やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~ 作:ステルス兄貴
東舞鶴海洋高校所属の伊201からの追撃を振り切ったヒンデンブルクと晴風。
伊201との戦闘の最中で、シュペーから救助されたミーナが目を覚ました。
晴風の艦橋に乗り込んだ直後にヒンデンブルクが伊201に墳進魚雷を撃ちこみ、伊201との戦闘は終わった。
ミーナとしては自らのドイツでの経験の手腕を振る機会が失われた。
伊201との戦闘海域から出せる速力で退避するヒンデンブルクと晴風。
やっと落ち着いたところで、明乃がミーナにシュペーの事を訊ねようとするも、ヒンデンブルク艦長のシュテルもシュペーで何が起きたのかを知りたがっていたので、ミーナへの事情聴取は日が昇ってからにすることになった。
それ以外でも伊201との戦闘で非直者は叩き起こされて眠い中、仕事をしたのだ。
今は一分一秒でも早くベッドに戻りたい‥‥
それが本音だろう。
とりあえず、明乃はシュテルにミーナが起きたことを伝えようとする。
「あの戦艦‥‥やはり、ヒンデンブルクか‥‥」
明乃の話を聞いてミーナは晴風の前方を航行する戦艦が、シュテルが艦長を務めるヒンデンブルクだと自覚する。
「確か向こうの艦長さんとも知り合いだったんだよね?」
「ああ‥‥ドイツに居た頃からのな‥‥」
「でも、学校は違いますよね?」
納紗がミーナに訊ねると、
「ああ、碇艦長とは、去年交換留学で知り合ってな‥‥」
「へぇ~同じ国の学校同士でも交換留学ってやるんだ‥‥」
山下が意外そうに言う。
「‥‥その際、碇艦長はワシの‥‥ワシの艦長を取ったんじゃあぁぁぁー!!」
突然絶叫するミーナ。
「えええーっ!?それって昔の昼ドラみたいなドロドロな関係ですか?」
納紗がミーナに喰いつく。
「それよりも、向こうの艦に知らせなくていいのか?」
このままでは収集がつかなくなりそうなので、真白がヒンデンブルクにミーナが起きたことを知らせろと言う。
「あっ、そうだね」
明乃はヒンデンブルクに連絡を入れる。
ヒンデンブルクからはその旨を了承し、事情聴取の時間を決めた。
それからミーナは晴風にて、監督生としてしばらく厄介になることになった。
「えっと‥‥部屋は‥‥ココちゃん、何処が空いてたっけ?」
流石にミーナをその辺の通路や甲板で寝かせる訳にはいかなかったので、明乃は晴風の部屋でベッドの空きが無いかを訊ねる。
まぁ、最悪一晩だけならば医務室のベッドもあるが‥‥
「う~ん‥‥ベッドの空きがあるのは‥‥副長の部屋だけです!!」
「えっ!?‥‥私の‥部屋‥‥」
ベッドの空いている部屋が自分の部屋だけだと知り、何故か真白は固まる。
そんな真白を尻目に明乃たちはミーナを真白の部屋に案内する。
真白の部屋の扉をあけると、そこは‥‥
ベッドの上には縫いぐるみが一杯置かれファンシーな部屋になっていた。
真白が固まったのはこのファンシーな部屋を他のクラスメイトたちに見られたくないがためだったのかもしれない。
「うわぁ!?すご~!!」
「夜いたサメさんも居ますね」
「宗谷さんからは、想像できない部屋です!!」
西崎、内田、納紗が真白の部屋を見て、その感想を述べる。
更に納紗は真白の部屋をタブレットのカメラで撮りまくる。
「良い部屋だな!!‥‥今日からよろしく頼むぞ!!」
如何やら、ミーナは、気に入ったようで、真白に礼を言う。
「はぁ~」
真白は恥ずかしがりながらため息をつく。
こうして、晴風は、伊201との戦闘を何とかしのぎ、予想外のお客さんであるミーナを乗せて、晴風は一路、横須賀女子海洋学校へと向かうことになった。
伊201との戦闘が終わり、戦闘海域から離れたと判断したシュテルは、
「警戒態勢解除、非直者は今のうちに休んで」
「ハァ~‥‥これでやっと眠れる」
「お疲れ~‥‥」
晴風のクラスメイト同様、やはり寝ていたところを叩き起こされたためか、あくびをしながら部屋へと戻っていく非直者たち。
「シュペー副長のミーナさんとは、日が昇った後で改めて事情を聞くことになった」
シュテルはユーリとクリスに晴風からの通信内容を伝えた。
それから、時間が経過して水平線から太陽が昇り始めた。
朝食を食べた後、シュテルはミーナに事情を聞くため、再びスキッパーで晴風へと向かった。
なお、ミーナに関しては晴風でも朝食の席で明乃がみんなに紹介した。
「新しい友達を紹介します!!ドイツの‥‥ヴィナブラウシュガーインゲンマメ‥‥あれ、何だっけ?」
名前が長かったせいか、明乃は途中で忘れる。
しかも全然あっていないし、以前ユーリが間違えた名前と似ていた。
「サイシュン!!」
『っ!?』
自分の名前を途中で忘れた明乃に腹が立ち、ミーナは、自分で自己紹介をする。
「ヴィルヘルムスハーフェン校から来た、ヴィルヘルミーナ・ブラウンシュヴァイク・インゲノール・フリーデブルクだ!!アドミラル・シュペーでは副長をやっていた!!」
「うーん‥長いから、ミーちゃんで良いかな?」
ミーナの名前が長いので明乃は、ミーナをニックネームで答える。
「誰が、ミーちゃんじゃ!!‥‥と言うか、お主もか!?」
交換留学の際、ユーリからも「ミーちゃん」という同じニックネームをつけられたミーナだった。
そして、シュテルがミーナに事情を聞くため、スキッパーで晴風に来た時、何故か納紗たち一部の晴風のクラスメイトたちからは妙な目線で見られた。
「?」
その視線に首を傾げつつ、シュテルは主目的であるミーナからシュペーで何が起きたのかを聞きに行く。
晴風の食堂にて、シュテル、明乃、真白、ミーナの四人で事情を聞くことになった。
「碇艦長、久しぶりじゃな」
シュテルと再会したミーナは不敵な笑みを浮かべる。
「久しぶりって‥‥言っても、数日前にあったばかりじゃないですか?」
「そうじゃな‥‥あっ、そう言えば、去年の交換留学の際、食堂でやっていたチェスの勝負がまだついていなかったな?今からつけようではないか」
「あの勝負は決まっている。私の勝ちだ」
「その負けず嫌いなところも変わっておらんな」
「それはお互い様さ」
ミーナとシュテル‥‥
なんか二人の空気にやや引き気味の明乃と真白だった‥‥
しかし、いつまでも世間話をしていては話が進まない。
「あ、あの‥‥世間話は後にして本題をいいだろうか?」
またもや真白が話を進めるように言う。
「そうじゃな‥‥」
「それで、シュペーで何が起きたの?」
「我等がアドミラル・シュペーか‥‥それが一体何が起きたのか、ワシにも分からんのじゃ‥‥」
「分からないって‥‥」
「我らの艦も貴校との合同演習に参加する予定だった」
「えっ?そうなの?」
「なんで、艦長なのに知らないんですか?」
明乃は知らなかったみたいで、真白は呆れるように言う。
「‥‥ワシらは合流地点に向かっていたんだが、突然、電子機器が動かなくなって調べようとしたら‥‥誰も命令を聞かなくなった」
「それって叛乱?」
「いや、そんな感じにも見えなかった‥‥第一、我が艦長が指揮をしとる艦で反乱なんて起きるはずがない」
「確かにシュペーにおける統率力はヴィルヘルムスハーフェン校でもトップクラスだしね」
シュテルは去年の交換留学であの学長の無茶苦茶な課題を自分たち同様クリアしたシュペーの統率力、そして絆の深さからシュペーで叛乱が起きるなんて考えられなかった。
「‥‥じゃあ、シュペーが海賊やテロリストに襲われて占領された訳ではないんだね?」
「あ、ああ‥‥」
「そうか‥‥」
ミーナの話ではシュペーが南シナ海で見たあの商船の様に海賊に襲われた訳ではないようだ。
しかし、テアの人柄からいきなりヒンデンブルクに対して砲撃してくる理由が分からない。
ミーナの言う通り、シュペーで何か未知の出来事があったのだろう。
シュペーの乗員であるミーナでさえ、シュペーで何が起きたのか分からないのであるならば、これ以上シュペーで何が起きたのかを解明するのはここでは無理だろう。
「ワシは、艦長から他の艦に知らせるよう命じられて、脱出してきた」
「大変だったね」
明乃はミーアの苦労を労う。
「帽子を拾ってくれたのは、感謝している‥‥これは、我が艦長より預かった大事な物‥‥シュペーに戻って艦長に返さなければ‥‥必ず‥‥」
ミーアは食堂のテーブルの上に置いてあるテアの艦長帽をチラッと見た後、明乃たちに視線を向ける。
彼女の瞳には明確な決意が宿っていた。
「しかし、ひとまずは、学校に戻り、シュペーや駿河については学校の教官たちに任せましょう」
あの実習に参加した学生艦に何が起きたのか分からず、今自分たちが出来ることは学校に戻り、未だに反乱者と見なされている晴風の容疑を晴らすのが先決だ。
シュテルはテアたちのことが心配になりつつも当初の予定通り晴風を横須賀に帰す目的は変えなかった。
「そうですね。シュペーや駿河の事は気になりますが当初の予定を変えるべきではないでしょう」
真白もシュテルの意見に賛同する。
「ミーナさん。私も艦長として、貴女の気持ちが分からないわけではない。だけど、今は、貴女の願いには、応じられません。我々はこれから速やかに横須賀女子海洋学校に戻り、宗谷校長に事の次第を報告しなければならない。岬艦長も晴風にかけられた叛乱容疑はまだ解かれていない‥‥シュペー、駿河に関してもまずは叛乱容疑を解いてからじゃないと満足に動くこともできない。辛いかもしれないが今は耐えて」
「は、はい」
「でも、ワシは‥‥」
「わかっている‥‥私自身もテアの事は心配だし、シュペー同様、異変が起きたとされる駿河の艦長も私の大事な友人なんだ‥‥」
(えっ?どうして、この人がもかちゃんのことを知っているんだろう‥‥?)
明乃はシュテルの発言を聞いてシュテルともえかとの関係に疑問をもった。
「ミーナさんも今は耐えてくれ‥‥決してテアたちを見捨てる訳ではないんだ‥‥」
「う、うむ‥‥わ、分かった‥‥」
シュテル自身も明乃やミーナの様にテア、もえかのことを一刻でも早く助けたい気持ちがある。
でも、既に何度も戦闘を経験していることから晴風も一刻も早く横須賀に戻さなければならない。
それは明乃、そして、晴風が置かれていている状況を知ったミーナも理解して、渋々ながらも理解をしてくれた。
その時、
「艦長!!校長からの全艦帰港命令が出ました!!」
「えっ?」
納紗が学校から通信が入ったこと、
その通信内容を明乃たちに伝える。
「え~と‥‥『私は全生徒を決して見捨てない。皆を守るためにも全艦可及的速やかに学校に帰港せよ』との事です!!」
(学校側もようやく事態を把握したか‥‥)
納紗の話を聞いて晴風の母校である横須賀女子海洋学校でもようやく今回の異変‥晴風が叛乱容疑をかけられたことを把握したのだろう。
「岬艦長、先程の通信内容を晴風のクラスメイトたちにも伝えてください」
「そうですね」
明乃は艦橋へと戻り、先程の母校からの通信内容を艦内に伝える。
「学校から全艦帰港命令が出ました。『晴風も学校側が責任をもって保護するので戻ってくるように』って‥‥なお、帰還中は一切の戦闘行為は禁止だそうです!!」
『良かった!!』
『やった!!』
明乃の説明に皆は、もう戦闘が無い事に安堵する。
とはいえ、戦闘がないと言っても猿島の時の様に、先に攻撃して、反撃に合い、『晴風から先制攻撃を受けました』と虚偽の報告をする艦が居ないとも限らない。
やはり、他の学生艦と出会う前に母校へ帰るのが一番だ。
晴風とヒンデンブルクは横須賀への海路を辿っていく。
シュテルはヒンデンブルクに戻った後、横須賀女子海洋学校校長の宗谷真雪からの通信内容を晴風同様、伝える。
最もヒンデンブルクの方でも傍受していたみたいだった。
「戦闘無しで戻れるのであれば、それに越したことはないね」
「ええ、まさか演習相手でもない学生艦に対して虎の子の墳進魚雷を使用するとは思わなかったからね」
「学校に着いたら、なんとか補給出来たらいいんですけどね」
教員艦でも墳進魚雷を使用しているので、都合をつけてその墳進魚雷を補給させてもらおうとした。
「ん?これはっ!?」
その頃、ヒンデンブルクの医務室にて、出航前、カマクラが捕まえたネズミを調べていたウルスラはある発見をした。
「‥‥これはちょっと危険かもしれませんね」
ウルスラは特殊プラ箱の中に居るあのネズミをチラッと見る。
プラ箱のネズミはまるで、人を食ったかのような顔でウルスラの事を見ていた。
彼女が何を発見したのか?
それはおいおい判明することになり、それがこの横須賀女子の演習に起きた異常事態を解明するカギとなることをまだ誰も知らなかった。
ヒンデンブルクと晴風が横須賀を目指している頃、海上安全整備局が流した晴風叛乱容の通信は日本各地の海洋学校にも伝えられた。
更には昨晩の伊201との戦闘も同時に伝えられると、各校は生徒の安全を優先として、学生艦の演習を自粛する動きを見せた。
佐世保女子海洋学校に留学にきていたタラント校所属のリンチェ艦長のアンネッタはこの事態を収拾して、実績を積もうとしたが、学校側から止められた。
地中海での事を考えると、学校側から止められただけで、アンネッタが留まるとは思えないが、学校側はちゃんとアンネッタの性格を熟知していたらしく、
学校からは、
「万が一、勝手に出航した場合、単位は無しの留年処分とする」
と、言われた。
ただでさえ、単位数がヤバく、留年しそうな中で、単位のためにわざわざイタリアから遠路はるばる、極東の日本に来たのに、ここで単位がもらえず、留年なんてたまったもんじゃない。
単位と留年阻止の為にアンネッタは大人しく佐世保に留まったのだ。
佐世保に居るアンネッタの他にこの事態を収拾して、実績を積もうとする人物がいた。
それは千葉の総武高校に居る雪ノ下雪乃に他ならなかった。
彼女が通う総武高校でも海上安全整備局のお達しがあり、二年生の実習は延期とする旨が伝えられた。
その代わりに総武ではシミュレーションの講義時間を増やして演習の穴埋めをした。
しかし、この事実に雪ノ下は教官に食って掛かった。
「私が行けば、叛乱を起こした学生艦なんて短時間で捕まえられます!!私のクラスに出航許可をください!!」
雪ノ下は自らが艦長を務めるコロラド級三番艦、総武で叛乱を起こしたとされる晴風を捕まえると言うが、
「雪ノ下さん。残念だが、出航の許可は出せない」
「だからどうしてですか!?」
「これは、海上安全整備局と校長の判断だ」
「‥‥」
雪ノ下は悔しそうに顔を歪めるが、職員室から出た後、家に電話して、学校側に出航許可を出すように圧力をかけて欲しいとたのむ。
前世とことなり、千葉の海上都市の建設の殆どを請け負っている後世の雪ノ下建設には千葉ではかなりの力がある。
更に雪ノ下の父が前世と同じく県議会議員なのも拍車をかけていた。
しかし、雪ノ下の頼みは却下された。
「ど、どうしてですか!?」
「雪乃、私たちもお前の優秀さは理解している。だが、相手も武装をしていて、教官艦まで沈めた凶悪な学生が乗っているのだろう?」
「話を聞く限りではそうです。だからこそ、そんな凶悪犯を私が捕まえるんです」
「しかし、海では何が起こるか分からない。そんな危険な事をお前にさせたくはないんだ‥‥分かってくれ」
「くっ‥‥」
家との電話が切れた携帯を握りしめながら悔しさで顔を歪めた。
雪ノ下はこの後世でも確かに座学の成績は優秀だった。
しかし、人間性は前世よりもある意味悪化していた。
シミュレーションの講義でも同じクラスメイトたちにもミスや行動が遅ければ当たり前の様に罵倒してくる。
雪ノ下と同じクラスとなったクラスメイトたちはストレスを重ねる日々を送っていた。
教官にそれを言っても教官らは雪ノ下の成績と彼女の実家の権力を恐れ、それをうやむやにしてきた。
おそらく今後もそのような処置を彼女が卒業するまで続けるだろう。
ほんと、雪ノ下と同じクラスになった生徒にはご愁傷様としか言えない。
ある意味転校と言うのも雪ノ下の罵倒から逃げる一つの手なのかもしれない。
雪ノ下が知ったら、きっと自分が原因なのにもかかわらず、
「逃げるなんて、弱い人間ね」
とでも言うだろう。
放課後、この後世における奉仕部の部室にて、雪ノ下は不機嫌な様子で紅茶の入ったカップを傾ける。
なお、後世の奉仕部では八幡の代わりに葉山が在籍しており、彼は奉仕部とサッカー部を兼部しており、今日はサッカー部あるので、席を外している。
「ど、どうしたの?ゆきのん。なんか機嫌が悪そうだけど‥‥?」
由比ヶ浜が恐る恐る雪ノ下に訊ねる。
「なんでもないわ‥‥」
雪ノ下は何でもないと言うが、明らかに何かあった顔だ。
カップに入った紅茶を飲み終えた雪ノ下は幾分機嫌を直した。
「それで、由比ヶ浜さん」
「ん?なに?ゆきのん」
「葉山君はこの後世でも、あのグループを作ったのかしら?」
雪ノ下はこの後世でもあの葉山グループを作ったのかを問う。
「う、うん‥‥葉山君もあのグループは好きだったみたいだからね。それなのに、前世じゃヒッキーが滅茶苦茶にして‥‥ホント、キモイよ!!この世界じゃヒッキーが居なくてホント良かったよ」
「‥‥やっぱり、三浦さんもそのグループに居るのかしら?」
前世でも雪ノ下は三浦がどうも好きにはなれなかった。
当然、この後世には三浦も存在している。
葉山があのグループを作ったとなれば、当然三浦もあのグループに所属しているだろうと雪ノ下は思ったが、由比ヶ浜からは意外な返答が返ってきた。
「それが優美子、この世界じゃあ、あのグループに入らなかったの‥‥」
「えっ?それは、どういうことなの?」
「葉山君も優美子を誘ったんだけど、優美子‥‥なんか、彼氏がいるとかみたいで‥それで、グループ入りを断った‥‥」
「えっ!?‥‥だって、三浦さんは葉山君の事が好きだったんじゃ‥‥」
前世でも自分と葉山との婚約の際、最後の最後まで抵抗し、挙句の果てには自分の事を泥棒猫扱いまでしてきたあの三浦がこの後世では、葉山以外の異性と既に彼氏彼女の仲になっていたことには驚いた。
「この世界じゃなんか違うみたい‥‥」
「じゃあ、あのグループの女子は貴女と海老名さんの二人なの?」
「う、ううん‥‥そのさがみんが優美子の代わりにグループに居る‥‥」
「相模さんが‥‥?」
「うん‥‥正直に言って、さがみんよりも優美子の方がまだマシ‥‥なんか、さがみんさあ、あのグループに入れたからってちょっと調子に乗っているんだよね‥‥まるで自分が葉山君の彼女みたいに勘違いしちゃってさあ‥‥」
由比ヶ浜にしては珍しく八幡以外に毒を吐いた。
「貴女も苦労しているのね‥‥」
由比ヶ浜は相模よりも三浦の方がマシだと言うが、雪ノ下にしてみれば、三浦よりも相模の方が御しやすかった。
「それで、今後の依頼だけど‥‥」
雪ノ下は前世での経験から今後、奉仕部に舞い込んでくるであろう依頼について確認する。
「由比ヶ浜さんの依頼‥‥クッキーを作る依頼だけど‥‥」
「あれは、この世界にヒッキーが居ないから大丈夫だよ」
「貴女の依頼がないとすると‥‥」
「彩ちゃんの依頼からかな?」
前世では由比ヶ浜の依頼の次には材木座の依頼があったのだが、二人とも材木座の存在をすっかり忘れていた。
もっともこの世界では、材木座も比企谷八幡という高校生は存在していないため、奉仕部との繋がりはなく、自作の小説は二次創作サイトに展示するも、感想欄から厳しい指摘を受け、創作意欲を失いこの世界では自作小説を書いていなかった。
なお、彼は前世では八幡とクラスが異なるのと同じく、彼は海洋科ではなく、普通科に在籍している。
彼自身、船上という限られた空間による集団生活は無理だとちゃんと自覚していたからだ。
「戸塚君はこの後世でもテニスをしているのかしら?」
「うん。教室にいる時、テニスラケットを持っていたから、この世界でもテニスをしているよ」
「そう‥‥確か彼の依頼は貴女が持ってきたのよね?」
「うん。そうだよ」
「それじゃあ、折を見て、戸塚君の依頼を受けてきてもらえるかしら?」
「うん。任せて!!」
雪ノ下は戸塚の依頼に関しては由比ヶ浜に戸塚との接触を頼んだ。
しかし、三浦が葉山グループに入らなかった事に関して些細な事だと思っていた雪ノ下と由比ヶ浜であったが、これが二人の‥‥奉仕部の活動においてマイナスとなることをまだ奉仕部のメンバーは知らなかった。
活動報告にて、葉山&由比ヶ浜たちを乗せたい学生艦に関して意見を求めております。
ご協力をお願いします。