やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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遅れて申し訳ありません。

今回の話の後半は八幡の世界での出来事で、とあるスパイ一家がゲスト出演します。

ただ、小町が酷い目にあっているので、小町ファンの方は注意してください。


154話

失踪した従兄の行方を捜しにとある地方の漁村へとやってきた鈴とシュテル。

 

捜索する中、従兄の生存を諦めかけていた鈴であったが、現実は非情であり、彼女の従兄はやはり生存はしていなかった。

 

死因が事故や自殺、病死ならば鈴も納得できるところがあったんかもしれないが、従兄の死因は人魚に捕食されたと普通では信じられない原因であった。

 

しかも、その人魚たちは漁村に住む一部の人間たちが将来、己の地位と権力を高めるための商売道具に過ぎず、従兄の姉も人魚たちの餌食になっていた。

 

漁村にある神社の宮司は鈴とシュテルも人魚たちの餌食にしようとしたが、事前の準備とシュテルの予測により、人魚たちからの牙を逃れ無事に脱出に成功した二人。

 

二人が人魚たちが養殖されていた洞窟から出て行った後‥‥

 

「まさか、本当に人間たちが人魚を養殖しているなんて驚きだわ」

 

洞窟内に女子の声が小さく木霊する。

 

人魚の洞窟に居たのはクリスでスタンガンの電流をくらって未だに痺れている人魚たちを見下ろしている。

 

「人魚の血肉‥‥これはあまりにも人間たちの手に余る代物だわ」

 

そう言ってクリスは人魚たちに手をかざす。

 

すると、

 

「ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁー!!」

 

「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁー!!」

 

「ぐえぇぇぇぇぇぇぇぇー!!」

 

人魚たちは青い炎に包まれ断末魔の悲鳴を上げると、体がボロボロと崩れていき青い炎が収まる頃には人魚たちの姿はもうどこにもなかった。

 

「‥‥念のため、この洞窟も塞いでおきますか」

 

クリスは次に洞窟の出入り口へ手をかざす。

 

すると、

 

ゴゴゴゴゴゴゴ‥‥

 

ガラガラガラガラ‥‥

 

天井部の岩が崩れ始めた。

 

洞窟が落盤する中、クリスの姿はいつの間にか消えていた。

 

 

引き潮と共に宮司は漁村に住むガタイの良い男たちを引き連れてやってきた。

 

男たちの手には木刀や鉄パイプが握られていた。

 

シュテルの予測通り、彼らは人魚の目撃者である鈴とシュテルを口封じのために引き潮を待って洞窟へ戻ってきたのだ。

 

だが、彼らが見たのは見慣れた洞窟がある光景ではなく、落盤によって塞がれた洞窟の姿であった。

 

 

「ふぅ~‥‥海風が‥‥濡れた身体に纏わりついてなんだが気持ち悪い」

 

「そうですね」

 

海水に濡れた服を乾かすため、シュテルと鈴の二人は上着を近くの岩場に干して、服が乾くのを待っているのだが、時折吹く海風が海水に濡れた身体に当たってなんだか不快な気分になる。

 

「‥‥その‥‥従兄のお兄さんの事は‥‥」

 

「‥‥大丈夫です。私も心のどこかでお兄さんの事は諦めていたところもありましたから‥‥」

 

「‥‥」

 

鈴はそう言うが、意気消沈しているのが分かる。

 

二人が無言のまま、海を眺めていると遠くから大きな音が聴こえた。

 

「ん?」

 

「な、なんでしょう?」

 

「崖崩れかな?」

 

轟音はあの人魚の洞窟の方から聴こえてきた。

 

「まさか、あの洞窟が落盤したのか?」

 

「じゃあ、あの人魚たちは‥‥」

 

「もう、外の世界へ出ることはないだろう」

 

何らかの原因で人魚の洞窟が落盤したのであらば、恐らく洞窟内に居た人魚たちも落石により圧死した可能性が高い。

 

「でも、ちょっと勿体なかったかな?」

 

シュテルは海を見ながら呟く。

 

「えっ?勿体ない?」

 

鈴はそんなシュテルの発言に首を傾げる。

 

「伝承やあの宮司の言っていることが本当ならば、人魚の肉には不老不死の力が宿っていることになる。あの人魚の肉片を一口でも食べれば私たちも不老不死になれたかもよ」

 

「わ、私は不老不死なんて‥‥」

 

鈴は此処へ来る前に八尾比丘尼伝説をシュテルから聞いており、不老不死になった八尾比丘尼の苦悩を知っており、もし自分が不老不死になったとして家族やクラスメイトたちが天寿を迎えていく中で一人取り残されていく孤独には耐えられない。

 

だからこそ、鈴は不老不死の肉体に興味が湧かなかった。

 

「‥‥私も同じ」

 

人魚の肉について話題をふったシュテル自身も鈴と同じく不老不死の肉体には興味がなかった。

 

服が乾くと二人は横須賀へと戻って行った‥‥

 

 

後日、この漁村がある地方紙にて、

 

『蛭ノ塚神社宮司水死体で発見』

 

と、あの神社の宮司の死亡記事が小さく書かれていた。

 

彼が何故死んだのかその理由は分からない。

 

これまでの順調に進めていた人魚養殖計画が失敗したことに責任を感じ自殺したのか?

 

それとも、志を半ばに計画が失敗した責任を取らされ同志に粛清されたのか?

 

いずれにせよ表向きに人魚の養殖計画を台無しにした鈴とシュテルの顔を知っているのは死んだ宮司だけなので、二人が村人に狙われることはなかった。

 

鈴の従兄が亡くなっていた事、

 

そして、宮司の死‥‥

 

なんとも後味が悪い結末となってしまった。

 

 

横須賀へ戻ったばかりの鈴はやはり、従兄の死を少し引きずっていたが、明乃や真白たちがフォローしたことで何とか持ち直すことが出来た。

 

シュテルが鈴の従兄を捜す為に漁村へ行ってから少ししてから、二年生の艦長職の学生たちが校長である真雪から呼び出された。

 

その中には留学生ながらも一応、高校二年生のシュテルとテアも横須賀女子の二年生の学生と同じく呼び出されていた。

 

講堂に集められた二年生の学生たちは一体何故呼び出されたのか心当たりがなく、ザワついていた。

 

「二年生だけって何の用だろう?」

 

「何か聞いている?」

 

「ううん」

 

二年生の学生たちがザワついていると、真雪が講堂に姿を現すと学生たちはピタッと静かになる。

 

「皆さん、突然の呼び出しに困惑しているかと思われますが、今日二年生の皆さんを呼んだのは今度、他校の生徒さんたちとの演習に参加してもらいたいからです」

 

「他校‥‥」

 

「どこの学校だろう?」

 

「呉海洋とか?」

 

真雪の言う『他校の生徒』と言う単語に再びザワつく学生たち。

 

まっさきに思い浮かんだのは、先に行われた遊戯祭で横須賀女子へやってきた呉海洋女子だった。

 

「せ、先生。その演習相手の学校って呉女子海洋学校ですか?」

 

一人の学生が真雪に質問する。

 

「いえ、今回の演習の相手は呉女子海洋学校ではありません」

 

「えっ?」

 

しかし、以外にも真雪の口からは演習相手が呉女子海洋学校ではないことが告げられる。

 

「今回、皆さんの演習相手の学校は千葉にある海浜総合高校と総武高校の海洋科の生徒さんたちです」

 

「総武‥‥」

 

真雪の口から告げられた高校の名前を聞き、シュテルはピクッと反応する。

 

そんなシュテルの様子に気づくはずもなく真雪は演習についての説明を行うがシュテルにはその説明のほとんどが耳に入らなかった。

 

一方、総武と聞いて反応したのはシュテル以外にもう一人居た。

 

(えっ?総武って確か雪ノ下さんが居る学校だよね‥‥)

 

(って、ことは演習相手には雪ノ下さんが居るってことだよね‥‥)

 

(うぅ~雪ノ下さん苦手なんだよなぁ~)

 

みほが雪ノ下と出会ったのは西住家主催のパーティーでの一度きりだったのだが、最初の邂逅がみほにとってはけして芳しくはなかったので、みほは雪ノ下に対して苦手意識があった。

 

(で、でも、今回の演習にはシュテルさんもいるから心強いよ!!)

 

(シュテルさんと一緒に戦う訳だから私も頑張らないと!!)

 

(格好悪い所を見せるわけにはいかないよ!!)

 

みほは演習相手が雪ノ下が居る総武高校だと知り、当初は憂鬱な気持ちになりかけたみほであるが、友軍としてシュテルが居るとなると、彼女の手前、弱気になったり、無様な姿を見せるわけにはいかないと奮い立った。

 

ただ、真雪が今回、海浜総合高校と総武高校の海洋科との演習の話を受けたのはやはり、春に起きた例の事件により周辺の学校へのカリキュラムに大きな影響を与えてしまったと言う負い目があったからなのだ。

 

生徒たちにあの事件の尻拭いをさせてしまう様な形で申し訳ない気持ちであるが演習によって得るものもある筈だと心の中でそう思ってもいた。

 

 

横須賀女子で海浜総合高校と総武高校の海洋科の学生たちとの演習の説明が行われている頃、演習相手である総武高校でも説明会が行われていた。

 

「と言うことで、海浜総合高校と横須賀女子海洋学校との演習が決まりました。春に横須賀で起きたパンデミック事件により、当校も海浜総合高校もカリキュラムに後れを生じる結果となりましたが、二年生の皆さんには今回の演習を成長の糧にして頂きたい」

 

(横須賀女子‥‥あの西住みほがいる学校‥‥あの時の屈辱を私は決して忘れていないわよ‥‥今度こそ完膚なきまでに叩き潰してやる!!)

 

横須賀女子との演習の説明を聞き、雪ノ下はその演習相手にみほが居る事で密かに闘志を燃やしていた。

 

 

「‥‥と言う訳で今度、千葉の学校との演習が行われ私たちヒンデンブルクもその演習に参加することが決まりました」

 

講堂から戻ったシュテルはクラスメイトたちに今度行われる海浜総合高校と総武高校との演習を伝える。

 

「横須賀女子からは私たちと同じ二年生の学生たちとシュペーが千葉に赴いての演習になる。各自、準備を怠らないように。では、次に演習の内容を説明する」

 

シュテルは講堂での説明会に配られた資料に書かれていた演習の内容と予定を説明する。

 

クラスメイトたちはシュテルの説明をメモして演習の内容を頭に叩き込んでいった。

 

その日の夜、横須賀女子の学生寮にて、

 

「あっ、もしもし。一色さん?私、シュテル」

 

「あっ、せんぱい。どうもです」

 

シュテルは遊戯祭で知り合ったいろはに電話をいれた。

 

「それで、今度横須賀女子と総武、海浜総合と演習をすることになって、私のクラスも千葉に行くことになったの」

 

「あっ、その話なら聞いています。一年生の私たちも一部参加するって‥‥」

 

「ええ、資料には一年生のカッター漕ぎの演習に私たち二年生は監督生として参加するみたい」

 

「せんぱい、もし私たちのクラスの担当になったらその時は諦めてください」

 

「えっ?どういう事?」

 

「私たちのクラス、カッター漕ぎが滅茶苦茶下手で弱いです」

 

「そ、そうなんだ‥‥」

 

その後、いろはの近況を訊ねると、遊戯祭の後でシュテルの忠告にしたがって以前のあざとさはナリを潜めて普通の女子高生の生活を送っている。

 

いろはが態度を改めたと言うことで、次第に彼女に心を許す同性も居たが、やはり彼氏をいろはに取られた者は未だにいろはの事を敵視している者もいるが、着実にクラスメイトとの関係性は改善されつつある。

 

「それで、この前頼んでいた事だけど‥‥」

 

「あっ、はい。総武に居るかもしれない男子高校生ですね?」

 

「うん。それでどうだった?」

 

シュテルはいろはにこの世界に前世の自分である『比企谷八幡』が総武に在籍しているのかを頼んでいた。

 

そして、その結果を今日訊ねた。

 

「それが、せんぱいの言う『比企谷八幡』って人は二年に在籍していませんでした」

 

「えっ?」

 

いろはの返答にシュテルは一瞬、声を失う。

 

(総武に比企谷八幡‥‥前世の俺が在籍してない‥‥だと‥‥)

 

今年の総武の文化祭が中止になった時から違和感を覚えていた。

 

もし、この後世で比企谷八幡と言う男子高校生がいたのであれば、きっと前世の自分と同じく二年生の現国の作文で奉仕部に問答無用で放り込まれ、理不尽な依頼を無理矢理やらされていた筈。

 

それはきっと文化祭も前世の自分と同じようなことをして、相模のふざけた提案に乗っかって文実の仕事をサボる委員たちに暴言を吐いて、自分にヘイトが集まるように誘導し文実の仕事に来させた筈だ。

 

だが、結果的にこの後世では今年の総武の文化祭は中止になっていた。

 

その理由が、総武高校に『比企谷八幡』と言う男子高校生が在籍していない結果だったからだ。

 

(そうか、だから今年の総武の文化祭は中止になったのか‥‥)

 

(となると、この後世の俺はどこの高校に行ったんだ?まさか、折本と同じ海浜総合に行ったのか?)

 

総武でないとすると次に近い高校はこれまた今度の演習相手の一校である海浜総合高校である。

 

(あの折本と同じ高校へ‥‥うーん‥‥だが、それもなんだが考えにくいような気もするが‥‥)

 

前世の経験から、中学生時代に折本に告白し見事玉砕。

 

ただ告白してフラれただけならば、中学生時代のほろ苦い思い出の一ページで終わったのだが、問題はその後に起こった。

 

折本本人が言いふらしたのか、それとも告白場面を覗いていた誰かなのか、翌日クラスの黒板にはデカデカと八幡が折本に告白したことが書かれていた。

 

それが原因で八幡は中学卒業まで虐めを受けた。

 

虐めの原因の一端を担う折本が進学した高校へ行くだろうか?

 

それともこの後世では折本は自分の告白をOKしたのだろうか?

 

もし、この後世で折本が自分の告白をOKしたのであれば、折本が進学した海浜総合へ進学したかもしれない。

 

だが‥‥

 

(いや、ないな‥‥)

 

しかし、シュテルはその可能性を即座に否定した。

 

(あの折本が前世と同じく腐り目の男の告白を受けるわけがない)

 

自虐であるが、前世の自分の容姿が異性受けがする容姿でないことは自分が一番よく知っているからだ。

 

(しかし、なんにせよ総武に居ないのであるならば、秋の修学旅行で嘘告白することはないだろう)

 

総武高校に居ないのであるならば、当然奉仕部に強制入部している筈もなく、この先に控えている総武高校の修学旅行へ行くこともなければ、絶対に失敗しない告白と告白の阻止なんて矛盾した二つの依頼を受けることもなければ、告白場面に乱入して噓告白をすることもない。

 

噓告白をしなければ、高校で虐めを受けることも家族から拒絶されることもない。

 

そうなれば当然自殺することもない。

 

いろはからの報告を聞いて、ちょっと胸の中がホッとしたシュテルであった。

 

 

シュテルがいろはと電話をしている頃、横須賀にあるみほの実家である西住家では、西住家に連なる親族たちが集まっていた。

 

ただその中に分家である雪ノ下家の者は居なかった。

 

「それで、現状雪ノ下家を見るにどう思うか皆の意見を聞かせてほしい」

 

西住家当主である西住しほが親族たちに雪ノ下家の動向を訊ねた。

 

「最近の雪ノ下家の動向にはやや目に余るものがあります」

 

「左様。使途不明金の動きが活発化しており、それはどうも千葉県警にも広がっているみたいです」

 

「そのほかの情報では、ご息女である雪乃さんは学校ではまさに傍若無人なふるまいをしており、問題が起きても雪ノ下家の顧問弁護士である葉山氏が握りつぶしているようです」

 

「‥‥」

 

親族から次々とあがる雪ノ下家の不正情報‥‥

 

親族から知らされる情報をしほは目を閉じて聞いている。

 

「西住さん。これ以上雪ノ下家の不正に目を瞑っていては名家である西住に泥を塗ることになるのではないでしょうか?」

 

「ここはやはり、早々に手を打った方が良いのでありませんか?」

 

「‥‥やむを得ないわね」

 

しほは親族からの報告を聞き、一つの決断を下した。

 

それは分家である雪ノ下家を切り捨てる決断であった。

 

「ただ、横須賀女子では今度、雪ノ下家の令嬢が在籍している総武高校との演習があるみたいです。せめてもの情け‥‥その演習が終わるまで待ってあげましょう」

 

しほは雪ノ下家を潰すにしても今度の演習が終わるまで待つつもりであった。

 

その心情は‥‥

 

(家の娘相手にどこまで戦えるかしらね)

 

しほはみほの実力を十分に買っており、横須賀女子‥引いてはみほの勝利を信じていた。

 

 

 

 

ここで視点は、シュテルが八幡だった頃の世界へと移る。

 

 

某県にある女子刑務所にて、

 

「004047番出ろ」

 

女性刑務官が一つの房に収監されている女性囚人を房から出す。

 

房から出てきた女性囚人は囚人服ではなく、私服を身にまとい、両手には大きな紙袋を持っている。

 

そして、刑務所の正面出入り口で、

 

「もう、戻ってくるなよ」

 

「‥‥はい‥お世話になりました」

 

刑務所を出所した女性は刑務官に深々と頭を下げた。

 

今日、刑務所を出所した女性の名前は比企谷小町‥‥

 

八幡の妹で比企谷家では蝶よ花よと可愛がられた少女であった。

 

しかし、彼女の人生は中学三年の時に狂った。

 

最初のほころびは兄である八幡が修学旅行にて、部活に持ち込まれた依頼を無視して本来告白する相手を差し置いて告白した。

 

兄の同級生でクラスメイトの由比ヶ浜から知らされた一報は小町を憤慨させた。

 

その後、兄を拒絶し、すれ違いの生活が始まった。

 

しかし、姿を見せずすれ違いの生活をしているだけと思っていた小町であったが修学旅行のすぐ後に兄が失踪している事を後に知る。

 

次に兄が在籍していた高校からの助っ人依頼。

 

クリスマスに幕張のコミュニティセンターで総武高校と他校との合同イベントをやる予定だったのだが、当日になっても出し物が決まらず中止になり、その原因が総武側にあるとされた。

 

そして、同時期に自身の学力の結果を知ることとなる。

 

第一志望である総武高校の合格率が絶望的だと知ったのだ。

 

だが、受験まで時間もなく、両親からの過度な期待で志望校を変更することが出来ず結果的に高校受験は大失敗となり、以降比企谷家は崩壊する。

 

両親は離婚し、自身は引きこもり。

 

更には兄が失踪している事をここで知り、近所には自分たちが兄を殺したのではないかとあることないことを噂され白い目で見られた。

 

引きこもり当初は父親がまだ働いていたからその給料で生活できたが、やがて父親が退職し年金暮らしになると使えるお金も減り、小町はよく癇癪を起した。

 

やがて、父親が死ぬと等々収入が無くなり生活は困窮した。

 

打開策として小町は窃盗と言う犯罪に手を染めた。

 

しかし、長い間引きこもり生活で食っちゃ寝の生活の為、学生時代はスマートな体系も力士の様なブクブクした体系では逃げきれずにすぐに捕まり、小町は刑務所を出入りしていた。

 

ただ、刑務所の規則正しい生活と食生活の為、体系が改善されたのは良いが、刑務所を出ても離婚後、母親とは音信不通となり、どこにいるのかさえも分からず、実家も小町が窃盗に入った家に慰謝料を払うために売りに出した為、家族も家も失っていた。

 

刑務作業で出た僅かなお金もやはり慰謝料の支払いで消えている。

 

「はぁ~これからどうしよぉ~‥‥」

 

小高い丘にある公園のベンチでうなだれる小町。

 

「今日の宿もあるし‥‥コンビニで万引きするかファミレスで食い逃げでもすれば刑務所に行かないまでも警察の留置場行きで泊まれるかな」

 

万引きか食い逃げをして警察の留置場を今日の宿にしようかと思っていたその時、

 

「ちち、はは、見て、見て、人がゴミのようだ」

 

「どこで覚えた?」

 

「アニメ」

 

「うん」

 

「観光名所ではありませんが、こうした公園もいいですね」

 

「アーニャも人いっぱいより好き!」

 

公園の展望台で一組の家族が下に広がる街を眺めていた。

 

その声は小町にとって昔、聞き慣れた声だった。

 

(お、お兄ちゃん!?それにあの女の人の声は雪ノ下さん!?)

 

(そ、そんな、雪ノ下さんは確か死んだ筈じゃあ‥‥)

 

小町がその家族を注意深く観察しているとやはり、男性の声は失踪した兄の八幡、女性は死んだと聞かされた雪ノ下の声そのものだった。

 

(はっ!?ま、まさか‥‥)

 

小町の中である仮説が導き出される。

 

兄の失踪‥‥それは、雪ノ下との駆け落ちだったのでないだろうか?

 

兄が最初に失踪し、潜伏先での生活基盤を整えた後、雪ノ下が兄と合流しそこで生活をする。

 

そもそも自分は雪ノ下たちが死んだと聞かされただけで、葬式に参列していないから雪ノ下の死体を見たわけではない。

 

雪ノ下家はかなりの金持ちなので、娘が駆け落ちしたなんて事実を恥ずかしくて公表できず、雪ノ下は死んだことにして勘当したのではないか?

 

そんな仮説が導き出されると同時に小町の中には兄や雪ノ下に対する憎悪が沸き上がる。

 

(小町がこんなにも苦しい思いをしているのにあのごみぃちゃんたちは幸せそうに家庭を築くなんて許さない‥‥絶対に許さない!!)

 

小町は荷物の中に入っていたカッターナイフを取り出す。

 

(髪の毛を金髪に染めて、それで変装しているつもりなの?)

 

カチ、カチとカッターナイフの刃を出し、兄の一家と思われる家族に近づく小町。

 

最初はゆっくりとした足取りで近づくが次第に足の速度は速くなっていく。

 

そして、

 

「死ねぇぇぇぇー!!ごみぃちゃぁぁぁぁん!!」

 

兄と思われる男性をカッターナイフで刺そうとしたその瞬間、雪ノ下と思われる女性が振り向き、自分に近づいてくる。

 

そして、カッターナイフの突きを躱すと額に左手の中指と人差し指、腹部に右手の中指と人差し指を突き立てると、小町の身体に電流の様な痛みが走り、彼女の身体は空中を一回転して地面にたたきつけられた。

 

「ぐぇっ!!」

 

カエルが潰れたような声を出す小町。

 

「‥‥」

 

「‥‥」

 

一連の女性の動きを見て、男性と娘らしき少女は若干引いており、公園に居た他の人たちも唖然としている。

 

「はっ!?い、いや違うんです!昔ヨガ教室で動きを止める秘孔を学んだことがありまして!」

 

反射的に動いたのか、女性はしどろもどろになりながらも訳を話している。

 

そうこうしているうちに他の人が警察を呼んでくれたみたいで、小町は現場に到着した警官に捕まり、パトカーに押し込まれ、警察署へ連行された。

 

「日本は平和な国と聞いていたのですが、まさか公園で暴漢が出るとは思いもよりませんでした」

 

「ま、まぁ、アーニャやヨルさんに怪我がなくて何よりだ。さっ、気を取り直して観光を続けよう」

 

「そうですね」

 

警官からいくつかの事情聴取を受けた一家であるが海外からの旅行者であり、しかも被害者側で犯人である小町とも面識がないため、一家はすぐに解放され本来の目的である観光へと戻っていった。

 

 

一方、警察署へ連行された小町は警官にあの一家の男性は自分の兄であり、女性は兄の同級生である雪ノ下雪乃だと主張した。

 

「こちらで調べたが、君のお兄さんである比企谷八幡さんは失踪宣告が受理されて、死亡扱いになっているし、雪ノ下雪乃さんに関しても交通事故で死亡していることが判明している。君が襲った人たちは海外からの観光客だ」

 

「嘘だ!!あの声は確かにごみぃちゃんだ!!」

 

「はぁ~あのねぇ、そもそも君のお兄さんが仮に生きていたとしても君が刺そうとした男性と年齢が合わないでしょう」

 

「それはきっと整形をして若作りを‥‥」

 

「だから‥‥」

 

警官がいくら説明しても小町は受け入れず、あの一家が八幡と雪ノ下であると主張し続けたのであった。

 

そして、小町の願い通り、この日小町は警察の留置場でお世話になることになった。

 




小町を投げ飛ばしたヨルさんの動きはSPY×FAMILYアニメ4話の牛を投げる動きをイメージしてください。
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