やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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38話

夏休みに体験入学でイギリスのダートマス校へとやってきたシュテル。

そのダートマスの街では、連続殺人事件が起きていた。

そして、その被害は等々ダートマス校の生徒にも及んだ。

殺された生徒の所属する巡洋戦艦レパルスの艦長、グレニア・リオンはこの事件の犯人に強い恨みを抱き、警察に逮捕される前に犯人を見つけてボコボコにしてやると息巻いた。

その過程でシュテルはグレニアのお目付け役として彼女に協力することになった。

警察からの協力は得られなかったので、シュテルとグレニアは独自で犯人を捜すこととして、まず犯人のプロファイリングをした。

情報があまりない中でたてたシュテルのプロファイリングによる犯人像を聞いた後、しばしの間、シュテルはグレニアの下を離れた。

シュテルが離れているその間、グレニアは寮の敷地内を散策中、ダートマス校に出入りをしている業者のトラックを見て、何かに気づく。

だが、その時、グレニアは何者かの手によって拉致されてしまう。

グレニアが何者かの手によって拉致された後、シュテルはグレニアを探す中、寮の裏手にて、シュテルはグレニアが拉致された形跡を見つける。

そして、グレニア同様、シュテルも犯人像に対して何かに気づき、近くにいた食堂の職員に伝言を頼み、グレニアを探しに出た。

シュテルはグレニアが拉致されたと思われるダートマス校に出入りしている精肉業者の工場の中へと入る。

その工場の中にグレニアは居ると思っていた。

だが、拉致されたのはグレニア一人だけではなかった。

肉の加工室に別の女性が居た。

シュテルはその女性とグレニアと共にこの工場から逃げようと促すが、その女性はシュテルの隙をついて、シュテルを背後から襲い彼女を倒した。

助けに来たはずのシュテルを倒したその女性は不敵な笑みを浮かべながら、倒れたシュテルを見下ろしていた。

 

 

シュテルが肉屋の女性に倒された頃、ダートマス校の寮では、

 

「セラスさん‥‥セラス・ヴィクトリアさんはいらっしゃいますか?」

 

「は、はい。私がセラス・ヴィクトリアです。それで、何の御用ですか?」

 

「体験入学の生徒さんから、なんか、これを貴女に渡してくれって頼まれたんだけど‥‥」

 

食堂の職員がセラスを探し、シュテルから手渡されたメモを彼女に手渡す。

 

「あっ、どうも‥‥こ、これはっ!?」

 

手渡されたメモを見て、セラスは声をあげ、彼女は急いで、父に電話を入れた。

 

 

セラスが父に電話を入れている頃、

 

「うぅ‥‥いったぁ‥‥‥なっ!?」

 

肉屋の女性に殴られたシュテルは目を覚ました。

目を覚ましたシュテルは自分が椅子に座らせられ、体は縄で縛られているのに気づく。

当然、腰からぶら下げていたサーベルも取り上げられていた。

 

「あら?目が覚めたかしら?」

 

シュテルの目の前には包丁を研ぐ、肉屋の女性がいた。

 

「あ、あんた‥‥」

 

「ああ、自己紹介が遅れたね‥‥俺はこの店のオーナー、リチャード・ベックマンだ」

 

この店のオーナーは被っていたカツラを脱ぎ捨て、シュテルに自己紹介をする。

女性だと思っていたが、それはカツラと普通の男性よりも高い声だからこそ、女性に見えたのだ。

 

「あの時は、よくも俺の楽しみを邪魔してくれたねぇ~」

 

リチャードは喉を触ると、先程の高い声から、あの時‥‥ダートマス校の寮の門前で斬り合ったあの殺人鬼と同じ声になる。

この男、声帯をいじって声の高さを変えることが出来るみたいだ。

 

「まぁいい‥‥警察ですら、たどり着けなかったここまでたどり着いた礼にいいモノを見せてやるよ」

 

リチャードは吊るされた豚を押すと、ジャラジャラと鎖の音がしたと思ったら、奥から、

 

「ん~~~~!!」

 

肉を吊るすつっかえに両手を縛られた縄を括りつけられ、口には布で猿轡をされたグレニアが運ばれてきた。

ただ捕まっているのだが、グレニアは殺されるかもしれない恐怖よりもリチャードに殴りかからんとする勢いで暴れている。

 

「リオンさん!!」

 

「今から、あんたの目の前でこの娘を芸術的に解体して見せよう‥‥よく見ていてくれよぉ~その次はあんただ」

 

「な、なんで、そんなひどい事を‥‥?」

 

シュテルはリチャードになぜこのような残忍な事件を起こしたのかを訊ねる。

 

「『なんで?』‥だと‥‥?それはなぁ‥‥お前らみたいな人の皮をかぶったメス豚を見ているとイライラするんだよ!!特に脂がのった若いメス豚を見ているとなぁ!!」

 

今までヘラヘラ笑っていたリチャードが豹変し、殺気と怒気をシュテルにぶつけてくる。

 

「俺が最初に殺したのは、俺の母親だった‥‥」

 

「ま、まさか、自分の母親を手にかけたのか‥‥?」

 

「ああ‥‥俺の母親は、男を見ればあっちへほいほい、こっちにほいほいと他所の男に近づいては腰を振る淫乱な売女だった‥‥俺自身が、どこの男か分からない間に生まれた‥‥」

 

リチャードの脳裏には幼少の頃の思い出が浮かび上がり、シュテルとグレニアに語りだした。

 

 

リチャード、お前がいると商売の邪魔だよ!!

 

しばらく外に出ていな!!まったく気が利かないガキだね、あんたは!!

 

母さん、俺の本をどこへやったんだ?

 

ああ、あんなもん全部売っちまったよ。

 

っ!?

 

お前みたいなガキに教養なんて必要ないだろう?

 

ああ~お前が女だったら、稼げるのにねぇ~

 

男なんて邪魔なだけだねぇ~

 

あっ、でも、お前みたいな容姿じゃあ、どの道、女に生まれても客は寄り付かないわねぇ~

 

男は顔で来るからねぇ~

 

やれやれ、お前みたいなブ男、存在する価値なんてないのに‥‥どうしてお前の様なガキを産んじまったんだろう?

 

 

母親の愛情を知らず、毎日聞かされる罵倒‥‥

この人は自分のたった一人の家族だと言う血のつながりが、これまでリチャードの理性を働かせてきたが、この日とうとう怒りが理性の枷を解き放った。

彼は母親を殺し、その死体をバラバラに切り裂き、川へと捨てた。

 

リチャードは自分で母親を手にかけたがその後、警察に何食わぬ顔で捜索届けをだした。

警察も当時、小学生だったリチャードがまさか自分の母親を殺したなんて思ってもおらず、疑いの目を全く向けなかった。

自らの母親を手にかけた彼は遠縁の親戚‥‥このダートマスの街で精肉業者を営むこの家に引き取られた。

この街の学校でも彼はそのブ男な顔のせいで女子からはからかいの対象となり、男子からはそれが理由でいじめにあった。

もちろん、女子からも陰湿な嫌がらせも受けた。

自分がいじめにあうのは女子たちが自分の顔をからかうせいだと決めつけた。

その後、彼は整形し、顔を変えた。

そして、月日がたち、養父からこの店の経営を引き継いだ彼は、取引先の家の女性と結婚した。

だが、その結婚生活も長くは続かなかった。

自分が汗水ながして懸命に働いている中、女房は自分が働いた金を勝手に使って、ホストクラブへ通い詰めとなり、ホストに貢ぎ、挙句の果てにはそのホストと浮気した。

幼少期時代の母親から日々繰り返される罵倒、同級生の女子たちからの陰湿ないやがらせ、果ては自分の女房の裏切り‥‥

昔、母親を手にかけた時から自分の中に潜んでいた獣が再び目を覚ました。

母親に次ぎ、彼は次に自分の女房を手にかけた。

母親の時と同じく、体をバラバラに引き裂き、ゴミのように捨てる。

そこから彼の中の獣はとどまることを知らず、女性‥‥とくに若い女性を手にかけ始めた。

その理由はやはり、シュテルがプロファイリングした通り、若い女性を見ると、自分を学生時代に陰湿ないじめをした女生徒たち、自分を裏切った女房と重なって見えたのだ。

 

(前世の俺も一歩間違えればコイツと同じ様になっていたのかもしれないな‥‥)

 

リチャードの幼少期、学生時代の事を聞いて、前世の自分‥‥比企谷八幡だった頃、理性が勝っていなかったら、リチャードと同じことをしていたかもしれない。

かつて、雪ノ下陽乃が八幡の事を『理性の化け物』と称していた。

その強い理性があったからこそ、八幡はリチャードのような事件を引き起こすことはなかった。

前世の彼の周りの人間も酷い者ばかりだった。

 

 

厄介ごとを押し付けてくる者。

 

日々当たり前の様に罵倒してくる者。

 

何もできないのに他人の頼みを引き受けたにも関わらず、その頼みからも逃げて責任を押し付けてくる者。

 

平然と暴力を振る者。

 

八幡が自ら自己犠牲をしたにもかかわらず、労いの言葉一つかけず、逆に罵倒や拒絶の言葉を吐く者。

 

血の繋がった家族よりも知り合ってたった半年の知り合いの言葉の方を信用する妹。

 

八幡の自己犠牲により、自らの地位が守られたにもかかわらず、彼を助けず、そ知らぬ振りをする者、はては嫌がらせに加担する者も居た。

 

 

前世の八幡の生活はエリス(神)でさえ、同情してしまうほどだった。

リチャードと八幡はまさに紙一重の差、確立世界のもう一人の自分だったのかもしれない。

しかし、どんな理由があるにせよ、殺人事件を引き起こしていいとは言えない。

しかも殺された被害者たちの多くはこのリチャードとは面識もない無関係な者たちばかりだ。

 

「そ、そんな理由で殺人を‥‥」

 

「そんな理由だと!?俺はな、俺の様な不幸な人間が生まれないように、害獣駆除をしてやっただけだ!!むしろ、感謝してもらいたいぐらいだ!!」

 

「ふざけるな!!殺された人みんなが、お前の母親や女房のようになるとは言い切れないじゃないか!!それともお前には予知能力があるとでも言うのか!?お前のやったことはただの凶悪な殺人だ!!」

 

前世の雪ノ下の様にまるで自分が神様気取りの様な言動に怒りをぶつける。

 

「ふん、ほざけ、これから狩られる害獣風情が‥‥」

 

シュテルを縄で拘束し、グレニアも吊るしていることから自分が圧倒的有利な立場にいるためか、リチャードの顔には余裕の色がある。

 

「さあて、まずはそっちのうるさい方から解体させてもらおうか‥‥」

 

ギラリと光る包丁を手にリチャードはグレニアへと迫る。

だがその時、

 

ジリリリリ‥‥ジリリリリリ‥‥

 

奥の方から電話の呼び出し音がした。

 

「ちっ、まぁ、いい‥‥ほんの僅かだけ、寿命が延びただけだ‥‥せいぜい残り少ない時間を友達と過ごしておくんだな」

 

営業中、電話に出ないと怪しまれると思ったのか、リチャードは捨て台詞をはいて、電話に出るため奥へと向かった。

この隙をシュテルは無駄にするわけにはいかず、縛られている体を揺らして椅子ごと無理矢理移動する。

作業台の上には包丁が置いてあった。

シュテルは作業台を蹴り、包丁を床に落とすと自らも床に倒れこみ、包丁を使って縄をきり始める。

 

「いっ!?‥‥くっ‥‥このっ‥‥」

 

変な体制で縄切をしたせいで、包丁で指を切ったが、シュテルは止めることなく、縄切りをして何とか体を縛っていた縄を切った。

 

「ふぅ~今、助けるから」

 

体の拘束を解いたシュテルは次にグレニアを助けようとする。

すると、

 

「ん~~~~!!ん~~~~!!ん~~~~!!」

 

グレニアが叫んでいる。

 

「っ!?」

 

とっさにシュテルは横にずれると、

 

バキューン!!

 

加工室に一発の銃声が響く。

 

「くっ‥‥」

 

シュテルの左肩からは真っ赤な血が流れ出る。

 

(ちっ、油断した‥‥そういえば、あいつが単発式の拳銃を持っていたのをすっかり忘れていた‥‥)

 

「ダメじゃないかぁ~観客兼解体される獲物が動き回っちゃぁ~」

 

シュテルがグレニアを助ける前に電話を終えたリチャードが加工室に戻ってきてしまった。

彼の手には銃口から白い煙を吐き出す、彼の愛銃トンプソン・コンテンダーが握られていた。

 

「やっぱり、君から先に始末するべきだったなぁ~」

 

リチャードは弾切れとなったトンプソン・コンテンダーをポイっと捨て、これまでの多くの女性の血を吸ってきたコンバットナイフを振りかざしながら迫ってきた。

 

「ひっ‥‥」

 

シュテルは縄切りに使った包丁を手に持って逃げ出す。

リチャードの目標はシュテルのようなので、拘束されているグレニアが殺されることはないだろう。

そのシュテルは後ろから迫ってくるリチャードから逃げている。

加工室にある吊るされた豚を盾にリチャードから逃げていく。

セラスに渡すように頼んだメモにはこの精肉業者が怪しいと言う内容が書かれており、それと同時にセラスの父親にこの業者の下に来てもらうように書かれていた。

時間を稼げば、いずれセラスの父親が警官を連れてきてくれるはずだ。

しかし、セラスの父親たちが来るまでの間、シュテルには物凄く長い時間に感じた。

 

「ハァ‥‥ハァ‥‥ハァ‥‥」

 

吊るされた豚の陰に隠れ、セラスの父親たちが来るのを待つシュテル。

しかし、彼がこの加工室にいるのは間違いなく、どこから自分に襲い掛かってくるのか分からない。

言い知れぬ恐怖がシュテルを包み込む。

前世の自分なら命なんて半ばいらない‥‥死んでもいい‥‥そんな第三者視点だったので、そこまで恐怖は感じなかったかもしれないが、今の自分にはまだまだ死にたくないと言う思いが強かった。

前世と違い、自分の事を慕ってくれる人がいる。

まだその人たちと一緒にいろんなことをしたい、いろんなところへと行きたい、いろんな美味しいものを食べたい‥‥

そんな思いが浮かんでくる。

 

(くそっ、これが走馬灯ってやつなのか‥‥)

 

走馬灯とはちょっと違うが、様々な思いが脳裏を過ぎる。

 

「うひゃひゃひゃひゃひゃひゃ‥‥見ぃーつけた‥‥」

 

「っ!?」

 

リチャードはシュテルの後ろから襲い掛かってきた。

 

「くっ‥‥」

 

ガキーン!!

 

リチャードのナイフとシュテルの包丁がぶつかり合う。

 

「くっ‥このっ!!」

 

生き残るため、シュテルは必死に包丁を振るい、リチャードに立ち向かう。

しかし、恐怖で手が震え、また男女の差があり、力ではリチャードの方が上だ。

シュテルの腕や頬が切り付けられ、血が滲みだす。

 

「あひゃひゃひゃひゃひゃ‥‥」

 

リチャードは完全に勝った気でいるので、シュテルをじわじわといたぶる様に斬りつけてくる。

 

ガキーン!!

 

「くっ‥‥」

 

そしてリチャードはシュテルが手に持っていた包丁を弾き飛ばした。

 

「死ねぇ!!」

 

シュテルの防衛手段を弾き飛ばし、いよいよシュテルの身体にその凶刃を突き刺そうとした時、

 

バキューン!!

 

加工室に再び銃声が響く。

 

「ハァ‥‥ハァ‥‥ハァ‥‥ハァ‥‥」

 

「‥‥」

 

リチャードの凶刃はシュテルの身体に深々と刺さっている‥‥様に見えた‥‥

 

カラーン‥‥

 

銃声と共に加工室に金属音が響く。

それはリチャードのナイフが銃弾によって折れ、折れた刃の部分が床に落ちたのだ。

 

「動くな!!」

 

加工室には銃を構えたセラスの父親の姿があった。

リチャードのナイフを銃で砕いたのはセラスの父親だった。

そして、加工室には他の刑事や制服警官たちが入ってきた。

銃もナイフも失ったリチャードに銃で武装する多数の警官に勝てる筈もなく、彼はあっさりと捕まった。

警官の手により、拘束から放たれ、救助されたグレニアはシュテルに駆け寄る。

 

「おい、大丈夫か!?」

 

「ハァ‥‥ハァ‥‥怖かった‥‥」

 

本当に怖かったのだろう。

シュテルはその場に膝をつき、ガタガタと震えている。

 

「で、でも‥‥」

 

「ん?でも?」

 

「‥‥貴女が無事でよかった‥‥」

 

「‥‥」

 

涙目になり、無理にでも恐怖を引っ込めて笑みを浮かべ、グレニアの無事を喜ぶシュテル。

そんなシュテルをギュッと抱きしめるグレニア。

 

「ちょっ、制服に血がついちゃう‥‥」

 

シュテルは自分の血でグレニアの制服が汚れると言うが、

 

「あたしを守るために流したあんたの血だ‥‥かまわないさ‥‥」

 

「‥‥」

 

「あたしも‥‥あんたが無事でよかった‥‥もう、あいつみたいな犠牲者をだしたくなかったからな‥‥」

 

「‥‥」

 

シュテルも無言のままグレニアを抱きしめた。

 

それからシュテルとグレニアは救急車で病院へと搬送され、リチャードはパトカーで警察署へと連行された。

その後、警察の捜査で、彼の自宅の床下からこれまでの犠牲者の体の一部と思われる人の体の部位が見つかり、事情聴取でもリチャードは犯行を自供したことから、ダートマスの街を恐怖に陥れた連続殺人事件はこうして解決した。

 

病院で治療を受けたシュテルとグレニアは警察とダートマス校の教官らから事情聴取を受けることになった。

しかし、事前にシュテルはグレニアと打ち合わせをしており、夜ダートマスの街中に出て犯人を捜していたことは内密にして、グレニアは寮に居た時、リチャードに拉致されたことにした。

寮に居た時に拉致されたことにしておけば、グレニアは規則を破ったことにはならない。

実際にリチャードはダートマス校に出入りしていた業者だったから、その辺は怪しまれなかった。

 

「でも、それじゃあ、あんたが‥‥」

 

グレニアはシュテルが規則を破って寮を抜け出し、現場に居たことになるのではないかと危惧する。

 

「大丈夫だよ‥‥私は元々、ダートマス校の生徒じゃないから‥‥」

 

シュテルはダートマス校の生徒ではないから、そこまで厳しい処分は課せられないと言う。

しかし、グレニアは警察と教官らの事情聴取にて、

 

「あの時、碇さんが来てくれなければ、あたしは死んでいました。碇さんはあたしの命の恩人です」

 

と、シュテルを弁護した。

確かにグレニアの言うとおり、あの場にシュテルが居たからこそ、リチャードの相手をして、警察の到着までの時間を稼いだことがグレニアの命を救った結果となった。

グレニアの弁護でシュテルにも特に処分はなく、注意を受けるだけで済んだ。

後日、グレニアとシュテルは犯人逮捕の功績から表彰されることになった。

 

 

シュテルがダートマス校で体験入学そして、街を騒がせている殺人鬼を追っている頃、遠く極東の地、日本では‥‥

 

 

横浜の海を一隻の大型クルーズ客船が航行していた。

ドレスやタキシード、高級スーツに身を包んだ男女が船内で行われているパーティーを楽しんでいる。

その中に、ドレスで着飾った雪ノ下と高級スーツに身を包む葉山の姿があった。

 

(はぁ~こういう所は苦手なのよね‥‥)

 

雪ノ下は不機嫌そうに周囲を見渡す。

前世でもこういった会場にはあまり顔を出さなかった雪ノ下。

基本的にこういう席には姉の陽乃が両親と共に顔を出していた。

しかし、この後世ではその陽乃が存在しないので、雪ノ下も両親に連れられて嫌々ながらも出ている。

そして、雪ノ下家の顧問弁護士である葉山家もこうした席に同行し、葉山家の一人息子である葉山もついてきたのだ。

今日のパーティーの主役は、神奈川、東京を中心とする大企業、西住グループが主催のパーティーだった。

この西住家と雪ノ下家は本家と分家の関係で、雪ノ下の母親が西住家に連なる家系出身だったのだ。

そして、この西住家には雪ノ下と同い年の少女が居た。

 

「みほさん、横須賀女子での高校生活はどうですかな?もう、慣れましたかな?」

 

「お友達はできましたか?」

 

「高校ではどの艦に乗艦されているのですか?」

 

周囲の大人たちは、西住家に取り入ろうと、西住家の娘‥西住みほに声をかける。

雪ノ下はそんな大人たちの姿を見て、滑稽だと鼻で笑う。

そんな中、話題は雪ノ下にも飛び火する。

 

「そういえば、雪ノ下さんの家の娘さんも海洋系の高校に行ったんですよね?」

 

「え?ええ‥‥」

 

「雪ノ下さんの家のご息女であるならば、さぞや優秀な成績なのでしょうね」

 

「当然です」

 

雪ノ下は自分の事なので、両親に変わって滑稽な大人たちにむかって宣言をする。

 

「では、余興の一つとして、みほさんと雪乃さん、シミュレーションで勝負してみては?」

 

雪ノ下としてはそんなくだらない事で注目を浴びるつもりはなく、断ろうとしたら、

 

「いやいや、いくら雪ノ下さんのご息女でも、みほさんにはかないますまい」

 

「ですな、彼女は横須賀女子の生徒で、雪乃さんは海洋系とはいえ、予備校のような高校ですからな」

 

勝負をする前から既に勝敗が点いているかのように言う大人たちの言葉を聞いて、プライドだけは無駄に高い雪ノ下は勝負を受けることにした。

 

 

「よ、よろしくお願いします」

 

西住みほは、雪ノ下から見たら、なよなよした頼りなさそうな感じの少女だった。

こんな奴に自分が負けるわけがないと思い、彼女と勝負する雪ノ下。

対戦は大モニターに観客には、みほ、雪ノ下の動きが見えるが、互いに互いの動きは見えない。

シミュレーションは大中小の艦艇で相手の艦船を全滅させるか、先に相手の根拠地を占拠し他方が勝ちとなる。

雪ノ下は小型・中型艦艇をまるで使い捨ての駒の様に動かし、逆にみほは、相手を自分のテリトリーに誘い込むような戦術と共に徐々に相手の戦力を潰していき、雪ノ下の戦力はほぼ壊滅し、勝負はみほの大完勝といえる結果で終わった。

 

「さすが、西住さんのお嬢さんだ」

 

「まぁ、雪ノ下さんも奮戦した方じゃないですか?」

 

「ですが、これが本家と分家の出来の違いですな」

 

と、雪ノ下はみほを引き立てるためのダシにされた。

プライドが高い雪ノ下とすれば、それが許せなかった。

雪ノ下はそれから三度、みほに挑むも全て惨敗した。

二度敗北した際、彼女は恥の上塗りをしたどころか、みほに対して、

 

「貴女!!イカサマかズルをしたんでしょう!?」

 

「えっ?えぇぇぇ‥‥」

 

「そっちのモニターには私の動きが見えているんじゃないの!?」

 

「そ、そんなことはありませよ‥‥」

 

と、席を変えて勝負したがそれでも雪ノ下はみほに負けた。

周囲の大人たちは、

 

「往生際の悪い‥‥」

 

「滑稽だ‥‥」

 

「まったくお笑いだ」

 

と、自分が滑稽だと評した大人たちから滑稽だと言われる羽目になった。

 




今回はガルパンから軍神こと、みぽりんがゲスト出演。

しかも彼女は雪ノ下とは親戚関係という設定です。
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