やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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遅くなり申し訳ございません。

何とか時間を見つけてちまちまと書いてようやくかけました。

今後も不定期な更新が続きますがよろしくお願いします。


149話

 

 

ひょんなことから、横須賀女子に留学しているドイツからの留学生組は、ブルーマーメイドの宗谷真冬が艦長を務めるべんてんの乗員たちと白兵戦訓練を行うことになった。

 

白兵戦訓練の舞台は真冬が用意した豪華客船で、シチュエーションはその豪華客船が武装したテロリストにより占拠され乗客たちが人質になっており、真冬たちブルーマーメイドたちはテロリストの検挙と人質の救助である。

 

人質役はシュテル、テアの両名が声をかけて集めた横須賀女子の学生たちだった。

 

テロリストに扮する留学生組は何の抵抗もなくあっというまに豪華客船を占拠して人質役の学生たちを船底部の倉庫に閉じ込めた。

 

そして、今回の白兵戦訓練の様子を横須賀女子の港湾地区に設置されているテントに居る真雪たち横須賀女子の教官らと真霜たち一部のブルーマーメイドの幹部の下に犯行声明を撮影した映像を送った。

 

「留学生‥‥もとい、テロリストからメールが送られてきました」

 

メールの本文はなにも書かれていなかったが件名にはちゃんと『犯行声明』と書かれており、映像が添付されていた。

 

「随分と手が込んでいるわね」

 

教官たちや今回の白兵戦訓練を見学に来ているブルーマーメイド幹部宛てに宣戦布告とも言える犯行声明を送ってきた留学生組に真霜は肝が据わっていると思う。

 

「映像が添付されています」

 

「再生してみて」

 

「分かりました」

 

パソコンを操作している教官が添付されている映像を再生すると、テントに居る教官らとブルーマーメイドの幹部たちはパソコンの画面を覗き込む。

 

一体留学生組がどんな映像を送ってきたのか気になったのだ。

 

送られて来た映像が再生されると迷彩服に身を包んだ留学生たちが手に武器を持ち、豪華客船のレストラン内で録画した映像が流れる。

 

『これはぁ、我ら真紅のジ〇ードの声明である』

 

映像の中でシュテルが犯行声明を言い始める。

 

「真紅のジ〇ードってなに?」

 

「さ、さあ‥‥?」

 

平賀と福内が架空のテログループの名前に首をかしげる。

 

『お前らは女や子供たちを殺したんだ‥‥我々の町に海から砲弾をばら撒いた』

 

「いやいや、ブルーマーメイドがそんなことするわけないから」

 

シュテルが演説する内容に思わずツッコミを入れる真霜。

 

『そのお前らが、我々を、『テ ロ リ ス ト』と呼ぶぅ!!だが今、迫害された者たちの手に、敵に反撃する強力な武器が与えられた。良く聞け、青人魚どもよ。ペルシャ湾全域から全ての艦艇を撤退させろ!即刻ぅ!そして永遠になぁ!真紅のジ〇ードは要求が通るまで日本の主要都市を毎週、ひ と つ ず つ !破壊していくことを宣言する。そして!!要求が入れられない時は、我らは迷うことなく、日本の主要な都市へのばぁくだん攻勢を開始するだろう!週に一つぅ!』

 

そこで映像が終わった。

 

「ねぇ、のりりん」

 

「なんです?」

 

「敵に反撃する強力な武器って一体なんだろう?」

 

「いや、これはあくまでもそう言う演出なだけで、使用する武器については事前にルールで決められていますから」

 

平賀はやはり、シュテルの犯行声明の中の一部が気になっていた。

 

しかし、福内はあくまでもあれはシュテルの演出であり、実際は『敵に反撃する強力な武器』なんて無いことを強調する。

 

テントに居る教官、ブルーマーメイドの幹部にこの映像が送られたように今回の白兵戦訓練の相手である真冬たちの下にもこの映像は送られていた。

 

「へぇ~なかなか面白れぇことをしてくれるじゃねぇか」

 

タブレット端末に映し出されるシュテルの犯行声明を見て真冬は不敵な笑みを浮かべる。

 

「よし、犯行声明が届いたってことは訓練開始の合図だ!!行くぞ!!」

 

『応!!』

 

真冬もシュテルの犯行声明を見てこれが訓練開始の合図であることを察した。

 

 

「さて、そろそろあの犯行声明を見てブルーマーメイドの団体さんが来る‥‥メイリン」

 

「はい!!」

 

「監視カメラの映像にはプロテクトをかけて、相手には欺瞞情報を流して」

 

「はい!!ローザさん、アシストお願いします」

 

「了解」

 

先の海上テロ事件鎮圧に参加したシュテルはブルーマーメイド側がこちらの監視カメラ映像に欺瞞映像を流してくるだろうと予測し、自分たちの映像には強力なプロテクトをかけ、逆にブルーマーメイドの側の映像に欺瞞映像を流すように指示を出す。

 

映像管理についてはヒンデンブルクのメイリンとシュペークラスのローザが担当した。

 

「外部銃座、配置に着いた?」

 

「各銃座、配置につきました」

 

(こういう時、映画ではヘリからの降下シーンがあったな‥‥)

 

(この世界では飛行機やヘリは存在していないが飛行船は存在し、その飛行船をブルーマーメイドは装備している‥‥飛行船からの隊員の降下もありえるな‥‥)

 

「各銃座」

 

『はい』

 

「上空にブルーマーメイドの飛行船は確認できるか?」

 

「えっ?ブルーマーメイドの飛行船ですか?」

 

「そう」

 

「えっと‥‥」

 

シュテルからの問いに豪華客船の船首、船尾にいる同級生たちは豪華客船周辺の空を見上げる。

 

しかし、周辺の空にブルーマーメイドの飛行船の姿は見られなかった。

 

「こちら、船首銃座。飛行船の存在は確認できません」

 

「こちら、船尾。同じく飛行船はいません」

 

「了解。ただ油断せずに時折空の確認もお願い」

 

『了解』

 

訓練が始まってから時間をおいて飛行船から隊員を降下させてくる可能性もあるので、上空の警戒も緩めないように指示を出した。

 

そんな中、

 

「こちら、船体中央銃座。ブルーマーメイドの小型艇が接近してきます」

 

「おいでなすったか‥‥各銃座、射程圏内に入り次第射撃開始せよ」

 

『了解!!』

 

留学生組とべんてんの乗員たちの白兵戦訓練は始まろうとしていた。

 

 

ブルーマーメイドの小型艇が客船に接近していくと‥‥

 

ダッダッダッダッダッ‥‥!!

 

ババババババババ‥‥!!

 

客船に設置されたMG42の銃座が一斉に火を噴いた。

 

「HA,HA、HA、歓迎するぜ!!ク〇ッタレ!!」

 

「‥‥」

 

MG42の銃座の内、一つの銃座でMG42の引き金を引いている学生がブルーマーメイドの小型艇に向かって撃っているのだが、戦闘の興奮からかトリガーハッピー状態となっており、給弾している相棒の学生はちょっと引いていた。

 

側面から客船へ乗船しようとしていたブルーマーメイドの隊員たちはあまりにも凄まじい銃撃によりこれ以上の接近では乗船するまえに全滅するのが目に見えていたので、やむを得ず側面からの乗船を諦め、真冬たち突入組が銃座を沈黙させるのを待つため、退避した。

 

「ブルーマーメイドの小型艇、射程外へ退避しました」

 

「了解。周囲の警戒を怠らず、そのまま待機」

 

「了解」

 

銃座からの連絡を受け、ひとまず海からの牽制に成功した留学生組。

 

「問題は海よりも宗谷真冬だ‥‥」

 

「うむ。恐らく海上から接近して来た小型艇には乗っていないだろう」

 

「タラップは接舷したままになっているから、十中八九彼女はそこから船内に突入してくるだろうな‥‥」

 

「一応、通路にはバリケードを設置して、銃座もあるが‥‥」

 

「彼女の運動神経を鑑みてもあまり意味をなさないだろう」

 

留学生組同士の訓練中で垣間見た真冬の運動神経から常人ばなれした脚力や動きからしてみても通路のバリケードなんてひょいと飛び越えて来そうだ。

 

船内のバリケードの上にはMG42ではないが、銃口の近くに二脚を着けたラインメタルFG42自動小銃を設置している。

 

「まぁ、ボスが出るまでこちらはこちらの出来る範囲のことをやるだけさ」

 

「そうだな」

 

「では、各員各々の配置についてくれ」

 

『了解!!』

 

「メイリン、ローザさん。モニターチェックよろしく」

 

「はい」

 

「わかりました」

 

留学生組は各々の装備している武器を手にして客船のあちこちに散る。

 

その頃、

 

「行くぞ!!」

 

『応!!』

 

真冬たちブルーマーメイド隊員たちもタラップから船内へと突入してきた。

 

「まずは操舵室、機関室、そして人質の救助だ!!」

 

『了解!!』

 

真冬たちは操舵室、機関室、人質の救出の三つの部隊に分かれた。

 

操舵室、機関室までの通路にはバリケードもなく、テロリスト役の留学生組の姿もなく、あっけなく確保できた。

 

「こちら、機関室クリア。しかし機関室内には誰も居ません」

 

続いて操舵室へ突入したブルーマーメイド隊員であるが操舵室にも誰も居なかった。

 

「操舵室クリア」

 

「艦長。どういうことでしょう?」

 

「敵は中心部に集中的に防御を固めているな」

 

本来ならば重要拠点のはずの操舵室、機関室に誰も配置されていなかったことに隊員の一人が違和感を覚え真冬に訊ねる。

 

真冬はテロリスト役の留学生組は船の中心部である共有スペースに防御陣を強いていると判断した。

 

今回の訓練は客船を舞台にしており、船という構造から操舵室、機関室は重要な拠点であるが、それは船が航行している時の話であり、船は港にしっかりと係留されており動いていない。

 

よって操舵室、機関室は拠点としての価値は低かった。

 

船体中央のMG42銃座もあらかじめメイリンらのナビゲートで撤収していた。

 

真冬が操舵室に居る頃、

 

「こちら、救命艇デッキクリア」

 

「これより、上甲板へ向かう」

 

船体の両舷に設置されている救命艇デッキもやはりもぬけの殻でブルーマーメイドの隊員はテロリスト役の留学生たちの探索をしていた。

 

そんな中、

 

カタっ‥‥

 

「ん?」

 

最後尾の隊員が物音を聴きつけ、恐る恐る音がした方へと歩み寄る。

 

すると、

 

スタっ!!

 

上からシュテルが降ってきた。

 

「っ!?」

 

ブルーマーメイドの隊員は銃を向けるが、シュテルは銃をガシッと掴み、さらにその場にテアも参戦し、隊員の鳩尾に拳をたたきつける。

 

「うっ‥‥」

 

鳩尾に拳をたたきつけられた隊員は低いうめき声を出す。

 

そして、シュテルとテアは隊員の装備を奪い、物影に引きずり込んでいく。

 

「まず一人捕獲」

 

シュテルとテアが隊員を引きずり込んだ物影には他の学生の姿もあり、

 

「じゃあ、あとはよろしく」

 

「はい、任せてください」

 

「あっ、味方からの誤射には気を付けてね」

 

「はい」

 

シュテルとテアは意味深なセリフを言って、そこに居た学生に後を任せ、次の現場へと向かう。

 

 

客船の船底部にある倉庫では人質役の学生たちが居た。

 

一応、手足などは拘束されてはおらず、ただじっとブルーマーメイドの隊員が来てくれることを待っている状態の学生たちは手持ち無沙汰であった。

 

遠くから聞こえてくる銃声で留学生組とべんてんの乗員たちとの訓練が始まったと言うことはわかるがただそれだけであった。

 

スマホもタブレットもないこの状態は物凄く暇であり、人質なのだが、学生たちは互いに談笑をしていた。

 

「暇だねぇ~」

 

「うん」

 

「トランプでも持ってきたらよかったかな?」

 

山下が内田に声をかる。

 

彼女はあまりの手持ち無沙汰からか、分かっていたらトランプなどの暇つぶしになるようなものを持ってくればよかったと後悔する。

 

「いやぁ~訓練とは言え、すごかったねシューちゃんたち」

 

「え、ええ‥そうですね」

 

「あれはまさに迫真の演技だったね」

 

「ええ」

 

「本当にテロリストが来たのかと思っちゃったよ」

 

明乃が真白にレストランで乱入したて来たシュテルたち留学生組の迫真の演技の事を思い出しあれは演技とは思えないような迫力があったと感想を述べる。

 

「全く、訓練とは言え宗谷さんに銃を突きつけるなんて」

 

黒木は留学生組が真白に銃を突きつけることに不機嫌さを露にする。

 

「これが訓練じゃなかったら、私が叩きのめしていたのに」

 

「いや、訓練でなかったら下手な行動はかえって命取りになるからやめた方が良い」

 

真白は例えこれが訓練ではなく本物のテロリストの襲撃だとしてもあの場は下手に抵抗せずに言う通りにした方が賢明であると言う。

 

「黒木さん、考えてみて‥‥これがもし本物のテロリストの襲撃だとしたら当然持っている武器は殺傷能力がある武器で、他の人質が大勢いる中で暴れたら黒木さん本人はもとより、他の人質にも犠牲者を出していた。丸腰でテロリスト相手に立ち振る舞うことが出来るのはアクション映画の主人公かアニメ・漫画の世界だけだ。姉もあの場に居たらきっと下手には動かずにチャンスを待つ筈‥‥」

 

海上テロ事件で武装しているテロリスト相手に真冬は拳と蹴りだけで制圧した。

 

その姿はまさにアクション映画の主人公の様であったが、もし周りに人質となっている民間人が大勢居たらさすがの真冬も空気を読んでいた筈だ。

 

「宗谷さん、そこまで私の事を‥‥」

 

黒木は真白が自分の身を案じてくれたのだと思い彼女の行為に感激する。

 

 

「碇艦長は随分と幅広く声をかけたみたいですね」

 

談笑している晴風クラスの学生を見ながら秋山はみほに声をかける。

 

「うん。今回の訓練は実弾を使わないって言うだけで本格的な訓練みたいだからね。人質の人数もそれなりに必要なんだろうね」

 

自分たち二年生以外に晴風クラスら一年生にも声をかけ人質の人数を揃えていたことから、人質の人数が少ないとリアルな訓練にならないので、ある程度の人数が必要だったのだとみほはそう推測した。

 

機関室を確保したブルーマーメイド隊員たちはそのまま人質の救助へと向かう。

 

「ブルーマーメイドが人質の救出へと向かっています」

 

メイリンが監視カメラの映像からブルーマーメイドの動きを知らせる。

 

「欺瞞映像をあちらに流しているから人質がどこに閉じ込められているのかは、彼方はまだ分からないはずだ‥‥今のうちに少しでも相手の戦力を削るぞ」

 

 

一方のブルーマーメイド側も自分たちが把握している映像が欺瞞映像であることに気づいた。

 

監視カメラの映像で映っている筈の隊員の姿が映っていないことに気づいたのだ。

 

「学生にしてはなかなかやるじぇねぇか」

 

真冬は欺瞞映像の報告を聞き、不敵な笑みを浮かべる。

 

学生ながらまさかブルーマーメイドの自分らの欺瞞攻撃を躱し、逆に自分たちへ欺瞞映像を流してくる。

 

相手の学生にはよほどパソコン技術に特化した学生が居るみたいだ。

 

「そっちは任せる。映像の復旧を急げ!!」

 

「はい!!」

 

真冬は映像管理の隊員に映像の復旧を急がせた。

 

操舵室を確保した隊員らは船首の銃座を占拠して海からの増援を確保しようと船首へと向かう。

 

しかし、船首に設置されているはドイツが誇るMG42。

 

接近しようにも凄まじい弾幕で接近できない。

 

「さすがに軽機関銃の使用は不可にした方がよかったんじゃない?」

 

「そうね、まさかあんな旧型なのにここまでの発射速度があるなんて‥‥」

 

物影に隠れながら初めて見たMG42の威力に舌を巻く。

 

「そろそろ、弾の数が怪しくなってきたよ」

 

「そうね、此処の守備も潮時かしら?」

 

「せめて、相手に鹵獲される前に全弾撃ち尽くしておかないと‥‥」

 

相手の装備を鹵獲可能というルールがあるので、ブルーマーメイド側にMG42が取られないように弾だけは全て撃ち尽くしから船首倉庫の出入口へ退避しようとする。

 

「あっ、逃げた!!」

 

銃撃が止み恐る恐る物影から顔を出すと、船首に居た学生たちがMG42を放棄して船首部にある扉の中に逃げ込んでいく姿が見えた。

 

「でも、これで海からの増援も呼べるね」

 

「そうね」

 

船首を確保した隊員たちは無線で小型艇を呼び寄せた。

 

小型艇は船首から接近し甲板から客船の船首にある手すりへワイヤーを伸ばし、客船へ乗り込んできた。

 

その光景も監視カメラの映像で留学生組はちゃんと把握していた。

 

舞台となる客船に乗り込んできたブルーマーメイドの隊員たちはテロリストの姿を追い求め船内を捜索する。

 

未だに監視カメラの映像が回復しないので、隊員たちは手探りと人海戦術で探す他なかった。

 

そんな中、客室フロアーの通路で隊員の一人がテロリストに扮した留学生の一人を見つけ、追いかける。

 

「目標を発見!!」

 

「客室フロアー、エレベーターの近くです!!」

 

目標を見つけた隊員たちは当然追いかけてくる。

 

すると、通路の死角に隠れていたもう一人の留学生が先頭の隊員の腹部に蹴りを入れ、隙をつけるとその隊員を人質にした。

 

やがて、追われていた留学生が戻り、後続の隊員たちに銃を突きつける。

 

味方が人質に取られたことで、後続の隊員たちは発砲できない。

 

留学生二人はそのまま人質にした隊員を連れてエレベーターに乗っていった。

 

「二人目確保しました」

 

留学生二人は隊員を人質にしたまま拠点にしているレストランまでくる。

 

「では、さっそくお願いします」

 

「了解」

 

「ちょっと、こっちに来てください」

 

「えっ?あっ、ちょっと‥‥」

 

留学生は人質にした隊員を奥の厨房へと連れて行った。

 

 

その頃、機関室を奪取した隊員たちは船底部を捜索し、ようやく人質が監禁されているであろう倉庫を見つけた。

 

倉庫の前にはテロリスト役の留学生数名が扉の前に立っていたので、そこが人質の監禁場所だと判断したのだ。

 

「人質の監禁場所らしき倉庫を発見。これより人質の救出に向かいます」

 

「了解。ただ、こちらも味方が一人、テロリストに捕まった」

 

「えっ?本当ですか?」

 

「ああ、連中の拠点を襲撃する際は味方を撃たないようにしろ」

 

「了解」

 

バン!!バン!!

 

「うわっ!!」

 

「ぐわっ!!」

 

隊員たちは見張りのテロリスト役の留学生を倒し、倉庫前までやってきた。

 

倉庫内にも見張り役がいるかもしれないので隊員たちは注意深く扉を開けた。

 

ガチャ、ギィィィ~‥‥

 

金属質な音と共に倉庫の扉がゆっくりと開けられる。

 

「大丈夫?」

 

「助けに来たわよ」

 

倉庫に入った隊員たちは倉庫内にいた人質役の学生たちに声をかける。

 

ブルーマーメイドの隊員の姿を見た学生たちは救出されることよりも救出に来たブルーマーメイドの隊員の姿を見て、目を輝かせている。

 

そんな中、人質の学生の中で二人の学生は互いに頷き、誰にも気づかれないように隊員たちの近くへ移動すると、

 

ガチャ、バン!!バン!!

 

ガチャ、バン!!バン!!

 

ガチャ、バン!!バン!!

 

ガチャ、バン!!バン!!

 

『えっ?』

 

隊員に近づいた人質役の学生二人は両方の袖に仕込んでいた拳銃で救出に来た隊員たちを銃撃してきた。

 

「えっ?な、なんで?」

 

「どういうこと?」

 

訓練用の模擬弾なので撃たれても死なないが、人質の中から受けた突然の銃撃で撃たれた隊員たちはもとより、人質役であるはずなのに救出に来た隊員たちを撃った行為に人質役の学生たちも驚いていた。

 

「油断してはダメですよ。テロリストの中には人質の中に仲間を潜ませている可能性もあるんですから」

 

隊員たちを撃った人質役の学生・・もとい、テロリスト役の留学生は撃たれた隊員たちにネタ晴らしをする。

 

レストランで学生たちを襲撃し、レストランからこの倉庫に移動中にシュテルは監視役兼救助に来たブルーマーメイドの隊員を仕留める役としてドレスとウィッグで変装させた仲間を人質の中に潜ませていた。

 

人質役の学生たちからしてみれば卑怯な戦術に思えるが戦術としてはテロリストがとりそうな行為であった。

 

「ほぇ~まさか、私たちの中にテロリストが居たなんて‥‥」

 

「全然、気づきませんでした」

 

みほと秋山は意外な戦術に思わず感嘆の声をあげる。

 

「まさか、あんな作戦をとってくるなんて‥‥」

 

自分たち人質役の学生の中にまさかテロリスト役の留学生混ざっていたとは思ってもおらず、真白は思わずポツリとつぶやく。

 

晴風クラスら新入生から見たら、潜んでいたテロリスト役の留学生は上級生かと思い、逆にみほたち上級生にとっては後輩だと思わせるためにシュテルは今回の話を受け、作戦を立案した時からこの作戦を考えており、そのため人質役の学生には晴風クラスをはじめとする新入生とみほたち上級生の両方に声をかけていたのだ。

 

「くっ、やられた‥‥」

 

「くやしいぃ~」

 

撃たれ死亡判定を受けた隊員たちは悔しがった。

 

 

人質救助が失敗になった頃、

 

「大階段ロビーにてテロリストが防御拠点を築いています」

 

そんな知らせが無線に入った。

 

「艦長、どうします?」

 

「完全に築かれる前につぶさねぇとな‥‥一個隊を向かわせて防御拠点が築かれる前にたたき潰せ」

 

「了解」

 

真冬は完全に防御拠点を築かれる前にその拠点を潰すために急ぎ大階段があるロビーに攻略部隊を向かわせた。

 

しかし、大階段ロビーについた隊員たちが見たのは誰もいない大階段ロビーだった。

 

テロリスト役の留学生が居なければ、拠点らしきバリケードもない。

 

「い、いない‥‥」

 

「どういうこと?」

 

「確かに無線じゃあ、ここに拠点がある筈じゃあ‥‥」

 

警戒しながら隊員たちは大階段ロビーの中へと足を踏み入れる。

 

すると、

 

ガチャ、ガチャ、ガチャ

 

大階段ロビーの上の階からテロリスト役の留学生たちが銃を構え、下層にいる隊員たちに銃口を向ける。

 

『えっ?』

 

「撃て!!」

 

上からの銃撃で次々と倒されていく隊員たち。

 

この他にも、

 

「客室フロアーBデッキでテロリストがいました!!」

 

一人の隊員がほかの隊員たちに声をかける。

 

「なに!?どこだ!?」

 

「あちらの通路の先です!!」

 

隊員は通路の先を指さす。

 

「よし、行くぞ!!」

 

『了解!!』

 

隊員たちが通路を進んでいくと、十字路の通路で、待ち伏せに会う。

 

「っ!?しまった!!」

 

「ここは敵のクロスファイアポイントです!!」

 

「た、退避」

 

気づいた時には遅く、客室フロアーで通路がそこまで広くなかったため、身動きが取れないまま隊員たちは十字砲火を浴びて次々と倒されていく。

 

 

「艦長、各班からの通信が途絶えています」

 

「大階段ロビーへ向かった隊からも応答がありません」

 

「人質の救出に向かった隊からも応答がなく、人質救出の現状がわかりません」

 

「‥‥」

 

「艦長‥‥」

 

「なんだ?」

 

「私たちの相手は学生ですよね?」

 

「ああ、そうだ」

 

「でも、なんか本物のテロリストかゲリラを相手にしているようにも思えるんですけど‥‥?」

 

「‥‥」

 

各隊からの通信が途絶え始めた現状を見て、真冬は現状の把握が困難になっていた。

 

ここは未開地の密林ではなく、一隻の客船の船内にもかかわらず、真冬たちは見えない敵と戦っているような錯覚を感じた。

 


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