やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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次回からはやっと本編


55話

 

南シナ海を航行中にシュテルにとっては三度、シュテルを除くヒンデンブルクのクラスメイトたちにとっては、地中海に次いで二度目の海賊の襲撃を受けたヒンデンブルク。

しかし、クリスの機転により、海賊の襲撃を察知して切り抜けることが出来た。

南シナ海、東シナ海を抜け、ようやく日本、東京湾へ入る前、ヒンデンブルクはトイレットペーパーとミネラルウォーター、自艦で製造しているソーセージの材料が心もとないと言う主計科の報告を受け、館山沖にあるオーシャンモール館山沖店にて、トイレットペーパーとミネラルウォーター、ソーセージの材料を買い込むことにした。

ついでにクラスメイトの手持ちのユーロを円に換金してもらうことになった。

その際、シュテルは、

 

(ん?確か、館山って千葉だよな‥‥ってことはマッ缶がある!!)

 

「主計長!!」

 

「は、はい」

 

「モールに行ったら、この缶コーヒーを一箱‥‥いや、五箱買ってきて!!」

 

シュテルはスマホに保存されているマッ缶の写真を主計長に見せて、マッ缶を五箱も買ってきてくれと頼む。

もちろん、代金はシュテルがポケットマネーで払う。

 

「五箱‥‥ですか?」

 

「そう、五箱!!」

 

「は、はぁ~‥‥」

 

シュテルの勢いにすっかり押されている主計長。

 

そして、主計科の生徒たちがオーシャンモール館山沖店に行き、要件を済ませる。

 

「艦長、買ってきましたよ」

 

「おお、ありがとう!!」

 

シュテルはマッ缶の箱を台車に乗せて艦長室へと運んでいく。

 

「あんなにたくさんの缶コーヒーを艦長一人で飲むのかな?」

 

食堂でもシュテルはコーヒーをガブガブ飲んでいるところを見たことがない。

しかし、30本×5箱=150本‥‥シュテル一人で150本の缶コーヒーを飲むのかと主計長が疑問に思うのも無理はなかった。

 

「常温だけど、まぁいいや‥‥」

 

シュテルの部屋の冷蔵庫にはマッ缶が所狭しと並べられた。

冷蔵庫に詰め込んだあと、常温であるが、シュテルはマッ缶を一本開けてそれを飲んだ。

 

「あぁ~‥‥コレだよ、コレ、この味、この甘さ、懐かしい味だぁ~‥‥」

 

久しぶりのマッ缶に舌鼓を打つシュテルだった。

 

 

様々なアクシデントがありながらも、ヒンデンブルクはようやく日本に到着することが出来た。

 

「今回の航海では海賊によるアクシデントがあったが、こうしてみんなのおかげで、無事に日本にたどり着くことが出来た。艦長として、感謝する」

 

横須賀に到着した後、シュテルは全乗組員を艦首の甲板に集めて訓示をする。

 

「現在、横須賀女子海洋高校はまだ春休みの最中であり、授業は始まっていない。そこで、皆にも短いが、ここ日本で春季休暇をとってもらい、英気を養ってもらいたい」

 

シュテルの春季休暇と言う言葉を聞いてクラスメイトたちは浮足立つ。

 

「ただし、我々は観光目的で日本に来たわけではない。ここ日本で優れた海洋技術を学ぶために来たことを忘れないでもらいたい。休暇とはいえ、いろいろと制限が存在してしまうが、羽目を外しすぎないように‥‥詳しいことは、先程配ったしおりに書いてある。各自、目をとおして、キール校の生徒として、恥ずかしくない行動をとってもらいたい。以上、解散!!」

 

こうして、横須賀女子の新学期が始まるまでシュテルたちヒンデンブルクの乗員には短いながらも春休みを日本で迎えることになった。

ただし、宿に関してはホテルの宿泊費何てないし、寮はまだ手配されていないので、ヒンデンブルクの各自の部屋が春休み期間中の宿となる。

その為、ヒンデンブルクのクラスメイトたちには門限が設けられ、門限時間内に戻らなければならない。

 

それから、シュテルたちヒンデンブルクが横須賀に入港してから数日後にはシュペーも無事に横須賀に到着した。

その後、シュペー艦長のテアからシュテルに二人っきりで会いたいと言う連絡を受け、シュテルは待ち合わせ場所へと赴く。

 

「テア!!」

 

「シュテル!!」

 

久しぶりに出会ったシュテルとテアは互いに抱擁を交わす。

ミーナやユーリが居たら、きっと睨んでいることだろう。

 

「ここまでの航海、大丈夫でしたか?」

 

「ああ、副長をはじめとして、頼もしく優秀な仲間がいたからな。シュテルの方はどうだった?」

 

「あぁ~‥‥私の方もクラスメイトたちも優秀でした‥‥ただ‥‥」

 

「ただ?」

 

「‥‥ただ、どうも運が悪かったらしくて‥‥」

 

シュテルは地中海と南シナ海を航行中、海賊の襲撃を受けたことをテアに話す。

 

「海賊!?」

 

「ええ‥‥」

 

海賊と聞いて流石のテアも驚いた。

しかも一度の航海で二度も遭遇したのだから、かなりの確率だ。

 

「なんかもう、見た目は子供、頭脳は大人なバーロな探偵か、名探偵の孫の高校生になった気分でした」

 

「ん?そ、それは大変だったな‥‥」

 

「ええ‥‥」

 

テアにはシュテルが例えた言葉の意味はわからなかったが、シュテルたちヒンデンブルクが大変な航海をして日本にたどり着いたことは理解できた。

 

「あっ、そうそう!!これ、いつぞや約束をしたマッ缶です!!飲んでみてください!!」

 

シュテルは去年の交換留学の際、テアに語っていたマッ缶を取り出し、彼女に勧める。

 

「これが‥‥」

 

「そうです!!これがマッ缶です!!千葉にしか売っていないご当地缶コーヒーなんです!!その味がもう、最高なんです!!」

 

「う、うむ‥‥そうか‥‥」

 

マッ缶を力説するシュテルに押され気味のテア。

 

「で、では‥失礼して‥‥」

 

テアはトップルを開けて、マッ缶を口へと運ぶ。

 

グビグビグビ‥‥

 

「ふむ、確かにシュテルが言ったようにうまいな‥‥それにとても甘い‥‥」

 

「でしょう?」

 

こうして、新たなにマッ缶の友が出来た‥‥

 

それからテアは日本に滞在していると言う自分の母親を捜しに向かった。

しかし、その母親はどうも落ち着きのない性格らしく、一つの場所に長くとどまらない。

テアがついた時には既にそこを発った後で、次の行き先を聞いてそこに向かっても、一足違いですれ違い、なかなか会うことが出来ない。

そんなすれ違いを十日も繰り返した。

無自覚だとしたら、こちらも物凄い確率である。

そして、今日も今日とて、テアは母親が居るとされる場所へと赴く。

実際、テアの母親が日本にいるのは今日が最終日で、今日の夜にはアメリカに向けて日本を発つと言う情報があったのだ。

なお、テアが自分の母親と会おうと奮戦している間、シュテルの方は、

 

「シュテル!!会いたかったぞ!!」

 

シュテルの下に顎髭を蓄え、サングラスをかけた男が歓喜の声を上げながら、シュテルに抱き着く。

 

「な、なにあのおじさん!?」

 

「ヤクザ!?」

 

他のクラスメイトたちは突然の訪問者に驚いている。

 

「お、おじいちゃん。久しぶり」

 

『おじいちゃん!?』

 

シュテルの下を訪れたのは、シュテルの父方の祖父、碇ゲンドウだった。

 

「あなた、いくらシュテルに会えるからって、他のクラスメイトたちを怖がらせちゃダメでしょう?ただでさえ貴方の顔は怖いのに‥‥」

 

そこへ、茶髪でショートボブの女性がゲンドウを諫める。

この茶髪でショートボブの女性は碇ユイ、ゲンドウの妻でシュテルの父、シンジの母親であり、シュテルの父方の祖母である。

 

「ゆ、ユイ、顔のことは言わないでくれ」

 

顔のことを指摘されて、ちょっと凹むゲンドウ。

 

(ああ、確かに幼少期の頃、初めて会った時にはびっくりしたもんな‥‥前世の記憶を持っていなかったら、きっと泣いていたな)

 

ゲンドウがシュテルのことを気に入っているのはただ単に自分の孫だからと言うだけでなく、自分の顔を見ても怖がったり泣かなかったことも要因の一つとなっている。

 

「あっ、おばあちゃんも来てたんだ」

 

『おばあちゃん!?』

 

「あのヤクザの人が艦長のおじいさんだって‥‥」

 

「あのヤクザが!?」

 

「おばあさんは普通の人なのに‥‥」

 

クラスメイトたちはやはり、ゲンドウの顔つきから、彼がヤクザだと思い込んでいる。

 

「大丈夫よ、貴方たち。この人は基本、マダオだから」

 

『マダオ?』

 

聞いたことのない単語に首をかしげるクラスメイトたち。

 

「まるで、ダメな、おじいさんの略よ」

 

「ゆ、ユイ‥‥」

 

ユイは笑いながらマダオの意味をクラスメイトたちに伝える。

マダオと言われて益々凹むゲンドウ。

 

「で、でも、おじいちゃんはこう見えて、京都大の教授なんだよ」

 

一応、シュテルがゲンドウを弁護する。

 

「京都大?」

 

ドイツ人には京都大のレベルは分からないみたいだ。

 

「えっと、東の東大、西の京大って言われるぐらい、日本ではレベルの高い大学なんだよ。それで、おじいちゃんとおばあちゃんはどうして横須賀に?」

 

シュテルは京都大のレベルと共に京都にいる筈の祖父母がどうして横須賀に居るのかを訊ねる。

 

「ここで学会があって、来たのよ」

 

どうも、ここ横須賀で学会があるので、二人は京都から横須賀に来たようだ。

 

「そう言えば、カナデ君とは連絡をとったのかい?」

 

「カナデは今、長野にツアー中みたいで、今度時間が取れたら会おうかと思っています」

 

カナデも去年の夏にシュテルと会えなかったので、今年はこうして日本に来ていることで、シュテルと出会えると言うことで喜んでいた。

 

テアが自らの母親を捜している中、横須賀女子では‥‥

 

「あれ?横須賀にドイツ艦だ。珍しいな‥‥?」

 

横須賀女子の制服を纏った一人の少女が横須賀港に入港しているシュペーとヒンデンブルクを見て、首を傾げた。

彼女の手には横須賀女子の入学案内のパンフレットが握られていた。

その少女の前に母親を捜しているテアとミーナの姿があった。

二人は、慣れない横須賀の地に迷っている様子だった。

この迷っている時間もテアにとっては、惜しい時間で、こうして迷っている間にも自分の母親がまたどこかに行ってしまうのではないかと焦りの色が見えていた。

 

「あの‥‥もしかして、道にお困りですか?」

 

少女は二人に恐る恐る声をかける。

 

『あっ、君はここの生徒か?』

 

ミーナはその少女にドイツ語で語りかけたが、彼女はドイツ語が分からないみたいだ。

 

(あっ、いかん、日本語でないとな‥‥)

 

ミーナは、そこで日本語で言い直す。

 

「お主はここの生徒か?」

 

「は、はい。あっ、でも、正式には来週からですけど‥‥」

 

(お主って‥‥)

 

彼女は今度、横須賀女子に入学する新入生のようだった。

 

「新入生か‥‥学園の中に用があるのだが、分かるか?」

 

「大丈夫ですよ。三年ぶりに再会する友達と入学できることになったので、待ちきれなくて探索していたんです」

 

「そうか、ありがたい。面倒をかけるがよろしく頼む」

 

「それで、目的の場所はどこですか?」

 

「第二教員棟の大会議室だ」

 

「ああ、それならこっちです」

 

少女の案内の下、テアとミーナは、テアの母親が居るとされる場所へと向かう。

 

「あの‥‥その制服とドイツ語からあそこに停泊しているドイツ艦の方ですよね?ドイツの海洋学校から来られたんですか?」

 

その最中、少女はテアとミーナがドイツから来たのかと訊ねる。

 

「ああ、わしらはヴィルヘルムスハーフェン海洋学校から来た。そう言えば名前は何と言う?」

 

(わし?)

 

ミーナは自分たちの所属校を言うとともに彼女に名前を訊ねる。

 

「知名もえかです」

 

もえかはテアとミーナに自己紹介をするとともに、同じ世代のミーナの一人称にちょっと戸惑った。

 

横須賀女子の新入生、知名もえかの案内の下、目的の第二教員棟の大会議室に向かう三人。

その途中で、

 

「あれ?テアにミーナさん?」

 

テアとミーナはシュテルと出会った。

 

「シュテル?どうしてここに?」

 

「この学会に私の祖父母が出席していたので‥‥えっと‥‥その方は?」

 

(ん?この子、どこかで会ったような気が‥‥)

 

シュテルは横須賀女子の制服を着た少女が誰なのかを問う。

しかし、シュテルは彼女とどこかで会ったような気がした。

 

「あっ、はじめまして、今度、横須賀女子に入学します。知名もえかです」

 

「知名‥‥もえか‥‥?ん?‥‥もえか‥‥?ん?‥‥」

 

もえかの名前を聞いて、やはりもえかとはどこかで出会ったような気がするシュテル。

 

「あ、あの‥‥どうかしましたか?」

 

「ん~‥‥ぶしつけな事ですが、知名さん‥昔、私とどこかで会ったことありませんか?」

 

「えっ!?」

 

突然、シュテルに会ったことないかと問われ、ドキッとするもえか。

 

「あっ、いえ‥そんな気がしたんです‥‥昔、広島の呉で、貴女と似た子ともう一人‥‥ピッグテールの髪型の子と一緒に大和を見たんで‥‥」

 

「えっ?それって‥‥もしかして、あなた、シューちゃん?」

 

「っ!?‥‥その呼び方‥‥」

 

「やっぱり!!シューちゃんだ!!」

 

「じゃあ、やっぱり‥‥もかちゃん?」

 

「そうだよ!!久しぶり!!」

 

「やっぱり!!本当に久しぶり!!元気だった?」

 

「うん!!ミケちゃんも元気で、今度横須賀女子に入るんだよ!!」

 

「そうなの!?」

 

シュテルともえかが和気藹々となり、すっかりとその場の背景か空気になったテアとミーナ。

テアとしてはシュテルと親しそうにしているもえかをあまり面白くなさそうな顔で見ていた。

 

「あ、あの‥‥」

 

ミーナが声をかけ、

 

「あっ、ごめんなさい。第二教員棟の大会議室でしたよね?こっちです」

 

「第二教員棟の大会議室?どうしてそこへ?」

 

「私の母上がそこに居るんだ」

 

「へぇ~‥‥」

 

(ヴィルヘルム・ハーフェンの教官が言っていた元ヤンキーのテアのお母さんか‥‥)

 

ヴィルヘルム・ハーフェン校の教官、マイヤーが以前、テアの母親は学生時代問題児だったと言っていたが、決してヤンキーだったとは言っていない。

テアの母親がヤンキーだと思っているのはシュテルの勝手な想像であった。

 

(どんな人なんだろう・・・・?)

 

シュテルも個人的に興味が沸いたので、テアとミーナについていくことにした。

もえかの案内の下、目的地である第二教員棟の大会議室に着いたのだが、

 

「学会ならさっき終わったわよ」

 

受付の人からはテアの母親が参加していた学会はもう終わったと告げられた。

なお、この学会がシュテルの祖父母、ゲンドウとユイも参加していた。

 

「えっ!?」

 

「‥‥」

 

テアの母親が参加していた学会は終わっており、テアはまたもや母親に会うことが出来なかった。

 

「何じゃと!?‥‥えっと、マリア・クロイツェルと言う方は!?」

 

「えっ?ああ、あの外国の方ね。確か食堂に行くって言って、食堂に行きましたよ」

 

食堂と言うことはそこで食事をしているかもしれない。

で、あれば、出会うこともできるかもしれない。

四人は急いで食堂へと向かった。

しかし‥‥

 

「はい、お待ち、横須賀女子特製カレー!!外国人のお嬢ちゃんにはサービスで大盛りね!!」

 

テアはカレーを前にムスッとした顔をしている。

この食堂でもテアの母親はいなかった。

 

「その‥‥テアのお母さん‥ここにも居なかったみたいだね‥‥」

 

「タッチの差で、出ていってしまったみたいで‥‥」

 

「ああもどかしい、あと少しなんじゃが‥‥」

 

(なんか、ミーナさんの口調、去年と随分と変わったな‥‥一体この一年で彼女の身に何があったんだ?)

 

ミーナの変化にまさか任侠映画の影響だとは知る由もないシュテルだった。

 

「学会後の予定は聞いていないからな‥‥手詰まりだ」

 

「まっ、まぁ今はカレーを食べて、気を取り直しましょう」

 

母親を捜すにしても、今はまず、食事をして体力と英気を養い、引き続き、母親捜しをすることになった。

しかし、何の手掛かりもないなか、人一人を捜すのはきつかった。

もしかしたら、もうこの学園の敷地内から出ていってしまったのかもしれない。

 

「あの、今更なんですけど、電話とかできないんですか?」

 

もえかが携帯で連絡を取れないのかと訊ねる。

 

「あの人は、個人で携帯を持っていない。連絡をよこす時も手紙だ」

 

「うーん、なにか手はないモノか‥‥」

 

母親の居場所に何か手掛かりがないモノかと頭を抱えていると、

 

「あれ?艦長?」

 

「ん?あっ、ジークか」

 

そこへ、ヒンデンブルクの機関長、ジークが通りかかる。

 

「どうしたんですか?こんな場所で‥‥」

 

「ああ、実は人を捜しているんだが‥‥」

 

「こんな人を見なかったか?」

 

ミーナがテアの母親の写真を見せる。

 

「ん?ああ、このブルーマーメイドの人なら、さっき見たで」

 

「どこだ!?どこで見た!?」

 

「ちゅ、中央広場や」

 

「ありがとう!!ジーク!!」

 

テアの母親の手掛かりを知り、四人は急いで中央広場へと向かう。

 

「ここが中央広場です」

 

もえかの案内の下、中央広場へと来たが、やはりその場にはテアの母親の姿はなかった。

 

「いない‥‥いったいどこに行けば会えるんだ‥‥」

 

「シューちゃん、私そろそろ、帰らないと‥‥」

 

「そうか‥‥ごめんね、もかちゃん。付き合わせちゃって」

 

「ううん、シューちゃんとまた会えて良かった。入学式の後にはミケちゃんも来るはずだから、その時はまた三人で遊ぼうね」

 

「ああ、またね」

 

「うん‥‥あ、あのクロイツェルさん。諦めなければきっと会えます。私の友人だったら、こう言うと思います」

 

「うむ、ド感謝する」

 

もえかに礼を言うと、彼女は帰って行った。

 

「艦長、次はどこを‥‥」

 

「シュペーに戻るぞ」

 

ミーナはまだ、テアの母親捜しを諦めてはいなかったが、肝心のテア本人は、もう諦めモードとなり、艦に戻るという。

 

「今回も縁がなかったということだ‥‥」

 

「ちょっと待ってください!まだ時間があります!ここで諦めては‥‥」

 

ミーナはまだあきらめずに捜そうと言った時、突然テアが歩みを止める。

 

「えっ?」

 

「待っていたわ、テア」

 

シュペーの前にはブルーマーメイドの制服を纏ったテアそっくりの女性が居た。

 

「母上、どうしてそこに‥‥?」

 

「シュペーがあったから、もしかしてって思ってね」

 

「その子たちは?」

 

「ああ、シュペーの副長の‥‥」

 

「ヴィルヘルミーナです」

 

「それで、こっちが‥‥」

 

「キール校のラングレー・碇です」

 

「ラングレー?碇?‥‥もしかして、碇教授とラングレー博士って‥‥」

 

「私の祖父母です」

 

「そうなんだ‥‥どこか、面影があると思った‥‥えっと、ヴィルヘルミーナさんはシュペーの副長なのよね?」

 

「は、はい」

 

「テアがいつもお世話になっているわね。テアも‥‥」

 

「何年ぶりかしら?」

 

「二年と六ヶ月です」

 

「そうそう、そうだったわね。見ないうちに大きく‥‥なってないわね。どうして?」

 

母親から大きくなっていないと言われ、明らかに不機嫌になっているテア。

 

「まぁ、元気ならそれでいいわ」

 

「よく、そんなことが言えるな!?前に会った時だって、一日も経たずに出航するし!!」

 

「え?拗ねているの?」

 

「拗ねてない!!」

 

((テアが子供みたい‥‥))

 

見かけは子供でも普段はクールなはずのテアが、見た目と同じ子供っぽくなっている。

 

「私だって寂しかったのよ。週一で手紙を送っても一通も返信はこないし」

 

「えっ?そうなんですか?」

 

あのテアが母親に手紙を出さないとは思えない。

さっきだって、やり取りは手紙だと言っていた。

 

「最初は返していたが、送付先に母上が居たためしがなかった」

 

「ダメじゃん‥‥母上‥‥」

 

シュテルが呆れた様子でテアの母親を見る。

 

「そ、そうだったかな?」

 

テアの母親は笑ってごまかす。

 

「まぁ、でも私たちは親子だから絆がばっちり‥‥」

 

「そんなわけがない!」

 

テアの拒絶ともいえる言葉にびっくりする三人。

 

「‥‥ずっと‥‥私は寂しかった。認めたくはなかったが、ブルマーになったのもあなたのことも褒められても素直に喜べなかったのも、母親らしいことを一つもしてくれないあなたが傍にいてくれない当てつけだ」

 

(テアも俺の前世と似ている生活環境だったんだな‥‥でも、前世で俺が女だったら、生活環境も違っていただろうし、自殺をすることもなかっただろうな‥‥)

 

「しかし、それを素直に認められることが出来たのはミーナやシュテルたち大勢の仲間がいてくれたからだ。動機はなんであれ、私が子供の頃に憧れたブルマーの道を私は歩んでいる。そして、皆と共に歩めていることを私は誇りに思う!‥‥これは貴女に返す」

 

テアはそう言って、母親に去年、教官からもらったヴィルヘルム・ハーフェンで使用されている艦長帽を母親に返す。

 

「艦長帽?」

 

「あなたがこれを私に届けさせた理由はこれだろう?」

 

テアが渡した艦長帽の裏地には沢山のメッセージが書かれていた。

 

「私はあなたに負けない艦長になってみせる!!私はあなたを超える」

 

「‥‥よく言った」

 

テアの宣言に母親は一瞬唖然とするも優しくテアの頭に手をやり、

 

「大きくなったね‥‥ミーナさん、シュテルさん。私はテアの傍に居てやれない‥‥だから、これからもテアの事をよろしくね」

 

「「はい!!」」

 

シュテルも常にテアの傍に居ることは出来ないが、それでも彼女を精一杯フォローするつもりだった。

 

しかし、それから数日後、シュペーをまさかの事態が襲うなんて、この時は誰もが予測などできなかった。

 

 

 

 

その頃、新学期間近な総武高校では‥‥

在校生は新入生と違い、少し早めに学校が始める。

クラス替えにより、葉山と由比ヶ浜は前世と同じ様に同じクラスとなったが、雪ノ下は二人と別のクラスとなった。

そして、葉山と由比ヶ浜のクラスメイトは八幡を除く前世と同じクラスメイトの面子となっていた。

 

「葉山君、それでこの後世でも戸部ッチたちとグループを作るの?」

 

由比ヶ浜は、葉山に前世と同じ様にグループを作るのかを問う。

 

「まぁ、何だかんだ言って、あのグループは居心地が良かったからね。今度はヒキタニが居ないから、絶対に上手くいくよ」

 

(あいつらにはあいつらなりに利用価値があったからな‥‥特に優美子は女避けとして最適な奴だった‥‥この後世にはヒキタニの奴がいないから、今度こそ、何もかもが上手くいくはずだ)

 

「そうだよね」

 

葉山は前世と同じく雪ノ下とクラスが異なったので、この後世でも葉山グループを作るという。

それから、葉山と由比ヶ浜は戸部、大岡、大和、海老名に声をかけ、自らのグループに入れたのだが、葉山にとって女避けとして重要な駒であった三浦に関しては‥‥

 

「三浦さん、よければ俺たちのグループに入らないかい?」

 

上辺だけの爽やかスマイルを浮かべて三浦を自らのグループに誘う葉山。

前世では、この笑みで彼女も自分のグループに入った。

しかし、この後世では‥‥

 

「は?なんで?」

 

「えっ?」

 

「なんで、あーしがアンタのグループに入らないといけないの?」

 

「えっ?その‥‥みんなでいれば色々と楽しいじゃないか」

 

「あーし、彼氏がいるから、他の男と一緒につるむつもりはないし‥‥それに葉山君って言ったっけ?アンタ、顔は良いかもしれないけど、アンタの笑みはなんか上辺だけのすっからかん‥‥正直に言って気持ち悪い」

 

この後世では三浦は葉山に前世と180度異なる態度を取ってきた。

 

(優美子に彼氏だって!?それにあの優美子が俺にあんな態度をとってくるなんて‥‥一体どうなっているんだ!?)

 

葉山はこの後世における歴史の改変に戸惑い始めた。

 




ローレライの乙女たちは本編後の制作の筈なのに、あの作中ではドイツからはビスマルクもシュペー同様、日本に留学し、同じくラットウィルスに感染したような感じでした。

しかし、誰からも忘れられている始末‥‥

ローレライの乙女たちの世界とはいふり本編も、もしかしたら、平行世界なのかもしれませんね。
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