やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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63話

 

横須賀に向かっていた晴風とヒンデンブルク‥‥

しかし、両艦共に航海中にトイレットペーパーが不足すると言う事態に陥った。

横須賀までまだ距離がある。

その間、トイレを我慢するなんて到底不可能だ。

だが、補給に関しても今の晴風は海上安全整備局からのお達しで、横須賀女子以外の港には入れない。

通販では晴風の場所をブルーマーメイドやホワイトドルフィン、他の学校の教員艦、学生艦に教えてしまうし、肝心の商品が届くまで時間がかかる。

当初の予定の様に、晴風と同じ横須賀女子所属の補給艦、間宮、明石に補給を頼むわけにはいかない。

その為、トイレットペーパー不足の問題を解消するには少数人数で補給が出来そうな施設からトイレットペーパーを買いに行くことになった。

幸いなことに晴風とヒンデンブルクの現在位置からすぐ近くに海上ショッピングモール施設があった。

晴風、ヒンデンブルクからの選別メンバーはそこへ、トイレットペーパーを買いに行くことになった。

ヒンデンブルクのメンバーが同じく買い出しに行くことは、晴風にも知らされた。

ヒンデンブルクからはクリスとユーリの二人、晴風からは明乃、和住、伊良子、美波の四人が行くことになった。

 

「それじゃあ、私とミカンちゃん、ヒメちゃん、みなみさんとで、買い出しに行ってくるから、晴風をお願いね、シロちゃん!!」

 

「ですから、副長もしくは、宗谷さんと呼んでください!!」

 

「副長、そればっかりですねぇ~」

 

真白の返答に納沙が突っ込む。

晴風の前甲板ではクレーンで下ろされたスキッパーにて、明乃たち買い出し選抜メンバーがオーシャンモール四国沖店を目指す。

 

「一度、駅に寄って、バスでオーシャンモールへ行くから‥‥」

 

私服で、少数メンバーで買い出しに行くとは言え、どこに監視の目があるのか分からない。

その為、直接行くのではなく、回り道をしてショッピングモールを目指す。

 

「お忍びで行く訳だな」

 

「ちょっと、カッコイイね!!」

 

「船の話とか専門用語を出しちゃダメからね!!それと無駄な買い物もダメ!!」

 

和住が無事に横須賀に帰るため、さっさと目的のトイレットペーパーを購入してさっさと艦に戻ろうと言う。

それには、余計な買い物をして時間を食うのも、自分たちが横須賀女子の生徒であることがバレないようにしなければならない。

それには専門用語は禁句となった。

 

「卵と生クリームとイチゴを買いたいんだけど‥‥」

 

だが、伊良子はトイレットペーパー以外に卵と生クリームとイチゴを買いたいと言う。

 

「ダメに決まっているでしょう!!」

 

「媛萌ちゃん、レバーとかチーズとか食べている?」

 

「どっちも嫌いだし」

 

「やっぱり、ビタミンB12が足りないとイライラするらしいよ」

 

「してないから~!!」

 

和住と伊良子の二人は、無駄な論争を始める。

 

「ミカンちゃんはどうしてそれが欲しいの?」

 

明乃は伊良子が言う、トイレットペーパー以外の買い物の品を欲しがる理由を訊ねる。

 

「ドイツの‥‥ほら、ブランシュガー・インゲンマメさんの歓迎用のケーキを作りたくて‥‥」

 

「あっ‥‥」

 

伊良子が食材を欲しがる理由を聞いて、和住は罰悪そうな顔になる。

 

「色々あって、違う艦に乗ることになって不安になっているだろうし‥‥私たちが何をしてあげられるかは、分からないけど‥‥炊事委員としてせめて美味しいものを食べてもらいたくて‥‥」

 

「そ、それを先に言えば文句は言わなかったのに‥‥」

 

「そういうことなら、この買い出しが終わったら、ミーちゃんの歓迎会をやろう」

 

明乃はミーナの歓迎会を提案する。

 

「歓迎会?」

 

「うん!!‥‥といっても、そういう形式をとってケーキを食べるだけど‥‥」

 

「いいんじゃない?そういうのは形が大事だからね!」

 

こうしてトイレットペーパー以外にもミーナの歓迎会用のケーキの材料も買い出し候補に入った。

 

「あっ、サプライズだから、このことはブランシュガー・インゲンマメさんには内緒だからね。特にヒメちゃん」

 

「なんで私なのよ!?」

 

「なんとなく‥‥」

 

そんな会話をしながらスキッパーは目的地を目指す。

 

明乃たちを見送り、真白と納沙、鈴、西崎、立石は艦橋に戻るため、晴風の甲板を歩いていた。

 

「艦長直々にトイレットペーパーの買い出しとは‥‥はぁ~‥‥艦長は、自分の艦に最後まで残るものなんじゃないのか‥‥?」

 

真白は自分の知る艦長の在り方と明乃の行動に対して疑問を感じている。

 

「副長がジャンケンで負けるからじゃないですか~10回連続で‥あれは、見事でしたねぇ~」

 

真白は、本来ならば自分が買い出しに行くべきだったのだが、明乃にジャンケンで連続10回も負けたので、仕方なく艦に残った。

 

「艦長にジャンケンで挑んだのが間違いだった‥‥」

 

真白は自身の不運な体質をちゃんと理解していた。

彼女は生まれてからこの方、どうも不幸体質だった。

おみくじを引けば、必ず凶か大凶。

高校の入試では解答欄を一つ間違えて書いてしまい、本来の成績ならば駿河クラスだったのに、このミスのせいでギリギリ合格者ばかりの晴風クラスに配置され、入学式の日には明乃が食べていたバナナの皮を踏んで桟橋から海に落ちた。

反対に明乃は幸運体質だった。

おみくじを引けば大吉。

入試においてもヤマがあたり、ギリギリとはいえ、無事に横須賀女子に入れた。

過去には大きな海難事故からも生存した。

だが、その反面、彼女の家族は‥‥

 

そうした幸運体質の明乃に対して不幸体質の自分がじゃんけん勝負を挑んでも負けるのは最初から決まったようなものだった。

ここまでがっかりする真白‥‥本音を言うとショッピングモールに行きたかったのかもしれない。

 

「ジャンケンはジャンケンでも負けた方が行くって事にしておけば良かったんじゃないですか?」

 

納沙はルールによっては真白がショッピングモールに行けたのではないかと訊ねると、

 

「っ!?もっと早く言えっ!!」

 

真白自身、納沙の指摘を聞き、それに気づかなかった。

 

「きゃ~コワ~イ~」

 

「そもそも副長、スキッパー運転できるのかな?」

 

「さ、さあ‥‥」

 

西崎と鈴は納紗と真白のやり取りを見て、真白がスキッパーの運転免許を持っているのか?

そして、彼女がスキッパーの運転が出来るのかと疑問に思った。

 

その頃、艦橋では、招集時、艦橋に残ったメンバー、勝田が同じく艦橋に残った山下と内田とでクイズをしていた。

 

「じゃあ次の課題いくぞな~パンはパンでも食べられないパンの正しい答えをいい加減決めるべきぞな!」

 

「やっぱりフライパンが正解じゃない?」

 

「パンツ、審判、腐ったパン‥‥パンが付くもの何て、いくらでも有るからね~食べられない=吐く=穿く=穿くパンでパンツって事で如何でしょう?」

 

「目から鱗ぞな~」

 

「パンツ、海パン、短パン、ジーパン、パンプスもありますが‥‥」

 

「議論は常に堂々巡りぞな~」

 

クイズの回答が多数あり、どれが正解なのか話していると、

 

「ただいま~」

 

教室でトイレットペーパーがない事実を聞きに行った鈴、真白、西崎、立石、納紗らが艦橋に帰ってきた。

 

「おおっ航海長、待っとったぞな~」

 

「勝田さん、交代ありがと」

 

「お安いご用ぞな!」

 

鈴と勝田は交代し、鈴は舵を握る。

 

「こちら特に異常なしです」

 

「結局なんの話だったの?」

 

山下が緊急の招集内容は一体何だったのかと訊ねる。

 

「えっと‥に、日本トイレ連盟によると‥‥」

 

鈴はトイレットペーパーが不足している状況を三人に教えるため、和住が言っていた女性が一日に使用するトイレットペーパーの量から説明し始める。

 

「知床さん、其処から説明しなくても‥‥」

 

納紗が最初からでは説明が長くなるので、鈴にトイレットペーパーが不足していることだけを伝えればいいと言う。

そして、トイレットペーパーが無いと言う事を聞いて、三人は、ビックリする。

 

「成程のうぉ‥そりゃ、一大事ぞな」

 

「ん?まゆちゃん、如何したの?」

 

山下は何やらモジモジしている内田に気づき、彼女に訊ねる。

 

「す、すみません、私、少し前から、おトイレ我慢していたんですけど、ひょっとして如何にもなりません?」

 

『えぇっ!?』

 

トイレットペーパーが不足している現状、内田はトイレがヤバいのではないのかと不安になる。

しかし、生理現象は止められない。

 

「紙が無ければ如何しょうもないぞな‥‥ん?‥‥艦‥‥海‥‥良い事、思いついたぞな!」

 

内田がピンチな時、勝田がとんでもない事を思いつく。

 

「まず水着になって‥‥」

 

「それ以上は言うな!!今、トイレにある分で、何とかなる!!」

 

真白は慌てて勝田を止める。

だいたい、みんなは勝田が言いたいことは分かったからだ。

真白からまだトイレットペーパーは大丈夫だと言われ、内田は急いでトイレに向かった。

 

「へぇ~‥それで艦長たちは、買い出しに行ったんだ!!」

 

「ウチも行きたかったぞな~!!」

 

勝田は、買い出しに自分も行けなかった事を残念がる。

 

「じゃあ、艦長たちが戻るまでは、自由時間ですか?」

 

「うん。まぁ、ハメを外さない程度にな、仕事が有ったら、そっち優先だぞ」

 

と言う事で、買い出しの四人が帰って来るまで、しばらくは、休憩時間になった。

 

「そうだ!?見張り台にいる野間さんにも状況を伝えないと‥‥」

 

「あぁー!?そうですね~」

 

「そんならウチが伝えるぞな!ついでに見張り交代してくるぞな~!!」

 

勝田は、マチコに状況と交代を伝える為、元気よく艦橋を飛び出しっていた。

 

「元気な人だ‥‥」

 

「進んで仕事を代わるあたり優等生ですよぇ~~」

 

艦橋を飛び出しっていた勝田を見て、真白と納紗の二人は感心する。

 

「それで、私たちは、如何する?」

 

トイレから戻ってきた内田が自分たちはどうしようかと聞く。

 

「何かやる事、有ったかなぁ~」

 

自由時間になったので、何をすれば良いのか、内田と山下は考えていると

 

「あっ、そう言えば、さっき外に鯨が見えた様な‥‥」

 

山下は先程、鯨を目撃した事を思い出す。

 

「鯨!?見たい!!見たい!!私たちも見張り台行ってみる?」

 

内田は、鯨を見ようと勝田の後を追って、見張り台に行こうと山下を誘うが、

 

「あんまり高い所は、ちょっと怖いな~~」

 

高所恐怖症なのだろう、山下は高い所に登るのを嫌がる。

 

「それなら、これで!!」

 

そこで、高い所に登るのを嫌がる山下を内田は肩車をする。

 

「普通に探さない?」

 

肩車をしたが、結局肩車をやめて普通に鯨を探す事にした。

 

「よっと」

 

見張り台に行った勝田は、マストを登り、

 

「ひゃぁ~~いい眺めぞな~!!」

 

見張り台の横から景色を見る。

 

「野間さん!!野間さん!!報告ぞな」

 

勝田は、マチコに状況を説明するが

 

「‥‥」

 

周囲が平和で暇なせいか、マチコは見張り台の中で寝ていた。

それでいいのか?見張り員‥‥

 

「あれ!?寝ているぞな?」

 

勝田は、マチコの身体を揺すって彼女を起こす。

 

「そう言う訳で艦長が戻るまで休憩ぞな」

 

起きたマチコに勝田は、状況を説明する。

 

「ん?そうか‥‥」

 

「ここもウチが代わるから、お昼ご飯でも食べてくると良いぞな」

 

「すまないな」

 

「それにしても野間さんって、シャキっとした人と思っとったけど意外とあんきまごろくなんじゃのぅ」

 

勝田は、意味不明な言葉でマチコに言う。

マチコは、勝田の喋る伊予弁は理解できない様子‥‥

 

「ああ、それ程でも‥‥」

 

その為、意味が分からないが何となく答えるマチコ。

 

「それじゃ少しの間頼むよ」

 

「任せるぞな~!!」

 

と言う事でマチコは、勝田と見張りを交代する。

 

「そう言えば見張りの時は、ようメガネ外し取るけど、それは伊達ぞな?」

 

勝田は、マチコが良く眼鏡を掛けている事を聞く。

 

「ああ、これは遠視用なんだ。普段はこれを掛けて置かないと辛くてね‥‥」

 

如何やら、眼鏡が無いと近くのモノが見えない様だ。

 

「ちょっと、貸してほしいぞな?」

 

勝田は、マチコから眼鏡を借りる。

 

「似合うぞな?」

 

そして、マチコから眼鏡を借り、自分に掛ける。

 

「むぅ~‥‥よく見えん‥‥」

 

すると、マチコは、勝田をじっと睨む。

しかし、決して勝田を憎んで睨んでいる訳でなく、目が悪く、遠視で近くのモノが見えないから、目を細めているだけなのだ。

 

「顔が怖いぞな~」

 

しかし、マチコが目を細めると相当、目つきが悪い様だ。

 

 

オーシャンモール四国沖店に行く前、買い出し組は、オーシャンモール四国沖店に行く水上バスが停車する海上ステーションのスキッパー停車場でスキッパーを止めて、水上バスで、目的地であるオーシャンモール四国沖店へと向かう。

その水上バスにて、クリスとユーリは晴風の買い出し組に挨拶をする。

 

「はじめまして、ドイツ、キール校所属、ヒンデンブルク副長のクリス・フォン・エブナーです」

 

「同じく、ヒンデンブルク砲雷長のユーリ・エーベルバッハ」

 

「「「「‥‥」」」」

 

晴風の買い出し組はユーリの声を聞いて( ゚д゚)ポカーンとした顔をしている。

 

「ん?どうしたの?」

 

「みんな、固まっちゃっている」

 

クリスとユーリはどうして、晴風の買い出し組が固まっているのか理解できていない。

 

「えっと‥‥」

 

「エーベルバッハさんの声、鈴ちゃんの声とそっくり!!」

 

フリーズ状態からいち早く再起動した明乃が何故、フリーズしたのかその理由を言う。

 

「えっ?リンちゃんって誰?」

 

「私はリンではなく、ユーリなのだが‥‥」

 

「いや、物凄く似ていたぞ‥‥」

 

「うん、同じセリフを言ったら、どっちが言ったのか分からないかも‥‥」

 

「ホントそっくり!!」

 

美波、和住、伊良子も明乃同様、ユーリと鈴の声がそっくりで見分けがつかないと言う。

 

「ねぇねぇ、ちょっと涙声で『はやく~逃げようよぉ~』って言ってみてくれるかな?」

 

明乃はユーリに鈴がよく言うセリフを言ってくれと頼む。

 

「えっ?涙声で?‥‥うーん‥‥あー‥あー‥‥」

 

普通の声ではなく、涙声と言うことで、声の調整をして、

 

「『はやく~逃げようよぉ~』」

 

明乃に頼まれたセリフを言う。

 

「「「やっぱり、鈴ちゃんだ!!」」」

 

明乃、和住、伊良子はやはり、ユーリと鈴の声はそっくりだと声を揃えて言う。

 

「世の中には、似た顔を持つ者が三人いると言うが、まさか声まで似ている者がいるとは‥‥」

 

美波は世界の広さをしみじみと感じていた。

やがて、水上バスは目的地であるオーシャンモール四国沖店に到着した。

 

「やっと着いた」

 

「お茶する時間あるかな」

 

「ないから」

 

「媛萌ちゃん、それかえって目立つよ」

 

和住は変装なのかマスクにサングラスを装着しており、伊良子の言う通り怪しさ抜群な姿でかえって目立つ格好だった。

 

「確かに‥‥」

 

「せめてマスクだけにしなよ」

 

クリスとユーリからも和住の変装は怪しいから止めろと言われ、和住は渋々と言った様子でサングラスを取った。

 

「それじゃあ、トイレットペーパーを買って急いで戻ろう」

 

クリスが要件をさっさと済ませて艦に戻ろうと促すと、

 

「あの‥‥実は、トイレットペーパー以外にも購入する物がありまして‥‥」

 

伊良子がトイレットペーパーの他にもケーキの材料を買いたい旨をクリスとユーリに話す。

 

「ミーナさんの為に?」

 

「う、うん‥‥」

 

「‥‥どうする?クリス」

 

「うーん‥‥本来なら、トイレットペーパーを買って戻りたいけど、そういう訳なら‥‥」

 

クリスは渋々ながらもケーキの材料を買うことをOKした。

彼女自身も今、ミーナが置かれている心境を理解したからだ。

こうしてトイレットペーパー以外にもミーナの歓迎会用のケーキの材料を買うことになった。

ただこの時、クリスはケーキの材料はヒンデンブルクの厨房にあるモノを分ければよかったことをすっかり忘れていた。

 

買い出し組が戻るまで、晴風もヒンデンブルクも現在地を動くわけにはいかない。

そこで、ヒンデンブルクでも晴風の様に当直者以外の手空きの者は休憩時間となった。

部屋で勉強やこれまでの疲れを癒す為、寝る者。

甲板上で何かしらのスポーツをする者。

折角の晴天なので、洗濯物を干す者。

デッキチェアで日光浴をする者など様々であった。

艦長のシュテルは、カマクラを膝の上に乗せて、マッ缶片手に食堂でジーク相手に将棋を指していた。

 

「王手!!」

 

「ぬっ!?うーん‥‥」

 

「『待った』はなしだよ」

 

将棋盤の上の駒を見ながら唸るジーク。

そんなジークとは裏腹に余裕そうな顔でマッ缶を飲むシュテル。

そして、シュテルの膝の上にはカマクラがスヤスヤと気持ちよさそうに寝息を立てていた。

 

晴風の方でも当直者以外の者は休憩時間をとっていた。

 

「あんまり使える物流れてこないねぇ~」

 

「トイレットペーパーとか流れてこないかな~」

 

晴風の左舷側の甲板では、水雷科の松永理都子と姫路果代子が漂流物にフックを引っ掛けて何か目ぼしい物は無いか探していたが、これと言った物は流れてこなかった。

 

そして後部甲板では、

 

「あれ?麻侖ちゃんは?」

 

「機関室の方が落ち着くんだって」

 

「ええ~、たまには、太陽を浴びないと‥‥」

 

「流石、機関長殿~」

 

いつもは機関室に籠っている機関科四人組が水着になりデッキチェアで日光浴をしていた。

ただ、機関長の柳原は折角の自由時間なのに甲板ではなく、普段から居る機関室で椅子を繋げてその上で鼾をかきながら寝ていた。

 

艦橋では当直者が居たのだが、そこも緊張した空気はなく、ゆるゆるした空気となっていた。

 

「平和っていいねぇ~」

 

猿島の問答無用の先制攻撃から始まった波乱万丈な演習‥‥

今日まで平穏な時間がなく緊張しっぱなしだった時間とうってかわって、今は平穏な時間が流れている。

その平穏な時間をかみしめるかのように鈴が呟く。

 

「いい‥‥」

 

すると、立石も同じように呟く。

 

「今日の晩御飯何がいいかな?」

 

「カレーが‥‥良い‥‥」

 

「今日は、金曜じゃないよ」

 

カレー好きな立石は今日の夕飯はカレーが良いと言うが、残念ながら今日は金曜日ではないので、カレーではない。

 

「ん~‥‥ん~‥‥はぁっ!?」

 

真白は疲れていたのかウトウトしていたが、目を覚まし両手で頬を叩いて起きる。

そんな彼女の目に羅針盤の上に置かれた明乃の艦長帽が目に入る。

 

「ちょっと、トイレ入って来る」

 

真白は周囲を見渡し、こっそりと艦長帽を手に持って、艦橋を後にする。

そして、周囲に誰も居ないことを確認した後、艦長帽を被る。

艦長帽を被った真白は、喜びながらはしゃぐ。

しかし、はしゃいでいると横から黒木が現れ、艦長帽を被った真白と遭遇。

真白は慌てて艦長帽を脱ぐ。

 

「宗谷さん、凄く似合っていた!!」

 

「えっ?」

 

「私ね、宗谷さんに艦長に成って欲しかったな!!」

 

「えっ?あ、ああ‥‥それで、何か‥‥?」

 

真白は黒木に何か自分に用があったのではないかと訊ねる。

 

「ミーナさんが艦内案内してほしいんだって」

 

「あ、ああ‥分かった」

 

まだ晴風に来たばかりのミーナは晴風の隅々を知っているわけではない。

だが、自分は救助者なので、一人で勝手に艦内をうろつくわけにはいかない。

そこで、艦の責任者‥‥明乃が現在不在なので、ナンバー2の副長である真白に晴風の案内を頼んだのだ。

 

真白がいなくなった艦橋に入れ違いで西崎が戻って来た。

 

「あれ!?」

 

戻って来た西崎は、艦橋に当直責任者の筈の真白がいない事に気づく。

 

「副長どこ行ったの?」

 

「さっきトイレ行くって出て行ったけど‥‥そう言えば遅いね?」

 

(あれ多分、嘘ですけどね。こっそり艦長の帽子持って行ったし‥恐らくは‥‥)

 

納沙は、真白の艦長姿を想像しながら、

 

「はっ!?まさかっ!!」

 

ある事に気づく

 

そして、

 

「『宗谷さん、その帽子凄く似合っています!』 『そ、そうかな』 『やっぱり艦長は、宗谷さんが務めるべきです!』 『そうだ、やはり私が艦長を務めるべきなんだ!!やろう!艦長がいない今こそ反旗を翻す時、下克上だー!!』 『素敵っ、宗谷さんっ!一生ついて行きます!!』 『落ち着いて下さい!!副長!!反乱は、反乱はいけませんっ!!』」

 

恒例の一人芝居を始めた。

しかも内容が真白と黒木が叛乱を起こしている内容だった。

 

「ま~た、始まったよ」

 

「大変な事になっているね‥‥」

 

またも一人芝居を始める納沙に二人は、呆れる。

 

「しりとりでもしますか~?」

 

すると、一人芝居を止め、今度は、しりとりをやろうと提案してきた。

 

「切り替わり早っ!?何か怖いよ‥‥」

 

納沙の切り替えの速さに西崎は、恐怖を感じた。

 

とは言え、三人は、しりとりを始めた。

 

「えっと‥‥じゃあ、『魚雷』」

 

西崎から始まったしりとりだが、

 

「い、インク」

 

「クルンテープ・プラマハーナコーン・アモーンラッタナコーシン・マヒンタラーユッタヤ―・マハーディロックポップ・ノッパラット・ラーチャタニーブリーロム・ウドムラーチャニウェートマハーサターン・アモーンピマーン・アワターンサティット・サッカタッティヤウィサヌカムプラシット!」

 

鈴が答えた『インク』の『く』の言葉で、納沙は、長々しく意味不明な言葉を言う。

 

「何て!?」

 

「つぎは、『と』です!」

 

「ドヤ顔やめい!!何、それ!?呪詛!?呪詛か?一人芝居に飽き足らず、とうとう呪いに手を染めたか!?」

 

納沙の言葉が呪詛のような印象を受ける西崎。

 

「えぇー知らないんですか~?バンコクの正式名称ですよぉ~」

 

「知るか!!」

 

ドヤ顔でバンコクの正式名称を答えた納紗に西崎はやや切れ気味。

 

そんな時、

 

「ココちゃんって、外国好きなの?さっきもジンバブエのお金もっていたし‥‥」

 

鈴は、先程、教室で明乃がトイレットペーパーの購入費を集める時、納沙がジンバブエドルを持っていた事を思い出す。

 

「うっ‥‥」

 

ジンバブエドルの話が出た時、納沙の心臓に矢がグサッと刺さったように見えた。

 

「ああ、さっき盛大にスベってたやつね」

 

あの場に居た西崎も思い出す。

 

「んも~う、スベったとか言わないで下さい!!いつかネタに使えるかとずっとお財布の中に忍ばせていたのに、万里小路さんの小切手のインパクトにくわれちゃったんです!!」

 

如何やら、あの時持っていたジンバブエドルは、一人芝居用の道具だった様で、いつか使う筈が、万里小路の小切手で印象が薄くなり滑った様だ。

 

鈴と西崎に言われ、鈴に抱きつく納沙。

 

「ぴゃあ!?」

 

いきなり納沙に抱きつかれ、ビックリする鈴。

 

「あんまり関係ないと思うけどね」

 

この話に万里小路は、全然関係ないと西崎は、思った。

 

「古今東西ゲームでもしますか~?」

 

そしたら、いきなり、しりとりを止めて、今度は、古今東西ゲームに切り替わった。

 

「だから立ち直り早いって!!」

 

「めげないところがココちゃんの良いところだよね」

 

納沙の余りの切り替えの速さに西崎は呆れ、鈴は褒める。

 

「平和って、良いなぁ~」

 

そして改めてこうした平穏な時間がいつまでの続いてくれたらと思う鈴だった。

 

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