やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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155話

 

 

「出航!!」

 

出航を告げるラッパ音と共に錨を巻く鎖の音、そして汽笛を鳴らし、横須賀女子の二年生とドイツからの留学生組は横須賀女子の港湾地区を出航していく。

 

目指すのは東京湾を挟んだ反対側に位置する千葉県。

 

今回、横須賀女子の二年生は千葉にある総武高校と海浜総合高校の海洋科二年生の学生との演習を行うために千葉へと向かう。

 

(総武ってことは、雪ノ下や葉山、由比ヶ浜の奴が居るよな‥‥)

 

(でも、前世では雪ノ下は国際教養学科、葉山と由比ヶ浜は普通科だったから校舎内ですれ違うことがあってもそこまで深く関わることはないだろう)

 

(それに平塚先生も普通科の現国担当だったから絡むこともないだろう)

 

この時、シュテルは雪ノ下たちが前世と同じ科だと思っており例え校舎内ですれ違っても今の自分は比企谷八幡ではなく、ドイツからの留学生のシュテル・H(八幡)・ラングレー・碇なのだから深く関わることはないし、容姿も性別も異なるのだから話しかけられることもないだろうと思っていた。

 

そして、理不尽に殴られたり、揉め事を押し付けてくるあの教師にも絡まれることはないと思っていたのだが、千葉に着くとそれが間違いであったことに気づかされた。

 

総武高校と海浜総合高校の二校では、総武高校の方が普通科、国際教養科、海洋科と三つの科を有している学校でその規模も海浜総合高校よりも大きかったことから、集合場所は横須賀女子、海浜総合高校共に総武高校となった。

 

千葉の方もやはりこの後世世界では地盤陥没により前世よりも地形が異なっていた。

 

シュテルは日本に来てから何度か、後世世界の自分を捜しに千葉へ来ていたが、総武高校へ赴くことは無意識的に避けていたので、後世世界の総武高校へ来るのは今回が初めてであった。

 

(これがこの世界の総武高校‥‥確かに地形が変わっているだけあって前世の総武高校よりも少し違うな‥‥)

 

(はぁ~雪ノ下たちに絡まれることなないとしても三浦と付き合っている戸塚の姿も見ることになるかもしれないのか‥‥)

 

前世と異なり、この世界では戸塚と三浦が彼氏彼女の仲となっている。

 

あの二人も普通科の生徒だろうから会う機会は少ないかもしれないが、それでも戸塚と三浦がイチャイチャしている姿を見るのは、やはり失恋した側としては見るのは辛い。

 

(なるべく普通科や国際教養科の棟に近づかないようにしよう)

 

戸塚と三浦のいちゃつく姿を見ないため、そして前世では自分を利用し拒絶した由比ヶ浜、葉山、雪ノ下となるべく会わないように普通科と国際教養科のクラスが入っている棟には近づかず、なるべく艦に留まっていようと決めたシュテルであった。

 

しかし、この後シュテルはこの前世と後世世界との違いをまたもや体験することになる。

 

シュテルたち留学生組を含めた横須賀女子組が総武高校へ向かっている中、総武高校では先に着いた海浜総合高校のメンバーの代表が総武の代表である雪ノ下に挨拶をしに来た。

 

その人物が‥‥

 

「今回の合同演習の話を受けてもらって良かったよ。今回の演習を通じてお互いリスペクトできるパートナーシップを築いてシナジー効果を生んでいこう」

 

前世のクリスマスイベントにてイベント失敗の全責任を総武側にあると主張した海浜総合高校生徒会会長の玉縄だった。

 

玉縄の姿を見た雪ノ下は前世で味わった屈辱を思い出し一気に嫌悪感が沸き上がる。

 

(よりにもよって、この無能が海浜の代表?)

 

(やっぱり、海浜は海浜ね。前の世界でもそうだったけど、所詮海浜は総武の滑り止めレベルの底辺高校‥‥この程度の無能が海浜の代表って言うだけでそのレベルの低さが一目で分かるわ)

 

(今回の演習でもまたその下手なビジネス用語で足を引っ張りそうだけど、その時は捨て駒程度には利用してあげるわ)

 

しかし、雪ノ下は嫌悪感を表には出さず、内心で見下しながら玉縄を見る。

 

「ええ‥‥よろしく」

 

玉縄との挨拶も一言で済ませその場を後にする。

 

これ以上玉縄の姿を見て、彼の声を聞いていると思わず手を出してしまいそうだったからだ。

 

前世ではクリスマスイベントの失敗の責任を押し付けられたが、流石にこの後世世界では玉縄と今回が初邂逅なので、いきなりビンタすれば自分の評価に傷がつくので雪ノ下は必死に理性で抑え込んだ。

 

総武、海浜の学生が集まり、横須賀からも横須賀女子二年生+ドイツからの留学生組も到着した。

 

そして、シュテルは会ってしまった‥‥

 

(なんで、雪ノ下も由比ヶ浜も葉山も海洋科なんだよ!?)

 

総武高校の体育館で一同の顔合わせの時、そこに居たのは会いたくない人物たちでと‥‥

 

(あの独神暴力教師も今回の演習担当教官だと!?)

 

前世で自分の事を理不尽に殴りつけてきた独神こと、平塚先生も海洋科の担当教師であった。

 

葉山が海洋科の学生と言う事で当然、同じクラスの戸塚と三浦も海洋科の学生であることを失念しているシュテル。

 

 

シュテルが会いたくもない人物らと演習しなければならない事に憂鬱さを感じている中、

 

(あっ、あの泥棒猫!!)

 

由比ヶ浜もシュテルの姿を見つけ、くすぶっていた嫉妬の炎を再び燃やし始めた。

 

壇上で平塚先生が今回の演習についての日程などの説明をしている中、

 

(どこからか、視線を感じる‥‥多分由比ヶ浜の奴だな)

 

体育館で説明を聞いているとシュテルはどこからか視線を感じた。

 

そしてその視線の主は由比ヶ浜だと確信していた。

 

何しろ雪ノ下、葉山、由比ヶ浜の三人の内、邂逅したのは由比ヶ浜だけだったからだ。

 

しかも、由比ヶ浜は身内のカナデにストーカーまがいな行動をとり、自分に対して完全に敵視している感じだったので、その敵視している自分が居るのだから睨むのも分かる。

 

故に面識のない雪ノ下と葉山が自分を睨むなんて事はないし、略奪愛をしたわけではないのでブルーマーメイドフェスタで出会った戸塚と三浦が睨む理由もない。

 

 

説明が終わり、一同が解散になると由比ヶ浜は急ぎ雪ノ下の下へと向かう。

 

「ゆきのん」

 

「あら?由比ヶ浜さん。どうしたの?」

 

「ゆきのん、見つけた!!見つけたの!!」

 

「見つけた?何を?」

 

「例の泥棒猫!!」

 

「泥棒猫?」

 

「そう、私からカナカナをとった泥棒猫」

 

「あぁ‥‥いつか言っていた人ね。その人が居たの?」

 

「うん。横須賀から来た人の中に居た」

 

「横須賀‥‥」

 

由比ヶ浜曰く、自分が想いを寄せている人を取った人物が横須賀女子の生徒だったらしい。

 

(まさか、その人‥西住みほじゃないわよね)

 

雪ノ下は由比ヶ浜の言う泥棒猫が西住みほではないかと勘繰る。

 

(もし、西住みほならそれはそれで潰しがいがあるわね)

 

そして、もし由比ヶ浜の言う泥棒猫が西住みほだったら遠慮なく潰してやると息巻く。

 

「由比ヶ浜さん、案内してもらっていいかしら?」

 

「えっ?」

 

「その泥棒猫にガツンと言ってやるんでしょう?だったら私も加勢するわ」

 

「ゆきのん‥‥ありがとう!!」

 

由比ヶ浜としたら、秀才の雪ノ下が自分の味方になってくれればシュテルに対してギャフンと言わせ、カナデと別れさせることも出来るかもしれないと思い二人でシュテルの下へと向かった。

 

そのシュテルの方は由比ヶ浜に絡まれたり、雪ノ下、葉山と会う前に自分の艦に戻ろうとしていると、

 

「ちょっと待つし!!泥棒猫!!」

 

シュテルは背後から声をかけられた。

 

(この声、由比ヶ浜‥‥)

 

シュテルは自分に声をかけてきた人物の声を聞いて誰が声をかけてきたのかすぐに察しがついた。

 

(くそっ、逃げ損なったか‥‥)

 

由比ヶ浜に絡まれる前に自分の艦に逃げ込みたかったが、戻る前に由比ヶ浜に捕まってしまった。

 

このまま無視をして去りたいところだが、既に由比ヶ浜にロックオンされているので、この場から逃げてもしつこくついてくることは目に見えている。

 

めんどくさいと思いながらも振り返ると、そこには案の定息を切らしてやや血走った眼をした由比ヶ浜と‥‥

 

(げっ!?雪ノ下!?なんでこいつも‥‥)

 

何故か由比ヶ浜と一緒に会いたくない人物の一人である雪ノ下も居た。

 

由比ヶ浜と二人一緒に居る事から大方由比ヶ浜に流されて付いてきたのだろうと判断した。

 

あの修学旅行の件も由比ヶ浜一人がノリノリで引き受け、雪ノ下は彼女の勢いに押されてあの依頼を受けたので、今も由比ヶ浜に「一緒に来てくれ」とか言われてき来たのだろう。

 

「なにか?」

 

とは言え、少なくとも自分と雪ノ下はこの世界では今回が初邂逅なので、シュテルは嫌悪感をなるべく出さずに対応する。

 

「『なにか?』白々しいし!!この泥棒猫が!!」

 

いきなり声を荒げる由比ヶ浜。

 

「はぁ?泥棒猫?いきなり何を言っているの?」

 

「ふざけるなし!!私とカナカナの仲を引き裂いた癖に!!さっさとカナカナと別れろし!!」

 

「カナデはお前のストーカー行為に参っていた。犯罪者紛いが私を泥棒猫?ふざけているのはお前の方だろう?」

 

前世では常に諦めモードな性格だったから、由比ヶ浜のバカな発言も雪ノ下からの罵倒も受け流してきたが、今回は身内であるカナデも関係しているので言い返すシュテル。

 

「す、ストーカー!?私をストーカーなんて犯罪者扱いするなんてメーヨーキソンで訴えるし!!」

 

(へぇ~名誉毀損なんて言葉知っていたんだ‥‥)

 

由比ヶ浜とシュテルの言い合いを静観していた雪ノ下は、

 

(西住みほではなかったのね‥‥)

 

由比ヶ浜の言う泥棒猫がみほでなかったことにちょっと残念そうだった。

 

「ちょっといいかしら?」

 

とは言え、このまま黙って静観している訳にはいかず雪ノ下はシュテルに声をかける。

 

「なんでしょう?えっと‥‥」

 

一応、この世界では初対面なので、敢えて雪ノ下の名前を知らない振りをするシュテル。

 

「あぁ、失礼。私は雪ノ下雪乃。総武高校の総代を務めているわ」

 

「ご丁寧にどうも。私はドイツ・キール校のシュテル・H(八幡)・ラングレー・碇と申します。こちらはクラスメイトのクリス・フォン・エブナーです」

 

「どうも」

 

シュテルに紹介され雪ノ下に一礼するクリス。

 

(八幡!?あのクズは葉山君が得点で存在しないことになっているのに、まさかあの忌々しい名前を聞くなんて‥‥)

 

雪ノ下はこの世界に比企谷八幡が存在しないことを葉山から聞いており、実際に総武高校に比企谷八幡と言う男子高校生は存在していない。

 

それにもかかわらず、八幡の名前が含まれる女子高生が眼前に存在している事に対して無性にイラついた。

 

しかし、流石の雪ノ下も目の前に居るドイツから来た女子高生が八幡の生まれ変わりとは知る由もなかった。

 

「ハチマンだなんて、女子にそんな名前を付けるなんて、貴女の親は一体どんなセンスをしているのかしら?品性を疑うわね」

 

その為、雪ノ下の口から出てきたのはシュテルの親を貶す言葉だった。

 

(世界は変わっても雪ノ下は雪ノ下だったか‥‥)

 

最初に奉仕部の部室へ連れて行かれた時も雪ノ下の口から出てきたのは自分に対する罵倒だった。

 

流石に女子になったこの世界では 『そこのぬぼーっとした人は?』 『そこの男の下心に満ちた下卑た目を見ていると身の危険を感じます』 などの罵倒ではなかったが、まさかこの場に居らず、関係ない自分の親を貶してくるのは予想外であったが、雪ノ下の口の悪さは前世でも後世でも変わらないと実感する。

 

『日本の女性は御淑やかな人だと思ったのだけど、まさか初対面の人の親を貶してくる非常識で野蛮な人もいるんだね』 (ドイツ語)

 

『多分、この人シュテルンの親がどんな人か知らないんじゃない?無知は罪だね』 (ドイツ語)

 

シュテルとクリスがドイツ語で話すと、

 

「ちょっと、何訳の分からない言葉言っているし!!マジ、キモイ!!」

 

由比ヶ浜が嚙みついてきた。

 

しかし、雪ノ下は何も言ってこなかったことを見ると、雪ノ下は日本語と英語は出来てもドイツ語は分からないみたいだ。

 

「はぁ?私たちはドイツ人だよ。ドイツ人がドイツ語を話して何がいけないの?貴女だって日本語をベラベラと喋っているじゃない」

 

流石に由比ヶ浜の態度にイラッと来たのかクリスが反論する。

 

「貴女のさっきの言葉を返すなら、ドイツ人から見た私たちにすると、『何、ベラベラと日本語を話しているの?マジキモイ』になるんだけど?」

 

「日本人なんだから日本語を喋るのは当たり前だし、アンタバカなの?」

 

「由比ヶ浜さん‥‥」

 

由比ヶ浜の発言は完全にブーメランであり、それについては呆れる雪ノ下。

 

「じゃあ、ドイツ人がドイツ語を話してどこがキモイの?ねぇ、言ってみてよ。教えてよ」

 

「う、うるさいし!!そんなの今は関係ないし!!」

 

由比ヶ浜は流石に自分の言い放った言葉がブーメランになり、自分の旗の色が悪くなったと思ったら、大声を上げてこの話題を逸らそうとした。

 

「大体、公海上での公用語は英語よ。貴女の言動から大して頭が良さそうには見えないけど、英語で通信をする際も貴女は『何英語なんて喋っているの?マジキモイ!!日本語で話して』なんて言う気?」

 

(此奴なら言いそうだな)

 

(由比ヶ浜さんなら言うかもしれないわね)

 

クリスの指摘にシュテルは勿論のこと、雪ノ下も心の中ではクリスの指摘に頷く。

 

何しろ、由比ヶ浜の英語の試験は雪ノ下が教えているにもかかわらず毎回赤点ギリギリの点数だ。

 

紙に書くテストで赤点ギリギリなのだから、英会話なんて由比ヶ浜にしてみれば相手が何を言っているかなんてとても理解できず、逆ギレして『日本語で話せ』なんて言う光景は簡単に想像できる。

 

「いいもん!!英語なんて話せなくたって、ゆきのんがいれば英語なんて簡単だよ。そうだよね?ゆきのん」

 

「えっ?え、ええ‥そうね」

 

(此奴も雪ノ下同様、この世界でも変わらず、他人に厄介事を任せるトラブルメーカーだな)

 

(大体、四六時中雪ノ下と一緒に居るつもりか?)

 

由比ヶ浜の発言を聞いて、困ったことがあれば雪ノ下が何とかしてくれると思っていいる彼女の思考回路は雪ノ下同様、前世でも後世でも変わっていない。

 

(この分じゃあ葉山の奴も相変わらず『みんな仲良く』とか言って、自分が気に入らない奴を省いたり、ソイツを嵌めたりしているんだろうな)

 

雪ノ下も由比ヶ浜も前世と変わっていない事から、自分を嵌めたもう一人の人物‥葉山もきっと前世と変わらず、「みんな仲良く」とか言っているにもかかわらず、その「みんな」は自分が嫌っている人物以外の「みんな」と言う矛盾した思想を持っているのだろうとシュテルはそう直感した。

 

「それにその腰の刀、じゅーとーほう違反じゃない!!警察に言いつけてやるし!!」

 

由比ヶ浜はシュテルが腰に帯びているサーベルを指さし、銃刀法違反なので、警察へ通報してやると言ってくる。

 

「このサーベルの帯刀はドイツ大使館から許可を得ているし、すぐに抜けないように厳重に革紐で結んでいるから問題ないんだよ。残念だったね」

 

「むぅ~‥‥」

 

警察に通報してもシュテルを銃刀法違反で逮捕できないと言われ頬を膨らませ悔しがる由比ヶ浜。

 

 

「クリス。こんなバカを相手にしていると時間が無駄だから行こう」

 

「そうだね」

 

クリスと共にこの場から去るシュテル。

 

「ちょ、ちょっと待つし!!誰がバカだし!?」

 

由比ヶ浜は呼び止めるが、

 

「それさえも理解できないなんて、幼稚園からやり直したら?」

 

シュテルはそんな由比ヶ浜に捨て台詞を残しクリスと共に歩いていく。

 

「なっ!?」

 

「ちょっと、貴女。それは言い過ぎじゃない?」

 

「先に泥棒猫呼ばわりしてきたのはそっちでしょう?それに初対面の人の両親を貶してくる非常識な人とこれ以上会話をする意味もないでしょう?」

 

シュテルは雪ノ下をギロッと睨みつける。

 

「ひぃっ‥‥」

 

「っ!?」

 

高校生ながらも見た目は子供、頭脳は大人なバーロな探偵や名探偵の孫の男子高校生みたいにこれまで様々な修羅場をくぐり抜けてきたシュテルの一睨に由比ヶ浜と雪ノ下は完全に怯む。

 

二人が怯んでいる隙にシュテルとクリスはそそくさと去っていく。

 

(絶対に許さない‥‥演習でボコボコにしてやるんだから!!)

 

雪ノ下はみほに、そして由比ヶ浜はシュテルに怒りの炎を燃やした。

 

 

 

 

おまけ

 

 

とある日、クリスとユーリが市街地を歩いていると店先にガチャガチャを出している一軒の駄菓子屋を見つける。

 

何気なく横を通りながらガチャガチャに目をやると、

 

「ん?あっ、ウルトラボールだ!!うわぁスッゴイ!!」

 

一つのガチャガチャを見たユーリが思わず声を上げる。

 

「どうしたの?ユーリ。ん?ウルトラボール?‥‥何これ?」

 

「これは、スーパーボールあるじゃない?」

 

「うん」

 

「確かテレビのCMでやっていたんだけど、スーパーボールの30倍跳ねるって言ってた」

 

「それ本当?デマとかじゃないの?」

 

「本当だって。私が一個買って証明してあげるよ」

 

そう言ってユーリは財布から100玉を一つ取り出しガチャガチャに入れるとハンドルを回す。

 

すると、商品が入ったカプセルが出てくる。

 

ユーリは早速カプセルを手に取ってカプセルを割る。

 

そして、中身を見ると、

 

「あれ?‥‥えっ?何だ?これ?あれ?」

 

困惑した声を出す。

 

「どうしたの?」

 

「えっ?‥‥クリス、私ウルトラボールのガチャガチャをやったよね?」

 

「そうだね」

 

「えっ?」

 

カプセルの中身とガチャガチャの表紙を見てますます困惑するユーリ。

 

そこで、

 

「おじさーん」

 

駄菓子屋の店主を呼ぶ。

 

しかし、店主は現れない。

 

なので、

 

「おじさーん!!あれ?‥‥おじさーん!!」

 

声のボリュームを上げて叫ぶ。

 

すると、

 

「はい、はい、はい、もお~‥‥なんじゃ騒々しい」

 

ようやく店主が現れた。

 

「いや、騒々しいじゃないよ。コレどういう事よ?」

 

そう言ってユーリは店主にカプセルの中身を見せる。

 

ユーリの手にはウルトラボールではなく、爪楊枝と画用紙で出来た小さな旗が握られていた。

 

「これ、お子様ランチのチキンライスに刺さっている旗でしょう?しかもなんか刺さっていた痕が残っているし‥‥」

 

ユーリの指摘通り、彼女が持っている小さな旗の爪楊枝は半分が薄っすらとチキンライスに刺さっていた痕跡‥‥ケチャップの痕があった。

 

「‥‥」

 

ユーリの指摘を受けても店主は無言のまま‥‥

 

反論しないと言う事はユーリの指摘通りなのだろう。

 

「‥‥いや、何とか言いなよ」

 

「‥‥自分の思い通りにならんこともあるじゃろが。当たり外れがあるのが人生の醍醐味じゃないんか?そうじゃろう?」

 

「‥‥何言っての?だったら、ウルトラボールの色や柄、大きさや違うなら兎も角、これは反則でしょう?」

 

「あぁ~わしが子供の頃だったなら大喜びしとったがのう~今の子はやれテレビゲームや何やら‥‥」

 

「いや、いくらおじさんが子供の時でもさぁ、このイギリス国旗はないでしょう?」

 

「お嬢ちゃんはイギリス好きか?」

 

「えっ?」

 

「君はイギリスが好きかと聞いておりんじゃ」

 

「うーん‥‥大して意識してないけど、好きか嫌いかと言われると、あまり好きじゃない。去年、ダートマス校の人と半ばガチバトルしたし、料理も美味しくないって聞くし」

 

「そうか‥‥それは残念じゃ‥‥」

 

そう言って店主は再び店の中へと戻って行く。

 

「いや、だから何?ちょっと、おじさん!!ねぇ、おじさん!!」

 

「ユーリ、放っておいて映画館に行こう。上映間に合わなくなっちゃうよ」

 

このまま駄菓子屋で時間を潰すわけにはいかないのでクリスは店主を呼び止めているユーリに声をかける。

 

「あの野郎‥‥」

 

ユーリはズーンと沈んだハイライトオフな目で店主の背中を見ていた。

 




おまけは紙兎ロペが元ネタであり、作者が初めて見た話です。
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