やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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所属艦が本編と異なり、この作品では、もえかは武蔵の艦長ではありません。

本編の武蔵、ローレライの乙女たちのシュペーの様子から晴風以外の学生艦はおそらく横須賀女子の港に停泊中、ラットが乗り込んだものと思われるので、ヒンデンブルクも横須賀女子の港に停泊中、ラットが乗り込んで来た設定となっております。


56話

 

前世同様総武高校の二年生に進学した際のクラス分けにて、葉山と由比ヶ浜は同じクラスとなったが、雪ノ下とはクラスが異なった。

葉山と由比ヶ浜のクラスメイトたちは八幡を除く前世と同じクラスメイトだった。

そこで、葉山は前世と同じく、グループを作ることにした。

戸部、大岡、大和、海老名ときて、葉山にとっては女避けとして重要な駒であった三浦に声をかけたところ、前世と異なり、彼は三浦から拒絶された。

しかも、今の三浦には彼氏が居るいう驚愕の事実‥‥

前世と異なる歴史の流れに葉山は戸惑った。

 

「そ、それじゃあ、君の彼氏も一緒に俺のグループに入らないかい?」

 

葉山は少し作戦を変更して、三浦と彼女の彼氏をグループに入らないかと誘う。

 

しかし、

 

「やめとく」

 

「な、何故だい?」

 

「あーしも彼氏も昼休みや放課後は部活動で忙しいの。だから無理」

 

「部活動に関しては俺たちもやっているから同じゃないか?」

 

「葉山君は何部なの?」

 

「サッカー部さ」

 

「あっそう、サッカー部は朝練、昼練、放課後は部活をやらないの?」

 

「基本的に朝練と放課後だけかな?」

 

「あーしらの部活はまだ弱小だから、部活時間も厳しいの‥‥上っ面だけのお友達ごっこをやっている暇なんてないから無理。じゃあね」

 

取り付く島もなく、三浦は去っていく。

 

「ちぃっ‥‥」

 

前世と違い、自分に全くなびかない三浦に対して思わず舌打ちをする葉山。

 

「葉山君、優美子はどうだった?」

 

「優美子はなんか彼氏がいるから無理だって」

 

「彼氏!?優美子に!?」

 

前世では、葉山に好意を持っていた筈の三浦がこの後世では、葉山ではなく、別の男と彼氏彼女の仲になっていたことに驚く由比ヶ浜。

 

「まぁ、いいさ。元々彼女は我儘なところがあったからね。由衣もそんな優美子には迷惑していたんじゃないか?」

 

「う、うん‥‥」

 

前世では、由比ヶ浜も三浦からよくパシリにされていたことが多々あった。

空気を読むというよりも空気に流されていた由比ヶ浜にとって強気な性格の三浦には逆らえず、強く言い返せなかったため、三浦からいいように使われていた。

実際に由比ヶ浜自身もそんな三浦に対して、どこか苦手意識を持っていた。

しかし、葉山が作り出した葉山グループに所属することは2-Fでは一種のステータスであり、上位カースト‥上級クラスメイトに属することを意味していた。

その上級ステータスを自ら捨てることは由比ヶ浜には出来なかった。

だから彼女は三浦の横暴な態度にも我慢していた。

その三浦がこの後世では、葉山グループの所属を拒否してきた。

それならばそれで、別に三浦が葉山グループに入らなくてもいいと由比ヶ浜はそう思った。

 

ただ、この後世では三浦の席に相模が座ることになった。

彼女も前世の相模同様、葉山に対して好意を持っていた。

それはこの後世でも同じで、半ば強引に葉山グループに入り混むような形でグループ入りをした。

ただ、葉山にとっての誤算はまだあり、相模が前世の三浦以上に独占欲が強かったことだ。

葉山グループ入り=葉山の彼女と勘違いしている節があり、確かに女避けとしては機能しているがとにかく、日々のアプローチがしつこい。、

その癖、由比ヶ浜、海老名と言った同じグループの同性に対しても当たりがキツイ。

戸部、大岡、大和ら男子にも邪魔者のように感じている様子‥‥

由比ヶ浜にとってはこれなら、まだ三浦の方がマシだった。

 

 

葉山と由比ヶ浜が前世と同じく葉山グループを作ったのと同じく、雪ノ下は平塚先生に頼み、後世でも奉仕部を作った。

しかし、前世同様、完全非公認の部活であり、雪ノ下から奉仕部設立にあたって、説明を聞いた平塚先生は、

 

(生徒指導の雑務がこれで少しは減るな‥‥)

 

と、そんな風に思っており、生徒会に圧力をかけて強引に奉仕部を設立したのだった。

一方、雪ノ下は自分が教師である平塚先生を陰で操り、彼女を踏み台として自分の高校生活における実績作りになると思っていたが、平塚先生の方も自分の雑務を雪ノ下に押し付けられると言う思惑から、両者とも団栗の背比べと言ったところだった。

 

前世と似たような、若干異なる歴史の流れで始まった葉山、由比ヶ浜、雪ノ下の二度目の高校二年の生活‥‥

彼らは今後、この後世における歴史の改変に身をもって接することになる。

 

 

千葉の総武高校でそのような動きがあった中、神奈川県、横須賀にある横須賀女子海洋高校では、入学式が行われ、入学試験の成績によって所属する学生艦が発表された。

もえかは首席で入学を果たし、横須賀女子海洋高校の大型直接教育艦、駿河の艦長となった。

そして、もえかの親友であり、かつてもえか、シュテルと共に広島の呉で大和を見たもう一人の少女、岬明乃は航洋直接教育艦、晴風の艦長となった。

なお、余談であるが、雪ノ下もクラス分け試験の際、トップの成績を出していたので、総武高校がアメリカより購入し、総武学生艦の旗艦とも言えるコロラド級戦艦の三番艦、総武の艦長に就任した。

雪ノ下本人は当然の結果だと思っていたが、去年、雪ノ下と同じく文化祭の実行委員になった生徒や実行委員での雪ノ下の事を聞いた雪ノ下と同じクラスの生徒たちは、今年の海洋実習に不安しか思えなかった。

 

 

横須賀女子の入学式当日から新入生たちはそれぞれの学生艦に乗艦して二週間の演習となる。

その演習が横須賀女子海洋高校の新学期最初の演習となる。

本来ならば、高校二年生であるシュペーとヒンデンブルクのクラスメイトたちは入学したての彼女たちの監督生として、この演習に参加することになった。

四月六日、入学式を終えた新入生たちは次々と自分たちの学生艦に乗艦して、演習地の西之島新島へ向かうことになる。

勿論シュペーとヒンデンブルクも同じ予定のはずだった。

 

同日、出航準備をしているヒンデンブルクに突如、『待った』がかけられた。

一体何事かとクラスメイトたちが戸惑う。

 

「なぜ、出航準備が中止になったんですか?」

 

「横須賀女子の予定が変更になったのかな?」

 

クラスメイトたちが戸惑う中、理由が判明した。

 

「みんな、理由が分かった。『待った』をかけたのはドイツ大使館とブルーマーメイドだ」

 

「えっ!?ドイツ大使館!?」

 

「ブルーマーメイド!?」

 

意外なところからの出航停止命令に更に困惑するヒンデンブルクのクラスメイトたち。

 

「なんで、ドイツ大使館が‥‥?」

 

「それにブルーマーメイドからもだなんて‥‥」

 

「私たち、何かした?」

 

「ドイツ大使館とブルーマーメイドからはあの南シナ海での海賊について事情を聞きたいから大使館に来てくれとのお達しだ」

 

「ああ、あの時の‥‥」

 

シュテルがドイツ大使館とブルーマーメイドから呼び出しを受けた理由を聞き、納得したクラスメイトたち。

 

「でも、艦長、横須賀女子との合同演習はどうなるんですか?」

 

「その点については、ドイツ大使館とブルーマーメイドが横須賀女子の校長先生に話をつけて、我々は二日以降からの参加になる。通信長」

 

「はい」

 

 

「シュペーにこの旨を伝えておいてくれ」

 

「分かりました」

 

横須賀女子からは教官艦も参加するので、初日の演習に関しては教官とシュペーに横須賀女子の新入生たちの面倒を見てもらうことになった。

 

ヒンデンブルクからシュペーにドイツ大使館とブルーマーメイドからの呼び出しで、遅れて演習に参加する旨を伝えられたテアは少しがっかりしていた。

横須賀女子海洋高校の校長、宗谷真雪もドイツ大使館とブルーマーメイドからの説明を聞き、理解を示し、ヒンデンブルクの演習参加の遅延に関しては、特別処置をとってくれた。

 

ドイツ大使館には、あの時海賊の身柄を引き取ったブルーマーメイドの凰乱音艦長がおり、ヒンデンブルク側もシュテルたち艦橋員の他にクリスが率いた臨検員のクラスメイトたちが乱音にあの時の事情を説明した。

事情聴取は何とか一日で終わり、明日にはヒンデンブルクも出航することとなった。

シュテルたちがヒンデンブルクに戻ってくると、タラップ近くの甲板で、

 

「ん?カマクラ、何をしているの?」

 

カマクラが口に何かを咥えてタッタッタッタとやって来た。

 

「ひっ!!」

 

「あっ!!」

 

「ん?」

 

カマクラの口に咥えられているモノを見て、思わず悲鳴を上げるクラスメイトも居た。

 

「ね、ネズミ!?」

 

カマクラの口にはハムスターの様な、ネズミの様な小動物が咥えられていた。

猫は時々、何の脈絡もなく飼い主の元に、あまり望ましくないお土産を持ってくることがある。

バッタなどの昆虫、スズメの様な小型の鳥類、近所の池で飼育されている金魚や鯉、

カエル、ヘビ、トカゲなどの両生類や爬虫類、そしてネズミ‥‥

これは一見、飼い主に対する嫌がらせとしか思えないが、しかしこれは嫌がらせではなく、飼い主のことをまだ狩りのできない未熟な子猫だと思って、母猫気分で獲物を持ってくるというのが通説なのだ。

野性の猫は、親猫が狩りをする様子を子猫に見せたり、弱らせた獲物を持ってきて子猫にトドメを刺させたりして狩りを教えたりしている。

カマクラもヒンデンブルクに住んでいるとはいえ、そこは、元は宿無し野良猫。

そうした野生の感覚はまだ残っているのだ。

 

「すごいね、カマクラ、ネズミ捕まえたんだ」

 

「艦内にネズミって、航海科の人、もやい綱にラットガードをしていなかったの?」

 

通常、港に停泊する際、船舶はもやい綱の上にラットガードと呼ばれる金属製の蓋の様なモノをかぶせる。

こうすることにより、ネズミがもやい綱を伝って船内に入ることを防ぐのだ。

 

「でも、もやい綱すべてにラットガードはされていますよ」

 

「タラップから入り込んだんでしょうか?」

 

「そうかもしれない‥‥ん?でも、このネズミ何だか妙だな‥‥」

 

「えっ?」

 

「ネズミなのになんだかハムスターに似ているようにも見える‥‥」

 

「突然変異体か新種でしょうか?」

 

「それとも本当にハムスターとか?」

 

「‥‥それはわからない。まぁ、突然変異体にせよ、新種にせよ、未知の病原菌を持っている可能性はある。ハルトマン医務長」

 

「はい」

 

「このネズミについて調べてくれ」

 

「わかりました」

 

ウルスラは手袋をして、特殊なプラスチックケースにネズミを入れると医務室へ持って行った。

 

翌日の四月七日、ヒンデンブルクはシュペーよりも一日遅れで出航した。

シュペー及び横須賀女子の新入生たちの学生艦は西之島新島にて合流する予定だが、一日遅れで出航したヒンデンブルクは目的地を西之島新島ではなく、第二目的地である鳥島南方を目指しそこから西之島新島の航路上で合流することにした。

ヒンデンブルクが合流のため、鳥島へと向かっている最中、予定通りの日時で出航したシュペーでは‥‥

 

四月七日 午前5:00 ドイツ、ヴィルヘルムスハーフェン海洋学校所属 小型直接教育艦アドミラル・グラフ・シュペー 艦橋

 

「現在西ノ島新島近海を航行中、あと一時間で合流地点です」

 

書記のローザがタブレットでシュペーの現在地から目的地である西之島新島までの到着時間を報告する。

 

「ご苦労到着するまでこのまま航海を続ける」

 

「了解しました」

 

この時間における当直士官のミーナが指示を出す。

そこへ、

 

「予定通りのようだな」

 

艦長のテアが艦橋に上がってきた。

 

「おはようございます艦長」

 

「「「おはようございます」」」

 

ミーナを始めとして当直者がテアに挨拶をする。

 

「おはよう。お陰で良い睡眠がとれた。私が休んでいる間、問題はなかったか?」

 

「はい、気象海象を含め、問題ありません」

 

「そうか」

 

テアは脇に挟んでいた艦長帽をかぶる。

ただ、その艦長帽は日本を目指す際に被っていた艦長帽と異なり、真新しい艦長帽だった。

 

「艦長、その艦長帽は‥‥?」

 

「ああ、元々の私の艦長帽だ。母上を超えると言った手前、私もこの艦長帽に相応しくならねばなるまい」

 

先日におけるテアの母親との邂逅で、彼女自身、どこか迷いが晴れたというか、一皮むけた様子で、なんだか生き生きとしているように、ミーナには見えた。

 

「今でも充分お似合いですよ」

 

ミーナとしては世辞ではなく、テアは立派な艦長であると言う。

そんな中、

 

「艦長、航海科から連絡です」

 

レオナが航海科から入った報告をテアに伝える。

 

「レーダーや無線の調子がおかしいようです」

 

「不調の原因は?」

 

「わかりません。レーダーは突然ホワイトアウトして、無線は送受信が出来ずに、ノイズが激しいようです」

 

レオナがシュペーのレーダーと無線の現状を報告すると、

 

「私が行って差し上げますわ」

 

リーゼロッテが修理に向かうと言う。

 

「リーゼロッテ」

 

「電子機器もそれなりにわかりますし。アウレリア、あなたも来なさい」

 

「はいっ」

 

リーゼロッテは、水雷長のアウレリアを引き連れて、修理に向かう。

 

「最近一段と仲が良いな、あの二人?」

 

「何だか、雰囲気が変わりましたよね」

 

まぁ、あの二人はミーナとレターナ同様、昔から付き合いが長い。

 

「さ~て、引き継ぎも終わったし、私ら休憩に入るよー」

 

レターナが交代に引き継ぎを終え休息に入る。

もうすぐで、横須賀女子の新入生と共に演習が始まる。

せめて演習が始まる前のわずかな時間に少しでも一息入れたい。

 

「ああ、ご苦労だった。副長も交代だ。少しだが休んでくれ」

 

「分かりました」

 

ミーナとローザもテアと交代して、短い時間ながらも休息に入る。

 

「折角ですから、日本艦と交流しませんか?」

 

「良いですね!!」

 

当直を終えて、休息に入るレオナとロミルダが日本の艦との交流にいて話していた。

元々レオナは親日家であり、自分たちは日本の技術を学ぶために来たのだから、日本の‥横須賀女子の学生艦との交流も留学の目的の一つである。

そんな二人を見て、ミーナは、ある事を思う。

 

「如何したんですか?ニコニコして」

 

「ローザ。いや、艦長の悩みも晴れて、すべてうまくいっているなと思ってな、これからの航海が楽しみで仕方ない」

 

中等部と比べたら、テアは成長した。

艦長として、クラスメイトたちと積極的に交流をするようになった。

少々癪であるが、他校‥キール校のあの艦長とも親しくするようになった。

そして、母親と無事に和解した事で、彼女の迷いが晴れたようにも見えた。

全てが上手く行っている事にミーナはこれからの航海が楽しみで仕方がなかったのだ。

この後に控える横須賀女子の学生艦との演習と交流はきっと、テア、そしてシュペーのクラスメイトに新たな成長をもたらすきっかけになるに違いない。

そう思うとワクワクする。

ミーナの顔から自然と笑みがこぼれるのも無理はなかった。

 

「そうですね。私もです」

 

ローザも同じ気持ちだった。

 

「あっ副長」

 

ミーナが食事でもとって休もうかと持っていたところ、アレクサンドラが声をかけてきた。

 

「艦長、見ませんでした?」

 

「艦長なら艦橋に戻ったが、如何した?」

 

「次の補充品のリストを確認してもらいたかったんですが‥‥困ったな‥‥」

 

如何やら、アレクサンドラは補給される補充品のリストの確認をテアにして貰おうと思ったが、テアが艦橋に戻った為、それが出来なく困っていた。

 

「それなら私がやろう」

 

ミーナは補充品のリストのチェックをテアに変わって買って出る。

 

「えっ!?でもミーナさんは今から休憩では?」

 

「これぐらいすぐ済む。艦長の手を煩わせるのもなんだからな」

 

補充品のリストのチェックならすぐに終わるので、わざわざ当直中のテアを艦橋から呼び戻す必要はないだろうと判断したミーナ。

 

「私も手伝います」

 

「助かる」

 

ローザも手伝うと言うし、早く終わるだろう。

そんな中、水平線に日が昇り辺りが明るくなってきた。

 

「んっ!」

 

昇り始めた太陽の光がミーナには眩しく見えた。

 

「空が明るんできたな‥‥」

 

(船の上から見る朝日は綺麗だな)

 

日々見慣れている太陽であるが、こうして船の上から見る朝日はやはり綺麗に見える。

二人が確認リストについて話している中、アレクサンドラは、何かに気づく。

 

「ん?今、物音が‥‥」

 

アレクサンドラは何か物音が聞こえたのだが、その正体はわからず、ミーナとローザは気づかない様子だったので、アレクサンドラも気のせいだと思いその場を後にした。

ただ、彼女たちの様子をジッと窺う二つの赤い目は確かに存在していた。

それから数時間後‥‥

 

「‥‥ナさん!」

 

確認リストのチェックをしていた筈なのだが、よほど疲れていたのか、ミーナの意識はまるで泥沼に居るかのように重たかった。

そこへ、何者かの呼ぶ声が聞こえてくる。

 

「起きてくださいミーナさん!」

 

「はっ」

 

ミーナは重たい瞼を開けて、辺りを見回すと其処には息を切らせたローザが立っていた。

 

「いかん‥‥眠ってしまったか」

 

どうやら、自分はローザと確認リストのチェック中に眠ってしまったようだ。

 

「すまないな、全部やらせてしまったか」

 

自分が居眠りをしている間にローザに確認リストの作業をすべてやらせてしまったようだ。

ローザにはすまないことをしてしまった。

 

「それどころじゃないです!」

 

何故かローザは何かに怯えている様子だ。

それに自分がどれだけ寝ていたのか分からないが、もう目的地である西之島新島に到着してもおかしくはない筈だが、ローザの様子から西之島新島に着いたことを知らせに来た様子には見えない。

 

「皆の様子が変なんです‥‥!」

 

「‥‥如何いう事だ?」

 

浮かれて羽目でも外しているのかと思ったが、ローザの様子からそうでもないらしい。

 

「それは、わからないんですが‥‥‥無線も通信不可になっていて‥‥‥」

 

リーゼロッテとアウレリアが無線とレーダーを直しに行ったはずなのだが、未だに無線は不調のまま‥‥

怯えるローザ。

現状を理解できていないままのミーナ。

そんな中、

 

ドン!!ドン!!ドン!!

 

『っ!!』

 

ドアを乱暴に叩く音が部屋に響く。

 

「鍵を掛けているのか?」

 

誰か来たと思いミーナは立って、

 

「ちょっと様子を見てくる」

 

ドアに近づき開け様としたが、

 

「扉を開けちゃダメです!ミーナさん!!」

 

ローザはミーナに扉を開けないように言うが、タイミングが遅く、ミーナは扉を開けてしまう。

 

「誰かいるのか‥‥?」

 

恐る恐るドアを開いてみると、そこには顔を俯かせたレターナが居た。

 

「レターナっ!!お前か‥‥驚かせるな、他の皆はいるか?」

 

ドアの外に居たのが親友のレターナであり、ミーナは一瞬ドキッとするが、安堵の息をつき、他のクラスメイトたちが如何したかと聞くがレターナは、答えようともせず、そればかりか‥‥

 

「うがああっ!!!」

 

突如、レターナは狂ったかのようにミーナに襲い掛かってきた。

 

「この馬鹿者‥‥冗談が過ぎるぞ!」

 

ミーナは反射的にレターナを投げ飛ばした。

昔から、レターナはミーナのスカートをめくったりと悪ふざけをしてくることがあったので、ミーナは驚くことなく冷静に対処できた。

 

「ミーナさん!大丈夫ですか!?」

 

「私は、大丈夫だ。あっ、気絶したな‥‥」

 

投げ飛ばされ、床にたたきつけられたレターナは意識を失っている。

 

「しかしいったい何が起こっているんだ‥‥!?」

 

ミーナは冷静になって、レターナの行動を疑問視する。

いくら、レターナがいたずら好きでも、もうすぐ演習が始まろうとしている中、こんな悪ふざけをするとは思えない。

ミーナがレターナの行動に疑問を感じていると、通路の奥から二人の学生が現れた。

 

「レオナ!サンドラ!」

 

現れた二人は、先程のレターナと一緒に休憩に行っていたレオナと補充品のリストを確認していた筈のアレクサンドラだった。

 

「良かった、この状況は、いったい‥‥」

 

ミーナは二人に現状を訊ねるが、

 

「「‥‥」」

 

「っ!?」

 

二人もレターナと同じように様子がおかしかった。

無言無表情で、まるで人形の様だ。

 

「‥‥‥こっちだ!ローザ!」

 

ミーナは、ローザを連れて急いでその場から逃げた。

ハッチを開き甲板に出ると其処は、もう合流地点の西ノ島新島だった。

 

「もう西ノ島新島に着いているのか」

 

西ノ島新島の近くには横須賀女子の学生艦の姿も見えた。

 

「ローザ、外の艦と通信は取れないのか!?」

 

「だめです‥‥他の艦にも教員艦にも通信できません!」

 

タブレット端末を操作しても通信不可となっている。

 

「本当に如何なって‥‥」

 

如何して、こんな事態になったのかミーナには全く理解できない。

 

(艦長は‥‥如何なったんだ?嫌な予感がする‥‥)

 

そんな中、ミーナは艦橋に上ったテアの安否が気になった。

ミーナがテアの安否を気にしていると、

 

「ミーナさん!!」

 

ミーナが振り向くと二人の後を追ってきたレオナ、アレクサンドラが扉を開けようとするがローザが開けさせぬ様に扉にしがみ付き防いでいた。

 

「ローザ!」

 

「ここは私が防ぎます!ミーナさんは艦長を‥‥!!」

 

ローザは自分がレオナ、アレクサンドラをひきつけている間にテアの安否を確認するように言う。

 

「わかった!!すぐ戻る!!」

 

ローザが時間を稼いでいる間に、ミーナは急いで艦橋に向かう。

 

「艦長‥‥テア‥‥!!テア!!」

 

梯子を昇り艦橋に着くが、そこにはテアや交代の見張りもいなかった。

 

「‥‥誰もいない!?どこに‥‥!?」

 

ミーナがあたりを見回していると、

 

「正気なら早く上がれ、副長」

 

上から誰かが呼ぶ声がしてきて、上を向くと、

 

「テア!!」

 

其処には、ミーナが心配していた艦長のテアが立っていた。

 

「お前の声がしたから鍵を開けていた。無事で良かった‥‥」

 

「私も艦長が無事で良かったです」

 

「ああ‥‥皆が守ってくれてな、私だけなんとかな‥‥」

 

「‥‥」

 

「この異変の原因は分からないが‥‥我らの艦からの通信が途絶えたら普通はもっと動きがある筈だ‥‥」

 

テアが甲板をまるで獲物を求めて彷徨い歩いている無口無表情で、まるでゾンビみたいな行動をとっているクラスメイトたちの姿を見る。

そこには先程まで正気だったローザの姿もあり、彼女も周りの生徒同様、既に正気を失っている様だ。

 

「周りの船も同じ状況になっている可能性がある‥‥もしかしたら、正気なのは私達だけかもしれないな‥‥」

 

次にテアは、西ノ島新島周辺に集まった横須賀女子の学生艦を見る。

突然の無線と電子機器の異常。

そしてクラスメイトたちの変貌‥‥

これらの異常現象はテアにも見当がつかなかった。

やがて、横須賀女子の学生艦たちもバラバラの行動をとり始め、シュペーも合流することなく、どこかへと向かおうとする。

完全に艦の指揮系統、コントロールを失ったシュペーは当てもなく海を進んで行く。

下に降りる訳にもいかず、二人は、そのまま艦橋の上部の射撃指揮所で夜を過ごした。

 

 

シュペーにて、異常現状が起きている頃、ヒンデンブルクは出航したその日の夕方に海上安全整備局から衝撃的な内容の放送を受信した。

 

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