やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~ 作:ステルス兄貴
濡れ衣で叛乱者として認定されてしまった横須賀女子海洋学校所属の晴風を無事に横須賀へ戻す為、ヒンデンブルクは晴風を護衛しながら横須賀へと向かう。
そんな中、海中から東舞鶴海洋学校所属の潜水艦、伊201が二隻に接近していた。
伊201の存在はヒンデンブルクも晴風でも既に探知していた。
「東舞校?」
聞き慣れない学校名に首を傾げる西崎。
少なくとも、女子高ではないことが確かだ。
「‥‥男子校ですね!!」
メイリンが伊201の詳細を調べたように納紗もタブレットを使って伊201の詳細なデータを調べていた。
そして、艦橋に居る皆に東舞鶴男子海洋学校がどんな学校なのかを説明する。
東舞鶴男子海洋学校とは、ブルーマーメイドと並ぶ海洋治安維持組織、ホワイトドルフィンの養成学校であり、東舞鶴の他に、広島の江田島、青森の大湊、北海道の室蘭に男子の海洋学校がある。
その他にも千葉の総武や海浜など、海洋科のある高校からホワイトドルフィンになる男子高校生も居る。
そして、大きな特徴は水上艦艇の多いブルーマーメイドの養成学校と違いホワイトドルフィンの養成学校は、潜水艦がほとんどで東舞鶴男子海洋学校もその一つである。
「へぇー男子校なんだ!!」
すると、左舷側の見張りをしていた山下秀子が横から意外そうに言う。
「潜水艦は全部男子校ですもんね~‥‥でも狭くて暑くて臭くて‥‥」
山下に便乗して、右舷側の見張りをしていた内田まゆみが潜水艦は、全部男子校の所属だと言う事を説明し、更に潜水艦の艦内についてのイメージを言う。
内田は以前、男子海洋学校のオープンキャンパスか文化祭で伊号潜にでも乗った経験があるのだろうか?
「わ、私には無理~!!」
鈴が伊号潜の艦内を想像して自分には無理だと涙目で言う。
「絶対追手だよ!撃っちゃおう!」
そんな中、西崎は伊201に対して先制攻撃を仕掛けようと提案する。
しかし、西崎の提案に対して、明乃は判断に困っていた。
確かに西崎の言う通り、追っ手と言う可能性もある。
濡れ衣とはいえ、世間では今の自分たちは完全にお尋ね者である。
だが、偶然この海域に来ただけかもしれない伊201に対して先制攻撃をしかければ、それこそ、濡れ衣ではすまなくなる。
「ココちゃん、伊201と通信できないかな?」
明乃は、なんとか伊号201と交信できないか試みるため、納紗に訊ねる。
「普通の電波は海水で減衰するので届きませんね」
納紗は、普通の電波では届かないと明乃に説明する。
「じゃあ普段、通信は如何しているの?」
明乃は、伊号201が普段通信しているのか、分からなかった。
まぁ、潜水艦何て明乃とはおそらく一生縁のない艦種であるし、受験勉強でも水上艦船が主な女子には無縁だったので、潜水艦に関する知識は乏しいのも無理はない。
「潜水艦だからって、いつも潜っている訳じゃない!!」
真白は、潜水艦は時々、浮上して交信すると思った。
「そうだよね、時々は海上の様子見ないと怖いよ~!!」
「シロちゃん、潜っている時は、向こうも外の様子をソナーで探っているんだよね?」
明乃は、相手もソナーで外の様子を探っているのかと聞く。
「当然だ!!」
「じゃあ、此方からアクティブソナーをモールスの変わりに使ったら?」
明乃はアクティブソナーをモールスの変わりに使う事を真白に提案する。
「恐らく可能だと存じますが‥‥」
聴音担当の万里小路楓は明乃が言うアクティブソナーをモールスの変わりに使う事は可能だと言う。
「そんな事したら間違いなく砲撃したと思われるぞ!!」
しかし、真白はアクティブソナーを撃てば、伊201は自分たちを探している=攻撃する意思があると認識され、反撃される可能性が大だと思い、明乃の提案に反対する。
「ソナーでも何でも良いから撃っちゃえ!!」
トリガーハッピーな西崎は、撃てるモノなら砲弾だろうと魚雷だろうとアクティブソナーでも何でも良い様だ。
「馬鹿なこと言うな!!」
あくまでもアクティブソナーの使用に反対する真白であるが、明乃は、
「万里小路さん、所属と艦名、それと交戦の意志がない事を伝えて。出来る?」
アクティブソナーで伊201にモールスを打ち、コンタクトを試みる。
「一切、承りました」
万里小路はアクティブソナーの発振時間を小刻みに変えてモールス符号を表現し、海中に向けて信号を発する。
当然、伊201はこのアクティブソナーを探知する。
すると、伊201は行動を起こした。
「目標、進路変換。急速に深度を増していますわ」
伊201は晴風のモールスを理解していないのか、晴風がアクティブソナーで自分たちを捜していると判断して攻撃から逃れるかのようにより深く潜っていく。
晴風が打ったアクティブソナーはヒンデンブルクでも探知された。
「晴風がアクティブソナーを打っています!!」
「なにっ!?」
「潜水艦相手にアクティブソナーを打つなんて、誤解を与えるぞ」
「伊201の状況は!?」
「急速に潜航をしています」
「距離は?」
「遠ざかっています」
「‥‥逃げてくれればいいのだが、油断させていきなり魚雷を撃ってくる可能性もあるな」
「艦長、晴風も速度を落としています」
「おそらく、ソナーで探知しやすい速度にしたんだろう」
「どうする?シュテルン」
「晴風が速度を落としたのだから、こちらも速度を落とさなければならないだろう。‥‥両舷前進微速」
「両舷前進微速、ヨーソロー」
晴風の護衛をしているので、ヒンデンブルクもそれに合わせた速度にしなければならない。
「それで、もし潜水艦が魚雷を撃って来たらどうする?」
「撃沈するわけにはいかないからな‥‥追っ払うしかないが、それは撃沈するよりも難しい」
シュテルは艦長帽を脱ぎ、髪の毛をワシャワシャとかく。
「‥‥ユーリ」
「ん?」
「いざとなれば、例のモノを使うぞ‥‥使い方は覚えているか?」
「大丈夫だよ、シュテルン」
「ん、頼りにしている」
そんな中、
「魚雷音聴知!!方位270度、数二!!高速接近!!」
「雷跡左30度20!こちらに向かっている!」
「取り舵一杯!」
「取り舵一杯!」
晴風の方も魚雷の接近を探知して回避行動をとる。
ヒンデンブルク、晴風からはずれた魚雷は海中で起爆し、二本の水柱が立つ。
「模擬弾頭の魚雷じゃなくて、本物の魚雷を撃ってきたか‥‥」
「でも、酸素魚雷ではなくて、よかったですね」
「ああ‥‥」
ドイツのUボートでは、酸素魚雷ではなく、使い勝手の良い電池式魚雷、蒸気式魚雷を使用していた。
日本が誇る魚雷、酸素魚雷‥‥
その魚雷の最大の特徴は魚雷の航跡が目立たないということだ。
酸素を酸化剤として使用する酸素魚雷では、発生する二酸化炭素が比較的水に溶けやすいため、雷跡は目視困難だった。発見のしにくさは回避される可能性の低さにつながり、より命中弾を得やすい。
酸素魚雷のもう1つの特徴は打撃破壊力が大きいことであった。
それは、高純度酸素により実現した強力なエンジン出力を、航続力、雷速に加えて炸薬搭載量の増大にも振り向けたことによる。
また、従来の魚雷との相違点として、湿式機関に必要だった真水タンクを搭載していない。
従来の魚雷は加水燃焼ガスを使う湿式機関を採用している。
この湿式機関は、燃焼ガスに魚雷内のタンクに積んだ真水を噴霧し、石油燃料の拡散率の向上と水蒸気爆発を利用、エンジンの燃焼効率と馬力を大きく向上させるシステムであった。
しかし、酸素魚雷は高純度酸素と石油燃料(灯油)の高圧混合ガスを燃焼する方式をとったため、出力馬力が非常に強力になったとともに、燃焼用の真水タンクは不要となった。
酸素魚雷は機関室区画に海水が入る構造となり、内蔵の小型ポンプで海水を循環させ、エンジンの冷却を補助していた。
酸素魚雷はその破壊力と隠密性から、重宝されているが、その分値段も高い。
その為、海洋学校とは言え、高価な酸素魚雷をいくつも装備している筈もなく、かえってそれが幸いした。
魚雷を回避した晴風とヒンデンブルクであったが、海中での魚雷の爆発で伊201を見失ってしまった。
「これで、伊201が逃げてくれればいいのだが‥‥」
「ですが、伊201にはまだ魚雷が八本搭載されています‥‥最も、伊201がこれまでの航海で使用していなければの話ですが‥‥」
「ぜひとも使用してもらいたいね」
シュテルとしてはできれば、伊201の魚雷がさきほど、撃った二本の魚雷が最後の魚雷であってほしいと願う。
晴風はまだ、機関が修理中で全速が出せない。
それに、いくら相手が先に魚雷を撃ってきたからといってもここで戦闘を挑んでしまえば、確実に敵対行動を取ったと見られてしまう。
第一、見失った潜水艦相手に対する攻撃手段があまりにも乏しい。
だが、何かしら抵抗せねば、相手が魚雷を撃ち尽くす前に晴風の方が先に音を上げてしまう可能性も捨てきれなかった。
「ぜ、全速が出せれば、多分振り切れるとー」
「だから全速は出せねぇって言ってんだろう!」
分かっていながら無謀な事を口にした鈴に、機関長の榊原が怒鳴り、明乃は万里小路に訊ねる。
「万里小路さん、相手の位置は分かる?」
「恐れ入りますが、もっとゆっくり進んで頂かないと‥‥」
「速度を落としたらやられちゃうよ~」
こちらから見る事のできない相手に、艦橋に不安と焦燥が広がる。
彼女たちは今、海中に潜む相手に翻弄されていた。
「とにかく、今は逃げ回ろう」
その中で明乃はただ、事の成り行きを冷静に見つめ、次の一手を模索し始めた。
ヒンデンブルクも晴風も伊201を無視して、この場からの逃亡を選んだ。
伊201を撃沈するのは本来の目的ではないのだから‥‥
それから、一時間後‥‥
「周囲、何も見えません‥‥」
あれから伊201の攻撃はなく、平穏な夜の海が広がっている。
「あれから、一時間経過‥‥速度差からも、十分距離は、開いたかと‥‥」
「伊号潜も水中で、ずっと最大速力で潜っているのは無理だろうからね‥‥でも、夜が明けるまで油断はできないな」
ヒンデンブルクの艦橋では、まだ油断できないと言った空気が流れていた。
一方、晴風の艦橋では、
「何とか逃げられたかな?」
一時間の間、伊201の攻撃もなく、伊号潜の性能上、最大船速で潜っていられるはずもない要素から、明乃は、伊号第201潜水艦を振り切った事に安心する。
「逃げるなら任せて!!」
鈴が自信満々で答える。
「それって自慢する所ですか~?」
納紗が茶化す様に鈴に訊ねる。
「こ、ココちゃ~ん」
鈴と納紗のやり取りに艦橋は笑い声が満ちた。
「万里小路さん。何か聞こえる?」
明乃は水中にも何か変化がないか万里小路に訊ねる。
「あら、お許しあそばせ。起きておりますわ‥‥」
万里小路はウトウトしていたみたいで、明乃の声で目を覚ます。
「ごめんね、こんな遅くまで‥でも、もう少しお願い」
本来ならば、既に就寝時間であったが、伊201の遭遇と完全に伊201の脅威が去っていない中、推測員である万里小路を任務から外すわけにはいかなかった。
万里小路に対してすまなそうに言う明乃。
「畏まりました」
万里小路はもう一息と気合を入れて、ヘッドホンを耳に当てた。
「ふわぁ~‥‥ねむぃ‥‥」
「ふわぁ~‥‥駄目だ~‥‥眠い‥‥」
万里小路同様、普段ならば、もう寝ている時間なのだが、無理をして起きている立石と西崎は大口をあけてあくびをする。
西崎の目の下には隈が浮き出ている。
眠気で艦橋員の集中力はダダ下がりの中、
「そんな、みなさんに杵埼屋特製のどら焼きです」
ほまれが夜食の差し入れにどら焼きを艦橋に持ってきた。
「どら焼き!?」
嬉しい夜食の登場にさっきまで、眠そうな西崎のテンションが上がる。
艦橋員メンバーたちは、ほまれからどら焼きを受け取り、食べ始める。
「他の部署にはもう配ったの?」
明乃が艦橋以外の箇所にもう配ったのかを訊ねる。
「はい、艦橋が一番最後です」
どら焼きの登場で艦橋の気が緩るむ。
晴風で、炊飯委員たちが艦内の各部署に夜食のどら焼きを配っている頃、ヒンデンブルクでは、
「クリス、眠気覚ましのコーヒーを淹れて」
シュテルはクリスにコーヒーを頼む。
「了解。他の皆は?飲む?」
「飲みます」
「はい」
「もらえるなら‥‥」
クリスは他の艦橋員にコーヒーを飲むか訊ねると、ほぼ全員が飲むと答える。
「ああ、クリス」
「ん?なに?」
「私のコーヒーは砂糖とクリーム、マシマシでお願い」
シュテルとしては砂糖やクリームよりも練乳の方が良かったのだが、残念ながら、練乳はヒンデンブルクの厨房にはないので、仕方なく砂糖とクリームを沢山入れてもらうことにした。
「シュテルン、夜中にそんなモノを飲むと太るよ」
クリスは深夜の過剰な糖分接種は肥満の原因につながると言うが、
「船に乗っている最中は、動くからカロリーはほぼ消化されるので、問題はない」
「わかったよ。でも、ちゃんと歯を磨きなさいよ」
クリスは砂糖とクリームをたくさん入れる甘いコーヒーとなるので、虫歯にならないためにちゃんと歯を磨くように注意する。
そして、クリスがシュテルに入れたコーヒーは、もはやコーヒーの香りも風味もへったくれもなく、ややドロドロしているようにも見えるコーヒーを平然とした様子で飲む。
「「‥‥」」
その様子をクリスもユーリもやや引いている。
そんな緊張艦が若干緩んだ時、海中からの刺客は晴風とヒンデンブルクに襲い掛かる。
「雷跡フタ! 左120度30! こちらに向かう!!」
見張り員からの報告を受け、艦橋は眠気が漂うのほほんとした空気から一転し、再び緊張した重苦しいものへと変わる。
両艦が回避運動をする中、
「どいて!!」
シュテルはどこから持ってきたのか?実弾が装填されたドラム式のマガジンを装填したグロスフスMG42機関銃を持って、ウィングへと出ると、
バババババババ‥‥
海中から迫りくる魚雷に対して、応戦する。
シュテルが放ったグロスフスMG42機関銃の弾丸の内、何発かが魚雷に命中し、魚雷は爆発する。
「ハァ‥‥ハァ‥‥ハァ‥‥ハァ‥‥危なかった‥‥」
「いや、いくらなんでもやり過ぎだって‥‥」
「シュテルン、徹夜のせいで変なテンションになっているよ‥‥」
コーヒーに続いて、グロスフスMG42機関銃で魚雷を潰したシュテルにまたもやドン引きする艦橋員メンバーだった。
ヒンデンブルクの艦橋員メンバーはドン引きしていたが、晴風の艦橋では、シュテルの行動が小さいながらも確認できた。
そして、それを見た西崎は、
「すげぇー!!あっちの乗員、機関銃で魚雷を撃っちゃったよ!!」
「うぃ‥‥」
「いいなぁ~あたしも、やりたいなぁ~」
実銃をぶっ放せることに物凄く羨む西崎だった。
「‥‥な、なんじゃ~!!」
晴風を狙った魚雷を今回も運よく回避したが、至近距離で魚雷が爆発し、その衝撃で艦内は大きく揺れる。
その爆音と揺れで、晴風の医務室で眠っていたミーナが目を覚ます。
「ど、どこじゃ?ここは‥‥?」
シュペーを脱出した途中で、乗っていた小型艇がシュペー副砲で吹っ飛ばされたことで意識を失い、そこから記憶が飛んでいたので、この場がどこなのか当然、ミーナが分かるはずがなかった。
「大丈夫か?‥‥ふむ、どうやら意識はしっかりしているようだな。ここは横須賀女子海洋学校所属、航洋直接教育艦晴風の医務室だ。私はここの責任者の鏑木美波だ」
美波はミーナに自己紹介とここがどこなのかを彼女に教える。
「晴風‥‥」
「さきほど、聞いたのだが、シュペーの副長で間違いないのか?」
美波は先程、シュテルが、ミーナがシュペーの副長であることを言っていたので、確認のため、ミーナに訊ねる。
「う、うむ、ワシはアドミラルシュペーの副長、ヴィルヘルミーナ・ブラウンシュヴァイク・インゲノール・フリーデブルクだ。だ、だが、わしは何故ここに‥‥?」
「覚えていないのか?」
「う、うむ‥途中から何があったのか‥‥」
「シュペーからお前が飛び出してきて、しかもそのシュペーに攻撃されていたのだと聞いている。うちの艦長がスキッパーで出て、気を失っていたお前を回収してきた」
「そ、そうか‥世話になった‥‥」
ミーナが美波に礼を言った時、その時、晴風が大きく揺れる。
爆音は聞こえていないので、おそらく伊201をまこうと大きく舵をきったのだろう。
「一体如何なっておる?」
乱暴な運転に晴風に何かが起きているのだと判断するミーナ。
「この晴風は現在潜水艦に追われている様だ」
「潜水艦!?潜水艦からの攻撃を受けているのか?だが、これは‥‥ええい、此処では埒があかん!わしの制服はどこじゃ?」
「此処に有る。海水で濡れていたが、ちゃんと洗濯し、乾燥機にかけてある」
美波が机の上に置いてあったミーナの制服を彼女に手渡す。
すると、ミーナは美波がいるにも関わらず、今着ている検診衣を脱ぎ捨て、制服を着用する。
まぁ、同性なので問題ないだろう。
実際、ミーナも美波も特に気にしている様子はなかった。
「艦橋はどっちじゃ!?」
「案内しよう」
美波は、ミーナを艦橋まで連れて行く。
ミーナが美波の案内の下、晴風の艦橋へと向かっている頃、
ヒンデンブルクの艦橋では、
「やっぱり、連中、海中から後をつけてきたみたいだな」
グロスフスMG42機関銃を抱えながらシュテルは伊201が追跡をあきらめずに晴風とヒンデンブルクを追ってきたこと、さらに魚雷攻撃を続けてきた。
もう、これ以上は許容できなかった。
このままでは晴風、ヒンデンブルクのどちらかに伊201の魚雷が命中する恐れがある。
「CIC、伊号潜の居場所は探知しているか?」
「はい。探知しております」
「よし‥‥ユーリ、例のモノを使うぞ」
「了解」
ヒンデンブルクにて、伊201相手に何かを使用としている時、ミーナは晴風の艦橋に到着した。
「このド下手くそな操艦は、なんだ!?艦長はだれじゃい?この船はド素人の集まりか!?」
「今、潜水艦と戦闘中でして‥‥」
「そんな事、分かっとる!!」
「‥‥っていうか、お前は誰だ?」
真白はいきなり艦橋に殴り込みをかけてきたミーナを怪しむ。
「ん?わしはか?わしは、ヴィル‥‥」
ミーナが名を名乗ろうとした時、
「あっ!?ドイツ艦の子だよ、目が覚めたんだ!!確か、シュペーの副長さんなんだよね?」
ミーナが名乗る前に明乃が彼女の正体を言ってしまう。
「いや、それより今は、戦闘だ‥‥」
ミーナが伊201と戦う術を明乃たちに伝えようとした時、
バシュー!!
ヒンデンブルクの艦首部の辺りに煙と爆炎の様な光が起こる。
「な、なに!?」
「爆発!?」
突然の爆音にヒンデンブルクが爆発したのかと思ったら、空に向かって何かが飛んで行った。
「墳進魚雷!?」
ヒンデンブルクが放ったのはなんと教員艦やブルーマーメイドが装備している墳進魚雷だった。
改装工事の際、墳進弾の発射台を装備した際、この発射台は墳進魚雷も装備可能だった。
その内、一基には墳進魚雷が装填されていた。
そして、今回の伊201に対して、その墳進魚雷を使用した。
「艦長、墳進魚雷です!!」
「潜望鏡を下げろ!!面舵いっぱい!!」
潜望鏡からヒンデンブルクが墳進魚雷を発射したのを確認した伊201は急いで、潜望鏡を下げてこの場から逃げる。
ヒンデンブルクの墳進魚雷は伊201を追跡してくる。
コーン‥‥コーン‥‥コーン‥‥
「艦長、探信音が聞こえてきます」
「探信音だと‥‥」
「はい、探信音、なおも接近してきます」
コーン‥‥コーン‥‥コーン‥‥コーン‥‥
「接近してくるのは魚雷です!!魚雷から探信音が!!」
コーン‥‥コーン‥‥コーン‥‥コーン‥‥
海中の潜水艦内に居ても接近してくる墳進魚雷の探信音が聞こえてくる。
それは伊201の乗員にとって死神の足音にも聞こえた。
「魚雷命中まであと十秒」
「‥‥ユーリ、魚雷を自爆させろ!!」
「了解!!」
ユーリは墳進魚雷の自爆スイッチを押す。
すると、伊201に迫っていた墳進魚雷は突如、自爆する。
墳進魚雷が自爆した影響で、衝撃波が生じ、その衝撃が伊201を襲う。
「ソナー、潜水艦の機関音は聞こえるか?」
「機関音は聞こえませんが、船体の軋み、圧搾空気の排出音が聞こえます。急速浮上中と思われます」
やがて、海面に伊201が姿を現した。
「晴風に発光信号!!『我に続け』と‥‥」
「はい」
伊201を墳進魚雷で無力化したヒンデンブルクは晴風にこの海域からの脱出を指示する。
「伊201からの国際救難信号の発信と応答を確認。現在、東舞校教員艦が30ノットで接近中!!」
戦闘続行が不可能になった為、伊号第201潜水艦がSOSを発信し、それを受信した同校の教員艦が接近中とのことだ。
ここで、身柄を拘束されるわけにはいかないので、ヒンデンブルクと晴風は急いでこの場から離脱した。
「ふぅ~‥‥さすがにもう、追っては来ないだろう‥‥」
遠ざかっていく伊201を見ながら呟くシュテル。
「艦長」
「ん?」
「晴風から通信で、ミーナさんの意識が戻ったようです」
「そうか‥では、後で、そちらに行くと伝えてくれ」
「はい」
ミーナの意識が戻ったと言うことで、彼女にも事情を聞くことが出来る。
一体シュペーで何が起きたのか?
テアは無事なのか?
シュテルは眠気さえも忘れてしまうほど、ミーナとの再会を待ちわびた。