やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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59話

 

叛乱容疑がかけられた横須賀女子海洋高校所属の晴風と接触し、事情を聞いたシュテルはヒンデンブルクに戻り、クラスメイトたちに先程、晴風で聞いた話を伝える。

 

「その話は信じられるの?」

 

「信憑性は高いと思う‥‥現に先程、シュペーがこちらに対して、問答無用で砲撃してきた事例をみてもね‥‥」

 

「‥‥」

 

「そこで、本艦はしばらく晴風を護衛して、彼女たちを無事に学校へ戻すことにした。未だに海上安全整備局は晴風の容疑を解いておらず、また横須賀女子からの連絡がない以上、彼女たちをこのまま見捨てては目覚めが悪いだろう?」

 

「わかりました。私は艦長に賛同します」

 

「私もだよ、シュテルン」

 

「私も」

 

「私もです」

 

「ウチもや」

 

クラスメイトたちからの賛同を得て、ヒンデンブルクは晴風を護衛しつつ、横須賀女子に戻ることにした。

ただし、航路は偽装することとした。

予定通りの航路ではブルーマーメイドやホワイトドルフィンの待ち伏せに遭う可能性が高い。

流石に問答無用で砲撃してくることはないだろうが、それでも余計ないざこざは横須賀女子に着くまで避けたかった。

その為、ヒンデンブルクはビーコンも切った。

叛乱容疑がかけられていた晴風もビーコンを切り、無線封鎖もしている筈だからだ。

徹底した秘匿行動をとっていると思われる晴風に対して、ヒンデンブルクのビーコンで見つかっては元も子もない。

ヒンデンブルクが護衛につくことは、発光信号にて、晴風にも伝えられて、ヒンデンブルクが護衛についてくれることに晴風のクラスメイトたちは安堵した表情を浮かべていた。

無線封鎖している中で、至近とはいえ、無線を使ってはどこで傍受されるか分からないため、互いの連絡は発光信号を使用していた。

そして、偽装航路を航行している中、駿河から‥‥もえかからの救難信号を受信した。

しかし、肝心な座標がノイズでかき消され、こちらが送信しても向こう側は受信できていないのか、応答せず、ただひたすら救難信号を送っていたが、やがて無線は途切れた。

もえかの救難信号を聞いて、クリスは、

 

(なんかこの声、アクア様に似ているな‥‥いや、そんな訳ないわ‥‥だって、アクア様は特典としてあの世界に跳ばされた筈だもの‥‥)

 

と、特典で別の異世界に連れていかれた先輩女神ともえかの声が似ていると感じた。

 

「知り合い‥‥ですか?」

 

もえかからの救難信号に出ている時のシュテルは切羽詰まっているように見えた。

そこで、メイリンがシュテルに駿河の艦長と知り合いなのかと訊ねる。

 

「ええ‥‥昔‥‥幼少期の頃に‥‥たった数日間という短い間だったけど、日本で出来た初めての友人」

 

「そうだったんですか‥‥やはり、気になりますか?」

 

「気にならないと言えば嘘になるけど、今の我々には晴風を無事に横須賀女子に送り届けなければならない義務がある‥‥その義務を途中で放り投げるわけにはいかない‥‥」

 

シュテルにはもえかの他にシュペーのテアの事も気がかりとなっている。

早く、晴風を横須賀女子に送り届け、今、何が起こっているのかを聞き、もえかとテアを捜しに行きたかった。

もえかの事を心配しているのはシュテルだけではなく、晴風の明乃も同じだった。

駿河の救難信号は、当然晴風の方でも受信していた。

もえかからの救難信号を受けて、明乃は心ここにあらずと言った様子だった。

 

(‥‥駿河からの救援要請‥‥如何しよう‥‥向こうの艦長さんに頼めばあるいは‥‥)

 

「‥‥」

 

心中が揺れ動く明乃を真白は、舵を握りながら見ていた。

 

晴風の艦首先では、水測員の万里小路楓が午後17時を知らせるラッパを吹いていたが、お世辞にもうまいとは言えない腕前だった。

なんだか、聴いているとどこか力が抜けるような音だからだ。

そんな中、納紗はこれまでの戦闘による被害状況を確認する為、各部を見回っていた。

 

「武田さん!!主砲の状況は、どうですか?」

 

納紗は主砲の整備をしている砲術員の武田美千留に声をかける。

 

「見ての通り点検中、大部分は、自動化されているけど、点検が大変だよ!!光、そっちはどう?」

 

武田は別の個所で修理作業中の同じ砲術員の小笠原光に声をかける。

 

「まだぐずてるんだよね、この子‥‥」

 

「あと、どれくらい掛かりますか?」

 

「日没までは、何とかするよ!!」

 

「よろしくお願いします!!」

 

『はーい』

 

日没までには、何とか主砲の修理作業は完了できる様だ。

また、水雷員も念のため、魚雷発射管の整備をしていた。

 

「こちらは何か異常はありませんか?」

 

納紗は水雷員の松永理都子と姫路果代子に魚雷発射管の状況を聞く。

 

「発射管は、異常なし」

 

「まぁ~魚雷が一本も無いけど‥‥」

 

搭載されていた模擬弾の魚雷は猿島に使用しているので、現在の晴風の魚雷の残弾数はゼロ。

そんな整備と修理をしている砲術員と水雷員に伊良子はおにぎりと唐揚げ、スティック野菜を差し入れする。

 

「おにぎりできたよ~!!」

 

伊良子の声を聞いて、砲術員、水雷員は作業中だった手を止めて、伊良子の周りに集まる。

 

「皆さんのお食事は、おにぎりなんですね」

 

「みんな修理で食堂まで来れないし、忙しいから」

 

伊良子が砲術員と水雷員のクラスメイトたちに食事を振舞っていると、

 

「そういえば駿河から非常通信が着たて、本当?」

 

伊良子は納紗に駿河からのSOSが着た事を訊ねる。

 

「私もそれ聞いたよ」

 

「他の艦もどうなっているのかな?」

 

今回の演習に参加しているのは晴風や駿河、シュペーだけでなく、まだまだ他の学生艦も参加していた。

しかし、そのほとんどの学生艦の行方が分からなくなっている。

どの艦もビーコンを切っており、無線にも応答しない。

 

「あっ!?『世界の全てが敵に回っただと!!』『駿河を沈める訳には、いかない!!南の果てまで逃げよう!!』」

 

何故か伊良子の質問に対して、一人芝居をする納紗。

 

『‥‥』

 

それを見て、固まる一同。

 

「そのネタ、あんまり面白くない」

 

『うん、うん』

 

「え~!!」

 

盛大に滑ったネタを披露した納紗はショックを受けていた。

その後、ショックから立ち直った納紗は艦橋に戻り、これまでまとめた被害と修理状況を報告する。

 

「損傷の確認、出来ました」

 

「状況は?」

 

「現在、機関は修理中、三番主砲は使用不能、魚雷残弾なし、爆雷残弾一発‥‥戦術航法装置並びに水上レーダー損傷、通信は、受信のみ出来る状態です」

 

「航行に必要な所の修理最優先でどれくらい掛かる?」

 

「機関だけなら後、八時間くらいですね」

 

「先ずは、其処からだな‥‥」

 

学校へ戻るにしても、足が止まってしまえばアウトだ。

その為、真白は修理の優先箇所を機関に指定する。

 

「機関長!動きながらで、大丈夫か?」

 

伝声管で機関室に機関の状態を訊ねる真白。

 

「何とかする!でも、巡航以上は、出せねぇぜ!」

 

機関長の榊原の話では、航行しながらの機関の修理は可能だが、それでもスピードには制限がかけられた。

 

晴風のスピードが制限されたため、ヒンデンブルクもそれに合わせてスピードを調整しながら航行する。

 

「晴風は現在、機関の修理中で速度も制限されているみたいです」

 

「なんか、地中海を思い出しますね」

 

「あまり、思い出したくはない思い出だがな‥‥」

 

地中海で遭遇した海賊騒動とイタリアのタラント校のリンチェとの出会い‥‥

リンチェの艦長、アンネッタが機関の修理を手伝おうとして逆に機関を壊してリンチェを航行不能にして、ブルーマーメイドの艦に曳航してもらった。

あの時も速力を10ノットのスローペースで寄港地を目指した。

流石に今回は10ノットと言うスローペースではないが、それでも目的地の横須賀女子までは時間がかかる。

 

「とにかく、横須賀女子に到着するまで油断はできない。警戒は十分にせよ」

 

日本の戒めの言葉に『百里を行く者は九十を半ばとす』と言う言葉がある。

横須賀女子のフロート船が見えてくるまで油断は出来ない。

警戒しながら、夜の海を進んで行くヒンデンブルクと晴風。

すると、またもや通信を傍受した。

 

「ん?海上安全委員会‥‥?‥‥ん?こ、これはっ!?」

 

通信を傍受した通信員は思わず声をあげる。

 

「艦長、緊急電です!!」

 

「どこから?」

 

「海上安全委員会からの広域通信です」

 

「広域通信?それで、内容は?」

 

「はい、こちらです」

 

通信員から電文を受け取ると、そこには、

 

『現在、横須賀女子海洋学校の艦艇が逸脱行為をしており、同校全ての艦艇の寄港を一切認めないよう通達する。また、以下の艦は抵抗するようなら撃沈しても構わない、航洋艦晴風!!』

 

「撃沈!?」

 

電文内容に思わず、声を上げるシュテル。

 

(この国は、新入生の乗る艦を撃沈させる気か!?)

 

この後世の日本のやり方に思わず、怒りが湧いてくる。

 

(よく確かめもせず、一つの噂だけを信じて、寄ってたかって叩き、嘘の事実を真実として、本当の事実を闇に葬る‥‥変わってないな‥‥お前ら権力者たちは‥‥)

 

今の状況はまさに、前世の自分が置かれた状況に似ていた。

文化祭実行委員で、少数ながらも、サボっていない委員もいた。

そいつらは文化祭実行委員での会議の事を伝えずに口をつぐみ、結果的に文化祭でのサボり組でのサボりは黙認され、八幡だけの悪評が残った。

修学旅行でも、あの場にしか居なかった葉山グループ、奉仕部‥‥その誰かが面白おかしく尾ひれをつけて噂を流した。

結果、あの依頼にはなんの関係もない奴らが八幡に対して暴力を振るい、「みんな仲良く」と普段から言っている葉山は八幡を助けることなく、むしろいじめを黙認していた。

つくづく自分でも文化祭、そして修学旅行で、なんであんな事をしたのか、今になって疑問に感じる。

ただ、あの時の行動で、自らの命を絶ったからこそ、今の自分がいると思うと複雑だ。

 

兎に角、現状は最悪で、晴風は叛乱容疑から完全に叛乱者と見なされている。

 

(こんな状況下になっても横須賀女子からは未だに何の連絡もない‥‥どうなっている!?まさか、生徒を切り捨てたのか?)

 

前世の総武高校でも、雪ノ下たちが事故死するまで、八幡のいじめや自殺に対して何の処置もせず、最終的に平塚先生一人に詰め腹を切らせた学校‥‥

シュテルは自殺後の総武高校の事は知らないが、連絡もなく、ましてや撃沈命令が出た現状では、学校が晴風を見捨てたのではないかと思うのも当然だった。

 

(くそっ、俺としたことが、こんなことなら、晴風と合流したすぐ後で、学校側と連絡を取るべきだった‥‥)

 

もう、夜も回っており、今から連絡を入れても横須賀女子に通じるかわからない。

学校に連絡するタイミングを逃した。

 

(明日の朝、一番でいれないとな‥‥今夜は何も起こらなければいいが‥‥)

 

今夜一晩、なんとか乗り切れば、明日の朝、一番に横須賀女子に連絡を入れて現状を聞くことが出来る。

そうなれば、このバカげた命令も撤回できるかもしれない。

シュテルがそう思っていると、舵を握っているレヴィが不安そうに訊ねてきた。

 

「しかし艦長、大丈夫かな?」

 

「ん?なにが?」

 

「いや、だって向こうの晴風って艦、完全にお尋ね者になっちゃって、下手したら問答無用で撃沈されるかもしれないんでしょう?」

 

明乃の話では、猿島はいきなり晴風に攻撃を仕掛けてきた。

と、なれば今後、ブルーマーメイドやホワイトドルフィン、他校の教員艦や学生艦が晴風にたいして、攻撃を仕掛けてくる可能性が高い。

そして、後の報告で、「晴風が抵抗してきたので、撃沈した」と報告すれば、何ら問題にはならない。

いわば、死人に口なしである。

晴風はまさにその危険にさらされていた。

 

「あの艦を守っている私たちも他の艦から攻撃されないかな?」

 

レヴィは晴風を護衛しているヒンデンブルクにも容疑がかけられて攻撃対象にならないか心配している。

 

「航海長、だからこそ、我々が守らなければならないんだ。海に出たばかりの新人がいきなり叛乱容疑をかけられて、ましてや命の危険にさらされている。海の先輩として、こんな理不尽なこと、黙って見過ごせない‥‥それに本艦にはまだ、撃沈命令は下されていない。それどころか外交特権がある。万が一、こちらに攻撃して来れば、反対に日本の立場を悪くさせるだけだ」

 

「そう‥だといいんですけど‥‥」

 

それでもやはり、不安そうなレヴィだった。

 

ヒンデンブルクがこの広域通信を傍受したように、晴風も同じ広域通信を傍受していた。

 

「げ‥げき‥‥」

 

撃沈と言う単語を聞き、固まる立石。

 

「撃つのは、好きだけど、撃たれるのは、やだぁ~!」

 

他の艦から、撃たれるのだと思い、西崎は頭を抱えながら叫ぶ。

 

「何所の港にも寄れないって事?」

 

「そう言う事だな‥‥」

 

「私たち完璧にお尋ね者になっているよぉ~!!」

 

晴風が置かれた現状を知り、舵を握りながら大号泣する鈴。

容疑からなんの弁解もなく、ただ一方的に叛乱者と見なされてしまったのだから、無理もない。

 

「もしかして、駿河も同じ状況なのかも‥‥だから、非常通信を送って来たのかも‥‥」

 

明乃は、先の駿河からのSOSを思い出し、晴風と同じ状況だと察するが、

 

「こっちと違って、簡単に沈むような艦じゃない」

 

真白は、駿河は駆逐艦の晴風と違って、戦艦だから、大丈夫だと言う。

それに広域通信の中に駿河の名前は含まれていない。

それでも、駿河では何かあったことは間違いない。

あのもえかが、いたずらで、救難信号を発するなんて考えられない。

 

「でも、助けを求めていた‥‥だから‥‥」

 

「我々の方が、助けが必要だろう!!」

 

真白は、他艦よりも撃沈命令が下されている晴風の方が、今は一番助けが必要だと明乃に訴える。

 

現状、撃沈命令が出ている中、しかも何所の港にも寄港出来ない。

こんな状況下で他艦を捜しに海を彷徨う余裕なんてない。

 

「それに、実技演習もしてない私達が如何やって助ける気だ!!学校へ戻る方針を変えるべきじゃない‥‥駿河の事は、学校に報告して任せよう!!」

 

真白の言う通り、自分たちはつい最近になって、こうして海に出たばかりの新人。

満足な訓練も演習もしていないのに、救助に行くなど無謀である。

経験不足、そして撃沈命令なんて物騒な命令が出ている以上、学校に戻り、容疑を晴らすのが先だと真白は明乃に言い聞かせる。

 

「で、でも大丈夫かな?」

 

そんな中、鈴が不安そうに声を上げる。

 

「なにが?」

 

「だって、撃沈命令が出ているんでしょう?あのドイツ艦がいきなり、晴風を攻撃してくるなんてことはないよね?」

 

『‥‥』

 

鈴の指摘を受けて、艦橋のみんなが固まる。

猿島、シュペーもいきなり砲撃してきた。

今回は、正式な撃沈命令が出ている。

ヒンデンブルクがいきなり晴風に対して攻撃してきてもおかしくはない。

そんな不安が艦橋内に広がる。

しかし、

 

「多分、大丈夫じゃないかな」

 

そんな中で明乃はそれを否定する。

 

「どうしてそう言い切れる」

 

真白は何故、明乃はヒンデンブルクが攻撃して来ないと確信しているのか?

その訳を訊ねる。

 

「シュペーで救助した人‥‥あの人、向こうの艦の艦長さんの知り合いみたいなの。さすがに知り合いが乗っている人を攻撃するなんてことはないでしょう?」

 

「ま、まぁ、確かに‥‥」

 

訳を聞いて納得する真白。

 

「それじゃあ、学校に戻ろう」

 

明乃は、真白の説得とヒンデンブルクが護衛をすると言うのであれば、その行為に甘えて、学校に戻ることを決める。

 

「うぃ」

 

明乃の判断に立石も同意する。

 

「じゃあ私が艦橋に入るから、皆は、休んで」

 

明乃は、皆に休むように言うが、

 

「今夜の当直は私と鈴ちゃんです」

 

納紗は今夜の勤務表を明乃に見せる。

そこには確かに今日の夜間当直は納紗と鈴だった。

 

「正しい指揮をする為には、休むのも必要だ」

 

「私は大丈夫だから‥‥」

 

「良いから休んでください!!」

 

「うん、分かったよ、シロちゃん‥‥」

 

このまま明乃を一人当直させておくと、隙を見て、駿河を捜しに行くのではないかと思い、真白は明乃を艦橋から出るように言う。

真白の勢いに負けてすごすごと自室に戻る明乃だった。

 

 

「もうすぐ日没か‥‥艦橋は海図台の明かり以外、全て消灯。夜間当直体勢」

 

夜目を慣らす為、ヒンデンブルクの艦橋の明かりが消される。

やがて、太陽が水平線に沈み、辺りが暗くなる。

そんな中で、晴風の艦橋には明かりが点いていた。

 

「ん?向こうの艦、艦橋の明かりが点けっぱなしだ」

 

「発光信号で知らせてやれ」

 

(やれやれ、自分たちが追われていると言う自覚があるのかな?)

 

下手に明かりを灯して航行していると、他の船舶を幻惑させたり、相手に自分の位置を知らせることになる。

ヒンデンブルクからの発光信号を受け、晴風では、

 

「ドイツ艦から発光信号を確認」

 

「な、なんて言っているの?」

 

ヒンデンブルクの発光信号を確認した納紗が鈴に伝えると鈴は、恐る恐る内容を訊ねる。

 

「えっと‥‥夜間の航行において、艦橋の明かりは消灯せよ‥‥ですって」

 

「艦橋の明かり?」

 

鈴は思わず、天井の電灯を見る。

 

「で、でも明かりがないと何にも見えないよ」

 

「まぁ、向こうの何かの考えがあって、知らせてきたのでしょうから、ここは指示に従いましょう」

 

納紗はヒンデンブルクが何の考えもなしに艦橋の明かりを消せと言う指示を送ってくるとは考えにくいことから、ヒンデンブルクの指示に従い、艦橋の明かりを消した。

 

「わっ、真っ暗」

 

「そのうち、目が慣れるので大丈夫ですって」

 

真っ暗な艦橋の中で、鈴はビクビクしながら舵を握っていた。

 

それから、ヒンデンブルクと晴風はブルーマーメイドやホワイトドルフィンの艦船との接触もなく、順調に航行していたが、水測員が海中からスクリュー音を探知した。

 

「CIC、艦橋。水中より推進機音を探知」

 

「水中‥‥潜水艦か‥‥」

 

「総員、起こし、対潜水艦戦闘用意」

 

ヒンデンブルクの艦内に警報が鳴り響く。

 

それは晴風も同じで、

 

ビー!!ビー!!

 

晴風の艦長室で仮眠をとっていた明乃もベッド横の内線電話の呼び出し音で目を覚ました。

 

『艦長!水測の万里小路さんが、何か海中で変な音がするって‥‥艦長!!‥‥艦長!!』

 

「総員、起こし!!」

 

艦橋にいる幸子からの報告に明乃は、直ぐ配置の命令を下し、寝間着代わりに来ていた横須賀女子のジャージから制服に着替え、艦長帽を被り、艦橋へと急ぐ。

 

「ココちゃん、報告して!?」

 

「えっと‥‥方位30に二軸の推進機音、感2‥現在音紋照合中です!!」

 

艦橋に入った明乃は納紗に現状を訊ねる。

そして、納紗は明乃に報告する。

 

「水上目標がいないって事は‥‥」

 

「潜水艦ですね」

 

晴風でも、現在晴風とヒンデンブルクに近づいているのは潜水艦だとすぐに分かった。

 

「ふぁぁぁ~如何したの?こんな時間に‥‥?」

 

欠伸しながら、まだ寝ぼけ眼な芽衣とアザラシの様なアイマスクを付けた立石が艦橋に上がって来た。

そして、もう一人‥‥

 

『ん?』

 

明乃と納紗は艦橋に入ってきたある人物に注目する。

 

「シロちゃんそれ!!」

 

「何やっているんですか?」

 

二人の目の前に立っていたのは、寝ぼけた状態で鮫のぬいぐるみを両手で抱っこしたままの真白だった。

寝ぼけている真白に対して、明乃は鮫のぬいぐるみに興味津々で、納紗は真白の意外な趣味に目を細めていた。

 

「ん‥‥?わぁっ!?こ、これは‥‥その‥‥み、見るな!!」

 

意識が覚醒した真白は慌てて、鮫のぬいぐるみを後ろに隠す。

他のクラスメイトに知られていない自分の趣味の一部を暴露してしまった真白だった。

やがて、艦橋に次々と配置完了の報告があがる。

ただし、機関はまだ修理が終わっていないため、巡航以上は出せないままだった。

 

「か、各部‥‥配置に着きました!!」

 

真白は、恥ずかしがりながら明乃に総員配置に付いた事を報告する。

 

 

ヒンデンブルクでも、各部、自分たちの部署にクラスメイトたちは次々とつく。

 

「各部配置完了」

 

「艦橋、CIC、潜水艦の艦種は判明したか?」

 

「音紋照合完了、東舞鶴海洋高校所属の伊201です」

 

音紋照合の結果、接近する艦艇は、東舞鶴男子海洋学校所属の潜水直接教育艦伊号第201潜水艦だと判明した。

 

「伊201‥‥」

 

「それってどんな艦なの?」

 

ユーリがメイリンに伊201の詳細データを訊ねる。

 

「えっと‥‥ですね‥‥」

 

メイリンはタブレット端末を駆使して、伊201の情報を収集した。

 

「基準排水量1070t、水中速力20ノットは出る高速艦ですね。武装は53cm魚雷発射管4門、25mm単装機銃2挺、魚雷は10本です」

 

「水中で20ノット‥‥」

 

「現在の晴風は巡航以上の速度が出せないので、少々厄介ですね」

 

「それに魚雷が10本か‥‥」

 

「‥‥」

 

シュテルは漆黒の海を見ながら、伊201の動向に警戒した。

 

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