこの廃墟で雨宿りしているかもしれないので、その確認くらいはどうかと思い明乃と共に廃墟に入ることにした。

 

一人でこの廃墟の出入り口で待つのは嫌なのか、

 

「ま、待ってください!!」

 

真白は慌てて二人の後を追った。

 

 

「うっ‥‥カビ臭いうえに妙にじめじめとして嫌な感じですね」

 

廃墟の中に入った三人。

 

廃墟は長年閉鎖されていたのか、内部は埃が溜まっており、カビ臭く、ジメジメしており、顔を顰めるような独特の臭いがする。

 

真白が明乃とシュテルが抱いた廃墟内の空気の感想を代表して口にする。

 

「うん、そうだね」

 

「あまり長居したくはないな」

 

スマホが圏外で連絡機能と位置情報機能が使用不可となっているがディスプレイの明かりは点くので、肝試しで配られたライトとスマホのディスプレイの明かりで周囲を照らす。

 

出入り口から入った場所は広く、長椅子がいくつも放置されており、病院のロビーみたいな印象がある。

 

(長椅子にこの内部の作り‥‥やはり、此処は元病院か‥‥)

 

ロビーの作りを見てシュテルは此処が病院の廃墟だと判断した。

 

(それにしても、廃墟ってなんでこんなにモノが残っているんだ?)

 

(引っ越す時にモノを持って行かないのか?)

 

前世を含め、廃墟の画像や映像を見て、今まさにこの廃墟でもモノが溢れている。

 

(廃墟となっているが、精神病院跡地なのか‥‥作りはがっしりとしっかりした造りになっている)

 

「さて、ちゃっちゃっと回って他の人が居ないか確認しよう。もしいなかったら、このロビーで雨が止むまで待とう」

 

シュテルが方針立て、まずはこの廃墟内を探索してここに雨宿りしているお化け役の学生たちが居ないかを確認して、居なければこのロビーで雨が止むのを待とうと提案する。

 

「そうですね」

 

「うん!!」

 

こうして方針を決めた三人は廃墟の中を探索し始めた。

 

廃墟の中ではコッ、コッ、コッ、と三人の靴音と外から聞こえる雨音だけが響いている。

 

廃墟ながら、窓ガラスはすべて割れている訳ではなく、所々窓ガラスが欠けているだけで、窓ガラスはほぼ窓枠にはめ込まれていた。

 

(こういう廃墟の窓ガラスはヤンキーや肝試しに来た人がイタズラをして残っていない事が多いのだけど、珍しいな‥‥)

 

(それに通路や壁は埃が溜まっているが落書きや壊された様子もなく綺麗なままだ‥‥)

 

窓ガラス同様、廃墟と言うとヤンキーがたまり場にしたり、肝試しに来た人が落書きをしたり、建物内を壊したり、ゴミを捨てて帰る者が居る為、荒れている事が多い。

 

しかし、今自分たちが居るこの廃墟には落書きもなければ壊されたところもなく、床にはゴミも落ちていない。

 

(つい最近に移転したのか?いや、それにしては作りが古いし、溜まっている埃から察するに随分と昔に廃病院になった印象だ‥‥)

 

シュテルは廃墟の造りや溜まっている埃の量からこの廃墟の状態に矛盾を感じた。

 

(はぁ~なんで、肝試しが終わったと思ったら、こうして肝試しの延長みたいなことをしているんだ?私は‥‥はぁ~ついてない)

 

一方、真白はやっと折り返し地点で写真を撮り終え後は戻るだけなのに、戻る途中で雨に降られ、リボンの留め具を無くし、さっさと終わらせたい肝試しの延長みたいなことをやらされている自分の運命を呪う。

 

「す、すみません」

 

「「ん?」」

 

真白はきっと自分の不運が突然の雨を呼び寄せたのではないかと思いシュテルと明乃に謝る。

 

「ど、どうしたの?急に‥‥?」

 

シュテルは真白に突然謝られたので、その訳を訊ねる。

 

「き、きっと、この雨も私の不運が招いたんじゃないかと‥‥」

 

真白はこの突然の雨は自分のせいではないかと思い謝罪した訳を話す。

 

「そんな訳ないよ。天気が人一人の運気に左右されたら、それこそ、その人は神を越えた超人だよ」

 

「そうだよ」

 

シュテルも明乃も決してこの雨は真白のせいではなく、あくまでも偶然の出来事であると言う。

 

二人のその言葉に真白は救われたような気がした。

 

「さっ、他の人が居ないか探索を続けよう」

 

「はい」

 

三人は廃墟の中を進んで行った‥‥

 

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