やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~ 作:ステルス兄貴
日本への留学のため、スエズ運河経由で日本へ向かっていたヒンデンブルクであったが、地中海のマルタ島付近で、ブルーマーメイドから足止めをくらった。
その理由がここ最近、地中海で海賊が出現するからだと言う。
同じく日本へ向かっていたイタリア、タラント校の学生艦、リンチェはヒンデンブルクよりも長い、一週間もこの海域に足止めをくらっており、打開策として、ヒンデンブルクを囮に使い制限海域の突破を図るも失敗に終わった。
ヒンデンブルクもリンチェ同様、ここで足止めをくらうのか?
それともアフリカの喜望峰経由で日本を目指すか?
どちらの選択肢をとるか迷っていた中、シュテルのこれまでの功績から、ヒンデンブルクはブルーマーメイドの護衛付きと言う条件で制限海域を航行する許可をもらった。
リンチェの艦長、アンネッタはこれに対して不満を零すと、ブルーマーメイドの隊員、リンゴルはリンチェにも同様の条件を出して、制限海域の航行を許可した。
ブルーマーメイドの護衛付きでヒンデンブルクとリンチェはまず、最初の寄港地、リビアのトリポリを目指した。
日中は、海賊は出現せず、またこの周辺海域がブルーマーメイドによって航行を制限されているので、他の船舶の姿はなく、平穏な航海だった。
しかし、その平穏な航海に暇なアンネッタは何か変わったこと、面白いことがないかをクラスメイトに訊ねると、リンチェの副長が機関科のクラスメイトが今、大変な事を伝えると、アンネッタは嬉々として機関室へと向かった。
彼女としては機関科のクラスメイトを手伝うつもりだったのだが、持ち前のトラブルメーカー体質が災いして、リンチェの機関が停止し、更には火災まで発生した。
幸い、大きな火災ではなかったので、すぐに消火されたが、リンチェは航行不能となった。
「なにをやっとるか!!」
「すみません」
リンゴルはアンネッタを呼び出して説教をする。
「それで、リンチェは動かせそうか?」
「ダメですねぇ~‥‥直すには港で修理しないと~‥‥」
リンゴルが部下にリンチェの状態を訊ねると、現状でリンチェを航行させるのは不可能。
港できちんとした修理を受ける必要があった。
「しかたない。我々二隻で曳航する」
航行不能となったリンチェをこのままここに放置するわけにはいかないので、リンチェはスキアーヴィ、トーナが引っ張ってトリポリを目指すことになった。
駆逐艦とは言え、動かない船を曳航しているので、速力は絞られる。
「速度は10ノット程度か‥‥」
曳航されているリンチェを見ながらリンゴルが呟く。
「本日の日没が18時40分ですから~今の速度でトリポリを目指すとなると~‥‥予想到着時刻は21時30分ですねぇ~」
「ふぅ~‥‥頭が痛い」
順調にいけば太陽が昇っている間にトリポリに到着できる筈だったのだが、リンチェが航行不能となり、曳航で速度が絞られているため、トリポリの到着が完全に夜となった。
夜間は海賊が出没する時間帯でもあるので、より厳重な航海となる。
学生艦を守りながらの航海にリンゴルは頭を抱えることになった。
「疫病神なの?自分からわざわざお荷物になるとは‥‥」
ヒンデンブルクの艦橋にあるウィングから、リンチェとブルーマーメイドのやり取りを見ていたクリスは愚痴をこぼす。
「流石に私だってあそこまで大勢の人にここまでの迷惑はかけないよ‥‥」
ユーリも人に迷惑をかけることがあっても、ここまで大勢の人に迷惑をかけることはないと自分とアンネッタを比較しながら言う。
「ある意味、才能ですね」
メイリンが引き攣った顔で呟く。
「それより、副長。トリポリの到着時間ききました?」
舵を握りながら、レヴィはクリスに声をかける。
「確か夜の9時過ぎになるって‥‥」
「夜間だと海賊がでるかもしれませんね‥‥」
「いや、その心配はないんじゃないかな?そもそも海賊は貨物船や輸送船の品や金品を狙うから、ブルーマーメイドや学生艦とはいえ、戦艦相手に喧嘩は売らないでしょう」
クリスは商船改造レベルの海賊相手ならば、わざわざ武装しているブルーマーメイドの艦、そして学生艦とはいえ、戦艦相手に喧嘩は売らないだろうと少し楽観視していた。
「うーん‥‥それならいいけど‥‥」
舵を握るレヴィにはどうしても一抹の不安があった。
やがて、太陽が水平線に沈み、辺りは暗くなる。
海賊が出る前になんとかトリポリに到着したいが、リンチェが足を引っ張る。
トリポリを目指す一行の前に一隻の船舶の姿があった。
「ん?船が居るぞ」
「ええ、貨物船のようですね‥‥」
「この時間に制限海域を航行するとは‥‥我々の忠告を無視して船を出している企業の船舶が居ると聞くが、迷惑な連中だ」
リンチェ以外にも制限海域を航行する船舶は存在していた。
リンチェやヒンデンブルクが留学のため、日本を目指しているように企業も自社の利益のため、船を走らせなければならない。
一日遅れれば、その分だけ、会社は大きな損失を受ける。
それゆえ、会社は海賊の危険を承知で、制限海域に船を走らせている。
前方に居る貨物船もそういった企業の貨物船なのだろう。
ブルーマーメイドの隊員が双眼鏡で確認すると、その貨物船は発光信号を送ってきた。
「主任!!貨物船が救難信号を送っています!!」
「なにっ!?」
ブルーマーメイドが貨物船の救難信号を確認したその直後、
ヒュ~‥‥
空気を切り裂くような音がしたと思ったら、
ドォォォォォッ!!
爆音と共にスキアーヴィの左舷、前方に水柱が立つ。
「砲撃!?まさか‥‥!!海賊か!?」
一行の前にもう一隻の船舶が姿を現す。
その姿は、米国の攻撃輸送艦アレナック級で、船首には単砲が装備されており、艦尾にも単砲を装備している。
「貨物船が海賊に襲撃されている!!スキッパー隊は緊急出動!スキアーヴィは貨物船の救助に迎え!」
「ここで、ブルマーに出会ったのが運の尽き‥‥絶対に取っ捕まえてやる!!」
これまで、不眠不休で海賊探しをしていたブルーマーメイドの隊員たちにとっては、ようやく海賊を捕まえる絶好の機会が来た。
このチャンスを逃してたまるモノかと全速で海賊船へと向かう。
海賊船の出現はブルーマーメイドの艦からヒンデンブルクにも伝わる。
「海賊船が出た!?」
「ど、どうしましょう!?」
「落ち着いて!!海賊の攻撃がこちらにも向くかもしれない!!総員戦闘態勢!!主砲、副砲に模擬弾装填!!」
クリスはシュテルが体調不良で不在のため、シュテルに代わって指揮を執る。
そのシュテルは医務室で寝ていたが、外から聞こえる砲音で目が覚める。
「ん?なんか、うるさいな‥‥」
ベッドから起き上がり、外の様子を確認するため、窓の外を見ると、そこには海面から浮かび上がっている塔の様なモノがあった。
「な、なんだ?あれは‥‥」
シュテルは目を凝らしてそれを見ていた。
その頃、海賊の摘発をしているブルーマーメイドは、
「左舷に三機、右舷に二機展開し、残りは貨物船の脱出ルートを確保し、安全に現海域から離脱させろ!!海賊船をここでなんとしてでも取り押さえるぞ!!」
スキッパー隊は海賊船を包囲しようとするが、海賊船からの砲撃と機銃斉射でなかなか接近できない。
「あ、あれはっ!?」
シュテルは海面から浮かんでいた塔の様なモノに見覚えがあった。
そして、その塔の近くの水面からいくつもの気泡がボコボコと立つと、今度は四本の雷跡が見えた。
「っ!?ま、まずい!!」
雷跡を見たシュテルは急いでベッドから飛び起きる。
「内線を!!」
「か、艦長。まだ寝ていないと‥‥」
ウルスラはシュテルをベッドに戻そうとする。
「それどころではない!!」
「えっ?」
急いで、艦橋に内線を入れる。
「艦橋!!」
「か、艦長?」
「左から雷跡だ!!」
「っ!?面舵!!」
「お、面舵!!」
レヴィは急いで舵を右に切る。
魚雷はヒンデンブルクの船体スレスレを横切ると爆発する。
ただ、至近距離で爆発したので、ヒンデンブルクの船体は強く揺れる。
「ぎょ、魚雷、回避成功‥‥」
「ソナー!!敵潜の確認は!?」
「反応はありましたが、潜ったみたいです」
「な、なんでこんなところに潜水艦が‥‥」
「海賊は商船改造の船じゃなかったのか!?」
「それに潜水艦と言ってもどの型の潜水艦なのか分からないのは不利だな‥‥」
艦橋では情報にはない潜水艦からの攻撃で浮足立つ。
「ハァ、ハァ‥‥それなら、おそらくUボートⅦ型だ」
「か、艦長!!」
「どうしてここに!?」
そこにはシュテルが寝間着の上に制服の上着をボタンも留めずに羽織り、息を切らしながらいた。
「それより、敵潜の船体両弦に大きく膨れたバラストタンクがあった。ソナーで確認し、魚雷に備えよ」
「それよりも艦長お体は大丈夫ですか?」
「今はそれどころじゃない‥‥ハァ、ハァ、ブルーマーメイドに急いで問い合わせろ」
「は、はい」
メイリンは急いでスキアーヴィに連絡を入れる。
「なるほど‥‥それは去年、一般人の青年の手によって盗まれた艦かもしれない」
リンゴルからの情報では、あの潜水艦は強奪された潜水艦だと言う。
「どういうことです?」
「元は学生艦だったのだが、老朽化して廃艦が決まっていた艦なのだが、解体される前に造船所から盗まれた艦だろう」
「ということはあの潜水艦も海賊の仲間と言うことですか?」
「おそらくそうでしょう」
「どうしましょう?」
「うーん‥‥現状こちらは手一杯だ‥‥」
スキアーヴィとスキッパー隊は海賊船の対処と貨物船の避難誘導をしている。
もう一隻のブルーマーメイドの艦、トーナはリンチェを曳航している。
それにヒンデンブルクは確かに強力な戦艦であるが、爆雷などの対潜装備を有していない。
相手は海中を移動できる潜水艦。
ヒンデンブルクが出来るのは精々ソナーで敵潜の位置を探ることぐらいである。
「あれが艦長の言う通り、UボートⅦ型なら、魚雷は最大で10本搭載可能です」
「解体されるはずの潜水艦に魚雷が搭載されている事自体おかしいが、おそらく海賊が潜水艦の乗員に魚雷を売ったのだろう‥‥」
さきほど、潜水艦は四本の魚雷を撃ってきた。
となれば、あの潜水艦にはまだ六本の魚雷が搭載されている可能性がある。
「リンチェには機雷がありますが、浮遊機雷なので、海の中に潜航している潜水艦には当然届きません」
「例の墳進弾は?」
「あれも性能的には対海上艦装備です」
「対潜装備を持たない我々では、勝ち目は‥‥」
「‥‥そうだな、無理は出来ん」
確かに海賊の摘発は自分たちの仕事であるが、それと同時に今の自分たちにはヒンデンブルクとリンチェをトリポリへ連れていく任務もある。
リンゴルはここにきて、海賊摘発を諦めて学生艦を引き連れてこの海域を撤退することに決めた。
ようやく見つけることのできた海賊をここで諦めるのはブルーマーメイドとしても悔しかった。
「本艦もこれ以上の交戦を止め、スキッパー隊にも撤収命令を出せ」
「いいんですか?やっと捕まえるチャンスが来たのに~‥‥」
「いずれまた、チャンスは来る。今は、学生たちの安全を優先する」
捜していた海賊をここで逃がすのは悔しいが、動けないリンチェが居る以上、ここに長居しては、学生艦に被害が及ぶ危険がある。
リンゴルは悔しさを表には出さないが、内心はかなり悔しがっていた。
「ちょっと、待ってください」
そんな中、シュテルがリンゴルに声をかける。
「一つ提案があります‥‥」
シュテルはリンゴルにある提案をした。
リンチェの艦尾では浮遊機雷の投下準備が行われた。
「なんで私が‥‥」
その投下準備には艦長であるアンネッタも駆り出されていた。
リンチェを引っ張っているトーナがソナーで敵潜の位置を探りながらその真上にリンチェの浮遊機雷をばらまいている。
「思惑通りに行くだろうか?」
「何もしないよりはマシでしょう」
スキアーヴィではリンゴルと隊員がその光景を見ていた。
「機雷設置完了しました」
「よし、あとは派手に行こう‥‥ユーリ、浮遊機雷を撃て!!」
「了解」
ヒンデンブルクの主砲、副砲が発射され浮遊機雷を撃つ。
すると連鎖爆発でいくつもの水柱が立つ。
「やることが派手だねぇ~」
しかし、海面には何の変化もない。
「次、魚雷発射!!リンチェにも魚雷を撃ってもらえ!!」
続いて、ヒンデンブルクとリンチェからは魚雷が放たれる。
「動いてくれますかね?」
「海上と違い、外の様子が見えない海中で逃げ場もなく、追い詰められる恐怖は、計り知れない。圧倒的優位にいたはずだったのが、いつの間にか追い詰められ、攻撃されている。その脅威を自覚すると、そこから一気に恐怖と不安に駆られる」
「‥‥」
「機雷の爆発の他に迫りくる魚雷のスクリュー音‥‥例え自分たちに届かなくてもその音を聞かせるだけで、効果は十分だ。熟練した潜水艦乗りならまだしも、にわかボッチには耐えられないさ」
「随分と詳しいですね。艦長」
「バルクホルン先輩からの受け売りだよ」
やがて、水面にボコボコと気泡が立つと、一隻のUボートが姿を現した。
「敵潜浮上!!」
「主砲をそのまま敵潜に固定、降伏勧告を送れ‥‥ハァ‥ハァ‥‥」
やはり、完治はしていなかったのか、シュテルはそのままクリスにもたれかかる。
「艦長!!」
「‥‥ハァ、ハァ‥副長、ブルーマーメイドに伝言を頼む」
「はい?」
シュテルの話を聞いてクリスは急いでメイリンにその伝言をリンゴルの下に送る。
海賊の方はスキッパー隊が強襲し、何とか捕まえることが出来た。
シュテルはウルスラに抱えられて、医務室へと戻っていった。
「ふぅ~何とか海賊を捕まえることが出来たわね‥‥」
「そうですね。まさか、対潜装備も無い中で、潜水艦を捕縛できるとは思いませんでした‥‥あっ、ヒンデンブルクからメールです」
「メール?」
「はい」
隊員がタブレット端末にヒンデンブルクから送られてきたメールを開き、それをリンゴルに見せる。
そこには、こう書かれていた。
海賊の摘発お疲れ様です。
しかし、被害に遭っていた貨物船も臨検をした方がよろしいかと思います。
その理由として、金品狙いの海賊が危険を冒してまで、ブルーマーメイドの艦に対して攻撃してきたのは、我々がとった航海ルートが海賊たちにとって都合が悪かったためではないでしょうか?
おそらく奪った金品か盗品の取引現場に気づかれたのかと言う思惑があった可能性があります。
他にも今夜、この周辺海域を航行予定だった船も海賊との取引相手だった可能性もあるので、捜索の範囲を広めてください。
「「‥‥」」
ヒンデンブルクからのメールを見てリンゴルと隊員は一瞬、固まるが、
「すぐに応援を呼べ!!検問をかけろ!!」
「は、はい」
リンゴルはすぐに応援を呼び、周辺海域に検問をかけるよう手配をした。
トリポリ到着直前で、海賊の出現と言うアクシデントがあったが、一行は何とか無事にトリポリへと着くことが出来た。
後の検問にて、シュテルが睨んだように、いくつかの船が海賊の取引相手だったことも判明した。
しかもその船を手配したのはマフィアやテロ組織など、反社会的勢力であったことも後々判明することになった。
前世からの人間観察とダートマスでの犯罪心理から学んだ事が功を奏したのだった。
トリポリに到着したヒンデンブルクは敵潜に撃った模擬弾や魚雷の補給を行う事となった。
リンチェは機関部に大きな破損が発生したので、ここで応急修理となる。
そして、今回の海賊摘発の協力者として、ブルーマーメイドがシュテルに感謝状を送りたいと言ってきたが、シュテルは、
「自分は体調不良で倒れていました。感謝状を受け取るのはむしろ、副長のクリスを始めとするクラスのみんなです」
と言って今回の感謝状の受領を辞退した。
ただ、後々に海賊との取引相手の摘発の助言をしたので、シュテルはその件で感謝状をもらうこととなる。
ヒンデンブルのクラスメイトたちはブルーマーメイドからの感謝状を受け取り、喜んでいた。
また機雷投下によって、海賊の摘発に協力したと言うことで、アンネッタたち、リンチェの乗員にもブルーマーメイドからの感謝状が授与された。
ただ、アンネッタに感謝状を渡す際、リンゴルは彼女に、
「今回の件を受けて調子に乗らないように」
と、ちゃんと釘を刺していた。
海賊を無事に摘発できたと言うことで地中海に設けられていた制限は解かれたが、その代わりに検問はそのまま続行され、海賊の取引相手の捜索はしばらく続けられた。
ヒンデンブルは模擬弾と魚雷、燃料、食料などの生活物資を補給した後、スエズ運河を目指すことになる。
リンチェは海賊摘発で消費した機雷や魚雷、燃料や生活物資の補給の他に機関部の修理があるので、もう少しここトリポリで足止めとなった。
ヒンデンブルクの補給が終わり、スエズ運河を目指すとなった時、
アンネッタは、
「えぇ~先に行っちゃうの?どうせ同じ日本を目指しているんだし、一緒に行こうよぉ~」
と言ってきたが、リンチェと日本まで航海したらまたトラブルに巻き込まれかねないので、全力で遠慮させてもらった。
ヒンデンブルクがトリポリを出航した後、ヴィルヘルムスハーフェン海洋学校所属のアドミラル・シュペーも日本を目指して出航した。
マルタ島近海の海域は、海賊が捕まって規制は解かれたが、シュテルの助言により、海賊と取引をしていた反社会的勢力の存在が明らかとなったため、航行が制限された制限海域となっていた。
シュペーもその制限を受け、航行できる航路が制限され、リビアのトリポリに寄港してきた。
寄港してきたシュペーに対して当然、アンネッタは興味を示して、シュペーへとやって来た。
なお、この航海中、シュペーのクラスメイトであり、親日家でもあるレオナの影響を受けて、ミーナは彼女が進めてきた任侠映画の虜となり、一人称が『私』から『ワシ』に変わっていた。
「あれ?また、ドイツの人?」
「また?ワシたち以外にドイツの艦が来たのか?」
「ああ、つい最近キールのヒンデンブルクが居たんだよ」
「「ヒンデンブルクがっ!?」」
ヒンデンブルクの名前を聞いて反応したのはミーナとテアの二人だった。
「シュテル艦長が‥‥」
「全くあの艦長、滅茶苦茶だったよ‥‥」
アンネッタはミーナとテアの二人にシュテルがこの地中海でやったことを話した。
逃げる際、他国の学生艦に対して躊躇なく、砲撃してきたこと、
対潜装備がないのに、浮遊機雷を起爆させたり、魚雷を撃ちこんだこと、
そして、海賊の摘発に対しては自分も協力してブルーマーメイドから感謝状をもらった事をテアとミーナの二人に話した。
と言うか、感謝状を自慢していた。
アンネッタの話を聞いて、リンチェに関しての砲撃は、アンネッタの自業自得だと思った。
「しかし、さすがはシュテルだな‥‥」
テアは感心するようにつぶやく。
「ん?あの艦長と知り合いなの?」
「ああ、以前交換留学で知り合ってな‥‥その際行われた親善試合でダートマス校にも勝利した」
「ええっ!?あのダートマス校相手に!?」
アンネッタはダートマス校相手の親善試合で勝ったことに素で驚いた。
「うーん、意外とすごい人だったんだ‥‥あの艦長」
「ああ、凄い人だぞ、シュテルは」
「か、艦長‥‥」
テアはシュテルの事を褒めるが、ミーナとしては面白くなかった。
「そういえば、君も凄いよねぇ~その胸‥さわっていい?」
「ゆ、許さん‥‥」
「み、ミーナさん落ち着いて」
今にも殴り掛かろうとするミーナをローザが羽交い締めにして止める。
それから、シュペーが水などの生活物資を補給中、テアとアンネッタが暇つぶしにチェスをしたが、チェスが得意なはずのテアをアンネッタは簡単にあしらった。
「ば、バカな‥‥」
あまりにもショックなのかテアの口から魂の様なモノが出ていた。
「ああ、うちの艦長、チェスの世界大会の上位入賞者で、一応天才って呼ばれているから‥‥」
リンチェの副長はアンネッタの意外な才能を口にする。
「ふ、不覚‥‥もう一度勝負だ!!」
テアはよほど悔しかったのかそれからアンネッタに挑んだが、彼女に三連敗した。
それから、補給中にシュペーに野良猫とネズミが乗り、甲板上でドッタンバッタン大騒ぎとなるアクシデントがあった。
そして、シュペーの補給が終わると、リンチェも機関部の修理も終わったことで、リンチェはシュペーと共に日本を目指した。
シュペーもトラブルメーカーであるリンチェとの航海に不安が隠せなかったが、同時刻に出港し、目的地も同じだったため、なし崩しに巻き込まれる形になった。
リンチェとシュペーよりも一足先にスエズ運河を通り、アラビア海、インド洋を航行していたヒンデンブルク。
その間にシュテルの体調も治り、通常通り艦長として復帰した。
航海中も艦内戦闘訓練や避難訓練などの訓練もこなして、士気を保っていた。
そんな中、
「映画?」
「はい。日本語と日本の歴史を含めて、日本映画の上映をしたいと思いまして、艦長に許可いただきたいのですが‥‥」
「まぁ、それぐらいだったらいいよ」
「ありがとうございます」
メイリンが日本映画の上映会をしたいと言ってきたので、シュテルは許可をだした。
「それで、何の映画をやるの?」
「これです」
メイリンが見せたDVDのジャケットには赤い日本語で『二百三高地』と書かれていた。
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