やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~ 作:ステルス兄貴
比企谷八幡が自殺した後、総武高校で行われた生徒会選挙の結果は、当然と言うべき結果で生徒会長には雪ノ下雪乃が当選し、副会長には葉山隼人、書記には由比ヶ浜結衣が当選した。
ついでに言うと、会計には牧野と言う二年の男子生徒、庶務には藤枝と言う一年の女子が当選した。
そして、平塚先生が新たな生徒会顧問となった。
奉仕部メンバーが生徒会入りをしたことで奉仕部は自然消滅した。
選挙が無事に終わり、雪ノ下雪乃生徒会長率いる新生徒会が発足し、順調な感じで進んでいく中で、雪ノ下と葉山は交際した。
もともと雪ノ下の実家の雪ノ下家と葉山の実家の葉山家は両親の仕事の都合上、昔からの付き合いもあり、二人が幼少の頃には一時、二人の婚約の話もあった。
しかし、それは小学校の頃、雪ノ下のいじめとアメリカへの留学で頓挫したが、高校になり比企谷八幡と言う一人の高校生を踏み台として二人は和解して、婚約が正式に成立し、高校卒業後、二人は結婚する約束までこぎつけたのであった。
葉山が生徒会入りし、さらに雪ノ下と事実上の婚約という形を受けて葉山グループは解散となった。
八幡が嘘告白をして、学校中のアンチ・ヘイトを集めてまで守った葉山グループは現状維持を望んだ筈の葉山本人の手によって解散するとことなり、八幡の行為は全くの無駄に終わってしまった。
雪ノ下と葉山が青春を謳歌している中、世間では既にクリスマスの時期が近づいていた。
そんな中、
「海浜総合高校からクリスマスイベントの合同企画を持ちかけられてな、それで他校や地域との交流も兼ねて引き受けておいた」
と、近くの別の高校から合同のクリスマスイベントの企画を持ちかけられ、平塚先生は生徒会メンバーに事前の説明も同意もなく平塚先生個人の一存でそれを引き受けた。
「平塚先生、そう言う事は引き受ける前に、私達に同意を求めてくれませんか?」
平塚先生の勝手な行動に雪ノ下は呆れるように言う。
「まぁ、良いじゃないか」
平塚先生は簡単そうに言う。
「はぁ~まぁ、受けてしまったものは仕方ありません。それでどうすれば?」
「うむ、今日の放課後にさっそく会議をしたいそうだから、会場である市内のコミュニティセンターの会議室へ行ってくれ」
「わかりました」
そして、放課後。
雪ノ下達総武高校生徒会メンバーは会場である市内のコミュニティセンターの会議室へと向かった。
其処には相手校である海浜総合高校の生徒会メンバーが待っていた。
「やあ、総武高校の皆、僕は玉縄。海浜総合高校の生徒会長なんだ、よろしく」
「総武高校生徒会長の雪ノ下雪乃です」
「同じく総武高校副会長の葉山隼人です。よろしく」
「書記の由比ヶ浜結衣です。よろしくね」
まずは互いの自己紹介をした後、今回のクリスマスイベントの会議が始まる。
「いやー良かったよ。フレッシュでルーキーな生徒会同士協力できて、お互いリスペクトできるパートナーシップを築いてシナジー効果を生んでいこう」
「え、えっと、あれ?」
玉縄のビジネス英語交じりの喋り方に戸惑う由比ヶ浜。
「ええ、よろしくお願いするわ、それじゃあ、由比ヶ浜さんはノートに議事録を記録して頂戴」
「えっ?あっ、うん」
書記である由比ヶ浜は早速、持って来たノートを開き、ペンを手にする。
「えぇー、それじゃあ早速ブレインストーミングからやって行こうか、議題はイベントのコンセプトと内容面のアイディア出しから始めようか?」
「俺達高校生の需要を考えると、やっぱり若いマインド的な部分でのイノベーションを起こして行くべきだと思う」
「そうなると当然俺達とコミュニティ側のウィンウィンな関係を前提条件として考えないといけないよね」
「戦略的思考でコストパフォーマンスを考える必要があるんじゃないかな?」
「みんなもっと大切な事があるんじゃ無いかな。ロジカルシンキングで論理的に考えるべきだよ。お客様目線でカスタマーサイドに立つと言うかさぁ」
「なら、アウトソーシングを視野に入れて‥‥」
「今のメソッドだとスキーム的に厳しいけどどうする?」
「一旦リスケする可能性もあるよね。もっとバッファをとってもいいんじゃ無いかな?」
会議が始まると海浜総合高校の生徒会メンバーはビジネス用語を使って会社で行われるような会議ごっこを始めた。
本人達はカッコイイと思っているのだろうが、玉縄に関しては用語と日本語で同じ事を二回繰り返して言っている。
彼らはバッファを取ると言っているが、正直こんな会議をやっていて本当にバッファなんて取れる訳がない。
雪ノ下はこの光景が文化祭での委員会と状況が似ているようにも見えた。
そして、
「ねぇ、貴方達は本当に会議を‥今回のイベントを成功させる気があるのかしら?」
雪ノ下は海浜総合高校の生徒会メンバーの行為に呆れ、彼らを見下すような目と冷たい声で訊ねる。
「どういう事かな?」
「ビジネス用語をただ並べ立てて中身の無い事を言うだけ‥そんな事でまともなイベントができるとは到底思え無いのだけれど?それに時間は限られているのよ、もっと効率よくできないのかしら?」
「なら、君は何をすれば良いと思うのかな?」
「ちゃんと代案はあるんだろうね?」
「そうね、やる事を決めて、後は私を中心にやるのが、一番効率がいいでしょうね」
「それでやる事の案は?」
「それをしっかりと話し合うのが今回の会議なのでしょう?そんな事も分からないのかしら?」
「ならまずは、君からその案を出してくれないかな?」
「それを今考えているところよ」
雪ノ下の案が無くただ一方的に相手を否定する態度に海浜の生徒会メンバー全員が総武高生徒会メンバーを睨む。
雪ノ下はこの場の支配権を一気に獲得しようと思ったのだが、いきなりその思惑は失敗した。
「まあまあ、まずはお互いに納得できる事を考えて、みんな仲良くやろうよ」
此処で発言したのが、みんな仲良くの葉山隼人。
この重い空気を払拭させようと何時ものように口癖である「みんな仲良く」を口にするが、
「そちらから喧嘩を売って来ていると思うのだけどね?」
「事実を言ったまでよ」
かえって場の空気を悪くさせた。
彼の主張は大抵いつも場を乱すだけで終わる。
みんな仲良く?そんな主義主張が通れば戦争は起きないし、犯罪だって起こらない。
彼の主義主張は所詮絵にかいたような理想論でしたかなかった。
「えっと、ね、ほら、楽しくやれたらいいなーって思うな」
場の空気の悪さを感じたのか、由比ヶ浜は恐る恐る発言する。
「それで楽しくやれるための企画は?」
「えーっと‥‥あははは‥‥」
由比ヶ浜も雪ノ下同様、何か代案がある訳では無かった。
かつて由比ヶ浜は「自分は空気読むのだけが取り柄」だと言っていたが、実際は全然空気なんて読めておらず、葉山同様ただ場をかき乱すだけであった。
修学旅行のあの一件が良い事例である。
結局、その日の会議では何一つ案が浮かぶ事もなく、ただ総武と海浜の両校に溝を作っただけで終わった。
翌日の会議でも不毛なビジネス用語と水掛け論が飛び交うだけで何も決まらず、更にその翌日も同じ、次の日も同じ、そのまた次の日も同じ‥‥
これを繰り返し、会議は何も決まらずただ無駄に日にちと時間だけが過ぎていった。
「いい加減にして頂戴。これ以上吠えるなら‥‥」
「何を言うんだい。そもそも僕らのアピィニャァンをイグノォーしたのは君らの方じゃないか」
「折角互いにコンパレイトしながらアクティヴしていくつもりだったのに‥‥」
「ってか、そっちだって全然意見出してないじゃん。全然ウケねーし」
なかなか進まない会議に雪ノ下は苛立ち焦っていた。
カタカナ語で喋りながら愚にもつかない意見を出し、それをブレインストーミングと呼んでさも頑張っているかのように錯覚している海浜の生徒会メンバー。
恐らく彼らはりあえず会議らしいことをやって、自分たちの意見を述べ合って、何かを成し遂げるのではなく、何かをやっているだけで満足してしまっているのだろう。
簡単に言えば、彼らは生徒会役員となった自分達の姿に酔っているだけなのだ。
そんな愚かな連中を論破し、捻じ伏せれば、あとは自分が優れた企画を立案しイベントを捌いていけばいい‥雪ノ下はそう思っていた。
そう、文化祭の時と同じように‥‥
だが、それは誤りだった。
確かに海浜の生徒会は無能で、阿呆だった。
しかしそれでも、腐っても生徒会メンバー‥‥一校の生徒の代表者達。
彼らには彼らなりのプライドがある。
雪ノ下の上から目線で罵倒され、否定され、意見を退けられたにも関わらず、その雪ノ下本人からは代案さえ出さない。
海浜生徒会メンバーは雪ノ下雪乃に徹底的に歯向かった。
会議は半ばサボタージュと言っていい程の様相となる。
それはまさにあの文化祭の実行委員会の時と同じ惨状であった。
そして雪ノ下がやっと思いついた代案をビジネス用語で否定したり、余計なアレンジを加えてたり、退けようとしても、正論を振り下ろしても、彼らは喚き騒ぎたてるだけで、全く耳を貸さない。
葉山はこんな状況でも『みんな仲良く』主義を変えずに、雪ノ下の意見も海浜の意見も含めて仲良くしようと間を取り持とうとする。
由比ヶ浜は話しの内容もよく分かっていないようで、ずっとアワアワと慌てたり混乱したりしていた。
「おい、一体どうなっているんだ?これは‥‥?」
此処にいたり、生徒会顧問である平塚先生はイベントの企画が全く進んでいない事に気づき、会議の場へとやって来た。
雪ノ下や葉山ならば大丈夫だろうと、高を括って全てを放任していたツケが此処でまわってきた。
雪ノ下達から準備が進んでいないから何とかしてくれと言われても、現場を把握していない以上無理だった。
しかし、現状を見ると事態は最悪だった。
雪ノ下としては教師を頼る事は極力避けたかったが、もうどうしようもない所まできてしまっていた。
クリスマスイベントまでもう一週間をきっているのに、企画が何一つ決まっていない。
企画が決まっていないと言う事は準備も出来ていない。
時間がない中で当初、平塚先生は八幡にこのクリスマスイベントの手伝いをさせようとしていた。
雪ノ下や由比ヶ浜、葉山にとっては正直に言って彼に頼るのは御免であったが、このままでは企画自体が破綻するかもしれない。
そうなれば、当然責任の問題も生じる。
ならば、生徒会ではない部外者である八幡が参加し、彼がこの場を乱し、企画が破綻したと言うストーリーを作れば、悪意は全て八幡一人へと向き、自分達は失敗という責任から逃れると思い、渋々彼のクリスマスイベントの参加を了承した。
しかし、その八幡は既にこの世にはいない。
それを未だに知らない雪ノ下達は彼と連絡が取れない事にさらに焦りといら立ちを覚える。
「くそっ、アイツ学校もサボり、携帯にも出ん!!どこで何をしているんだ!?」
「とことん使えないクズね」
「それなら、小町ちゃんに手伝ってもらうのはどうかな?小町ちゃんならきっとヒッキーなんかより役に立つよ」
と、由比ヶ浜が当初の予定とは異なるが、彼の妹である比企谷小町に応援を頼んだ。
彼の妹であるが、彼とは出来が違う。
ならば、きっとこの難局を乗り越える手段も思いつくかもしれない。
それが雪ノ下達の思いであった。
しかし、
「すいません。小町にはどうしようも‥‥」
小町の参加でも事態の好転にはならなかった。
そもそも小町は無関係な中学生であり、またイベントのことなど今日に至るまで何も知らなかった。
「小町君、比企谷と連絡は取れないのか?!」
「あっ、はい。家にも携帯にも電話したんですけど‥‥あのごみいちゃんは‥‥」
「ヒッキー、最近学校にも来ていないの。どこで何をしているのか知らない?」
「すみません、修学旅行以降、兄とは口もきいていないので‥‥」
家族である小町ですら兄である八幡の自殺を知らなかった。
学校側は、八幡はずる休みをして家に引きこもっていると思っており、反対に小町達比企谷家側は学校に行っている、または学校をさぼってどこかほっつき歩いていると思っていた。
「そんなっ!?」
「大体何でこん状況になるまで黙っていたんだ!?急に泣きつかれたところでこれではどうしようも‥‥!」
等々教師である平塚先生までもが事態を投げる状況となる。
しかし、元々はこの企画は平塚先生が生徒会の説明も同意もなく個人で勝手に受け入れてきた企画であり、彼女に文句を言う資格はなかった。
そして等々クリスマスイベントは何も決まらず、準備も出来ず最悪の形で中止となった。
更に海浜総合高校の生徒会メンバーは今回のイベントの失敗は全て総武側にあると主張した。
これについては当然総武側も黙っている筈もなかったが、書記である由比ヶ浜が今回の会議の議事録を初日のほんの最初の部分しか書いていなかった事が災いした。
反対に海浜総合高校側はちゃんと議事録をとってはいたのだが、その内容は海浜総合高校側に有利になるような内容に改ざんされていた。
しかし、総武側がいくら「これは改ざんされたものだ」と喚いても総武側は議事録も会議の内容を録音もしていなかった事で、海浜総合高校側の議事録が唯一の証拠となった。
かつて、自分達が比企谷八幡と言う高校生に責任を押し付けてきた様に今回のイベント失敗の責任を海浜総合高校側から押し付けられてしまう事になった総武高校生徒会だった。
クリスマスイベントの失敗は忽ち校内に広まった。
当初はあの雪ノ下さんが!?葉山君が!?と信じられなかったが、海浜総合高校の生徒会メンバーがネットの掲示板に今回の件を書いた事で信憑性が広まり、更に学校の王子様である葉山を奪った泥棒猫として、雪ノ下は総武に存在する葉山ファンの女子生徒達から面白おかしくある事ない事を噂される始末となった。
そんなある日、雪ノ下、葉山、由比ヶ浜の三人が放課後、生徒会の仕事を終えて帰路についていた。
あのイベントの失敗から期待の生徒会メンバーから一転して総武高校の恥とまで言われる三人。
下校する三人の間に会話もなく、空気は重い。
~雪ノ下side~
修学旅行ではあのクズのやり方が勝手な事をして最悪な形で終わった。
もうあんなクズは奉仕部の邪魔でしかない。
しかもあのクズは部室に顔を出さなければ未だに謝りもしない。
そんな中で舞い込んできた生徒会選挙の依頼。
嘗て姉さんもこの学校の生徒会長を務めていた。
私だってそれぐらいは出来る。
文化祭の実行委員だって事実上私が仕切っていようなものだ。
そう思い私は一色さんに代わって生徒会選挙に立候補した。
そして、当然の結果で私は生徒会長となった。
葉山君も由比ヶ浜さんも無事に生徒会入りを果たし、奉仕部であのクズと過ごしたイライラな日々を払拭できると思っていた。
そんな中、平塚先生が勝手に引き受けてきたクリスマスイベント。
海浜の無能達が会議でひたすらブレインストーミングとか言いながら会議ごっこをやりたがり話しが進まない。
葉山君は私の意見も海浜の意見も含めて仲良くしようと間を取り持とうとする。
由比ヶ浜さんは話しの内容もよく分かっていないようで、ずっとアワアワと慌てたり混乱したりしていた。
挙句の果て議事録を一切記録していなかった。
途中から平塚先生が来ていたが、何故か強く言ったりする事はしなかった。
助っ人にあのクズを頼ろうと言うが、正直いってそんなの御免だ。
あんなクズの手を借りなくても出来ると思っていた。
でも、現状は最悪‥‥企画が何一つ決まらず、準備も出来ず、ただ時間が無駄に過ぎていくだけ‥‥
こうなればクズはクズなりにクズの役割を果たしてもらおう。
今回のイベントの失敗を全てあのクズに押し付けようとしたのに、あのクズは学校にも来ず、電話にも出ない。
そしてあのクズの代わりに小町さんが助っ人に来たのだけれど、彼女も意見は一つも出さないでいた。
所詮はあのクズの妹‥妹も役に立たないクズだった。
そしてクリスマスイベントは失敗も失敗、大失敗。
最低の形である中止となってしまった。
結局やる事が一つもまとまらなかった為である。
しかもあの無能集団はイベントの失敗の責任を私達に押し付けてきた。
冗談じゃない!あのイベントの失敗の原因はどうみても私達ではない、あの無能集団の方だ。
しかし、由比ヶ浜さんが議事録をとっていなかった事と彼方が都合のいい内容に議事録を改ざんされていたことで証拠がなく、一方的に此方に責任があると判断されてしまった。
そして、イベントの失敗の噂は忽ち校内に知れ渡り、私達‥いや、私の生徒会の評判は過去最悪となった。
あのクズの嘘告白から私の人生は悪いことだらけだ。
今日も今日とて、クラスに行けばひそひそと私を中傷する陰口ばかり‥‥
葉山君を私に取られたと思い込んでいる哀れな負け犬どもが徒党を組んでいる。
これでは、小学校時代と同じだ。
私はこの学校の生徒会長なのに‥‥なんで私があんな負け犬共にバカにされないといけないの!?
放課後、生徒会の仕事をしてもやはり空気が重い。
こんな空気の中では仕事もはかどらない。
早々に仕事を終えて帰ることにした。
「ゆ、ゆきのん、あんまり気にする事ないよ」
「そうだよ。あのイベントの失敗はそもそも勝手に引き受けてきた平塚先生の責任だよ。雪乃ちゃんが気にする事は無いよ」
「‥‥」
由比ヶ浜さんと葉山君が慰めの言葉を言うが、今の私にはその言葉さえも自分自身が惨めに感じてくるので有難迷惑だ。
こうなったのも全部あのクズのせいだ。
絶対に私の前に跪かせて詫びを入れさせてやる。
ううん、それだけじゃ、気が収まらない。
姉さんに頼んで、実家の‥雪ノ下家の権力を使って徹底的に潰してやる。
私があのクズをどうしてやろうかと思っていると、私達の背後から轟音をたててトラックが突っ込んできた。