やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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今回は日本、総武側の話です。


15話

 

~由比ヶ浜side~

 

私がこの新しい世界に生まれ変わって十五年が経った。

今、私は中学三年生‥‥つまり、受験生であり、前の世界を含めて私は二回目の高校受験をする事になった。

あの女神様、エリエリに頼んだ通り、小学校、中学校の成績は前の世界よりも良かったし、授業の内容も前の世界よりもすんなりと頭の中に入っていった。

ただ、ゆきのんや隼人君とは住んでいる町の違いのせいで小学校、中学校は二人とは違う学校だった。

そして中学三年になり受験シーズンとなった時、私は迷わず前の世界と同じ総武高校を受験することにした。

前の世界では、合格するにはギリギリかほんの少し厳しいラインで自分でも総武高校に入れたのは奇跡だと思っていた。

パパやママからも『よく、合格できたな』と言われ、合格発表の日には盛大にお祝いをしてくれた。

でも、高校一年から二年に進学する時、赤点ばかりの成績のせいで春休みは補修をして何とか二年生に進学出来た。

でもこの世界では十分に合格ラインに達していた。

これならきっと補修を受ける事無く、進学できるだろうし、成績だって赤点は取らない筈だ。

ただ、この世界はエリエリの言う通り、前の世界と似ていて違っていた。

日本の殆どが海の中に沈み、私の家の周りも前の世界と全然違う風景だった。

でも、ママとパパは前の世界と同じ人だったし、愛犬のサブレも前の世界と同じで今は家の大事な家族の一員だ。

そして、受験する総武高校もゆきのんが居た国際教養科、前の私や隼人君がいた普通科の他に海洋学科と言う学科が存在していた。

頭の良い国際教養科は前の世界と同じ一クラスしかなかったけど、この世界では普通科のクラスも前の世界と比べて少なかった。

反対に前の世界の普通科みたいにこの世界では海洋学科のクラスが多かった。

この世界は周りが海や川で飛行機がない。

その為、船のお仕事は沢山ある。

パパも前の会社とは違ってこの世界では貿易の会社で働いているし、私も中学の時、スキッパーって呼ばれている水上バイクの免許をとった。

前の世界と同じ成績だったらきっと免許は取れなかっただろうけど、頭の良くなった今の私にはすんなりと取れた。

ゆきのんはきっと前の世界と同じ国際教養科を受けるかもしれないけど、私は普通科よりも海洋学科の方に興味が沸いたので、普通科ではなく、海洋学科の方を受験することにした。

海洋学科の方がクラスは多いから合格率もそっちの方が高いし‥‥

そして、受験当日私はその受験会場で懐かしい人と出会った。

それは他ならぬ、隼人君だった。

 

「あっ、隼人君」

 

「ん?あっ、結衣か‥‥」

 

「久しぶり!!元気してた?」

 

「ああ、久しぶり、結衣も元気そうだね」

 

「隼人君もやっぱり、総武を受けるんだね」

 

「ああ、きっと雪乃ちゃんも受けるだろうと思ってね」

 

「そういえば、ゆきのんも此処に来ているのかな?」

 

「いや、雪乃ちゃんは小学校に上がる前にアメリカに留学していてね。でも、アメリカで総武の入試を受けると思っているよ」

 

「そうなんだ…まぁ、ゆきのんならきっと余裕で受かるだろうから、私達も頑張らないとね」

 

「ああ、そうだね」

 

こうして私は二度目の高校入学試験を受ける事になった。

 

 

葉山と由比ヶ浜は前世と多少異なり、総武高校の普通科と違って海洋学科を受けるのだが、入試内容については横須賀女子海洋高校、呉女子海洋高校、佐世保女子海洋高校、舞鶴女子海洋高校、東舞鶴海洋高校、などを始めとする海洋高校の専門学が盛り込まれた入試内容ではなく、総武高校の普通科の入試と同じ内容の他に海や船舶についての論文になっている。

勿論、葉山も由比ヶ浜もこの入試内容はちゃんと中学の進路指導の先生から聞いており、入試対策はしていた。

その結果、葉山も由比ヶ浜も前世同様、総武高校に合格した。

ただし、前世と異なり、二人とも普通科ではなく、海洋学科であるが‥‥

その後、葉山経由で由比ヶ浜にも雪ノ下が総武高校に合格した事を聞かされた。

しかも雪ノ下が受けたのは前世で在学していた国際教養科ではなく、自分達と同じ海洋学科であると言う。

それを聞いて由比ヶ浜は同じクラスになれるかもしれないと喜んでいた。

そして、季節は四月となり、新学期、新生活が始まる時期となり、総武高校でも入学式が行われた。

前世で総武高校の入学式にあった比企谷八幡による由比ヶ浜家の愛犬、サブレの救出とそれに伴う交通事故はこの世界では、その比企谷八幡と言う高校生は存在せず、また周囲が前世と全く異なる地形の為、その交通事故は起きなかった。

由比ヶ浜自身も前世を含めて既に三十年以上生きている事になるが、前世の事はほとんど忘れていながらも入学式で起きたサブレと八幡、雪ノ下が関係した交通事故、そして高校二年生における奉仕部の依頼に関しては、細かい日にちまでは覚えていなかったが、どんな依頼が来たのか、どんな事をしたのかはおぼろげながらも覚えていた。

それはこの世界に転生した雪ノ下と葉山も同様だった。

 

 

総武高校の入学式では前世同様、雪ノ下雪乃が新入生代表の挨拶をした。

 

「新入生代表。雪ノ下雪乃」

 

「はい」

 

キール海洋学校同様、新入生代表に選ばれるのは入学試験での成績が優秀な新入生が常であり、雪ノ下は校長先生に呼ばれると、彼女はしっかりと返事をしながら壇上へと上がった。

入学式の会場である総武高校の体育館の壇上には前の世界と同じ総武高校の制服を身に纏った雪ノ下が毅然とした姿で立っていた。

会場にはカメラを構えた地元の新聞社の人の姿があった。

カメラのレンズが向けられて壇上に上がる雪ノ下の写真が撮られていく。

その姿に来賓席にいる雪ノ下の両親はこの様子を見て満足している様子だ。

そんな両親やマスコミの姿をチラッと見て彼女は優越感に浸る。

来賓の人達とそれに保護者一同にお辞儀をして雪ノ下は挨拶を始めた。

 

「麗らかな春の訪れと共に、私たちは総武高校の入学式を迎えることが出来ました。本日は、このような立派な入学式を行っていただき、ありがとうございます。私たち新入生一同は今日この時をどんなに待ち望んだでしょうか。この日を無事迎えることが出来て父兄のみなさまには感謝の極みです。これから私たちは一人の人間として責任ある行動を取っていきたいと思っています」

 

雪ノ下の挨拶が終わると会場は拍手で包まれた。

入学式後、クラス発表が行われ、掲示板にそれぞれのクラスとそのクラスに入る生徒の名前が表示された。

それによると、雪ノ下、葉山、由比ヶ浜の三人は同じクラスだった。

総武高校は海洋高校と異なり、確かに海洋学科は存在している高校だが、専門であり海洋高校のカリキュラムとは多少異なっていた。

海洋高校は高校一年生からすぐに学生艦に乗り、海洋実習や専門の海洋学を学ぶカリキュラムとなっているが、それは中学でも専門学を学んでいた生徒が入学するからであり、総武高校の海洋学科は雪ノ下、葉山、由比ヶ浜の様に普通科の中学校出身者や海洋高校に入れなかった者の滑り止めの役割を担っていた。

その為、総武高校では高校一年の一学期は普通科の教科の中に海洋学の基礎が含まれ、徐々に海洋学の専門教科が増えて行き、学生艦による本格的な海洋実習は二学期からである。

もっともその時は、キール海洋学校の中等部の様に合同艦で行い、生徒のみで学生艦を動かせるのは高校二年生になってからだ。

一年の三学期でこれまでの成績の評価と生徒の適性から二年生になって乗艦する学生艦と役職の適性を決める事になっている。

総武高校は男女共学の高校なので、海洋学科でも座学に関しては共学であるが、学生艦に乗艦する際は男女別となっている。

ただ、東舞鶴海洋学校などの男子海洋学校では学生艦は主に潜水艦となっているが、総武高校は全て海上艦となっている。

そう言う意味では総武高校の海洋学科は海洋学校の滑り止めの他に将来的に海上艦勤務を目指す男子も入学している。

そして総武高校の制服は前の世界と同じであったが、海洋学科では艦長には艦長帽が支給され、各部署の生徒にはその部署が書かれた腕章が支給される。

これが総武高校の普通科、国際教養科と海洋学科との違いであった。

 

 

雪ノ下と約十五年ぶりに再会した由比ヶ浜は雪ノ下との再会を喜び、また雪ノ下も由比ヶ浜との再会を喜んだ。

 

「久しぶり!!ゆきのん!!」

 

「ええ、久しぶりね、由比ヶ浜さん。元気だった?」

 

「うん!!ゆきもんも元気そうで良かったよ!!それに今度は同じクラスだよ!!」

 

しかも今度は前世と異なり同じクラスにもなれたのだから、二人の嬉しさでいっぱいであり、思わず由比ヶ浜は雪ノ下に抱き付く。

 

(くっ、結衣の奴、俺の雪乃ちゃんに相変わらずベタベタしやがって‥‥)

 

その様子を葉山は口元を引き攣らせながら見ていた。

この世界において葉山の嫉妬の対象は八幡から由比ヶ浜に変更されつつあった。

 

「そうね、二度目の高校生活だけど、幸先の良いスタートをきれたみたいね」

 

雪ノ下にとって由比ヶ浜は前世、後世含めて、信頼できる同性の友達だったのだ。

 

「うん。それに入学式のあの事故が無かったから、もうヒッキーに謝る必要もないし、罪悪感を感じる事が無いから、おもいっきり、高校生活を楽しめるよ」

 

「そうね。でも、元々あんなクズの為に貴女が罪悪感を感じる必要が無かったのよ」

 

「そうだよね~あっ、そういえば、奉仕部はどうするの?すぐに作るの?パンフの先生の名前の欄の中に平塚先生の名前があったから、きっと顧問になってくれるよ」

 

由比ヶ浜は雪ノ下に前世同様、この後世の総武高校でも奉仕部は作るのかと聞いた。

総武高校の教師陣の中には前世同様、平塚静の名前もあったので、奉仕部の概念を説明すればきっと奉仕部設立の許可は出すだろう。

 

「いえ、奉仕部を設立するのは前の世界と同じ高校二年生になってからにするわ」

 

しかし、雪ノ下は奉仕部を設置するのは前世同様、二年になってからだと言う。

 

「えっ?なんで?」

 

「由比ヶ浜さん。私達はまだ入学したての新入生‥それがいきなり、部活を作りたいと言っても難しいわ。それよりもこの一年で確固たる成績を出して実績を立ててからの方が奉仕部も設立しやすくなるわ」

 

雪ノ下は一年の間はこの総武高校にて確固たる地位や名声、成績などの実績を築くことで、自分の名前と顔を知らしめる事に専念すると言う。

 

「そっか、流石ゆきのん!!だったら、私も手伝うよ。来年、絶対に奉仕部を作ろうね」

 

「ええ」

 

「雪乃ちゃん。勿論、僕も協力するからね」

 

「一応、期待しておくわね。葉山君」

 

「ああ、任せてくれよ」

 

雪ノ下の目標を聞いて由比ヶ浜は感銘を受け、雪ノ下に協力すると言い、半ば雪ノ下の腰巾着である葉山もそれに協力すると言う。

だが、二年になってからは海洋実習等があるのに大丈夫なのか?と言う疑問を三人は全く抱いていない事から、この後世の世界が前世と異なる世界であると言う認識が未だに薄い三人であった。

 

その一つの事例がコレだった‥‥

 

入学式が終わり、数週間経つと、新入生達の中には高校でも中学と同じ部活動をしようとする者、高校生になりはじめての部活動に励む者が現れる。

前世の八幡、そしてこの後世における八幡であるシュテルの想い人である戸塚彩加もそんな一人で、戸塚は中学からやっていたテニスを高校でも続ける為、テニス部へと入部した。

しかし、戸塚はお世辞にもテニスが上手いわけでは無く、中学時代の三年間もレギュラーの座にはつけなかったが、それでも朝・昼・放課後には欠かさず自主練をするだけでなく、部活の無い日もテニススクールに通う程一生懸命頑張っている努力家であった。

ただ入学したての新入生がいきなりコートに入ってラケットを振れるかと言われると、それはNOである。

中学大会での上位成績者ならば話は別であるが、残念ながら戸塚の場合はそれに該当しない。

故に戸塚はまだ球拾いやコート整備、備品チェック、部室の清掃などの雑用である。

それでも戸塚は持ち前の真面目な性格と努力家な所が働いて、僅かでも暇のある時間さえあれば、壁当てをして少しでもテニスの腕をあげようとしていた。

そんな中、部活見学にて一人の女子生徒が、テニス部が部活動しているテニス場に来た。

 

(テニスか‥‥どうしよう‥‥高校でもやろうかな‥‥)

 

テニス場に来た女子生徒の名前は三浦優美子。

中学時代は女子テニス部に所属しており、県選抜に選ばれたほどの腕前であったが、実際に大会へ出てみて自分が井の中の蛙である事を改めて実感し、彼女は高校に入ってからもテニスを続けようかと迷っていた。

でも、テニスに対する未練があるからこそ、彼女はこうしてテニス場に来た。

暫くの間、テニスをしている部員達を見ていた三浦であったが、

 

(はぁ~‥‥やめやめ、ウジウジしているなんて、あーしらしくない。折角、中学時代の連中がいない学校を選んだんだから、心機一転、高校ではテニスを忘れて新しい高校生活を送ろう‥‥)

 

高校ではもうテニスをしないと決め、テニス場を後にしようとした時、

 

ポコン、ポコン、ポコン‥‥

 

と、何かが壁に当たる音が聞こえた。

 

(この音って‥‥)

 

三浦にはこの音がなんの音なのか直ぐに分かった。

彼女は音がする方へと行ってみると其処には一人の生徒が壁打ちをしていた。

その姿は小柄で腕も腰も脚も細く、肌も抜けるように白い。

総武高校のジャージを着て黙々とラケットを振っている。

白い肌に薄っすらと浮かび上がる汗さえも輝いているように見える。

 

(綺麗な子‥‥)

 

三浦はその姿を見て思わず呆然とするが、何かに気づき、その場を後にした。

 

「ハァ‥‥ハァ‥‥ハァ‥‥ハァ‥‥」

 

戸塚は部活の合間を見て一人で壁打ちをしていたが、ずっと壁打ちをしていた為、息を切らし、汗を滝のように流し、足腰がガクガクと震えている。

 

「くっ‥‥まだ‥‥まだだ‥‥もっと‥もっと、頑張らないと、とてもレギュラーなんて‥‥」

 

戸塚は再びボールを手にラケットを構えようとした時、

 

ピタっ

 

戸塚の頬に突如、冷たいモノが押し当てられた。

 

「ひゃっ!?」

 

思わず変な声をあげてしまった戸塚は後ろを振り向く。

そこには金髪で気の強そうな女子生徒がいた。

 

「え、えっと‥‥」

 

後ろに見知らぬ女子生徒がいた為、戸塚はどう声をかけて良いのか戸惑う。

 

「ほら、飲みなよ。あーしの奢り」

 

「えっ?あ、ありがとう‥えっと‥‥」

 

「ん?ああ、あーしは三浦‥三浦優美子。それで、アンタは?」

 

「一年の戸塚彩加です」

 

「へぇ~戸塚も今年此処に入ったばかりなんだ‥‥」

 

「もしかして、三浦さんも?」

 

「そっ、戸塚と同じ今年入ったばかり」

 

戸塚と三浦は互いに自己紹介をした後、三浦は戸塚に先程、自販機で買ったスポーツドリンクを戸塚に手渡す。

 

「随分と汗をかいているみたいだから、ちゃんと水分補給はしなよ」

 

「えっ?でも‥‥」

 

「いいから、座って飲むし!!」

 

「で、でも、僕‥テニスが弱いから、少しでも練習をして早く強くなりたいんだ」

 

「はぁ~あのねぇ、強くなりたいって言っても一朝一夕でそう簡単になれるわけないでしょう!!それに休憩を挟まずにやっていると筋肉を傷めて、それこそテニスプレイヤーとしての選手生命を絶たれてもうテニスが出来なくなるし、水分補給をしないと春先とは言え、脱水症状を起こすかもしれないのよ!!それともあーしの奢った飲みモンは飲めないって言うの!?」

 

「い、いや‥そう言う訳じゃ‥‥でも‥‥」

 

「あん? Д゜*)ギロ」

 

「い、いただきます」

 

三浦の鋭い眼光に当てられ、戸塚はラケットとボールを置き、その場に座り込み、三浦から貰ったスポーツドリンクを口にする。

 

「それで、戸塚はなんでテニスが強くなりたいの?」

 

三浦も戸塚の隣に座り、戸塚に質問をする。

 

「‥‥僕、中学からテニスをやっていたんだけど、ずっと強くなれず中学の三年間レギュラーにもなれなくて‥‥でも、高校になったら、どうしてもレギュラーになりたくて‥‥それで‥‥」

 

「そう‥でも、さっきの壁打ちを見ていたけど、戸塚、腕と肩に力が入り過ぎだし、もう少し力を抜いた方がいい‥‥」

 

「えっ?」

 

「それと‥‥」

 

三浦は戸塚に先程の戸塚の壁打ちを見て、戸塚のフォームのダメだった所を指摘する。

 

「もしかして三浦さんもテニスをやっていたの?」

 

「ん?まぁ‥‥少しだけ‥ね‥‥」

 

三浦は少しお茶を濁す感じで答える。

 

「ね、ねぇ‥その‥‥よかったら、テニスフォームを見せてくれないかな?」

 

「ん?」

 

戸塚は三浦にテニスラケットを差し出して三浦にテニスフォームを見せてくれと言う。

 

「‥‥」

 

三浦はここでも迷った。

県大会に出場し、一回戦で敗退した後、彼女は他のテニス部員達から晒し者扱いされた。

最もそうなった原因には彼女の元々の性格も災いしていたのだが、

 

あれだけ偉そうな態度をとって一回戦目で敗退とかダサっ!!

 

三浦さんって実際は凄く弱いんじゃない?

 

県大会まで行けたのだってただ運が良かっただけじゃないの?

 

それともレギュラーの人を脅してレギュラーになったとか?

 

ああ、それあり得る!!

 

そんな言葉をずっと言われ続け、受験を言い訳に三浦はテニスを辞めた。

でも、戸塚はそんな三浦の過去を当然知らない。

 

「‥‥」

 

「三浦さん?どうしたの?」

 

「‥あっ、いや、なんでもないし‥‥ちょっとだけよ」

 

三浦は振り切ったように戸塚からテニスラケットを受け取り、ボールを壁に打ち付ける。

 

「いい、打つ時は‥‥」

 

そして三浦は壁打ちをしながら戸塚に改めてアドバイスをする。

 

「こんな感じ‥‥分かった?」

 

「う、うん。ありがとう‥‥あ、あの、三浦さん!!」

 

戸塚は三浦に礼を言うと何かを決意したように三浦に声をかける。

 

「ん?」

 

「僕に‥‥僕にテニスを教えてください!!」

 

「えっ?」

 

戸塚の頼みに三浦は一瞬、唖然とする。

部活の無い日に戸塚はテニススクールに通っているが、テニススクールはワンツーマンと言う訳でなく、大勢の生徒に対して少数のコーチで教えるので、重点的に強化はしてもらえなかった。

また部活でもそうだが、テニススクールでもコーチは才能がある生徒を優先して教えているので、戸塚は自分のテニスの技術がなかなか上がらない事に焦りを感じていた。

その為、こうして身近にテニスが上手い人が居るのであれば、是非とも教えてもらいたかった。

先程の三浦の壁打ちを見たが、フォームも綺麗で自分のダメな所のアドバイスは的確だった。

 

「ダメ‥‥かな?」

 

「‥‥いきなり言われても困るし‥‥ちょっと時間を頂戴」

 

「う、うん‥こっちもいきなりゴメンね」

 

「気にしなくていいし‥‥それじゃあ、部活頑張って‥‥」

 

「あっ、うん‥‥アドバイスありがとう」

 

三浦はそう言ってその場から去って行った。

 

家に帰った三浦は自分の部屋のベッドに寝転んで今日の事を振り返っていた。

考えてみれば戸塚は三浦が高校に入ってから話した初めての同級生だった。

 

「‥‥戸塚‥‥彩加‥か‥‥」

 

三浦は部屋の天井をボォっと見ながらポツリと戸塚の名前を呟いた。

 




『やはり俺の青春ラブコメは間違っている。』の話の中にあるテニスコートでの話の中で、由比ヶ浜が三浦の過去のプロフィールの中で、彼女は、中学時代はテニス部員で県大会まで出場したと八幡に言っていました。

そんな経歴がある三浦が高校ではテニスをしなかったのは何か訳があるのではないかと思い今回の話の様な形になりました。

出会いがあれば高校一年生時に戸塚と三浦はこうして会っていても可笑しくは無かったんですけどね。

そして、奉仕部+葉山に関しては前世の記憶は受け継いでいますが、前世の出来事は流石に十五年の歳月でやや朧気となっており、細かい事などは忘れていますが、大まかな事は覚えています。

よって、入学式での交通事故は覚えていたので、由比ヶ浜はそれを無事に回避しました。
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