やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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62話

 

 

横須賀女子海洋学校の校長、宗谷真雪によって、横須賀女子所属の学生艦に対して帰港指示が出た。

しかも真雪、真霜の働きにより、『全ての戦闘行為も中止するように』との指示付きだ。

海上安全整備局からどの港にも入港拒否され、反乱者として指名手配を受けていた晴風にとって、これは疑いを晴らす機会にもなり、不安がっていた晴風のクラスメイトたちは安堵した表情を見せている。

とはいっても晴風の現在位置とエンジンの調子から、横須賀へ戻るにはもう少しかかる。

戦闘行為が中止と言うことで。平和な航海だと晴風のクラスメイトたちはそう思っているが、シュテル本人は、明乃から猿島の一件の事情を聞いたことから、学校に戻るまでは油断できないと思っていた。

横須賀を目指している中、ヒンデンブルクと同じくドイツからの留学生艦、アドミラル・グラーフ・シュペーでは、なんらかの異常事態が起こった事実も同艦の副長であるミーナから聞いた。

それに救難信号を送ってきた横須賀女子所属の戦艦、駿河でも何かしらの異常事態が起きていることは、救難信号を送ってきた艦長のもえかの様子からでも判断できた。

明乃やミーナ同様、シュテル本人も、もえかやテアの事は心配だった。

しかし、今は目の前の任務‥‥晴風を無事に横須賀へ帰し、事の次第を学校側に報告することが先決だった。

ヒンデンブルクと晴風はもうまもなく、四国沖にさしかかる頃のことだった‥‥

 

ミーナからシュペーで何が起きたのか事情を聞き、ヒンデンブルクに戻ってきたシュテル。

そんなシュテルに、

 

「艦長」

 

「ん?」

 

医務長のウルスラが声をかけてきた。

 

「どうしたの?」

 

「ちょっと、来てください」

 

そう言って、シュテルを医務室へと連れていく。

 

「大変なことが分かりました」

 

「大変なこと?」

 

「はい‥‥先日、カマクラちゃんが捕まえたこのネズミですが‥‥」

 

ウルスラは特殊プラケースの中に居る例のハムスターに似たネズミをチラッと見る。

 

「ああ、あのネズミね‥‥何かわかったの?」

 

「はい‥‥ネズミの血液検査をしたところ、妙な‥‥いえ、未知のウィルスを持っている事が判明しました」

 

「未知のウィルス‥‥」

 

ウルスラの言う『未知のウィルス』という単語に緊張が走る。

 

「はい‥‥念のため、このネズミを捕まえたカマクラちゃんも調べましたが、カマクラちゃんにはウィルス感染はみられませんでした。しかし、人間には悪影響が及ぶ可能性も捨てきれません。ただ、詳しい検査はこの艦の設備だけでは‥‥それともう一つ‥‥」

 

ウルスラはネズミが入った特殊プラケースをバンバンと叩く。

すると、中のネズミは辺りを警戒し始める。

 

「艦長‥‥これ、何時に見えます?」

 

「えっ?」

 

ウルスラは自分が腕にはめている電波式のデジタル時計をシュテルに見せる。

シュテルが画面を見ると、そこには滅茶苦茶な数値を表示しているデジタル時計がある。

 

「これは‥‥」

 

「このネズミ、未知のウィルスに感染しているだけでなく、電子機器にも影響を与える特殊な電波を出すみたいなんです‥‥今はこのプラケースの中に居るので、影響はこの部屋のデジタル時計ぐらいですが、このネズミが多数、船の中に居たら、おそらくレーダーや通信機器もこの毒電波の影響を受けていたでしょう‥‥」

 

「通信機器に異常‥‥」

 

(ミーナさんから聞いたシュペーで起きた異常と同じだ‥‥)

 

「このネズミ‥‥少なくとも、ドイツや寄港地から紛れ込んだわけではなさそうですね」

 

ドイツから日本に来るまでの間、レーダーや通信機器などの電子機器に異常をだしたことがないことから、少なくともこのネズミは日本‥‥横須賀に停泊している間にヒンデンブルクに乗り込んできたのは間違いないだろう。

 

「だろうね‥‥この件も学校側に報告しよう‥‥もしかしたら、この一連の異常事態に、このネズミが関与している可能性もあるからね」

 

横須賀でこのネズミがヒンデンブルクに乗り込んできたのであれば、同じく横須賀女子に停泊中だった駿河やシュペーが異常事態となった原因にこのネズミが関係している可能性も出てきた。

 

「それで、この未知のウィルスに対する応急処置とか対処もわからないの?」

 

「いえ、応急処置‥‥になるか微妙なところですが、このウィルス‥実は海水に弱いみたいです」

 

「海水?」

 

「はい‥‥海水に含まれる塩分かミネラル分に反応しているのか‥‥とにかく、海水に漬けるとウィルスは消滅します‥‥ただし、これはウィルスに感染したての時であって、感染から時間が経つと、免疫組織が形成されて海水でも消滅しないかもしれません」

 

「厄介だな‥‥」

 

「はい‥‥感染からどれだけの時間まで海水で治るのか?そのデータもありませんからね‥‥」

 

「海水以外のワクチンを作るにしても‥‥」

 

「はい。データと設備の問題で‥‥」

 

「そうか‥‥」

 

この時、ウルスラもシュテルも晴風の医務長である鏑木美波が飛び級するほどの天才児であり、晴風の医務室に個人的に様々な医薬品を持ち込んでいたことを知らなかった。

 

「このネズミどうする?‥‥未知のウィルスに感染しているなら、クラスメイトに感染する前に殺処分した方がいいんじゃない?」

 

「そう思う反面、今はこのネズミが唯一の個体ですから‥‥」

 

「‥‥仮死状態にして冷凍保存した方がいいってこと?」

 

「そうなりますね」

 

シュテルとウルスラがこの物騒な密航者の今後を考えている中、主計科のクラスメイトがシュテルを捜していたみたいで、医務室の扉を開ける。

 

「艦長!!」

 

「どうしたの?」

 

「た、大変です!!」

 

主計科の生徒の様子から何やらトラブルが起きたみたいだった。

結局、ネズミに関しては貴重なデータの収集源と言うことで、冷凍保存されることになった。

 

 

その頃、晴風では‥‥

 

晴風の生活物資が保管されている倉庫にて、応急委員の和住媛萌と青木百々が備蓄物資のチェックを行っていた。

 

「お米が120kg、缶詰肉が10箱‥‥」

 

和住がタブレットに備蓄物資の量を記入していく。

 

「まだまだ余裕っスねぇ~」

 

青木がこの分なら学校に着くまで物資は持つだろうと思い呟く。

そして、倉庫の備品チェックが進んでいく中、

 

「あ、あれ!?」

 

青木がある段ボール箱を見つける。

そして、彼女はその段ボール箱の中を見て、絶句する。

 

「っ!?」

 

「ん?どうしたの?」

 

和住も気になって青木が見つけた段ボール箱に目をやる。

そして、二人の顔色が忽ち悪くなった。

その段ボール箱にはトイレットペーパーの絵柄が印刷されており、文字は日本語で、『トイレットペーパー』‥‥と印刷表示されていた。

そして、箱の中身は空だった‥‥

 

所変わって、晴風の艦橋では、普段と変わらない当直体制が行われていた。

 

「‥‥横須賀までどれくらい掛かる?」

 

真白は舵を握る鈴に今の位置から横須賀まで掛かる時間を訊ねる。

 

「えっ!?‥‥えっと‥‥大体26時間ぐらいかな‥‥?」

 

「艦長、可能な限り急ぎましょう。学校側から戦闘停止命令が出ているとはいえ、これ以上他船と遭遇したくない」

 

真白は明乃に急いで横須賀女子海洋学校に帰校するように進言する。

確かに学校側からは戦闘停止命令が出ているが、それでも100%安全だとは言い切れない。

猿島の件を見る限り、先制攻撃して反撃に合った後で、『晴風から先制攻撃をされました』と虚偽の報告をされないとは言い切れないからだ。

 

「あぁ~もう撃てないんだ~!!」

 

西崎は大好きなドンパチが出来ないと知り残念そうだ。

 

「艦長?」

 

「‥‥」

 

真白は、明乃に声を掛けるが、ぼぉっとしているせいか、彼女は真白の呼びかけに気づかない。

 

「艦長!!」

 

そこで、真白はさっきよりも大きな声を出す。

 

「ふぁ~!?ご、ごめん‥‥」

 

真白から大声で呼ばれ、ようやく気付く明乃。

 

「大丈夫?岬さん。具合が悪いなら休んだ方が‥‥」

 

鈴が心配そうに声をかける。

 

「う、ううん‥‥大丈夫‥‥」

 

若干、上の空状態な明乃は大丈夫だと言うが、どうも説得力がない。

そんな明乃を見て、納沙は‥‥

 

「『私、本当は駿河のSOSに応えたいの!』『何を言っている!全艦学校に戻れと言われただろう!』『わかっている!でも!』」

 

と、明乃の気持ちを代弁するかの様に納沙が恒例の一人芝居を始める。

納沙の一人芝居に皆は、苦笑いをする。

 

「ううん‥‥きっと駿河は大丈夫だよ!!私たちは急いで学校へ戻ろう!!」

 

明乃は、駿河が‥‥もえかが大丈夫な事を信じ、自分たちは急いで横須賀女子海洋学校へと帰還しようと告げる。

 

「かん‥‥」

 

だが、明乃の態度を見て、真白は、全然大丈夫じゃないと思った。

そして、明乃に声をかけようとした時、

 

「艦長!!大変大変!」

 

「一大事っス!」

 

和住と青木が血相を変えて艦橋に飛び込んできた。

 

「どうしたの?」

 

「と、トイレが‥‥」

 

「トイレ?」

 

真白は二人が言うトイレという単語に対して首を傾げる。

 

「トイレに何かあったの?」

 

明乃はトイレに何か異常があったのかと思い、二人に訊ねる。

 

「と、兎に角、緊急会議の招集を要求するっス!!」

 

トイレで何があったのかは不明だが、二人の様子からただならぬことがあったに違いない。

交代と見張りの者だけを残し、大部分の生徒は、晴風の教室に集められた。

なお、鈴は舵を同じ航海科の勝田聡子に任せた。

 

教室に集まったクラスメイトたちは突然の招集に何事かと思い、教壇に上がった和住が今回、全員を招集した理由を話し始めた。

 

「日本トイレ連盟によると女性が一日に使うトイレットペーパーの長さの平均は12.5m。‥‥晴風のクラスは全部で30人、航海実習は2週間続く予定だったので、余裕を見て、250ロールは用意していたんです‥‥それが‥‥」

 

和住は真剣かつ深刻な顔で、今晴風が置かれている危機的状況をクラスメイトたちに伝える。

 

「‥‥もうトイレットペーパーがありません!!」

 

『えええっー!!』

 

和住からもうトイレットペーパーの在庫がないと言う事実にクラスメイトたちは驚愕する。

 

「誰がそんなに使ったの!?」

 

和住が言う通り、在庫は沢山あったはずなのに、もうトイレットペーパーがないと言うことは誰かが無駄に使用したに違いない。

機関科の駿河留奈が、クラスメイトたちに誰がトイレットペーパーを無駄に使ったのかを問う。

 

「このクラス、トイレ使う人ばっかりなの?」

 

同じく機関科の広田空は、このクラスの生徒はみんなトイレを使う人ばかりで、それが原因でトイレットペーパーが無くなったのかと問う。

まぁ、現実的に考えてその可能性は低い。

 

「1回10cmに制限すれば?」

 

「えぇ~困る~」

 

駿河、広田と同じ、機関科の伊勢桜良がトイレットペーパーの使用制限を提案するも同じく機関科の若狭麗緒はそれを却下する。

他のクラスメイトたちも同じ様子だ。

 

「誰よ?無駄にいっぱい使ってんのは!?」

 

そして駿河同様、西崎が無駄にトイレットペーパーを使用しているクラスメイトを捜す。

 

「あぁ~でも私、トイレットペーパーで鼻もかんじゃいますねぇ~」

 

そんな中、納沙がトイレットペーパーをトイレ以外で使用していたことを自白した。

犯人は、納沙だけかと思ったら、

 

「すいません!!私、持ち込んだティッシュが無くなったので一個通信室に持ち込みました!!」

 

このトイレットペーパー不足を招いた罪悪感からか、通信科の八木鶫も自らの持ち場にトイレットペーパーを持ち込んだことを白状する。

 

「食堂でも見たよ、ロール」

 

その他にもトイレではなく、食堂でもトイレットペーパーの姿を見たと言う情報も入る。

 

「ちょこっと、拭くのに便利なんだよね」

 

「うん。便利!!便利!!」

 

食堂での目撃情報を言われ、杵崎姉妹が食堂でトイレットペーパーを使った事を白状した。

キッチンペーパーや台拭きではなく、トイレットペーパーで横着をしていたみたいだ。

 

「ったく、どいつもこいつもすっとこどっこいだな!!」

 

このトイレットペーパー不足の事態を見て、機関長の榊原が呆れつつ鼻を鳴らした。

どうやら、彼女はトイレットペーパーを無駄に使用していなかったみたいだ。

 

「如何しよう!!‥無くなったら、おトイレ行けなくなるのかな‥‥?」

 

トイレットペーパー不足の現実に今後のトイレの不安を口にする。

そんな鈴の隣では、今後のトイレ問題が深刻化するかもしれないと言うのに、立石はそんなことに興味がないのか、手製の猫じゃらしで五十六と遊んでいる。

 

「それもこれも日本のトイレットペーパーが柔らか過ぎるのがダメなんだ!!だからつい沢山使ってしまう!!」

 

ミーナが席から立ち上がり日本製のトイレットペーパーの素晴らしさを力説する。

彼女は一度のトイレでトイレットペーパーをかなりの量を使用していたのか、それとも納沙や八木のようにトイレ以外の要件でトイレットペーパーを使用していたのだろう。

 

「蛙鳴蝉噪」

 

トイレットペーパーの問題で論争する生徒を見て美波がポツリと呟く。

 

「戦争だと!?」

 

ミーナが「せんそう」という単語に反応する。

しかし、「せんそう」は「せんそう」でも戦う「戦争」ではなく、

 

「意味は『五月蠅いだけで無駄な論議』って事ですよ」

 

納沙がミーナに蛙鳴蝉噪の意味を教える。

トイレットペーパー論争は次第に激しくなり、このままでは収拾が着かなくなる。

 

「艦長、まとめてください」

 

見かねた真白は明乃にクラスメイトたちをまとめる様に言う。

 

「あっ!?‥‥ん‥‥みんな!!落ち着いて!!」

 

明乃が声を張り上げて、トイレットペーパー論争をしているクラスメイトたちを黙らせる。

 

「みんな、他にも足りない物、必要な物はない?」

 

明乃がトイレットペーパーの他に何か不足している物は無いかクラスメイトたちに訊ねる。

すると、

 

「魚雷!!」

 

「ソーセージ!!」

 

「模型雑誌!!」

 

「真空管」

 

クラスメイトたちからは今、必要が無い物ばかりが出る。

 

「えっと‥‥とりあえず、艦長。向こうのドイツ艦にトイレットペーパーを分けてもらうのはどうでしょうか?」

 

真白があと一日~二日で横須賀に到着するのであれば、ヒンデンブルクからトイレットペーパーを分けてもらおうと言う。

 

「そ、そうだね」

 

「あっ、それなら、向こうの艦からソーセージも分けてもらってくれ!!」

 

ミーナはトイレットペーパーの他にソーセージも分けてもらってくれと言う。

そのヒンデンブルクでは‥‥

 

「えええーっ!?トイレットペーパーがもう無い!?」

 

奇しくも晴風同様、ヒンデンブルクでもトイレットペーパーが不足している事態となっていた。

 

「ど、どうして!?日本に着いた時、館山沖で補給したでしょう!?それに横須賀についた時だって‥‥」

 

晴風以上にトイレットペーパーを補給はしたはずなのに、ヒンデンブルクは今の晴風同様、トイレットペーパーが不足していた。

 

「そ、それが‥‥」

 

主計科の生徒が言うには、トイレ以外にもトイレットペーパーを使用しているクラスメイトたちが居たと言う。

不足理由も晴風と同じだった。

そこへ、

 

「艦長」

 

通信科のクラスメイトが来た。

 

「どうしたの?」

 

「晴風から通信で、なんでも晴風でトイレットペーパーが不足しているので、分けてもらえないかと言うことです‥‥それと、シュペー副長のミーナさんから、ソーセージを分けて欲しいそうです」

 

「‥‥ソーセージはともかく、トイレットペーパーはこっちでも不足しているから、分けることは出来ない‥‥その旨を晴風に伝えて」

 

「わかりました」

 

ヒンデンブルクからの通信で、ソーセージはともかく、トイレットペーパーはヒンデンブルクでも不足しているので分けることが難しいと言う返答が返ってきた。

 

「なんか、ヒンデンブルクの方でもトイレットペーパーがないみたい‥‥」

 

「それで、ソーセージの方はどうなんじゃ?」

 

「ソーセージに関してはあるみたい」

 

「そうか、それは良かったぞ」

 

ミーナはドイツ産のソーセージが食べられると言うことで一安心した様子だが、

 

「よくない!!」

 

真白はまだ肝心のトイレットペーパーの問題が解決していないことに声を荒げる。

 

「トイレットペーパーがないと、この先のトイレ問題が解決しません!!」

 

「そ、そうだね‥‥燃料・弾薬は学校経由じゃないと補給できないから、トイレットペーパーの他に薬品や衛生面に関わる品の補給を念頭に置こう」

 

「でも、位置がバレるんで通販もできないですよぉ~」

 

問題はその物資をどうやって補給するかである。

横須賀女子の学生艦は海上安全整備局から学校以外の港の入港が禁止されている。

納沙の言う通り、通販では位置が特定されるし、商品が届くまで時間もかかる。

となれば、残る手段は‥‥

 

「買い出し行こう!買い出し!」

 

西崎の言う通り、どこか物資を補給できるところから物資を補給するしかない。

 

「買い出し?」

 

西崎の買い出しと言う案に納沙がこの近くで買い出しが出来そうな施設を探す。

 

「ここにオーシャンモール四国沖店があるみたいですけど‥‥」

 

すると、この近くの海域で買い出しが出来そうな施設がヒットした。

 

「買い物‥行きたい、行きたい!」

 

「日焼け止め持ってくるのを忘れちゃったし‥‥」

 

「私もヘアコンディショナーなくなっちゃった。みんな、私の使うんだもん」

 

周りのクラスメイトたちの反応を見ると、その海上ショッピングモールへ行きたい様子。

 

とは言え、今の状況下で晴風クラスの全員がゾロゾロとショッピングモールへ買い物に行くわけにはいかない。

そこで、買い物を楽しみにしているクラスメイトたちには悪いが、此処は少人数で目立たない様に買い出しに行くしかなかった。

 

「艦長!もう一つ重大な問題が‥‥!」

 

海上ショッピングモールへ買い出しに行く事が決まった中、突然主計科の等松美海が立ち上がる。

 

「どうしたの?等松さん。まだ何か足りないモノがあった?」

 

「い、いえ‥‥その‥‥大変言いにくいのですか‥‥」

 

「何?」

 

「‥‥お金が‥‥ありません‥‥」

 

「えっ?」

 

等松の発言の内容を聞いてその場にいる全員が顔を引き攣らせる。

買い物をするにしても先立つ物が必要である。

それが無ければ当然、買い物は出来ない。

まさか、ショッピングモールでトイレットペーパーを万引きするわけにもいかない。

そんなことをすれば、それこそ、本物の犯罪者になってしまう。

 

「お金‥‥ないの‥‥全然‥‥?」

 

「は、はい‥元々2週間の航海予定で寄港地はありませんでしたし、補給に関しても実習中に間宮、明石から受ける予定だったので‥‥」

 

「と言うことは、ショッピングモールに買い出しに行っても‥‥トイレットペーパーを買いに行けるようなお金は‥‥」

 

「はい‥‥主計科にはありません‥‥」

 

お金がない、トイレットペーパーが買えない。

その事実を知り、クラスメイトたちの顔が絶望に変わる。

すると、明乃は艦長帽を脱ぎ、逆さにすると、

 

「トイレットペーパー募金お願いしまーす!」

 

明乃は募金活動をしているボランティアの人の様に声を張り上げる。

お金がなければ作る‥‥と言う訳にはいかないので、クラスメイトたちから募金と言う形で協力してもらうしかなかった。

クラスメイトたちもそれをわかっているのか、素直に財布を取り出していく。

しかし、なけなしの小遣いなのか、皆クラスメイトたちの表情は優れない。

中には不満そうな顔の者も居る。

だが、ことはトイレに関することなので、文句も言えない。

 

「麻侖ちゃんは‥‥」

 

「宵越しの金は持たねぇ主義だ!」

 

どうやら、お金自体を持っていない様子‥‥

 

「小切手は使えませんわよね‥‥?」

 

「うん‥多分‥‥」

 

万里小路は困った顔で小切手帳を出すが、ショッピングモールでは多分使えないだろう。

 

「ジンバブエのお金ですがいーですか?」

 

納沙は艦長帽の中にジンバブエのお金を入れる。

当然日本で使えるはずがない。

 

「ワシはユーロしかない」

 

ドイツ人のミーナは日本に来た時、ユーロを円に換金していなかったので、彼女の財布にはユーロ札しかなかった。

 

「「ワシ?」」

 

ミーナの一人称に杵﨑姉妹が聞き違いか?とミーナの顔を見ながら聞き返す。

 

「‥‥何かワシの顔についているか?」

 

周囲の人が自分の顔を見ていたので、ミーナは周りの人に訊ねる。

 

「ワシ‥‥?」

 

女学生の一人称にしてはおかしかったのか、周囲から笑い声が立ち始める。

 

「むっ!?何がおかしいんだ!!」

 

ミーナは両手をあげ、ムキッーと声を上げた。

 

 

晴風からオーシャンモール四国沖店にて、トイレットペーパーをはじめとする必要物資を買い出しに行くと言う連絡がヒンデンブルクに入る。

 

「買い出しか‥‥」

 

一刻も早く横須賀に向かいたかったが、やはりトイレに関する問題となると、考えてしまう。

 

「はぁ~‥‥しかたない。晴風のクラスメイトが買い出しに行くと言うのであればやむを得んだろう。こちらもトイレットペーパーが不足しているのは事実だしね‥‥クリス、ユーリ」

 

「はい」

 

「ん?」

 

「二人は晴風クラスのメンバーと共にショッピングモールへ赴き、トイレットペーパーを買ってきてほしい」

 

「わかりました」

 

「おぉ~いいよ」

 

シュテルはクリスとユーリの二人に晴風メンバーと一緒にトイレットペーパーの調達をたのんだ。

なお、お金に関しては、シュテルがポケットマネーで支払う。

シュテルはちゃんとドイツを出発する前にユーロを円に換金していた。

 

「ただ、万が一のことを考えて、護身用に銃を携帯して‥‥」

 

「拳銃を!?」

 

「大丈夫かな‥‥?」

 

ショッピングモールでも何が起こるか分からない。

そのため、二人には拳銃を携帯させた。

 

「外交特権で許可証は大使館からもらっている。ただし、装填するのは実弾ではなく、模擬弾で‥‥使用する場合も自分たち、そして晴風メンバーに危険が及んだ時のみだ‥‥いいね?」

 

「「はい」」

 

クリスとユーリは制服から私服に着替え、上着の下‥‥脇の下のホルスターに目立ちにくい小型の拳銃、ワルサーPPK/Sを装備してスキッパーで晴風の選抜メンバーと共にオーシャンモール四国沖店へと向かった。

 




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