やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

18 / 161
UA10000 お気に入り100 を突破しました。

これもみなさんのおかげです。

ありがとうございます。

今後もよろしくお願いします。

さて、今回からはふたたび舞台をドイツへと移します。


17話

 

 

此処で視点を日本からドイツへと移し、時系列は春へと戻る。

日本の総武高校にて入学式が行われているのと同じようにドイツのキール海洋学校高等部でも、中等部から高等部へ進学する生徒達の為の進学式が行われていた。

中等部同様、高等部でも主席で進学を果たしたシュテルはキール海洋学校高等部の士官制服を身に纏い進学式に参加していた。

ヴィルヘルムスハーフェン校高等部の士官制服は金色の四つボタンの黒いシングルスーツにスカート、コートを羽織る制服となっているが、キール海洋学校高等部の士官制服は金色の八つボタンの黒いダブルスーツにスカートかズボンを選ぶことが出来システムとなっており、上着の上から羽織るコートはヴィルヘルムスハーフェン校高等部と同じ型であるが、区別をつける為にヴィルヘルムスハーフェン校高等部はコートの裏地が『赤』であるのに対して、キール海洋学校高等部の方はコートの裏地は『青』となっている。

それ以外の生徒の制服はヴィルヘルムスハーフェン校高等部では、赤いセーラー服に黒いスカーフ、ピンクのスカートとなっており、この制服はドイツの女子学生の中でも人気であり、その制服を着る事を目的としてヴィルヘルムスハーフェン校を目指す者もいる。

一方、キール海洋学校の方は、紺色のセーラー服に赤いスカーフ、同じく紺色のスカートで、普通の高校の制服に似ている。

更にキール海洋学校高等部ではヴィルヘルムスハーフェン校と違い、首席進学者には学校長から直々にサーベルが下賜される。

サーベルを腰にぶら下げているのはキール海洋学校では僅かに三人だけ‥‥。

高等部の各学年それぞれ首席者のみであり、サーベルは各学年のリーダー的存在の証でもあるのだ。

進学式が終わり、校舎内にある掲示板には各生徒、それぞれが乗艦する艦とその役職が掲示され、新たに高等部へ進学した生徒達は自分達がどの艦に乗るのか、どんな役職についているのかを確認する為に掲示板の前に集まっている。

腰には首席者の証であるサーベルをぶら下げたシュテルもクリスとユーリと共に掲示板がある場所へと向かい、自分達がどの艦に乗るのかを見に行く。

 

「艦種に関わらず一クラスは約三十名‥それぞれの所属する艦に乗って海洋実習か‥‥」

 

シュテルが進学式において配られたカリキュラムの内容が書かれたプリントを読みながら掲示板の場所へ歩いている。

 

「確かこのクラス分けによってどの艦の所属になるのかも決まるんだよね」

 

「うん、そうみたい」

 

当然、クリスとユーリも一緒である。

 

「でも、いきなり学生だけで海洋実習はちょっと早計だと思うな‥‥いくら中等部で海洋実習の経験があるからって‥‥」

 

シュテルはいきなり学生のみでの海洋実習にやや否定的な感じである。

いくら、中等部にて海洋実習をこなしてきてもあの時は教官も乗艦していたが、今回学生艦に乗るのは文字通り、学生のみである。

不安を抱くのも無理はない。

 

「もう、シュテルンは心配性だなぁ~」

 

「一応、安全策は考慮されているから大丈夫だよ。実際、キールでも、ヴィルヘルムスハーフェンでもこれまで学生艦の大きな遭難事故は起きていないし‥‥」

 

「でも、これまでは起きていないから今後も起きないって言いきれないだろう?」

 

「まぁ、それはそうだけど‥‥」

 

「シュテルン、それを言っちゃあ、何も出来ないよ」

 

「分かっているよ。だからこそ、艦長になる生徒は大変だと思ってね」

 

「他人事みたいに言っているけど、少なくともシュテルンは主席なんだから、嫌でも艦長決定なんじゃないかな?」

 

「‥‥」

 

ユーリの一言でプレッシャーに押しつぶされそうになるシュテル。

先程の言葉はまさにブーメランとして自分に返ってきた。

 

「だ、大丈夫だよ。私は次席だったから、きっと、副長だと思うからシュテルンをちゃんと補佐してあげるから」

 

クリスが無言のまま固まるシュテルを励ます。

 

「う、うん‥ありがとう、クリス」

 

「むぅ~シュテルンったら、クリスばっかりに甘えて‥‥私だって十番代はキープしているんだから、シュテルンの艦に乗る可能性は十分あるんだからね」

 

頬を膨らませてやや不機嫌そうなユーリ。

 

「分かっているよ、ユーリ。もし、一緒の艦に乗れたらお前さんの事もちゃんと頼りにしているから」

 

(少なくとも、由比ヶ浜よりはユーリの方が頼りになるし、信頼できるからな‥‥)

 

シュテルがちゃんとユーリの事も忘れていないと言うと、機嫌を直すユーリ。

こういう所はやはり、切り替えが早いと言うか、ユーリの可愛い所である。

 

「シュテルンはさぁ‥‥」

 

「ん?」

 

「乗りたい艦とかって希望ある?」

 

「えっ?うーん‥‥どうだろう‥‥あんまり気にした事ないかも」

 

シュテルはどの艦の所属になっても構わないと言う。

 

「そうなんだ」

 

「二人はあるの?乗りたい艦」

 

「んー‥‥私も特に無いかも」

 

「私は小さい艦はちょっと‥‥嵐とかにあったら怖いし‥‥」

 

ユーリはシュテルと同じく特に乗りたい艦はないが、クリスは小さい艦‥駆逐艦クラスはやや不安な様子。

 

「でも、一番なのは三人で同じ艦に乗れることだよね」

 

「うん」

 

「そうだね」

 

三人はそんな何気ない会話をしながらクラス分け発表が貼られた掲示板の前に立つ。

 

「それじゃあ、『せーの』で見ようか?」

 

「「うん」」

 

「「「せーの‥‥」」」

 

三人はクラス分けの掲示板を見て、自分達の名前を探した。

そして最初にシュテルは首席者だったのですぐに見つかった。

 

『大型直接教育艦 ヒンデンブルク 艦長 シュテル・H・ラングレー・碇』

 

続いて次席のクリスもシュテルのすぐ下に表示されていた。

 

『大型直接教育艦 ヒンデンブルク 副長 クリス・フォン・エブナー』

 

シュテル、クリスはすぐに見つかり、ユーリも成績が十番代ならば、同じヒンデンブルクに乗艦すると思い、ヒンデンブルクの乗員の名前を探してみると、

 

『大型直接教育艦 ヒンデンブルク 砲雷長 ユーリ・エーベルバッハ』

 

と書かれていた。

 

「やったね!!シュテルン!!私達、皆同じ艦だよ!!」

 

ユーリがシュテルに飛びつき、喜びを体で表現する。

 

「うん。よかった、よかった」

 

「ああ、二人が居れば心強い」

 

クリスもシュテルも一緒になれたことを喜んだ。

 

「あっ、シュテル!!」

 

そこへ、エレミアがやって来てシュテルに声をかけつつ、ユーリと同じくシュテルに抱き付いた。

 

「あっ、ジーク。ジークはどの艦になったの?」

 

「ウチもシュテルと同じ、ヒンデンブルクやで」

 

「役職は?」

 

「機関長や。シュテル、これから三年間、よろしゅうたのむな」

 

ジークの言う通り、掲示板には、

 

『大型直接教育艦 ヒンデンブルク 機関長 ジークリンデ・エレミア』

 

と、書かれていた。

 

「ああ、期待しているよ、ジーク」

 

「おう、任せておいてや」

 

シュテルとジークのやり取りをクリスとユーリはなんか面白くないと言った顔をしていた。

 

 

此処で、シュテル達が高等部から乗艦するヒンデンブルクについて説明しておこう。

ヒンデンブルクはH級戦艦と呼ばれる階級の戦艦であり、ビスマルク級戦艦に続いてドイツが計画、建造した超弩級戦艦の艦級である。

全長266m、全幅37m、と長さでは日本の大和級よりも若干長く、幅も大和級が2、3m、勝っているだけで、ほぼ大和級に匹敵する大きさであった。

前世(史実)においては1939年からドイツ海軍が予定していた海軍拡張計画である、Z計画の一環で、ドイツ海軍は5万トン以上の大型戦艦建造計画を立てていた。

しかし、第二次世界大戦の勃発により、大規模で費用のかかる建造プロジェクトがドイツ陸軍とドイツ空軍の戦備に不可欠な物資をあまりにも多く必要とすると判断され、結果として戦艦や空母の建造は延期となり、水上艦艇への資源は主にUボートの建造に向けられた。

途中、日本海軍の機動部隊戦術の成功などで空母の建造が見直された場面もあったが、結局戦局は好転しなかったため大戦の終結まで完成しない艦が多かった。

また、当時のドイツの生産力では、1939年までに多数の超弩級戦艦、機動部隊の艦船を建造する事はできなかった。

実際には計画の四分の一にも達しておらず、目標の達成には少なくとも4~5年が必要だった。

そもそもこうなったのは、ヒトラーが戦争を起こしたのが最大の原因であるが、そのヒトラーが大規模な戦争をそこまで長引かせる事はないだろうと判断していたドイツ軍首脳部の読みが甘かったのも問題点の一つであった。

その中でH級はZ計画の中で計画された戦艦であり、1937~39年にかけて設計が行われ、船体構造は基本的にはビスマルク級戦艦の拡大改良型であり、外観も酷似していた。

相違点としては機関の変更により煙突が2本となったこと、航空関連設備が艦尾に移され、三番主砲塔両脇にアラド196水上機6機を収容する格納庫に四番主砲塔の直ぐ後ろに旋回式カタパルトが設けられたこと等が挙げられる。

水面下では艦尾に大きな特徴を有し、被雷による舵機・推進機の損傷を局限するよう配慮された、独特の形状を為している。

兵装配置は主砲・副砲・高角砲に至るまでビスマルク級とまったくの同一である。

ただし、ビスマルクの47口径38cm連装砲ではなく、47口径40.6cm連装砲4基8門で、仰角30°俯角6.5°を指向でき、最大射程は3万6800mを誇る。

副砲・高角砲はビスマルク級と全く同一で、15cm55口径砲連装6基12門、10.5cm65口径高角砲連装8基16門に機銃は36mm砲16門と20mm機銃34丁を装備する予定であった。

主機はオール・ディーゼルであり、本級の艦体規模としては非常に特異なものである。

12基のディーゼルエンジンにより16万5000馬力をひねり出し、3軸のスクリューによって30.0ktの速力を発揮する。

H級戦艦は大きさでは日本の大和級よりも若干大きく、速力は大和級を上回り、金剛級並みの速力を有していた。

ただし、前世(史実)のHは1939年7月15日に起工され、9月30日に建造中止となった。

この時点で進捗は800t分であり、3500tの資材が加工済、他に5800tが準備され、1万9000t分が発注済だった。

造りかけのHは1941年11月25日以降に解体された。

その他のH級戦艦もH同様、完成することなく建造途中で建造が中止され、全て解体されたか、建造計画そのものが中止された。

しかし、この後世において、それらH級戦艦は、建造された数は前世(史実)の建造計画よりも少ないが、こうしてちゃんと完成していた。

ただし、航空機が存在しないこの世界では四番主砲塔の直ぐ後ろには旋回式カタパルトは設けられておらず、三番主砲塔両脇にアラド196水上機6機を収容する為に設けられていた格納庫には水上機でなく、スキッパーが格納されており、その他にティルピッツ同様、55.3cm 4連装魚雷発射管を両舷に1基ずつ設置されている。

 

こうした強力な戦艦群であるが、万が一学生の乗る艦が海賊やテロリストの手によって奪われたらと言う問題があり、一時は学生が使用する艦船に戦艦を外そうと言う声も上がった事もある。

しかし、各国の海洋学校が戦艦を使用から現在までそう言った事故や事件が奇跡的に起きていない為、今日まで海洋学校の学生が戦艦を利用しているが、国際海上安全整備機構では、各国の海洋学校に所属する学生艦については制限を設けていた。

全長、総トン数、主砲の口径などは今の所、制限は設けられていないが、主砲の大きさに関しては、最大で40.6cm以上のモノは搭載不可能と制限をかけている。

最も現在も40.6cm以上の砲を持っているのは日本の大和級四隻のみである。

故に大和級戦艦は学生艦ではなく、ブルーマーメイドに各支部の旗艦として使用されている。

そして加賀級、尾張級、近江級戦艦、天城級巡洋戦艦も建造当時は41cm砲を搭載されていたが、この制限条約を受け、41cm砲から40.6cm砲へと変更され日本の各海洋学校で使用されている。

 

 

 

 

「これが私達の艦‥‥」

 

シュテル達は学校の港湾区画に停泊しているヒンデンブルクを見上げる。

黒光りする連装主砲、塔の様に聳え立つ艦橋、その艦橋の周りをまるでハリネズミの様に固める副砲、高角砲、機銃の数々‥‥

まさに海の王者である戦艦としての威厳を放っている。

 

「この艦で海に出るんだね」

 

「うん‥不安はあるけど、やっぱり、こうして自分達が乗る艦を見ると、楽しみでもあるね」

 

「ああ、この先どんな事があるのか、分からないけど、クリス、ユーリ、ジークやみんなが居れば何とかなりそうな気がする」

 

シュテルがジークの名前をだすとやはり、クリスとユーリはちょっと頬を膨らませる。

 

そして、海洋実習当日‥‥

ヒンデンブルクの前甲板には乗員全員が集まり、綺麗に整列する。

そして彼女らの前に艦長帽に士官コート、腰にサーベルをぶら下げたシュテルが姿を見せる。

 

「ヒンデンブルク乗員の諸君、私はヒンデンブルク艦長のシュテル・H・ラングレー・碇だ。本日は諸君らと共に乗艦できたことを嬉しく思う。我々は卒業までの三年間、この船で苦楽を共にし、互いを支え合う仲間となる。故にその記念として今回の初航海を最高の思い出になるよう、力を貸してもらいたい。以上」

 

(前世の自分からは考えられないなぁ‥‥)

 

シュテルの訓示が終わると、乗艦一同はシュテルに敬礼をする。

そして、シュテルもそんな乗員達に返礼する。

シュテルは心の中で前世では人前でこんな風に喋る事なんて絶対にできないと思っていたので、今こうして大勢の人の前で平然と話している自分に驚いていた。

 

「総員、出航準備!!」

 

シュテルが命令を下すと乗員は駆け足でそれぞれの部署へと向かう。

艦橋へ上がって見ると其処には、

 

「ニャ~」

 

白地に灰色の縞を持つサバトラの白猫が一匹いた。

 

「猫?どうして此処に‥‥?」

 

シュテルが疑問に思いつつ、その猫を抱っこする。

 

(‥‥コイツ、なんだかカマクラに似ているな‥‥でも、前世のカマクラは此処まで俺には懐かなかったけどな‥‥)

 

(そう言えば、どうしているかな?‥‥ちゃんとエサは貰っているのかな‥‥?)

 

前世の家で飼っていた猫を思い出すシュテル。

今、抱っこしている猫と前世の家で飼っていた猫の毛並みが似ていたのだ。

しかし、前世の飼い猫はシュテルがまだ八幡だった頃には懐かず、こうして抱っこなんて出来なかった。

でも、今はこうして猫を抱っこする事が出来ている。

まぁ、今シュテルが抱っこしている猫と前世での飼い猫は別猫だし、今の自分は比企谷八幡ではなく、シュテル・H・ラングレー・碇なのだから‥‥

シュテルが猫を抱っこしていると、ヒンデンブルクの艦橋要員が艦橋に入って来た。

 

「あれ?シュテルン、その猫はどうしたの?」

 

クリスの目に最初に飛び込んできたのは猫を抱っこしているシュテルの姿だった。

甲板で挨拶をした時、シュテルは猫を連れてなどいなかったし、彼女が猫を飼っているなど、これまで生活を共にして聞いた事もなかったので、クリスが疑問に思うのも当然だ。

 

「艦橋に来たらこの子が居たの‥‥どうやら迷い込んじゃったみたい」

 

「どうする?‥‥焼く?」

 

「ちょっ、ユーリ、なんでそうなるの!?」

 

猫を見て突然「焼く?」と訊ねるユーリにすかさずツッコミを入れるシュテル。

 

「嫌だなぁ~冗談だよぉ、冗談」

 

ユーリは「あははは‥‥」と笑いながら言うが、目がちょっとマジな感じで見えた。

 

「あれ?シュテルン、サーベルは置いてきたの?」

 

艦橋に上がったシュテルの腰にはサーベルがぶら下がっていなかった。

 

「あんな重いヤツ、常に腰にはつけてられないよ、ああいうのは儀礼品の装備だから、式典とかにはちゃんとつけるよ」

 

艦橋の壁には主席生徒の証であるサーベルが立てかけられている。

 

「それで、どうします?その猫?」

 

クリスはシュテルが抱っこしている猫についてどうするかを訊ねる。

 

「もう、出航するし、ネズミ予防の為、このまま乗っけておこう」

 

「えっ?いいんですか!?」

 

「昔の船もネズミ予防で猫を乗員として乗せていたみたいだし、大丈夫でしょう」

 

こうしてヒンデンブルクに飛び込みで新たな乗員が増えた。

 

「では、改めまして艦長のシュテル・H・ラングレー・碇です。よろしく」

 

艦橋メンバーは役職と名を名乗る。

シュテルは猫を抱きながら艦橋に居る皆に挨拶をする。

 

「副長のクリス・フォン・エブナーです」

 

「砲雷長のユーリ・エーベルバッハだよぉ~」

 

「航海長のレヴィ・ラッセル!!よろしく!!」

 

青い髪で活発なレヴィと名乗る子の胸は結構大きく、それを見たクリスが思わず悔しさのあまり、顔をしかめていたのをシュテルは見たが、直ぐに目を逸らした。

 

「書記のメイリン・ホークです」

 

赤い髪でツインテールのメイリンは少し気が弱い印象を受ける。

 

艦橋メンバーの名前と顔合わせが終わり、いよいよ出航となる。

 

「折角の初航海なのにキールは相変わらずのどんより空か‥‥」

 

ユーリがウィングから空を見上げると、キールの空模様は薄暗い雲で覆われていた。

 

「まぁ、この空模様こそ、キールっぽいじゃない。それに北海を抜ければ天候は良くなるだろうし、むしろ雲を懐かしむことになるかもね」

 

クリスがユーリと同じく、どんよりとした空を見上げながら言う。

 

「よし、出航準備、錨を上げろ」

 

鎖の金属音を奏でながらヒンデンブルクの錨が巻き上げられる。

 

「錨、収納」

 

「舫いはなて」

 

係留していた舫いも放たれ、

 

「出航!機関、微速前進!」

 

「機関、微速前進!」

 

ヒンデンブルクの機関が唸りを上げ、ゆっくりと動き出す。

 

「航海長操艦」

 

『航海長操艦』

 

「速度、前進微速、針路、124‥‥」

 

「操艦、頂きます。速度、前進微速、針路、124」

 

シュテルから操艦を引き継いだレヴィは慎重な面持ちで舵輪を握りながらヒンデンブルクをキール海洋学校の港湾区画から外洋へと出す。

外洋へと出ると、ヒンデンブルクは速力を上げ、目的地である海上基地を目指した。

 

航海中、ただ何もしないわけではなく、勿論様々な訓練は行った。

避難訓練、救命艇降下訓練、消火訓練、そして戦闘訓練。

戦闘訓練では応急員の応急修理訓練も盛り込んであり、医療班も負傷者に見立てた人形を使っての訓練が行われた。

 

「報告、本日19:30、訓練日程は全て終了しました」

 

メイリンがタブレットに記録された内容を報告する。

 

「なお、応急員に一名の負傷者を出しました」

 

「負傷?怪我の程度は?」

 

「防水作業中に打撲した模様で、現在、医務室で治療中です」

 

「そう‥あとで様子を確認しておこう」

 

「とはいえ、訓練終了予定時間を15分もオーバーしていますね」

 

クリスが今日の訓練報告を聞いて呟く。

 

「まぁ、まだ初日だし、艦の事も熟知していないからね。回数をこなしていけば、嫌でも慣れるだろうから、今後も訓練は続けていこう」

 

「そうですね」

 

シュテルはまだ最初だから、訓練時間のオーバーは仕方ないと言う。

 

「じゃあ、ちょっと、医務室に行って来るから、此処をよろしくね、副長」

 

「はい、艦長」

 

艦橋から医務室へ行き、シュテルは今日負傷した応急員のクラスメイトを見舞う。

幸い骨に異常がなく、数日で治るらしい。

治療を受け終わったクラスメイトは医務室を後にする。

 

「初日から大変だったね、ウルスラさん」

 

シュテルはヒンデンブルクの医務長、ウルスラ・ハルトマンに労いの言葉をかける。

 

「いえ、初日だからこそ、こうした経験は早めにしておかなければなりませんから、むしろ、いい経験になりました」

 

ウルスラは微笑みながら言う。

以前、シュテルは中等部時代に彼女と話す機会があったのだが、ウルスラには姉が一人おり、彼女の姉は現役のブルーマーメイドの隊員で艦長職についているエリートらしい。

そう言ったエリートの姉を持つと姉に対してコンプレックスを抱くのではないかと前世の経験からシュテルはそう思っていたが、ウルスラと彼女の姉は専門が異なる為、ウルスラは姉に対してコンプレックスを抱いてはいない様子だった。

 

(雪ノ下の奴も雪ノ下さんの後ばっかり追っていないで、雪ノ下さんがやっていないことをやればよかったのに‥‥)

 

ウルスラを見ながら、シュテルは前世の同級生の事をふと思い出していた。

 




今回のゲストは、

航海長にはなのはシリーズの雷刃の襲撃者こと、レヴィ・ザ・スラッシャーのレヴィです。
外見はINNOCENTの漫画版に登場した大人バージョンのレヴィをイメージしてください。

書記は機動戦士ガンダムSEEDDESTINYに登場するメイリンです。
原作では情報に関するエキスパートだったので、彼女を採用しました。

医務長はストライクウィッチーズからウルスラ・ハルトマンを採用しました。
原作では技術者でしたが、此処では医者の卵です。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。