やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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67話

トイレットペーパー不足を解消するため、海上ショッピングモールへと買い出しに向かい、そこで、ブルーマーメイド隊員の平賀たちから、事情を聞き、晴風にかけられた叛乱容疑は真白の姉、宗谷真霜と母であり、横須賀女子の校長である宗谷真雪の尽力で何とか解けそうだった。

それと同時に補給・補習の為、明石と間宮が派遣されることになったのだが、この時はまだ、晴風のクラスメイトたちは自分たちを捕まえに来たのではないかと不安とパニックとなる。

そんな中、普段は無口・無表情で大人しい、晴風の砲術長、立石志摩が突如豹変し、怒気の感情を露わにして、艦橋を出ていくと、明石、間宮に対して機銃斉射をした。

晴風の護衛をしていたヒンデンブルク、明石、間宮を護衛していた横須賀女子の舞風、浜風との間で一触即発の事態となる。

機銃を発砲した立石は彼女を追いかけてきたミーナが海に投げ飛ばし、戻ってくると普段の立石に戻っていた。

晴風の平賀が乗艦し、誤解を解くことが出来、ヒンデンブルク、舞風、浜風との間の緊張した空気が緩和した。

その後、晴風が叛乱容疑をかけられた経緯と真霜、真雪からのメッセージを平賀から伝えられた後、何故普段は大人しい立石が豹変したのか?

その話題となった時、『普段と異なることがなかったか?』と訊ねるシュテルに真白は、豹変前、立石は五十六が捕まえたネズミを手にしていたことを聞いたシュテルは、『まさかっ!?』と思い、真白にそのネズミの居場所を聞いて、ネズミが保護?されている晴風の医務室へと向かった。

 

「美波さん」

 

「ん?なんだ?」

 

「あのネズミの様子は?」

 

「特に問題ない。海水に浸かって弱っていたが、今は持ち直している」

 

立石と共に海に落ちたネズミは、海水に浸かり一時は弱っていたみたいだが、今は持ち直して元気になったみたいだ。

そして、シュテルはプラボックスの中にいるネズミを見て、

 

「っ!?」

 

顔を強張らせた。

医務室の机の上に置いてあるプラボックスの中には一見、ハムスターに見える茶色と白の毛皮のネズミが居た。

ただ、目はハムスターみたいな黒い目ではなく、真っ赤な目で不気味な雰囲気を出している。

 

(ま、間違いない‥‥あのネズミだ‥‥)

 

(くそっ、外れて欲しかったのに‥‥)

 

目の前のネズミはヒンデンブルクでカマクラが捕獲したあのネズミと同一種だった。

シュテルは懐からスマホを取り出して、ヒンデンブルクのウルスラに連絡した。

 

「もしもし、ハルトマンさん? 例のネズミの資料を持って晴風に来て‥‥」

 

「全部‥‥ですか?」

 

「そう、全部‥‥晴風でも、あのネズミが見つかった」

 

「わかりました。すぐ行きます」

 

シュテルから連絡を受けたウルスラは、あのネズミに関する資料を持って、晴風に来てもらうことになった。

そして、ウルスラが来ると、晴風の医務室に来た。

 

「ヒンデンブルク医務長のウルスラ・ハルトマンです」

 

晴風のクラスメイトに自己紹介するウルスラ。

 

「晴風艦長の岬明乃です」

 

「副長の宗谷真白です」

 

「医務長の鏑木美波です」

 

「えっ?カブラギ・ミナミってもしかして、あのカブラギ・ミナミですか!?」

 

ウルスラは美波の名前を聞いて驚いている。

 

「もしかして?知り合い?」

 

シュテルはウルスラと美波が知り合いだったのか?と聞くと、

 

「知らないんですか!?日本が誇る天才医学博士ですよ!?」

 

「へぇ~‥‥」

 

「美波さん博士さんだったの!?」

 

「知らなかった‥‥」

 

同じ艦に乗っていた明乃と真白も美波が天才で博士号を有していたことを知らなかったみたいだ。

 

「それで、医務長、これが晴風で捕獲された例のネズミなのだが‥‥」

 

ウルスラに五十六が捕まえたネズミを見てもらうと、

 

「‥‥間違いありません。例のネズミです」

 

五十六が捕まえたネズミは先日、ヒンデンブルクでカマクラが捕獲したネズミであると間違いないと断言する。

 

「やっぱり‥‥」

 

ハムスターだったらよかったのに、その当てが外れてしまったことにシュテルは面倒ごとが増えたと思う。

 

「それで、豹変したクラスメイトだけど、元に戻った後、何か変化は?」

 

「今のところないみたい‥‥」

 

「一応、検査だけはしておいた方がいいかもしれないな」

 

「そうですね」

 

「では、私が診てきましょう。あっ、これが、私が纏めておいたこのネズミに関する資料です」

 

「拝見する」

 

「それで、その豹変した生徒さんはどこに?」

 

「あっ、こっちです」

 

立石の検診はウルスラが務めると言って、例のネズミの資料を美波に渡した後、立石と西崎が居る倉庫に真白と共に向かった。

 

立石と西崎が居る倉庫では‥‥

 

「ふぅ~‥‥ごちそうさま」

 

「うぃ」

 

二人は炊事委員からの差し入れのカレーを食べ終え、満足そうにお腹をさすっていた。

そこへ、

 

「失礼します」

 

「ん?」

 

「うぃ?」

 

白衣を着て、金髪、蒼眼、眼鏡をかけた女の人が入ってきた。

見たところ、自分らと年代はあまり変わらない印象を受ける。

 

「はじめまして、私はキール校所属、ヒンデンブルク医務長のウルスラ・ハルトマンです」

 

ウルスラは、立石と西崎に自己紹介をする。

 

「えっ?ヒンデンブルの医務長さんがどうしてここに?美波さんは?」

 

西崎はどうして、晴風の医務長の美波ではなく、ドイツ艦の医務長がわざわざここに来たのかを訊ねる。

 

「ああ、美波さんは今、補給関係で手が離せなくて、代わりにドイツ艦の医務長さんが立石さんの健康診断にきたんだ」

 

真白が西崎の質問に答える。

 

「立石さん、あれから何か変わりはない?」

 

「うぃ‥‥」

 

「うん、全然元気だよ。さっきも一緒にカレーを食べていたし」

 

口下手な立石に代わり、西崎が立石の現状を説明する。

その間に、ウルスラは、医者カバンから手袋を取り出しはめると、聴診器など、診察に使う道具を取り出す。

 

「しかし、一応、診断はしましょう。はい、まずは口を開けて‥‥」

 

「う、うぃ‥‥」

 

立石はウルスラの指示通り、口を開ける。

それから、ウルスラは、一通りの診察をして、最後に‥‥

 

「では、最後に採血しましょう」

 

カバンから注射器を取り出す。

 

「う、うぃ‥‥」

 

注射器を見た途端、立石は顔色を青くする。

そして、ウルスラが一歩近づくと、一歩下がる。

 

「あの‥‥」

 

ウルスラも立石の行動が妙なことに気づいて、声をかける。

 

「‥‥や」

 

「えっ?」

 

「ちゅう‥‥しゃ‥‥いや‥‥」

 

立石は、注射が苦手みたいだった。

 

「いや、でも採血して、血液を調べないと、貴女が病気なのか分かりませんから‥‥」

 

「だ‥じょ‥‥ぶ‥‥」

 

立石は、あくまでも自分は大丈夫だから採血する必要はないと言う。

 

「あ、あの‥本当に血を抜かないとダメなの?」

 

西崎は立石がここまで、嫌がっているのだから、採血する必要はないんじゃないかと言うが、

 

「血液を検査しないと分からないことだってあるんです。もし、ウィルスが潜伏していたら、また豹変してしまうかもしれませんし‥‥」

 

ウルスラは、淡々と採血の必要性を言うが、相変わらず立石は怖がるばかり。

このままでは、いつまで経っても採血が出来ないので、西崎と真白は立石の身柄を抑える。

そして、注射器を構えたウルスラが近づいてくる‥‥

 

「うぃぃぃぃぃぃぃ~!!」

 

ビクッ!?

 

「な、なに!?」

 

「この声‥‥立石さん?」

 

カレーの皿を取りに来たほまれとあかねは倉庫の外から立石の絶叫を聞いて、思わず体を震わせて驚いた。

恐る恐る倉庫のドアを開けると、

 

「うぃぃぃぃ~‥‥」

 

涙目で少し血が滲んでいる脱脂綿を抑えている立石の姿があった。

 

「い、一体‥‥」

 

「何があったの‥‥?」

 

「ん?ああ、杵崎さん‥‥えっと‥‥」

 

真白が杵崎姉妹に気づき、事情を説明する。

 

「そうなんだ‥‥」

 

「立石さん、踏んだり蹴ったりだね‥‥」

 

倉庫に軟禁され、挙句の果て、採血されてまさに踏んだり蹴ったりな立石をなんか同情する様な目で見る杵崎姉妹だった。

 

立石から採血した血液を持って、医務室に戻るウルスラと真白。

 

「これが、採血した血液です」

 

「どうも‥‥」

 

「なんか、大声がしたけど、何かあったの?」

 

立石の絶叫は医務室まで届いていたみたいだ。

シュテルがウルスラに訊ねると、

 

「彼女が採血を嫌がって‥‥」

 

「あぁ~‥‥なんとなくわかるかも‥‥」

 

明乃は何故、立石が絶叫を上げたのかその理由を理解した。

 

「それで、対策はなんとか出来そうですか?」

 

シュテルは美波に、ウルスラが纏めた資料から、現状なんとか対策かワクチンは生成可能かと訊ねる。

 

「‥‥確証はまだできないが、やるだけやってみよう」

 

「でも、試薬や設備は‥‥?」

 

ヒンデンブルよりも設備も備蓄薬も少なそうな晴風でワクチンを生成することが出来るのだろうか?

そんな疑問をシュテルもウルスラも抱いた。

 

「問題ない、試薬は個人的に持ってきた」

 

美波は晴風に備蓄されていた薬以外にも個人的にいくつかの試薬を持ちこんで、晴風に乗艦していたみたいだ。

自分が個人的に持ってきた試薬とウルスラが纏めた資料から、このネズミに対するワクチンを生成してみると言う。

そして、ワクチンの生成状況に関してはヒンデンブルクと共有することが決まった。

ただ、その前にウルスラが立石から採血してきた血液を調べ、立石の豹変があのネズミの影響なのか調べることにした。

 

晴風の修理・補修に関しては、時間が時間なので、翌朝から始められることになった。

 

翌朝‥‥

 

工作艦明石は晴風に横付けして、同艦の補修・改修作業に移った。

なお、ヒンデンブルクでも、伊201戦で使用した墳進魚雷を補充した。

 

「ヨーロソー、ヨーロソー」

 

明石が晴風を補修・改修している。

 

「明石に長10㎝砲のストックがあったんだって‥‥」

 

晴風の主砲は今回の補修・改修で、12.7㎝砲から長10㎝砲へと切り替わった。

威力は12.7㎝砲よりも劣るが、最大射程・最大射高ともおよそ1.4倍上がった。

主砲を換装したことにより、艦橋上部にあった九四式方位盤照準装置も変えられ、新たに九四式高射装置が取り付けられた。

 

「すごい、前の主砲よりも射程が伸びましたよ」

 

「もう、戦闘にはならないだろうけどな‥‥」

 

換装された長10㎝砲を砲術科のクラスメイトたちと一緒に見て、科が違うのに納沙は何故か興奮気味。

 

「晴風艦長」

 

甲板で作業を見ていた明乃に明石艦長の杉本が声をかける。

 

「ここに長10㎝砲のスペックデータ等が入っている。あとで目を通してくれ」

 

「はい。どうもありがとうございます」

 

「それで、ホントに教官艦が攻撃してきたの?」

 

長10㎝砲のスペックデータが入ったUSBを明乃に渡した後、今回の騒動の発端となった西之島新島沖での猿島攻撃事件について杉本が訊ねてきた。

 

「うん」

 

「我々は演習が終わった後に合流する予定だったから状況がよくわからなかったの」

 

同じ新入生の学生艦でも間宮、明石は元々演習後に補修・補給の実習だった為、西之島新島沖での件については、知らなかった。

 

「じゃあ如何して、私たちに補給を?」

 

「校長先生の指示で‥‥」

 

「お母さ‥校長の?」

 

真白は思わず『お母さん』と言いかけたが、そこは公人なので、『校長』と呼んだ。

 

「さっき連絡があって、猿島の艦長、古庄教官の意識がやっと戻ったみたいだから、これで、何が起こったのか解明できると思うわ」

 

平賀が入院中だった横須賀女子教官の古庄薫の意識が戻ったので、

 

あの時、何故遅刻してきた晴風に対して実弾を用いて砲撃したのか?

 

何故、猿島が沈んだのか?

 

晴風が主張する模擬魚雷で攻撃したのは事実なのか?

 

何故、晴風のせいにしたのか?

 

これらの真相がわかるのも時間の問題であることが伝えられた。

明乃たちにしてもそれらの真相は知りたかった。

何しろ、教官から実弾攻撃され、殺されかけるし、反逆者に仕立て上げられたのだから‥‥

普通なら、裁判沙汰になってもおかしくない案件だ。

 

「それじゃあ、私は立石さんの事情聴取をしてくるわ。後は頼んだわね、二人共」

 

「「はい」」

 

平賀は立石の事情聴取へと向かった。

なお、立石と西崎は倉庫で寝袋にて昨夜は寝た。

 

「ありがとう」

 

明乃は真白に突然礼を言う。

 

「何故、私に?」

 

「だって、シロちゃんのお母さんが私たちを信じてくれたから」

 

「うちの母は、自分の信念を貫く人だから‥‥」

 

「それでこそブルマーだよね!」

 

「ブルマー?」

 

(そういえば昨日、機関科の人も同じようなことを言っていたような‥‥)

 

真白は明乃の言う『ブルマー』と言う言葉を昨日、聞いた記憶があった。

ただ、あの時は、機関科のクラスメイトと炊事委員のクラスメイトらが自分の家の事を話題にしていたので、そこまで深く『ブルマー』の言葉の意味を覚えていなかった。

 

「うん、皆ブルーマーメイドの事、こう呼んでいるよ!!」

 

明乃が『ブルマー』の意味を言うと、

 

「ブルーマーメイドを略すな!!」

 

『ブルマー』が『ブルーマーメイド』の略語であったことを知り、思わず声を荒げる真白。

すると、

 

「ん?」

 

真白は何かに気づいた。

彼女の視線の先には、ポールの上で寝転がる五十六とその下に座るロシアンブルーと三毛猫の姿があった。

 

「うぁ~」

 

明乃はその猫を見て目を輝かせているが、

 

「な、何故猫が増えている!?」

 

真白は自分が知らない間に猫が増えていることに驚いている。

 

「ああ、うちと明石の猫よ」

 

この突然増えたロシアンブルーと三毛猫は明石、間宮で飼育されている猫だった。

 

「そうなんだ」

 

「補給艦はネズミが発生しやすいので飼っているの」

 

杉本が艦内で猫を飼育している訳を話す。

すると、ロシアンブルーと三毛猫は真白をジッと見た後、起き上がると視線をそらさずにジワリ、ジワリと真白に近いてくる。

 

「く、くるな‥‥く、くるなぁ~‥‥!!」

 

じりじりと近づいてくる二匹の猫に対して、真白は、

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁー!!」

 

悲鳴を上げながら逃げていった。

すると、二匹の猫たちはネズミを追いかけるかのように真白を追いかけて行った。

真白自身、猫アレルギーだとか、子年だから、幼少期の頃に猫に噛みつかれた、引っ掛かれたとかで、酷い目にあって猫が苦手‥‥と言うわけではなく、もっと特殊な理由で猫に対して苦手意識を持っていた。

 

「シロちゃんって、猫に好かれて良いなぁ~」

 

猫に追いかけられる真白を見て、明乃は暢気にそんなことを言っていた。

ただ、そういう明乃自身も昔は猫に好かれる体質であった。

小学生の頃、まだ広島の呉にある児童養護施設に居た時、もえかと共に野良猫が多く生息する島にキャンプへ行った時、島に到着した途端、明乃は野良猫まみれになった事があった。

しかし、今の真白と明石、間宮の猫の様子を見る限り、明乃よりも真白の方が猫に好かれる体質みたいだ。

 

 

一方、横須賀女子海洋学校でも時間の経過とともに情報が入り始めてきた。

その中で、演習地点である西之島新島沖からビーコンを切って音信不通になっている学生艦の存在も明らかになった。

そんな中、真霜が真雪に明石、間宮が無事に晴風と接触し、補給をした旨を伝える。

 

「艦長・乗員共おかしな様子はありませんでした」

 

立石の機銃発砲と言うアクシデントがあったが、彼女がすぐに正気に戻ったので、大した問題ではないと判断され、晴風の乗員に異常がないと真雪には報告された。

 

「そう、ありがとう」

 

「海上安全整備局にも報告を上げたけどまだ晴風に危険分子がまだ乗船してるいのではと疑っているわ。学校に戻る前に全員拘束するべきではないかとの意見もあるの、これ以上晴風に何かあると、私だけじゃなくお母さんの立場も危うくなるわ」

 

「私の心配はしなくて良いわ。でも、何か異常事態が発生していることは確かよ。貴女はその解明を急いで」

 

「分かっているわ」

 

今回の件で、なにか陰謀めいたことが裏で蠢いている可能性がある。

ブルーマーメイドの責任者として、片や、大勢の生徒を預かる海洋学校の校長として、今回の問題における真相解明が急務となった。

しかし、まずは晴風の撃沈命令に関しては撤回することが出来、晴風にかけられた叛乱容疑を拭うことが出来たのは大きな一歩であった。

 

 

その頃、四国沖の晴風の方では、ようやく補修・改修が終わった。

 

「晴風艦長」

 

晴風の補修・改修が終わると、明石艦長の杉本が再び明乃の前に来た。

そして、呼び名は名前や名字ではなく、相変わらず、艦名+艦長で呼んでくる。

 

「ここに修理した箇所を記載しておいた」

 

明乃に晴風の修理・補修をした箇所のデータが入ったUSBを手渡す。

 

「ありがとう」

 

「それじゃ我々はこれで、これから駿河の補給に向かう」

 

杉本は明乃に次の目標地が、もえかが艦長を務める戦艦駿河であることを告げる。

 

「えっ?駿河?」

 

杉本の発言にドキッとする明乃。

もしかしたら、杉本は駿河が今、どこに居るのか知っているのかもしれない。

そんな予感が明乃の脳裏を過ぎった。

もし、杉本が駿河の居場所を知っているのであれば、同行しようと思っていた。

しかし、

 

「駿河もビーコン切っていて位置がわからないんで調査を兼ねてなんだけどね」

 

「そ、そう‥‥」

 

杉本も駿河の居場所を知っている訳でもなく、駿河の探査と補給を兼ねていたみたいだ。

明乃としては駿河を捜しに行ける杉本を羨んだ。

しかも今、駿河はビーコンを切っており、行方不明だと言う。

明乃は、駿河からのSOSの事は知っていたが、晴風単艦では、救援には行けないし、真白の反対もあって、駿河の事は、学校に任せる事にしたが、杉本から駿河の状況を聞いて、ますます駿河に居るもえかの事が心配になる。

もえかからのSOS、そしてビーコンを切って、行方不明になっている状況‥‥

あのしっかり者のもえかが、ビーコンを切って行方をくらますなんて、あまりにも彼女らしくない行動だ。

しかもどこかの港に入港した気配もない。

となると、駿河に何かあったのは明白である。

 

(もかちゃん‥‥今、どこに居るの‥‥?)

 

明乃は目の前に広がる青い海を心配そうに見る。

この海原のどこかに、もえかが居ると分かっているのに探せない、居場所が分からない歯がゆさがどうしても悔しかった。

 

「艦長、晴風の修理が終了したみたいです」

 

「そうか‥‥では、横須賀に‥‥」

 

晴風の修理が終わり、あとは横須賀に向かうだけとなったその時、

 

「艦長、横須賀女子から電文です」

 

「ん?」

 

目的地である横須賀女子から電文が入った。

シュテルはそれに目を通すと、そこには、駿河を始めとして、あの時の海洋実習に参加した学生艦がビーコンを切り、行方不明になっており、その中にはテアが艦長を務めるシュペーも含まれていた。

そして、晴風、ヒンデンブルクにもそれら行方不明になった学生艦の捜索依頼が来た。

ブルーマーメイド、ホワイトドルフィンの他にも各海洋学校の教員艦の方も捜索にあたっているのだが、探し手は少しでも多い方が見つかる確率は高い。

晴風にかけられた叛乱容疑の汚名は拭い去られているので、ブルーマーメイド、ホワイトドルフィン、他校の学生艦から攻撃を受ける心配もないし、拿捕されることもない。

シュテル、ミーナ、明乃としても親友が行方不明になっているので、この依頼はまさに天佑でもあった。

幸い、機銃発砲をした立石も平賀の取り調べの後、特に処分されることなく、不問となった。

しかし、艦長と言う立場上、艦長だけの独断で決める訳にはいかず、明乃はクラスメイトを集め、事情を説明し、学校側のこの依頼を受けるか受けないかの審議を問うた。

勿論、シュテルも同じだ。

すると真っ先に賛成したのは西崎と立石そしてミーナであった。

西崎と立石は艦に乗っていればまたドンパチをする機会があると思い賛成し、ミーナはやはり自分の乗艦が心配という理由からだった。

その後も、いろんな科のクラスメイトたちが賛成していくが、その中で、鈴だけは不安そうだった。

捜索に出ると言うことで、ブルーマーメイド、ホワイトドルフィン、他の海洋学校の教員艦、学生艦から攻撃を受ける心配はなくなったが、猿島、伊201、シュペーの事がトラウマになっているのか、戦闘中止になっているにも関わらず、ドンパチに巻き込まれる可能性もあるので、それを不安視していた。

とはいえ、クラスメイトたちの大多数が捜索に賛成しているので、ここで一人反対意見を述べるほど、鈴は強くなく、ただ周りに流されることとなった。

ヒンデンブルクの方は晴風の監督役として、今後も晴風に同行することになった。

 

「艦長。晴風、出航準備が整ったみたいです」

 

「よし、ただちに出航する。出航用意」

 

「出航用意!!」

 

ヒンデンブルク、晴風、共に出航用意が整うと、駿河、シュペーをはじめとする行方不明になった学生艦の捜索の為、四国沖を出航した。

 

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