やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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今回の後日談は次回の冒頭で描きます。


153話

 

晴風航海長の知床鈴の従兄が突然失踪したのだが、鈴は従兄の失踪に人魚が関係していると思いクラスメイトの明乃と真白に人魚についての意見を求めた。

 

明乃と真白はシュテルならば人魚についての情報を知っているかもしれないと思い、シュテルから人魚に関する情報を求めた。

 

シュテルは三人に世界や日本各地に伝わる人魚伝説について教えると同時に鈴が何か悩んでいることを見抜き、鈴の従兄の失踪を知った。

 

そして、鈴と共に休日を利用して鈴の従兄の生まれ故郷であるとある田舎の漁村へとやってきた。

 

しかし、従兄がその漁村から東京へ引っ越してから十年以上の月日が経過しているせいか村の住人たちは誰も従兄の存在に対して『知らない』 『見たことない』と言う反応を示す。

 

だが、村民の様子から何か隠している印象を受けたシュテルは普段は立ち入り禁止となっている満ち潮で消える洞窟に何か手掛かりがあるのではないかと思い、その日は漁村から一番近い町にある旅館で一泊することにした。

 

チェックインの際、自分たちより先に妙な一団を見た。

 

年は自分らとあまり変わらない男女なのだが、あまりにも似ていない兄妹たち‥‥

 

しかし、人には何かしらの事情があるのだろと察し深くは追及せずに旅の楽しみの一つである温泉へと浸かる。

 

すると、混浴の露天風呂では何やら一組のカップルがお楽しみ中だったらしい。

 

「お取込み中って‥‥掃除でもしているんでしょうか?」

 

鈴はお取込み中の意味を清掃と勘違いしている様子。

 

「知床さんはまだ知らないほうがいいよ」

 

「?」

 

シュテルは『お取込み中』の意味を知らない鈴に対して、まだその意味を知らずに無垢のままでいてくれと言うと鈴は首を傾げた。

 

「ふぅ~‥‥」

 

「いいお湯でしたね」

 

「うん。やっぱり、日本の温泉は最高~」

 

二人は風呂からあがり、通路にある椅子に座り、自動販売機で買ったフルーツ牛乳を飲みながら湯冷ましをしていると、

 

「ん?あの人たちは‥‥」

 

「いい湯でしたね。会長」

 

「こら、ここでの私たちの立場を忘れるな。畏まって話してはダメだ」

 

フロントで小学生の妹から怪しげな笑みを向けられ、謝っていた青年と姉?らしき人が会話をしながら歩いていた。

 

(会長?立場?やっぱり何か訳ありみたいだ)

 

二人の会話の声がそれなりに出ていたので、聞こえてしまい益々あの一団が家族ではなく何かしら訳ありな一団であることが窺える。

 

「ああ、はい。そうでしたね。いや~いい湯だったね、姉ちゃん」

 

「そうだな~今度は一緒に混浴するか?」

 

「そうだね~姉ちゃん」

 

「よし、今から行くか?」

 

棒読みなセリフを言いながら姉?が弟?の青年を混浴に誘う。

 

「えっ?ちょっ、どこまでが演技?」

 

混浴に誘われて戸惑っている弟?の青年。

 

その背後に一人の女性が無言のまま立っていた。

 

女性も自分たちと変わらない年齢な印象を受ける。

 

「「「‥‥」」」

 

そして、その女性の姿を見て固まる二人。

 

そんな固まった二人をジッと無言のまま見ている女性。

 

女性の姿を見て固まったと言うことはあの二人と女性は知り合いの可能性がある。

 

「あの~‥‥なぜ、ここに?」

 

「私は新聞部のプチ旅行でここに訪れているのですが‥‥まさか、お二人が姉弟プレイをする仲だったとは‥‥」

 

「「あの‥‥これは‥‥」」

 

二人は事態について弁解しようとする。

 

「安心してください。私、口は堅いですから」

 

女性はグッと親指を立てたかと思ったら、今度は卑猥な表現の指の形をして、

 

「記事にするまでは情報は漏らさない。マスメディアとして当然です」

 

(記事にするまでってバラす気満々じゃないか)

 

近くに第三者であるシュテルが居るにもかかわらず、まるで見えていないかのように話をしている三人。

 

「別にやましいことはないですけど、騒ぎになると色々と面倒なんで、黙っていて下さい」

 

「‥‥どうしようかな~‥‥なんだか喉が渇いた気がする。お風呂上りだからかしら?」

 

女性は自動販売機をチラッと見る。

 

青年は口止め料としてコーヒー牛乳をその女性に奢った。

 

(新聞部なんて部活があるのか‥‥しかし、あの態度から『口では言っていません。記事しただけです』なんて、屁理屈であの二人の事をバラしそうだ)

 

青年と女性のやり取りを見て、あの新聞部の部員は絶対にバラすだろうと判断したシュテルであった。

 

一応、あの場にはシュテルと鈴の二人が居たのだが、あの二人にとってシュテルと鈴は全くの見ず知らずの赤の他人だったので、二人は特に慌てふためく様子はなかったが、若干気まずそうな感じはあった。

 

「い、碇艦長」

 

「ん?」

 

「さっきの女の人がしていたこれって何の意味があるんですか?」

 

鈴は先ほどの女性が行っていた卑猥な指の形をとっていた。

 

「知床さん、それは人前では絶対にやってはいけません。銃を持ったアメリカ人に対して中指を立てるのと同じように危険な行為ですよ」

 

「えええーっ!!そうなんですか!?」

 

鈴は慌てて卑猥な指の形を解いた。

 

「さて、そろそろ夕食を食べて明日の予定をたてよう」

 

「は、はい」

 

夕食は海の幸と山の幸をふんだんに使用したなかなか豪華な料理だった。

 

「凄い料理ですね」

 

「うん。タッパーに詰めて持ち帰りたいぐらいだ」

 

「なんだか、みんなに悪いですね」

 

二人は豪華な料理に舌鼓を打った。

 

夕食後、二人は明日の捜索のための作戦を練ることにした。

 

「知床さんは今日、あの村を見てどんな印象を持った?」

 

シュテルは鈴にまずは今日赴いたあの漁村の印象を訊ねる。

 

「うーん‥‥なんだか、他所から来た人に対して冷たい印象でした」

 

「その通り、そしてあの村の人たちは何かを隠している」

 

「はい」

 

「まずは知床さんの従兄のお父さん‥‥親戚の人が言うには、お父さんはあの村に居る時に事故で亡くなったんだよね?」

 

「はい。そう、聞いています」

 

「知床さんの親戚の人が言うことも全て信用できるわけではないけれど、もしその人が言っていることが正しければ、事件や事故とはほぼ無縁なあの村で人が亡くなる事故が起きたのだから、例え十六年の時が経っても人々の記憶に残るんじゃないかな?」

 

「た、確かに‥‥」

 

「それと、従兄のお姉さん‥‥親戚の人が言うには病死なんでしょう?」

 

「はい」

 

「でも、宮司さんは病死ではなく、波に攫われたと言っていた‥‥従兄の人たちはお父さんとお姉さんが亡くなってから東京へ引っ越したのだろうけど、もしお姉さんが病気で亡くなったのであれば、近所の人伝いで広まっていそうだけど、あの宮司は知らなかったことから、あえて知らないふりをしたのか、親戚の人が嘘を言っていたかのどちらかだ」

 

シュテルは鈴の親戚の人かあの村の宮司のどちらかが嘘を言っていることを指摘し、

 

「現状どちらが嘘を言っているのか確認できない以上、両者の発言は信じない方がいい」

 

「そうですね」

 

「さて、次は侵入路か‥‥」

 

シュテルは宿に着く前に本屋で買ったこの町周辺の地図を広げる。

 

「あの様子だと、当然海岸側の出入り口は明日も見張りがいるだろうから、別ルートからじゃないと。あの宮司が海岸線の道は昔、交通路になっていたらしいから、あの海岸線には別方向からの道がある筈だ」

 

「はい。あっ、ここじゃあないでしょうか?」

 

鈴が地図の一角を指さし、別方向の侵入路を示す。

 

「うん。それっぽいね。それじゃあ、明日はこの方向から向かおう。駅も今日降りた駅の一つ奥だから駅で村人に尾行される心配はないが念のため、軽めの変装だけはしていこう」

 

「軽めの変装?」

 

「ああ、まずは髪型を変えて近くの服屋で上着と伊達メガネ、帽子を買って行こう」

 

「はい」

 

いくら、村の駅よりも一つ奥とは言え、あの村の近くに行くわけなので念のため変装をして行くことにした。

 

「それと、宮司の話だとあの道は満潮になると海に消えるみたいだから明日の満潮時間も考慮しないとね」

 

親戚の姉については信じられないが、満潮になると道が海に消えると言う話は実際にシュテルと鈴が見ていたので、本当の事なのだと判明していた。

 

明日のルートを確認すると、シュテルはショルダーバッグの中からワルサーPPK/Sを取り出す。

 

「えっ?碇さん。それってもしかして‥‥」

 

「ショッピングモールの時、クリスやユーリーが使ったって聞いたけど、ワルサーPPK/S。ドイツが誇る銃器メーカーワルサー社の小型拳銃。デリンジャーよりも弾数が多いし、小型だから携帯しやすいから持ってきた‥‥本来なら此奴の出番が来ないといいけど、念のためにね」

 

シュテルは部屋の窓を開け、ガンオイルを取り出し、手慣れた手つきで銃をバラしていく。

 

窓を開けたのは手入れをする際にオイルを使用するので、部屋がオイル臭くならないようにするためだった。

 

「ちょっと、手入れをするからオイルの臭いがしちゃうけど、ごめんね」

 

「い、いえ‥‥」

 

慣れた手つきで銃をバラしているシュテルの姿を見て、鈴は呆然というか啞然としたような顔で見ている。

 

「い、碇さんは銃の扱いに随分と慣れていますね」

 

「日本のカリキュラムじゃあ、取り扱わないけど、ドイツでは普通に銃を使う授業があったからね。でも、この銃は私が愛用している銃じゃないから手入れはしっかりしておかねいとね」

 

バラした銃をオイルで拭いて再び銃を組み立てていく。

 

 

翌朝、宿をチェックアウトした二人は駅前にある服屋にて上着と帽子を購入して着替えると目的の駅を目指した。

 

そして、昨日降りたあの村の駅をチラッと見ると、やはりホームには見張り役なのか挙動不審な村人の姿があった。

 

(やはり、警戒しているな)

 

気づかれる前にシュテルは視線を逸らす。

 

そして、目的の駅に着いた際にシュテルは周囲を見渡す。

 

しかし、先ほどの駅に居た挙動不審な村人のように電車から降りて来た客を見張るようなしぐさをする怪しい人物はいなかった。

 

(どうやら、この駅には村の住人は居ないみたいだ)

 

「怪しい人は居ないみたいだ。さっ、行こう」

 

「はい」

 

駅を出て二人は地図を頼りに海岸へと向かった。

 

「地図によるとこの道が昔、瓜生ヶ村へ続いていた海岸線の道みたいです」

 

「満ち潮の時間までに急がないとね」

 

「はい。行きましょう」

 

満ち潮までと言う制限時間があるので、二人は急ぎ海岸線の道を渡る。

 

「うわっ!?」

 

「これじゃあ、確かにこの道は誰も使っていないな」

 

順調に進んでいた二人であるが海岸線の道の途中が崖崩れでもあったのか岩で塞がれていたが、登れない高さではなかったので、二人は岩を登って先を急ぐ。

 

そして、昨日来たあの鳥居が見える位置までやって来ることが出来た。

 

「あそこですね」

 

「ああ‥‥でも、柵の前で見張りが居るかもしれないからなるべく物音を立てないように行こう。フナムシを見ても声をあげないように」

 

「は、はい」

 

そして例の柵の前にはやはり、村の住人が見張っているが、反対側には誰も配置していない。

 

(警戒するにしては詰めが甘くないか?まぁ、それだからこそ、来れたんだけどな)

 

侵入路があの柵側だけではなく、もう片方にもあるにもかかわらず、村の住人は柵側や村の駅のみ警戒している。

 

今は使用されていない道でしかもその途中が崖崩れを起こしていたので、誰も反対側から侵入してくるとは思わなかったのだろうか?

 

村の住人の詰めの甘さを指摘しつつもその甘さがあったからこそ、ここまで入れたので、村の住人の甘さに感謝しつつ二人は鳥居の奥にある洞窟へと入る。

 

「また柵ですね」

 

洞窟へ入ると、すぐに柵が出現した。

 

「結構頑丈に出来ているな‥‥それに海に浸かっているにしては錆が全然ない。定期的に交換しているのか?」

 

満潮時には海水に浸る部分の柵がまったくさびておらず、ピカピカの状態からこの柵はつい最近になって新しいものと交換されたことが窺える。

 

柵を乗り越えて洞窟の奥へと進んでいく二人。

 

洞窟内と言うことでスマホのライトで足元を確認しながら歩いていくと、

 

バシャ‥‥バシャ‥‥バシャ‥‥

 

「ん?水音?」

 

洞窟の奥から水音が聴こえてきた。

 

「この水音‥‥滝みたいに水が流れ落ちる音じゃない‥‥なんだか水しぶきみたいな音だ」

 

洞窟の奥から聴こえてくる水音は、滝から水が流れ落ちるような規則正しい音ではなく、魚が跳ねる様な‥水に入った人が手で水を掛け合う様な不定期な間隔の水音だ。

 

「お、奥に大きな魚でもいるんでしょうか?」

 

「魚ならいいけどね」

 

こんな洞窟の奥から水しぶきのような水音‥‥

 

鈴の言う通り大きな魚が飛び跳ねているだけとはとても思えない。

 

水音を聴き、何か嫌な予感を感じるシュテルであるがこの水音の正体が今回の失踪の件と何か関係しているかもしれないと思い、警戒しつつ進んでいく。

 

やがて、洞窟内に出来た天然の生簀みたいに比較的に広い水場のある場所へと出ると、その水場には自分たちと同年代くらいの女子たち数人が泳いだり、水を掛け合ったりしていた。

 

「お、女の子!?な、なんでこんな所に‥‥?」

 

鈴は泳いでいる女子たちの姿を見て声を殺して驚く。

 

とても観光客の女子がインスタ映えや動画配信の再生数を稼ぐために泳いでいるわけではなさそうだ。

 

女子たちは泳いでいるわりには水着もウエットスーツも身に着けている様子もない。

 

流石に誰かが来るわけではないが、それでも全裸でこんな場所で泳ぐなんてあまりにも不自然だ。

 

「‥‥し、知床さん‥‥彼女たちは人間じゃない」

 

シュテルは震える声で鈴に目の前で泳いでいる女子たちが人間ではないことを告げる。

 

「えっ?それってどういう‥‥」

 

「彼女たちの下半身を凝視してみて」

 

「下半身?‥‥っ!?」

 

シュテルに指摘されて鈴は言われた通り、泳いでいる女子の下半身を凝視してみると鈴の目が大きく見開かれる。

 

なんと、女子の下半身は人間の足ではなく、鱗に包まれた魚の様な尻尾だったのだ。

 

「さ、魚の尻尾!?も、もしかしてあの子たちは‥‥」

 

「ああ‥‥人魚みたいだ」

 

信じられないが、今二人の目の前には架空の生物とされる人魚が居た。

 

すると、泳いでいる人魚たちはシュテルと鈴の存在に気づき、ピタッと動きを止めてジッと見てくる。

 

「あ、あれ?あの人魚さんたちの目、何か怖いんですけど‥‥」

 

鈴は人魚の目つきを見て、怯えたような声を出す。

 

鈴の言う通り人魚たちの視線は年頃の女子の目線ではなく、まるで血に飢えた獣みたいな目つきだった。

 

「あ、ああ。確かに‥‥この目つきはまるで猛獣だ‥‥とても絵本に登場する人魚姫みたいに人間に対して好意的とはとても思えない」

 

「い、碇さん。そろそろ満潮の時間になります」

 

時計を見た鈴がシュテルに満潮の時間が迫っていることを告げる。

 

「いったん外に出よう。この人魚たちは知的な存在とは思えない」

 

満潮で洞窟内が海水で満たされたり、水かさが増して飛び掛かってきたら、水の中に引きずり込まれるかもしれない。

 

あの柵の所まで行けば、人魚も追っては来れないだろう。

 

二人は洞窟の外へ出ようとした時、

 

 

ウウウウウウウウウウウウウウ~

 

ウウウウウウウウウウウウウウ~

 

ウウウウウウウウウウウウウウ~

 

ウウウウウウウウウウウウウウ~

 

ウウウウウウウウウウウウウウ~

 

 

洞窟内にサイレンの音が鳴り響く。

 

満潮時が近いのでサイレンが鳴るのは分かるが、洞窟内にいるにもかかわらず、外に居る時よりもサイレンの音が大きく聴こえる。

 

人魚たちは慣れた様子で洞窟内の水中を泳ぎ、シュテルと鈴の後を追いかけてくる。

 

「やれやれ、あれだけ警告したにも関わらず、此処まで辿り着くとは全く愚かな連中だ」

 

すると、洞窟内に第三者の声が響く。

 

洞窟の上の方にはあの宮司が立っていた。

 

そして、その傍にはサイレンの音を出しているスピーカーがあった。

 

(出入り口は鳥居がある場所以外にも他にもあったのか‥‥)

 

宮司が洞窟の上部に立っていることから、この洞窟にはあの鳥居がある出入り口以外にも出入りできる場所があるみたいだ。

 

「一応、約束してね。『真相を明らかにする』って」

 

「そうか。それで?真相は掴めたのかね?」

 

「いや、まだだ‥‥ただ、何となくだが、推測はできた」

 

「えっ?分かったんですか?」

 

シュテルは鈴の従兄の失踪についての真相が何となくだが分かってきた。

 

「ほぅ~聞かせてもらってもかまわないかね?」

 

「ああ‥‥あの人魚たちを見て、分かった。昨日写真で見せた男の人‥‥この洞窟に来たんだろう?そして、人魚たちに食われたんだろう?」

 

「っ!?」

 

シュテルが話した問いに鈴は思わず目を見開く。

 

「‥‥よく、分かったな。確かにあの男は此処へ来た‥‥自分の姉の失踪を確かめるためにな」

 

「お兄さんのお姉さん‥‥」

 

「病死したって聞いたけど、まさか‥‥!?」

 

「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」

 

「えっ?どういうことですか?碇さん」

 

「従兄のお姉さんも人魚に食われた‥‥そうだろう?」

 

「ハハハ、よくぞ真相にたどり着いた。しかし、君たちがその真相を外部に漏らすことはないだろう。第一、人魚が居たなんて言ったところで誰も信じないし、そもそもこの洞窟から出ることもない」

 

「それはどういう意味ですか!?」

 

鈴がやや覚えたような声で宮司に訊ねる。

 

「そのままの意味だ。見たまえ」

 

宮司はシュテルと鈴に迫ってくる人魚たちを指さす。

 

「彼女たちは今、物凄く腹を空かせている。ああ見えて彼女たちは物凄い大食でね、普段から与えているエサでは満足できんのだよ。だが、今日は久しぶりに、彼女たちの空腹を満たせそうだ」

 

「それってつまり‥‥」

 

「そう、君たちには、ここで彼女たちの餌になってもらう。そこの君はあの姉弟の身内みたいだね?身内同士仲良く彼女たちの糧になるがいい」

 

「随分と詳しいじゃないか。その口調では、まるでその場面を見ていた様に聞こえたけど?」

 

「もちろん。私はこの場から見ていたのだからね。そう今の君たちを見下ろしているのと同じように」

 

「「っ!?」」

 

宮司は鈴の従兄たちが人魚に食べられている現場を見ていたにもかかわらず助けることもなく、静観していた。

 

「人魚たちに襲われている所を見て、助けなかったんですか!?」

 

鈴にしても珍しく怒気を含む声で宮司に問い詰める。

 

「彼女たちの存在はこの村の中では重要な秘匿事項だ。それを見た人間を生かして帰すと思っているのかね?」

 

宮司の話を聞き、シュテルと鈴は胸糞が悪くなる思いとなった。

 

「で?その重要な秘匿事項であるこの化け物共を何故飼っている?市場には人魚の肉なんて出回っていないと思うけど?」

 

「好奇心は猫を殺すと言う言葉を知らんのかね?まぁ冥土の土産として教えてやろう」

 

宮司は優越感に浸っているかのように何故この村で人魚を飼っているのかを話した。

 

それによると、人魚を飼っている理由として、やはり彼女らの血肉が目的だった。

 

人魚の血肉には伝承の通り、不老不死ないし、不老長寿の効能があるとされている。

 

人間は誰でも老いてやがては死を迎える。

 

だが、権力者と言うのはその老いや死を何よりも恐れる。

 

そんな権力者にとって不老となりうる人魚の血肉は喉から手が出る程欲しがる一品である。

 

それを手に入れるためならば、連中は幾らでも金は払うだろう。

 

だからこそ、宮司たちは此処で人魚の養殖をしていた。

 

しかし、人魚の発育と言うのは他の生物と違い物凄く遅いらしく、それが人魚の血肉に不老不死、不老長寿の力が宿っていると言われる所以なのだろう。

 

人魚は年頃になっても子供を産むのは数十年に一度と出産する回数も少なく、魚と違い一度の出産には一体しか産まず、育成には年月もかかる。

 

生まれたばかりの個体は不老不死ではなく、ある一定の年数が必要らしく、成長の過程で死んでしまう個体が多く、現存する人魚では、あっという間に品切れとなってしまう。

 

だからこの村の宮司たち、一部の村の人間は先祖代々から秘匿しながら人魚を養殖してきた。

 

とても時間と年月がかかる計画だが、それでもいつかは自分たちの子孫には莫大な財産を残せる。

 

引いてはその権力者達とコネを作る事も出来る。

 

それを見越しての人魚養殖計画だと言う。

 

「それとそのサイレン、疑問に思ったんだけど、本当にそれは満潮を知らせるためのサイレンなの?満潮を知らせると言うのは、あくまで表向きで本当は、別の目的のサイレンなんじゃないの?」

 

シュテルがサイレンの正体について宮司に質問する。

 

「ハハハハハ、なかなか鋭いな君は‥その通り、満潮を知らせると言うのはカムフラージュにすぎん。本当の意味は彼女たちに食事を知らせるための合図だ」

 

「あっ、そう」

 

「さて、お話は此処までだ。では、そろそろ彼女たちの成長の糧になってくれたまえ」

 

宮司が人魚養殖計画の全容とサイレンの意味を話すと、タイミング良く?人魚たちは水面から上がり、二人に襲いかかろうとした。

 

「くっ‥‥」

 

シュテルは鈴を庇うように自らの背中へ隠し、銃を取り出すと飛び掛かってくる人魚に向けて発砲する。

 

銃弾を受け命中した人魚たちは衝撃で海へ落ちるが、

 

「っ!?」

 

銃痕はまるで動画を逆再生するかのように再生していく。

 

「彼女たちは不老不死だぞ。そんな玩具で倒せると思っていたのか?」

 

退路は既に満ち潮で水没している。

 

「知床さん、そこの岩へ上って」

 

「は、はい」

 

シュテルと鈴は岩に登り、水から‥‥人魚から距離をとる。

 

「ふん、無駄なあがきを」

 

高みから宮司はほくそ笑んでいる。

 

「知床さん、アレ持ってきている?」

 

「は、はい。持ってきています」

 

鈴は鞄からある物を取り出す。

 

「貸して。それと、髪留めのゴムも一つ貸して」

 

「ど、どうぞ」

 

鈴から髪留めのゴムとある物を受け取ると、それを岩の下に放り投げる。

 

すると、

 

「「「ぎぁやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁー!!」」」

 

洞窟内にこの世のものとは思えない絶叫が響く。

 

すると、水面にはピクリとも動かない人魚たちが浮いている。

 

「そ、そんな‥‥バカな‥‥くっ‥‥」

 

人魚が倒され、宮司は信じられないと言わんばかりな表情を浮かべその場から逃げていく。

 

「や、役に立ちましたね。スタンガン」

 

そう、この村に来る前に秋葉原で購入した『ある物』とは、スタンガンだった。

 

人魚が不老不死と言われており、銃で倒せるとはシュテルも思ってはおらず、そこで、水の中の生物と言うことで電気には弱いかもしれないと思い、スタンガンを購入していた。

 

スタンガンならば、対人でも相手に心臓疾患がない限り、非殺傷の武器でもあるからこの村に来る前、鈴に持たせていた。

 

そして、スタンガンはボタンを押している間、電流が流れるので、鈴の髪ゴムでボタンを押している状態に固定して投げ入れたのだ。

 

「た、倒したんですか?」

 

「いや、分からない。まだ生きているかもしれない‥‥服が濡れるけど、今の内にここを出よう」

 

引き潮になったら、あの宮司が大勢の村人を連れてここへ来るかもしれない。

 

その前にこの洞窟から脱出しなければならない。

 

今なら人魚たちもダウンしている。

 

スマホをカバンに入れ、そのカバンを頭の上に置き、海水につかりながら洞窟を脱出した二人。

 

海岸の道も崖を這うように来た道を戻る。

 

そして、ようやく一息つける場所へと出た。

 

「うわぁ~ずぶ濡れ」

 

「え、ええ‥‥」

 

鈴は従兄が人魚に食い殺されていたことにやはり意気消沈していた。

 

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