やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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今回、ヒンデンブルクが装備した墳進弾のイメージは、紺碧の艦隊OVA12話、風雲マダガスカル にて、戦艦長門が装備していた墳進弾と思ってください。




50話

 

キール校での文化祭で、まさかの出来事があったが、それ以外には問題なく、キール校の文化祭は終わった。

この文化祭にて、見学に来たダートマス校メンバーの中でシュテルは新たにグレニアの親友であるマリアとも知己を得た。

その他に、キール校もダートマス校と交流を深めるきっかけとなり、シュテルが夏休みでのダートマス校の体験入学はキール校にとってもプラスとなった。

それから月日が流れ、冬休み前となり、来年度の留学に日本の横須賀女子海洋高校への話がきた。

シュテルとしては日本へ行けるチャンスとなった。

しかし、このヒンデンブルクの日本への留学に対して、ミーナ教官は消極的だった。

それはシュテルに関係していた。

中等部の修了航海で、シュテルはイタリアのナポリにて、現地のマフィアに誘拐され、クラスメイトを守るため、身体にマフィアの凶弾を受けた。

次は高校一年の夏休み‥ダートマス校での体験入学にて、ドーバー海峡で海賊と遭遇し、現地のダートマスの街では連続殺人事件が起き、その事件に巻き込まれ、負傷した。

二度あることは三度ある‥‥これまで二度、シュテルが海外に出たら負傷した。

今度の日本への留学でまた彼女が怪我をするのではないかと心配だった。

だが、シュテル本人とキール校の学長であるアンネローゼが日本への留学に積極的だったのだ。

シュテルの場合は、日本に行けば戸塚と会うチャンスがあるかもしれないから、

アンネローゼの場合、今度の日本への留学には、ヴィルヘルムスハーフェン校のシュペークラスの参加が決まっていたので、ヴィルヘルムスハーフェン校の学長、ケルシュティンがアンネローゼにまたシュテルとテアとを互いに競い合わせようと言ってきたのだ。

交換留学の際は、シュテルがダートマス校との親善試合で、勲章を持っていかれたので、リベンジを申し出てきたのだ。

ミーナ教官は心配したが、シュテル本人と学長が日本への留学に積極的だったため、止めることは出来なかった。

なお、余談であるが、ヴィルヘルムスハーフェン校の首席(笑)であるクローナのビスマルクは日本ではなく、アメリカへ留学することになった。

クローナは留学先が日本ではなく、アメリカであることに不満がある様子で、不承不承の様子でアメリカへと向かって行った。

世界一の海洋技術国家である日本への留学はダートマス校への体験入学や留学と同じくらいに価値があるモノだったからだ。

その日本への留学が首席(笑)である自分たちビスマルククラスではなく、自分たちよりも格下のシュペークラスだったのが我慢ならなかったのだろう。

 

 

ドイツから日本まで海路ではかなりの距離があるので、ヒンデンブルククラスは今年度の学位を繰り上げで、キールを出発して一路、日本を目指した。

なお、ヒンデンブルクは夏休みと二学期の前半を利用して、改修工事が行われていた。

前部甲板にまだ試作型であるが、対空ロケット弾の垂直発射筒を左右に四基ずつ、計八基を装備していた。

フロート艦や海上都市の建造技術、造船技術が世界一の海洋国家日本。

医療と大砲を始めとする陸上兵器技術、飛行船技術を誇るドイツ。

そのドイツが新たに開発した噴進魚雷とは異なる技術、噴進弾(ロケット・ミサイル)‥‥

それを日本へ売り込むことも今回の留学にヒンデンブルクが選ばれたことも要因の一つだった。

日本への留学が決まった時、シュテルは戸塚に会えることで積極的だったが、クリスは、

 

(春にはヴィルヘルムスハーフェン校への交換留学。そして、今度は日本への留学‥‥なんか厄介払いされていない?私たち‥‥)

 

(でも、シュテルたちが日本へ行きたがっているならいいのかな?)

 

厄介払いかと思っていたが、シュテルたちは日本への留学を楽しみにしていた。

だからこそ、クリスはそれを口にすることはなかった。

 

そして、キールを出発したヒンデンブルクはジブラルタル海峡を通り、中等部の修了航海でやって来た地中海へとやって来た。

 

「地中海に入りました。次の変針点は15マイル先です」

 

メイリンがタブレットに表示されている電子海図を見て報告する。

 

「今のところ順調な航海ですね」

 

舵を握りながらレヴィがクリスに声をかける。

 

「そうね」

 

「‥‥」

 

クリスはチラッとシュテルを見る。

シュテルは鼻をすすっていた。

 

「艦長、大丈夫ですか?」

 

「ん?なに?」

 

「いえ、鼻をすすっていたので、もしかして、体調が悪いのではと思って‥‥」

 

「大丈夫だよ」

 

「そうですか?」

 

シュテル本人は大丈夫だと言うが、クリスには一抹の不安がつき纏った。

 

「艦長、ダートマス校の方からもらった紅茶です」

 

炊事委員のクラスメイトがシュテルにブリジットからもらった紅茶を淹れて来てくれた。

 

「ああ、ありがとう」

 

紅茶が入ったカップを受け取り、紅茶の匂いを嗅ぐが、今のシュテルは鼻が詰まっていたので、香りを楽しむことが出来なかった。

そして、紅茶を飲んでもやはり味を感じることが出来なかった。

 

(うーん‥‥クリスの言う通り、風邪を引いたかな‥‥?)

 

シュテルは風邪かと思ったが、咳やのどの痛み、頭痛などの症状がなかったので、風邪だとは思っておらず、医務委員のウルスラにも相談していなかった。

ヒンデンブルクはこのまま地中海を通過して、スエズ運河、アラビア海、インド洋を通り、セイロン島、シンガポールで補給を行い、南シナ海、東シナ海を経由して日本の神奈川県、横須賀を目指す。

 

次の目的地であるスエズ運河を目指して地中海を航行していたヒンデンブルクだったが、

 

「そこの学生艦!!直ちに航行を止め、近くの港に停泊しなさい!!」

 

突如、後方からインディペンデンス級沿海域戦闘艦がヒンデンブルクに接近しながら警告してきた。

 

「なんだ?」

 

「あ、あれは‥‥ブルーマーメイドの艦ですよ!!」

 

白いインディペンデンス級沿海域戦闘艦の船体には青い人魚の絵があり、それはこの世界における女性たちの憧れの職業であるブルーマーメイドの艦だった。

 

「わ、私たち何かまずい事でもしたかな?」

 

ブルーマーメイドから、いきなり呼び止められるようなことに思い当たる節もなく、何故自分たちが呼び止められたのか見当もつかない。

しかし、ブルーマーメイドの指示を破るわけにもいかないので、ヒンデンブルクはブルーマーメイドの指示に従いマルタ島の港街に停泊した。

そして桟橋にて、シュテルを始めとするヒンデンブルクの幹部がブルーマーメイドに事情を聞きに行く。

ブルーマーメイドの艦からはその艦の艦長なのか、眠そうな目をしたブルーマーメイドの隊員が降りてきた。

彼女に事情を訊ねると、

 

「この先の海域には海賊が出るから~~~通行止めだよ~~~」

 

目と同じようになんだか眠そうな口調でこの先の海域が通行止めであることをシュテルたちに伝える。

 

「「「海賊!?」」」

 

この先の海域が通行止めの理由を聞いて、思わず声に出すヒンデンブルクの幹部たち。

 

(また海賊かよ‥‥)

 

夏休みのダートマス校への体験入学にて、ドーバー海峡で海賊騒動に巻き込まれたシュテルに関してはまたもや海賊の出現に呆れる。

 

(ミーナ教官が言うように、やっぱり俺って海外に出ると事件に巻き込まれて怪我をする運命なのか?)

 

まだ事件に巻き込まれては居ないし、怪我もしていないが、この先の海域に海賊が出現すると言うことで、事件に巻き込まれる予感と怪我を負いそうな予感がするシュテル。

 

「最近、この近海では海賊の被害が多発中でね~~~安全のためにこの海域の航行を規制しているの~~~」

 

「じゃあ、日本には行けないんですか?」

 

クリスがブルーマーメイドの隊員に訊ねると、

 

「そうだね~‥‥ジブラルタルに戻ってアフリカをぐるっと回って喜望峰を通り抜けてなら、いけるかもねぇ~~~」

 

あくびをしながら日本へ行くには、アフリカの喜望峰経由で行けと言う。

眠そうなのは、この隊員の個性ではなく、ここ連日徹夜で海賊を捜していた為、まともに寝ていないのだろう。

 

「それだと何日かかるとおもっているんですか?」

 

「バルチック艦隊じゃないんだから‥‥」

 

流石にアフリカの喜望峰経由では、あまりにも日数がかかり過ぎる。

しかし、どのみち先に進まなければ日本には行けない。

 

「どうしますか?艦長‥‥」

 

クリスがシュテルに戻ってアフリカの喜望峰経由で日本を目指すか、このままここでブルーマーメイドが海賊を摘発して、規制が解けるのを待つか。

 

「アフリカ経由ですと、学校に連絡をして、マダガスカルあたりで補給をしないといけませんね」

 

メイリンがもし、アフリカの喜望峰経由で行くのであれば、セイロン島の前にマダガスカル島で補給をしなければならないことを言う。

 

「でも、それだと約束の期日に間に合うかな?」

 

留学先の日本でもカリキュラムがあるので、それに間に合うように日本に到着しなければならない。

 

「‥‥」

 

シュテルがどうしたものかと考え込んでいると、

 

「こらっ!!いい加減にしなさい!!」

 

「もうっ、分かったから放してよ!!」

 

他のブルーマーメイドの隊員がセーラー服姿の同年代の少女の腕を引いていた。

 

「自分で歩けるからさぁ!!」

 

腕を引かれていた少女は強引に自分の腕を掴んでいたブルーマーメイドの隊員の腕を振り払う。

 

「そもそも、いつまで足止めさせる気なのさ‥‥」

 

「なにか言いました?」

 

「いいえ、何も言っていません!」

 

それから少女は隊員からある程度の距離をとると、

 

「『堅物ブルマー』って言ったんだよ!!」

 

「こらぁ!!」

 

少女と隊員のやり取りは、問題児と学校の教師のようだった。

 

「なんだ?あの連中は‥‥?」

 

ユーリが訝しむ様に少女を見て呟く。

 

「えっと‥‥あの制服は‥‥イタリアのタラント校の生徒ですね」

 

メイリンがタブレットで少女が来ていた制服を調べて彼女がイタリアにあるタラント海洋学校の生徒だと突き止める。

 

「ちぇっ、融通が利かないなぁ~」

 

愚痴を言いながらタラント校の少女がシュテルたちの方へとやってきた。

 

「あっ、こっちに来た‥‥」

 

「ん?やっほ、その制服、もしかしてドイツの人?」

 

しかも話しかけてきた。

 

「君たちも、もしかしてここで足止めをくらっているの?」

 

「あ、ああ‥‥」

 

シュテルたちは先程のやり取りを見て、彼女にはあまり関わりたくないなぁ~と思った。

 

「そっか、そっか、それじゃあ、私たち仲間だね」

 

同じく足止めをくらっていることから自分たちは仲間だと言う少女。

 

「私はタラント校の航洋艦、リンチェの艦長、アンネッタ。ドイツ艦の艦長さん、どうもねぇ♪」

 

タラント校の生徒、アンネッタ・パリオッティは自己紹介しながら、クリスに握手を求めてくる。

 

「あっ、どうも‥‥私は副長のクリスです」

 

「えっ?君が副長なの?てっきり艦長かと‥‥」

 

「艦長は、こっちです」

 

クリスはアンネッタにシュテルを紹介する。

 

「えっ!?その目つきが悪くてぼぉっとしていそうな人が艦長!?いやぁ~ごめん、ごめん」

 

アンネッタはシュテルが艦長であることに驚いている。

 

「この目は生まれつきだ。あなたこそ、艦長ならば身だしなみを整えたらどうだ?‥‥あばれたせいで、胸のパットがずれているぞ」

 

「あはははは!!言われてやんの艦長!!」

 

アンネッタの隣に居たもう一人のタラント校の生徒‥リンチェの副長はシュテルの指摘を受けたアンネッタを見て大爆笑している。

 

「う、うるさい!!笑うな!!」

 

(コント集団か?こいつらは‥‥?それとも漫才部にでも所属しているのか?)

 

タラント校の生徒たちのやり取りを見て、コントのように思えたシュテルだった。

 

それからシュテルたちドイツ組とアンネッタたちイタリア組は近くのレストランに入る。

 

「いやぁ~さっきはごめんね。実は私たちも一週間、ここに足止めをくらっちゃってね。仲間を見つけて、ついテンションが上がっちゃったのさ。このままだといつまで経っても日本には行けないしね」

 

「へぇ~‥‥あなたたちも日本を目指しているの?」

 

「そう、留学で日本の『サセボ』ってところを目指しているのさ。君たちもそうだろう?」

 

「ええ‥‥もっとも、私たちは横須賀だけどね。でも、イタリアでも似たような話があるんだね」

 

「もちろん!日本は国土の沈降と言う大きなハンディを克服するため、世界随一の海洋技術を開発した国家だ。その技術力を学ぶカリキュラムはどの学校でも必須さ」

 

アンネッタは日本への留学が決まったことを誇り高く言うが、

 

「まぁ、私らは落第寸前だからそんなのよりも単位が欲しいだけなんだよね」

 

リンチェの副長が本音をぶちまける。

 

「言うなよ!!」

 

 

(なんか、千葉村の葉山たちと同じだな‥‥)

 

千葉村での葉山たちも内申点を目当てにボランティア活動に参加していた。

リンチェクラスも日本での留学で技術を学ぶというよりも留学に参加することで貰える単位を目当ての様だ。

 

「ま、まぁ、つまり、これ以上日本への到着を遅らせたくはないんだ。だからさ、私たちと協力してここから抜け出さないか?」

 

「‥‥それは、つまりブルーマーメイドの指示を破ると言うことか?」

 

アンネッタの提案はブルーマーメイドの指示を破って海賊が出現する海域を強行突破すると言うことだ。

ブルーマーメイドの指示を破ると言うことで、ヒンデンブルクの幹部は動揺する。

 

「二隻で行けばきっとブルマーを振り切れるし、海賊も怖くないって♪~ましてや、そっちは超弩級の戦艦なんだし楽勝だって♪~それに君たちもここで足止めは嫌だろう?」

 

アンネッタは学生艦とはいえ、旧軍艦二隻ならば、ブルーマーメイドの規制線を突破出来るだろうし、海賊も戦艦のヒンデンブルクを相手に襲い掛かっては来ないだろうと言う。

 

「‥‥確かに魅力的な提案だな」

 

「か、艦長!?」

 

(おっ、喰いついた‥‥)

 

シュテルはアンネッタの提案に乗ろうと言うのかとクリスは思わず声をあげる。

 

「民間船を改造しただけの武装海賊船相手なら、確かにヒンデンブルクが負けるはずがない。そんな奴らのために時間を無駄にするわけにもいかないな‥‥」

 

リンチェはアンネッタの話では彼女らは一週間もここに足止めされている様だし、アフリカの喜望峰経由では時間がかかり過ぎる。

ブルーマーメイドがここの海賊を捕まえるのもいつになるのか分からない。

日本を目指すのであれば、アンネッタの提案を受けるべきなのかもしれないが‥‥

 

「だが、断る。そんな自分勝手な利害だけで、海を出るほど、我々は愚かではない。艦長として、ヒンデンブルクの乗員全員をそんなことに巻き込むわけにはいかない!!」

 

シュテルははっきりとアンネッタの提案を拒否した。

 

(それにコイツからは何となく相模と同じ匂いがするからな‥‥)

 

強行突破に失敗したら、アンネッタはシュテルたち、ヒンデンブルクに責任を押し付けてきそうだった。

大方、『ヒンデンブルクの人たちに大砲で脅されて無理矢理やらされた』とでも言う気だろう。

 

「‥‥やれやれ、交渉決裂か‥‥残念」

 

アンネッタはあっさりと引いた。

 

(あっさり過ぎるな‥‥こいつ、何か企んでいるな‥‥)

 

あまりにもあっさり過ぎるアンネッタの行動に妙な違和感を覚えるシュテルだった。

実際にアンネッタの顔からは何かを企んでいますと言う雰囲気があったからだ。

 

 

それからシュテルたちはヒンデンブルクに戻って他のクラスメイトに現状を伝えるために艦へと戻っていた。

 

「彼女たち本気でしょうか?」

 

「さあね‥‥たとえ本気でもこっちに迷惑がかからなければそれでいい」

 

「それにしても艦長が向こうの提案を断ってくれて良かったですよ」

 

「当たり前だ」

 

「確かにいくら足止めをされているのは分かりますが、やり過ぎですね」

 

メイリンは自分たちよりも足止めの期間が長いとはいえ、ブルーマーメイドの指示を破って海賊が出現する海域を突破するのはあまりにも無茶苦茶だと言う。

 

「でも、海賊か‥‥規制が解けるのはいつになることやら‥‥」

 

ユーリはこの海域の海賊がいつ捕まるのか見当もつかないことに思わずため息が出る。

 

「いっそ、開き直って此処(マルタ島)でバカンスでもするかな?」

 

「ちょっ、シュテルン!?」

 

「冗談だよ」

 

海賊の規制が解けるまで、アフリカの喜望峰経由を止めてここで待って、マルタ島でバカンスを楽しむかと冗談をほのめかす。

その時、

 

ヒュー‥‥ドーン!!

 

突然、港の方から大きな音がした。

音がした方を見ると、空には花火が打ちあがる。

 

「花火?」

 

「なんで、この季節に?しかも、この場所で‥‥?」

 

今日はマルタ島でお祭りなどのイベントは無く、花火を打ち上げるような予定もない。

 

「それにおかしいな‥あの花火‥‥」

 

「ええ、心なしか、ヒンデンブルクの方から上がっているようにも見えます‥‥」

 

「ま、まさかっ!?」

 

「えっ?艦長!?」

 

「どうしたのさ!?シュテルン!?」

 

シュテルがヒンデンブルクへと走って戻る。

他の幹部生徒もシュテルの後を追いかける。

そして、

 

「あっ!!アレ!!」

 

「さっきのタラント校の奴だ!!」

 

ヒンデンブルクの近くでは、先程のタラント校の生徒‥‥リンチェの副長がスキッパーの後ろに花火筒を取り付けて走り去っていくのか見えた。

 

「くっ、図られた‥‥アイツら、私たちを囮に使いやがった‥‥」

 

シュテルは怒りで目を細める。

その為なのか、口調も荒く汚い。

 

「えっ?囮‥ですか!?」

 

「ああ、アイツら、ヒンデンブルクの近くで花火を打ち上げて、ブルーマーメイドの目をこちらに惹きつけてその隙に規制海域を突破するつもりなんだ!!」

 

「あの人たち、私たちを無理矢理巻き込んだな‥‥」

 

クリスもシュテル同様、アンネッタたちの行動に怒りを抱いていた。

 

「ど、どうしますか?ブルーマーメイドに説明を‥‥」

 

メイリンはブルーマーメイドの隊員に決してこの騒動にヒンデンブルクは関係していないことを説明するかと提案するが、

 

「いや、時間をかければ連中の思うつぼだ‥‥そっちがその気ならば‥‥出航準備!!」

 

「ええええっー!!」

 

「連中を追いかけてブルーマーメイドにつきだしてやる!!」

 

このままでは冤罪をかけられそうなので、シュテルたちはリンチェを取っ捕まえてブルーマーメイドに突き出してやるつもりで、急いで出航した。

 

その頃、シュテルの読み通り、ブルーマーメイドの目がヒンデンブルクに向かっている頃、リンチェはマルタ島の沖へと向かっていた。

 

「あはははは!!やっぱり、私って天才だな!!ヒンデンブルクの連中には悪い事をしたけど、これも単位のため!!まっ、どうせ海賊も倒すつもりだったし♪~そしたら、規制も解けてアイツらも日本へ行けるんだから結果オーライじゃん!!私ってやさしー♪~」

 

アンネッタが艦長を務めるリンチェは、レオーネ級駆逐艦の一隻であるが、前世(史実)では、未完成となった艦だった。

駆逐艦の艦種に相応しい最大速力34ノットの高速を出せる艦で、武装は12cm(45口径)連装速射砲4基8門、4cm(39口径)単装ポムポム砲2基2門、2cm(65口径)連装機関砲2基4門、53cm連装魚雷発射管2基4門、機雷は60発を搭載することができる。

相手が非武装の民間船を改造した民間武装船相手ならば、駆逐艦でも十分に戦える。

アンネッタはこのまま、地中海の規制海域を突破して、万が一海賊船が現れても十分に対応できると思っていた。

 

「艦長!!」

 

「ん?どうしたの?」

 

「ヒンデンブルクがブルーマーメイドの艦を引き連れて追ってきます!!」

 

「はぁっ!?」

 

アンネッタとしては、自分の提案を蹴ったシュテルなのだから、あのままマルタ島に残っていると思ったのだ。

ブルーマーメイドの目がヒンデンブルクに向かっている間もヒンデンブルクはそのまま港に停泊して、そのまま聴取を受けているのかと思っていた。

聴取の間に時間と距離は十分に稼げるはずだった。

しかし、ヒンデンブルクは‥‥シュテルは、アンネッタの予想に反してブルーマーメイドを引き連れて追いかけてきた。

 

「ヒンデンブルク号!!直ちに停船しなさい!!」

 

後方から追いかけてくるブルーマーメイド艦からは船外放送でヒンデンブルクに停船命令を出してくる。

しかし、ヒンデンブルクは停船せずにリンチェを追いかけて行く。

 

「か、艦長、これって絶対私たちも命令無視して、規制海域へ向かっているように見えますよね?」

 

舵を握っているレヴィは自分たちも命令違反で処罰されないか心配の様子。

 

「構わん!!このまま進め!!航行しながら、ブルーマーメイド艦に通信を入れて事情を説明しろ!!例え、ブルマーが信じなくてもあの連中を取っ捕まえることは出来るからな‥‥」

 

シュテルはニヤリと口元を歪めて不気味に笑っていた。

 

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