やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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21話

 

 

ヴィルヘルムスハーフェン校、高等部一年生の初めての海洋実習にて、ヴィルヘルムスハーフェン校所属の学生艦が初回の海洋実習の目的地である海上フロートの基地にはぞくぞくとヴィルヘルムスハーフェン校所属の学生艦が集まって来る。

テア・クロイツェルが艦長を務めるアドミラル・グラーフ・シュペーも無事に目的地である海上フロートの基地へと到着した。

舫いで艦を完全に固定した後に基地の桟橋と艦を繋ぐタラップが接舷される。

タラップが接舷され、シュペーの乗員が降りてくる。

 

「全く、クローナの奴は相変わらず嫌味な奴だ」

 

シュペー副長のミーナは先程のやり取りに今でも憤慨しており、停泊しているビスマルクを睨みつける。

そこへ、もう一隻、ビスマルクに似た艦影の艦船が海上フロートの基地の桟橋へと近づいてきた。

 

「な、なんだ!?あの艦は!?」

 

「‥‥」

 

ミーナは見慣れない艦の出現に驚くが、テアは特にリアクションを起こす事無く、ジッと見ていた。

 

「キール校の学生艦ですね」

 

書記のローザがタブレットで入港してきた艦について調べてミーナ達に説明する。

 

「キール校の?‥‥なんでキールの学生艦が此処に来たの?補給?」

 

レターナがローザに他校の学生艦が来た理由を訊ねる。

 

「いえ、交換留学だそうです」

 

「交換留学!?一年生で!?」

 

ミーナは一年生ながらも交換留学してきた事に驚いている様子だった。

 

「今年はウチからは二年生のティルピッツクラスの先輩方が、キールからは一年生が交換留学に来るそうです」

 

「「へぇ~」」

 

ローザの追加説明を聞いて納得するミーナとレターナ。

 

「でも、あの艦、ビスマルクにそっくりだな」

 

レターナはビスマルクそっくりなキール校の艦を見て呟く。

 

「キール校のH級戦艦ですね。あちらもウチのビスマルク同様、成績優秀者が乗艦する艦みたいです」

 

「成績優秀者にビスマルクに似た艦‥‥クローナみたいな奴がまた一人、増える訳か?」

 

ローザの説明を聞き、ミーナはキール校のH級戦艦の艦長も自分達に嫌がらせや嫌味を言って来るクローナみたいな奴なのかと思った。

やがて、キールのH級戦艦も舫いで艦を固定、接舷用のタラップがかけられると、乗員が次々と降りてくる。

テアはあまり興味がない様子だったが、ミーナやレターナ、ローザはキール校の生徒を初めて見るので、どんな人なのか気になったので、その場にとどまりジッと見ていた。

やがて艦長らしき人物が降りてきた。

キール海洋学校の校章入りの艦長帽を被り、金色でダブルの八つボタンの士官服、テアと同じ形状だが裏地が青いコート、そして腰にはサーベルをぶら下げている一人の女生徒だ。

彼女の後ろには同じ形状の士官服を身に纏った士官の生徒が二人いる。

 

「コートはウチの学校と同じデザインですね」

 

「でも、裏地が青いね‥‥」

 

「それよりもあの腰からぶら下げているサーベルはなんだ!?」

 

「あっ、それはキール校の伝統と言うか、習わしで、キール校の高等部では成績優秀者にはサーベルが送られるみたいですよ」

 

ミーナ達はキール校の艦長の事をジッと見ていると、向こうの艦長も此方に気づいた様で、一礼しながら声をかけてきた。

 

「こんにちは」

 

「こ、こんにちは」

 

「「こんにちは」」

 

突然声をかけられミーナはちょっとキョドる。

 

「あっ、もしかして、シュペーの人ですか?」

 

「は、はい。アドミラル・グラーフ・シュペー副長のヴィルヘルミーナ・ブラウンシュヴァイク・インゲノール・フリーデブルクです」

 

「同じく、書記のローザ・ヘレーネ・カールスです」

 

「航海長のレターナ・ハーデガンだよ」

 

「‥‥艦長のテア・クロイツェルだ」

 

「えっ?」

 

テアの名前を聞いて、相手の艦長は驚いている様子だった。

何故、キール校の艦長が驚いているのか分からず、テアは首を傾げる。

一方、キール校のH級戦艦の艦長、シュテルはテアの名前を聞いて、

 

(えっ!?この人がテア・クロイツェル!?テア・クロイツェルがビスマルクの艦長じゃないのか!?)

 

てっきりビスマルクの艦長がテア・クロイツェルだと思っていたシュテルにとってまさかシュペーの艦長がテアだったとは予想外だった。

とは言え、いつまでも驚いて自己紹介をしないのはいささか礼儀にも欠けるので、シュテルは姿勢を正して、

 

「あっ、失礼しました。キール校所属、ヒンデンブルク艦長、シュテル・H・ラングレー・碇です」

 

「同じく、ヒンデンブルク副長のクリス・フォン・エブナーです」

 

「ユーリ・エーベルバッハ、ヒンデンブルクでは砲雷長をしています」

 

「いかり?ラングレー?もしかして、世界的に有名なチェリスト、碇・ラングレー・シンジはもしかして‥‥」

 

「あっ、はい。碇・ラングレー・シンジは私の父です」

 

音楽家一族出身のテアはシュテルの父親のシンジの事は当然知っていた。

 

「貴女のお父様の演奏は実に素晴らしい演奏です。CDが出たら、必ず買っています」

 

テアは意外にもシュテルの父、シンジのファンだった。

 

「そ、それはどうも‥‥父もきっと喜んでくれるでしょう」

 

「その‥‥もし、よければ、今度ミュンヘンで行われる演奏会のチケットがあれば‥‥それと出来ればサインも‥‥」

 

「ええ、分かりました。父に頼んでおきましょう」

 

「あ、ありがとう」

 

シュテルとテアのやり取りを見て、ミーナは突然ポンと現れたシュテルにテアが取られてしまったように思えてなんか面白くなかった。

 

「あっ、お近づきの印に‥‥」

 

シュテルはグッと拳を握り、次にパッと手を開くとそこには飴玉があった。

 

「どうぞ‥‥」

 

その飴玉をテア達に配った。

 

「なんで‥‥飴玉?」

 

シュテルから貰った飴玉をミーナはジッと見る。

 

「いや、何かフリーデブルクさんの声を聞くと、飴玉が大好きで、仕事したら負け、将来は印税生活‥‥を目指しているアイドルって感じの声だったんで‥‥」

 

「どんな声だ!?それはっ!?」

 

シュテルとミーナがそんなやり取りをしている間、テアはシュテルから貰った飴玉を袋から取り出す事無くジッと凝視している。

 

「ん?どうしたの?クロイツェルさん。もしかして、飴玉嫌いだった?」

 

「いや、嫌いではないが、私が手を煩わす必要があるのか?」

 

「えっ?‥‥そ、それじゃあ‥‥」

 

シュテルはテアの飴玉の袋を開けて、

 

「はい、あーん」

 

「あーん」

 

彼女の口の中に入れる。

普段はテアの餌付けはミーナの仕事なのだが、一歩で遅れてしまった。

 

「むぐむぐむぐ‥‥」

 

「‥‥」

 

飴玉を食べさせ、飴玉を食べているテアの姿見てシュテルは、

 

(か、可愛い‥‥こ、この世には戸塚以外に天使が存在していたなんて‥‥)

 

前世ならば戸塚以外にも妹の小町も可愛がっていたが、あの修学旅行の一件で家族である自分よりも他人である由比ヶ浜や雪ノ下へ信頼をおいた小町に対して既に興味の対象外となっていた。

テアの餌付けに出遅れたミーナはシュテルの事を睨んでいた。

 

(えっ?なんで、睨まれているの?俺、何か悪いことした?)

 

シュテルはただ飴玉をあげただけなのに何故、自分はミーナに睨みつけられているのか分からなかった。

そこへ、

 

「やあ、さっきはどうも」

 

テアと同じ制服とコートを纏った女子生徒が取り巻き二人を連れて声をかけてきた。

 

(ん?この声‥‥)

 

シュテルはこの女子生徒の声に聞き覚えがあった。

そしてミーナはその女子生徒には敵意を剥き出しにしていた。

 

「無事についたようで何よりね」

 

「ああ、おかげさまで‥‥」

 

ミーナはこの女子生徒に敵意を剥き出しにしていたが、テアは適当にあしらっている感じだった。

彼女の態度からテアは目の前の女子生徒よりもシュテルからもらった飴玉を味わう事の方が大事らしい。

 

「やれやれクロイツェル艦長は食えないわね」

 

「別に‥‥」

 

「あら?随分と余裕ね。それとも知らないのかしら?」

 

「‥なにがだ?」

 

テアの代わりにミーナが訊ねる。

 

「あらあら随分と能天気な連中ね。毎年、初航海の後に出される課題はヴィルヘルムスハーフェン校の最初の難関と呼ばれているのよ。何故だかわかる?」

 

「‥‥」

 

「ん?」

 

「絶対に何人か艦を降りちゃうの‥‥地獄を見てね」

 

「地獄?」

 

「まぁ、せいぜい頑張る事ね」

 

その女子生徒は上から目線でテアやミーナ達に警告する。

 

(なんか、雪ノ下と相模を合わせたような奴だな‥‥)

 

シュテルはこの嫌味ったらしい女子生徒に前世の同級生の性格や人間性を合わせ持った様な奴だと思っていた。

クリスやユーリの二人もあまりこの女子生徒にはいい印象を抱いていないみたいだ。

すると、その女子生徒はシュテル達に気づき、

 

「あら?その制服‥‥キール校の人ね」

 

「ええ」

 

「確か、交換留学で来たんでしたっけ?」

 

「はい‥‥シュテル・H・ラングレー・碇と申します」

 

「ご丁寧にどうも、ビスマルク艦長のクローナ・ゼバスティアン・ベロナよ」

 

(ビスマルクの艦長‥‥この人が‥‥?)

 

(あの煽り運転のアホ艦長か‥‥)

 

(貴族みたいじゃないけど、選民思想が強そう‥‥)

 

「折角交換留学で来たのに、貴女達も運が悪かったわね。でも、貴女達キールの方々は私達よりも航海日数が多いのだから、今回の課題ぐらい簡単にできるわよね?」

 

彼女の口調、仕草からクローナは明らかに此方を挑発している。

これが雪ノ下ならば、簡単に釣れてしまうだろう。

 

「むしろ、出来なかったら、貴女の指揮能力、引いてはキール校の教育方針が全然なっていないってことよね?そうなったら、船乗りとしてお笑いよ」

 

シュテル、そして自分達が通っている学校をバカにされムッとするユーリとクリス。

しかし、シュテルはテア同様、顔には出さずに、

 

「そうですね‥‥でも、何処かの誰かは朝っぱらから船の上で馬鹿みたいに大声を出すわ、船乗りとしての基本である海上衝突予防法さえも理解していないド素人が艦長を務めているぐらいですからね。そんなド素人が居る学校に負けるわけにはいきません。精々気張らせてもらいますよ」

 

「「「なっ!?」」」

 

シュテルの返しに思わず絶句するクローナ達。

 

「わ、私達がド素人だと言うの!?」

 

「あれ?私は『ベロナ艦長』とは一言も言っていませんが、何か思い当たる節でもあるんですか?」

 

シュテルは明らかにクローナの事を指摘したのだが、そこは敢えて名前を出さずに相手を挑発したのだ。

前世では無駄にプライドが高いだけの連中を相手にしてきただけにそう言う輩の対処も心得ていた。

 

「くっ、余裕面していられるのも今の内よ、精々足元を掬われないようにね」

 

「ご忠告感謝します」

 

「ちっ、行くわよ」

 

クローナは顔を引き攣らせ、取り巻きと共にその場から去って行った。

 

(やれやれ、ああいう輩を相手にすると疲れる‥‥)

 

シュテルはネクタイを少し緩め、一息つく。

 

「碇艦長は朝のあのやり取りを見ていたのか?」

 

ミーナがシュテルに此処に到着する少し間にあったビスマルクとのひと悶着を見ていたのかと訊ねる。

 

「ええ‥後方からですが、クロイツェル艦長の冷静な対処も‥‥クロイツェル艦長のあの決断と行動は、自艦であるシュペー乗員の安全は勿論の事、ビスマルクの乗員にも配慮した立派な行動だったと思いますよ」

 

あの時、もしテアが意固地になり梃子でもビスマルクに航路を譲らなければ、シュペーはビスマルクと衝突し、互いにダメージを受けていただろう。

もしかしたら、浸水する被害を受けていたかもしれない。

当然、実習前に煽り運転で強引にシュペーの航路に割り込み、衝突事故なんて起こしたビスマルクの乗員には何らかの処分が下っていたかもしれない。

ミーナ達にとってはビスマルクの乗員‥‥特に艦長であるクローナが処罰されるのは願ってもない事だが、楽しみにしていた実習が潰されるのは困る。

シュペーの艦長として、テアの行為はまさにシュテルの言う通り、自艦とビスマルクの乗員を守った冷静な対処だった。

シュテルの指摘を聞いてミーナはちょっとシュテルの事を見直した。

 

基地内に入ると、

 

「初航海お疲れ様です。それでは早速ですが、各専科に分かれて指定の教室へと移動してください」

 

と受付の教官からの指示が出る。

しかし、

 

「ただし、艦長とそれ以外の艦橋要員は別行動となります」

 

艦長だけは完全な別行動となった。

ミーナはテアと、ユーリとクリスはシュテルと名残惜しそうに別れた。

 

艦長指定の教室で、席は決まっていなかったので、シュテルは先程、桟橋で知り合ったテアの左側へ座る。

腰にサーベルをぶら下げ、裏地が青い色の異なるコートとデザインが異なる制服を纏うシュテルが気になるのか他の生徒がチラチラとシュテルの事を見てきた。

そしてテアの右側にはさっき絡んできたクローナが座る。

 

(コイツは、なんでクロイツェル艦長に絡んで来るんだ?)

 

シュテルがチラッと二人の様子を見ると、クローナはテアの隣に座ると相変わらず彼女に対して皮肉を言っているが、テアは適当にあしらっている。

その様子を見てシュテルは全く相手にされていないにも関わらず、クローナはどうしてテアに事あるごとに絡んで来るのか不思議だった。

 

(コイツはあれか?好きな女の子には意地悪してしまう幼稚園の園児か?)

 

クローナがテアに対して無駄に絡んで来るのはクローナがテアにかまって欲しいからなのかと思っていた。

そして、始業時刻となり、

 

「全員、注目」

 

教室に入って来た教官が声を上げると、私語をしていた生徒達は一斉に黙る。

 

「それでは君たちの教育にあたる先生を紹介する」

 

「‥‥と言っても必要ないだろうが‥‥学長のケルシュティン・ロッテンベルクだ。よろしく」

 

教室に老年な女性が入って来ると、シーンとしていた教室が再びザワつく。

 

(この人がヴィルヘルムスハーフェン校の学長‥‥纏っている雰囲気がミーナ教官や雪ノ下さんとはちょっと異なるが、この人も真面な性格の人じゃないな‥‥)

 

シュテルはヴィルヘルムスハーフェン校の学長もこの世界の自分の教師であるミーナ教官や前世にて魔王、強化外骨格仮面の印象を持っていた雪ノ下陽乃とは別の異質な雰囲気をこの学長から感じ取った。

 

「静かに!!」

 

ザワつく教室に教官の声が響く。

再び教室が静寂な空間となると、ケルシュティンが口を開く。

 

「まずは初航海おめでとう。どうだったかね?自分達の手で艦を操り、海を渡った感想は?まずは其処の君」

 

ケルシュティンは生徒達に今回の航海の感想を訊ねる。

 

「えっと‥‥凄く楽しかったです」

 

「ほうほう、そっちの君は?」

 

「最高でした!!」

 

と、生徒達からの回答はその殆どが「楽しかった」である。

彼女達の回答を聞いてシュテルは、

 

(おいおい、君達は中等部の実習で何を学んできた?「楽しかった」?そりゃ、ここ五日間の海は穏やかで凪いだ海だったが、ひとたび低気圧が来ようものなら忽ち荒れるぞ)

 

(特に駆逐艦、軽巡洋艦の艦長さん、横波なんかを受けたら一発で転覆する様な波だって起きる可能性があるのだから、むしろアンタらはその事に気づかなければならないだろう?)

 

(それ以前に君たちは艦長だろう?艦長の決断一つはその艦と乗員の運命を左右する重大な事なのに、どうしてそんなに楽観視出来るんだ?)

 

シュテルが高等部に進学し、初めて自分たち学生の手だけで学生艦を動かした時には「楽しい」なんて事を感じる余裕などなかった。

初航海中、シュテルは不安と緊張で寝付けない日々が続いたぐらいだった。

シュテルが周りの生徒達の回答にやや呆れていると、

 

「次は‥キール校から来た君」

 

ケルシュティンはシュテルを指した。

 

「は、はい」

 

「君も今回の航海は楽しかったかね?」

 

ケルシュティンはまるでシュテルを試すかのような目つきをして、口元をニヤリと緩めながらシュテルに今回の航海の感想を訊ねてきた。

アンネローゼから自分の事はケルシュティンに伝えられているだろうから、当然シュテルはケルシュティンが自分の事を見極めようとしているのだと気づいていた。

それでも、シュテルは例え質問の答えが間違っていても自分の意志を曲げずに、

 

「そうですね‥‥此処、五日間はこの季節にしては珍しく凪いだ穏やかな海でしたが、相手は自然ですからね。いつ自分達に牙をむくかヒヤヒヤものでしたよ‥‥例え、五日間の短い航海でも‥‥」

 

と、シュテルが今回の航海の感想をありのままを述べると、

 

「あら?大きな艦に乗っていても随分と余裕がない回答ね。私達よりも先に海に出た者の発言とは思えないわよ。そんな小心者がキール校の主席だなんて、その腰のサーベルはお飾りなのかしら?」

 

クローナがシュテルを嘲笑するかのように言うと、テアを除く周りの生徒達もクローナに同調するかのようにクスクスと笑っている。

 

「ほぉ~それでは君は今回の航海はどうだったのかね?」

 

ケルシュティンは、クローナに今回の航海の感想を訊ねる。

 

「勿論、私が指揮をしたのですから何の問題もなく、快適な航海でしたわ、学長。正直手応えがありませんでした」

 

自慢気に言うクローナ。

その後もケルシュティンは生徒達に今回の航海の感想を訊ねていくが、やはりその回答は「楽しかった」 「最高でした」 「面白かったです」の楽観的ものばかりだ。

最後に、

 

「では、クロイツェル艦長。君はどうだったかね?今回の航海は‥‥」

 

「友との約束を果たせ、同じ艦に乗艦できたことは嬉しかったですが、それと海に出るのとは別で、やはり私も碇艦長同様、海では何があるのか分からなかったので、五日間と言う短い期間ですが、不安はそれなりにありました」

 

テアの回答に、

 

「あらあら、中等部では優秀な成績だったあのクロイツェルさんの発言とは思えませんね、此処にはシュペーよりも小さな艦を指揮する艦長さんもいるのに」

 

またもやクローナがテアに絡んできた。

すると、

 

「そうか‥‥大半の生徒は今回の航海は安全で楽しかった様だが、残念、今の質問の中で、碇艦長とクロイツェル艦長以外の艦長は失格だ」

 

「失格‥‥」

 

「そんな‥‥」

 

ケルシュティンの言葉にざわつく生徒達。

 

「な、何故ですか!?学長!!」

 

そこでケルシュティンにいの一番に噛みついたのがクローナだった。

 

「実際、今回の航海は天候も良好で何の問題もなく、目的地である此処へ到着しました!!」

 

ヴィルヘルムスハーフェン校の顔とも言えるビスマルクを指揮する身として、ケルシュティンが言い放った『艦長失格』の言葉はクローナのプライドを大いに傷つけたみたいだ。

 

「やれやれ、君たちは中等部の海洋実習で一体何を学んできたのかね?」

 

ケルシュティンは呆れた様子で首を横に振る。

 

「いいか、海とは怖いモノだ。大人しいようで牙を持ち、美しい様で底なしの闇を持つ‥‥舐めた行動をとれば命を失う。艦長は海の怖さを一番に理解しなければ失格だ」

 

ケルシュティンは先程、シュテルが思っていた通りの言葉を口にする。

 

「だが、安心したまえ‥‥君達は此処で貴重な体験を得る事ができるだろう‥‥」

 

(何か嫌な予感‥‥)

 

ケルシュティンが少し俯き、彼女の前髪の影で目の部分が曇り、口は三日月の様に歪む。

彼女のそんな姿を見てシュテルは何か嫌な感想がした。

こういう人がこんな態度を見せる時は大抵、嵐の前の静けさ見たく、滅茶苦茶な事を言う前の前兆みたいなモノだ。

 

「君達、艦長のミスで一ヶ月間、大西洋で遭難しなさい。そしてそれをその他の乗員に決して口外しない事‥‥それが次の課題だ!!」

 

シュテルの予想通り、ケルシュティンが一年の生徒達にとんでもない課題を突きつけてきた。

 




キール校の学長、アンネローゼの容姿は漫画版異世界居酒屋のぶ の登場キャラ、イングリドみたいな感じです。
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