やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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肝試し回、今回で終わらそうと思ったのですが終えることが出来ませんでした。

終了は次回に持ち越しとなりました。

三人が迷い込んだ廃墟はSIRENシリーズの宮田医院と犀賀医院を合わせたような造りをご想像してください。


144話

時津風クラス所属の長澤が企画した肝試しにて、突然の雨に見舞われたシュテルたちは森の中にひっそりと佇む謎の廃墟を見つけ、そこで雨宿りすることにした。

 

自分たち以外にもお化け役の学生たちがこの廃墟で雨宿りしているのかもしれないと言う思いもあったからだ。

 

三人が入った廃墟は窓には鉄格子がはめ込まれており、内部は通常の廃墟と異なり、窓ガラスは割れておらず、壊されていたり、ゴミが落ちていることもなく、廃墟としてはキレイな状態だった。

 

通常、廃墟は年月が経ってもキレイな状態の廃墟はヤバいと言う噂がある。

 

それは、廃墟でも管理が徹底されているか、心霊現象が必ずと言っていいほど、起こるので肝試し等で人が寄り付かない為である。

 

この廃墟には監視カメラも警備会社のシールも貼られていないことからもしかしたら、後者なのかもしれない。

 

しかし、三人にその廃墟の噂を知るすべもなく、お化け役の学生たちが居ないか廃墟の内部を探索していた。

 

「窓ガラス、割れていなくて良かったね」

 

明乃が通路を歩きながらこの廃墟の窓ガラスが割れていなかったことに安堵する。

 

もし、割れていたら横殴りの雨で雨粒がこの廃墟内に入り込んでいたからだ。

 

自分たちがこれ以上濡れていないのは窓ガラスがあってこそだった。

 

「そうですね。廃墟と言うともっと荒れているイメージがありますからね」

 

真白も廃墟の画像や写真をこれまでの人生の中で見た事ぐらいはあり、廃墟=荒れている と言う固定概念があったが、この廃墟でその固定概念を改めることになった。

 

「階段‥‥この建物、地下もあるんだ‥‥」

 

通路を歩いて行くと上に行く階段と下に行く階段に出くわす。

 

「うーん‥‥雨宿りしているかもしれないとは言え、上の階や下の階に行くかな?」

 

シュテルは仮にお化け役の学生たちがこの廃墟で雨宿りしていたとしたら、この一階以外の階に居るかと考える。

 

「いえ、碇艦長。彼女たちの好奇心を侮ってはいけませんよ。もし、居たとしたら、きっと雨が止むまでこの建物の隅から隅まで探検していそうですから」

 

真白がもし、お化け役の学生たちがこの廃墟で雨宿りしていたとしたら、彼女たちは大人しく雨宿りをしている筈もなく、折角だから‥‥と言って、この廃墟を探索しているだろうと予測した。

 

「私もそう思う」

 

それは明乃も同じ意見だった。

 

「二階はほぼ病室かナースセンターでしょうから、好奇心旺盛な彼女たちが行くとしたら特殊な部屋がありそうな地下でしょうね」

 

真白はただの病室やナースセンターではなく、手術室や霊安室といった特殊な部屋がありそうな地下の方がお化け役の学生たちが先に行っていそうだと言う。

 

「じゃあ、まずは地下からだね」

 

三人は地下の階に続く階段を下りた。

 

地下へと行くにつれ一階よりも空気はよどんでおり、変な臭いもする。

 

荒らされていない廃墟とは言え、ネズミや虫が居そうだ。

 

地下は窓も当然なく、廃墟故に電気も通っていないので、完全なる闇が支配している。

 

懐中電灯やスマホの光源だけでは全てを照らすことは出来ず、三人は足元を注意深く照らしながら地下に続く階段を下りる。

 

すると、三人の行く手をまるで阻むかのように分厚そうな鋼鉄製の扉があった。

 

扉には『関係者以外立入禁止』のプレートが貼り付けられている。

 

「うわぁっ、おっきな扉」

 

「まるで、金庫だ‥‥」

 

コン、コン‥‥

 

「この扉‥かなり、分厚いな‥‥」

 

シュテルは扉を叩くと金属の固く鈍い音がする。

 

その金属音から察するにこの扉が分厚い造りとなっていることが窺える。

 

(でも、なんで、地下の出入り口にこんな銀行みたいな金属製の扉が‥‥?)

 

シュテルはまるで銀行の金庫室にありそうな分厚い金属製の扉を見て訝しむ。

 

ただ、廃墟となってしまった今では立ち入り禁止のプレートの効果はなく、行く手を阻むはずだった分厚い金属製の扉は開いていた。

 

扉の向こうに広がる地下の階層は真っ暗なトンネルみたいでその光景に三人は思わず生唾を飲む。

 

此処に来る前にシュテルが話した意味が分かると怖い話では、トンネルが舞台となった話があったので、そのせいかより一層緊張してしまう。

 

「い、行くよ」

 

「う、うん‥‥」

 

「は、はい」

 

話をしていたシュテルも緊張した面持ちで地下の階を進んで行く。

 

「ん?」

 

「ど、どうしたの?」

 

突然、先頭を歩いていたシュテルは歩みを止める。

 

「あの部屋に何か落ちている」

 

シュテルはとある部屋の床に何か落ちているモノを見つける。

 

シュテルがその部屋に入ると辺りを見渡す。

 

「‥‥この部屋、ゴミを燃やすための焼却炉がある‥‥焼却室か‥‥」

 

「地下に焼却炉があるなんて変わっているね」

 

「たしかに、普通は外にありますからね」

 

「じゃあ、それは焼却する前に落ちたゴミかな?」

 

「‥‥」

 

シュテルは床に落ちていたモノを拾う。

 

「‥‥」

 

スマホのディスプレイの明かりで照らすと、

 

「手紙みたいだ‥‥」

 

「手紙?」

 

「何て書いてあるんですか?」

 

「えっと‥‥」

 

落ちていたのは手紙であり、シュテルはその手紙に目を通しながら手紙の内容を口にする。

 

 

俺は狂っていない。

 

おかしいのはこの病院の奴等だ。

 

ここにいたら本当に俺は狂っていない、助けてくれ。

 

お前だけだ。狂っていない頼むここから出してくれ。

 

くるっていなくるって…

 

以下、解読不能

 

 

シュテルが拾ったのは入院患者が書き記した手紙でその内容はまるで入院患者が監禁されている様な内容だった。

 

「‥もう一通ある」

 

シュテルが拾った手紙は一通ではなく、もう一通あった。

 

三人はその手紙も見てみる。

 

 

頼む、院長に気づかれぬようにこの手紙を持ち出してくれ。

 

病院の外の人間にこの手紙を渡して欲しい。

 

決して病院関係者、俺の家族にだけは見つからぬように気をつけろ。

 

あいつらに騙されるな。

 

あいつらは俺の口を封じる為に俺をここに閉じこめた。

 

カセットテープにその証拠が録音されている。

 

テープを聞けばあいつが

 

早くしないと、俺は‥‥

 

以下、解読不能

 

 

「‥‥」

 

「な、何これ?」

 

「‥‥多分、入院患者が書いた手紙だ‥‥でも、この手紙を出す前に医者か看護師に見つかって没収され、焼却されそうになった時、ゴミ箱からこぼれたんだろうな‥‥」

 

「でも、内容が結構無視できない内容ですが‥‥」

 

「ここが精神病院跡地じゃないかと思っていたのは窓に鉄格子がついていることから何となく察しがついたけど‥‥」

 

この手紙を書いた主が精神異常者だったのか、それとも手紙に書いてある通り、健常者なのかは分からないが、この病院がシュテルの予測通り精神病院跡地であるのは間違いなさそうだ。

 

「ここには居ないみたいだ‥‥」

 

手紙をその場に置き、当りを見回すがお化け役の学生たちは居ないみたいだ。

 

三人は焼却室を出て再び地下の階を歩く。

 

「「「っ!?」」」

 

地下の階を歩いていると、三人はあるモノを見つけ、驚愕する。

 

「こ、これは‥‥!?」

 

「ろ、牢屋?」

 

「なんでこんなモノが此処に‥‥」

 

地下に広がる光景‥‥

 

それは、刑務所や留置所と同じ、鉄格子の扉で作られた空間‥‥

 

牢屋だった‥‥

 

初めて見る牢屋に明乃と真白は息を呑み、シュテルはジッと牢屋の一つを凝視する。

 

(確か都市伝説とかで昔の精神病院は、精神異常者を閉じ込めたり、人体実験をしたりしたって聞いたけど、この牢屋を見る限り都市伝説は満更嘘ではなさそうだな‥‥)

 

「ね、ねぇ‥シューちゃん。これって‥‥」

 

「ああ、どう見ても牢屋だ‥‥」

 

「で、でも、何で病院に牢屋何て‥‥」

 

明乃と真白は精神病院とは言え、病院にどうして牢屋何て物があるのか不思議だった。

 

「一昔の精神病院には、黒い噂があってね‥‥」

 

「黒い噂?」

 

「それってどんな噂なの?」

 

「‥‥昔の精神病院では、入院患者に人権何て存在しない‥‥あまりにも煩い患者や暴れたりする患者はこうした地下牢に閉じ込めたり、新薬の人体実験の検体にされていたって聞いたことがある‥‥」

 

「人体実験‥‥」

 

「検体‥‥」

 

「この病院も今は廃墟とは言え、営業していた時は健全かつ適切な治療を行っていたとはいいにくそうだな‥‥」

 

「なんか、とんでもない所に来ちゃいましたね、私たち‥‥」

 

まさか、この廃病院が訳アリな病院かもしれないことに明乃と真白顔色を悪くする。

 

「早くみんなが居ないか確認しちゃおう」

 

明乃はもし、この廃墟の中にお化け役の学生たちが居るのであれば、彼女たちとすぐに合流してしまおうと言う。

 

「そうだね。廃墟だからこそ、何らかのアクシデントに巻き込まれてしまうかもしれないし」

 

シュテルは廃墟だからこそ心霊現象以外‥むしろ、心霊現象以上に起こる可能性が高い壁や天井の崩落、床下への落下等の事故にお化け役の学生たちが巻き込まれないか心配だった。

 

牢屋が続く地下の階を進んで行くと、今度は手術室へと辿り着く。

 

「手術室だって‥‥」

 

「なんか、この地下牢を見た後ですと、何か嫌な予感しかしませんね」

 

「でも、この中に居るかもしれないし‥‥」

 

シュテルと真白はこの地下に続く地下牢を見た後、手術室なんて不吉な予感しかしない。

 

もしかしたら、この病院が営業している時、この手術室で人体実験が平然と行われていたのかもしれないし‥‥

 

とは言え、中を確認しなければ手術室の中にお化け役の学生たちが居ないか確認できない。

 

もし、居るのであれば部屋の前で待っていてもいいのだが、居るのか居ないのか不明なので、手っ取り早く証明するには中を確認しなければならない。

 

意を決してシュテルが手術室の扉に手をかけ、扉を開ける。

 

ギィィィィ~‥‥

 

長年、放置され油がさされていない為、手術室の扉からは鈍い金属音がする。

 

手術室の中に入ると、他の学生たちが居ないか、明かりを照らす。

 

やはり、作りが古いせいか、手術室の床はタイル張りとなっているが、血の痕は見られない。

 

「血塗れかと思いましたけど、杞憂でしたね」

 

「ああ、そうだね」

 

流石に血の痕は消していったようで、手術室台以外のモノはなかった。

 

当然、中は無人‥‥

 

「居ないみたいだね」

 

「そうですね」

 

「長居は無用、次に行こう」

 

三人は手術室が無人だと知ると、さっさと手術室を出て行く。

 

次に三人が来たのは、

 

「資料室‥だって‥‥」

 

資料室だった。

 

「資料という事は引っ越しの際、全て持って行ったのでは?」

 

真白は資料という事で引っ越しか廃業の際、全て持って行ったか廃棄したのではないかと言う。

 

「まぁ、中身が空っぽでも調べないとね」

 

先程の手術室同様、空っぽだとしても中に人が居ないか調べなければならない。

 

この資料室の扉も手術室同様、金属疲労しており、開けると鈍い金属音がして開けにくかった。

 

「あっ!?」

 

「本がいっぱい‥‥」

 

この資料室は手術室と違い、本棚には医学書やカルテがそのまま放置されており、床にも散らばっていた。

 

「美波さんなら、此処にある本や書類になんて書いてあるか分かるんだろうな」

 

「まぁ、美波さんは医学博士ですからね」

 

「それにしてもこの資料室結構広いな‥‥ここは別れて探そうか?」

 

「えっ?」

 

「そうだね」

 

光源は三人分、あるので、広い資料室を三人固まって探すよりは効率が良いので、三人は別れて資料室を探索することになった。

 

ただ、単独行動をすることになり、真白は気まずそうな顔をしたが、ここで何かを言えば、

 

「えっ?シロちゃん怖いの?幽霊とか信じてないとか言っているのに?」

 

「まぁ、宗谷さんは怖がりだからしょうがない、しょうがない」

 

と、二人から憐れみの視線を向けられるのが嫌なので、ここは怖いのを我慢して資料室を探索する真白だった。

 

光源はスマホのディスプレイの明かりしかない中、資料室を探索する真白であるが、動きはビクビクして挙動不審だ。

 

(な、なんでこんなことに‥‥はぁ~やっぱり、ついてない)

 

周りは本棚しかないのだが、物陰から何かが飛び出してくるのではないかと恐怖心が沸き上がってくるのだ。

 

ビクビクしながらスマホの光源を頼りに資料室を探索していると本棚と本棚の間に人体骨格標本があり、真白はソレをモロ直視してしまった。

 

心なしかしゃれこうべと目が合ってしまった様な気がした。

 

「ぎやぁぁぁぁぁー!!」

 

緊張の糸が切れ、人体骨格を見た真白は悲鳴を上げる。

 

真白の悲鳴を聞いてシュテルと明乃が急いで駆け付ける。

 

「シロちゃんどうしたの!?」

 

「大丈夫!?」

 

「ひぃ、ほ、骨‥人の骨‥‥」

 

真白は震える指で人体骨格を指さす。

 

「‥‥骨格模型だよ。ほら、理科室とかによくある」

 

シュテルは人体骨格を調べてこれが本物の人の骨ではなく、理科室によくある人体骨格の模型であると真白に伝える。

 

「もう、シロちゃんったら」

 

模型であるという事でホッとしたのか真白が深いため息を吐く。

 

「ん?」

 

シュテルは奥の棚にあるモノを見て、目を細める。

 

「ど、どうしたんですか?」

 

「何?何?」

 

「この先の棚は本だけじゃなくて、ちょっと気味が悪いモノがあるみたい‥‥」

 

「「えっ?」」

 

シュテルにならって二人も光源を棚に当てる。

 

すると、棚には医学書や図鑑だけではなく、ガラス瓶に入った標本がずらりと並んでいた。

 

よく、小学校の理科室ではカエルや蛇、魚の解剖した標本があったが、この棚においてある標本は全て人間の標本だった。

 

瓶の中には無頭児や単眼症などの奇形な生まれをした赤ん坊が入っていた。

 

「な、何これ‥‥?」

 

「気持ち悪い‥‥」

 

「これ、みんな作り物?」

 

「いや、先天性の疾患で生まれてしまった奇形児みたいだ‥‥」

 

「じゃあ、これってみんな‥‥」

 

「本物の赤ん坊?」

 

「ああ‥‥」

 

作り物ではなく本物の赤ん坊の人体標本を見て、二人は息を呑む。

 

「ここから先一緒に行く?」

 

シュテルは真白に行動を共にするかと訊ねると、

 

「は、はいお願いします」

 

「それじゃあ、明乃ちゃんも一緒にどう?」

 

「う、うん」

 

明乃もこんな気持ち悪いモノを見せられてしまい、怖くなったのか、ここから先は三人で資料室の探索をした。

 

棚には不気味な姿の赤ん坊の標本が並んでいる。

 

勿論、奇形児以外にも理科室と同じく様々な生物のホルマリン漬けも置いてある。

 

しかし、お化け役の学生は居なかった。

 

「なんか、きみちゃんの肝試しよりも肝試しっぽくなっちゃったね」

 

明乃は長澤が企画した肝試しよりもこの廃墟探索の方が肝試しっぽく感じられた。

 

資料室を出て通路を歩き続けると、壁に突き当たり、降りてきた階段とは別の階段があり、三人はその階段を上がり一階に戻る。

 

その階段の手前にもやはり、地下に下りてきたばかりの時に見た分厚い金属製の扉があったが、こちらも開いていた。

 

「地下には居なかったね」

 

「うん」

 

「そうですね」

 

「入れ違いになったのかもね」

 

明乃はもしかしたら、自分たちより先に地下を出て二階に行ってしまったのかもしれないと予測した。

 

声を上げてお化け役の学生たちが居るか居ないか確かめても良いのだが、不審者が居ないとも限らないので、声を上げたくともあげられなかった。

 

「さて、次は二階か‥‥」

 

シュテルはチラッと二階に続く階段を見る。

 

一階、地下室と空振りに終わったことから二階にもお化け役の学生たちは居ないのではないのかと思えてきた。

 

「本当に居るのか?」

 

真白もやはり、そう思えたのか疑問を口にする。

 

「でも、折角だし、二階にも行ってみよう」

 

地下で牢屋や奇形児や様々な生物のホルマリン漬けを見ておきながらも明乃は二階にはどんなモノがあるのか興味があったのか、恐怖よりも好奇心が勝っていた。

 

彼女にとって、二階にお化け役の学生たちが居ようが居なかろうが関係なかったのかもしれない。

 

「はぁ~分かりました」

 

「行ってみようか」

 

そんな明乃の天真爛漫な性格でこの場の空気が和み三人は二階へと向かう。

 

相変わらず窓には鉄格子がついているが、地下と異なり、二階は普通の病室にナースセンターだった。

 

(地下と異なり二階は普通の病室か‥‥まさに天国と地獄を体現しているな‥‥)

 

窓に鉄格子付きの点を除いた普通の病室と地下牢‥‥

 

どちらが天国であり、どちらが地獄かなのかは火を見るよりも明らかである。

 

地下と異なり、今度は明乃が先頭を歩き、シュテルが最後尾を歩く。

 

二階に上がると、やはりそこは普通の病室が続いている。

 

コッ、コッ、コッ、とコンクリートを歩く音窓ガラスを打つ雨音だけが響く。

 

病室には朽ちたベッドや椅子、テーブルが放置されている。

 

そして、ナースセンターには事務机や椅子、古めかしい医療器具が放置されていた。

 

「あっ、これって‥‥」

 

すると、明乃が何かを見つけた。

 

「どうしたの?」

 

「何かありましたか?」

 

「日記がある‥‥」

 

「日記?」

 

「看護師がつけた介護日誌かな?」

 

明乃は日誌を見つけた。

 

ナースセンターにあったので、看護師が患者の容態や様子を記した介護日誌かと思った。

 

地下牢やあの手紙の内容から、何か恐ろしい事‥‥人体実験の経緯や結果が記されているのかと思い、ドキドキしながら日誌の表紙を捲る。

 

 

7月29日(木)

この頃、先生の様子がいつもと違う気がする。

口数が少ないのはいつものことだけど、とても疲れているみたい。

時々、何も言わずにどこかにいなくなってしまうし……心配……。

 

 

7月30日(金)

今日も先生は何も言わずに帰ってしまった。

どこに行くの?って聞きたいのに聞けない。

だって何だか聞くのが怖い……。

先生と通じ合ったと思ったこの気持、私だけの勘違いだったらと思うと怖くて聞けない。

先生、今どこにいるの……?

 

 

7月31日(土)

昨日の夜、先生の後をこっそりと追いかけてしまった。

私って本当にバカみたい。

先生は地下の階に行ってただけだったんだもの。

個人的な研究をあそこで続けてるのかな?

本当に勉強熱心な先生……そしてバカな私……。

でも何で先生は地下にいることを皆に秘密にしてるのかしら?

 

 

8月1日(日)

明日は日勤だし勤務後にもう一度、地下の階に行ってみよう。

差し入れのお弁当を持って、先生を驚かしちゃう。

先代の院長夫人はあんな人だったから、先生は手作りの味をあまり知らないはずだし。

本当の先生をわかってあげられるのは私だけ。

私だけが先生のさみしさをいやしてあげられる。

 

 

「「「‥‥」」」

 

日誌の内容は三人が思っていたモノとは異なり、此処に勤めていた看護師の個人的な日記だった。

 

「なんか、思っていたのと違ったね」

 

「そ、そうですね」

 

「でも、この日記からあの地下の階は此処に勤めていた看護師でも一部の人間しか入れなかったみたいだ‥‥」

 

「「‥‥」」

 

シュテルの指摘を聞き、明乃と真白は改めて日記の内容を見る。

 

まるで、先程、シュテルが話した意味が分かると怖い話みたいだった。

 

日記を事務机の上に戻し、チラッと棚を見ると、入院患者たちのカルテもそのまま放置されていた。

 

(おい、おい、個人情報なんてあったもんじゃないな‥‥)

 

放置されているカルテを見て、シュテルはいくらなんでも閉院にするにしても転院するにしても入院患者のカルテの処置はちゃんとするべきだと思った。

 

(ただ、この病院にぶち込んだ家族や身内たちはぶち込んだ人たちの事をかなり疎ましく思っていただろうし、合法的に始末してくれることを望んでいたのかもな‥‥)

 

地下で見たあの牢屋や手紙を見る限り、病院関係者はもちろんの事、この病院に患者を入院させた者たちも普通に治療目的もあるかもしれないが、この病院が訳あり病院だと知っていたら、治療と称し合法的に患者を始末してくれると言う打算があったのかもしれない。

 

ナースセンターでは特に恐怖要素はなく、ついでにお化け役の学生たちも居なかったので、ナースセンターを出た。

 

ナースセンターを出て二階の通路を明乃、真白、シュテルの順で歩いて行くが、やはりお化け役の学生たちはおらず、病室がずらりと並ぶ風景が続いていく。

 

そんな中、

 

「っ!?」

 

一番後ろを歩いていたシュテルは突然歩みを止める。

 

「ん?どうしたの?シューちゃん」

 

「何かあったんですか?」

 

突然、歩みを止めたシュテルに明乃と真白は声をかける。

 

「あっ、いや‥‥その‥‥二人とも、先に行って‥‥すぐに追いかけるから‥‥」

 

「えっ?」

 

「どうして?」

 

「そ、その‥‥」

 

シュテルンの挙動は少し不審であった。

 

二人は何故、シュテルの挙動が不審なのか首を傾げるが、その理由はシュテルが今立っている場所で何となく察した。

 

シュテルが今、立っているのはトイレの前‥‥

 

しかもこのトイレ、扉が無く通路から内部が丸見えだった。

 

二人はシュテルがトイレに行きたいのだと思ったのだ。

 

しかもトイレの前扉が無い事で二人に見られるのがきっと恥ずかしいと思ったのだ。

 

「じゃあ、ゆっくりだけど、先に行っているね」

 

「本当に一人で大丈夫ですか?」

 

真白はシュテルに一人でトイレに入るなんて大丈夫なのかと訊ねる。

 

「だ、大丈夫‥‥だよ‥‥」

 

「‥‥」

 

真白にはシュテルの声が心なしか震えているように聞こえた。

 

しかし、そこは先輩としての面子で強がっているのかと思った。

 

「で、では‥‥」

 

真白は後ろ髪を引かれるような思いで明乃と共に先に行く。

 

「‥‥」

 

二人を見送ったシュテルは自分の足元を見る。

 

すると、シュテルの足を白い二本の手ががっしりと掴んでいた。

 

あの時、シュテルは二人に助けを求めれば求める事も出来たのだが、その際、もしかしたら二人にも危害が加わるかと思ったのだ。

 

しかし、この時シュテルが二人に忠告をすればこの先、明乃と真白が恐怖を体験することはなかったのかもしれないが、シュテル自身もこの時は恐怖とパニックで思考力が低下していたのだ。

 

パニックになっても叫ばなかったり、取り乱すことがなかったのは学生艦の艦長としての経験からであった。

 

そして、明乃と真白の二人がシュテルの足をがっしりと掴んでいる白い手に気づかなかったのは、ライトでシュテルを照らした時、上半身とトイレのプレートを照らして、足元を照らさなかったので、気づかなかった。

 

「‥‥」

 

シュテルが緊張した面持ちで自分の足を掴んでいる白い手を見ていると、

 

「っ!?」

 

横にあるトイレから無数の手が伸びてきた。

 

「むぐっ!!」

 

その内の一本の手がシュテルの口を塞ぎ、他の手はシュテルの四肢や胴をがっしりと掴んできた。

 

無数の手がシュテルの身体、手足を掴むと、足を掴んでいた手は消え、無数の手はシュテルをそのままトイレの中に引き釣り込んだ。

 

「い、碇艦長、やっぱり‥‥あれ?」

 

心配になった真白が振り返るとそこにはシュテルの姿は既になかった。

 

「もう、トイレの中に入ってしまったのか‥‥」

 

真白はシュテルがトイレに入ってしまったのかと思い明乃の後を追った。

 

そんな二人の姿をトイレの中から無機質な蒼い色の目がジッと見ているのを当然、二人は気づいていなかった。

 




はいふりコミック版の最新刊では、他校の先輩方の過去やアニメやアプリでは未登場のキャラも増えていき、比叡の艦長もようやく登場‥‥

劇場版にて武蔵航海長としての役職しか与えられなかった武蔵の航海長もいずれは名前を貰えるかもしれませんね。

この他にも武蔵を含め、時津風、天津風の生徒らもまだまだ登場する可能性があります。

ドラゴンボール超のようにアニメとは違いコミック版独自の路線がはいふりでも広がっていきそう。
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