やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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30話

 

ヴィルヘルムスハーフェン校、ダートマス校、両校の親善試合にて、開幕直後の開幕射撃にてヴィルヘルムスハーフェン校のビスマルクがダートマス校のラッキーパンチを受け、いきなりの中破。

残るヒンデンブルク、シュペー、ヴュルテンベルクはビスマルクをダートマス校から守る為、注意を引きつけようとするが、ダートマス校はその誘いには乗らず、あくまでも手負いのビスマルクを仕留めようとした。

そこで、シュテルはビスマルクを守る為、ダートマス校との戦闘に入る事にした。

しかし、プリンス・オブ・ウェールズのみはビスマルクを確執に狙いを定め、ビスマルクへと迫って行く。

クローナは開戦直後に被弾するという醜態と自分が艦長を務めるビスマルクを傷物にされた事で怒り狂っていた。

そんな中で、ダートマス校の旗艦であるプリンス・オブ・ウェールズがビスマルクに対して一騎打ちを仕掛けてきた事にクローナはこれまでの屈辱を返す絶好の機会だと、先程の怒りから狂気の笑みを浮かべた。

 

「ビスマルク、主砲を旋回しています!!」

 

「目標はプリンス・オブ・ウェールズの様です!!」

 

「クローナの奴、艦の修理が終わったのか!?」

 

ミーナはビスマルクの主砲が迫りくるプリンス・オブ・ウェールズへと向けられた事でビスマルクの修理が終わったのかと思った。

 

「一番、二番、三番砲塔使用可能」

 

後部の三番主砲は比較的に被害が軽微だったので、直ぐに修復で来た様だ。

 

「砲弾装填完了しました!!行けます!!艦長!!」

 

ビスマルクのウィングにてビアンカが現在のビスマルクの状態をクローナへ報告する。

一方、ビスマルクへと迫るプリンス・オブ・ウェールズの艦橋でも、

 

「ブリジット様、こちらも準備完了です!!」

 

キャリーがプリンス・オブ・ウェールズの主砲がいつでも撃てる事を報告する。

 

「「よし」」

 

偶然にもビスマルクとプリンス・オブ・ウェールズ、二人の艦長の声が重なった。

 

「撃ち込め!!」

 

「全砲塔一斉射撃!!」

 

そして、主砲の発射命令も同じく重なり合い、両戦艦から砲弾が放たれた。

試合海域に雷鳴の様な轟音が鳴り響く。

 

「おお‥‥!すごいな!!超弩級戦艦同士の一騎打ちだ!!」

 

レンはビスマルクとプリンス・オブ・ウェールズの一騎打ちを見て、ウィングから身を乗り出してビスマルクとプリンス・オブ・ウェールズの戦いを見ている。

 

「ビスマルク応答しろ!!ビスマルク!!」

 

ミーナはプリンス・オブ・ウェールズとドンパチしているビスマルクへと通信を送る。

 

「なによ!?五月蝿いわね!!」

 

「わっ!?」

 

すると、受話器の向こう側からクローナの大声がミーナの耳を直撃する。

クローナの大声を受け、ミーナは思わず耳を抑える。

 

「クローナ、やれそうなのか?そっちは‥‥」

 

「ふん、当然よ。恥辱を受けた分、倍返しにしてやるんだから」

 

(こんな状況でもクローナはクローナだったか‥‥アイツはアハトアハトを食らっても死なないな‥‥)

 

ビスマルクを心配して連絡をしたミーナであったが、クローナの大声を聞いて大丈夫だろうと判断した。

プリンス・オブ・ウェールズの相手はビスマルクに任せ、残りの艦はフッド、レパルス、ロドニーの相手をしなければならなかった。

ただこの時、ブリジットはあるミスをしていた。

シュテルはそれを見逃さなかった。

 

(シンクレア艦長はあるミスを犯したな‥‥)

 

手負いのビスマルクを仕留めるのであれば、プリンス・オブ・ウェールズではなく、ロドニーを回すべきだった。

ロドニーは速力が遅い代わりに今回のダートマス校の艦隊の中では一番の攻撃力を有していた。

速力が早い巡洋戦艦と行動をさせるにはロドニーはあまりにも不向きだった。

折角、プリンス・オブ・ウェールズは28ノットも出せるのだから、その速力ならば十分に巡洋戦艦と行動が可能だった。

それならば、ビスマルクの相手をロドニーに、プリンス・オブ・ウェールズはフッドとレパルスと行動を共にするべきだった。

23ノットしか出せないロドニーがいるせいでフッドとレパルスはその俊敏性を殺す事になり、速力を落としている。

しかし、それはヴュルテンベルクを連れているドイツ側も同じなのだが、シュテルは勿論、その事も考慮していた。

 

「機関全速!!シュペー、ヴュルテンベルクにも伝達!!これより、丁字戦法を取る!!」

 

シュテルはシュペーとヴュルテンベルクと共にイギリス艦隊相手に丁字戦法を取る事にした。

丁字戦法は砲艦同士の海戦術の一つで、敵艦隊の進行方向をさえぎるような形で自軍の艦隊を配し、全火力を敵艦隊の先頭艦に集中できるようにして敵艦隊の各個撃破を図る戦術の事を言う。

代表的なのは日露戦争における最後の決戦である日本海海戦だろう。

そして、現在ドイツ側の艦船とイギリス側の艦船の位置はドイツ側がイギリス側に横腹を晒している状態で、丁字戦法を取れるような位置に居た。

イギリス側はロドニーが居り速力が劣る為、絶好のポジションだった。

 

「し、しかし、碇艦長、ヴュルテンベルクでは速力が‥‥」

 

レンがやはり、自艦の速力の問題を指摘する。

 

「いや、向こうも丁字戦法のことぐらいは知っている筈です。フッドは兎も角、後続のレパルスかロドニーは戦列を離れる筈です。ヴュルテンベルクはその離れた艦を狙って撃って下さい!!」

 

「なるほど」

 

レンはシュテルの説明を聞き、納得した。

 

「それにしてもシュテルン」

 

「ん?」

 

レンとの通信を終えた後、クリスがシュテルに話しかける。

 

「随分とやる気を見せるね。試合開始直後は全然やる気が無かったのに‥‥」

 

確かにシュテルは、試合開始直後は勝敗など、どうでもよく試合が早く終わってくれないかと思っていた。

だが、シュテルは今こうして指揮を執っている。

 

「‥‥まぁ、ビスマルクがあの状態じゃあね‥‥それにクロイツェル艦長やシュテーゲマン艦長に花を持たせたいって言う気持ちが出てね‥‥」

 

シュテルはクリスにやる気を見せた理由を話す。

ビスマルクが未だに無傷ならば指揮は全てクローナに任せていたが、ビスマルクが中破して、事実上指揮が執れず、イギリス側の狙いがビスマルクに次いで、ヒンデンブルクな事からクラスメイトを守る為、シュテルは艦長としてこうして真面目に試合へ取り組んでいる。

 

(まぁ、なんだかんだ言って真面目ですからね‥‥貴女は‥‥)

 

クリスはシュテルが何故、最初は面倒くさそうにしながらも真面目にやるべき事はやっている事には心のどこかで納得していた。

シュテルがまだ八幡だった頃、文実をやっていた時、彼は他の文実メンバーが次々とサボる中、最初から最後まで出席し、仕事をしていた。

クリスは勿論、その事を知っていた。

シュテルは口では面倒だと言いながらも根が真面目な性格だからこそ、今こうして真面目に試合に取り組んでいる。

 

「それに‥‥」

 

「それに?」

 

「‥‥クロイツェル艦長が三ヶ月分のデザート券を楽しみにしていたからな‥‥MVPが誰になるにせよ、まずはこの試合に勝たないといけなし‥‥」

 

「‥‥」

 

シュテルはテアが三ヶ月分のデザート券を欲しがっていたのを知っていたので、彼女の為にやる気を出していた部分もあった。

仮にシュテルがデザート券を手に入れてもキール校所属のシュテルでは使えないので、手に入れたらテアにプレゼントするつもりだった。

ただ、シュテルの口からテアの名前が出てきた時、クリスは少しムッとした顔をしていたが、シュテルはそれに気づかなかった。

射撃指揮所にいるユーリもきっと今のシュテルとクリスの会話を聞いていたら、頬を膨らませていた事だろう。

 

そして、作戦は実行された。

 

「敵艦接近!!」

 

「セカンド・ターゲットのヒンデンブルクは何としてでも仕留めマース!!一番砲塔二番砲塔、射撃用意ネ!!」

 

フッドの艦橋ではカレンが迫りくるヒンデンブルクを此処で仕留めるつもりでやる気満々だった。

また後続のレパルスでも、

 

「ようやく暴れるぜ‥‥全てをぶっ潰してやる!!」

 

レパルスの艦橋でも艦長のグレニアがギラギラとした目つきで眼前のドイツ艦隊を睨みつける。

 

「全砲門を右舷へ‥‥」

 

ヒンデンブルクの第一から第四砲塔、そして右舷側の副砲を旋回させる。

後続のシュペーも第一、第二主砲、右舷の副砲を旋回させる。

しかし、主砲を旋回させている間にフッド、レパルス、ロドニーが砲撃を開始する。

ターゲットは先頭を航行するヒンデンブルクへ集中する。

ヒンデンブルクの周りには水柱が立ち、右舷側に命中弾を受けるが、幸運にも致命傷にはならなかった。

しかし、致命傷ではないとはいえ、衝撃は凄まじかった。

地震のような振動がヒンデンブルクを襲う。

 

「きゃっ!!」

 

「うわっ!!」

 

「くっ‥‥落ち着け!!各部、被害報告!!」

 

シュテルの下に被害報告が次々と入り、メイリンがそれを記録していく。

しかし、航行と射撃に支障がなければ、応急修理は後回しにした。

ヒンデンブルクとシュペーは遂にイギリス側の針路を塞ぐと、ヒンデンブルクとシュペーはフッドへと砲撃を集中する。

 

「フッドは此処で仕留める!!砲撃開始!!ファイエル!!」

 

ヒンデンブルクの主砲、八門、副砲、六門、シュペーの主砲、六門、副砲、四門が一斉に火を噴きフッドへと迫る。

フッド、レパルス、ロドニーはそれぞれ正面の主砲しか撃てない。

だが、ヒンデンブルク、シュペーは右舷の副砲と後部の主砲も撃てる。

しかもヒンデンブルクとシュペーが三艦の行く手を遮っている。

これが丁字戦法の攻撃側の優位性である。

やがて、フッドに命中弾が出始める。

 

「Shit!でも、これでFinish!?な訳無いデショ!私は食らいついたら離さないワ!Fire!」

 

被弾しながらもフッドはジョンブル魂を発揮し、果敢にも攻撃するが、唯一の攻撃手段である第一、第二主砲を潰された。

その他にもヒンデンブルクとシュペーからの集中砲火を受け、艦橋周辺にも命中弾を多数受け、船体はボロボロになる。

流石の超巡洋戦艦と言えど、集中砲火を受けてはひとたまりもなかった。

しかも巡洋戦艦は元々速度がある分、防御力が低かった。

 

「くっ‥‥此処まで‥‥デスカ‥‥」

 

第一、第二主砲を潰され、命中弾を多数受けたフッドは戦線離脱となった。

 

「くそっ、フランクフルト野郎どもが、随分と舐めた真似をしやがって!!」

 

フッドがやられ、ドイツ艦隊の丁字戦法に対してイラつくグレニア。

そこへ、

 

「あの、グレニア艦長‥‥」

 

「なんだ!?」

 

イラついている中、副長のドロシーが恐る恐る声をかけると、グレニアは思わず声を荒げる。

 

「その‥‥ブリジットさんから通信です」

 

「ちっ、この忙しい中、なんだ?」

 

グレニアが受話器に耳を当ててみると、

 

「わ~ん!グレニアちゃ~ん!ヘルプミーだよ~ビスマルク強すぎ!毎分三射とか卑怯なんだよ~!予想よりも元気過ぎて困るんだけど!」

 

ブリジットはレパルスに救援を求めてきた。

フッドは既に戦線離脱しているので、ブリジットはレパルスに救援を求めてきたのだ。

 

「何してんだ!?テメェは!?」

 

ブリジットのぶりっ子な救援依頼に更にキレるグレニア。

 

「あははは、ただのジョークだよ。あっ、でもねぇ、グレニアちゃんには手を貸して欲しいな‥‥なーんて♪~」

 

「通信を変えろ!!おい、チェンバレンズ!!」

 

「「は、はいっ」」

 

グレニアはロドニーのチェンバレン姉妹に通信を入れる。

 

「とりあえず、この包囲網から脱出するぞ!!脱出後は大将の口を塞ぐ!!」

 

グレニアはヒンデンブルク、シュペー、ヴュルテンベルクの丁字戦法から脱出し、その後プリンス・オブ・ウェールズと合流し、三艦でビスマルクを片付ける作戦をとることにした。

 

「「ムリだヨ~」」

 

チェンバレン姉妹は声を揃えて言う。

 

「あぁぁ‥‥くそっ、イライラする。あのわざとらしい話し方を聞いていると我慢できねぇ!!」

 

「艦は大きいのにグレニア艦長は身長と同じく超短気ですね」

 

ドロシーは笑みを浮かべながらグレニアの身長に対してツッコミを入れる。

 

「‥‥ドロシー、テメェは試合が終わった後、艦長室な」

 

グレニアは試合が終わった後、ドロシーを折檻する事に決めた。

 

「フェイントをかけてこの包囲網から脱出するぞ!!ついてこい!!鈍足、姉妹がぁ!!」

 

グレニアはチェンバレン姉妹にもう一度、通信を入れ、何としてでもドイツ艦隊の丁字戦法から脱出を図ろうとした。

 

その頃、ビスマルクとプリンス・オブ・ウェールズの戦いは‥‥

 

「フン、イギリスの王子様も大したこともないわね。そろそろお終いにしてあげましょう」

 

満足に動けないながらもビスマルクはその速射性を活かして、プリンス・オブ・ウェールズと互角以上の戦いをしていた。

しかし‥‥

 

「ベロナ艦長!前部甲板に被弾!!」

 

「なにっ!?くっ、下僕共は何をしているの‥‥!」

 

「一番砲塔損傷!!砲撃不能!!」

 

「何ですって!?」

 

「均衡がブレイクしたわね。それじゃあ、このままフィニッシュよ」

 

やはり、最初のラッキーパンチ食らったことが大きな原因で、ビスマルクとプリンス・オブ・ウェールズの一騎打ちはギリギリの所でプリンス・オブ・ウェールズに軍配が上がった。

 

「二番砲塔も被弾!!」

 

「チィッ」

 

ビスマルクは等々全ての主砲を潰された。

その事実にクローナは舌打ちをして苦虫を嚙み潰したように顔を歪める。

 

「レン艦長、あれ‥‥」

 

ジルケがビスマルクを指さしながら声を上げる。

 

「うわっ‥‥」

 

ビスマルクの惨状を見てレンも思わず声をあげる。

 

「ひどいわね‥‥」

 

「‥‥」

 

「もう、勝敗はついている。あそこまでやる必要はない」

 

「っ‥‥」

 

シュペーの皆もビスマルクの惨状を見て、いつもは自分達をバカにしている筈のクローナ達が乗っている艦なのに、思わず同情してしまう程だ。

上部構造は全てボロボロ、ドック入りが必要なレベルだった。

 

「クローナ様、これ以上は無理です」

 

「もう砲も動きません‥‥降伏するしか‥‥」

 

普段は無口無表情のザスキアでさえ、感情を露わにしてクローナに降伏を勧めている。

ビアンカもクローナを退艦させるつもりなのか、彼女の腕を掴んでいる。

しかし、クローナは、

 

「離せ!!」

 

ビアンカを振りほどく。

 

「クローナ様!!」

 

「あなた達は退艦しなさい」

 

「えっ?」

 

「私は絶対に降伏などしない!!私は誇り高きビスマルクの艦長なのよ!!」

 

例えテアから譲られた艦長の座とは言え、クローナはビスマルクの艦長としての誇りは持っていた。

 

「「‥‥」」

 

クローナの決意を取り巻き二人は唖然とした表情で聞いていたが、

 

「‥‥それなら、私達だって」

 

「お供します」

 

と、二人もクローナと共にいると言った。

 

「あらあら、降参しないんだ…それなら、キャビアちゃん、第二主砲をビスマルクの艦橋に向けて」

 

「えっ!?しかし、ブリジット様、それは‥‥」

 

ブリジットの命令にキャリーは思わず目を見開く。

ビスマルクは既に航行不能、戦闘不能な状態である。

にもかかわらずブリジットはまだ攻撃を仕掛けると言う。

しかも艦橋目掛けて‥‥

これは親善試合であって戦争ではない。

戦争ならば、ブリジットの行為は、問題はない。

敵からの脅威を排除する為、敵艦は沈めなければならない。

だが、これは戦争ではなく親善試合‥‥戦艦を使用しているが、スポーツなのだ。

万が一、模擬弾頭とは言え、艦橋に砲弾を撃ち込んで死亡者でも出せば、かなりの問題となる。

相手は他校の‥‥しかも他国の生徒だ。

親善試合中とは言え、殺してしまえば退学だけでは済まない。

イギリス、ドイツ、どちらかの国の法律で殺人罪として処罰される可能性が十分にある。

それが例え、イギリスの名門貴族であっても中世の時代ならいざ知れず、21世紀の現在では貴族だからという理由で犯罪を犯して無罪放免になるほど、甘くはない。

キャリーとしては‥‥シンクレア家に使える者として主にそのような不名誉な事をさせるわけにはいかなかった。

ブリジットだって当然その事を理解している筈だ。

だが、ブリジットは、

 

「艦長命令よ」

 

その一言と眼光でキャリーを黙らせた。

やがて、プリンス・オブ・ウェールズの連装の第二主砲の砲口がビスマルクの艦橋に向けられる。

それは試合を観戦していた教官らにも確認出来ていた。

 

「っ!?これは‥‥あきらかに危険行為です!!直ぐに注意を!!」

 

マイヤーがプリンス・オブ・ウェールズに注意をしようとした時、

 

「待て、マイヤー君」

 

ケルシュティンがマイヤーに『待った』をかけた。

 

「学長!」

 

マイヤーとしても何故、ケルシュティンが止めるのか理解出来なかった。

 

「逃げろ!!クローナ!!」

 

聞こえる筈もないが、ミーナはウィングからビスマルクのクローナに大声で其処から逃げるように叫ぶ。

 

「撃て!!」

 

そして、プリンス・オブ・ウェールズの第二主砲が放たれる。

だが‥‥

 

「く、空砲?」

 

「‥‥」

 

プリンス・オブ・ウェールズの第二主砲から放たれたのは空砲だったので、ビスマルクの艦橋が吹き飛ぶことは無かった。

 

「一人だけ折れなかったけど、まぁ、いいか‥‥」

 

流石にブリジット本人も戦えない相手に対して至近距離から砲撃を行い、万が一死亡者を出した時のリスクぐらいはちゃんと理解していた。

 

「えっ?」

 

ブリジットがポツリと零した言葉にキャリーはポカンとする。

 

「ビスマルクをみんながドン引きするほど、コテンパンにしたら、少しは彼方の戦意が落ちるのかと思ったんだけど‥‥さすが、ビスマルクの艦長さん」

 

ブリジットはクローナを始めとするビスマルクの乗員が空砲でビビる姿を期待したのだが、思惑は外れ、ビアンカとザスキアは尻餅をついていたが、クローナだけはしっかりとウィングに仁王立ちして、プリンス・オブ・ウェールズを睨みつけていた。

ただ、至近距離で空砲の風圧を受けたせいか、ヘアスタイルはボサボサとなっていたが‥‥

そして、ブリジットの思惑のもう一つとしてヴィルヘルムスハーフェン校のシンボルとも言えるビスマルクをあそこまでボロボロにして、ドイツ側の戦意を挫く狙いもあったのだが、ドイツ側にはまだヒンデンブルクが健在なので、精神的衝撃はそこまで大きくはなかった。

しかもダートマス校の中で一番厄介とされるフッドを既に戦線離脱にしている事にも精神的衝撃を和らげている要因があった。

これがもし、ヒンデンブルクがいなかった、もしくはヒンデンブルクも既に戦線離脱となっていたら、シュペー、ヴュルテンベルクの乗員に与える精神的衝撃は大きかっただろう。

ブリジットの思惑は悉く外れる結果となった。

とは言え、ビスマルクはこれで完全に戦闘続行は不可能となり、戦線離脱となったのは事実である。

 

「さあ、残りの後始末をするため、急いでグレニアちゃんとチェンバレンちゃん姉妹達と合流しよう」

 

ブリジットは艦長席から立ち上がり、味方との合流を目指した。

その時の彼女の顔は物凄く楽しそうで明るい笑みを浮かべていた。

 

これにより、艦数はドイツ、イギリス共に三対三と互角。

 

ビスマルク 戦線離脱

フッド 戦線離脱

ヒンデンブルク 小破

プリンス・オブ・ウェールズ 小破

シュペー 損害なし

ヴュルテンベルク 損害なし

レパルス 損害なし

ロドニー 損害なし

 

親善試合は戦争さながらの一進一退の攻防が繰り広げられていた。

 

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