やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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31話

 

 

ヴィルヘルムスハーフェン校、ダートマス校、両校の親善試合はまさに戦争さながらの状況となっていた。

ヴィルヘルムスハーフェン校が誇るビスマルクとダートマス校のエース、プリンス・オブ・ウェールズの勝負はダートマス校のプリンス・オブ・ウェールズに軍配が上がった。

しかし、プリンス・オブ・ウェールズがビスマルクの相手をしている間にダートマス校が誇るもう一隻の学生艦、巡洋戦艦フッドはヒンデンブルク、シュペー、ヴュルテンベルクの丁字戦法の前に被弾し、戦線を離脱した。

ビスマルクを片付けたプリンス・オブ・ウェールズは残るレパルス、ロドニーとの合流を図った。

 

「ビスマルク、戦線を離脱!」

 

「プリンス・オブ・ウェールズ、此方に向かってきます!!」

 

「今はプリンス・オブ・ウェールズよりも眼前のレパルスとロドニーを片付ける!!ただし、電探員」

 

「は、はい」

 

「プリンス・オブ・ウェールズの動向だけは注意しておけ」

 

「りょ、了解」

 

シュテルはプリンス・オブ・ウェールズの動向を注意しつつ今は眼前のレパルスとロドニーの相手に集中した。

 

「やっと、デカブツを片付けたか、ブリジットのヤロウ‥‥よし、あの忌々しいフランクフルト共を振り切るぞ!!後ろの鈍足姉妹にもちゃんとついてくるように伝えろ!!」

 

レパルスのグレニアはヒンデンブルク、シュペー、ヴュルテンベルクの丁字戦法の包囲網からの脱出を図った。

 

「取舵一杯!!」

 

「取舵一杯」

 

レパルス、ロドニーはヒンデンブルク、シュペーとの進行方向とは逆の方向にターンを始めた。

 

「レパルス、ロドニー、左舷へ方向を転舵!!」

 

「取舵一杯!!」

 

「取舵一杯」

 

このままレパルス、ロドニーを逃すとプリンス・オブ・ウェールズと合流されてしまう。

シュテルは直ちにレパルス、ロドニーへ追撃を決断し、ヒンデンブルク、シュペーはレパルス、ロドニーを追ってターンを開始、ヒンデンブルクの後ろからはシュペーも続く。

 

「おっ、くらいついたな」

 

ヒンデンブルク、シュペーの動きを見たグレニアはニヤリと口元を緩め、

 

「一気にフェイントで振り切る!!面舵一杯!!」

 

「面舵一杯」

 

すると、レパルス、ロドニーは再び逆にターンを開始した。

この時、ヒンデンブルク、シュペーは既に逆ターンを終え、レパルス、ロドニーを直ぐに追走する事が出来なかった。

 

「碇艦長の言う通りの展開になったな」

 

この時、ヴュルテンベルクは速力の差からまだターンを終えていなかった。

 

「よし、ヴュルテンベルクはヒンデンブルク、シュペーの後を追わず、このままレパルス、ロドニーを追走する!!」

 

レンはシュテルから出ていた指示通り、ヒンデンブルク、シュペーの後を追わず、そのまま直進し、レパルス、ロドニーを追いかけ、砲撃をしかける。

ヴュルテンベルクの行動はレパルス、ロドニーにとって予想外のモノだった。

 

「なっ!?なんでアイツは他の二隻を追いかけない!?」

 

ヴュルテンベルクの行動は艦隊戦で指令を無視した様な動きに見えたので、グレニア、チェンバレン姉妹の度肝を抜いた。

 

「このままレパルスを逃がすわけにはいかないからね、足を鈍らせるよ!!水雷長!!頼んだよ!!」

 

「了解」

 

ロドニーは兎も角、レパルスの足は速いので例えヴュルテンベルクが追走を仕掛けてもレパルスだけは逃げられてしまうかもしれない。

そこでレンはレパルスに魚雷を撃ち込んで足を鈍らせることにした。

ヴュルテンベルクは対艦攻撃用に60cm魚雷発射管を水面下に単装で艦首に一門、舷側に片舷二門ずつの計五門を装備していた。

 

「距離よし‥‥仰角よし‥‥発射準備完了!!」

 

「撃て!!」

 

ヴュルテンベルクの右舷に設置されている二門の模擬弾頭魚雷が放たれた。

すると、魚雷は見事レパルスに命中した。

突然激しい揺れがレパルスを襲う。

 

「うわっ!?」

 

「きゃぁ!!」

 

「な、なんだっ!?どうした!?」

 

「本艦に魚雷が命中しました!!」

 

「なにっ!?」

 

「魚雷の命中により本艦の速度が落ちています!!」

 

「くそっ、あのオンボロフランクフルトの野郎か!?」

 

グレニアは魚雷を放ったのがヴュルテンベルクの仕業だとすぐに分かり、

 

「こっちもお返しにあのオンボロフランクフルトに魚雷を撃ち込め!!」

 

と、同じく魚雷でヴュルテンベルクに報復することにした。

レパルスも53.3cm水中魚雷発射管二基を一番主砲塔手前に一門ずつ装備していた。

 

「魚雷発射準備完了!!」

 

「撃て!!」

 

そして、レパルスからも魚雷がヴュルテンベルクに向けられて放たれる。

 

「レパルス、魚雷を発射!!」

 

「っ!?」

 

レパルスの魚雷の内、一発がヴュルテンベルクに命中する。

 

「艦長、ヴュルテンベルクにレパルスの魚雷が当たりました!!」

 

「っ!?ヴュルテンベルクとの合流を急げ!!シュテーゲマン艦長、被害は!?」

 

「大丈夫だ。頑丈だけが取り柄だからな」

 

ヴュルテンベルクは魚雷を一発食らいながらも航行、戦闘に支障はなさそうだった。

その後もヴュルテンベルクは果敢にレパルスへ集中砲火を加える。

やがて、ヒンデンブルク、シュペーもレパルス、ロドニーを捕捉し攻撃を再開し、レパルス、ロドニーは次々と被弾する。

特にロドニーは主砲を前部に集中的に配置している艦影となっている為、後方からの砲撃には成す術もなく被弾した。

しかし、この戦闘でヴュルテンベルクも被弾し戦線を離脱する事になった。

だが、プリンス・オブ・ウェールズの合流前にレパルス、ロドニーを仕留める事が出来た。

 

「レパルス、ロドニー、共に被弾し戦線を離脱!!」

 

プリンス・オブ・ウェールズの艦橋では重苦しい空気が漂う。

ダートマス校の学生艦で残るのはプリンス・オブ・ウェールズただ一艦のみ‥‥

相手は小破しているとはいえヒンデンブルクと無傷のシュペー‥‥

此処に来て、ブリジットはビスマルクを相手にしていた事への愚策に気づいた。

ブリジットにとっての予想外はビスマルクの思いもよらない修理能力と反撃だった。

試合開始直後にビスマルクにラッキーパンチを食らわした時は幸先のいいスタートだと思っていたのにそれがいつの間にか逆転され、今では自分達がピンチとなっている。

試合開始直前にビスマルクへラッキーパンチを与えた事で自分の中に慢心が生まれていたのだろう。

それがこの結果である。

 

(今になってビスマルクの艦長の気持ちが何となく分かったわ‥‥)

 

ブリジットは追い詰められても最後まで降伏しなかったクローナの気持ちが分かった。

此処まで来たら、プリンス・オブ・ウェールズ一隻ではヒンデンブルク、シュペーの二隻を相手にするのではとても勝てる見込みが低い。

それでもブリジットはプリンス・オブ・ウェールズ艦長として、ダートマス校の主席としてむざむざ降伏してこの試合を終わらせるつもりはなかった。

どこまで相手にダメージを与える事が出来るだろうかわからない。

これが本物の戦争ならば、反転して撤退するのが当たり前かもしれないが、この試合は動ける海域に制限が設けられている親善試合であり、使用するのも模擬弾頭なので、撃沈される事もない。

ならば、引き際も盛大に華々しく散ることにした。

 

「ブリジット様‥‥」

 

「分かっているよ、キャビアちゃん‥‥でも、私としてもプリンス・オブ・ウェールズ艦長のメンツがあるからね‥‥」

 

「‥‥」

 

「この試合に負ける事になったのは全部私の責任‥‥ごめんね、みんな‥‥」

 

ブリジットは艦橋メンバーに深々と頭を下げる。

 

「そんな事はありません!!我々はあのビスマルクを仕留めたのですから、これは十分に誇れる事ですわ!!」

 

キャリーは今回の試合にはもう勝ち目はないが、成果ではあのビスマルクに初弾で命中弾を与え、一騎打ちで戦線離脱させたのだから十分に誇る成果であると言う。

その他の艦橋要員もキャリー通り、頷く。

 

「みんな‥‥ありがとう‥‥」

 

プリンス・オブ・ウェールズ乗員の意見は一致し、最後の負け戦へと挑んだ。

 

「プリンス・オブ・ウェールズ接近します!!」

 

例え一艦になっても降伏せずに戦いを挑んで来るプリンス・オブ・ウェールズにシュテルはブリジットの意地なのか、それとも誇りなのか、それともただの自棄なのか、彼女がどんな感情を抱いているのか分からなかったが、降伏せずに戦いを挑んで来るのであれば、それを迎え撃つだけであった。

 

「陣形を変更する。シュペーに通達」

 

シュテルは後続のシュペーに陣形の変更を通達する。

ヒンデンブルクとシュペーは単縦陣から距離をあけて並行する。

そしてその間にプリンス・オブ・ウェールズを挟む形となり、プリンス・オブ・ウェールズと並行戦となる。

プリンス・オブ・ウェールズは前部と後部の四連装主砲をヒンデンブルクへと向け、連装の第二主砲をシュペーに向け、応戦する。

しかし、この時プリンス・オブ・ウェールズはビスマルクとの戦闘で主砲の射撃装置に異常を起こしており、旋回は出来るが砲弾を放つことが出来ない状態だった。

ヒンデンブルクとシュペーの主砲と副砲、そして魚雷をプリンス・オブ・ウェールズへと放つ。

左右両舷からの集中砲火、そして水中からは魚雷を受けたプリンス・オブ・ウェールズはあっという間に航行不能となる。

 

「ブリジット様‥‥残念ですが、此処までの様です‥‥」

 

「そうですか‥‥皆さん‥‥此処までありがとう‥‥いい戦いでしたわ‥‥」

 

ブリジットは艦橋要員へ微笑み、そして此処までよく戦ったと礼を言った。

 

「プリンス・オブ・ウェールズ、行き足、止まりました!!」

 

「艦橋のウィングにて白旗を確認!!」

 

「撃ち方止め!!」

 

プリンス・オブ・ウェールズが機関を停止し、白旗を揚げた事で、シュテルはプリンス・オブ・ウェールズへの攻撃を止めるように命令を下す。

同じく、シュペーもプリンス・オブ・ウェールズへの攻撃を止めた。

 

『ダートマス校、全艦戦闘不能、試合終了!勝者、ヴィルヘルムスハーフェン校』

 

ダートマス校の学生艦全艦が戦闘不能となり、試合は終わった。

損傷した艦はヴィルヘルムスハーフェン校のタグボートが海上フロートのドックまで曳航した。

試合が終わり、参加した学生たちが海上フロートの校庭に集まった。

そして、この試合を観戦した教官達が考査し、試合のMVPが決まった。

MVPを受賞したのはシュテルだった。

 

「おめでとう」

 

「ありがとうございます」

 

エバンスがシュテルの胸に勲章をつける。

クローナは試合にはあまり貢献できず、他校の生徒に勲章を奪われた事が面白くないのかソッポを向いている。

 

「はぁ~残念、ビスマルクにやられすぎちゃったなぁ~」

 

ブリジットはやはり、敗因はビスマルクにかまけた事が原因だと口にする。

彼女はやはり、あの時ビスマルクの相手を速力で劣るも攻撃力が一番高いロドニーに任せておけばよかったのだ。

あの丁字戦法の時、ロドニーの速力がレパルスの足を引っ張る事になっていたのは間違いなかった。

それにビスマルクの相手をしていなければ、プリンス・オブ・ウェールズの砲塔が故障する事はなく、ヒンデンブルク相手に万全で戦えた筈だった。

 

「いや、我々の完敗だ」

 

テアは本来ならば勝っていたのは自分達、ヴィルヘルムスハーフェン校ではなく、ブリジット達、ダートマス校だったと言う。

 

「この試合にはキールのヒンデンブルクが援軍に来ていた。そしてその乗員は数カ月であるが、海に出た経験が我々よりも勝っている。それに使用されていたのは模擬弾頭‥‥もしこれが本当の戦いだったら負けていたのは我々の方だった‥‥」

 

「フフ、正直なんだね、テアちゃんは、貴女の事、好きかも」

 

「‥‥」

 

ブリジットから好きと言われ、ちょっとドキッとするテア。

しかし、好きの意味にも 「like」 と 「love」 の二つの意味がある。

ブリジットが言った『好き』はきっと「like」の方の好きだろう。

そう思いたいテアだった。

 

「それはそうとちょっと相談なんだけど‥‥あの人どうにかならないかな?ずっと睨まれていて‥‥」

 

ブリジットはテアにクローナを何とかしてくれと頼んだ。

それを証拠にブリジットの背後にはクローナが居り、ブリジットの事をジッと睨んでいた。

 

「それは自業自得です。ブリジット様」

 

「キャビアちゃん」

 

「ほら、絡まれない内に帰りますよ」

 

キャリーがブリジットの横から現れ、彼女を連れて行った。

 

「アッ、言い忘れる所でした。良い勝負をありがとうございました」

 

キャリーはテアに礼を言って今度こそ、ブリジットを連れて去って行った。

テアがブリジットとキャリーの後ろ姿を見ていると、

 

「テア・クロイツェル」

 

テアは背後から声をかけられた。

 

「少しいいですか?」

 

其処にはマイヤーが居た。

 

「あ、あんたはっ!?」

 

ミーナは思わずテアに失礼な事を言っていたマイヤーに対して、クローナと同じ態度をとってしまう。

 

「あんた?」

 

教官に対して失礼な口をきいた事にマイヤーはギロッとミーナの事を睨みつける。

 

「あっ、いや‥‥何の用事でしょうか‥‥?」

 

「昨日、言った事を訂正します」

 

マイヤーは昨夜、テアに行った発言を撤回した。

 

「勲章は惜しくも逃しましたが、艦を無傷で戦った見事な戦いでした。貴女はビスマルクに乗らずとも力を証明した。まだ甘い部分もありますが、貴女の実力‥認めざるを得ません。今後の貴女に期待します。そう言った点では私は間違っていました」

 

「‥‥」

 

マイヤーがテアに素直に謝った事に謝られたテア本人はポカンとした顔でマイヤーの事を見ている。

 

「なんです?」

 

「いえ、謝られたのが意外だったので‥‥」

 

しかし、

 

「訂正しただけで謝った訳ではありません」

 

「‥‥」

 

確かにマイヤーはテアに「すみません」 「ごめんなさい」 と謝罪の言葉は一切口にしていない。

 

「それとこれを‥‥」

 

そして、マイヤーはテアに小さな小包を手渡す。

テアは小包を受け取ると早速その小包を開ける。

すると小包の中には艦長帽が入っていた。

 

「艦長帽?」

 

「それは、貴女の母親からです」

 

「母から‥‥?」

 

「貴女が入学して艦長になったら渡す様に頼まれていました」

 

マイヤーは自分がテアの母親から艦長帽を託されたとテアとミーナに話す。

 

「はぁ!?入学って‥‥六年以上前からですか!?」

 

ミーナはテアの母親の行動に思わず声をあげる。

まず、テアが無事にこの学校に入れるのか、例えこの学校に入ったとしても学生艦の艦長になれるのか分からなかった。

そんな絶対の保証もないなか、テアの母親はテアの為に艦長帽を用意していた事になる。

 

「どうしてこれを先生が‥‥?」

 

テアは未だに状況がつかめていないのか、相変わらずポカンとした顔でマイヤーがテアの母親から託された艦長帽を持っているのかを訊ねる。

 

「‥‥真に遺憾ですが、学生時代、彼女の‥貴女の母親の艦の副長を務めていた経緯があるので‥‥」

 

マイヤーはイラついた様子で学生時代‥テアの母親が艦長を務めていた艦の副長を務めていた時代を思い出した様だ。

兎に角、その昔の伝手でマイヤーはテアの母親からテアに艦長帽を渡したのだ。

 

(遺憾って‥‥艦長のお母さん、一体この人に何をしたんだ?)

 

ミーナはテアの母親が学生時代、マイヤーに一体何をしたのか気になった。

何年も前の学生時代の事を未だに根に持っていると言う事はかなりの事をしたのだろう。

 

「あと、彼女から貴女に伝言があります」

 

「伝言?」

 

「『それを指定した場所まで返しに来い』というのか彼女の伝言です」

 

「はぁ?」

 

ミーナはテアの母親からの訳の分からない伝言に思わず素っ頓狂な声をあげる。

 

「それはどう言う事ですか?」

 

テアの母親の伝言の意味は分からず首を傾げる。

 

「さあ?」

 

伝言を頼まれたマイヤー自身もテアの母親の伝言の意味は分からない様子。

 

「やめたいなら、やめて良いと思いますよ。意味の無い事が好きな人でしたから」

 

「‥‥」

 

マイヤーはテアに彼女の母親の学生時代の事を踏まえて、母親の伝言をやるかやらないかを訊ねる。

 

「そうですね。それがいいかもしれませんね。ただ‥‥捨てるなら目の前で捨ててやります」

 

テアとしては、それは母親に対してのささやかな反抗でもあったのだろう。

 

「それで、母の言う場所とは?」

 

「来年の事になりますが、遠洋実習の地‥‥日本です」

 

「日本‥‥」

 

「来年の事ですし、シュペーが遠洋実習の艦に選ばれるかわかりませんが、日本へ行けるように頑張ってください」

 

「はい」

 

来年の事になるが、テアは日本で行われる遠洋実習で出会えるかもしれない母親に思いを抱いた。

 

 

戦いが終われば同じブルーマーメイドを志す学生達‥‥

その日の夜、海上フロートの講堂ではヴィルヘルムスハーフェン校とダートマス校との親睦会が開かれた。

講堂に用意された長テーブルの上にはイギリス、ドイツを代表する料理が所狭しと並べられている。

クローナ達ビスマルクの生徒達はやはり、試合の出来事とは言えダートマス校の生徒らの事が許せないのか、距離をとっていた。

テアは山盛りのザワークラウトとソーセージをミーナに食べさせてもらっていた。

レンは何故かブリジットに物凄く懐かれていた。

どこか通じるモノがあったのだろうか?

ユーリは用意された料理に舌鼓をうっている。

そしてシュテルは同じ日系の為かフッド艦長のカレンから物凄くアプローチを受けていた。

 

「イカリさん、今度の夏休みに是非、我が校に来てくだサーイ!!」

 

「えっ?」

 

「夏休み期間中にワタシたちの学校で体験入学がアリマース。そこへゲストとして来てくだサーイ!!」

 

カレンが艦長を務めるフッドを戦闘不能にしたにも関わらず彼女はシュテルをダートマス校へと招待する。

世界でもトップレベルのダートマス校へ行けると言う事はシュテル個人にしてもとっても大変興味深い事だった。

 

「でも、そう言うのって先生の推薦とか必要じゃないの?」

 

「私が先生に頼んでおきマース。それにシュテルは今日の試合で勲章を貰っていマース。それにその腰のサーベル、キールの主席の証だと聞きました。ブリジットと同じデース!!それなら問題ありまセーン」

 

カレンはシュテルが夏休みに行われる体験入学のゲストに教官へ推薦すると言う。

 

「じゃ、じゃあ、お願いします」

 

「了解デース」

 

シュテルはカレンと連絡先を交換した。

縁もたけなわになった頃、

 

「あれ?艦長?どこへ行ったのだろう‥‥?」

 

ミーナはいつの間にかテアが居ない事に気づいた。

 

ミーナがテアを探している中、シュテルは会場の人に少し酔い、講堂から出て夜風にあたっていると、

 

「碇艦長其処に居たのか…」

 

「ん?」

 

後ろから声をかけられた。

振り返ると、其処にはテアの姿があった。

 

「中に居なかったから探したぞ。なぜこんな所に?」

 

「クロイツェル艦長‥ちょっと人に酔ってしまいましてね‥‥それで、どうしたんですか?」

 

「貴女を探していた」

 

「私を?」

 

「ええ‥‥碇艦長」

 

「ん?」

 

「もうすぐ戻ってしまうのだな?」

 

「ええ‥交換留学の期間ももうすぐ終わるので‥‥」

 

シュテル達ヒンデンブルクが来てから数カ月‥‥ヴィルヘルムスハーフェン校とキール校の交換留学の期間も間もなく終わり、ヒンデンブルクはキール校へ戻らなければならない。

 

「そうか‥‥碇艦長」

 

「ん?」

 

するとテアはシュテルに向き合い真剣な顔で一言言った。

 

「我が校に転校してこないか?」

 

「えっ?」

 

テアの発言後にひゅ~っと夜の海風が海上フロートに吹きわたり、シュテルとテアの髪は僅かに靡いた。

 


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