やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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総武高校・海浜総合高校に所属する学生艦は各校所属の学生艦に記載されています。


157話

 

 

千葉にある総武高校にて横須賀女子+ドイツからの留学生組と総武高校と海浜総合高校の海洋科の学生たちによる合同演習にて行われたシミュレーションバトル。

 

第一回戦はドイツ・ヴィルヘルムスハーフェン校、シュペークラスと雪ノ下率いる総武高校、総武クラスの対決はテア率いるドイツ・ヴィルヘルムスハーフェン校、シュペークラスの完勝と言ってもいいくらいの戦いと戦果であった。

 

「ゆ、ゆきのんが負けた‥‥」

 

「し、信じられない‥こんなことが‥‥」

 

シュペークラスと総武クラスの戦いを観戦していた由比ヶ浜と葉山は雪ノ下の総武クラスが負けたことが信じられなかった。

 

「雪乃ちゃんの艦の動きは決して不味い手ではなかった‥ただ、周りの他の艦の動きが鈍く、相手の艦の動きについていけていない感じだった‥‥」

 

「だったら、ゆきのんのクラスが負けたのって、ゆきのん以外のクラスメイトのせいじゃない?」

 

葉山は雪ノ下が担当する艦の動きに関しては相手の動きに十分対応できているように思えたが、その他のクラスメイトが担当する艦の動きが鈍く、相手の動きに対応しきれていない様に見えた印象を抱く。

 

すると、由比ヶ浜は葉山の言葉を聞いて、雪ノ下のクラスがシュペークラスに負けた敗因は雪ノ下のクラスメイトが雪ノ下とうまく連携出来ずに後手、後手に回ったせいだと指摘する。

 

「そうだな、結衣の言う通りだ。まったく雪乃ちゃんの足を引きずるなんて‥‥」

 

「あんなんで総武の上位クラスだなんてホント信じられない。お金を使って裏口入学でもしたんじゃないの?マジムカつく!!」

 

「案外そうかもしれないな。この演習が終わったら、父さんに言って徹底的に調べて、総武に‥‥雪乃ちゃんのクラスにふさわしくない不要物は追い出さないと」

 

葉山は由比ヶ浜の言葉を真に受け、雪ノ下のクラスメイトたちが全員とは言わないが、何人かが金で裏口入学でもしたのではないかと勘繰り、演習後に父親に頼んで裏口入学をした不届き者を総武高校から追放しようと決めた。

 

「雪乃ちゃんが負けてしまったからには俺たちが頑張るしかないぞ、結衣」

 

「うん、そうだね」

 

そして、雪ノ下の仇を討つべく気合を入れた。

 

しかし、実際は由比ヶ浜の予想とは異なり、雪ノ下は自分の艦以外にクラスメイトの意見など求めていなかった為、クラスメイト全員の艦を動かすよう考えなければならず、タイムラグが生まれ雪ノ下以外の艦の動きが鈍かったのだ。

 

雪ノ下の艦以外の艦の動きが鈍かったのはこうした理由があったからだ。

 

その後もシミュレーションバトルは続き、互いに勝ったり負けたりして試合が続く。

 

やがて、みほ率いる横須賀女子所属の赤城クラスと玉縄率いる海浜総合高校の幕張クラスとのシミュレーションバトルとなった。

 

先攻は赤城クラスとなり、赤城クラスのクラスメイトたちは自分が担当する艦を動かす。

 

次に後攻の幕張クラスのターンになるのだが、

 

「さて、まずは初手だがどう動くか‥‥その点を皆で話し合おうじゃないか」

 

「最初、こうはどうかな?」

 

「いや、いや、ここはロジカルシンキングで論理的に考えるべきだよ」

 

「これはフラッシュアイディアなんだが、さっきの提案へのカウンターとして、こうするのはどうかな?」

 

「それだとイニシアティブがとれない」

 

「でも、ステークホルダーとコンセンサスを得るにしても、ぶれないマニフェストをはっきりサジェスチョンすることができるんじゃないか?」

 

「じゃあブレストを重ねて、結果にコミットしよう。考える時間は有るのだからね」

 

「セパレートするとシナジー効果が薄れるし、ダブルリスクビジョンを共有すれば、もっと一体感を出せると思うんだが?」

 

『‥‥』

 

最初の一手を打ち出すのに幕張クラスは玉縄と初邂逅した時同様、訳の分からないビジネス用語を用いて作戦会議をはじめる。

 

そんな幕張クラスの様子を見てみほたち赤城クラスは唖然とする。

 

やがて、考慮時間終了ギリギリでようやく動き出したのだが、動いたのは玉縄が担当する艦一隻だけであとの艦はその場から一切動かなかった。

 

相手チームのこの行動に呆れると言うか、動揺したのは対戦相手である赤城クラスだった。

 

「あら?一隻だけしか動きませんわね」

 

動揺する赤城クラスの中で、五十鈴だけは動じずに相手の手を口にする。

 

「えっ?あれだけ時間を使って動かしたのはたったの一隻?」

 

武部は動いたのが一隻だけだったことに驚き、

 

「な、何かの罠でしょうか?」

 

秋山は考慮時間を終了ギリギリまで使い、動かしたのがたったの一隻だけだった事に相手の罠ではないかと逆に勘繰る。

 

「いや、そこまで勘繰る程か?相手の様子を見る限り、時間が無くなりそうだったから適当に動かした感じに見えたのだが?」

 

冷泉は相手が考えもなく、考慮時間終了間近だから適当に動かしたように見えた。

 

「‥‥」

 

みほは秋山の言う通り、相手は何か罠を張り巡らしているのか?

 

それとも冷泉の言う通り、考慮時間終了間近だから適当に動かしたのか?

 

どちらの言っている事が正しいのか判断が難しい。

 

例え冷泉の言う通りでも一隻だけしか動かしていないと言う事は、その他の艦は開始時のまま動いておらず、相手の懐に深く進めば集中砲火を浴びる可能性がある。

 

とりあえず、みほは相手の動きを見るため、速度の速い駆逐艦を前面に出して相手の動きを見る事にするのと同時に戦艦部隊を相手の射程ギリギリまで詰める指示を出した。

 

次の幕張クラスのターンでは、先ほどと同じ様にビジネス用語を用いた作戦会議が再び繰り広げられる。

 

『‥‥』

 

みほたち赤城クラスはそんな様子を見て呆れる者、唖然とする者に分かれた。

 

「うわぁ~西住さん、やりにくそう‥‥」

 

「見ているこっちも退屈しちゃうよ」

 

観戦していたシュテルは相手の動きが全く読めない幕張クラスを相手にしているみほが気の毒になり、クリスは考慮時間を目一杯使う幕張クラスに対して退屈さを感じる。

 

「あのクラスの人たち、正直に言ってブルーマーメイドやホワイトドルフィンには向いていないね」

 

「ああ、全くだ。考慮時間の使用に関しても評価されれば、あのクラスはコールド負けになるだろうな」

 

「判断力無さ過ぎ」

 

ユーリは幕張クラスの学生たちはブルーマーメイド、ホワイトドルフィンの適性がないのではいかと指摘する。

 

シュテルとクリスもユーリの指摘に関して同意する。

 

ブルーマーメイド、ホワイトドルフィンの活動の中には救助活動がある。

 

幕張クラスみたいに救助に行こうとする中であのように無駄に時間を使っては救助できる者も救助出来ずに死なせてしまう。

 

天狗の面をかぶった育手が見たら、あのチーム全員はきっと、『判断が遅い』と怒鳴られて頬に平手打ちを喰らうだろう。

 

そして、最初のターン同様、考慮時間終了ギリギリで動いたのだが、やはり動いたのは一隻だけ。

 

「に、西住殿‥‥」

 

秋山はやはり相手の動きが読めず、みほにどう動いたらいいのか指示を求める。

 

「向こうのチーム、やる気あるのかな?」

 

武部も相手チームの動き‥‥と言うか、艦を動かすために繰り広げられるビジネス用語が含まれた作戦会議に対してイラついている様子。

 

「ね、眠い‥‥」

 

無駄な時間をかけられている事に冷泉は眠気を催してきた。

 

「まるで将棋かチェスを指しているみたいですね」

 

このシミュレーションは1ターンに一隻しか動かせない訳ではなく、クラスメイトが担当する艦全てを動かすことが出来るのだが、相手チームは数ある艦の内、動かしているのは一隻のみ‥‥

 

こんな相手の動きに対して五十鈴は相手の動きが将棋かチェスみたいだと口にする。

 

それから数ターン経過しても幕張クラスは相変わらず一手決めるのに考慮時間終了ギリギリまで使い、動かすのは一隻ずつの構図が続き、その間にも赤城クラスは駆逐艦・軽巡洋艦は水雷攻撃の態勢に入り、重巡洋艦は中距離からの砲撃距離を保ち、戦艦は遠距離からの砲撃距離を確保する。

 

ここまで包囲されている状況下でも、相手の幕張クラスは大した動きを取ろうとはせずに考慮時間にビジネス用語を使った訳の分からない作戦会議をグダグダと行っている。

 

そして包囲網が完全に整った赤城クラスのターンに駆逐艦・軽巡洋艦からは魚雷が迫り、重巡洋艦と戦艦は砲撃を行う。

 

開幕からほとんどの艦艇が開始位置に留まっていた幕張クラスの艦艇は次々と被弾し撃沈判定となり、赤城クラスと幕張クラスのシミュレーションバトルは赤城クラスの完勝となったが、無駄な作戦会議に付き合わされた赤城クラスのクラスメイトたちは別の意味で疲労していた。

 

疲労している赤城クラスのクラスメイトと異なり幕張クラスのクラスメイトたちは何故自分たちが敗北したのかさえ分からない様子だった。

 

「ふん、前世と同じくあの無能者は無能だったわね」

 

赤城クラスと幕張クラスのシミュレーションバトルを観戦していた雪ノ下は玉縄たち幕張クラスの体たらくさに呆れていた。

 

幕張クラスが考慮時間をたっぷり使用したせいで時間が押し、午前中の演習はこれにて終了となり、昼食となった。

 

「私たちのシミュレーションは午後になったね」

 

「ああ、少なくとも雪ノ下やあの幕張クラスとシミュレーションをすることはないだろうが、さっきの幕張クラスみたいに時間を無駄にかけるチームとはやりたくないな」

 

「確かに」

 

既にシミュレーションバトルを行った雪ノ下のクラスや先ほど、みほたちとバトルした幕張クラスとシュテルたちヒンデンブルククラスはバトルすることはないが、幕張クラスみたいに考慮時間を無駄に使用するクラスとは相手にしたくはなかった。

 

学生たちが午後の演習に備えて昼食と昼休憩をとろうとしている中、横須賀市内にある某喫茶店にあるテラス席では‥‥

 

「お待たせしましたー」

 

テラス席に三人の女性客がおり、そのテーブルに店員が注文された品を運ぶ。

 

店員が運んできた品は分厚い三段のパンケーキで、ただ分厚いだけではなく、パンケーキの上には大量の生クリームとチョコレートソースが掛けられており、その他にもブルーベリーとラズベリーがカラフルな色合いとして備え付けられている。

 

「「‥‥」」

 

テーブルの上に鎮座する圧倒的存在感を放つパンケーキを前に、このカロリーの化け物パンケーキを注文した一人の女性は笑顔なのだが、残る二人の女性は唖然としていた。

 

「すごいでしょー?このパンケーキ、一度食べてみたかったんだよねー」

 

この存在感満点・カロリーの化け物パンケーキを注文したのはブルーマーメイド保安監督隊所属の寒川高乃であり、唖然としてパンケーキを見ているのは寒川の同僚である志度琴海とみくら艦長の福内典子だ。

 

「た、確かに凄い‥‥これ、一人じゃあ食べきれないんじゃない?」

 

福内は寒川にこの圧倒的存在感を発するパンケーキを一人で食べきれるのかを訊ねる。

 

「もしかして私たちを誘ったのって‥‥」

 

志度は寒川が自分と福内をわざわざ非番の日に呼んだのはこの圧倒的存在感を放つパンケーキをシェアするために呼び出したのかと訊ねる。

 

「もちろんシェアするためよ。一人じゃあ大変なのは分かっているしー」

 

志度の予想通り、寒川が二人を呼んだのはこの化け物パンケーキを皆でシェアして食べるためだった。

 

そんな中、

 

「おまたせしましたー」

 

店員が新たに注文の品を三人が座っているテラス席へと運んできた。

 

「ご注文のチーズケーキとガトーショコラです」

 

店員は福内にチーズケーキを、志度にガトーショコラを提供する。

 

「あっ、ありがとうございます」

 

「えっ?ええっ!?」

 

福内が店員に礼を言う中、寒川は予想外のチーズケーキとガトーショコラの登場に困惑する。

 

「な、なんで二人まで注文しているの!?」

 

「いや、だってそんなの来るなんて聞いてないし‥‥」

 

「もう、これじゃあ誘った意味ないじゃない!!」

 

寒川は折角シェアをして分け合ってパンケーキを食べる予定の筈が、福内と志度が自分の知らぬ間に別の商品を注文していた事で予定が狂ってしまい思わず声を上げる。

 

「そこまでいう事?」

 

そんな寒川に対して志度はまさか、彼女が注文した品がこんな化け物パンケーキとは知らず、てっきり自分や福内の様にカットケーキを注文したモノだと思っていた。

 

「まぁ、さっきは食べきれないって言ったけど、頑張れば無理でも食べきれるんじゃない?すごく頑張れば‥‥」

 

福内は絶対に食べきれない量ではないのではないのかと寒川に訊ねる。

 

「そりゃあ、食べきれないこともないけど‥‥」

 

福内の言う通り、寒川自身も何とか頑張ればこの化け物パンケーキは食べきれることが出来るみたいであるが、

 

「こ、これを全部食べたら‥‥」

 

「食べたら?」

 

なんか煮え切らない様子の寒川に志度は首を傾げ理由を聞く。

 

「‥‥さすがに太るかと‥‥」

 

寒川は煮え切らない理由を二人に話す。

 

「まぁ‥‥」

 

「ねぇ‥‥」

 

流石にこの化け物パンケーキは見るだけでもカロリーがかなりの量だと一目瞭然であり、そんな化け物パンケーキを一人で食べたらやはり体重が気になる。

 

「っていうかそっちはそれぽっちなんだから、食べるのを手伝ってよ!!」

 

「いや、小さくても秘めたエネルギーは結構なものだから」

 

寒川は志度と福内に二人は普通サイズのカットケーキなのでそれを食べても十分に余裕があるのだから、当初の予定通りにこの化け物パンケーキの消費を手伝ってくれと頼む。

 

しかし、志度は例え普通のカットケーキでもそれなりのカロリーはあるし、彼女自身もやはり自分の体重が気になるので、寒川が注文した化け物パンケーキは手伝えないと言う。

 

そこへ、彼女にとって救世主とも言える三人目の人物がやって来た。

 

「おまたせー遅れてゴメン」

 

三人が居るテラス席にやって来たのは平賀だった。

 

「救世主!!」

 

「?」

 

突然寒川に『救世主』と呼ばれた平賀は首を傾げる。

 

「いらっしゃいませ」

 

新たにやって来た平賀に店員はお冷を用意する。

 

「あっ、ナポリタンください」

 

平賀は喫茶店へ来る前にあらかじめ何を食べるのかを決めていたみたいで、お冷を持って来た店員にナポリタンを注文する。

 

「待って!!待って!!オーダーストップ!!オーダーキャンセル!!」

 

寒川はここで平賀がナポリタンを注文して、ナポリタンを食べてしまったらこの化け物パンケーキを自分一人で食べることになるので、慌てて平賀が注文したナポリタンをキャンセルさせる。

 

「えー!?じゃあ、ミルクティーを下さい」

 

寒川が急にナポリタンをキャンセルさせたので、代わりに飲み物としてミルクティーを注文した。

 

「今、ナポリタンの気分だったのにー」

 

平賀はナポリタンを食べる気満々だったのに、寒川が慌ててナポリタンをキャンセルしたので、頬を膨らませる。

 

「ごめんなさーい。それよりも平賀さん、これ!これ食べて!!」

 

寒川はナポリタンをキャンセルさせてしまった事に対して平賀に謝ると自分が注文した化け物パンケーキをシェアしてもらいたいと思い例の化け物パンケーキを平賀に勧める。

 

「うわ、すごい!!食べて良いの?」

 

平賀は化け物パンケーキを見て唖然とはせずに、食べて良いのかと逆に訊ねてきた。

 

「どうぞ、どうぞ」

 

そんな平賀に対して寒川が食べて構わないと言う。

 

「いただきまーす」

 

「ふぅ~これで一安心」

 

化け物パンケーキをシェアしてくれる平賀の登場に安心する寒川。

 

これであの化け物パンケーキを一人で食べる事にはならなくなりそうだ。

 

「私も少しくらい食べてみたかったけどなー」

 

平賀の食べっぷりを見て志度もこの化け物パンケーキの味が気になったようだが、

 

「あー今更そんなことを言う!?あげませんよーだ!!」

 

当初は協力してくれなかったのだから、志度に分ける義理は無いと言って、

 

「さーて、じゃあ私も‥‥」

 

寒川が平賀と共に例の化け物パンケーキを食べようとしたら、

 

「ごちそうさまでしたー」

 

「ええええ!?」

 

平賀はあの化け物パンケーキを既に完食していた。

 

「ぜ、全部食べちゃった!?」

 

「えっ?ダメだった?」

 

平賀は寒川からあの化け物パンケーキを食べて良いと言われたので、食べたのだが、寒川のリアクションから食べて不味かったのかと思い訊ねたのだ。

 

「ダメって言うか‥‥」

 

「よく食べきれたね。太る心配とかないの?」

 

志度は寒川が心配していた体重問題について平賀に訊ねる。

 

「ん――‐食べた分は、ちゃんと運動するし、大丈夫、大丈夫」

 

平賀はミルクティーが入ったカップに口をつけ、ミルクティーを一口飲んだ後、体重問題について食べた後はちゃんと運動するので特に気にしていない様子だ。

 

「そう言えば、この子。昔からその理論で食べる量をセーブしないのよね‥‥」

 

横須賀女子の同期だった福内は志度に学生時代の平賀の食生活を教える。

 

「強い‥‥」

 

「でも今からナポリタンは流石に入らないかな~」

 

あの化け物パンケーキを完食した平賀でもそこから更にナポリタンは無理だと笑顔で言う。

 

「私、まだ一口も食べてなかったのに~!!」

 

元々あの化け物パンケーキを食べるためにこの喫茶店に来たのだが、そのパンケーキを平賀に食べられてしまった寒川は涙目で悔しがっている。

 

「出遅れたのが悪かったね」

 

平賀の食べるスピードを甘く見た寒川の判断ミスだ。

 

「むむむむ‥‥」

 

寒川は悩んだ末に近くに店員が居る事に気づき、

 

「すみません!!同じものをもう一つ!!」

 

追加の化け物パンケーキを注文するが、

 

「やめな―――‐!!」

 

「やめなさい!!」

 

志度と福内が止めた。

 

パンケーキ騒動が一段落し、結局寒川は別のカットケーキを注文し、ブルーマーメイドのプチ女子会が再開される中、

 

「そう言えば、この前真冬姐さんが白兵戦闘訓練をやったって聞いたんだけど?」

 

「あっ、その噂私も聞いた」

 

志度が先日行われた真冬たちべんてんの乗員たちが白兵戦闘訓練をした話題を平賀と福内に振る。

 

「うん。やったよ」

 

平賀は真冬が白兵戦闘訓練を行ったことを肯定する。

 

「えっ?相手は誰なの?」

 

「まさか、横須賀女子の学生相手にやったの?」

 

あの時の白兵戦闘訓練の相手を知らない志度と寒川は一体誰が真冬と白兵戦闘訓練したのかを訊ねる。

 

「えっと‥学生と言えば学生だけど、横須賀女子の学生たちじゃなくて、横須賀女子に留学しているドイツからの留学生たちだよ」

 

平賀が寒川と志度の二人に真冬が誰と白兵戦闘訓練をしたのかを教える。

 

「えっ?ドイツからの留学生たち?」

 

「それって、もしかしてヒンデンブルの学生たち?」

 

「う、うん‥‥」

 

「ヒンデンブルククラス以外にもヴィルヘルムスハーフェン校のシュペークラスも合同でやっていたわね」

 

福内が追加でヒンデンブルククラスの他にもシュペークラスも一緒に参加している事を伝える。

 

「ヒンデンブルククラスってことは‥‥」

 

「あの子も参加したのよね?」

 

「ん?あの子?」

 

寒川と志度はヒンデンブルククラスの学生と出会った様子であるが、福内はそんな二人の様子を見て首を傾げる。

 

「あっ、のりりんは知らなかったっけ?私と高乃ちゃんと琴海ちゃんはオーシャンモール四国沖支店でヒンデンブルククラスの学生とちょっと戦ったことがあってね‥‥」

 

平賀は福内にオーシャンモール四国沖支店での出来事を教える。

 

「私と琴海ちゃんなんてあっという間にノックアウトさせられちゃったし‥‥」

 

「私もあの子に殺されるんじゃないかって思った‥‥」

 

(あの時のあの子の迫力はそれこそ、本気で怒った宗谷さんや真冬姐さんよりも怖かった‥‥)

 

寒川、志度、平賀の三人はクリスに一方的にやられた経験があるので、三人はクリスに対して軽いトラウマがあるみたいだ。

 

一方、クリスの方も胸の大きさから平賀に対して物凄い嫉妬心を抱いていた事が本人は知らない。

 

「あの子の他に金髪の子も射撃の腕は凄かったよ」

 

クリスが合流する前に自分の相手をしていた金髪の子‥もといユーリの射撃センスを褒める平賀。

 

「それで、どっちが勝ったの?」

 

「やっぱり、真冬姐さん?」

 

志度と寒川は真冬たちとドイツからの留学生たちの白兵戦闘訓練はどちらが勝ったのかを訊ねる。

 

大方の予想は真冬たちの方だと思っていたが、平賀からの返答は二人の予想外であった。

 

「ドイツからの留学生たちよ」

 

福内が二人に白兵戦闘訓練の勝敗結果を伝えると、

 

「えっ?ドイツからの留学生たち!?」

 

「まさか、真冬姐さんが負けたの!?」

 

「うん」

 

「えっ?なんで?なんで?」

 

「あの真冬姐さんが負けるなんて信じられない‥‥」

 

二人はどんな経緯があってあの真冬が負けたのかを訊ねる。

 

「私たちは外のテントで観戦していただけなんだけど‥‥」

 

「実際に白兵戦闘訓練に参加したべんてんの人たちの話だと‥‥」

 

平賀と福内は志度と寒川の二人にべんてんの乗員たちが経験したドイツからの留学生たちとの間で繰り広げられた白兵戦闘訓練の内容を自分たちが知る限りの内容を教えた。

 

「そ、そんな方法で‥‥」

 

「確かに私でも騙されちゃいそう‥‥」

 

「実際にべんてんの人たちも留学生たちに翻弄されていたみたいだからね」

 

「それにしてもあの真冬姐さんを倒すなんてやっぱりあの子は凄いわね‥‥」

 

真冬はクリスとの一騎打ちの末、討たれたのだが、真冬の格闘戦センスの高さはブルーマーメイド内では有名であり、その真冬を一騎打ちで倒すのだからクリスに関心が向くのは当然のことだった。

 

「彼女たちが将来、ブルーマーメイドになったら真冬姐さんやそのお母さんである『来島の巴御前』の異名である宗谷真雪さんみたいになるかもね」

 

一度とは言え、あの真冬に白兵戦闘訓練に勝ったドイツの留学生たちが将来ブルーマーメイドになったら、真冬やその母親である真雪みたいに活躍するかもしれないと平賀たちは思った。

 

未来の後輩たちの活躍に期待をしつつブルーマーメイド女子たちのプチ女子会は続いた。

 

 

横須賀の某喫茶店でブルーマーメイド女子たちのプチ女子会が行われている頃、合同演習が行われている千葉の総武高校では、午後の部に突入し、午後一で行われるシミュレーションバトルの対戦チームが発表された。

 

対戦するのはシュテルたちドイツ・キール校のヒンデンブルククラスと総武高校の由比ヶ浜と葉山が在籍する総武高校海洋科二年F組だった。

 


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