やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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今回はダートマス校のメンバーの視点です。


48話

 

ドイツのキール校で行われた文化祭‥‥

前世の出来事もあったが、シュテルはそれを振り切るかの様に、文化祭の実行委員となり、当日は会場を巡回する。

そんな中、夏休みにイギリスのダートマスで体験入学をしたダートマス校のメンバーが文化祭を見に来てくれた。

見に来てくれたグレニアとカレンは本音を言えば、シュテルと文化祭を見て回りたかったが、シュテルは実行委員の仕事があるので、仕方なく、ダートマス校のメンバーでキール校の文化祭を見て回った。

そんなキール校の文化祭でシュテルは高等部三年生が開催している学生艦、シャルンホルストでやっているお化け屋敷を勧めてきた。

ホラーが苦手なキャリーとグレニアは出来れば行きたくはなかったが、シュテルの勧めと言うことでグレニアはやむを得ず、キャリーは主であるブリジットが行く気満々だったので、断るに断れない状況となっていた。

もっとも、ブリジットは怯えるキャリーの姿を見たいと言う願望が含まれていた。

 

お化け屋敷の会場である学生艦、シャルンホルストが係留されている港湾区画へと向かうと、そこには沢山のドイツ艦が係留されており、来場者に一般公開を行うと共に、各艦の炊事委員が競って各々の料理を振舞っていたりもしていた。

そんな中でシャルンホルストのタラップには行列が出来ていた。

学生艦一隻をまるまるお化け屋敷‥‥いや、この場合は幽霊船と言った方が正しいかもしれない。

学生艦一隻をまるまる幽霊船に改装して展示している。

学生たちがどんなお化けの仮装をして、来場者を恐怖に陥れているのか?

ある意味楽しみにしている来場者もいるのだろう。

この時、グレニアは、

 

(こ、これだけの大人数で入るんだから大丈夫だよな‥‥?)

 

ダートマス校のメンバー全員で入れると思っていた。

しかし、実際に入り口へと向かうと、

 

「では、ここからはお一人様かお二人のペアになります」

 

と、受付係の学生にそう言われてしまった。

 

「なっ!?」

 

グレニアにとってこれは予想外の事だった。

てっきり、全員では入れると思っていたのに‥‥

全員で入れば、恐怖もそこまでは感じることはないだろうと踏んでいた。

しかし、予想は覆されて、一人か二人でなければ入れないと言う。

 

「グレニア、どうする?一人で入る?」

 

マリアはもう、分かり切っているのに敢えてグレニアに訊ねる。

 

「ま、マリア。お前、なに分かり切ったことを聞いているんだよ」

 

「そうだよね?グレニアはもう高校生だもんね。当然一人で入れるよね?」

 

「そんな意地悪しないでくれよ」

 

「わかっているよ、冗談だって」

 

グレニアの上目遣いにマリアは罪悪感を感じて、グレニアと一緒に入ることにした。

ダートマス校のメンバーはセラス&カレンのペア、ブリジット&キャリー、マリア&グレニアの三つのペアとなった。

ブリジットがキャリーの怯えた様子を見たかったようにマリアもグレニアが怯えた様子を見たくないと言えば嘘になる。

最初に、セラス&カレン ペアが入り、次に、ブリジット&キャリー ペアが入る。

 

「‥‥」

 

グレニアが見上げるシャルンホルストは白く美しい船体をしているが、幽霊船会場となっていると分かるとその白い船体は不気味に見える。

そして、いよいよ自分たちの番となる。

 

「それではどうぞ」

 

受付係の生徒に促されてマリアとグレニアはシャルンホルストの中へと入る。

 

艦内は足元灯がぼんやりと灯っているだけで、船窓は全て舷窓蓋や暗幕で締め切られており暗い。

ただ、密閉されていても空調は効いているので、蒸し暑さはなく、むしろこの暗い雰囲気のせいで肌寒く感じるほどだ。

順路には矢印や英語とドイツ語で『順路』と書かれた紙が壁に貼り付けてある。

そして機関室や弾薬保管庫など、危険な箇所にはカギが掛かっており、入れないようになっている。

その他にも順路以外の通路にはバリケードが設置されており、迷子対策もちゃんととられていた。

 

「ひっ‥‥」

 

「グレニア、ビビり過ぎだって‥‥」

 

まだお化け役の生徒が出ていないのに、グレニアは既にこの雰囲気で怖がっている。

 

「ほら、行くよ」

 

意外とホラーに耐久があるマリアはスタスタと先に歩いていく。

 

「ま、待ってくれよ、マリア!!」

 

グレニアは震えながらマリアの背中にしがみつきながら歩いている。

 

「ちょっと、グレニア、歩きにくい‥‥」

 

「そ、そんなこと言ったって‥‥」

 

背中に張り付いて、膝がガクガクと震えていることからグレニアの歩みは遅く、マリアも自然とスローペースな歩調となって歩きにくそうだ。

やがて、順路は通路からシャルンホルストの講義室へとつながる。

マリアとグレニアが講義室に入ると、その部屋は壁や床のあちこちに目玉が描かれた絵や目玉のオブジェが存在している不気味な部屋に変貌していた。

そんな講義室の床で四つん這いになりながら、何かを捜している人が居た。

 

「人が居る‥‥」

 

「そ、そうだな‥‥」

 

きっとお化け役のシャルンホルストの生徒なのだろうけど、何かを落としたのだろうか?

 

「大丈夫ですか?何か落としたんですか?」

 

「お、おい、マリア‥‥」

 

マリアはお化け役の生徒が何か困っているのだろうと思い、そのお化け役の生徒に声をかける。

すると、お化け役の生徒がピタッと動きを止める。

 

「あっ、いらっしゃい‥‥ちょっと、すみませんが‥‥拾ってもらえませんか?‥‥その辺に散らばっている‥‥」

 

お化け役の生徒は四つん這いの姿勢からゆっくりとした仕草で立ち上がる。

しかし、顔は俯かせたままだ。

そして、バッ顔をあげると‥‥

 

「私の、め~だ~まぁ~‥‥」

 

瞼に特殊なメイクを施したのであろう。

そのお化け役の生徒には目がないように見えた。

しかも目元からは血のりがたっぷりとつけられて、目から血が流れているように見える。

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁー!!」

 

その姿を見たグレニアは講義室から走り去る。

 

「ちょっ、グレニア!!」

 

マリアは急いでグレニアの後を追う。

 

「ハァ‥‥ハァ‥‥ハァ‥‥ハァ‥‥」

 

流石にお化け役の生徒は追いかけてくる事はなく、グレニアは通路の壁に手をついて息を荒くしている。

 

「もう、グレニア、驚きすぎだよ」

 

「そ、そんなこと言ったって‥‥アイツ、目玉がなかったんだぞ!!マリア!!まさか、アイツ、わざわざ文化祭の為に自分の目玉をくりぬいたのか!?」

 

「そんなわけないでしょう。瞼にメイクを施していただけだよ」

 

そもそも目玉なんてくりぬいたら失明してブルーマーメイドなんてなれない。

マリアはグレニアの疑問に対してやや呆れながらも答える。

 

「さあ、次に行くよ」

 

「うぅ~‥‥まだ続くのか?」

 

「まだまだ先は長いよ」

 

「‥‥」

 

シャルンホルストは全長が235mある。

自分たちはまだ入ったばかり‥‥ゴールはまだまだ先だ。

そして、通路をマリアはスタスタと歩き、グレニアはビクビクしながら歩く。

次にやって来たのはシャルンホルストの食堂‥‥

他の学生艦では、文化祭中はレストランや休憩スペースとなっているが、シャルンホルストの食堂は幽霊船の順路となっている。

そして食堂にもやはり、お化け役の生徒が居た。

 

「‥‥」

 

(うぅ~‥‥やっぱり居た‥‥)

 

グレニアは先程のこともあり、かなり警戒している。

しかし、そのお化け役の生徒は脅かすようなそぶりも見せず、何故か厨房のカウンターを台拭きで拭いている。

自分たちの存在に気が付いていないのか?

困惑しているマリアとグレニア。

すると、カウンターを拭いていたお化け役の生徒がマリアとグレニアの存在に気づくと振り返る。

 

「ああ、いらっしゃい」

 

お化け役の生徒が自分たちに気づいたことに体をビクッと震わせるグレニア。

しかし、このお化け役の生徒はちゃんと目玉がついている。

 

「すみません。ここはまだ準備中なんです‥‥」

 

準備中と言う言葉を聞いてグレニアは無意識にホッとするが、マリアは違和感を覚える。

すでに幽霊船は始まっているのに、ここだけ未だに準備中だなんてあまりにも妙だ。

 

「また、あとで来てください」

 

体をマリアとグレニアに向けてきたお化け役の生徒。

しかし、腸部分は手術でもしたかのように開いており、臓器がピクピクと動いている。

服も周りに血のりをつけて血がついているかのように見える。

 

「うわぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

油断していたところへまさかの臓物を見せられたことで、グレニアは大声をあげて食堂から逃げる。

 

「なんなんだよ、くそっ、人を油断させといて‥‥」

 

グレニアは、準備中だとか言って脅かしてきたお化け役の生徒に対して愚痴る。

 

「いや、お化け屋敷なんだから、お化け役の人の言うことを鵜呑みにしちゃダメだよ」

 

マリアはグレニアに追い付いて、彼女の愚痴に対してツッコミを入れる。

 

「っていうよりも、お前はよく平気だな」

 

お化けに対してあまり驚いていない様子のマリアにグレニアはよく驚かないなと訊ねる。

 

「うーん‥‥私はもともと、ホラーは好きな方だし、それにグレニア‥‥お化けよりも人の方が怖い生き物だよ」

 

「‥‥」

 

日系イギリス人と言うことでマリアは幼少期からそう言った差別や偏見を味わってきたので、マリアが言うとなんか説得力がある。

 

「さっ、行こう」

 

「お、おう」

 

マリアとグレニアは通路を進んで行く。

講堂、食堂と続き、次にやって来たのは、医務室だった。

巡洋戦艦の医務室と言うことでそれなりの広さがあり、ベッドもいくつかある。

そのベッドには誰か横になっているのか膨らんでいるものがいくつかある。

 

(あの横になっている人がいきなり飛び起きるのか?)

 

今回は読めそうな展開だと思うグレニア。

しかし、いくら分かっていてもそのタイミングは分からない。

ビクビクしながらもベッドの脇を通り抜ける。

だが、ベッドからの脅かしはなかった。

なんだか、肩透かしを食らったかのような感じだ。

もうすぐベッドの並んでいる部屋から出ようとした時、その部屋に飾られていた一つの絵‥‥

そこには綺麗な看護婦の絵が描かれていた。

二人が絵の前を通っていると、

 

「ウボァァァァァー!!」

 

絵に描かれていた看護婦が奇声と共に悪魔の様な化け物顔へと変化する。

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁー!!」

 

実はこの絵、一見絵画の様に見えていたが、その実は、よくドッキリなどで使用される液晶絵画だった。

てっきりベッドから飛び起きるモノだと思っていたのに、予想外のドッキリにグレニアは声をあげる。

そして、隣の診察室へといくと、医療委員が座る椅子に誰かが座っている。

制服の上から白衣を着ている生徒‥‥シャルンホルストの医務委員だろうか?

マリアとグレニアに気づいた生徒はゆっくりとした動作で椅子から立ち上がる。

目玉もあるし、腸も裂かれていない。

しかし、口元には大きなマスクをしている。

 

「ねぇ‥‥わたし‥‥きれい‥‥?」

 

そうマリアとグレニアに訊ねながら口元のマスクを外す。

すると、医務委員の生徒の口は耳元まで裂けていた。

 

「おほほほほほほ‥‥」

 

(く、口裂け女!?)

 

その姿は1979年、日本において社会問題とかした口裂け女だった。

口裂け女に化けた生徒は高笑いをする。

日本に住んでおり、ホラーをそこそこ嗜んでいたマリアは当然、口裂け女の事は知っていた。

まさか、異国であるドイツで見るとは思ってもみなかった。

しかし、マリアと異なり口裂け女を知らないグレニアは‥‥

 

「ぎにゃぁぁぁぁー!!」

 

声を上げる。

目も既に涙目だ。

 

(グレニアのこんな声、聞いたことないよ‥‥)

 

もはや、お化けよりも、お化けに驚くグレニアの方が見ていて楽しい様子のマリアだった。

医務室を出て通路を歩いていると、

 

「うぅ~‥‥も、もう嫌だ‥‥」

 

グレニアは完全に憔悴している。

目じりには涙も浮かんだままだ。

 

「‥‥」

 

そんな様子を見ているとなんだか気の毒になってくる。

しかし、シャルンホルストのお化け役の生徒たちはその手を緩めることはない。

その後もお化けに扮したシャルンホルストの生徒の洗礼を受け、声をあげ、涙を流しまくるグレニア。

そして、やっとゴール付近に近づき、通路で息を整えていると、

 

カツーン、カツーン、カツーン

 

自分たちが今さっき通った通路の後ろから足音が聞こえてくる。

 

「あ、足音?」

 

「後ろからだね」

 

自分たちの後ろの人が追い付いてきたのだろうか?

マリアとグレニアが目を凝らして背後の通路を見ると、そこには確かに人影があった。

しかし、後ろから自分たちに近づいてくる人影は妙な歩き方をしている。

なんだか酔っぱらっているような千鳥足にも見える。

だが、海洋学校とはいえ、高校でアルコール飲料は販売していないし、持ち込みは固く禁止している。

ならば、今自分たちに近づいている人影は来客ではなく、脅かし役のお化け役の生徒の可能性が高い。

 

「‥‥」

 

「‥‥」

 

マリアとグレニアがジッと自分たちに近づいてくる人影を見ていると、やがてその姿が見えてくる。

それは、キール校のセーラー服を着ているのだが、首から上が存在していない首なし生徒だった。

首なし生徒は首がないにもかかわらず、まるでマリアとグレニアの位置が分かるかの様にマリアとグレニアの方へとゆっくりと二人に近づいてくる。

 

「か、顔!!顔!!顔!!こいつ、顔がねぇ!!」

 

グレニアは首なし生徒を指さして声を上げる。

 

「グレニア、落ち着いて、あれもシャルンホルストの生徒だって」

 

マリアはあまり驚いていない様子でグレニアにネタバレをする。

 

「大方、頭の無い首の被り物を被っているだけだって‥‥」

 

マリアはそう言うが、グレニアは恐怖でマリアの声が耳に入っていない。

その間にも首なし生徒は徐々に自分たちに近づいてくる、

 

「い、いやぁぁぁー!!」

 

「あっ、ちょっと、グレニア!!」

 

グレニアはさっさと通路を走り去っていく。

 

「まったく、グレニアったら‥‥」

 

逃げ去ったグレニアに呆れるマリア。

そんなマリアに首なし生徒は近づいてくる。

もう、グレニアはその場にいないがまだマリアが居るので、脅かす役割が残っていると思っているのだろうか?

すると、首なし生徒はマリアの首に手をかける。

 

「えっ!?」

 

首なし生徒の行動に戸惑うマリア。

しかもその首なし生徒の手は冷たかった。

まるで、氷枕を首に押し付けられているかのように‥‥

 

「ちょっ‥‥」

 

首なし生徒はそのまま体重をかけてマリアを通路に押し倒し、ギュッと手に力を入れてマリアの首を絞めてきた。

 

「うっ‥‥くっ‥‥ちょ、ちょっと‥‥」

 

脅かすのには少々やりすぎだ。

マリアは苦痛で顔を歪めるがその首なし生徒は手を緩めるどころか、手にますます力を入れてくる。

 

「うっ‥‥」

 

このままでは本当に絞殺されてしまうかもしれない。

いき過ぎな行為と本能的に命の危険を感じたマリアは、

 

「くっ‥‥このっ!!」

 

首なし生徒の腹を思いっきり蹴飛ばす。

腹を蹴とばされた首なし生徒は通路に倒れる。

 

「ごほっ、ごほっ‥‥」

 

暴力行為はさすがにやり過ぎたと思いながらも相手もシャレにならないぐらいの力で自分の首を絞めてきたのだから、お相子だろう。

マリアはグレニアを追いかけるために足早にその場から逃げるように去った。

 

(これ、絶対に首に痕が残っているよ‥‥)

 

思いっきり絞められたので、首には痕が残っているだろうと思うマリア。

やがて、ゴール付近でグレニアを見つけ、二人はゴールを出た。

 

外では先にゴールしたダートマス校のメンバーが待っていた。

 

「グレニアちゃん。大丈夫でした?」

 

ブリジットがグレニアに訊ねる。

 

「ん?あ、ああ‥‥これぐらい大したことねぇぞ」

 

と、強がるグレニア。

マリアが来る前にちゃんと目尻に浮かんだ涙とかは拭いていた。

 

「そうでしたの‥‥グレニアちゃんの事ですから、てっきり漏らしたかと思っていましたのに‥‥」

 

「誰が漏らすか!?」

 

(でも、涙は流していたよね?)

 

マリアはグレニアが涙目で大声をあげていたことは親友のせめてもの情けとプライドのため、黙っていた。

 

「で?キャビアの方はどうだった?もしかして、お前の方は漏らしたのか?」

 

「わ、私だって漏らしていません!!」

 

「でも、大泣きはしていましたよね?」

 

「ぶ、ブリジット様!?」

 

「なんだ?キャビア。情けねぇなぁ高校生にもなって、泣くなんて」

 

(グレニアも人の事は言えないよね?)

 

「あっ、そうだ。ここの人に一言、注意を言わないと‥‥」

 

マリアはシャルンホルストの生徒に首なし生徒のやり過ぎた行為を伝えに行く。

 

「すみません」

 

「はい?なんですか?」

 

「さっき、ここのお化け役の生徒に首を絞められたんですけど‥‥」

 

「えっ?首を‥ですか?」

 

「はい、あの通路に居た。首のないお化け役の生徒です」

 

「‥‥」

 

マリアは、声は荒げていないが、怒気を含む声でシャルンホルストの生徒に注意を入れる。

しかし、シャルンホルストの生徒はなんか顔色が悪い。

 

「えっ?マリア、アイツに首を絞められたのか!?」

 

「うん。ものすごい力だった」

 

「おいおい、いくらなんでもやり過ぎだぞ!!」

 

マリアの話を聞いて、グレニアもシャルンホルストの生徒に絡む。

 

「何かあったの?」

 

ブリジットたちも事情を聞いてくる。

 

「ああ、マリアの奴が、ここのお化け役の生徒から首を絞められたらしんだ」

 

「まぁ、それはやり過ぎですわね」

 

「ちょ、ちょっと待ってください。首のないお化けってなんですか?」

 

シャルンホルストの生徒は確認するかのように聞いてくる。

 

「はぁ?しらばっくれるなよ。あたしとマリアは見たんだぞ!!通路の奥から首のない奴がゆっくりとだが、追いかけてくるのをなぁ!!」

 

親友が行き過ぎた行為を受けたことでさっきまでとは180度変わって強気なグレニア。

しかし、

 

「グレニアちゃん、そんなお化けなんて居なかったわよ」

 

「私も見ていません」

 

「私も‥‥」

 

「私もです」

 

しかし、マリアとグレニア以外のダートマス校のメンバーは首なし生徒のお化けなんて見ていないと言う。

 

「はぁ?そんな訳ないだろう?確かにあたしとマリアは見たんだ!!」

 

「そうだよな?」

 

「う、うん‥‥それに首を強く絞められたから痕だって残っている筈だし‥‥」

 

マリアはその場のみんなに首を見せる。

確かにマリアの首には、彼女が言う通り、うっすらと絞められた痕が残っていた。

でも、シャルンホルストの生徒も幽霊船に入った他の来場者も首なし生徒のお化けには会っていないと誰もが口をそろえて言う。

 

 

「どうかしたんですか?」

 

「何かトラブルでもあったんですか?」

 

「じ、実は‥‥」

 

マリアの被害の件もあり、シャルンホルストの幽霊船は急遽中止となり、シュテルたち実行委員立ち会いのもと調査が行われた。

 

もしかしたら、幽霊船の暗がりを利用して犯罪者がシャルンホルストの内部に紛れ込んでいるかもしれないからだ。

しかし、記録された映像を見ると、幽霊船に入った来場者は全員、ゴールしており、シャルンホルストから出てきていないものは誰も居なかった。

シャルンホルストの生徒全員が集まり、マリアの首に残った手形と照合しても誰とも一致しなかった。

そんな中、キール校で昔から働いている用務員の人が騒ぎを聞きつけてやってきた。

 

「どうした?何かあったのかね?」

 

「は、はい‥‥実は‥‥」

 

シャルンホルストの生徒がその用務員さんに事情を話すと、

 

「首のない生徒‥‥?もしかして‥‥いや、そんなことは‥‥でも‥‥」

 

「何か知っているんですか?」

 

用務員は首なし生徒について何か知っている様な感じだった。

 

「うん‥‥実は‥‥」

 

用務員は、昔に起きたある出来事の事を話した。

 

昔、キール校の生徒が文化祭前日に踏切で亡くなると言う事故があった。

彼女は文化祭を楽しみにしていたのだが、その前日に亡くなると言う無念の死を遂げたのだ。

ところがいくら現場をさがしても被害者の頭部だけは見つからなかった。

そして、彼女が乗艦していた学生艦はシャルンホルストであり、彼女の髪はマリアと同じように綺麗な黒髪の生徒だったと言う。

その話を聞いて、一同は顔を青ざめる。

ホラーに耐性がある筈のマリアでさえ、今回は顔を青くしている。

 

「じゃ、じゃあ‥‥あたしたちが見たのは‥‥も、もしかして‥‥」

 

「ほ、本物の‥‥幽霊‥‥?」

 

マリアとグレニアが見た首なし生徒のお化けはその時の生徒のお化けで、マリアの首を絞めたのは、彼女の首を自分の首だと思い込んだせいなのかもしれない。

自分たちが見たあの首なし生徒のお化けが本物の幽霊だった可能性があり、マリアとグレニアはその場に倒れた。

 

「わっ、お客さん、大丈夫ですか!?」

 

「い、医務室へ!!早く!!」

 

倒れたマリアとグレニアは急いで医務室へと運ばれた。

 

 

後日、バチカンから改めて神父が呼ばれ、シャルンホルストにて慰霊祭が行われた。

そして、ダートマス校では‥‥

 

「えぇぇー!!艦長、キール校の文化祭に行ったんですか!?」

 

「どうして私たちも誘ってくれなかったんですか!?」

 

マリアとグレニアは、同じクラスメイトのソフィアとドロシーからキール校の文化祭に連れて行ってもらえなかったことに問い詰められることになった。

 

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