やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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66話

横須賀に戻る途中で、トイレットペーパーが無くなると言う不測の事態が起こったヒンデンブルクと晴風。

そこで、近くにあった海上ショッピングモールにて、トイレットペーパーの買い出しを好居ることになったのだが、そこには真霜から特命を受けたブルーマーメイドの隊員、平賀倫子たちと真雪の命令を受けた横須賀女子の間宮、明石、護衛の舞風と浜風が居た。

平賀たちはショッピングモールにて、買い出し組を拘束しようとするも、逆にクリスとユーリの二人に追い詰められた。

そこで、平賀は買い出し組に事情を話し、晴風にかけられていた叛乱容疑を撤回するために保護しよとしていたこと、また横須賀女子校長の真雪の指示で、補給と補習の為に明石、間宮を派遣したことを伝えた。

平賀の話を晴風のみんなに伝えるため、晴風へと戻る買い出し組だったが、これまでの猿島、シュペー、伊201、そして海上安全整備局から一方的に叛乱容疑をかけられた晴風のクラスメイトたちは疑心暗鬼になっており、接近してくる明石、間宮、舞風、浜風らの学生艦が自分たちを捕まえに来たのではないかと疑っていた。

晴風の護衛をしていたヒンデンブルク艦長のシュテルは、相手は四隻居るとはいえ、実質戦闘可能な艦は舞風と浜風の二隻で、しかもクラスは駆逐艦。

こちらは戦艦と駆逐艦‥‥

舞風と浜風が一方的に攻撃してくるとは思ってはいなかったが、万が一を考慮して、いつでも戦闘できる体制は整えた。

しかし、それは接近してくる舞風、浜風の乗員も同じで、日本の大和級とほぼ同じ大きさの戦艦相手に砲雷撃戦をしかけても勝ち目はないことぐらいは分かっている。

故に舞風、浜風の乗員は皆、緊張した面持ちでヒンデンブルク、晴風へと接近してくる。

明石、間宮、舞風、浜風の接近は晴風でも当然探知しており、見張り台のマチコが艦橋に報告を入れる。

 

「間宮・明石および護衛の航洋艦二隻!右60度!!距離200此方に向かう!!」

 

「また攻撃されちゃうの~!?」

 

「いやな予感が当たった!!」

 

「ど、如何しよう~艦長たち、まだ戻ってきてないし‥‥」

 

「ボイラーの火を落としているから、何れにせよ逃げられない!!」

 

艦長の明乃たち買い出し組はまだ戻らず、しかもボイラーの火を落としているから、逃げるに逃げれない。

 

「‥‥」

 

不安そうに事の成り行きを見る立石。

そして、彼女の手には先程、晴風の飼い猫、五十六が捕獲したハムスターに似たネズミが居た。

元々、このネズミは漂流物をあさっていた松永と姫路が回収した通信販売会社のボックスの中にあった飼育箱から出てきたネズミで、それを五十六が捕獲し、艦橋員に見せたら、立石が気に入ったみたいで、それからずっと彼女はそのネズミを手に抱いていた。

初めに見た時は、人懐っこい仕草と愛くるしい表情をしていたネズミだったが、この時のネズミの表情は先程とはうってかわって、まるで魔界の使い魔か小悪魔の様な怪しい雰囲気を出していた。

 

間宮、明石、浜風、舞風は探照灯を照らしながら、二手に分かれ包囲体勢を取る。

買い出し組はそれぞれのスキッパーで晴風、ヒンデンブルクへと向かう。

そして平賀たちブルーマーメイドの隊員と明乃を乗せたブルーマーメイドの哨戒艇も明石らの合間を縫うように晴風に向かって行く。

 

「明石、間宮、舞風、浜風、それぞれ包囲体勢を敷いています」

 

ヒンデンブルクのCICで四隻の動きが艦橋に伝えられる。

 

「どうします?」

 

「あくまでもポーズを決めているだけだ。気にするな」

 

包囲体勢をとられてもシュテルは慌てることなく、冷静に事の成り行きを見ている。

一方、晴風の艦橋はパニックになっていた。

 

「逃げられないよ~!!」

 

「ドマヌケ共が何をやっている!?艦長はどうした!?」

 

晴風の艦橋が不安とパニックとなっている時、ミーナが艦橋に怒鳴り込んできた。

 

「まだ戻ってきていません」

 

「何~!?」

 

包囲されそうになっている大変な時にまだ戻ってこない買い出し組に思わず声を荒げるミーナ。

見張り台ではマチコが引き続き、見張りを続けていると、

 

「艦長たちが戻ってきました!!っ!?ブルーマーメイドの哨戒艇もいます!?」

 

「何!?」

 

「ブルーマーメイドって、私たちを捕まえに来たの~!?」

 

艦橋の不安がピークになったその時、

 

「カレーなんか食ってる場合じゃねぇ~!!」

 

突然、艦橋に怒声が響いた。

 

『っ!?』

 

艦橋に居た皆が、誰がその声を出したのか、振り向くとそこには立石が居た。

だが、その時の立石の様子はいつもとは異なっていた。

普段の立石は口数も少なく、表情もほぼ無表情で、大人しそうな印象があるのだが、この時の立石は普段の様子とは全く異なり、フー、フーと威嚇する猫みたいに息を切らし、怒りの感情をむき出しにしていた。

普段、立石と行動を共にしている西崎もこんな立石の姿を見るのは初めてじゃないかと言うほど、今の立石は様子がおかしい。

 

「た、立石さん!?」

 

納沙も様子がおかしい立石に困惑している。

 

「何だ?カレーって‥‥?」

 

今日は金曜日ではないので、夕食のメニューは当然、カレーではない。

夕食のメニューでもないカレーの事を口走った立石に困惑するミーナ。

 

「そ、それより逃げないと‥‥」

 

このままでは自分たちはブルーマーメイドに捕まって牢屋に入れらえてしまうかもしれない。

だから、捕まる前に逃げようと鈴は言うが、

 

「何言ってんだ!!逃げてたまるか!!攻撃だ~!!」

 

攻撃は最大の防御と言うが、立石は逃げるくらいなら、明石、間宮、舞風、浜風に対して攻撃し、脅威を排除しようと言う。

口数もそうだが、やはり普段の立石らしくない言動だ。

 

「おっ?‥‥撃つか?撃つのか?」

 

普段と様子が違う立石に困惑しつつも、砲を撃てるかもしれないと西崎は少し期待した目をする。

 

「やめろ!!戦闘禁止だ!!」

 

これ以上誤解を生まないようにと真白は絶対に発砲は許可できないと言うが、

 

「黙れ!!」

 

立石は、まったく聞く耳を持たなかった。

 

「っ!?」

 

普段怒らない人が怒ると怖い‥‥まさにそれを体現したかのように立石の怒気に当てられてひるむ真白。

 

「タマちゃん如何しちゃったの~急に~!?」

 

立石の豹変に鈴は普段通り、涙目で叫ぶ。

 

「『もう逃げるのは嫌!』『そうよね。逃げちゃ駄目。私戦う~』『怖いかクソッタレ、当然だぜ。元グリーン・ベレーの俺に勝てるもんか』」

 

こんな時でも鈴同様、納沙は通常運転で、一人芝居を始める。

 

「いいから止めろ!!」

 

真白が立石を取り押さえようとし、西崎もそれを手伝う。

ブルーマーメイドや明石らの接近で、パニック状態になっているのかもしれない。

取り押さえて、冷静に戻さなければ、立石は本当に発砲しかねない。

 

「離せ~!!離せ~!!」

 

「大人しくしろ!!」

 

当然、二人に抑えられ立石は、暴れ出す。

 

『うわっ!?』

 

立石の火事場の馬鹿力なのか、物凄い力に真白と西崎は、壁に叩き付けられる。

 

「お、落ちつけ!!」

 

ミーナは、立石に落ちつけと言うが、二人を振り払った立石はなぜか四つん這いになって、艦橋を出ていく。

ミーナは慌てて立石を追いかける。

艦橋を出た立石は、まるで猿の様にデッキから魚雷発射官から更に飛び移って行く。

やがて、立石は第二煙突付近に備え付けられていた20㎜単装機銃の下にたどり着くと、何の躊躇いもなく機銃の照準を明石へと向ける。

 

「本当に撃つ気だ!?」

 

西崎は立石が納沙のように冗談で言っているのかと思ったが、如何やら彼女は、本気の様だ。

銃口を明石に向けると、

 

「明石!!間宮~!!お前らにやられるタマじゃねーんだ!!こっちは!!野郎ぶっ殺してやぁあああああるる!!!」

 

ダン!!ダン!!ダン!!

 

機銃を四方八方に乱射する。

立石を追いかけてきた真白、西崎、納沙、鈴は流れ弾が当たらないように甲板に伏せる。

機銃を乱射している立石の姿を見て、小笠原、武田、松永、姫路は怯えている。

 

「晴風発砲!!」

 

「なにっ!?」

 

立石の機銃乱射はヒンデンブルクからでも確認できた。

 

「何を考えているんだ!?‥‥くっ、主砲!!副砲!!舞風と浜風にロック!!ただし、発砲はこちらから指示を出すまで絶対に撃つな!!」

 

シュテルは急いで、射撃指揮所に指示を出す。

機銃とは言え、晴風が突然間宮、明石に向けて発砲したのだ。

護衛の舞風、浜風がヒンデンブルクと晴風を攻撃してくる可能性が出てきた以上、自艦防衛のための行動はとらなければならない。

一方、舞風、浜風の方も晴風が間宮、明石にいきなり機銃を発砲し、ヒンデンブルクの主砲と副砲が旋回して、自分たちを狙い始めたのだから、慌てるのも無理はない。

一触即発の空気がこの海域を支配する。

 

「ああ、撃っちゃたね~」

 

機銃を発砲している立石の姿を見て、西崎はまるで他人事のように言うが、もしかするとこの時、彼女は現実逃避しているのかもしれない。

 

「何て事をしたんだ!!」

 

立石が機銃を発砲した事で、真白は、これまでは濡れ衣であったが、これはもう言い訳できない事実であり、自分たちこれで本当には反逆者になってしまったと言う絶望感が沸き上がる。

 

やがて、機銃弾を全弾を討ち尽くした立石は別の機銃へと移動しようとした時、

 

「このぉ~ドアホウのドマヌケがぁ~!!」

 

追いついてきたミーナが立石を掴むと思いきり投げ飛ばす。

この時は、ミーナも相当お冠だったのか、投げ技を使用してしまった。

いくら、立石が無許可で機銃を発砲し、更にそれを続けようとしても投げ技はまずかった。

第二煙突の付近の銃座は狭く、投げれば下の甲板に頭や体を強く叩きつけてしまうか、海に落としてしまう。

立石の身体は晴風の甲板を越えて、夜の海へと落ちていく。

 

「しまった!?」

 

立石を投げた後、ミーナは止める為とは言え、冷たい夜の海に人を投げ込んでしまった事の重大さに気づく。

今の立石はライフジャケットを身に着けておらず、探照灯があるとはいえ、波にさらわれてしまったら捜索は困難なものになる。

もし、自分が原因で立石を溺死させてしまったら、シュペーにも学校にも迷惑がかかる。

 

「タマちゃーん!!」

 

「立石さーん!!」

 

「大丈夫!!」

 

甲板からは海に落とされた立石を心配する声が聞こえる。

すると海に落ちた立石は、何と波に乗って晴風の甲板へと戻ってきた。

 

「戻ってきた!!」

 

半ば人間離れした方法で海から戻ってきた立石の姿を見て、松永たちは驚いていた。

やがて立石を投げ飛ばしたミーナやデッキに居た艦橋メンバーが立石の下にかけつける。

 

「大丈夫ですか?」

 

「よくぞド無事で~」

 

一歩間違えれば死人・行方不明者を出すかもしれない事態を作ってしまったミーナは立石に泣きながら抱き付く。

 

「それを言うならご無事だって‥‥」

 

西崎は冷静にミーナの間違った日本語にツッコミを入れる。

 

「あら?あなたそんな所にいたの~?」

 

納沙は立石のスカートのポケットに入っていたネズミに気づく。

ネズミは一時的に海水に浸かったせいかぐったりとしていた。

 

「タマちゃん、大丈夫!?」

 

そこへ、晴風に戻ってきた明乃が立石に怪我がないかを訊ねる。

 

「うぃ」

 

「あれ?いつもの調子に戻っている‥‥」

 

冷たい海に落ちて文字通り、頭が冷えたのか、立石の様子は先程の怒気を表すような表情ではなく、普段通りの無表情に近い表情になっていた。

 

「聞いて!補給艦の皆は、助けに来てくれたんだよ~!!」

 

明乃はその場にいた皆に明石、間宮がここに来た理由を伝える。

 

「艦長、間宮より通信です」

 

明乃がクラスメイトたちに事情を説明している頃、間宮がヒンデンブルクに通信を送ってきた。

 

「内容は?」

 

「えっと‥‥」

 

間宮からの通信内容は明乃がクラスメイトに話した内容と同じだった。

 

「‥‥戦闘配備解除」

 

間宮からの通信を聞いて、シュテルは戦闘配備を解除した。

これにより、緊張した空気が一気に和らいだ。

 

その後、平賀は晴風へ乗艦し、改めて晴風幹部に真霜、真雪の指示を説明する。

ただし、立石に関しては無許可発砲の問題行為と事情聴取ため、一時身柄を拘束することになった。

 

「ごめんね、疑いが晴れるまで少しの間ここに居て貰う事になるけど‥‥」

 

明乃は、疑いが晴れるまで立石を倉庫に軟禁することにしたが、彼女自身心苦しいことだった。

なにしろ、明乃の心情は『海の仲間は皆、家族』であり、その家族を疑い、こうして軟禁しなければならないのだから‥‥

 

「うぃ‥‥」

 

立石は流石に軟禁されるのに動揺するが、

 

「あのっ!艦長。私も一緒に‥‥」

 

「メイちゃん‥‥」

 

何と、西崎が立石と一緒に軟禁に付き合うと言い出す。

流石に立石一人だけ倉庫に閉じ込めておくのも可哀そうだと思い西崎が一緒に入る事にしたのだ

 

「何を言っている?意味もなく拘束する訳には‥‥」

 

真白は、流石に西崎の我儘に反対するが、

 

「じゃあ、メイちゃんは監視役としてタマちゃんの傍に居てくれる?」

 

明乃は、西崎の気持ちを察して、立石の監視役として一緒に居る事を許した。

 

「了解!」

 

明乃に許され、西崎は喜ぶ。

 

「まぁ、そう言う事なら‥‥」

 

西崎が監視役として居るなら真白も許可した。

 

「お願いね」

 

「取りあえず!やる事ないのも辛いだろうからトイレットペーパーを箱にでも詰めておけ!」

 

真白は、軟禁されている間、立石と西崎に補給したトイレットペーパーを箱に補充するよう命じる。

晴風、ヒンデンブルクで不足していたトイレットペーパーに関しては、間宮から補給することが出来た。

 

「ほいほーい」

 

「緊張感に欠ける‥‥」

 

西崎の緊張感に欠ける態度に真白は呆れる。

とは言え、明乃と真白は、立石と西崎を倉庫に残した後、平賀とシュテルが待っている教室に向かう。

シュテルも立石が何故機銃を発砲したのか、事情を聞くため、晴風に来ていたのだ。

 

「こちら海上安全整備局・安全監督室情報調査隊の平賀二等監察官」

 

明乃はシュテルと真白に平賀を紹介する。

 

「この度は誠に申し訳ありませんでした」

 

真白が深々と平賀に頭を下げて謝る。

明乃が留守中は、自分が晴風の最高位なのに、立石の暴走を防ぐことが出来なかったからだ。

 

「あ、あの‥姉さんの‥いえ、宗谷真霜が居る部署の方ですか?」

 

「ええ、私は、宗谷一等監督官の命令であなた方に接触したんです」

 

「シロちゃんのお姉さんって!!ブルーマーメイドだったんだ!?」

 

「あ、ああ‥‥」

 

明乃は真白の姉がブルーマーメイドに所属していることに驚く。

 

(なんか、雪ノ下の家系に似ているな‥‥)

 

シュテルは真白の話を聞いて、彼女の実家である宗谷家がなんとなくだが、雪ノ下の家柄に似ていると感じた。

母親は横須賀女子の校長、そして姉はブルーマーメイド‥‥しかも真白の口調からブルーマーメイドでも平隊員ではなく、それなりの地位にいるようだ。

ただシュテルは真白が言った、宗谷真霜と言う人物の声が、前世で、魔王と称し、雪ノ下や葉山以上に苦手意識を持った雪ノ下陽乃と同じ声を持つ人物だとはまだ知らなかった。

母親が日本有数の海洋高校の校長で、姉がブルーマーメイドの幹部‥‥

真白がそんな二人に感化されて、横須賀女子に入学し、ブルーマーメイドを目指すのも分かる気がする。

 

(まぁ、こうして人格を見る限り、雪ノ下みたいな選民意識はないみたいだから、マシな方か‥‥)

 

雪ノ下の場合、姉にコンプレックスを抱くと同時に選民思想、根拠のない絶対の自信を纏っている。

孤高の存在と言えば聞こえは良いかもしれないが、その実態はただの毒舌無能少女だ。

確かに座学の成績は良いが、人間性では正直に言って、かなりの問題児であり本人はそれを自覚していないのだからなおさら質が悪い。

 

(アイツの性格から考えて海上生活には向いていないな‥‥)

 

シュテルは雪ノ下の性格から考えて、彼女は船乗り生活には不向きな人材であると感じており、この時は前世同様、総武の国際学科に在籍しているものとばかり思っていた。

最も自分自身も前世の性格のままではあまり向いていないだろうとちゃんと自覚はしていたので、こうして性格を修正した。

シュテルが真白や雪ノ下の事を思っている中、平賀は現状について語る。

 

「海上安全整備局は、さるしまの報告を鵜呑みに晴風が反乱したという情報を流しています。ですが、我々安全監督室の展開は、異なっています」

 

「えっ!?」

 

「宗谷校長も、宗谷一等監察官も晴風は、自衛のためにやもえず交戦したと推測していますが、間違いはありませんか?」

 

「はい、間違いありません」

 

「そうですか‥‥それで、今回発砲した攻撃した生徒は?」

 

「取りあえず、身柄は拘束しています」

 

「そう‥‥」

 

「すみません、普段は大人しくて、あんな攻撃する子じゃないんだけど‥‥」

 

「また戦闘になると思って気が動転したのかもしれないわね」

 

(いや、それにしては妙だな‥‥)

 

シュテルは明乃と平賀の話を聞いて、違和感を覚える。

実際にシュテルは立石と面識はないが、明乃の話では大人しい子らしい‥‥

平賀の話ではパニック症状を起こしたのではないかと言うが、あの場には晴風の他に超弩級戦艦であるヒンデンブルクも居た。

駆逐艦の舞風と浜風が包囲してきたからと言ってもパニックに陥るのも無理がある。

そもそも、海洋学校の入試では、学科の他にも人格面の適性試験もやる。

パニック症状を簡単に起こす人物をそう簡単に合格するとは思えない。

その頃、当の本人は‥‥

 

西崎と一緒に倉庫でトイレットペーパーを段ボール箱に詰めていた。

 

「しばらく拘束されるのは仕方ないよね~‥‥まぁ、私も付き合うからさ」

 

「うん‥‥」

 

立石は、自分のせいで大勢の人に迷惑をかけたと深く落ち込んでいる様子。

 

「いや~、良い撃ちっぷりだったよぉ~タマ。引っ込み思案な砲術長だな~って思っていたけど見直した!」

 

落ち込んでいる立石に西崎は、元気づけようと励ます。

 

「でも‥‥何で‥あんな事したんだろう‥‥?」

 

立石本人も何故、機銃を発砲したのか?

その時の記憶が曖昧で覚えていなかった。

 

「心に、撃て撃て魂があるんだよ!!」

 

「うぃ?」

 

安定のトリガーハッピーな西崎の発言に首をかしげる立石。

そんな中、

 

コン、コン

 

二人が軟禁されている倉庫のドアがノックされ、

 

『差し入れで~す』

 

杵﨑姉妹が監禁されている二人の為に差し入れを持ってきたのだ。

 

「立石さんがカレー食べたがっているって聞いたから」

 

杵﨑姉妹が持ってきた差し入れは、立石が好きなカレーだった。

 

「あ‥‥と‥‥」

 

「ありがとうって言っている」

 

杵﨑姉妹の粋な計らいに立石は、感謝に言いきれず代わりに西崎が言った。

 

 

「発砲したクラスメイトですが、発砲する前になにか普段と違う言動はありませんでしたか?」

 

どうしても解せないシュテルは立石が機銃を発砲する前、何か変わったことがなかったかと真白に訊ねる。

買い出し組だった明乃は立石の豹変時には海の上に居たので、知るはずがないからだ。

 

「普段と‥‥ですか‥‥?うーん‥‥」

 

真白は考え込み、

 

「普段は艦長の言う通り、大人しくて無口な子なんですけど、あの時は妙に多弁で感情もむき出しにしていました」

 

「感情むき出し‥‥もっと時間を遡ってみて、なにか妙なモノを食べたりとかはしていませんか?」

 

「うーん‥‥」

 

「ほんの些細なことでもいいんです。普段の生活と異なる事がありませんでしたか?」

 

「関係あるか分かりませんが、豹変の少し前に五十六が‥‥」

 

「五十六?」

 

「ああ、晴風で飼っている猫ですが、その猫がネズミを捕まえて艦橋に連れてきました」

 

「ネズミ?」

 

ネズミと言う単語にピクッと反応するシュテル。

 

「はい」

 

「そのネズミは今どこに?」

 

「うちの医務担当の人に預かってもらっていますが‥‥」

 

「それはどんなネズミでした?」

 

「どんなって言われても‥‥」

 

「ドブネズミやハツカネズミみたいな姿のネズミでしたか?」

 

「い、いえ、ネズミと言うかどちらかと言うと、ハムスターに似た姿でした」

 

「‥‥」

 

真白からネズミの特徴を聞いて、シュテルの顔が強張る。

 

「‥‥そのネズミ見せてもらってもよろしいですか?」

 

「え、ええ‥‥かまいません」

 

「碇艦長、ネズミがどうしたんですか?」

 

「実は‥‥」

 

シュテルは平賀と明乃に先日、ヒンデンブルクに入り込んだハムスターに似たネズミについて伝える。

 

「未知のウィルス‥‥」

 

「はい‥‥もしたしたら、今回五十六が捕まえたネズミは先日、ヒンデンブルクで捕獲されたネズミと同一種かもしれないかと思いまして‥‥」

 

特徴から、シュテルはヒンデンブルクで捕獲されたあのネズミと今回、五十六が捕まえたネズミは同じ種である可能性があると指摘した。

 

(取り越し苦労で、本当にハムスターであればいいが‥‥)

 

とりあえず、保護されたネズミが居るとされる晴風の医務室に向かうシュテルたちだった。

 

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