やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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46話

 

イギリスのダートマス校で体験入学中に行われている演劇祭‥‥

体験入学者も参加できるイベントで、シュテルは当初、参加するつもりはなかったのだが、ダートマス校の生徒であるカレンとグレニアの頼みで参加する事になった。

ダートマス校高等部一年の演目はタイタニックとなり、シュテルは音楽隊の役をやり、実際にメンバーと共に弦楽器を弾いている。

そんな演劇も今は後半へと突入していた。

氷山とぶつかり、沈没を余儀なくされたタイタニックでは、乗客を避難させるために救命ボートが下ろされている。

しかし、タイタニックに搭載されていた救命ボートの数ではとても全員は脱出できない。

乗客たちも当初は世界一の豪華客船のタイタニックが沈むなんて、信じられず、救命ボートに乗り込む事を拒絶していたが、だんだんと船首から沈没していくと、本当に船が沈没するのではないかと思い始め、徐々にパニックの兆候が見られた。

暴動を防ぐために航海士たちに拳銃が配られる事態にまでなった。

乗客がパニックになりつつある時、タイタニックを所有するホワイト・スター・ライン社の社長であるイズメイは船員の一瞬の隙を突いて、救命ボートへと乗り込み脱出に成功した。

そんな中、ブリジットが演じるヒロインは、救命ボートに乗るが、何を思ったのか、下ろされている中、いきなり、救命ボートから飛び降り、タイタニックへと戻りだした。

それを見て、キャリー演じる主人公はブリジットの下へと向かうと互いに抱き合う。

ブリジットはやはり、キャリーと離れることを嫌がったのだ。

それを見たブリジットの婚約者は護衛の従者から拳銃を奪うと、キャリーを殺そうとする。

婚約者の銃撃から逃げるため、下層へと逃げる。

浸水は等々食堂まで達すると、婚約者はブリジットを諦めた様子で、タイタニックからの脱出を決める。

 

下層へと逃げ込んだブリジットとキャリーはまたもや下を通り、上を目指すことになった。

タイタニックの船首は完全に沈没し、水はブリッジへと迫っていた。

残るボートは第一煙突の根元にあるボートだけとなる。

乗客たちは残っているボートへと群がるが、甲板員が腕を広げ押しとどめ、航海士は拳銃で牽制する。

下層から上に逃げてきたブリジットとキャリーはサロンの暖炉で呆然と立ち尽くす主任設計士のアンドリューズを見つける。

 

「ま、まって!!」

 

「えっ?」

 

「アンドリューズさん‥‥」

 

「ああ、君か‥‥」

 

「‥‥あなたは逃げないの?」

 

「‥‥すまない‥‥私がもっと丈夫な船を作っていればこんなことには‥‥」

 

「逃げよう、もう時間がない」

 

キャリーがブリジットの手を掴み、サロンから出ようとすると、

 

「待って‥‥」

 

アンドリューズは自らの救命胴衣をブリジットに渡す。

 

「幸運を‥‥」

 

「あなたにも‥‥」

 

ブリジットとアンドリューズは最後のハグをした後、キャリーと共にサロンから出ていく。

 

「グッゲンハイムさま、これを‥‥」

 

タイタニックの大階段では、客室係が一等船客のベンジャミン・グッゲンハイムに救命胴衣を渡す。

しかし、グッゲンハイムは、

 

「いらない‥‥私は紳士らしく正装して海へと沈むつもりだ」

 

と、救命胴衣の受け取りを拒否した。

この時、グッゲンハイムは、夜会服を身に纏っており、従者も逃げることなくグッゲンハイムに付き従っていた。

 

シュテルたち音楽隊は眼前でボートの準備が行われている間、『美しく青きドナウ』を弾いていたが、弾き終えると、

 

「‥‥よし、ここまでだ」

 

これ以上弾いても、もう意味はないと判断したシュテルは、演奏を止めた。

 

「さようなら」

 

「幸運を‥‥」

 

「無事を祈る‥‥」

 

「「さようなら」」

 

メンバーと握手やハグをして別れたシュテルはその場から逃げず、再びバイオリンを弾きだす。

讃美歌320番、主よ 御許に近づかん を‥‥

シュテルのバイオリンの音色を聞いたメンバーたちは、このまま船尾に逃げようかと迷いつつもシュテルの下へと戻り、途中からだが、演奏に参加する。

 

船長は最後に乗員に向かって、

 

「みんな、自分のために行動せよ」

 

と言う命令を下し、一人ブリッジへと向かう。

 

「船長、脱出されないのですか?」

 

船員の一人が船長にそう訊ねると、

 

「‥‥ある船会社が新聞社になんどもこう豪語していたよ‥‥『例え神でもこの船を沈めることはできない』‥とね‥‥だから、そう命名されたんだ‥‥ギリシャ神話で敢えて神々に戦いを挑んだ、傲慢なタイタンは‥‥地獄の底に‥‥投げ込まれた‥‥」

 

「‥‥」

 

この言葉を聞いて船長は脱出するつもりはないのだと判断した船員は黙ってブリッジから去っていく。

一人となった船長は懐から写真入れを取り出し、中の写真を見る。

そこには自分の家族が映し出された写真があった。

 

「‥‥許してくれ」

 

それが船長の最後の姿だった。

音楽隊の演奏が続く中、浸水は加速し、とうとうブリッジも海の中へと消える。

 

「急げ!!時間がないぞ!!」

 

海水は用意されていたボートへと迫る。

 

「ロープを切るんだ!!」

 

航海士はもうクレーンで吊るす余裕はないと判断し、ロープを切り、そのまま漂流させながら乗客を乗せた方が良いと判断するが、一度固定されてしまったボートを漂流させるにはロープを切らなければならない。

 

「ナイフを!!誰か!!ナイフを貸してくれ!!」

 

甲板員がロープを切るためのナイフを求める。

完全に恐怖とパニックとなる甲板を見ながら音楽隊はそれを達観したかのような目で見ながら演奏を続け、演奏を終えると、

 

「‥‥諸君と今宵、演奏をできたことを光栄に思う」

 

シュテルはメンバーに感謝の言葉を述べた。

 

ボートに乗れなかった乗員たちは船尾へと逃げる。

それはブリジットとキャリーも例外ではない。

浸水は加速し、船尾が海面から持ち上がり始めた‥‥

 

午前二時十分、タイタニック救助へと向かっているカルパティア号のブリッジでは、

 

「ドクター、重いデッキチェアを用意してください、それに頑丈なベルトを着けて‥極度に興奮した患者を収容するかもしれませんので‥‥」

 

ロストロは船医に救助後の指示を出す。

 

「それと氷と布袋の用意を‥‥貨物室を遺体収容所につかいたい」

 

「わかりました」

 

船医は船長が指示したモノを準備しに行く。

 

「前方に氷山」

 

「‥取り舵10度」

 

「取り舵10度、ヨーソロー!!」

 

「速度は落とすな‥ただし、操船には十分に気をつけろ‥‥タイタニックと同じ運命をたどると悲劇が二重に大きくなるからな」

 

「止まった方が安全なのでは?」

 

「現状では止まる余裕などない‥‥暖房と温水の供給を止めろ!!少しでも速度が出るようにすべての蒸気をエンジンに投入しろ!!」

 

「わかりました」

 

ロストロは一分一秒でも早く遭難現場に着くように蒸気をエンジンにまわした。

これによりカルパティア号の速力は14ノットから17.5ノットに上げ、遭難現場へと向かった。

 

北大西洋に沈んでいくタイタニック。

機関室では、明かりを保とうとしていたが、とうとうそれも終わりの時が来て、タイタニックの明かりが突如消える。

タイタニックは船尾を大きく持ち上げ、その高さは60メートルにも及んだ。

やがて船体は自らの重みで第三煙突と第四煙突の間から、真っ二つにへし折れ、船尾の部分は強く海面にたたきつけられた。

この時の衝撃とタイタニック船体に押しつぶされて絶命した者も居た。

また折れた50トンの煙突の下敷きとなり、落命する者も居た。

そして、再び船尾が持ち上がり、沈んでいく。

身も凍る断末魔の叫びと共にタイタニックのすべてが海へと沈んだ。

 

1912年4月15日、午前二時二十分‥‥タイタニック号沈没

 

海に流された人たちはしばらくの間は海面で生きていたのだが、やがて、冷たい海水で体温を奪われ次々と凍死していく。

キャリーはブリジットを海面に浮いていた壁の一部に乗せた。

ブリジットはそのおかげで一命を取り留めたが、キャリーはそのまま冷たい海の底へ沈んだ‥‥

 

氷点下の海に浮かぶ千人以上の人を救うため、わずか一隻のボートが五等航海士、ハロルド・ゴッドフリー・ロウの指揮の下、遭難現場へと戻ってきた。

そして、ブリジットはそのボートにより救助された。

 

午前四時、カルパティア号がタイタニックの救命ボートを発見し、救助を始めた。

 

「‥‥しかし‥いったい何があったのでしょう?」

 

ディーン一等航海士がロストロに訊ねる。

 

「考えたくないな‥‥E・J・スミスはヨーロッパ一の船長だった」

 

「‥‥きっと、海が怒ったのでしょう‥‥この極寒の海で何分耐えられるでしょうか?」

 

「もたんな‥‥数分で命は燃え尽きる」

 

「苦しまずに‥‥ってやつですか?」

 

「‥‥死は苦しみを伴うものだ‥‥本船はニューヨークへと向かう」

 

カルパティア号は行き先をニューヨークへと変えた。

 

ブリジットの婚約者も命からがらタイタニックから脱出しカルパティア号に救助されていた。

婚約者はもしかしたら、ブリジットも生きているのではないかと思い、船内を捜したが、ブリジットは婚約者の前にも母親の前にも姿を見せることはなかった。

やがて、カルパティア号は生存者を乗せ、ニューヨークへと到着する。

ブリジットはそのまま、一人で生きていくことを決め、港を後にした‥‥

タイタニックの遭難事故は後世に多くの教訓を残したが、そこには確かに2200人以上の人間ドラマも存在していた。

 

演目が終わり、出演者全員が舞台に立ち、観客らに一礼すると会場は拍手に包まれた。

 

「ふぅ~‥‥やっと終わった‥‥」

 

演目が終わり、舞台袖に降りると、シュテルは蝶ネクタイを外し、Yシャツの第一ボタンを外す。

 

(それにしてもこの劇場の規模も驚いたが、舞台装置にも手が込んでいるな‥‥)

 

改めてこのダートマス校の規模に驚かされるシュテルだった。

その後、高等部の二年生と三年生の演目も終わり、演劇祭は無事に終了した。

翌日の地元紙にはこのダートマス校の演劇祭の事が書かれていた。

 

(やっぱり、地元の話題として、かなり大きく書かれているな‥‥)

 

朝食の席で、エッグベネディクトを前にシュテルは地元紙を見て演劇祭の余韻に浸っていた。

昨夜の打ち上げも盛大なものだった。

前世の自分ならば、参加しなかっただろうが、演劇祭の練習をグレニアやカレンたちと一緒にやって、とても楽しかった。

これも前世と異なる人間関係と船と言う共同生活での経験からの賜物だったのだろう。

 

(ホント、前世では考えられない環境だな‥‥)

 

地元紙を折りたたんで、紅茶を一口飲むと、

 

「ねぇ、皆さん演劇祭も終わり、体験入学も間もなく終わります。そこで、羽を伸ばす一環として、今度の休日に湖へ遊びに行きませんか?」

 

ブリジットが今度の休日に湖へとバカンスに行こうと提案する。

 

「いいですね!!」

 

「行きましょう!!」

 

「水遊び‥‥楽しそうです」

 

周りの生徒もそれに賛成の様子。

 

「当然、シュテルンも行きますよね?」

 

「行くだろう?なっ?」

 

カレンとグレニアがシュテルを誘う。

シュテルとしてはこの流れとなると、もう回避は出来ない。

 

「わ、分かった‥‥」

 

諦めてシュテルは湖へのバカンスに参加することにした。

 

それからやってきた休日‥‥

その日は晴れて、外出日和となった。

目的地の湖は森の奥にあった。

そこは緑が青々と茂り、夏の陽射しが光線の様に降り注いでいるのは変わりないが、湖畔は見た感じ、浅瀬になっており、泳ぐには絶好の場所だ。

そして、小さな桟橋にはボートも繋がれていた。

シュテルは傍の木の木陰に入り、額に浮かんだ汗を拭う。

木陰に入ると、ひんやりとした空気が首筋を撫でホッと安堵の息を漏らす。

シュテルが一息ついていると、

 

「あれ?シュテルンは着替えないデスカ?」

 

と、これをかけられ振り向くと、

 

「ん?」

 

そこには水着姿のカレンが居た。

 

(いつの間に着替えたんだ?)

 

カレンの早業に驚いていたが、周囲を見ると、チェンバレン姉妹、グレニア、セラス、ドロシー、ブリジット、キャリーらも着替え終わっていた。

 

(あれ?そんな長時間、ここで涼んでいたか?)

 

(それにしても‥‥)

 

シュテルは水着姿のメンバーを見ると‥‥

 

(あの辺のメンバーを見ると落ち着くな‥‥)

 

セラスやドロシー‥‥一部を除くと平均やそれ以下のつつましい胸をしている。

 

(‥‥由比ヶ浜はともかく、少なくとも、今の俺は、雪ノ下以上はあるよな‥‥?)

 

シュテルは自分の胸を見て、雪ノ下以上の大きさはあると思っていた。

 

「あっ、ああ‥‥そうだね‥‥」

 

「ん?どうかしたデスカ?シュテル」

 

「えっ?ああ、うん‥‥自分の将来に‥‥ちょっとね‥‥」

 

「ん?シュテルはブルーマーメイドにならないんですか?」

 

「あっ、いや、そうじゃなくて‥‥女は十四歳くらいで成長が止まるっていうけど、あれは上背だけかな‥‥?って思って‥‥」

 

「?」

 

カレンはシュテルの言葉の意味が分からない様子で、首をかしげる。

 

「どうしたの?」

 

そこへ、ブリジットがやって来た。

 

「あっ、シュテルン、なにか将来に関わる悩みがあるそうです」

 

「そうなの?」

 

「えっ?ええ‥まぁ‥‥」

 

「そう‥‥将来の事に思いを馳せるのは素晴らしいことだけど、気にしすぎるのもあまりお勧めできませんね。何事も中庸がベストよ」

 

(いや、私以下の大きさの一人言われてもねぇ‥‥)

 

「それで、シュテルは着替えねぇのか?」

 

いつまでも着替えないシュテルにグレニアが着替えないのかを訊ねる。

 

「えっ?うん‥‥まぁ‥‥別に泳ぐつもりはないし‥‥」

 

「そうか‥‥」

 

シュテルの水着姿を見ることが出来ず、カレンとグレニアはなんかがっかりしている様子だった。

 

それから、各々は水遊びを楽しむ。

シュテルはと言うと‥‥

 

「ナマズ、ドジョウ、ネッシーさ~ん」

 

足先を湖に浸からせながら釣り糸を垂らしていた。

 

「ここはネス湖ではないので、ネッシーは居ませんよ」

 

隣でシュテル同様、釣り糸を垂らしているブリジットがさりげなくツッコミを入れてくる。

 

「まぁ、モノの例えだから」

 

シュテルだって、ここがネス湖ではないのだから、ネッシーが居ないことぐらいは判断がつく。

そもそも、ネス湖にだって、ネッシーがいるかどうか分からない。

 

「ん?そう言えば、いつも一緒に居る付き人さんはどうしたの?」

 

シュテルは普段、行動を共にしているキャリーの姿が見えないことに違和感を覚え、ブリジットに彼女の行方を訊ねる。

 

「キャビアちゃんでしたら、チェンバレン姉妹におしつ‥‥彼女たちと行動を共にしていますわ。たまの休みの日ぐらい、のびのびと羽を伸ばしてもらいたいと思って‥‥」

 

(今、押し付けたと言いかけたぞ、この主様は‥‥)

 

ブリジットが洩らした言葉にちょっと引くシュテルだった。

 

 

そして、釣り糸を垂らしてからしばらくして‥‥

 

「来ませんね、魚‥‥」

 

「この湖、魚居ないのかな?」

 

釣り糸を湖から引き揚げてみるが、やはり魚は居なかった。

 

「そう言えばルアーって、なんで魚が釣れるのでしょう?」

 

「うーん‥‥魚にとってはおいしそうに見えるのかも‥‥匂いがついているルアーもあるらしいし‥‥」

 

「‥‥キャビアちゃんが昔、いい匂いがする消しゴムをかじっていたのと同じですね」

 

「お宅のメイド、大丈夫か!?」

 

「小さい頃の出来事ですから」

 

キャリーの黒歴史?を図らずも知ったシュテルだった。

釣り糸を垂らしてからしばらくして、

 

「ねぇ、イカリさん」

 

「ん?」

 

「提案があるのですけど‥‥」

 

「なに?」

 

「ボート遊びをしましょう」

 

「えっ?」

 

ブリジットから突然、ボートに一緒に乗ろうと提案された。

 

「えっ?それって私も‥‥?」

 

シュテルは自分がブリジットと二人でボートに乗るのかを問う。

 

「ええ、そうですよ」

 

「‥‥」

 

なんか妙な流れではあるが、シュテルはブリジットとボートに乗ることになった。

湖の半ばまで行くと、シュテルとブリジットはボートの上に横になり、水音を聴きながら空を見上げ、時折吹く風を体に感じる。

 

「でも、なんで突然ボート遊び何てしたいと思ったの?」

 

シュテルはブリジットに何故ボート遊びをしたかったのかと訊ねると、

 

「この湖を‥‥深い色の湖面を見て思い出したことがあるの‥‥スティー○ンキン○の映画‥‥」

 

「それって、もしかしてクリー○ショー2の“殺人いかだ”じゃないの?それ‥‥こういうタイミングでそんな物騒なモノを思い出さないでよ‥‥それで、今日は羽を伸ばせた?」

 

「ええ、それなりにね」

 

ブリジットの表情はリラックスしている表情をしており、空を見ていた。

天空には突き抜ける青空と時折流れる浮雲。

遠くから聞こえる鳥のさえずり‥‥

ボートが揺れる微かな軋みと水音‥‥

こうしてボートの上で横になり、目を閉じていると、自然と一体になった気分でとても心地よい。

 

(もうすぐ体験入学も終わりか‥‥)

 

シュテルはまもなく、体験入学が終わることを確認する。

それはグレニアやカレンたちとの別れを意味していた。

しかし、これは決して今生の別れではない。

たとえ住む国は異なっても海は続いている。

海に居れば、必ずまたどこかで再会できる。

そう確信していた。

 

体験入学最終日の前日の夜‥‥

講堂では、体験入学者たちを労うパーティーが行われた。

シュテル同様、今回の体験入学でダートマス校の生徒と仲良くなった者たちは別れを惜しんでいる姿が見られた。

シュテルもグレニアとカレンから、別れを惜しまれていたし、シュテル自身も彼女たちの別れを惜しんでいた。

 

「九条さんには今回の体験入学の件にはとても感謝しています‥‥こうして世界トップレベルの教育を受け、みんなとも出会え、友情を得ることが出来た‥‥それはまさに奇跡だと思っているよ」

 

「私もデース!!」

 

「わ、私もな‥‥」

 

(ホント、いろんなことがあった夏休みだったけど、それを差し引いても、この出会い‥‥出来事は楽しかったな‥‥)

 

翌日、体験入学者たちは、修了証明書を受け取り、各々の国、街へと帰って行った。

 


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