やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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今回もタイタニックの演劇回です。


45話

イギリスのダートマス校のイベントの一つ、演劇祭に参加したシュテル。

高等部一年生の演目は実際に起こったあの悲劇の豪華客船、タイタニック号の事故を用いた演目となった。

中等部からの演目から始まり、現在、シュテルたち高等部一年生の演目となった。

そして、場面はいよいよ運命の瞬間となる‥‥

1912年、4月14日、午後11時36分‥‥

タイタニックの前部マストに設置された見張り台では、見張り員の二人が寒さと戦いながら、見張りの仕事をしていた。

 

「水平線に靄が漂ってきたな‥‥」

 

「ああ‥‥」

 

「ん?おい、見ろ!!氷山だ!!」

 

見張り員は水平線の靄の向こう‥‥船の前方に氷山があるのを発見した。

 

カン!!カン!!カン!!

 

見張り員は見張り台に備え付けの鐘を三回鳴らす。

三回の警鐘は危険を示していた。

鐘を鳴らした後、急いでブリッジへと電話を入れる。

 

「もしもし、誰かいますか!?」

 

「ブリッジだ。どうした?何が見えた?」

 

当直勤務をしていた六等航海士のジェームズ・ポール・ムーディが見張り員からの電話に出て、何が見えたのかを訊ねる。

 

「真正面に‥氷山です!!二キロと離れていません!!」

 

「わかった‥正面に氷山です!!」

 

ムーディはこの時間帯の当直責任者である次席一等航海士(ファースト・オフィサー)のウィリアム・マクマスター・マードックに報告を入れる。

マードックは目を凝らし、前をにらむ。

すると、船の進行方向に海面から浮いている氷山を確認する。

 

「Hard Starboard!!」

 

マードックは舵を握っていたロバート・ヒッチェンズ操舵手に号令をかける。

この時のマードックが出した号令の『Hard Starboard』は面舵‥つまり右に舵をきる号令だが、この号令は帆船時代からの名残で「舵輪を左に回して“舵柄を右に動かし”左へ急速回頭する」の意味で使用されており、タイタニックでも採用されていた。

しかし蒸気船式の号令では、「舵輪を右に回して舵柄を左へ動かし“右へ急速回頭する”」を意味するためヒッチェンズ操舵手は輪を右に回してしまう。

操舵手のミスに気づいたマードックは急ぎ修正の命令を下す。

 

「‥‥全速後進!!!」

 

「全速後進!!」

 

そして、テレグラフで前進から後進へと切り替える。

ブリッジから突然のオーダーに機関室でも何かが起きたのだと判断し、機関士たちが慌ててエンジンを逆回転させる。

しかし、タイタニックはその巨体故にすぐには針路を変えられない。

タイタニックは右舷の船首部分を擦るかの様にぶつかった。

この1912年、4月14日、午後11時40分の出来事を生還した人々は様々な言葉で表現した。

 

無数のビー玉の上を歩いている感じ‥‥

 

マットレスの揺れ以外何も感じなかった。

 

など、いずれにしても大した衝撃ではなかったと言うのが大半を占めた。

傷はタイタニックの船首右舷の部分に十数箇所に渡った。

しかし、それは穴と呼べるものではなく、全ての傷の大きさを合わせても一平方メートルと言う小さなモノだった。

だが、タイタニックを深い海に沈めるにはこれで十分だった‥‥

 

「大変だ‥‥浸水を防ぐために防水ドアを閉める‥‥日誌に時間を記録」

 

「なにがあった?」

 

マードックは防水隔壁を閉め、浸水を防ごうとする。

そこへ、船長がブリッジへとあがり、状況をマードックに訊ねる。

 

「氷山です‥‥」

 

「‥‥」

 

「左舷に舵をきりましたが、間に合いませんでした‥‥横滑りをするかのようにぶつかりました」

 

「防水隔壁は?」

 

「既に閉じてあります」

 

マードックは自らの当然の判断で開閉式の防水隔壁を閉鎖していた。

そして、マードックはこの後、自らの運命もこの地で閉じた‥‥

 

「エンジン停止」

 

「エンジン停止」

 

タイタニックはエンジンを止めた。

この座標がタイタニック終焉の地となった。

 

タイタニックにはホワイト・スター・ライン社の社長、ブルース・イズメイの他にこのタイタニックを作った主任設計士のトーマス・アンドリューズも乗船していた。

異変を感じ、ブリッジへと顔を出したアンドリューズは船長から事情を訊ねた後、船内を回り、浸水の状況を確認しに行く。

船首の甲板では氷山の塊で遊ぶ乗客たちの姿もあり、とてもこの後、船が沈むとは思えない光景だった。

氷山の姿をまじまじと見たブリジットとキャリーはアンドリューズと航海士たちが浸水の状況を話しているのを聞いて、事態はもしかしたら、やばい状況なのかと思い、ブリジットの家族の下へと向かう。

しかし、そこで、ブリジットの婚約者の罠にかかり、キャリーは泥棒の濡れ衣を着せられ、身柄を拘束させてしまった。

その間、浸水の状況が判明し、ブリッジにて、アンドリューズと船長、航海士たちが被害状況の確認をしていた。

 

「船内を確認してきました‥‥浸水は第一、第二、第三、第四、第五‥‥そして、第六区画まで達していました‥‥この船が耐えられるのは三つか四つの防水区画まで‥‥しかし六つは‥‥既に限界は越えている筈です‥‥」

 

アンドリューズはタイタニックの設計図を使って、現状を説明する。

 

「排水ポンプを稼働させて‥‥」

 

「多少時間が稼げるだけで、無駄だ‥‥」

 

「それはどういう事だ?」

 

「もう、打つ手はない‥‥タイタニックは海に沈む‥‥」

 

アンドリューズの沈没宣言に皆は唖然とする。

 

「‥‥沈まない船なのにか?」

 

イズメイはタイタニックが沈むのが信じられなかった。

 

「鉄で出来ている以上、沈みます‥‥沈むのはもう確実です‥‥」

 

タイタニックには十六の水密区画があり、十五の防水隔壁で仕切られていた。

万が一浸水し、四つの区画が満水になっても船は十分に航海が出来る。

しかし、それを超えると、水の重みで船が沈み、浸水した内部の海水よりも外の海面が高くなるので、水はまるで斜めにした製氷皿の様に隔壁の上を乗り越えてドンドン次の空間を目指して流れ込んでくるのだ。

四区画の浸水が限界なのに対して、今タイタニックの浸水は問題の第五隔壁の後ろ、第五ボイラー室まで六つの区画へ浸水していた。

タイタニックが沈むのはもはや時間の問題だった‥‥

 

「‥‥どのぐらい持つ?」

 

船長はアンドリューズにタイタニックがどのぐらい浮いていられるのかを訊ねる。

 

「一時間半か‥‥一時間かもしれない‥‥」

 

タイタニックはアンドリューズの予想以上‥‥二時間四十分の間、その姿を水面に残した。

衝突から四十分、ようやく命令が下された。

 

「眠っている乗客を起こし、救命胴衣を着けさせろ‥‥それと、救命ボートの準備だ」

 

航海士たちは甲板員と共に救命ボートの準備をする。

そして、機関士たちはボイラーの余分な蒸気を抜く。

煙突からは白い煙が勢いよく出て、ピィー!!と言う音が鳴り響く。

 

その頃、タイタニックに最後の氷山警告を送ったカリフォルニアン号の通信室では、通信士が仕事を終えて寝ようとしていた。

そこへ、別の乗員がやって来た。

 

「おつかれさん」

 

「おつかれ」

 

「どうだい?何か変わったことでもあった?」

 

「タイタニックがレース岬に電報を送っていた」

 

「面白そうだな‥‥聞いてみてもいいかな?」

 

「ああ‥‥モールスの勉強は?」

 

「補習講座を受けているから大丈夫‥‥内容は後でじっくりと教えてやる」

 

「じゃあ、しばらく頼んだぞ」

 

通信士はベッドに横になり、別の乗員はヘッドホンをかぶり、タイタニックからの無線を傍受する。

 

タイタニックでも、無線室に船長が来て、救難信号を送るように命令する。

 

「援助を要請しろ、氷山にぶつかった。これが現在位置だ」

 

「は、はい」

 

「信号の種類は?」

 

「国際救難信号CQD、至急救助を求むだ」

 

「はい、分かりました」

 

船長は通信士のブライトにタイタニックの現在位置を記した紙を渡して無線室を後にする。

 

「船長のあの顔を見て、成金連中はどんな顔をするかな?ニューヨーク到着は一週間遅れるんじゃないか?」

 

「ああ‥‥」

 

フィリップスはモールスキィーを叩いて、救難信号を打ち始める。

この時、フィリップスもブライトも沈没前に救助船が来ると思っており、そこまで悲観的ではなかった。

だからこそ、ブライトは軽口を叩けた。

 

当時、救難信号はCQDと言うコードであったが、打ちやすくわかりやすいSOSが採用され始めたのもこの頃だった。

そして、世界初のSOSを打ったのがタイタニックだとされている。

 

タイタニックからの救難信号は数隻の船にキャッチされたが沈没までの時間に到着できる船は居なかった。

そしてその中にはニューヨーク発、サウサンプトン行きの姉妹船、オリンピック号も居た。

 

 

「ん?電池が切れた‥‥」

 

カリフォルニアン号では無線機の電源が切れた。

 

「今日はもう、充電する元気はない‥‥明日の朝、やる」

 

「そうか、じゃあ、おやすみ」

 

タッチの差でタイタニックの救難信号はカリフォルニアン号には届かなかった。

 

甲板では救命ボートの準備が行われていた。

 

「シートを巻いていけ、足場でキチンと折りたたむんだ!!クシャクシャにはするな!!‥‥お前ら、こんなことも満足に出来んのか!?」

 

ライトラーが手際の悪い甲板員を叱咤する。

 

「だから、練習しておけばよかったんだ!!」

 

「いいか、いくぞ‥‥」

 

見かねたライトラーはお手本と言わんばかりに甲板員と共にボートの準備をする。

この日、本当は救命ボート訓練が行われる予定だったのだが、当日は日曜日で日曜礼拝があり、救命ボート訓練は後日に延期されていた。

 

甲板では、ボートの準備、無線室では救難信号が打たれ、機関室では、明かりと電力確保のため、乗員が紛争している中、濡れ衣を着せられたキャリーは船室に手錠でつながれていた。

 

客室係は寝ていた乗客を起こし、救命胴衣を着せていた。

食堂やロビーでは救命胴衣を着せられた乗客たちは困惑している様子だった。

 

その頃、キューナード社の貨客船、カルパティア号は地中海を目指し大西洋を航行していた。

 

「じゃあ、またあとで‥‥」

 

カルパティア号の通信士、ハロルド・トーマス・コタムは無線室に入り、無線機を作動させ、ヘッドホンをかぶる。

すると、タイタニックの無線を傍受した。

 

「ん?タイタニックだ‥‥『タイタニック、レース岬から電報を受け取ったか?』」

 

コタムはあいさつ代わりにタイタニックへと無線を打つと、

 

「こんな時に、大馬鹿野郎が冗談を言っている‥‥『早く来てくれ‥‥氷山に衝突した‥‥緊急遭難信号だ‥‥船は沈む‥‥船長に伝えろ‥‥あと、一時間しかない‥‥』」

 

フィリップスはカルパティア号にそう打つと、コタムは顔色を変えて、タイタニックの現在位置と現状を急いで紙に書き、船長室へと向かう。

 

この時、フィリップスもブライトも他の船からの無線で沈没前に到着できる船が居ないことを知り、焦っていた。

 

カルパティア号の船長、アーサー・ヘンリー・ロストロは勤務を終えて部屋で休んでいると、カルパティア号の一等航海士のホーラス・ディーンと通信士のコタムが入ってきた。

 

「なんだ?」

 

「タイタニックが氷山と衝突して、一時間後に沈みます」

 

「ディーン、針路変更、北東へ向かえ」

 

「はい」

 

ロストロはタイタニックの救助へと向かうことにした。

 

「情報に間違いはないのか?」

 

コタムにタイタニック沈没は間違いないのかと訊ねる。

 

「間違いありません。氷の海に落ちたら、命は十分と持ちません」

 

「大至急救助に向かうとスミス船長に伝えろ‥‥」

 

ロストロは海図を見てタイタニックの現在位置とカルパティア号の現在位置から現場到着時間を計算する。

 

「全速で走って‥‥現場に到着するのに、四時間はかかる‥‥」

 

カルパティア号もタイタニック沈没まで現場には間に合わなかった。

それでもタイタニック救助のため、現場へと全速で向かった。

 

その頃、タイタニックでは救命ボートの準備が出来、甲板には乗客で溢れていた。

ここで、タイタニックの救命ボートについて、大きな問題があった。

タイタニックの乗船人員は乗船リストのずさんな管理のため、正確な人数は不明だが、2200人以上‥‥用意されていたボートの最大搭載人数は約1200人‥‥1000人はボートに乗れないことになる。

しかし、当時はまだ救命ボートに関する法律が施行されていないため、これで航海が出来た。

設計段階では64隻のボートが搭載されるはずだったのだが、「景観を損なう」 「スペースをより広くする」 などの理由により、40から32隻、最終的には20隻にまで減らされた。

つまり非常時には1000人が海に溺れ出てしまうことが前提になっていた。

しかも定員いっぱいまで乗せたボートは少なく、ほとんどのボートがガラガラの状態でタイタニックを離れてしまった。

それは船員たちの認識不足にあった‥‥

船員たちはクレーンやワイヤーの強度に自信がなかったのだ。

海面から飛び出た状態で定員いっぱいに乗せた場合、クレーンやワイヤー、更にはボート自体が壊れ、中の人を冷たい海に落としてしまうと考えたのだ。

乗員を乗せ、脱出したボートの空席は全部で500席あまり‥‥

つまり、この後、海面に浮いたまま凍死した人たちの内、500人はボートに乗れるはずだった‥‥

 

救命ボートが下ろされていく中、シュテルたちが演じる音楽隊はデッキにて、演奏を行う。

 

「ここで‥‥みんながパニックをおこさないようにね」

 

音楽隊リーダ、ウォレス・ヘンリー・ハートリー役のシュテルが号令をかけ、メンバーたちと共に音楽を奏でる。

甲板は音楽と沢山の人でごった返し、さながら船上パーティーでもしているかのような雰囲気だった。

 

救命ボートは女性、子供優先で下ろされることになった。

ブリジットもボートに乗るように勧められるが、彼女はキャリーを見捨てる訳にはいかず、ボートには乗らず、キャリーを捜しに行こうとする。

そこを婚約者が必死に止めるが、ブリジットは振り切り、人ごみの中へと消えていく。

ブリジットはアンドリューズを捜した。

アンドリューズならば、船内の配置図には詳しく、キャリーがどの部屋に捕まっているのか知っている筈だ。

案の定、アンドリューズはキャリーが捕まった部屋を知っており、ブリジットはキャリーの居る部屋へと急いだ。

そして、手錠でつながれて動けないキャリーをファイヤーアックスを使い、手錠の鎖を切って、甲板を目指す。

 

その頃、ブリッジでは四等航海士のジョセフ・グローヴス・ボックスホールが船らしき光源を見つけ、発光信号を送っていた。

そこへ、船長のスミスがやってくる。

 

「18キロ先に船らしきモノが見えます」

 

「向こうはこちらに気づいたのか?」

 

「いえ、まだです」

 

「やめずに続けろ、『こちら、タイタニック、沈没寸前救助を求む』だ」

 

ボックスホールが引き続き、発光信号を送る。

 

「応答していますか?」

 

「‥‥いや、応答はない‥‥ロケット弾を打ち上げろ」

 

「はい」

 

発光信号の応答がないので、信号弾を打って緊急事態を知らせようとする。

そして、信号弾が打ち上げられると、船長は目を見開いた。

 

「白じゃないか‥‥遭難信号は赤だぞ」

「これしかないんです」

 

「‥‥やめずに打ち続けろ‥‥五、六分間隔で良い」

 

「あと、七発しかありませんが‥‥」

 

「全弾打て!!」

 

「はい」

 

この時、見えた船と言うのがカルフォルニアン号だとされているが、結局カルフォルニアン号が沈没前にタイタニックの救助へ来ることはなかった。

 

無線室では、フィリップスが必死にモールスキィーを叩いていた。

 

「カルパティアから何か言ってきた?」

 

「間に合いそうにないけど、全速で向かっているそうだ。今、新しく考案されたSOSを打ってみているんだ」

 

「へぇ~それを打つのは最初で最後かもな‥情けない眺めだろうなぁ~世界一の豪華客船がおんぼろ船に曳かれて帰るのは‥‥無事に帰れたらだけど‥‥」

 

機関室では浸水している中、機関士たちが必死に光源と電力確保に奔走していた。

 

「浸水が激しすぎて、もう限界です!!」

 

タイタニック機関長のジョセフ・ベルがブリッジに内線をかけ、これ以上の光源・電力確保が難しい事を伝える。

 

「明かりが必要なんだ。無線用の電気もだ‥‥」

 

「‥‥わかりました。挑戦してみます」

 

「頼む、ベストを尽くしてくれ」

 

船長からまだ光源・電力を確保してくれと言われ、ベルは死にかけているエンジンに鞭を打つかの様に光源・電力の確保に努めた。

 

「機関長、また別の発電機が止まりそうです!!」

 

「負担を軽くしろ」

 

「は、はい」

 

「‥‥基本的に必要のないモノは全部切れ!!明かりと無線機の二つを最優先にする!!あとは指示をするまで必要ない!!ベストを尽くせ!!」

 

ベルは残っていた機関士たちを鼓舞した。

 

甲板を目指していたブリジットとキャリーであったが、下層デッキの方は三等船客が上層に上って来れないように柵が下ろされていた。

柵の向こう側に居る乗員は柵を開けようとしない。

他に柵がない場所、上層へ上がる場所がないかを捜すが、どこにもない。

そこで、ブリジットとキャリーは備え付けの椅子を取り外し、柵にたたきつけ、柵を壊して、上層へと上がった。

 

ブリッジでは、航海士たちに拳銃が配られる。

 

「話にならん!!そんなものは金庫に戻せ!!」

 

しかし、イズメイは拳銃など出す必要はないだろうと言う。

 

「乗客を撃てる筈がないだろう」

 

「秩序を守るためでありまして」

 

ライトラーはイズメイに理解してもらおうと説明するが、

 

「議論している時間はありません。もし、暴動でも起きたら、私たちには‥‥防ぎきれない‥‥」

 

マードックは一分一秒を無駄には出来ないと言うことで、航海士たちに拳銃を配る。

パニックで乗客たちが暴動を起こせば、人数的にも乗員は不利だ。

ならば、拳銃と言う武力を使ってでもパニックや暴動は防がなけれなならなかった。

 

「いいか、この船には各界の著名人らが多いんだ‥‥万が一の時は‥‥私は責任はとれない‥‥」

 

イズメイはそう言い残し、ブリッジから去る。

 

「‥‥一等船客は覚悟を決めて撃たなければなりませんね」

 

ライトラーはもし、一等船客に銃を向け、撃つ場合は自らの命もかけなければならないと忠告する。

 

「ライトラー二等航海士‥‥持ちたまえ‥‥君も‥‥」

 

マードックはライトラーにも拳銃を渡し、ライトラーは銃を受け取り、ブリッジを後にした。

 

ボックスホールはあれから信号弾を打ち続けたが最後の信号弾を打った。

しかし、船は来なかった。

 

「最後のロケット弾です‥‥あの船はなんで気づかない!?どこを見ているんだ!?」

 

「誰も居ないのか‥‥幽霊船か‥‥?こちらからは見えているのになんの応答もない、いったい何があったんだ‥‥?‥‥はぁ~‥もういい‥当てにするな‥‥デッキへ行って手伝え」

 

ボックスホールは片づけをして、デッキへと向かった。

 

音楽隊はあれからずっと音楽を奏で続けていたが、

 

「やめよう‥誰も聴いていない」

 

メンバー役のグレニアは誰も自分たちの演奏を聴いていないので、もう止めようと言う。

 

「食堂だって誰も聴いていないよ。弾いていると体が温まる」

 

シュテルは食堂で弾いていても誰も聴いていなかったし、こうして楽器を弾いていると体が温まるとから続けよう言う。

 

「次は天国と地獄」

 

シュテルは次に弾く曲名をメンバーに伝えると、メンバーたちは楽器を構える。

 

「いくよ」

 

~♪~~♪~~~♪

 

音楽隊はたとえ自分たちの演奏している音楽を聴いている者がいなくても音楽を奏で続けた。

 

サロンでは紳士たちがあつまり、お酒(劇中ではノンアル飲料)を飲んでいた。

 

「乾杯」

 

「無事を祈る」

 

「乾杯‥‥」

 

「‥皆さん、全て無料です」

 

バーテンダーが普段なら有料であるところを最後の酒盛りとなるで、酒を無料で提供する。

 

 

無線室ではフィリップスとブライトは逃げることもなく、モールスキィーを打っていた。

そこへ、船長がやってきた。

 

「緊急事態につき、これ以上諸君らを強要させることはできない‥‥職場を放棄してよろしい‥‥無事を祈る」

 

船長はフィリップスとブライトの職務を解いた。

 

三等船室から無事に上甲板へと出たブリジットとキャリーは、この時ほとんどのボートが既にタイタニックから離れていることを知る。

そして、まだボートが残っている船首へと向かう。

そこで、ブリジットは婚約者と鉢合わせをする。

婚約者は自分とキャリーの分の席は確保できたから、先にボートへと乗るように促す。

ブリジットはその言葉を信じ、一度はボートへと乗る。

しかし、タイタニックから降ろされていく中、残っているキャリーの姿を見て、ブリジットはボートから飛び降り、タイタニックへと戻りだした。

 

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