やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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劇場版のはいふりの作中で行われたシミュレーションバトルではモニターにサイコロが表示されて、その出目によって攻撃判定が行われていたので、今回の総武で行われているシミュレーションバトルでもサイコロの出目によって移動判定の成功、攻撃判定の命中とうが行われている設定です。

サイコロの出目を出す振りはアソビ大全に収録されている『ヨット』でサイコロの出目を出す感じです。


158話

 

 

総武高校で行われている合同演習にて、総武高校二年生海洋科の主席クラスとも言える雪ノ下が在籍するクラスはテアが率いるドイツ・ヴィルヘルムスハーフェン校、シュペークラスに完敗した。

 

プライドが高い雪ノ下は流石に会場で大騒ぎすることはなかったが、控室となっている教室にて、雪ノ下はクラスメイトたちを罵倒した。

 

雪ノ下のクラスとドイツ・ヴィルヘルムスハーフェン校、シュペークラスとのシミュレーションバトルを見た葉山と由比ヶ浜は雪ノ下のクラスが負けたのは雪ノ下本人ではなく、雪ノ下のクラスメイトのせいだと決めつけていた。

 

本当の敗因の原因は雪ノ下自身だとは知らずに‥‥

 

その後もシミュレーションバトルの試合は続き、次の試合は葉山と由比ヶ浜が所属するクラスとシュテルたちドイツ・キール校、ヒンデンブルククラスのシミュレーションバトルとなった。

 

「相手はあの泥棒猫のクラス‥‥隼人くんこの試合絶対に負けられないよ!!」

 

「あ、ああ‥‥そうだな。雪乃ちゃんの為にも負けられないな‥‥」

 

由比ヶ浜は対戦相手がシュテルのクラスだと言う事で気合が入っており、葉山はそんな由比ヶ浜にちょっと引いてはいたが、自分たちが勝って雪ノ下に仇を討ったと言える状況を作ろうと思った。

 

由比ヶ浜と葉山は絶対に勝ってやると言う意気込みで今回のシミュレーションバトルに臨む勢いであったが、二人以外に今回の対戦相手を知った戸塚と三浦の場合は‥‥

 

「あっ、対戦相手はブルーマーメイドフェスタで乗艦したドイツのクラスの人たちなんだ‥‥」

 

「ああ、ヴァイオリンを弾いていた子ね‥‥あの子、あれから新しい恋をすることが出来たかな?」

 

ブルーマーメイドフェスタで戸塚と再会したシュテルであったが、この後世世界では戸塚は三浦と彼氏・彼女の仲になっており、前世では恋心を抱いていた筈の葉山に対しては嫌悪感を抱いていた。

 

シュテルから葉山の事を聞かされた三浦は以前、テニス部における昼の練習中で乱入してきた葉山たちの事を伝えたのだが、シュテルとしては戸塚が三浦と付き合っている事の方が衝撃だった。

 

しかし、三浦と戸塚はシュテルが葉山に一目惚れをして三浦の口から葉山の本性を知りショックを受けたのだと勘違いした。

 

三浦はシュテルが未だに葉山の件を引きずっていないかと心配していた。

 

一方、対戦相手であるシュテルの方はと言うと‥‥

 

「葉山と由比ヶ浜を合法的にボコボコに出来る機会なのだが、対戦相手に戸塚が居る‥‥戸塚が乗る艦を沈めろと言うのか!?この私に!?」

 

「いや、沈めるって言ってもシミュレーションなんだから、実際に海へ沈める訳じゃないからね」

 

シュテルの苦悩に対してツッコミを入れるユーリ。

 

「でも、仮想とはいえ、戸塚を撃つんだぞ‥‥わ、私には‥‥」

 

「そんな屁理屈でまさか負けるつもり?」

 

ジト目でシュテルに顔を近づけるユーリ。

 

「ちょっ、ユーリ、近い、近い」

 

「でも、ユーリが言っている事は最もな事だよ、シュテルン」

 

ジト目なユーリに圧力を受けている中、クリスもユーリが言っている事は正しいと言ってくる。

 

「分かった、分かったから‥‥」

 

ユーリとクリスから正論を叩きつけられて折れるシュテルであった。

 

やがて、葉山、由比ヶ浜、戸塚、三浦が所属するクラスとシュテルたちヒンデンブルククラスのシミュレーションバトルが開始された。

 

「陣形を保ちつつ、この海域まで進出して、相手の出方を見る」

 

『了解』

 

相手の実力が未知数なので、シュテルは手堅く陣形を組みまずは相手側の出方を窺うヒンデンブルククラス。

 

一方、総武高校側は‥‥

 

「向こうも近づいてくるな‥‥」

 

「陣形はこれでいいの?隼人君」

 

「あ、ああ、一先ずこれで相手の動向を窺う」

 

葉山たちもシュテル同様、陣形を組みつつ相手の出方を窺う事にした。

 

「ふむ、相手もこちらと同じく出方を見る形で来たか‥‥」

 

シュテルは総武側の動きを見て、総武側も自分たち同様一先ず陣形を組み、相手の出方を見る慎重な戦法だと見る。

 

「ふむ、ではこちらから仕掛けてみるか‥‥」

 

互いに後手、後手では進まないのでシュテルは仕掛けてみることにした。

 

「クリス」

 

「はい」

 

「君の軽巡洋艦で此処まで進出して相手を引きずり出してもらえる?」

 

「了解」

 

このシミュレーションバトル前にクラスメイトたちはそれぞれどの艦を担当するか話し合いが行われた。

 

クリスはヒンデンブルクの副長‥つまり、艦における№2にあたるので、通常ならば戦艦を担当するのだが、何故か彼女は今回のシミュレーションバトルでは軽巡洋艦を担当すると言ってきたのだ。

 

軽巡洋艦は駆逐艦程ではないが、速力があり火力は駆逐艦以上あり、その為水雷戦隊や護衛船団の旗艦を務める事がある。

 

ただし、装甲は駆逐艦よりは厚いが、やはり艦船では薄い方なので同じ巡洋艦クラスでも重巡洋艦でも脅威となる。

 

しかし、クリスはそんな事はお構いなしと言わんばかりに前進していく。

 

クリスが担当する軽巡洋艦の動きは当然、総武側でも把握する事となる。

 

「隼人君、相手の艦が一隻近づいて来たよ」

 

「一隻?艦種は?」

 

「えっと‥‥軽巡洋艦が一隻」

 

「一隻?他に艦は?」

 

「居ないみたい」

 

(軽巡洋艦が一隻で近づいてくる?)

 

(何かの罠か?)

 

(しかし、この演習には潜水艦はいないし‥‥)

 

(ただ単に一人先走っているだけのバカか?)

 

葉山がクリスの軽巡洋艦の動きに対して悩んでいると、

 

「隼人君、ここは俺に任せるっしょ!!」

 

戸部が葉山にクリスの軽巡洋艦の対処を任せてくれと言う。

 

戸部が担当しているのは重巡洋艦で軽巡洋艦よりも速力は劣るが火力は勝っている。

 

砲撃を加えれば撃沈までは至らなくても相手に損傷を与える事は出来る。

 

そうなれば、先手を得ることが出来、相手の士気を下げることが出来るかもしれない。

 

「うーん‥‥しかし、軽巡洋艦が一隻だけ行動するには何か罠のような気も‥‥」

 

葉山はやはり、クリスの真意が分からずなかなか決断を下せない。

 

「大丈夫だって、相手は一隻なんだし」

 

一方の戸部は例え罠だとしても軽巡洋艦一隻ではどうせたいした罠ではなく、火力で勝っている自分の重巡洋艦ならば、勝てると思っている。

 

「‥‥分かった。ただ大岡、君も戸部と一緒に向かってくれ」

 

戸部に促され、葉山はクリスの軽巡洋艦の対処を任せた。

 

しかし、念のために戸部一人ではなく、大岡も一緒に向かわせた。

 

「おっ、釣れたな」

 

総武側の動きを見て、呟くクリス。

 

戸部と大岡の艦は最大速力でクリスの軽巡洋艦へと接近した後、主砲で攻撃する。

 

攻撃の判定はサイコロによる判定でまず命中したかの判定を行い、命中した場合、再びサイコロを振り、ダメージ計算となる。

 

戸部と大岡の重巡洋艦はクリスが担当する軽巡洋艦を主砲の射程ギリギリまで距離を詰め、攻撃を選択し、サイコロを振る。

 

しかし、二人のサイコロの結果は、外れ。

 

「くっそ」

 

「次は当てる」

 

「初弾は外したか‥‥」

 

「まぁ、初弾だし‥‥」

 

肝心な最初の攻撃が外れた事で戸部と大岡は思わず舌打ちするが、葉山や由比ヶ浜は初弾だし絶対に当たるとは思ってはおらず、この時は特に気に留めてはいなかった。

 

最初のターンは両陣営共に被害なく終わり、次のターン‥‥

 

クリスは搭載されていた魚雷での雷撃を選択する。

 

魚雷攻撃の判定は成功し、魚雷は戸部と大岡の重巡洋艦へと迫る。

 

次いで、戸部と大岡は迫りくる魚雷を回避するための判定を行う。

 

その結果、戸部は何とか魚雷の回避に成功するが、大岡は失敗し魚雷攻撃を受けてしまう。

 

しかし、魚雷の一、二本程度の雷撃程度では大岡の重巡洋艦を沈めることは出来なかった。

 

クリスは攻撃した後、その場から移動する。

 

魚雷攻撃を受けた戸部と大岡としては当然黙っている筈もなく、クリスの軽巡洋艦を追いかける。

 

「こいつ!!」

 

「逃がさないっしょ!!」

 

「戸部、大岡、あまり深追いはするなよ」

 

クリスの軽巡洋艦を追いかける戸部と大岡だが、葉山はあまり深追いするなと注意する。

 

深追いをして相手の軽巡洋艦が味方の艦隊に合流されると戸部と大岡の艦が袋叩きに遭う。

 

味方の本隊と距離が離れすぎていると援護が難しくなるからだ。

 

「分かっているよ、隼人君」

 

葉山の忠告を一応は聞く戸部と大岡だった。

 

そして再びクリスの軽巡洋艦を主砲の射程に捉えた。

 

「よっしゃー!今度は当ててやるっしょ!!」

 

「だな」

 

次こそは命中させてみせると意気込んだ戸部と大岡であるが、サイコロの結果は‥‥

 

「またかよ!?」

 

「くっ‥‥」

 

命中する事はなかった。

 

「二隻の重巡洋艦から砲撃を二度も躱すなんて‥‥」

 

初弾は兎も角、二回目も外れた事に葉山は違和感を覚えた。

 

「戸部、大岡そいつはもういい、戦列に戻れ」

 

当初は何かの罠かと思ったが、特に罠が仕掛けられている様子がなく、これ以上、戸部と大岡が離れてしまっては本当に援護が出来なくなってしまうので、葉山は二人に戦列に戻るように伝える。

 

「で、でも隼人君」

 

「このまま逃がすのは‥‥」

 

戸部と大岡はこのまま敵の軽巡洋艦をみすみす逃すのは何だか負けた様な気分だった。

 

戸部は兎も角、大岡は魚雷攻撃を受けているので、この屈辱は晴らしたいと言う思いがあった。

 

「いいから、これ以上距離が開くとこちらから援護が出来なくなる!!」

 

「わ、分かったよ」

 

「うむ‥‥」

 

葉山に促され、渋々と言った様子で戸部と大岡は戦列に戻ろうとする。

 

「あっ、こら、こら、着いて来ないとダメでしょう」

 

反転する戸部と大岡の艦を見て、クリスは艦を反転させ、届かないと分かりつつも主砲で戸部と大岡の艦を砲撃して挑発する。

 

「なっ、コイツ!!」

 

「軽巡の癖に挑発してきやがった!!」

 

クリスの挑発行動にモヤモヤした思いを持っていた戸部と大岡は再び反転してクリスの軽巡洋艦を追う。

 

「おい、戸部!!大岡!!」

 

「隼人君、やっぱ此奴を沈めたいっしょ!!」

 

「だな」

 

「ダメだ!!戻ってこい!!」

 

「でも、罠なんかなかった訳だし結局此奴がバカみたいに突出しただけしょっ!!」

 

「だな」

 

戸部と大岡は、クリスの行動に罠などはなく、クリスがただ単に突出しただけだと言い張り、味方の戦列に戻るのを止めてクリスの軽巡洋艦を再び追撃し始める。

 

(あのバカ共が‥‥)

 

自分の指示に従わずにクリスを追いかける戸部と大岡に対して葉山は内心毒づく。

 

「ど、どうする?隼人君」

 

「戸部と大岡の後を追いかける?」

 

クラスメイトたちが葉山の指示に従わなかった戸部と大岡の後を皆で追って、彼らの孤立を防ぐかと問う。

 

(くそっ、此処で二人を見捨てれば皆からの心象が悪くなる)

 

(しかし、相手の艦の動きを見るからに明らかにアレは罠だ)

 

(くそっ、あのバカ共が!!)

 

(俺の引き立て役の分際で俺の命令に逆らうなんて‥‥)

 

(バカ二人が俺の命令に従っていれば‥‥)

 

戸部と大岡の二人はクリスの艦の動きに対して罠とは思っていなかったが、葉山の方は罠であると読んだ。

 

罠があると知りながら、皆で突っ込めば忽ち全滅してしまう。

 

しかし、葉山は前世同様、自分のクラスでは『皆の葉山隼人』で通っている。

 

そんな『皆の葉山隼人』が戸部と大岡を見捨てればクラスメイトからの信頼を失うのではないかと思い葉山は判断に迷った。

 

その間も戸部と大岡の艦はクリスの艦を追いかけていく。

 

(くそっ、やむを得ない‥‥)

 

(このままではあのバカ二人が敵の罠にかかってしまう)

 

(あいつらよりも重巡洋艦二隻を失う事の方が厄介だ)

 

葉山はやはり『皆の葉山隼人』を捨てきることが出来なかった。

 

しかし、内心は戸部と大岡の事よりも戸部と大岡が担当している重巡洋艦二隻を失う事の方が大事だった。

 

「このままだと二人が敵の罠にかかって一方的にやられてしまう可能性がある。駆逐艦なら速力が速いから追いつけないかな?」

 

「計算してみる」

 

クラスメイトが自陣の駆逐艦の速力と戸部と大岡の位置から援軍として間に合うか計算する。

 

「ギリギリ‥‥判定次第では追いつけないかも‥‥」

 

駆逐艦を援軍に送っても間に合うか分からない。

 

総武側の現状を見てシュテルは、

 

(あいつはこの後世世界でも『皆の葉山隼人』を演じている筈だ‥‥)

 

(となると、クリスの罠にかかったクラスメイトを助けようとして援護する艦を出してくるだろう‥‥)

 

(艦種は速力が速い駆逐艦‥‥)

 

「クリス、相手は駆逐艦を援軍に送って来る事が予想されるが、こちらからも援軍を送ろうか?」

 

前世からの葉山からの付き合いでシュテルは彼が戸部と大岡を見捨てる事は無いと判断し、総武側の本隊と戸部と大岡の艦の位置から援軍として間に合いそうなのは速力が速い駆逐艦だったので、クリスに援軍を送るかを訊ねる。

 

「ううん、大丈夫」

 

しかしクリスは、援軍は不要だと返答する。

 

「えっ?本当に大丈夫?」

 

「うん。私は運が良いからね。相手が増えても切り抜けてみせるよ」

 

「そ、そう‥‥」

 

(まぁ、確かにクリスは昔から運が良いからな‥‥)

 

シュテルはクリスとの付き合いから彼女が異常と言う程、運が良い事を知っているので、クリスを信頼してこの任務を任せたのだ。

 

「分かった。ただ無理はしないでね」

 

「了解」

 

そしてシュテルの予測通り、総武側は戸部と大岡の援軍として駆逐艦群を送って来た。

 

総武側の駆逐戦隊の移動判定は成功し、次に攻撃を選択する。

 

駆逐艦の主砲ではクリスの軽巡洋艦まで届かないので、攻撃射程が長い魚雷を選択し、サイコロを振っての攻撃判定が行われる。

 

だが、駆け付けた駆逐艦全ての魚雷攻撃が失敗判定となる。

 

「ちょっ、いくら何でも全部失敗なんておかしいし!!」

 

この判定に思わず声を上げたのは由比ヶ浜だった。

 

「さっきの戸部っちたちの砲撃も全部外れていたのも変だと思ったけど、何かインチキをしているんじゃないの!?」

 

サイコロの采配に対して、由比ヶ浜はクリスにいちゃもんをつけてきた。

 

「電子機器のサイコロにどうやっていかさまを仕掛けるの?」

 

若干興奮している由比ヶ浜に対して冷静に切り返すクリス。

 

「そ、それは‥‥」

 

実際のサイコロならば、いかさまをすることは可能だろうが、このシミュレーションバトルで使用しているサイコロはモニターの中にあり、任〇堂のwiiリモコンのようなリモコンを振っているので、サイコロの出目は完全に運任せとなっている。

 

それは実際にバトルに参加している由比ヶ浜自身も知っているので、いかさまなんて出来ない。

 

「出来もしない事を大声であげるとかえって恥をかくわよ」

 

「くっ‥‥」

 

クリスの指摘に由比ヶ浜は悔しそうに顔を歪めた。

 

「そもそも遠くから駆け付けて及び腰で撃った魚雷なんて援護どころか気休めにもならないわよ」

 

命中判定失敗の要因はサイコロだけでなく距離の問題もあると指摘するクリス。

 

由比ヶ浜はもはや何も言えず、ただクリスを睨みつけるしか出来なかった。

 

(まっ、異世界じゃあ『幸運の女神』として崇められているからね‥‥)

 

(それは電子機器でも例外じゃないって事だからいかさまと言えばいかさまになっちゃうけどね‥‥)

 

クリスは自分の能力と正体からサイコロの出目はある意味ではいかさまであると自覚していたが、これはどうしようもなかった。

 

クリスと対戦相手になった由比ヶ浜たちに運が無かったのだ‥‥

 

「ど、どうする?葉山君。駆逐艦の魚雷撃ち尽くしちゃったけど‥‥?」

 

「‥‥」

 

「駆逐艦も戸部たちの後を追わせる?」

 

魚雷を撃ち尽くした駆逐艦に装備されている武装は主砲のみとなるが、射程が重巡洋艦よりも短いので、主砲を当てるには相手との距離を詰めなければならない。

 

このままみすみす援軍に送った駆逐艦群も相手の罠にかかって全滅すれば味方の数を大幅に減らすことになる。

 

葉山が判断に迷っていると戸部と大岡の前方にはクリスが担当する軽巡洋艦の後方にヒンデンブルククラスの本隊が迫っていた。

 

クリス以外のヒンデンブルククラスのクラスメイトたちは陣形を維持しつつクリスの動きに応じて移動していた。

 

一方、総武側は葉山の指示を頼りにしていたので、陣形は維持していたが、葉山の指示なしでは動けなかった。

 

その葉山は戸部と大岡の動きと指示ばかりで他のクラスメイトに指示を出していなかった。

 

葉山のクラスはある意味で玉縄のクラスと同じ様な形になっていた。

 

「や、やべぇしょっ!!隼人君!!」

 

「俺たち、敵に囲まれそう!!」

 

「だから言っただろうが!!」

 

此処に来てようやく戸部と大岡は葉山が言っていた事が正しかったのだと自覚した。

 

普段は葉山のイエスマンだったのが、シミュレーションとは言え、戦って挑発を受けた事から彼らは軽い興奮状態になっていたので、彼らにしては珍しく葉山の指示を聞かなかったのだ。

 

そんな愚かな行為をした二人に葉山は怒鳴る。

 

「隼人君、急いで助けに来てくれ!!」

 

「頼む!!」

 

戸部と大岡は葉山に助けを求める。

 

「どうする?葉山君」

 

「此処からだと距離があるから間に合うかどうか‥‥」

 

「相手には戦艦も居るんでしょう?」

 

「援軍に向かわせた駆逐艦だけじゃ無理じゃない?」

 

「ここは駆逐艦だけでも引き返して被害を最小限にした方が良いでしょう?」

 

「そう、そう、今二人の所に行ったら、私たちもやられちゃわない?」

 

「敵に囲まれたのもあの二人の自業自得じゃん」

 

「そうだよね。元々隼人君は『戻れ』って言ったのに戻らなかったのはあの二人だもん」

 

クラスメイトの中には戸部と大岡の二人を見捨てようと言う意見も出た。

 

葉山としては好都合な展開であった。

 

自分の命令を聞かないバカ共に対しては良い薬になり、戸部と大岡の二人を見捨ててもクラスメイトからの信頼を失う事は無い。

 

例え見捨てたとして、戸部と大岡の二人からの信頼を失うかもしれなくなっても敵の攻撃を受けて沈められたのはあの二人の自業自得であり、戸部と大岡の二人以外のクラスメイト全員が自分を弁護してくれる筈だ。

 

「戸部、大岡‥すまない‥‥今から向かうにしても距離がありすぎる‥‥それにそこに行けば他の皆も被害を受ける可能性が高い‥‥」

 

葉山は戸部と大岡の二人にやんわりと見捨てる事を告げる。

 

「そ、そんなっ!?」

 

「それはないっしょ!!隼人君!!」

 

大岡は葉山たちが助けに来てくれない事に愕然とし、戸部は思わず声をあげる。

 

「だが、俺が『戻れ』と言ったにもかかわらず、戻らなかったのは二人の方だろう!?あの時、戻っていればこんなことにならなかった筈だ!!」

 

「そ、それは‥‥」

 

「‥‥」

 

葉山からの指摘でぐぅの音も出ない二人。

 

葉山は駆逐艦群には味方の戦列に戻るよう指示を出した。

 

駆逐艦をそれぞれ担当しているクラスメイトたちは戸部と大岡とは異なり葉山の指示に従い戦列へ戻って行った。

 

しかし、戸部たちは反転出来ずにいた。

 

此処で反転しても送り狼になるし、追撃を受ける中で無傷のまま味方と合流できるとは限らない。

 

大破した状態で味方に合流すればかえって味方の足手纏いになる。

 

戸部と大岡の二人が出来るのはこの場で敵を引き付ける事ぐらいしかない。

 

しかし、ヒンデンブルククラスの戦艦群による遠距離射撃を受け、戸部と大岡の艦はあっという間に被弾し轟沈判定を受けた。

 

特にユーリが担当している戦艦の命中判定が高かった。

 

「戸部と大岡の艦が‥‥」

 

「沈んだ‥‥」

 

「やっぱり、あの時葉山君の言う通りにしていれば良かったのに‥‥」

 

轟沈判定を受けた戸部と大岡の二人はクラスメイトから白い目で見られた。

 

「「‥‥」」

 

葉山の指示を無視した結果、轟沈判定を受けた事により戸部も大岡も俯き黙ってしまう。

 

「まぁ、まぁ、皆。戸部も大岡も頑張った訳だし、実際に相手が罠を仕掛けていた事も実証できたんだ。二人の艦を失ったのは痛手だけど、まだまだ逆転できる。最終的に相手に此方以上の被害をだしてやれば良いんだよ」

 

葉山はシミュレーションバトルでは戸部と大岡を切り捨てたが、クラスメイトとしての縁を切るのは早すぎると判断し、戸部と大岡を弁護する。

 

「まぁ、葉山君が言うなら‥‥」

 

「戸部、大岡、隼人君に礼を言いなよ」

 

「隼人君‥‥」

 

「ありがとう‥‥」

 

クラスメイトたちから総スカンを喰らえば大和や相模の様な目に遭うと実際に目の当たりにしてきた戸部と大岡にとってクラスメイトたちを宥めた葉山はまさに神か仏に見えただろう。

 

「さあ、皆!!勝負はこれからだ!!」

 

葉山がクラスメイトたちを鼓舞する。

 

「あらら、思ったより向こうの士気は落ちなかったな」

 

味方の重巡洋艦二隻を沈められたにもかかわらず以外にも総武側の士気は落ちていなかった。

 

(葉山のカリスマ性を侮っていたか‥‥?)

 

シュテルは後世世界の葉山のカリスマ性が前世よりも高かったのかと思った。

 

(三浦からの情報ではクラスメイトから嫌われているかと思ったが‥‥)

 

戸塚や三浦の様に葉山の本性を知り、嫌悪している者もいるが、それはごく一部であり、クラス内ではまだまだ葉山のカリスマ性は健在であった。

 

シュテルとしては珍しいミスでもあった。

 

「クリスの艦を隊列に戻して、陣形を再編成する。恐らくもう相手を釣る事は出来ないだろうからな」

 

「了解」

 

シュテルはクリスに戦列へ戻るように指示を出す。

 

「ユーリ‥‥」

 

「ん?」

 

「次の作戦は‥‥こうする」

 

「えっ?でも、それじゃあシュテルンの艦は‥‥」

 

「賭けではあるが、相手を油断させることは出来る筈だ。相手が慢心したところに‥‥」

 

「私の出番って事か‥‥」

 

「ああ、そうなる。期待しているよ、ユーリ」

 

「うん。任せて」

 

シュテルはこの後の作戦をユーリに伝える。

 

総武側は戸部と大岡の援軍として送った駆逐艦群が戦列に戻り、ヒンデンブルククラスはクリスの軽巡洋艦が戦列に戻ると互いに陣形を再編成した。

 

 

ヒンデンブルククラスは同戦力の艦隊を二組作った。

 

「まずは私たち第一戦隊から先行する」

 

「じゃあ、私の第二戦隊はその後ろに着けるよ」

 

先鋒はシュテルたちが務める。

 

「来た、敵の主力だ」

 

「どうする?葉山君」

 

「相手は砲撃戦を仕掛けるようだな‥‥このまま陣形を維持、一気に相手との距離を詰める」

 

「えっ?ああ、うん‥‥でも、それでいいの?」

 

「危険じゃない?」

 

「他に何か手が?相手が砲撃戦を仕掛けてくるならば、それを迎え撃つだけさ。それに駆逐艦群は既に魚雷が無い‥‥駆逐艦が攻撃するのなら相手との距離を詰めなければ攻撃が出来ないしね」

 

「ああ、なるほど」

 

葉山の説明にクラスメイトは納得した様子。

 

葉山、由比ヶ浜たち総武とヒンデンブルククラスの戦いは第二ラウンドへと突入しようとしていた。

 

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