やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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中等部はこれにて終了。
後半に少しだけ、日本でも動きがありました。


14話

 

中等部卒業前にイタリアのナポリへと遠洋航海でやってきたシュテルは同じクラスメイトのジークリンデ・エレミアと共にイタリアマフィアに誘拐されて臓器・人身売買に巻き込まれそうになったが、エレミアの体術のおかげでマフィアを返り討ちにしたが、攻撃が浅かったのか、マフィアのリーダー格の男が早々に意識を取り戻し、エレミアに銃を向けた。

そこをシュテルがエレミアを突き飛ばして、彼女を庇い、シュテルはマフィアの凶弾に倒れる。

シュテルを撃ったマフィアは怒ったエレミアの手によって麻酔無しの強制整形を受ける羽目になった。

その場に居たマフィアを全員片付けたエレミアは教官に電話を入れ、現状を報告する。

そして、教官経由で地元警察へと連絡がいき、現場に警察と救急車が到着し、マフィアは地元警察に逮捕されたが、シュテルとリーダー格の男は病院へと搬送された。

 

「エレミアさん!!」

 

病院の手術室前の長椅子ではエレミアが項垂れるように座っていると、知らせを聞いたミーナ教官がやって来た。

 

「教官‥‥」

 

「碇さんの具合は!?」

 

「お医者さんが言うに少し危ないみたいです」

 

「そんなっ!?」

 

「銃弾は右胸郭を貫いて背中で止まっていて、胸動脈の一部からの出血が相当あるみたいで‥‥」

 

エレミアは医者から聞いたシュテルの現状をミーナ教官に伝える。

 

「教官、もし碇さんが死んだりしたら‥‥ウチは‥‥ウチは‥‥」

 

「バカな事を言わないの!?」

 

「で、でも‥‥でも‥‥」

 

エレミアは最悪の事態が脳裏を過ぎり片手で顔を覆う。

 

「エレミアさん。今はお医者様の腕と碇さんの生命力に賭けましょう。嘆くのはそれからでも遅くは無い筈よ」

 

「‥‥」

 

ミーナ教官はエレミアを励ますが、彼女は俯いたままであった。

そんな中、手術室から看護師が慌てた様子で出てきた。

 

「っ!?すみません、碇さんは!?」

 

エレミアはそれを見て、看護師へ真っ先に駈け寄る。

 

「そ、それが患者さんの輸血用の血液が足りなくて‥‥このままですと患者さんが‥‥」

 

「「っ!?」」

 

看護師の言葉を聞いてエレミアとミーナ教官に衝撃が走る。

 

「碇さんの血液型は何型なんですか?」

 

ミーナ教官が看護師にシュテルの血液型を訊ね、看護師が二人にシュテルの血液型を伝える。

 

「私の血液型は碇さんと違うから使えないわね‥‥」

 

ミーナ教官は悔しそうに言う。

こんな時こそ、教官として生徒の為に役立ちたかったのだが、血液型が違ってはどうしようもない。

そんな時、

 

「じゃあ、ウチの血を使って下さい!!」

 

エレミアが自分の血を使ってくれと言う。

 

「「えっ?」」

 

エレミアの提案にミーナ教官も看護師も一瞬、唖然とする。

 

「ウチの血液型なら、碇さんと同じやから、ウチの血を碇さんに使って下さい!!」

 

「分かりました。ですが、一応、検査しますので採血室まで来てください」

 

「はい」

 

「エレミアさん‥‥その‥いいの?」

 

「元々ウチを庇って、碇さんが撃たれたんや‥今、碇さんの為にウチが出来る事があるなら、ウチはそれをやるだけです。教官」

 

エレミアは今、自分にシュテルの為に出来る事が見つかった事で、先程とは違いほんの少しだけ前向きな気持ちとなり採血室へと向かった。

結果的にエレミアが血液を提供してくれたおかげでシュテルの手術は成功した。

ただし、シュテルが意識を取り戻したのは病院に担ぎ込まれてから五日後の事だった。

その間、マルクグラーフは最初の計画よりも長くナポリに停泊する事になったが、シュテルの事件の事もあり、上陸は生徒の安全の為に禁止されていた。

シュテルと同じクラスメイトは銃で撃たれたシュテルの事を心配していた。

クリスとユーリは病院へと行きたかったが、教官らから止められ、ただ待つだけしか出来なかった。

クラスメイト達は事情を知っているエレミアに絶えず事情を訊ねてきた。

だが、他のクラス‥特に血統主義者の生徒からはシュテルに対する不満や根も葉もない噂が立ち始めた。

 

シュテルが撃たれたのはマフィアにその体を使って取り入ろうとして失敗して撃たれた。

 

マフィアの犯罪現場を目撃して手柄を立てようとして首を突っ込んで撃たれた。

エレミアはそれに巻き込まれた。

 

これらの噂を鵜呑みにした血統主義や日頃からシュテルの成績に嫉妬を抱いている生徒は折角停泊しているのに上陸できない鬱憤を晴らすかのように陰でヒソヒソと陰口を叩いていたが、その噂もエレミアとクリスのO・HA・NA・SHIによって鎮静化する事となった。

 

倉庫でマフィアの凶弾を受け、意識が段々遠のいて行く中、シュテルは此処で死ぬのかと思った。

血が抜けて体温が下がり、体中が寒く、力が抜けていく。

死ねばまたあの女神と出会う事になるのだろうか?

もし、会えたら短い間でもこの世界はとても楽しめた。

と、シュテルはエリスにそのお礼を言うつもりだった。

そして、もう一度、この世界に転生したいが、同じ世界への転生では記憶を失くしての転生となり、もう一度この世界に来た時、自分はクリスやユーリの事を忘れていることになる。

あの二人となら、前世で手に入れられなかった本物の関係が築けると思っていた。

未練があるとすれば、それだろう。

前世では自分の命なんてどうでも良いとさえ思っていたのに、今ここでは死にたくないと必死に思う自分が居た。

 

「うっ‥‥うぅ~‥‥」

 

シュテルは重い瞼をあけると真っ白い天井が視界に入る。

 

「‥‥知らない天井だ」

 

思わず見慣れない天井を見て、お決まりの台詞をポツリと呟く。

しかし、周りから漂って来る薬品のにおい、腕に刺さっている点滴のチューブ。

真っ白いベッドにシーツ‥‥

それらの要素から此処はあのエリスが居た選択の間ではなく‥‥

 

「病院?」

 

起き上がろうとしたが、右肩に走る激痛と身体が鉛のように重く思ったように動かない。

シュテルが天井を呆然と眺めていると、病室のドアが開きミーナ教官が入って来た。

 

「碇さん!?よかった、目が覚めたのね」

 

「教官‥‥」

 

「碇さん、貴女は五日間も意識が混濁していたのよ」

 

「五日間も‥‥」

 

「でも、よかったわ。意識が戻って‥‥クラスの皆はとても心配していたのよ」

 

「‥教官」

 

「ん?なに?」

 

「今回の件については大変、御迷惑をかけました」

 

「そんな事は無いわよ。今回の事で、ナポリの街で頻発していた誘拐事件に臓器密売事件の解決に尽力したんだから。それで、今回の功績を称えて地元警察が碇さんとエレミアさんを表彰したいって言っていたわよ」

 

「実際にマフィアを倒したのはエレミアさんですから、表彰を受けるのはエレミアさんだけでいいです。私は事件解決の為に何かをしたわけではありませんから」

 

「それでもその功労者のエレミアさんを守ったのは紛れもなく碇さん、貴女よ。それならば、表彰を受ける資格はあると思うけど?」

 

「‥‥」

 

シュテル自身は表彰を受けるつもりはないが、でも、自分が受けないと恐らくエレミアも今回の表彰を蹴るだろう。

折角、クラスメイトが表彰を受ける程の功績を叩き出したのに自分のエゴの為にその機会をフイにするのは忍びなく、シュテルはエレミアと共に表彰を受ける事にした。

 

「それで、私はいつ退院することが出来ますか?」

 

「お医者さんの話ではあと十日くらいで歩いてもいいみたい。でも、当分の間、右腕はつかえないけど‥‥」

 

「十日っ!?‥‥それは困ります。私一人のせいで10日もスケジュールを遅らせる訳にはいきません。意識は戻ったんです。今すぐにでも退院を!!」

 

シュテルは無理にでも起き上がろうとするが、身体に力が入らず、身体を少し浮かしただけで、再びベッドに沈む。

 

「ほら、ダメよ、無茶をしちゃ‥‥」

 

「で、ですが‥‥スケジュールも遅れ、今回の事件のせいで学校の評判が落ちたりしたら‥‥」

 

「学生の貴女が心配する必要はないわ。今回の事だって、貴女が怪我をした事は事実でも、貴女とエレミアさんがイタリアマフィアの臓器密売ルートを壊滅させた事も事実よ。学校の評判だって、それで相殺できるわ」

 

「‥‥」

 

「今は、何も気にせずに貴女は療養に専念しなさい」

 

「‥‥」

 

ミーナ教官はそう言って病室を後にした。

その後、シュテルと同じクラスメイトにはシュテルが意識を取り戻した事が伝えられ、クラスメイト‥特にクリス、ユーリ、エレミアの三人はホッとした表情をしていた。

それからシュテルの退院までの10日間、流石にこれ以上生徒達を艦内に閉じ込めるのは流石に可哀想であり、地元警察も今回の事件を鑑みて巡回の警察官を増やしたりして、治安の安定に力を注いだ。

その為、生徒達はまたナポリの街への上陸許可が下り、生徒達は再びナポリの街を観光する事が出来た。

通常の遠洋航海より、春休みが短くなる代わりにナポリの街を再び観光できることにより、シュテルに対する生徒らの不満もなんとか緩和できた。

ナポリへの上陸許可が下りた後、クリス、ユーリ、エレミアの三人は早速、シュテルが入院している病院へとお見舞いに行った。

病室に入ったエレミアはいきなり、床に両手と両膝、頭をつき、

 

「碇さん!!本当にすまんかった!!」

 

エレミアは見事な土下座をしてシュテルに謝った。

 

「え、エレミアさん、そんな‥頭をあげてよ。エレミアさんが居てくれたから、あの場は切り抜けられたんじゃない。それにミーナ教官から聞いたよ。エレミアさん、血が足りなくなった私の為に自分の血を分けてくれたって‥‥今、私の身体にはエレミアさんの血が流れている‥‥私の方こそ、エレミアさんにお礼を言わないといけないんだよ。‥‥エレミアさん、本当にありがとう」

 

「碇さん‥‥碇さん!!」

 

エレミアは感極まって涙目となり、シュテルに抱き付く。

 

「いたたた‥‥エレミアさん、痛い、痛い!!」

 

怪我がまだ治っていないシュテルにエレミアのハグは強烈だった。

 

「でも、よかったよ、シュテルンが無事で」

 

「ホント、艦内ではシュテルンの事を悪く言う奴もいたけど、その辺の連中は私達がちゃんとO・HA・NA・SHIをしておいたから大丈夫だよ」

 

(一体何をしたんだ?)

 

ユーリの言うO・HA・NA・SHIに関して、一体何をしたのかちょっと気になるがその辺は聞かない方がよさそうだ。

クリスやミーナ教官は物凄いダークスマイルで迫りくるが、ユーリの場合、無表情で死んだ魚の様な目で迫って来る。

クリスやミーナ教官のダークスマイルの迫りも怖いが、ユーリの無表情+死んだ魚の様な目の凄みもそれなりに怖い。

もっともユーリがそこまでキレた事なんて珍しい。

シュテル自身、小等部の頃、男子にいじめられた時、ユーリがマジギレした所を見た時だけであり、コレが普段能天気なユーリの姿か?と疑いたくなるほどだった。

成長したユーリのそんな無表情+死んだ魚の様な目のO・HA・NA・SHIをされたらトラウマになるかもしれない。

そう考えると自分の周りには凄い人が集まっている。

今回、イタリアマフィアをボコボコにしたエレミアも体術はプロの格闘家レベルだった。

前世とは全く違ってこの世界は面白い。

それにこうして自分の事を心配してくれる人が居る。

前の世界でも戸塚や川崎‥材なんとかなど、前世の自分の事を思ってくれている人も少なからずいたが、前世の自分はそれに気づくことが出来ないか気づくのが遅かった。

それは人を信じてもどうせ裏切られると言うマイナスな思考しか持ち合わせていなかったからだ。

でも、シュテルは前世と違う環境の中でこうして前向きな姿勢になる事が出来た。

それから十日後、シュテルは無事に病院を退院した。

もっとも右腕はまだ完治しておらず、三角巾で右腕を吊っている状態ではあったが‥‥

そして、マルクグラーフの甲板にて、今回の事件解決に貢献したエレミアとシュテルの表彰式が行われた。

制服姿の生徒達に正装した教官達の他に大礼服姿の警察官達の姿もあり、地元の新聞記者の姿もあった。

この時ばかりはエレミアも何時も着慣れているジャージ姿ではなく、キール海洋学校中等部の制服を身に纏っていた。

そして、地元警察の警察署長がシュテルとエレミアに感謝状と共に警察協力章の勲章を二人に授与した。

感謝状と勲章をもらい、一同に一礼をすると、マルクグラーフの甲板は拍手で包まれた。

 

「なんや、照れくさいな‥‥」

 

「でも、エレミアさんは間違いなく、英雄なんだから、堂々としていればいいよ」

 

「そ、そんなもんかいな?」

 

「そんなもんだよ」

 

「な、なぁ‥碇さん」

 

「ん?なに?」

 

「その‥‥私の事、『エレミアさん』やのうて、その‥‥ジークって呼んでくれへんか?」

 

「えっ?」

 

「だって、碇さんの身体の中にはウチの血が流れておるから、ウチと碇さんは一心同体なモンやないか」

 

「まぁ、確かに‥‥それじゃあ、エレ‥いや、ジークも私の事を『碇さん』じゃなくて、シュテルって呼んで」

 

「了解や、シュテル」

 

エレミア‥いや、ジークはニッと笑みを浮かべた。

 

事件とシュテルの怪我により、今年の代の遠洋航海は多少の遅れは出したが、マルクグラーフは表彰式を終え、ナポリを出港し、ドイツのキールを目指した。

航海中、シュテルは右手が使えないので、左手一本での生活には色々困った。

食事に関してはフォークとスプーン、ナイフなのでなんとか出来た。

もしこれが箸だったら、かなり苦戦しただろう。

そして何かを書くに至っては、利き腕ではない方の腕で書いたので、ノートの上にはミミズがはった様な文字が書かれていた。

 

「うぅ~利き腕じゃないから上手く書けない‥‥」

 

「シュテルン、私のノートを後で貸してあげるよ」

 

クリスは自分が書いたノートをシュテルに貸してあげた。

 

「シュテル、ほんなら、ウチが代筆したるわ」

 

ジークがその代筆を買って出る。

 

「いやいや、代筆は私がやるよ」

 

そこへユーリが代筆は自分がやると言いだす。

 

「いやいや、大丈夫だよ、エレミアさん、代筆は私がやるから」

 

更にクリスまで参加する。

シュテルを巡ってクリス、ユーリ、ジークの三人が取り合っているようにも見えるこの構図‥‥

前世の自分が見たら、きっとドン引きするような百合リア充状態だった。

 

「そ、それじゃあ、教科ごとに分かれてやってくれるかな?上手く書けなかったのは、一教科だけじゃなかったから‥‥」

 

(なんか、言い訳が葉山みたいに曖昧な気もするが、実際ノートが上手く取れなかったのは一教科だけじゃなかったからな‥‥)

 

「「分かった」」

 

「了解や‥‥」

 

シュテルの提案を三人は受け入れ、クリスのノートを参考に教科ごとに代筆をした。

 

(早く、治らないかな‥‥この腕‥‥)

 

それと同時に一日でも早い復帰を願うシュテルであった。

 

事件により、遠洋航海が伸びてしまったせいで、高等部への進学試験はマルクグラーフの講義室で行われる事になった。

勿論、その旨は生徒達には事前に知らされていた。

マルクグラーフよりも速度に勝るキール海洋学校の教官艦が試験問題を積んで公海上でマルクグラーフと合流し、マルクグラーフに乗艦していた教官に試験問題を渡し、講義室にて高等部進学希望者はそこで試験を受けた。

シュテルにとっては試験前に利き腕が直って欲しかったが、この際やむを得ない。

筆記体ならば、多少変な時でも通じる筈なので、シュテルは文字に関しては筆記体で書いた。

記号に関しては多少いびつな形にはなったが、時間内に何とか解答欄を全て埋める事は出来たが、これまでの試験とことなり、高等部は主席をクリスに奪われたかと思った。

試験が終わり、中等部の卒業式もマルクグラーフの甲板で行われた。

やがてマルクグラーフがキールへと到着すると学生は短い春休みとなる。

結果は春休み中に発表される事になっている。

シュテルは一度、ミュンヘンの実家へと戻ると、腕を吊っている娘の姿を見て母親のアスカは物凄く心配しつつ学校側に対して物凄い怒りを覚え、学校を訴えるとまで言いだしたが、シュテルが何とか宥めた。

その後、試験結果が送られてくると、信じがたいことにシュテルは利き腕が使えない状況下でも高等部へ主席入学を果たした。

勿論、クリスもユーリ、そしてジークもシュテルと同じクラスになれる成績で高等部への入学を果たした。

 

 

 

 

此処で時系列を少し巻き戻す。

 

マルクグラーフがまだキール海洋学校中等部の最高学年が遠洋航海に出ているその頃、極東の島国、日本の千葉港にある国際船ターミナルに一人の少女が降り立った。

 

「約十年ぶりだけど、変わらないわね‥‥」

 

少女は辺りを見回して一言呟く。

 

「あっ、雪乃ちゃん!!こっちこっち!!」

 

そんな少女の姿を見つけて声をかける金髪の青年。

 

「あら?葉山君、わざわざお迎えに来てくれたの?」

 

そう、千葉港の国際船ターミナルに降り立ったのは小、中学校とアメリカに留学していた雪ノ下雪乃で、彼女を出迎えたのは葉山隼人だった。

 

葉山は雪ノ下のスーツケースを受け取ると、ハイヤーが停まっている場所まで雪ノ下を案内する。

 

「アメリカでの暮らしはどうだった?」

 

「ほとんど、前の世界と同じよ。最初は私が日本人だからって言う理由でバカにする白人至上主義のろくでなしばかりだったけど、実力を見せたらただ黙って睨みつけるだけしか出来ない無能ばかりだったわ。それにしても飛行機がないからアメリカへ行って戻って来るのに時間がかかり過ぎるわね」

 

「そ、そう‥‥それで、雪乃ちゃんは、やっぱり、総武の国際教養科を受験したの?」

 

雪ノ下はアメリカの中学に在学中に総武高校の入試はインターネットを通じて受験した。

それ故、葉山は高校入試時に雪ノ下と会っていないので、彼女が総武高校のどの学科を受験したのかは分からなかった。

前世の総武高校は普通科と国際教養科の二つのコースがある高校だった。

しかし、この後世の世界にある総武高校は普通科、国際教養科の他に船と海に関する知識を教える海洋学科があった。

前世の総武高校は普通科が九クラス、国際教養科は一クラスだけだったが、この後世では、国際教養科は前世同様、一クラスであるが、普通科は二クラスで、海洋学科は七クラスもあった。

 

「最初は前世と同じ総武高校の国際教養科にしようかと思ったけど、親が高校の進路だけは指定してね、留学をさせてもらったからそれなりの義理は通して、高校は親が指定した海洋学科を受験したわ。勿論、主席合格よ」

 

海上建築や造船業にて今の財を築いた雪ノ下家としてはやはり、海、船の知識だけはつけてもらいたいと言う雪ノ下の両親の意向があり、雪ノ下は前世と異なり、国際教養学科ではなく、海洋学科を受験していたが、これもこの世界の主流に関係すると言う力‥運命と言う力が働いた結果なのかもしれない。

 

「流石だね、実は僕もこの世界では総武の海洋学科を受験したんだよ。勿論、結衣も同じ高校、同じ学科をね‥‥そして僕も結衣も無事に合格したよ」

 

「へぇ~、由比ヶ浜さんも居たのね‥‥」

 

葉山と結衣は雪ノ下と違い、普通の受験生と同じく、総武高校へと赴き、そこで受験をした。

二人は受験会場である総武高校で約十五年ぶりに再会をしていた。

そこで二人は互いの連絡先を交換して、合格発表の日、葉山の下に結衣から総武高校を合格したと連絡が来た。

 

「それじゃあ、高校は前と同じ‥‥いえ、あのクズがこの世界には居ないから、前の世界よりもいい高校生活を送れそうね」

 

「ああ、そうだね」

 

この世界には比企谷八幡が居ない事から雪ノ下も葉山もこの時は前の世界よりも充実した高校生活を送れると思っていた。

しかし、運命の歯車は八幡と雪ノ下、葉山、由比ヶ浜が同じ世界に転生した時から回っていた。

 

 

時として運命は人を弄ぶことがある。

 

その意味に人が気づくのはほとんどの場合ずっと時が流れてからだ。

 

シュテルとなった八幡も雪ノ下、葉山、由比ヶ浜もこの時にはまだ気づく筈もなかった‥‥

 




ユーリの死んだ魚の様な目は、少女終末旅行のアニメ1話にてチトとチョコレート味のレーションを奪い合い、チトに銃を突きつけた時の様な感じの目つきです。
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