やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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40話

 

ダートマスの街を恐怖のどん底に落とした連続殺人鬼が逮捕され、犠牲となったダートマス校の生徒の葬儀も終わり、ダートマス校で行われていた体験入学が再開され、これまで事件の影響で遅れていた日程を取り戻すかのように、連日猛勉強の日々が続いた。

そんな中、

 

「へーい、シュテルン!!一緒にランチへ行くデース!!」

 

「うん、いいよ」

 

カレンが昼食の誘いをして、シュテルはそれに応じて、カレンと共に食堂へと行く。

 

「‥‥」

 

そんなカレンとシュテルの様子をグレニアは複雑そうな顔で見ていた。

例の連続殺人事件でシュテルと共に犯人を捜し、そして、自分が犯人に捕まった時、助けに来てくれたシュテルとの仲が緊密になったグレニア。

自分以外の生徒と行動を共にし、笑みを浮かべている。

それがどうしても我慢ならないような思いが‥‥

モヤモヤとしたモノがグレニアの胸の中で渦巻いていた。

 

「どうかしたんですか?艦長」

 

そんなグレニアの様子に気づいたレパルス副長のドロシーが声をかける。

 

「ん?ドロシーか‥‥なんでもねぇ‥‥」

 

「そうですか?なんか、九条さんを殺すような勢いで睨んでいましたよ」

 

「‥‥もともとこんな目だ」

 

不機嫌そうにプイっとドロシーから目をそらす。

しかし、グレニアの胸の中のモヤモヤは消えることはなかった。

 

「い、碇‥‥」

 

翌日、グレニアがシュテルを昼食へと誘をうかと思ったら、

 

「シュテルーン、ランチに行きましょう!!」

 

カレンが再びシュテルを昼食誘う。

 

「‥‥」

 

カレンと共に食堂へと向かうシュテルの後姿をグレニアはまたもや何とも言えない表情で見ていた。

また、お風呂でも‥‥

 

「シュテルン!!背中、洗ってあげるデース!!」

 

「えっ!?い、いいよ、自分でできるから」

 

「固いことは言いっこなしデス、日本のことわざにも『裸の付き合い』って言葉がありマース!!」

 

「それ、ことわざじゃないからね」

 

「ついでに、私の背中も洗ってクダサーイ!!」

 

「話を聞こうよ‥‥」

 

(強引なところは由比ヶ浜とそっくりなんだが、カレンはあいつと違って、無責任な奴じゃないし、『キモーイ!!』とか言って罵倒しないから、まぁ、いいんだけど‥‥)

 

愚痴りながらも、シュテルはカレンに背中を洗ってもらい、シュテルもカレンの背中を洗う。

後世に女性として転生したばかりの頃は服や下着、トイレなど、戸惑うことがあった。

その極めつけがお風呂‥入浴行為だった。

体つきが徐々に女性らしく成長していく中、自分の身体はもとより、ユーリらと共にお風呂に入る時は気まずい思いをしてきた。

 

(声は由比ヶ浜と瓜二つだが、胸は小さいな‥‥でも、カレンの体‥きれいだな‥‥)

 

カレンの背中を洗っていると、彼女の肌は白く、髪は金色‥‥肌に浮かび上がる湯と汗がなんとも妖艶であり、綺麗な肌である。

 

(反対に俺は‥‥)

 

シュテルは自分の身体をチラッと見る。

自分の身体にはイタリアでマフィアによって撃たれた銃痕と今回の連続殺人犯の手によってついた銃痕がある。

 

(処女なのに、既に傷物になっている‥‥こんな体‥戸塚は受け入れてくれるだろうか‥‥?)

 

シュテルは既に日本にいる戸塚と恋仲になること前提で彼に思いを寄せているが、既にその戸塚は同級生の三浦と付き合っていることをシュテルは当然知らない。

一方、湯船の中から、シュテルとカレンの様子を見ていたグレニアは‥‥

 

「ブクブクブクブク‥‥」

 

湯船に顔を半分沈めて、二人の様子を見ていた。

 

(普段、ツンケンしている艦長もかわいいけど、こうして何かを悩んでいる艦長も可愛い~‥‥)

 

ドロシーは悩めるグレニアの姿を見て、ほんのりと頬を染めていた。

 

「はい、終わったよ」

 

グレニアがシュテルとカレンの様子を湯船から見ている間にも、シュテルはカレンの背中を洗い終わる。

 

「サンキューデース!!じゃあ、次は私の番デース!!」

 

カレンは次にシュテルの背中を洗うと言う。

彼女相手に抵抗しても無駄なので、シュテルはカレンに背中を向ける。

そして、カレンはスポンジにボディーソープをつけて、シュテルの背中を洗い始める。

 

「痒いところはないデスカ?」

 

「うん、大丈夫」

 

しばらくの間、カレンはシュテルの背中を洗っていたのだが‥‥

 

(シュテルンの肌、綺麗デース‥この傷痕も歴戦の勇者の証デース‥‥それにチラッと見ましたが、胸の私よりも大きいデース‥‥形もベリーグッドな形デース‥‥)

 

「ん?」

 

カレンはシュテルの背中を洗う手を止める。

シュテルは洗い終わったのかと思い、一瞬「なんだ?」と思いつつも気にせずにバスチェアーに座っている。

すると、カレンの手がスッと背中からシュテルの胸へと伸びる。

そして‥‥

 

「きゃっ!!」

 

カレンの両手がシュテルの胸を掴む。

 

「ちょっ、カレン!?」

 

シュテルは振り向いて、いきなり、自分の胸を掴んだカレンを見る。

 

「シュテルンの胸、私のよりも大きいデース。うらやましいデース」

 

そう言って、カレンはシュテルの乳房をまるで壊れ物を扱うかのようにゆっくりと揉みしだく。

 

「やっぱり、シュテルンの胸は形も大きさもベリーグッドネ!!」

 

「な、なにを言っているの‥‥?」

 

突然、胸をカレンに揉まれたシュテルは困惑気味。

そんな中、湯船から二人の様子を見ていたグレニアはと言うと、

 

「なっ!?あの金髪、アイツの胸を‥‥」

 

グレニアは目を見開いてカレンの行動に驚愕する。

その後もカレンは、

 

「よいではないか、よいではないか」

 

「ちょっ、カレン、くすぐったいって‥‥」

 

シュテルの背中に胸を押し当て、彼女の胸を揉み続ける。

 

「お、おい!!カレン!!お前!!何やっているんだ!?」

 

とうとう我慢できずにグレニアは湯船から潜水艦が浮上するが如く、ザパッーとあがり、カレンをビシッと指さし、声を上げる。

 

「何って‥‥『裸の付き合い』デス」

 

「そうじゃなくて、なんで、ソイツの胸を揉んでいるんだ!?」

 

「そこに胸があるからデス!!」

 

カレンはフンっと胸を張って、シュテルの胸を揉んでいた訳をグレニアに話す。

 

「グレニアもどうです?シュテルンの胸、揉んでみます?とっても柔らかくて、気持ちいいデスヨ」

 

「なっ!?」

 

カレンからシュテルの胸を揉んでみるかと言われ、顔を赤くするグレニア。

 

「ちょっ、カレン!?」

 

一方、胸を揉まれたシュテルは『何を言っているんだ!?』と言わんばかりに声をあげる。

そして、揉んでみるかと訊ねられたグレニアは、

 

「も、揉む‥‥あたしが‥‥ソイツの胸を‥‥」

 

グレニアは自分がシュテルの胸を揉むことを想像して、赤かった顔が更に茹でたカニのように赤くなる。

湯につかっていたことと、興奮したことで、急激にグレニアの体温が上がり、

 

「きゅぅ~‥‥」

 

ザパーン!!

 

目を回して、湯船に撃沈した。

 

「きゃー!!艦長!!」

 

「リオンさん!!」

 

「グレニア!!」

 

急に湯船へ沈んだグレニアに驚いて、ドロシーが声を上げ、シュテルとカレンが駆け寄った。

 

 

「ん?‥‥んん‥‥?」

 

グレニアが目を覚ますと、そこは共同浴場の脱衣所のベンチの上だった。

しかも‥‥

 

「あっ、目が覚めた?」

 

自分はシュテルに膝枕をされていた。

当初は、レパルスの副長であるドロシーに任せようかと思ったのだが、そのドロシー自身が、

 

「艦長をおねがいします」

 

と、シュテルにグレニアの事を託したのだ。

 

「っ!?」

 

状況を把握したグレニアはバッと起き上がる。

 

「あっ、急に起き上がると危ないよ。リオンさんはさっきまで、のぼせて倒れていたんだから」

 

急に起き上がったグレニアにシュテルは先程まで彼女がのぼせていたので、急に立ち上がるとまた倒れると注意するが、

 

「だ、大丈夫だ」

 

グレニアはそそくさと着替えると、浴場を後にするが、出入り口にて、

 

「あ、あのよ‥‥」

 

「ん?どうしたの?」

 

「その‥‥いつまでも『リオンさん』なんて、堅苦しい呼び方はしなくていい‥‥あたしのことは、グレニアって呼んでいいから‥‥」

 

「‥‥じゃあ、私の事もシュテルって呼んで」

 

「あ、ああ‥‥分かった‥‥しゅ、シュテル‥‥」

 

グレニアはシュテルの名前を呟くとそのまま浴室から出て寮の自分の部屋へと戻った。

 

「はぁ~‥‥な、なんで‥あたしは、あんなに‥‥」

 

グレニアは寮の自分の部屋のベッドに倒れると、ここ最近、胸の中で存在するモヤモヤとした思いや、カレンがシュテルを昼食に誘うのを見たり、先程、浴室でカレンがシュテルの背中を洗う行為、胸を揉む行為を見て、言い知れぬ苛立ちが自分の中に存在していた。

それにカレンからシュテルの胸を揉んでみるかと言われた時、一瞬、戸惑う自分が居た。

自分がシュテルの胸を揉んでいる姿を想像した自分が居た。

 

「はぁ~‥‥やっぱり、変だ‥‥」

 

自分の事なのに、明確な解答が得られない。

 

「‥‥アイツなら、答えを知っているかな‥‥?」

 

グレニアはおもむろにベッドわきのテーブルにある携帯に手を伸ばす。

そして、登録されているある番号に電話をかけた。

何度かの呼び出し音の後‥‥

 

「もしもし‥‥」

 

電話の向こう側から、同世代の女子の声が聞こえていた。

 

「あっ、マリアか‥‥?」

 

「グレニア?どうしたの?」

 

グレニアが電話をかけたのは、寮のルームメイトであるマリア・K・グレンヴィルだった。

中等部からの‥‥いや、正確には幼少期に出会い、中等部で再会してからの付き合いで、寮もずっと同じルームメイトである親友‥‥

今はアメリカの海洋学校へ交換留学のため、ダートマス校を不在にしている。

それでも二人はこうして定期的に電話をしているのだ。

 

「‥‥」

 

「どうしたの?グレニア?」

 

なかなか要件を喋らないグレニアにマリアは戸惑う。

 

「あ、あのさ‥‥その‥‥」

 

やっと話したと思ったら、グレニアにしてはどうも歯切れが悪い。

 

「あ、あたし‥‥最近なんか変なんだ‥‥」

 

「変?‥‥何かあったの?」

 

マリアはグレニアがダートマスで起きたあの事件に巻き込まれたことを知っていた。

グレニアが例の連続殺人事件に巻き込まれたと知った時、マリアは気が気でなく、この時ばかりは本当にダートマスへ帰ろうかと思ったぐらいだった。

故に、マリアはあの事件に巻き込まれたことでグレニアがPTSDを起こしたのかと思った。

もし、グレニアがPTSDを起こしたのであれば、今すぐにグレニアの下に駆けつけてあげたいところだが、今自分は大西洋を挟んだアメリカにいる。

飛行船で戻るとしても最短で数日はかかる。

それに今の自分は一艦の長である艦長‥‥他のクラスメイトを放っておいて、自分ひとり、ダートマスへと戻るのはあまりにも無責任だ。

その理由が私情を挟んでいるのであればなおさらだ。

しかし、グレニアはPTSDを発症したわけではなく‥‥

 

「その‥‥」

 

グレニアは自分が変だと思う理由を話した。

ダートマス校で、行われている体験入学にて、カレンが推薦してきたドイツ・キール校に所属するシュテルの事を‥‥

自分が、ドイツのヴィルヘルムス・ハーフェン校との親善試合に参加した時にも彼女と出会ったが、この時は特に気にすることもなかった。

しかし、彼女がダートマス校へ体験入学して、例の連続殺人事件を共に捜査して、犯人に捕まった自分を命がけで助けてくれた。

シュテルは自分のために傷つきながらも犯人と戦い、自分の事を助けてくれた。

そんな彼女に対して、自分は自然と目で追っていた。

彼女が他の同級生と楽しく過ごしていると、なんか胸の奥がモヤモヤするような、イライラする感覚が自分を襲う。

そして、今日、カレンがシュテルの胸を揉んでいる場面を見て、カレンを羨む自分が居た。

 

「‥‥って、事なんだが‥‥」

 

「‥‥」

 

グレニアの『自分が変だと思う』理由を聞いて、マリアは聞き手に回っていたのだが、グレニアが変だと思う理由については、すぐに分かった。

マリア自身、グレニアとの出会いが似ていたからだ。

マリアはシュテルやカレン同様、父がイギリス人、母が日本人の日系ハーフで、幼少期に自分が日本人とのハーフであることが理由で、地元の少年たちからいじめられた。

そこを助けたのがグレニアだった。

また、マリアがダートマス校へ編入直前に、街で不良に絡まれた時、自分を助けてくれたのもグレニアだった。

自分がグレニアの事が忘れなれなかったように、グレニアもシュテルの事を意識しているのだ。

しかも無意識のうちに‥‥

 

(なんか妬けちゃうな‥‥)

 

マリアはそのシュテルって言う子と面識はないが、こうしてグレニアからシュテルの事を聞かされて、ちょっと嫉妬する。

でも、親友であるグレニアがこうして自分を頼って相談してきたのだ。

ここは親友として、アドバイスをしてやらなければならない。

 

「それはね、グレニアがそのシュテルって言う子の事を‥その‥‥す、好き‥‥なんじゃないかな‥‥?」

 

「なっ!?」

 

マリアの言葉にグレニアは、絶句する。

 

「あ、あたしが‥しゅ、シュテルの事を‥‥」

 

電話の向こうからは、グレニアにしては珍しく、狼狽した声がした。

 

(やっぱり、自覚していなかったんだ‥‥グレニア、鈍感なところがあるからな‥‥)

 

(私だって、グレニアに助けてもらって、グレニアの事を意識していたんだもんね‥‥)

 

改めて、グレニアがシュテルに無意識のうちに好意を抱いていたことを確認したマリア。

 

「あ、あたしが‥‥」

 

「まぁ、グレニアがこうして、新しく交流を持ってくれたことは私にとっても嬉しい事だよ」

 

「うぅ~‥‥」

 

「これが、私が推理したグレニアが変だと思うこと‥‥グレニアの胸の中でモヤモヤしている正体だと思うよ」

 

「わ、分かった‥‥ありがとう‥‥」

 

「うん、頑張ってね。私も、もう少ししたら、ダートマスに戻るから、その時はまた、ブリジットさんやキャビアちゃんと一緒にどこかに行こうね」

 

「あ、ああ‥‥そうだな‥‥」

 

「それじゃあ、またね」

 

マリアとの電話を切り、自分の胸の中のモヤモヤの正体を自覚させられたグレニアは顔を俯かせる。

その顔色は先程のお風呂、同様赤かった‥‥

そんな中、

 

コン、コン、コン、

 

と、寮の部屋のドアをノックする音がした。

 

「ん?誰だ?」

 

グレニアは携帯を置き、応対のため、ドアを開けると、

 

「やあ、グレニア」

 

そこにはグラスの乗ったお盆を手に持ったシュテルが居た。

 

バタン!!

 

シュテルの姿を見たグレニアは反射的にドアを閉めた。

 

「ちょっ!!何で閉めるのさ!?」

 

ドアの向こう側では、シュテルが慌てた声で、何故ドアを閉めたのかを聞いてくる。

 

「わ、わりぃ‥‥ちょっと電話中だったんで‥‥」

 

グレニアは再びドアを開け、今度はシュテルを招き入れる。

そして、シュテルを出迎えた時には切っていたマリアとの電話でさっきはドアを閉めたと言う。

 

「えっ?そうだったの?なんか、ごめん」

 

シュテルは当然、グレニアが電話をいつ切ったかなんて分からなかったので、グレニアがドアを閉めた理由を知って謝る。

 

「いや、別に気にすることじゃない‥‥もう、終わる直前だったしな‥‥それで、なにか様か?」

 

「あっ、さっき、リオン‥‥いや、グレニアさんが、お風呂で、のぼせて倒れたから、コレ‥‥」

 

シュテルが手に持っていたお盆の上にはアイスレモンティーが入ったグラスがあった。

 

「どうぞ」

 

「あ、ありがと‥‥」

 

シュテルからアイスレモンティーが入ったグラスを受けとり、ストローに口をつけて、アイスティーを飲む。

シュテルも同様にアイスティーを飲む。

火照った体にアイスティーが流れ、体がジワッと冷めていく。

グレニアがチラッとシュテルを見ると、シュテルは上品な仕草で、アイスティーを飲んでいる。

やがて、二人ともアイスティーを飲み終えた。

 

「ご馳走様」

 

「グラスは私が食堂に返しておくよ」

 

「そ、そうか‥ありがとな」

 

空になったグラスをお盆に乗せ、グレニアの様子も元に戻ったようなので、シュテルは食堂にグラスを戻して、自分の部屋に戻ろうとした。

 

「あっ‥‥」

 

「ん?どうしたの?」

 

シュテルはグレニアが何かを言いたそうな様子に気づいて、声をかける。

 

「‥その‥‥しゅ、シュテル‥‥」

 

「ん?」

 

「‥あ、明日の昼飯、一緒に食べないか?」

 

グレニアはここ数日、誘いたがっていたシュテルを昼食に誘った。

ここは寮の自分の部屋なので、邪魔者は居ない。

 

「えっ?明日のお昼ご飯?」

 

「あ、ああ‥‥」

 

ドキドキしながら、グレニアはシュテルからの返答を待つ。

 

「うん、いいよ」

 

シュテルはあっさりと、グレニアからの誘いを承諾した。

 

「ほ、本当か!?」

 

「う、うん」

 

「ぜ、絶対だからな!!そ、それと、昼飯は二人っきりでだぞ!!」

 

「う、うん‥分かった‥‥」

 

グレニアのグイグイ押してくる姿勢にちょっと引きながらも、明日の昼食はグレニアと二人でとることにした。

 

「それじゃあ、また明日ね」

 

「あ、ああ‥‥」

 

シュテルは空のグラスが乗ったお盆を持ち、グレニアの部屋を後にしようとした時、

 

「しゅ、シュテル!!」

 

「ん?」

 

チュッ‥‥

 

「っ!?」

 

シュテルの頬にグレニアは口づけをした。

 

「ぐ、グレニアさん!?」

 

突然、頬とはいえ、グレニアからキスされたことに驚くシュテル。

 

「こ、ここ(イギリス)じゃあ、それぐらいは挨拶みたいなものだ‥‥」

 

挨拶みたいなものだと言うグレニアだが、彼女の顔は赤く、気まずそうにシュテルから顔を逸らしている。

 

(ま、まぁ‥‥確かに、これまでカレンにされて来たけど、まさか、グレニアさんからもされるなんて‥‥でも、なんで突然?)

 

これまでのダートマス校での生活で、シュテルはカレンから何度も頬にキスをされてきた。

これまで、例の連続殺人犯を捜している中、グレニアと行動を共にしてきたが、彼女からキスをされたのは今日が初めてだったので、驚いたのだ。

それと同時になぜ、今日に限ってグレニアがキスをしてきたのか?

その理由も分からなかったシュテルだった。

 

 

シュテルがグレニアからキスをされた時、ドイツでは‥‥

 

「「むっ!?」」

 

キュピーン!!×2

 

((シュテルンがまたどこかでフラグを立てた気がする‥‥!!))

 

と、ユーリとクリスがダートマスに居るシュテルがまた誰かとの間にフラグを立てたと第六感がそう告げていた。

 

シュテルが、部屋を出た後、グレニアはベッドへとダイブすると、

 

「フフフ‥‥」

 

枕に顔を埋めながらも、笑みを浮かべた。

ルームメイトがアメリカの海洋学校へ交換留学し、例の連続殺人事件で自分のクラスメイトが殺されてから、グレニアは笑みを浮かべる機会が減ったが、今日彼女は久しぶりに笑みを浮かべた。

それも、歓喜の笑みを‥‥

 

翌日の昼食、シュテルは約束通り、グレニアと二人で昼食を摂ったのだが、この時は、カレンが頬を膨らませてグレニアの事を睨んでいた。

前世で、人から好意を受けることなく、捻くれてしまったことから、この後世ではやや鈍感な性格となってしまったシュテルだった。

 

 

シュテルとグレニアが解決に導いたダートマスの連続殺人事件は、遠い日本の地でも報道されていた。

そして、その連続殺人犯逮捕の報道もされた。

日本にいる雪ノ下もその報道を見たのだが、彼女が反応したのは犯人が逮捕されたことではなく、世界でもトップクラスの実力を誇るダートマス校にて、他国の海洋学校の生徒を中心として行われていた体験入学についてだった。

世界トップクラスでのダートマス校で行われた体験入学になぜ、自分が呼ばれていないかだ。

自分はダートマス校の体験入学に参加するべき人材であり、その能力は十分にあると自負していた。

夏休みでも学校には教師がいる筈なので、雪ノ下は学校に連絡を取り、何故、ダートマス校で体験入学があることを教えてくれなかったのかと詰問する。

すると、学校からの返答は、

ダートマス校での体験入学は先方からの推薦がないと参加できないとのことだった。

その為、体験入学に参加しているのは主にアメリカやヨーロッパの海洋学校であり、日本では横須賀女子、佐世保女子、呉女子、舞鶴女子の海洋学校ぐらいで、その四校でさえ、毎年参加できるわけではないと言う。

日本が誇る四大海洋学校でさえ、なかなか参加できない体験入学‥‥

ダートマス校と一切コネがない総武高校が呼ばれるわけがない。

それに今年の体験入学はもう締め切っており、今からではとても途中参加なんて出来るわけがない。

雪ノ下は物凄く悔しがったが、来年の夏に行われるであろう体験入学には参加するつもりで、両親に今年中にイギリス‥ダートマス校の関係者とコネを作ってくれと頼んだ。

西住家ならば、もしかしたら可能だろうが、千葉県のみで絶大な権力を持つ雪ノ下家でも、日本全体、世界レベルだと井の中の蛙であるので、それは難しいと思う雪ノ下の両親であったが、大切な一人娘からの願いなので、出来るなら叶えてやりたかった。

雪ノ下の両親は西住家に頼み込む日々が続くこととなった。

 

(来年の夏休みはあの、鶴見さんの件があるけど、由比ヶ浜さんと葉山君とで十分に対処は出来る筈‥‥その間に私は世界トップレベルの学校で自分の実力を世界に知らしめるのよ!!これは、西住みほと宗谷真霜を潰すための大きな一歩になるわ!!)

 

前世における鶴見留美のいじめ問題はこの後世でも起こるだろうと予見した雪ノ下はその対処を由比ヶ浜と葉山に任せ、自分はダートマス校の体験入学に参加する気‥‥いや、既に参加することが彼女の中で決定事項となっていたのだった‥‥。

 




今回のゲストには、Audioさんの作品、『ダートマス海洋学校に入学した少女』の主人公である、マリア・K・グレンヴィルをゲスト出演させていただきました。

Audioさん、登場の許可ありがとうございました。
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