やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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51話

日本への留学のため、ドイツのキールを出港し、地中海、スエズ運河経由で日本を目指していたヒンデンブルクであったが、地中海に入り、スエズ運河を目指していた頃、突如、ブルーマーメイドのインディペンデンス級沿海域戦闘艦がやってきて停船命令を出してきた。

 

流石にブルーマーメイドの指示を無視するわけにもいかないので、ヒンデンブルクは一番近い港町である、マルタ島に停泊した。

 

そして、マルタ島にてブルーマーメイドの隊員からスエズ運河付近の海域で海賊が出没するので、現在その周辺海域が海上封鎖されている事実を知る。

 

日本へ行くにはスエズ運河以外にもアフリカの喜望峰を回るコースもあるが、それだとかなりの時間がかかる。

 

ブルーマーメイドが海賊を捕まえて海上封鎖が解けるのをまつか?

 

それとも時間がかかってもアフリカの喜望峰経由で日本を目指すか?

 

ヒンデンブルクの幹部が考えていると、同じくここで日本行きへの足止めをくらっているイタリアのタラント校の生徒がいた。

 

レオーネ級駆逐艦のリンチェ艦長のアンネッタだった。

 

彼女は日本へ行くため、シュテルたちに封鎖海域の強行突破を提案してきた。

 

しかし、シュテルは前世の経験とヒンデンブルクの艦長として彼女の提案を蹴った。

 

強行突破するのをアンネッタたち、リンチェ一隻でするのであれば、別に構わないと思った。

 

だが、彼女たちはココに一週間足止めをくらい、その間も何度か強行突破を試みた様子があった。

 

アンネッタを初めて見た時も、彼女はブルーマーメイドの隊員に引っ張られていた。

 

あの時も強行突破を試みたが失敗に終わり、ブルーマーメイドの隊員に捕まったのだろう。

 

これまでの失敗の経験とこれ以上の足止めは御免だと思ったアンネッタはなんと、ヒンデンブルクを強制的に巻き込んで、封鎖海域の強行突破を試みたのであった。

 

自分たちがダシに使われたことにシュテルは大激怒。

 

ブルーマーメイドの艦を引き連れてリンチェを追いかけ始めたのだった。

 

「艦長、どうしましょう!?」

 

リンチェでは、まさかヒンデンブルクがブルーマーメイドの艦を引き連れて自分たちを追いかけてくるなんて予想外だった。

 

自分の提案に乗ってこなかったことから、ヒンデンブルクの艦長、シュテルは頭の固い堅物だと思ったからだ。

 

ヒンデンブルクがブルーマーメイドを港で引き留めている間に自分たちは封鎖海域を一気に突破してスエズ運河に入り込み、アラビア海へと抜けるつもりだった。

 

スエズ運河まで来てしまえば、ブルーマーメイドも追いかけてくるのを諦めると思っていたのだ。

 

舵を握るリンチェの航海長が不安そうに自分に指示を訊ねてくる。

 

「ヒンデンブルクの最大速力は31ノット‥‥こっちは34ノット出るんだ!!このまま逃げ切る!!機関長!!機関最大!!」

 

例え、ヒンデンブルクがブルーマーメイドを引き連れて来てもこっちは最大速力でヒンデンブルクと3ノットの差があるので、このまま逃げ切れるとアンネッタはこの時はまだそう思っていた。

 

しかし、またもやシュテルは自分の予想外の行動に出る。

 

「ユーリ!!」

 

「は、はい!!」

 

「第一、第二副砲に模擬弾装填!!」

 

「えっ?シュテルン!?」

 

「艦長、リンチェに砲撃を加えるつもりですか!?」

 

シュテルの命令を聞いて、ユーリもメイリンもドキッとする。

 

いくら模擬弾でも他国の学生艦にいきなり砲撃なんて乱暴すぎる。

 

もし、リンチェの乗員に負傷者‥最悪死亡者を出せば、日本への留学なんて泡と消え、外交問題に発展すれば、退学処分になってしまう。

 

「いや、敢えて外して速度を鈍らせる。このままではいずれ、振り切られるからな‥‥」

 

それでも、問題はありそうだ。

 

「通信長」

 

「は、はい」

 

「威嚇射撃をする旨をブルーマーメイドの方にも伝えておいて‥‥それと、こちらからも停船命令をリンチェに送って‥‥リンチェがこちらの停船命令に従えば、砲撃はキャンセル。しかし、このまま停船命令を無視して逃げる様ならば、威嚇射撃をする」

 

「わかりました」

 

通信長はブルーマーメイドの艦にこれより、リンチェに対して停船命令を送り、その命令に従わぬようであれば、リンチェに対して威嚇射撃を行うことを伝えた後、リンチェに対して停船命令を送る。

 

「か、艦長、ヒンデンブルクから停船命令です」

 

「停船命令?無視だ!!無視!!やっとここまで来たんだ‥‥諦めてたまるか!!」

 

「しかし、艦長、ヒンデンブルクからは停船しない場合は砲撃すると言ってきています」

 

「そんなのブラフに決まっているだろう」

 

「ですが‥‥」

 

「私たちはイタリアのタラント校の生徒で、向こうはドイツのキール校の生徒だ。他校‥ましてや、他国の学生艦に対してそう簡単に攻撃なんてするはずがない!!」

 

「そ、そうですよね‥‥」

 

アンネッタの言葉を聞いて、リンチェの艦橋には安堵感が生まれる。

 

だが‥‥

 

ドーン!!ドーン!!

 

後方から発砲音が聞こえてきたかと思ったら、

 

ザパーン!!ザパーン!!

 

「ぬぅぉっ!!」

 

「きゃっ!!」

 

リンチェの周囲に水柱が立つ。

 

「ひ、ヒンデンブルク、発砲!!」

 

「ほ、本当に撃ってきた!!」

 

「くっ、一体、どういうつもりだ?あの艦長‥‥」

 

アンネッタはシュテルがイカレているんじゃないかとさえ思った。

 

「か、艦長どうしましょう?」

 

「‥‥ここまで来たんだ。今更諦めてたまるモノか!!このまま進め!!」

 

「で、でも‥‥」

 

「所詮威嚇射撃だ。ヒンデンブルクはこちらに当てるつもりはない!!」

 

撃たれても、ヒンデンブルクはリンチェの船体に当てることはない筈だ。

 

それこそ、国際問題に発展する。

 

このままスエズ運河に逃げ込めば、ブルーマーメイドもヒンデンブルクも追撃を諦めるだろうと思っていたが、

 

リンチェはそれでも万が一を考えてヒンデンブルクの砲撃を回避するかのようにジグザグ運転をしながらスエズ運河を目指して逃亡する。

 

だが‥‥

 

「か、艦長!!」

 

「今度はなに!?」

 

「ぜ、前方にブルーマーメイドの艦が!!」

 

「な、なんで‥‥」

 

アンネッタはどうして、自分たちの前にブルーマーメイドの艦が居るのか理解出来なかった。

ブルーマーメイドの艦は自分の後方‥‥ヒンデンブルクの後方に居るはずだった。

 

それは自分たちの前に居る。

 

新たな援軍か?

 

リンチェの乗員たちはブルーマーメイドが新たな援軍を要請したのかと思ったが、そうではなかった。

 

ユーリはリンチェの逃走経路を予測して、副砲を撃ち、ブルーマーメイドが網を張っていた方へと追い込んだのだ。

 

リンチェはスエズ運河に向かって逃げ込んでいるかと思ったら、ヒンデンブルクの砲撃を躱す内に大きく旋回してマルタ島の方へと戻っていたのだ。

 

そこをヒンデンブルクの後ろから追いかけてきたブルーマーメイドの艦がリンチェを捕まえた。

 

「あいつら~やってくれたなぁ~!!」

 

「リンチェ号!!直ちに機関を停止しなさい!!」

 

ブルーマーメイドの艦からはスキッパーも数隻降ろされ、完全にリンチェを包囲した。

 

「く、くそ~‥‥降参だ‥‥」

 

流石にここまで来てはもう、この包囲網を突破するのは無理だったので、リンチェは大人しく、ブルーマーメイドの指示に従った。

 

マルタ島から脱出して、スエズ運河を目指していたリンチェは、ふりだしであるマルタ島へと戻ることになった。

 

日が昇ると、

 

「イタリア艦の逃走阻止の協力に感謝します。私はこの海域を担当しているリンゴルです。君たちのおかげで無事にリンチェを確保できました。とはいえ、威嚇射撃をするのは少々やり過ぎでしたけど‥‥」

 

ヒンデンブルクの乗員はブルーマーメイドの隊員からやり過ぎではあるが、リンチェを無事に捕まえることが出来たので、結果オーライだった。

 

リンゴルと名乗るブルーマーメイドの隊員は、この海域を担当する主任ブルーマーメイドの隊員である。

 

彼女の後ろにはあの眠そうな隊員があくびをして立っている。

 

(いくら、徹夜続きで眠くても、学生の前であくびをするのは止めなさい)

 

「いえ、こちらこそ、ご理解を頂き恐縮です」

 

他国の学生艦に威嚇とはいえ、発砲したのだから、国際問題ギリギリの行為であったが、リンゴルはそれを不問に付してくれた。

 

「あーあ、折角、私たちが海賊を取っ捕まえてやろうと言っているのにさぁ!!」

 

「おとなしくしなさい」

 

アンネッタはブルーマーメイドの隊員に襟首を掴まれている。

 

「黙りなさい、全く」

 

(ある意味、海賊よりも厄介な人ね‥‥)

 

クリスはアンネッタを見てそんな印象を受ける。

 

「でも、急いでいる中、ごめんなさい。海賊問題はまだかかりそうなの」

 

「そうですか‥‥」

 

(うーん‥‥これなら、アフリカの喜望峰経由で日本を目指すか‥‥)

 

海賊問題が収束しなければ、このままここで足止めをくらいそうであり、しかもその海賊問題がいつ、解決するのかさえも目途が立っていない。

 

それならば、いつ解決するか分からない海賊問題を放置して、アフリカの喜望峰経由で日本を目指したほうがむしろ早いのかもしれないと思うシュテル。

 

そもそも、自分はブルーマーメイドではなく、一介の学生‥‥

 

海賊問題にむやみやたらに首を突っ込み、乗員を危険にさらすわけにはいかない。

 

「よければ何らかの措置がとられるよう、我々の方から学校側に連絡をしておきましょう」

 

「ありがとうございます」

 

「では、艦長。あなたの名前は?」

 

「碇‥‥シュテル・H(八幡)・ラングレー・碇です」

 

「碇?もしかして、昨年、ナポリで臓器密売の犯罪組織の逮捕、そして今年の夏にドーバー海峡で海賊を捕まえ、更にダートマスの街で起きた連続殺人事件を解決したって言う‥‥」

 

「えっ?ええ‥‥」

 

「それだけ、優秀な学生なら、日本への留学も当然ね‥‥もしよければ、我々の護衛つきと言う条件で、特別にこの海域を航行させましょうか?」

 

「いいんですか?」

 

「ええ、調査の結果、海賊は夕方から夜にかけて出没することが判明しているから、日中に渡ってしまえば問題ないでしょう」

 

「ずるいぞ!!贔屓だ!!」

 

リンゴルの提案にアンネッタは当然、納得が出来ずに不満な声をあげる。

 

「はいはい、わかったわ。貴方たちもついてきなさい」

 

「えっ?主任、マジですか?」

 

流石にアンネッタをこのままここに残してはいずれまた、脱走騒動を起こしそうなので、リンゴルはリンチェも連れて行くことにした。

 

まさか、これまでの実績でこの足止めを何とか打開できることにヒンデンブルクの乗員は喜んだ。

 

早速艦に戻って、出航準備をしようとした時、シュテルはふらつき、そのままその場に倒れた。

 

「艦長!!」

 

「シュテルン!!」

 

慌てて、クリスたちが駆け寄り、シュテルを抱き起す。

 

「うわっ、凄い熱‥‥」

 

「やっぱり、体調不良だったんだ‥‥」

 

シュテルはそのまま医務室へと運ばれ、彼女が回復するまで、ヒンデンブルクの指揮は副長であるクリスが執ることになった。

 

先程、リンチェを追いかける時、妙にテンションが高かったのは、相模に似たアンネッタに利用されたことによる怒りと体調不良からくる異常なテンションからによる原因だった。

 

「リンゴル主任、スキアーヴィ、トーナ、出航準備整いました」

 

ブルーマーメイドの艦は出航準備が整い、いつでも出航できる状態となる。

 

「よろしい、両艦とも指示があるまで待機。あとは学生艦たちか‥‥」

 

「失礼します。ヒンデンブルク副長のクリス・フォン・エブナーです」

 

「記録員のメイリン・ホークです」

 

「連絡が遅れて申し訳ありません。ヒンデンブルクも出航準備が整いました」

 

「わかりました。そちらも指示があるまで待機をお願いします」

 

「はい」

 

「ところで、碇艦長はどうしました?姿が見えないが‥‥?」

 

「艦長は突然の体調不良の為、現在療養中です」

 

「そうですか‥‥まぁ、艦長というモノは、見えない疲労が溜まるモノだ。君たちも気にかけてやるんだぞ」

 

「はい」

 

あとはリンチェの状況だけだが、未だにアンネッタからは報告がない。

 

そこへ、

 

「ずみまぜん~おぐれまじだ~」

 

フラフラとなり、リンチェの副長に支えられたアンネッタがやって来た。

 

「すみません。ここ数ヶ月の蓄積疲労が‥‥」

 

アンネッタはここ数ヶ月間の疲労がピークに達して今現在、フラフラとなっていると言うが、

 

「いや、本当は昨日バカ騒ぎをしたせいッス」

 

「だから言うなって!」

 

前祝いでもしたのか?

 

それとも、昨日の脱走騒動の始末書でも書かされたのか?

 

少なくとも数ヶ月の蓄積疲労でフラフラになっていたわけではない様だ。

 

「あれは別物だ」

 

「わかっています」

 

リンゴルとクリスが呆れるような白い目でフラフラなアンネッタを見ていた。

 

「ちょっ、そこ!!なに残念そうな顔をしているの!?」

 

アンネッタはリンゴルとクリスの視線に気づき、声を上げる。

 

彼女は自分が何故、残念そうに見られているのか理解できないようだった。

 

(ある意味、由比ヶ浜さんと似たタイプの人間ですね‥‥)

 

クリスはアンネッタと由比ヶ浜が同類に見えた。

 

「でも、これでようやく、マルタともおさらばだ!!ありがとな!!」

 

一週間以上このマルタ島で足止めをくらったが、これでなんとか日本を目指すことができるので、フラフラになりながらもテンションは高かった。

 

「随分と馴れ馴れしいな‥‥こっちは巻き込まれて迷惑を被ったのに‥‥」

 

「まだ怒ってんの?ほんと、昨日の事は悪かったてば‥‥」

 

「‥‥」

 

アンネッタは目を潤ませて上目遣いでクリスに謝るが、どうもそれも芝居がかっていてどうも信用が置けない。

 

「反省しても貴女が私たちを利用した事実は変わらないんだから」

 

クリスが注意すると、

 

「胸が小さい者同士仲良くしようよ~そんなんだと、胸と同じで、人間としての器も小さい人だと思われるよぉ~」

 

「こ、殺す‥‥ぶっ殺す‥‥叩き殺してやる‥‥!!」

 

完全にキャラ崩壊を起こしているクリス。

 

「ふ、副長!!落ち着いて!!」

 

知らなかったとはいえ、クリスにとって禁句である胸について平然と語るアンネッタ。

 

そんなアンネッタに対して、メイリンは慌ててクリスを抑える。

 

「‥‥とりあえず、日の出と共に出航の指示を出すから待機していなさい」

 

「はい」

 

そして、日の出と共にブルーマーメイドの艦であるスキアーヴィ、トーナの二隻、ヒンデンブルクとリンチェはマルタ島の港を出港した。

 

「地中海だ!!」

 

「艦長、マルタ島周辺も地中海ですよ」

 

「知っているよ。喜びを表したかったんだよ!!」

 

「じゃあ、恥ずかしいのでやめてください」

 

「ないをぉぉぉー!!」

 

スピーカーからはアンネッタのはしゃいだ声が聞こえる。

 

連携と指示を出しやすいために四艦の通信回線は開かれたままとなっている。

 

「向こうは相変わらず騒がしいな」

 

クリスはそう言うが、長い船生活にはああいったマスコットの様な人物は意外と貴重な人材であったりもする。

 

「こら、飛ばすんじゃない!!我々の後方につけ!!」

 

「はいはーい」

 

リンチェはその快足を活かして、一番先頭を航行している。

 

日中は海賊の目撃や出没は確認されていないが、それでも何があるのか分からない。

 

ブルーマーメイドとして、学生の安全も確保しなければならない。

 

だからこそ、学生艦であるリンチェには先行しないように注意を促した。

 

 

「いい天気ですね」

 

天気は快晴で、波も穏やかで絶好の航海日和だった。

 

「ほんと、こんな海に海賊が居るなんて想像できないわね」

 

「そうね‥‥この先も何事もなければいいんだけど‥‥」

 

「でも、海賊と言っても民間船を改造した船でしょう?」

 

「そうは言っても、情報では結構な魔改造をしているみたいで、割と武装しているみたい」

 

艦橋で、艦橋要因たちが、天候やら、この規制海域に出没する海賊について話していると、

 

「ハァ‥‥ハァ‥‥ゼェ‥‥ゼェ‥‥」

 

マスクをつけたシュテルがふらつく足取りで艦橋へと上がってきた。

 

「艦長!!」

 

「医務室で寝ていないと!!」

 

「昨夜よりは、だいぶ熱は下がった‥‥それで、状況は?」

 

シュテルはやはり、規制海域を特別に航行許可が出たとはいえ、やはり海賊が出る海域なので、心配になって医務室から出てきたのだ。

 

「何を言っているんですか!?体調不良なのに!!」

 

「そ、そうですよ。まだ寝ていないと‥‥」

 

「し、しかし‥‥」

 

「副長である私の役割は艦長の補佐です。艦長が戻るまでは、私が何とかしますから」

 

「うぅ~‥‥」

 

「それに、ここに居てまた倒れられたり、他の乗員に風邪をうつす方が迷惑です」

 

「むぅ~‥‥」

 

確かにクリスの言うことも最もであり、ここは引き下がるしかなかった。

 

「で、では、航行ルートだけでも教えてくれ」

 

「は、はい。現在、私たちはリビアのトリポリを目指して南下しています。トリポリ入港以降は、日中のみを航行し、アフリカ大陸沿いに四日かけて地中海を進みます」

 

メイリンはタブレットに表示された電子海図をシュテルに見せてこれからの航海ルートと日程を伝える。

 

ブルーマーメイドの護衛でマルタ島から350キロ離れたアフリカ‥リビアにあるトリポリを目指し、翌日にはミスラタ、次の日(ニ日目)にはスルト、三日目にはラス・ラーヌーフ、四日目にはバンガージーへと入港してそれから、スエズ運河を通り、アラビア海へと入るルートだ。

 

「うーん‥‥時間はかかるが仕方がないか‥‥」

 

本来ならば、マルタ島でブルーマーメイドが海賊を捕縛するまで待機するか、アフリカの喜望峰経由で日本を目指さなければならないところをこうして特別に航行許可をだしてくれたのだから、贅沢は言えないし、いつ解除されるか分からない規制をまったり、アフリカの喜望峰経由で日本を目指すよりは、早いかもしれない。

 

「さっ、艦長。航海ルートも分かったのですから、医務室に戻ってください」

 

「うぅ‥‥」

 

確かに航海ルートを聞いたら医務室に戻る言った手前、医務室に戻らなければならないようだ。

 

ジィー‥‥

 

「わ、分かった。大人しく寝ているから、そんなに睨まないでよ」

 

クリスから睨まれてはシュテルとしては引き下がるしかなかった。

 

航海は順調に進んでいる中、

 

「はぁ~あ~‥‥飽きたなぁ~‥‥」

 

マルタ島出航時には高テンションだったアンネッタは何も起きない平穏な航海に飽きが来て甲板で寝ころんでいた。

 

「ハァ、もうお昼は過ぎたか‥‥午前中までだったなぁ~テンションが上がったのは‥‥」

 

「ブルマーもいるから自由に動けないっスもんね」

 

リンチェの副長がアンネッタの傍で現状から、下手な行動をとれないことを伝える。

 

ここで航路を逸脱して、スエズ運河を目指したら、それこそ、マルタ島に連れ戻されてしまうか留学の話すら取り消しになってしまう。

 

そうなれば折角の単位ももらえない。

 

よって、単位のため、日本を目指すのであれば、このまま大人しくしているしかない。

 

「なんか面白いことない?」

 

アンネッタは近くで洗濯物を干していた主計科の生徒に訊ねる。

 

「ええ!!やめてくださいよ!!艦長ってば、トラブルメーカーなんですから!!」

 

リンチェの乗員からもアンネッタはトラブルメーカーと言う認識がされていた。

 

まぁ、あそこまでの騒動を起こせば嫌でもそう認識をされて当たり前だ。

 

問題なく、無事に日本に着くにはアンネッタが大人しくしていなければならないのがリンチェにとって最大の問題なのだろう。

 

「副長~なんか面白いことない?」

 

アンネッタは次に副長に訊ねる。

 

すると、

 

「そういえば、機関科の連中が面白そうなことをしていましたよ」

 

と、余計なことを言って、アンネッタの好奇心に火をつけてしまった。

 

「ちょっ、副長!!余計なことを言わない‥‥って、艦長早っ!!」

 

ついさっきまで甲板にやる気なさそうにグテ~っと寝そべっていたアンネッタは物凄いスピードで機関室へと向かった。

 

そしてリンチェの機関室では‥‥

 

「わっ、艦長!!」

 

「私も混ぜて~」

 

「ちょっと、そこは‥‥!!」

 

機関室からは何やら機関員の慌てた声がしたと思ったら‥‥

 

ボッ!!

 

轟音と共に艦全体が揺れる。

 

次に‥‥

 

ドゴォォォー!!

 

機関室から轟音と共に火災が発生して機関が止まった。

 

「ごめーん、エンジン止めちゃった~♡」

 

「あはははははは」

 

アンネッタがエンジンをぶっ壊したのが原因だが、彼女が機関室へ行く原因となったリンチェの副長は壊れたように声を上げて笑う。

 

副長としてもまさか、アンネッタがエンジンを止めるとは思ってもいなかったのだろう。

 

「なにしてんですか!?艦長!!」

 

「うわっ!!火が出ている!!」

 

「早く消火して!!」

 

リンチェの乗員たちは慌てて消火活動を行った。

 

 

 

 

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