やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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47話

波乱に満ちた夏休みが終わり、キール校では二学期が始まる。

 

「夏休みどうだった?」

 

「どこかに行った?」

 

「宿題大変だったよね?」

 

休み明け、久しぶりに会う級友たちは互いに夏休みでの出来事を聞いている。

 

「あっ、シュテルン!!」

 

「ん?ああ、ユーリか」

 

後ろから声をかけられたシュテルが振り向くと、そこにはユーリが片手をあげて駆け寄ってきた。

 

「夏休み中、イギリスのダートマスに行っていたみたいだけど、どうだった?」

 

「イギリスか‥‥」

 

シュテルはイギリスであったあの一夏の出来事に思いを馳せる。

世界でもトップレベルを誇るだけあって、その教育内容もレベルも高かった。

勉強以外にもイギリスのダートマスを目指す途中、ドーバー海峡で海賊に襲われるし、たどり着いたダートマスの街では連続殺人事件が起きており、その事件に巻き込まれる。

そして、向こうの学校で行われた演劇祭に参加した。

その他にも向こうで知り合ったみんなと共に湖にも行った。

どれもこれも印象に残る思い出だった。

 

「うん、大変だったよ‥‥いろいろね‥‥」

 

「せっかくの休みなのに、なんでわざわざ、外国へ勉強なんてしに行ったの?」

 

「短期間とはいえ、世界でもトップレベルの海洋学校の教育を受けることのできるチャンス何て滅多にないんだよ。せっかくのチャンスをむざむざと不意にするのはもったいないじゃない」

 

「そう思うのはシュテルンぐらいじゃない?」

 

「そうかな‥‥?それで、ユーリの方はどうだった?」

 

「私か‥‥うん、私もいろいろと大変だったよ‥‥」

 

シュテルほどではないが、ユーリも地方の田舎町で司法の腐敗ともいえる事件に巻き込まれた。

互いにまだ高校生になったばかりなのに、某バーロ探偵か某有名な名探偵の孫並みの事件の遭遇率だった。

 

キール校では、前世の総武高校と同様、二学期には文化祭がある。

その日の朝のHRにて、今年の文化祭の実行委員を決めることになった。

 

(文化祭に実行委員会ね‥‥)

 

シュテルにとって高校の文化祭なんて正直に言っていい思い出なんかない。

高校一年生の時は、入学式で由比ヶ浜の愛犬を助けたことが原因で、高校デビューが遅れ、ボッチとなり、友人もできず、クラスでも影が薄い存在として扱われたため、実行委員会になることもなく、文化祭も体育祭も平穏と言えば妙な例えになるが、波風なく、平凡に終わった。

しかし、高校二年に進級した時、現国の課題で、平塚先生に目をつけられ、奉仕部なんて訳の分からない非公認の部活に強制的に入れられてから、高校生活が大きく変化した。

前世では最後の文化祭でも、やはり平塚先生に目をつけられていた為、強制的に文化祭の実行委員会をやらされた。

奉仕部の部長である雪ノ下も自分同様、あの時は文化祭の実行委員になっていた。

そして、初めての会議で実行委員長を決める際、最初は誰もやりたがらなかった。

文化祭の実行委員長なんて、響きの良い役職名であるが、その実態は責任が伴う雑用係の総大将であった。

万が一の時の失敗は全て委員長に降りかかる。

そんな中、八幡と同じクラスの相模南と言う生徒が実行委員長に立候補した。

その日の放課後、奉仕部メンバーの内、二人が文化祭の実行委員なので、文化祭中は部活の活動を休止しようとした時、件の相模が文化祭のサポートを依頼してきた。

 

(自信がないなら、最初から立候補なんてするなよ‥‥)

 

相模の依頼を聞いて八幡はこの時、そう思った。

さらに彼は違和感を覚える。

 

相模は何故、初日にいきなり頼ってきた。

 

なぜ自分一人で少しでもいい、挑戦しない?

 

しかも彼女の依頼の内容から、自らの成長をなすために委員長に立候補した。

 

文化祭まではしばらく時間があるので、数日は自分の力量を見るため、様子見できる筈だ。

 

それになぜ奉仕部に依頼をしてきた?

 

八幡や雪ノ下と異なり、相模には親しい友人がたくさんいる。

 

それは実行委員会のメンバーの中にも居り、親しそうに喋っているのを確認した。

 

平塚先生だってこの委員に関わりがあるし、頼るなら生徒会長の城廻先輩だっているし何も問題はない筈だ。

 

これでは、最初から自分では失敗するので、その責任の肩代わりをしてくれと言っているようなものだ。

 

そして、付け加えるのであれば教師や生徒会長にバレたらまずそうなので、同じ実行委員の人にその責任を押し付けようとしているみたいに見えた。

 

最も、奉仕部の最初の依頼‥‥由比ヶ浜からの依頼‥‥お礼を言いたい人が居り、その人にクッキーを渡したいので、クッキー作りを手伝ってくれと言ってきたが、この時も由比ヶ浜は一度でもクッキーを試しに作ることなく、いきなり奉仕部にやって来た。

自立を促すといいつつ、雪ノ下も八幡もこの時は確認を怠っていた。

 

すると、相模の依頼を雪ノ下個人で受けると言って、相模からの依頼を受けた。

翌日の放課後から学校は文化祭の準備期間となった。

実行委員たちは会議室に集まり書類仕事を行う。

しかし、実行委員長の相模の手腕は正直に言って、凡人‥‥

実行委員会は副委員長の雪ノ下が事実上指揮をしていた。

雪ノ下はこの時、サポートの意味も相模の依頼のことも完全に欠如していた。

自分が目立たないことに相模はこの時、不満感を抱いていた。

そんな時、雪ノ下の姉、雪ノ下陽乃が総武高校のOG・OBで構成されるオーケストラ団の有志の申し込みにやってきた。

そして、相模は陽乃の言葉巧みな誘導に乗せられ文化祭準備を投げ出した。

相模に呼応して、実行委員の半数以上がサボり始めた。

雪ノ下は遅れている委員会の仕事を一人でカバーしていたが、そんなことが可能なはずもなく、過労で倒れる。

このままでは文化祭は中止になることは明らかであった。

しかし、相模たちサボっている文化祭の実行委員のメンバーはサボっているので、現状を理解していなかった。

もっと前に教師や生徒会に通報してサボっていた委員を呼び寄せる方法もあったはずだったが、誰もそれをしなかった。

そこは八幡自身にも落ち度はあった。

そして、文化祭のスローガンを決める際、八幡が自らを悪役になることで、サボっていた実行委員たちに仕事が遅れている事、

このままでは文化祭が中止になる恐れを自覚したが、八幡の悪意は消えはしなかった。

後半からの追い返しでなんとか文化祭を開くことが出来た。

だが、最終日のエンディングセレモニーにて、相模の奴が集計結果を持ち出し失踪した。

雪ノ下たちは八幡に相模の捜索をさせて、自分たちは舞台で時間稼ぎのライブを行った。

ただ常識的に考えて、八幡が時間内に相模を見つけても彼女が八幡の説得をおとなしく聞くとは思えない。

その為、彼はまたもや悪役となり、相模に暴言を吐いて無理やり連れ帰った。

文化祭後、学校には彼の悪意ある噂話が駆け巡ることとなってしまった。

しかし、本来ならば相模を捜しに行く役目は八幡ではなく、雪ノ下であった。

なにしろ、彼女の依頼を引き受けたのは他ならぬ雪ノ下だった。

しかも、奉仕部としてではなく、雪ノ下個人として‥‥

雪ノ下は副委員長だったから、あの場を離れる訳にはいかなかったと思うかもしれない。

だが、あの場には生徒会長の城廻も居た。

ならば、生徒会長である彼女に任せて雪ノ下も探しに行くべきだった筈だ。

それを意見しなかった八幡自身も恐らく、雪ノ下に何を言っても無駄だろうと言う諦めがあったのかもしれない。

それでも、あの文化祭の依頼と雪ノ下の行動はまさに奉仕部の理念に反していた。

 

奉仕部の理念は、

 

『飢えた人に魚を与えずその取り方を教える』

 

筈だったが、雪ノ下の行動は相模から仕事を奪う形となり、それはまさに本来相模が請け負う仕事を肩代わりしていた。

あの文化祭の行動は奉仕部の理念に当てはめると、

 

『飢えた人のために魚を取り、調理して、食べさせてあげた』

 

である。

勿論このことは八幡が自殺するきっかけとなった修学旅行の件も同様の事が言える。

しかも、魚をとり、調理して食べさせたのは全て八幡であり、雪ノ下と由比ヶ浜は依頼人からただオーダーを取っただけに過ぎず、魚の取り方も教えていなければ、その魚を調理することも、食べさせることもしていない。

雪ノ下と由比ヶ浜の二人は依頼人からオーダーをとり、八幡が魚を釣り、調理し、食べさせている所さえも見ていない。

 

そうした経緯があると、やはり文化祭にはいい思い出なんてなかった。

 

ミーナ教官はシュテルに実行委員になってみないかと勧めた。

勧めた理由は勿論、シュテルが高等部一年生の首席だからだ。

そして、前世の平塚先生と異なり、強制的ではなく、ちゃんと拒否権を用意していた。

シュテルはそこで考えた。

ちゃんと拒否権があるので、『やりたくない』と言えば、やらなくて済む。

しかし、前世の事を引きづっていては前に進めない。

クリスはややハラハラしながら、シュテルの事を見ていた。

彼女はある事情から、シュテルの事情を知っているからだ。

 

「うーん‥‥わかりました‥‥やってみます‥‥」

 

シュテルはこれも前世と決別するためであり、こうして自分を必要としてくれるのだから、その期待に応えたいと言う思いから、実行委員になることにした。

HRが終わり、クリスがシュテルに声をかけてきた。

 

「大丈夫なの?シュテルン。文化祭の実行委員なんてやって‥‥」

 

「う~ん‥‥まぁ、なんとかなるでしょう」

 

口ではそう言うが、不安は隠せないシュテルだった。

そして、放課後、早速実行委員の会議が行われる。

ダートマス校の演劇祭の同様で前世の総武高校生とは異なり、皆真面目に実行委員の仕事に取り組んだ。

勿論、前世の相模の様にアホな提案をする者も居なければ、陽乃の様に文化祭をかき乱すような存在も居なかった。

あの演劇祭でのダートマス校の実行委員とこのキール校の実行委員の仕事を見る限り、総武高校の実行委員たちが異常だったのだ。

 

(あんな、異常な連中がいる学校がよく進学校だなんて言えたよな‥‥)

 

仕事をこなしつつも、前世での総武高校の存在に今になって疑問に感じた。

確かに雪ノ下は学力に関して、問題はなかった。

むしろ優秀だった。

しかし、人間性には自分が言うのもなんであるが、かなりの問題があった。

それに由比ヶ浜‥‥

彼女の学力でよく、進学校とされる総武高校に入れたものだ。

それに進級もしている。

 

(あいつ、裏口入学をして、進級に関しても学校に裏金でも渡して進級したんじゃ‥‥)

 

半年と言う短い期間であったが、由比ヶ浜の学力にも疑問を感じた。

彼女の裏口入学を考えたが、雪ノ下の実家と異なり、由比ヶ浜の家は一般家庭なので、裏口入学や裏金をするためのお金を用意できるとは思えない。

かといって、テストの時だけ、由比ヶ浜の学力が上がるとは思えない。

となると、進学校と謳っている総武高校自体が実際は進学校ではなかったのではないか?

それとも自分が在学していたあの学年だけがこれまでの総武校の歴史の中で最低レベルの学力者だったのか?

 

(まぁ、今となっちゃあ、どうでもいいか‥‥)

 

自分はもう総武高校の学生でもなければ、比企谷八幡でもない。

しかし、こうして自分に言い聞かせていないと、前世と同じ様な仕事をしていると、嫌でも思い出してしまう。

クラスの出し物に出ることが出来ないのが、残念ではあるが、実行委員は文化祭を開けるために行う縁の下の力持ちだ。

あの時の総武高校の文化祭の実行委員たちもそれを理解してくれていたら、相模が提案したあのアホな提案に乗ってサボることはなかっただろう。

それから迎えた文化祭当日‥‥

シュテルは実行委員として、校内を巡回している。

その際、シュテルは自分のクラスを見てみる。

シュテルのクラスでは、軍艦と飛行船のプラモデルやジオラマを展示しており、来客に説明を行っている。

 

「あっ、シュテルン、実行委員の仕事?」

 

受付に居たクリスが声をかけてきた。

 

「うん。そう‥‥何か問題とかない?」

 

「今のところは大丈夫だよ」

 

「そう、ならよかった」

 

此処は問題なさそうなので、シュテルが次の現場に行こうとした時、

 

「へーい!!シュテルン!!」

 

「えっ?むぐっ!!」

 

シュテルは突然誰かに抱き着かれた。

その抱き着いた人物は‥‥

 

「か、カレン!?」

 

交換留学、そして、夏休みでの体験入学で知り合ったダートマス校の生徒、九条カレンだった。

 

「あーっ!!カレン!!テメェ!!シュテルになにしてんだ!?」

 

カレンが来ているのだから、当然他のダートマス校のメンバーも来ていた。

そして、シュテルに抱き着いているカレンの姿を見て、声をあげているのは‥‥

 

「残念だったネ、グレニア。シュテルンは私がゲットしたネ!!」

 

グレニアだった。

 

「カレンもグレニアも久しぶり!!元気だった!?」

 

夏休みが終わってから、メールや電話をするがやはり、こうして実際に会うのは嬉しさを伴う。

 

「元気デース!!」

 

「お、おう‥シュテルも元気だったか?」

 

「うん。元気だったよ」

 

シュテル、カレン、グレニアがこうして和気藹々としていると、

 

「グレニア、ちょっと、待ってよ~」

 

そこに遅れて、黒髪にグレニア、カレンと同じくダートマス校の制服を纏ったもう一人の生徒がやって来た。

 

「あっ、わりぃ、マリア‥‥」

 

グレニアの口調から、この生徒とグレニアは知り合いみたいだ。

 

「ちょうどいいから、シュテル。紹介するぜ、あたしの親友のマリアだ」

 

グレニアは遅れてきた黒髪の生徒をシュテルに紹介する。

 

「あっ、はじめまして、ダートマス校から来ました。マリア・K・グレンヴィルです」

 

「どうも、はじめまして、キール校のシュテル・H(八幡)・ラングレー・碇です」

 

シュテルとマリアは互いに自己紹介をする。

なお、この時、シュテルの身体にはカレンがくっついたままで、背後の受付席にはクリスがジッと彼女たちの事を見ていた。

 

「グレニアの友達‥‥って‥あれ?この前の体験入学の時‥‥」

 

シュテルはマリアが居なかったことを確認する。

もし、あの体験入学の際、居たのであれば気づくはずだ。

 

「ああ、ダートマス校が体験入学をしている時、私はアメリカに交換留学をしていたのよ」

 

と、ダートマス校が体験入学をしていた際、マリアはイギリスに不在だったことをシュテルに伝えた。

 

「そうだったんだ‥‥」

 

「夏休みでは、グレニアがお世話になったみたいで‥‥それに彼女がピンチの時にも助けていただいたみたいで‥‥どうもありがとうございました。貴女のおかげで、親友を失う最悪の事態を避けることが出来ました」

 

マリアは深々と頭を下げ、シュテルに礼を言う。

 

「い、いえ‥私がもっと早く気づいていれば、あのようなことは‥‥」

 

「それでも、貴女がグレニアを助けてくれたことには変わりませんから」

 

「‥‥」

 

「‥‥」

 

シュテルがダートマス校のメンバーと話していると、背後から二つの視線を感じた。

振り返ってみると、ユーリも居た。

シュテルがマリアたちにクリスとユーリを紹介しようとした時、

 

「おい、カレン!!いつまでシュテルに抱き着いているつもりだ!?いいかげん離れろ!!」

 

「グレニア、女の嫉妬はみっともないですよ」

 

グレニアがシュテルに抱き着いているカレンを引きはがそうとすると、彼女はドヤ顔で言うと、それは火に油を注ぐ形となり、

 

「だったら奪うまでだ!!イギリス人はなぁ!!恋愛と戦争じゃあ手段を選ばないんだよ!!」

 

そう言って、シュテルに抱き着く。

 

「グレニアがここまで懐くなんて、碇さんってすごいんだね」

 

マリアがあの短期間の体験入学でグレニアとここまで信頼関係を気づいたのは、自分とブリジット、キャリーぐらいなものだったので、シュテルの人を惹きつける魅力に感心した。

カレンとグレニアがシュテルを取り合っていると、彼女たちも背後から感じる視線に気づき、後ろを振り向く。

そこには自分たちをまるで睨みつけるかのようにジッと見ているキール校の生徒が二人いた。

その二人とはヴィルヘルムスハーフェン校との親善試合の際、出会っているが、カレンもグレニアもシュテルの方が印象強く残っていたので、あの二人が誰なのかよくわからない。

 

「あっ、みんなに紹介するよ。ウチの艦の副長と砲雷長の‥‥」

 

「クリス・フォン・エブナーです」

 

「ユーリ・エーベルバッハ‥‥」

 

「どうも、九条カレン、デース!!」

 

「‥グレニア・リオン」

 

「マリア・K・グレンヴィルです」

 

互いに自己紹介をするダートマス校のメンバーとキール校のユーリとクリスであるが、マリアを除くメンバーの間にはなんか火花が飛び散っているようにも見えた。

 

「‥‥」

 

「‥‥」

 

ユーリの死んだような目とグレニアの狂犬じみた目が合い、目線だけで激しい攻防が起きているようにも見える。

身長差から、ユーリがグレニアを見下し、グレニアが見上げる形になっているが、グレニアは一歩も引かず、ユーリから目線を逸らさない。

 

「ちょっと、ユーリもグレニアもどうしたの?周りの空気が変だよ」

 

シュテルがユーリとグレニアの仲裁に入り、この場は何とか収まった。

 

「でも、わざわざイギリスのダートマスから来てくれてありがとう」

 

「いえいえ、これを機にダートマス校とキール校の交流が進んでくれればと思っていますから」

 

マリアはダートマス校とキール校の交流が今後盛んになってもらえたら、幸いであると言う。

 

「そうですね。私もそう思っています」

 

夏休みの体験入学を経験して、ダートマス校の素晴らしい教育を後輩たちにもぜひ体験してもらいたいので、ダートマス校と交流できれば、夏休みの体験入学者を増やすことが出来、優秀な海運、ブルーマーメイドの人材を育成することが出来る。

 

「そう言えば、グレニアたちは三人で来たの?ヴィクトリアさんやシンクレアさん、キャビアちゃんも来ているの?」

 

「はい。今、この学校の校長先生に親書を渡しに行っています。ヴィクトリアさんは今、お手洗いに行っています」

 

ブリジットとキャリーもどうやら来ており、今は校長室に居るみたいだ。

 

「あっ、碇さん!!ちょっと、来て!!」

 

「あっはい!!」

 

シュテルは別の実行委員の人に呼ばれる。

 

「ごめん、仕事が入ったみたい」

 

「シュテルン、実行委員なんですか?」

 

「うん」

 

仕事で呼ばれては仕方ないと判断したカレンもグレニアもシュテルから離れる。

 

「それじゃあ、文化祭、楽しんでね。あっ、三年生の先輩が、学生艦のシャルンホルスト一隻を使ってお化け屋敷をしているみたいだから、行ってみるといいよ。評判じゃあ、なんかすごいみたいだから」

 

そう言って、シュテルは仕事へ向かった。

 

本音を言うと、カレンもグレニアもシュテルと一緒に文化祭を回りたかったが、シュテルは実行委員の仕事で大変そうなので、無理は言えない。

それに今後、キール校とダートマス校の交流が盛んになれば、出会う機会も増えるだろう。

 

その後、ブリジット、キャリー、セラスと合流したダートマス校のメンバーはキール校を回り、展示品や露店を見て回る。

そして、シュテルが進めた高等部三年生たちの出し物である学生艦、シャルンホルストで行われているお化け屋敷へとやってきた。

お化け屋敷と聞いて、グレニアとキャリーは顔色が悪かった。

しかし、他の面子は入る気満々であった。

 

シャルンホルスト‥‥全長235.4m、全幅30m、最大速力31.65ノットのドイツが誇る高速巡洋戦艦。

この艦は通商破壊を目的とする艦として作られたため、武装に関しては主砲を54.5口径三連装28.3cmとやや威力に劣るが、それでも軽巡洋艦、駆逐艦には脅威となる相手だ。

船体は純白で塗られ、ドイツ伝統のシャープなシルエットをしている。

姉妹艦にはグナイゼナウがある。

前世(史実)では、ノール岬にてイギリス艦隊を相手に奮戦し撃沈された過去を持つが、第二次世界大戦が起きていないこの後世では、沈没せずこうしてキール校の学生艦として使用されている。

しかし、このシャルンホルストはなにかといわくつきがある艦だった。

建造中に船体がいきなり横転して、作業員六十人が死亡し、百十人が負傷した。

その他にもボイラーが爆発したり、艦長候補が心臓発作で死亡など、不幸が続いている。

そして、何より奇妙なのが、シャルンホルストの洗礼親となった少女が不思議な文字を残して手首を切り、突如自殺してしまうという事件が起きた。

ヨーロッパでは、船が誕生した際、抽選により選ばれた少女が洗礼親となって祝福の言葉を述べ、航海の安全を祈るという儀式があるのですが、その少女が自殺してしまったのだ。

しかも、残された遺書らしきものには、難解な古代語らしき文字で「私は魅せられた」「護りなさい」といった内容が書かれていたという。

学生艦として使用される前、縁起が悪いと言うことで、バチカンの神父をわざわざ呼んでお祓いをしてもらったぐらいの過去を持つシャルンホルスト‥‥

そのシャルンホルストにて、お化け屋敷をしているのだから、雰囲気はかなりある。

シャルンホルストの前にはそれらいわくつきの内容を説明するボードもあり、並んでいる人も多かった。

ダートマス校のメンバーは列に並び、順番を待った。

 

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