やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~ 作:ステルス兄貴
横須賀女子の二年生が千葉県にある総武・海浜総合高校、両校の海洋科の学生たちとの合同演習に参加することになり、同じく二年生であるヒンデンブルク、シュペーのドイツからの留学生組も同じく千葉へと向かうことになった。
シュテルにとって千葉‥特に総武高校は前世の経験から関わりたくはなかったが、個人的な事情でエスケープする訳にはいかない。
それに今の自分は比企谷八幡ではないし、前世では雪ノ下は国際教養科、由比ヶ浜、葉山は普通科の学生だったので、気を付けて行動すればこの三人と出会うことがないだろうと高を括っていたが、この世界では、三人とも海洋科の学生であり、今回の演習相手であった。
会場でこの世界における総武高校に到着し、今回の演習に参加する横須賀女子+留学生組と総武・海浜総合高校の学生たちの顔合わせの時、シュテルは運悪く由比ヶ浜に見つかり、彼女は雪ノ下と共にシュテルの下に来ると、シュテルを自分から彼氏を取った泥棒猫と罵り、雪ノ下はシュテルの名前の中に『ハチマン』と言う単語がある事に対して、シュテルの両親を貶した。
お互いに転生同士なのだが、八幡が性別、出身地が前世と全く異なる事から、雪ノ下と由比ヶ浜が目の前に居るドイツからの留学生が比企谷八幡である事に気づく筈もなく、またシュテルの方も目の前の雪ノ下と由比ヶ浜が自分と同じ転生者である事にも気付かなかった。
それほど、雪ノ下と由比ヶ浜は前世とまったく変わっていなかったからだ。
シュテルとしてはこれ以上二人の声を聞き、二人の相手をしていると前世の胸糞悪い経験を思い出して悪酔いしようなので、クリスと共にその場を急いで後にした。
「やあ、雪ノ下さんに結衣‥ん?どうしたんだい?なんか不機嫌そうだけど?」
シュテルとクリスが去った後、葉山が雪ノ下と由比ヶ浜の二人を見つけ声をかけた。
すると、二人は不機嫌そうに顔を歪めていた。
「ゆきのん、今回の演習、絶対に勝とうね!!」
「ええ、もちろんよ、由比ヶ浜さん」
(二人とも随分と気合が入っているな‥‥)
葉山は雪ノ下と由比ヶ浜の二人が今回の演習に気合を入れていると勘違いした。
由比ヶ浜としては自分から彼氏を奪った(と思い込んでいる)シュテルに一泡を吹かせるために‥‥
雪ノ下は以前自分に屈辱を与えた横須賀女子に通う本家の少女とついさっき会ったばかりの鼻持ちならないドイツからの留学生を完膚なきまで打ちのめすために気合だけは十分であった。
しかし、今回の演習は個人の能力だけではなく、クラスメイトとの信頼とチームワークが必要不可欠だった。
「はぁ~あいつら一体何なの?いきなり絡んできて‥‥薬でもやっているの?」
(うわぁ~かなり不機嫌‥‥まぁ、当たり前か‥‥)
雪ノ下と由比ヶ浜も不機嫌であったが、絡まれたシュテルの方も当然不機嫌であり、クリスは同情していた。
「でも、あの場にユーリが居なくて良かったんじゃない?」
「ん?」
「あの場に居たら、きっと単色の目でさっきの二人をジッと見てホルスターに手を伸ばしていたよ」
「ああ、そうだね」
クリスの予測をシュテルは肯定する。
確かについさっきの場にユーリが居たら、銃を使って二人に圧をかけていただろう。
ユーリ自身、シュテルが悪く言われるのは勿論の事、シュテルの両親もお隣さんと言う事で小さい頃からお世話になっているので、シュテルの両親を貶す行為もユーリの逆鱗に触れるのだ。
とは言え、流石に演習前に騒ぎを起こすのは多くの学生たちに迷惑をかけるので、クリスの言う通りあの場にユーリが居なくて良かったのかもしれない。
「シュテル」
「あん?」 ギロッ
「ひぃっ‥‥」
「あっ、テア、ゴメン」
シュテルは背後から呼ばれた時、まだ雪ノ下と由比ヶ浜に対するイライラが収まっていなかった為、無意識のうちに睨んでしまった。
そして、シュテルに声をかけたのはテアであり、シュテルの眼光にテアは思わず後ずさる。
「い、いや‥‥それにしても不機嫌そうだが、何かあったのか?」
「ん?実は‥‥」
シュテルはテアに先ほど、雪ノ下と由比ヶ浜に絡まれた事を話した。
「はぁっ!?何だ?そのふざけた奴らは!?」
テアとしてはユーリ同様、シュテルを貶されることに対しても怒りが沸くし、同時にシュテルの父であり、一ファンでもあるシンジを貶されたことに対しても憤慨した。
「シュテル!!そんなふざけた奴ら、私たちがボコボコにしてやろう!!ドイツの‥鉄血魂をそいつらに見せつけてやろうじゃないか!!」
「あ、ああ。そうだね」
いつの間にか自分よりもテアの方が雪ノ下と由比ヶ浜に対して憤慨してくれたので、シュテルは冷静さを取り戻すことが出来た。
「それで、テア。何か用があったんじゃない?」
「うむ、そのことなんだが、各艦の艦長による合同写真を撮りたいとの事だ」
「分かった。クリス、先に戻ってくれるかな?」
「了解」
シュテルはテアと共に集合写真を撮りに行ったのだが、そこには当然、総武高校の主席である雪ノ下が居た。
雪ノ下に嫌気を指しているのはシュテルとテアの二人であるが、彼女に嫌悪とはいかないまでも苦手意識を持っているのが、みほである。
みほも赤城の艦長と言う事でこの写真撮影会場に来ているのだが、雪ノ下に見つかり、彼女から睨みつけられている。
「西住さん」
そこへ、みほにとっては救いとも言える人物‥シュテルがみほに声をかける。
「あっ、碇艦長」
雪ノ下の眼光なんて無かった様子でみほはシュテルの傍に駆け寄る。
「何かあったの?」
「あっ‥その‥‥実は‥‥」
みほは一年前、みほの高校入学祝いで開かれたパーティーで雪ノ下とシミュレーションバトルをした結果、雪ノ下に完勝をし、それが原因で雪ノ下から目の敵にされている事をシュテルに教えた。
「それはただのやっかみ。彼女が出来るのはただ睨みつけるだけなので、気にしなくてもいいですよ。アイツに睨みつけられたところで、防御力がダウンするわけではないのですから、大丈夫ですよ」
「そ、そうかな?」
「ええ、相手にするだけ時間の無駄ですから、さあ、行きましょう」
シュテル、テア、みほは雪ノ下の視線を無視する。
(あいつがシュテルを貶した無礼者か‥‥)
その際、テアは横目で雪ノ下を見て、今回の演習においてぶちのめす相手として顔を覚えた。
雪ノ下を無視していると、
「やあ、君たちは横須賀から来た学生たちかい?」
「「「ん?」」」
総武高校とは異なる制服の男子が三人に声をかけてきた。
「えっと‥‥」
「どちら様ですか?」
「‥‥」
突然男子に声をかけられ、みほはギョッとし、シュテルは冷静にこの男子生徒に対して己が誰なのかを問い、テアは興味なさげな目で男子生徒を見ている。
「僕は玉縄。海浜総合高校の代表さ」
「はぁ‥‥」
「それで、海浜総合高校の代表さんが何の用ですか?」
「いや、今回の演習を機にお互いリスペクトできるパートナーシップを築いて、シナジー効果を生んでいけないかなって」
「えっ?」
玉縄の言葉にみほは唖然とする。
「ゲーミフィケーションっていうのかな、ああいうふうに楽しみながらお互い演習を行い学んでいこう」
「‥‥」
「今、僕らに求められているのは若者ならではのフレキシブルで柔軟な発想だろうから、今回の演習でそれを存分に発揮し、グランドデザインをみんなと共有していこうじゃないか」
「‥‥」
「ビジョンを共有すれば、もっと一体感を出せると思うんだ」
「‥‥」
「イメージ戦略の点でも合同演習の大枠はマストなんじゃないかな?合同でやることでグループシナジーを生んで今後もアライアンス活動を継続していきたいね」
「は、はぁ‥‥」
「今回の合同演習はそう言った意味でもこれってビジネスチャンスでもあるよね?今回はそういうグローバリゼーションを意識したほうがいい」
「え、ええ‥‥」
玉縄の訳が分からない言葉にみほはタジタジ。
「シュテル、こいつは何を言っているのだ?って言うか日本語なのか?」
「ビジネス用語を意味も分からずに使って『俺ってカッコイイ』と思っている意識高い系男子なんだろう?実際に言っている言葉の意味が滅茶苦茶だし‥でも、さっきの話した雪ノ下や由比ヶ浜とは違った意味で面倒な奴だな」
「だが、こちらに敵意がない分だけ多少マシじゃないか?」
「まぁ、そうだね」
雪ノ下や由比ヶ浜も面倒ではあるが、この玉縄と言う男子もある意味で面倒な人物であると認識した三人であった。
それから写真撮影となったのだが、シュテルと雪ノ下は何の因果か隣同士となり、互いに顔を合わせたくもないのか、席に座っても顔を合わせないように顔を背負向ける形で写真撮影となった。
出来上がった写真は、中央の二人が互いにそっぽを向いていると言う妙な写真となった。
写真撮影後、最初の演習は横須賀で行われた遊戯祭の演目と同じシミュレーションバトルとなった。
ただし、個別では時間がかかるので、クラス対抗と言う形で行われた。
第一試合はテア率いるドイツ・ヴィルヘルムスハーフェン校、シュペークラスと雪ノ下率いる総武高校、総武クラスの対決となった。
「ふむ、アイツのクラスか‥‥見せてもらうか?その実力を‥‥」
テアとしてはシュテルを貶すぐらいなのだから、雪ノ下と彼女のクラスの実力も当然、それに釣り合うくらいの実力があるものだと思っていた。
「副長‥‥」
「はい、艦長」
「絶対に勝つぞ」
「はい!!連中にヴィルヘルムスハーフェン校、シュペークラスの実力を見せつけてやりましょう!!」
「うむ。我が校のため‥‥そして、シュテルのためにも絶対にこの戦いは負けられない!!」
(うっ‥‥確かにこの戦いには我がヴィルヘルムスハーフェン校の名誉も関わるがそれと共に碇艦長のためとは素直に喜べない‥‥)
(し、しかし、大勢の学生が居る中でテアに負け姿を見せる訳にはいかない)
ミーナとしては自分の通う学校の名誉の為は勿論なのだが、そこにシュテルが関わって来る理由は、シュテルの前で敗北する姿を見せまいとテアが頑張ろうとする姿勢なのだと判断したが、横須賀、総武、海浜総合、ヒンデンブルククラスの学生たちが居る中で、テアの判断は当然であり、ミーナ自身もテアに無様な姿を晒す訳にはいかないと気合を入れた。
「皆、我がヴィルヘルムスハーフェン校の名誉の為!!アドミラル・グラーフ・シュペーの為!!第一戦からいきなり敗北する訳にはいかん!!学科問わず、思ったことを意見してもらいたい!!この戦い絶対に勝つぞ!!」
口下手のテアに代わり、ミーナがシュペークラスのクラスメイトたちを鼓舞した。
『オォー!!』
ミーナの鼓舞を受け、シュペークラスの士気は高かった。
一方、対戦相手の総武の方は‥‥
「あの時のリベンジをしたかったけど、仕方ないわね」
雪ノ下としては一年前に行われたみほとのシミュレーションバトルのリベンジをしたかったが、シュペークラスが対戦相手に決まり若干残念そうだった。
しかし、元々負けず嫌いな性格の雪ノ下。
「いい?最初の演習で負けるなんて無様な事はしないで、ちょうだい。貴女たちは私の駒なのだから、ただ私の指示に従って動けばいいの。考える必要は一切ないわ。いいわね?」
『‥‥』
シュペークラスの士気の高さと比例するかのように総武の士気は低かった。
シミュレーションバトル第一回戦がまさに始まろうとしている頃、横須賀では‥‥
「そう言えば、今朝シューちゃんとテアちゃんが艦長をやっているドイツ艦が出航して行ったね」
「ええ、赤城や加賀をはじめとしたドック明けしたばかりの学生艦も何隻か一緒に出航して行きましたね」
明乃は横須賀女子の港湾地区にドイツ艦が停泊していない事を口にし、その他にドック明けしたばかりの学生艦も同じく出航していった事を真白は付け足す。
「何かあったのかな?」
「赤城や加賀はドック明けの試験航海‥‥ってところでしょうけど、ドイツ艦は‥‥一体なんでしょうね?」
ドック明けしたばかりの艦は性能の確認の為、試験航海をするのは分かるが、ドイツ艦が出航した理由に心当たりがない。
「また白兵戦闘訓練でもやるのかな?」
以前、ヒンデンブルクとシュペーの二艦で白兵戦闘訓練を行い、その訓練中に真冬が乱入した事でドイツからの留学生組と真冬たちべんてんの乗員たちによる白兵戦闘訓練が行われまさか、まさかの真冬たちが敗北する結果となった事に真白は驚愕した事は記憶に新しい。
「それか‥‥考えたくはないのですが‥‥」
「えっ?なに?なに?シロちゃん、何か心当たりがあるの?」
「その‥‥帰国‥‥とか?」
「えっ?」
真白の言葉に明乃は一瞬の間であるが、唖然とする。
入学したばかりの頃に起きたRAT事件、夏休み、遊戯祭、そして海上要塞占拠事件と波乱の出来事ばかりの半年であったが、その出来事の中でシュテル、テアが自分たちの傍に居り、もはや居る事が当たり前と化していたが、シュテルもテアもドイツからの留学で日本に来ており、横須賀女子に入学しているわけではない。
留学生なのだから、ずっと日本にいるわけではない。
シュテルもテアもいつかは母国であるドイツへ帰国しなければならない。
もしかしたら、その帰国する日がきょうなのではないか?
そんな考えが明乃と真白の脳裏を過ってもおかしくはない。
「そ、そんな、私‥シューちゃんからもテアちゃんからも何も聞いてない‥‥」
シュテルが自分に黙って帰国するなんて考えられない。
「い、いえ、まだ碇艦長たちが帰国したと確定したわけではないですから‥‥もしかしたら、知名艦長か納沙さんなら何か知っているかもしれませんよ」
ドイツからの留学生たちが一体何の目的で出航したのか?
もえかか納沙ならば情報通なので、何か知っているかもしれないと真白が明乃に言うと、
「じゃあ、早速聞いてみよう」
気になったのか明乃は早速、もえかか納沙の下へ行き、ドイツからの留学生たちが何故出航したのかを聞きに行った。
「えっ?ミーちゃんたちが出航した理由ですか?」
「うん」
「何か聞いていないか?」
明乃と真白は納沙を見つけ、ドイツ艦が出航した理由を訊ねる。
情報通の他に納沙はミーナと仲が良いので、ミーナから何か聞いていないかと思ったのだ。
「うーん‥‥ミーちゃんからもテアの姐さんからも特に聞いてはいませんねぇ~」
納沙もミーナやテアから今日何故、出航していったのかその理由を聞かされてはいなかった。
「納沙さんも知らされていないのであるならば、やはり帰国と言うのは考えにくいのでは?」
納沙とミーナの仲の良さは晴風クラスの学生ならば周知の事実であり、そのミーナが納沙に帰国の報告をせずに黙ってドイツげ帰国するなんて考えられない。
「えっ?帰国ってどういうことですか?ミーちゃん、私に黙ってドイツへ帰国しちゃったんですか?」
明乃に言ったのだが、納沙が真白の留学生組の帰国しかたもしれない説に食いつく。
「いや、あくまでも可能性の一つの話だ。それに納沙さんの言う通り、ミーナさんが納沙さんに何も言わずにドイツへ帰国するのは合点がいかないだろう?」
「そ、それはそうかもしれませんが、もしかしたらミーちゃんが私との別れを惜しんで黙って帰ってしまったのかも‥‥」
真白は留学生組の帰国を否定するも納沙は不安が拭い切れない。
「やっぱり、もかちゃんにも聞いてみよう」
「そうですね」
「あっ、ちょっと‥‥もう‥‥」
明乃は次にもえかに訊ねる事にすると、納沙も明乃と共にもえかの下へと向かう。
当然、真白も二人の後を追った。
「もかちゃん!!」
「ん?あっ、ミケちゃん。どうしたの?」
「あ、あの‥シューちゃんたちが今朝、どこかに出航して行ったみたいなの」
「うん。私もヒンデンブルクとシュペーが出航していくのを見たよ」
「それで、どこに向かったのか知らない?」
「えっ?ヒンデンブルクとシュペーがどこに行ったか?」
「うん」
「うーん‥‥私は知らないかな。シューちゃんたちは二年生だし‥‥」
「そ、そう‥‥」
流石のもえかもヒンデンブルクとシュペーがどこへ出航して行ったのかは知らなかった。
「どうしたの?」
もえかは明乃や納沙が落ち込んでいるように見えたので、その理由を訊ねた。
「もしかしたら、シューちゃんたちがドイツへ帰っちゃったと思って‥‥」
「うーん‥それは無いと思うよ」
もえかは留学生組の帰国を否定する。
「もし、シューちゃんたちがドイツに帰るなら、学校から私たちに知らせる筈だよ」
もえかは明乃たちに留学生組がいくらなんでも何も言わずに帰国するなんて考えられないと言い、ドイツへ帰国するにしても学校側が自分たち生徒に知らせる筈だと指摘する。
「だから、言ったでしょう。きっと取り越し苦労だですって」
もえかの指摘を受け、帰国の可能性を口にするも、やはり留学生組の帰国に否定的だった真白は取り越し苦労だと言う。
「そんなに心配だったら教官に聞いてみたらどうかな?」
もえかは留学生組の行方が気になるのであるならば、教官に聞いてみれば一発だとアドバイスをする。
「そうだね」
「早速聞いてみましょう」
もえかのアドバイスを受け、三人は今度古庄教官の下へと向かう。
「古庄教官」
「あら?岬さんに納沙さん、宗谷さん、どうしたの?」
「あ、あの‥今朝、ドイツ艦が出航して行ったんですけど、教官はどこへ出航して行ったか知っていますか?」
明乃が古庄教官にドイツ艦の行方を訊ねる。
「えっ?ドイツ艦がどこへ出航したかですって?」
「はい」
「ドイツからの留学生たちは二年生の学生たちと一緒に千葉にある海洋科の高校と合同演習をする為に千葉へ行ったのよ」
古庄教官は明乃たちに留学生組がどこへ出航して行ったのかを教えた。
「それじゃあ、シューちゃんたちがドイツへ帰国した訳じゃあないんですね?」
「ええ‥‥春に起きたRAT事件の影響で他校の実習に影響が出たからその遅れを取り戻すために協力をしているのよ」
RAT事件は横須賀女子のせいで起きた訳ではなく、むしろ事件に巻き込まれた横須賀女子の新入生たちは被害者なのだが、事件の影響が他校のカリキュラムに影響を与えたのは事実なので、横須賀女子は今回千葉の教育委員会からの要望に答えざるを得なかった。
「もし、帰国するのだったら、学校側からちゃんと知らせるので大丈夫よ」
古庄教官は留学生組が帰国する場合は、学校側から在校生たちにちゃんと知らせるので、留学生組が黙って帰国することはないと明乃たちに伝える。
「そうだったんですね。よかった~」
「はい。ミーちゃんが黙ってドイツへ帰ってしまったと思うと不安でした」
「だから取り越し苦労だと言ったのに‥‥」
古庄教官から留学生組の行方を聞いて明乃と納沙はホッとし、真白は若干呆れるも内心ではホッとしていた。
その千葉にある総武高校で行われている合同演習では、シュペークラスと総武クラスのシミュレーションバトルが行われ、勝負の勝敗はシュペークラスに軍配が上がった。
シュペークラスは学科問わず意見を述べ、採用できる意見は積極的に採用していくが、総武クラスの場合は全て雪ノ下一人で判断し、クラスメイトに指示を出すので、タイムラグが発生したりして、雪ノ下の指示が活かせない場面もあり後手、後手に回りシュペークラスの電撃戦に対処できずに包囲殲滅され大半の艦隊を失うと、最後は各個撃破されて全滅と言う結果になった。
つまり今回のシミュレーションバトルはシュペークラスVS雪ノ下の多勢に無勢な勝負だった。
負けず嫌いで自分の行いが常に正しいと思い込んでいる雪ノ下は当然今回のシミュレーションバトルの敗因を自分ではなくクラスメイトのせいだと言い張った。
「貴女たちが私の指示を正確に直ぐに実行しなかったせいで負けたのよ、分かっているの?」
『‥‥』
「まったく、こんな無能な人たちがなんでこのクラスに在籍出来たのか、理解できないわ。裏口入学でもしたんじゃないの?」
『‥‥』
雪ノ下からの罵詈雑言をクラスメイトたちはただひたすらに耐えた。
クラスメイトを罵倒している雪ノ下を見てシュテルは、
(あいつの性格、前世よりも最悪になってないか?)
前世の雪ノ下も平気で罵倒してきたが、この後世世界における雪ノ下は前世よりも歪んでいるように見えた。
「うわぁ~あの人と同じクラスメイトの人たち可哀そう‥‥」
雪ノ下の様子をシュテルと共に見ていたクリスは雪ノ下に罵倒されているクラスメイトに対して同情する。
「あそこまでクラスメイトを罵倒して貶しているのに学校側はなんで何も対処しないんだろう?あの様子から今回が初めてって感じじゃないと思うんだけど‥‥」
「それは多分、あの人の実家が影響しているんじゃないかな?」
「ん?雪ノ下の実家?」
「ええ、雪ノ下建設は千葉では知らない人がいないというくらいの大企業で、あの人はその大企業の御令嬢‥‥下手に苦情をいれたら社会的制裁を受けるんじゃないかって思っているから誰もあの人に強くは言えないんじゃないかな?」
「雪ノ下建設ってそんなに凄い会社なの?」
「千葉の海上都市の建設業の八割~九割を雪ノ下建設が占めているらしいよ」
「へぇ~‥‥」
(前世では普通の建設会社だったが、この世界では前世以上にデカい会社になっていたんだな)
前世で雪ノ下建設なんて会社の名前は高校に入り、雪ノ下と関りをもってから知り、中学、高校一年の時には雪ノ下建設なんて会社の名前は知らなかった。
しかし、この後世世界では千葉県に住んでいれば雪ノ下建設と言う会社の名前を知らない人はいないと言われるくらいの大企業‥‥
そんな大企業の家の子であることから学校側も雪ノ下のクラスメイトたちも雪ノ下に対して苦言を呈したら彼女の実家からどんな社会的制裁を受けるか怖かったからこそ、クラスメイトたちは雪ノ下からの理不尽な罵倒に耐え、学校側は雪ノ下がやらかした問題行動に目を瞑っていた。
(前世よりも性格が歪んでいるように見えたのはやっぱり間違いじゃなかったか‥‥)
(今回の演習‥やっぱり厄介だ‥‥)
前世よりも実家が強大な権力を持っている事から、前世よりも歪んだ性格を持っている雪ノ下がいる総武高校との演習に厄介さを感じると共にさっさと終わらせたいと思うシュテルであった。