やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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この作品の世界では、もえかは46㎝砲の戦艦ではなく、40㎝砲の戦艦に乗っているので、原作とやや異なる展開となっており、原作に比べると短い展開となりますが、その分は、千葉の総武高校視点で補っていきたいと思います。


72話

 

 

アスンシオン島沖にて、横須賀女子に所属する駿河が東舞鶴海洋高校の教員艦に発見される。

しかし、駿河は自分たちを保護しようと接近してきた東舞鶴海洋高校の教員艦に対して発砲。

アスンシオン島沖にて、駿河と東舞鶴海洋高校の教員艦との間で盛大なドンパチが行われた。

結果的に学生艦よりも優秀なはずの教員艦は防御力の面と学生が乗る艦に対して過剰な攻撃が出来ないと言うハンデから、東舞鶴海洋高校の教員艦隊は壊滅した。

行方不明になった学生艦の捜索の為、アスンシオン島近海まで進出していたヒンデンブルクと晴風は駿河発見の報告を受け、すぐに現場の海域へと向かう。

そこで、両艦の乗員が見たのは、一方的に教員艦へ攻撃を加えている駿河の姿だった。

その光景はまさに映画のワンシーンにも見えた。

明乃は、自分の親友が艦長を務めている学生艦が、まるで戦争をしているかのように教員艦へ攻撃をしている姿にショックを受けるとともに、ようやく行方不明になっていた友人と再会できるかもしれないと言う思いから、艦長としての責務を放棄して駿河へと向かおうとした。

だが、鈴が自身を奮い立たせ、明乃を説得すると、明乃は自分のやるべきことに気づき、シュテルから頼まれた遭難した東舞鶴海洋高校の教員艦乗員の救助へと向かった。

内火艇とスキッパーを駆使して、晴風の乗員たちは漂流している東舞鶴海洋高校の教員たちを救助していく。

そして、駿河の保護へと向かったヒンデンブルクは、駿河との戦闘に入ろうとしていた。

ヒンデンブルクは駿河の左舷後方から駿河へと迫る。

駿河は後部の第三~第五砲塔をヒンデンブルクへと向けてくる。

 

「おぉーこっち見ているぞ!!」

 

駿河の後部砲塔がヒンデンブルクに照準を合わせ始める。

レヴィが舵を握りながら叫ぶ。

ヒンデンブルクも前部の第一~第二砲塔を駿河へと向ける。

 

「砲撃開始!!ファイエル!!」

 

シュテルは駿河に対して砲撃命令を下す。

 

「ファイエル!!」

 

ヒンデンブルクと駿河が砲撃を開始したのはほぼ同時だった。

 

「敵弾、来ます!!」

 

「衝撃に備え!!」

 

ヒンデンブルクの周辺に轟音と共に六つの水柱が立つ。

 

「くっ‥‥被害は!?」

 

「軽微です!!まだまだやれます!!」

 

「速度を上げろ!!平行戦に持ち込みつつ、攻撃を続行!!その後、駿河の頭を抑える!!」

 

「はい!!機関、全速!!」

 

ヒンデンブルクの最大速力は夏休みに改良を加えたことで、31ノットでるようになった。

一方、駿河は29.75ノット‥‥わずかながらもヒンデンブルクが勝っていた。

ヒンデンブルクと駿河の距離はどんどん縮まって行く。

駿河の艦橋では、もえかたち正常組は、

 

「残弾各砲塔およそ90~100」

 

これまでの航海で駿河が発砲した砲弾の数を数えていた。

艦橋に主計科の小林が居てくれたことで、航海直前に搭載されていた駿河の物資に関して、まとめていてくれたので、それを元に数えていたのだ。

それによると、駿河にはまだまだ砲弾が沢山搭載されていた。

燃料に関しても、航海前、燃料タンクには燃料が満載されており、これまでの航海では、燃料消費が少ない巡航や微速で航行していたので、燃料切れも期待できない。

 

「艦長!!」

 

後方を見張っていた小林がもえかに声をかける。

 

「どうしたの?」

 

「ドイツ艦が接近してきます!!」

 

「ドイツ艦?」

 

もえかが双眼鏡で確認すると、ビスマルクに似た戦艦が駿河に近づいてくる。

勿論、ウィルスに感染しているクラスメイトたちは接近してくるヒンデンブルクを脅威と認定して、東舞鶴海洋高校の教員艦同様、砲撃をしている。

しかし、ヒンデンブルクは駿河からの砲撃を恐れることなく、巧みな操艦で駿河へ接近してくる。

 

「魚雷攻撃始め!!」

 

ヒンデンブルクが駿河の艦尾を捉えると、スクリューを破壊する目的で魚雷を放つ。

しかし、船体に命中するもスクリューには命中せず、駿河の速度は変わらぬまま航行していた。

 

「魚雷、命中するも、スクリューの破壊には至らず‥‥」

 

「くっ‥‥」

 

ここでスクリューを破壊することが出来れば、駿河の速力が落ち、狙いやすくなるのだが、外れてしまった事で駿河の速力を落とすことは出来なかったことにシュテルは思わず顔を歪める。

 

(このままじゃあ、あのドイツ艦も‥‥)

 

もえかは、このままではヒンデンブルクも東舞鶴海洋高校の教員艦同様、壊滅的な被害または撃沈されてしまうかもしれないと判断し、

 

「発光信号用意!!」

 

発光信号機で、駿河の砲弾が未だに豊富であることを伝えようとする。

 

カチ‥カチ‥カチカチ‥‥

 

駿河の艦橋から、もえかが発光信号でヒンデンブルクに信号を送る。

その信号はヒンデンブルクからでも確認できた。

 

「ん?‥駿河より発光信号!!」

 

「っ!?」

 

展望デッキからの見張り員からの報告でシュテルは驚いた。

駿河にはまだウィルス感染していない者がいたようだ。

ウィルスに感染している者は発光信号を送るなどと言う器用な真似は出来ないからだ。

 

「駿河は何と言っている?」

 

シュテルは見張り員に発光信号の内容を訊ねる。

 

「えっと‥‥キ・カ・ン・ハ・ソ・ノ・マ・マ・キョ・リ・ヲ・ア・ケ・タ・シ・セ・ッ・キ・ン・ハ・キ・ケ・ン・シュ・ホ・ウ・ダ・ン・イ・マ・ダ・ホ・ウ・フ・ス・ル・ガ・カ・ン・チョ・ウ・チ・ナ・モ・エ・カ」

 

(もかちゃん!!無事だったんだ‥‥)

 

発光信号はもえか自身が送っていることから、彼女がウィルスに感染していないことを知り、ひとまず安堵するシュテル。

 

「見張り員」

 

「はい」

 

「駿河の知名艦長に返信、『ワ・レ・キ・カ・ン・ノ・キュ・ウ・ジョ・ヲ・ゾ・ッ・コ・ウ・ス・ヒ・ン・デ・ン・ブ・ル・ク・カ・ン・チョ・ウ・シュ・テ・ル・H・ラ・ン・グ・レー・イ・カ・リ』と打って」

 

「了解」

 

展望デッキの見張り員は、発光信号機で、シュテルの言われた通りのメッセージを駿河へと送る。

その信号を読み取った駿河のもえかは、

 

(シューちゃん‥‥)

 

もえかは、接近してくるドイツ艦の艦長がシュテルであったことに驚いた。

 

「ユーリ、駿河の艦橋には、まだウィルスに感染していない乗員が居る。駿河の船体構造物にはなるべくなら、被害を出さないようにしたい。船体に穴をあけ、浸水させて速力を落とす」

 

「了解」

 

船殻の一番外側はバラストタンクとなっているので、船体に穴をあけても乗員が破口から海へ吸い出されたり、浸水して溺死することはないだろう。

ヒンデンブルクは主砲、副砲の仰角を下げて、駿河の船体部分に砲を向ける。

駿河と並ぶと、左舷側の副砲群もヒンデンブルクに向けて砲撃してくる。

被弾してヒンデンブルクの船体が大きく揺れる。

 

「くっ‥‥」

 

「被弾!!」

 

「かまうな!!本艦は絶対に沈まない!!砲撃を続行しつつ駿河を追い越す!!」

 

ヒンデンブルクはその速力と速射性を活かして、駿河を砲撃しつつ、駿河の頭を取ろうとする。

造艦技術において、ドイツはまだ日本ほどの技術大国ではないが、元々陸軍国家であるドイツは大砲に関する技術においては世界トップクラスであった。

かつて、行われたヴィルヘルムスハーフェン校とダートマス校との交流試合において、ビスマルクは開戦早々に被弾した後、プリンス・オブ・ウェールズと一対一のガチバトルをするもプリンス・オブ・ウェールズの艦長であるブリジットを唸らせるほどの奮戦を見せる。

ビスマルクの主砲の速射性は、毎分三射‥一分間に主砲を三発打てる速射性はかなり強力であり、そのビスマルクの改良版であるH級のヒンデンブルクも当然主砲には速射性がある。

それは、副砲も同様のことが言える。

一方、駿河はヒンデンブルクよりも砲塔の数が多いが、ヒンデンブルクほどの速射性はない。

平行戦で、ヒンデンブルクはその速射性を十分に活かし、駿河の船体はヒンデンブルクの砲撃を受け、破口が出来ると、駿河の船体は左舷に傾き始めた。

当然、駿河はバランスを保つため、右舷のバラストタンクに海水が注水され、駿河はバランスを保つが、喫水が深くなったため、駿河の速力が落ち始めた。

 

「駿河、速力が落ち始めました」

 

「よし、このまま駿河を追い抜け!!」

 

右舷側に被弾するも駿河はヒンデンブルクの上部船体構造物を狙っていたので、ヒンデンブルクの船体に破口が開き、浸水することはなく、駿河を追い抜く。

 

「駿河を追い抜きました!!」

 

「面舵一杯!!」

 

ヒンデンブルクは右に大きく旋回し、駿河の頭を取る。

 

「ユーリ、噴進弾発射!!目標、駿河艦橋付近!!」

 

「ちょっ、シュテルン!!艦橋に向けて噴進弾を撃ったりなんかしたら、死傷者が出るんじゃあ‥‥!?」

 

「いいから撃て!!」

 

「は、はい‥‥」

 

ヒンデンブルク船首両舷に装備されている噴進弾の発射口が開き、六発の噴進弾が放たれる。

 

「レヴィ、針路を駿河に向けろ!!このまま駿河の艦首に強襲接舷するぞ!!」

 

駿河の頭を取ったヒンデンブルクはまたもや針路を変更し、駿河の右舷側に旋回する。

その間、発射された噴進弾は駿河へと向かう。

シュテルはタイミングを見て、

 

「ユーリ、噴進弾を全て自爆させろ!!」

 

「了解」

 

シュテルはユーリに噴進弾の自爆を命令すると、ユーリは自爆ボタンを押す。

すると、六発の噴進弾が自爆すると、爆煙が駿河を襲う。

駿河の全面はあっという間に黒煙で見えなくなる。

やがて、黒煙が晴れると、駿河の眼前にはヒンデンブルクの姿があった。

 

「衝突するぞ!!総員、ショックに備え!!」

 

シュテルが注意喚起を促す。

ウィルスに感染しているとはいえ、駿河の乗員も何もしないと言うわけではなく、眼前に迫るヒンデンブルクを見て、操舵室の乗員は慌てて左に舵を切る。

しかし、駿河が完全に回頭するまで時間も距離もなく、

 

ガガガガ‥‥ズドーン‥‥!!

 

駿河の右舷艦首にヒンデンブルクの右舷艦首が衝突する。

両艦にすさまじい衝撃と轟音が轟く。

 

遭難した東舞鶴海洋高校の教員たちを救助中の晴風の方でもヒンデンブルクと駿河のドンパチは嫌でも目に入った。

駿河と教員艦との戦いも凄かったが、横須賀女子が誇る学生艦と日本が誇る大和級に匹敵する大きさのヒンデンブルクの砲撃戦を目の当たりにして、晴風の艦橋に居た者たちは息を呑んでいた。

 

「いいなぁ~私も思いっきりドンパチしたいなぁ~」

 

「うぃ‥‥」

 

砲撃戦をしているヒンデンブルクと駿河の戦いを見て、西崎と立石が羨ましそうに呟く。

トリガーハッピーな西崎と立石からしてみると、思いっきり大口径の大砲を撃てるのが羨ましかったのだろう。

 

「で、でも、やっぱり砲撃しあっている中に行くんでしょう?怖いよぉ~」

 

鈴は先程、自身を奮い立たせ、明乃に間違いを指摘したが、やはり駿河とドンパチする勇気はなく、アレに接近するなんて怖い。

やがて、ヒンデンブルクから噴進弾が発射されると、

 

「な、なんだ!?あれはっ!?」

 

「もしかして噴進魚雷!?」

 

「学生艦なのに!?」

 

通常誘導兵器はブルーマーメイドや教員艦、軍艦などの艦船にしか搭載されていない兵器にも関わらず、学生艦ながら誘導兵器を搭載していたことに驚愕する晴風のクラスメイトたち。

しかもヒンデンブルクが放った誘導兵器は、噴進魚雷ではなく、空中を飛行し、駿河へと向かって行く。

 

「ちょっ、アレまずいんじゃない?」

 

駿河の艦橋めがけて飛んでいく噴進弾を見て、西崎が呟く。

自分たちが知る噴進魚雷とは異なるモノであるが、ヒンデンブルクが放ったアレが、誘導兵器の類のモノであることは自分たちでも分かる。

それが駿河の艦橋めがけて突っ込んでいくのだ。

もし、アレが強力な兵器であのまま駿河の艦橋に直撃すれば、大勢の死傷者を出すのではないだろうか?

 

「もかちゃん!!」

 

明乃は思わず、駿河に居る親友の名を叫ぶ。

すると、駿河の艦橋に向かって飛んでいた噴進弾が突如、自爆して、駿河は黒い煙で覆われる。

やがて、晴風に居ても聞こえるぐらいの轟音がした。

煙が晴れると、駿河の右舷側艦首部にヒンデンブルクが突き刺さるように衝突していた。

 

ウィルスに感染して凶暴化、生存本能が強くなっている駿河のクラスメイトたちであったが、ヒンデンブルクの行動に理解出来ず、パニックとなっていた。

生存本能が活性化している反面、理性が劣っているため、この場合、どう判断して分からないのか衝突したヒンデンブルクに対して砲撃などの攻撃、機関の前進、後進もなく、機関を停止し、艦自体は静寂となった。

 

「よし、成功だ!!」

 

ヒンデンブルクが駿河に強制接舷出来たことにシュテルは思わずガッツポーズをとる。

 

「これより、駿河に白兵戦を挑み、知名艦長らを救出する!!総員、白兵戦用意!!」

 

ヒンデンブルクの乗員は訓練弾を装填した銃器を装備し、顔には念のためにガスマスクを着け、頭にはヘルメットを被り、手袋、ブーツを、そして肘の部分にはプロテクトを装備し、下はスカートではなく、カーゴパンツやジャージ、ツナギなどの服装で、なるべく肌の露出を避けるような服装となる。

 

「これより、駿河に突入する!!クリス率いる第二班は、船尾から突入し、機関室を奪取!!私が率いる第一班は船首から突入し、操舵室、および知名艦長の保護を目的とする!!ハルトマンさん率いる第三班はウィルスに感染した駿河乗員にワクチンの投与作業!!‥‥では、行くぞ!!突撃!!」

 

『おおぉー!!』

 

強襲接舷した箇所から、シュテルたちは駿河へと突撃していく。

 

「うがー!!」

 

「おおっー!!」

 

バン!!バン!!

 

バババババ‥‥!!

 

ダダダダダダ‥‥!!

 

「ぐっ‥‥」

 

「ぐはっ‥‥」

 

「うっ‥‥」

 

駿河の艦内に突入すると、ウィルスに感染し、凶暴化した駿河のクラスメイトたちが襲い掛かってくるが、やはり理性が劣っているため、手には何もなく素手でヒンデンブルクのクラスメイトを迎え撃つが、ヒンデンブルクのクラスメイトたちは、訓練弾が装備された銃器を装備している。

手が届かない距離からの一方的な攻撃で駿河のクラスメイトたちはバタバタと倒れていく。

 

(ガスマスクを着けて、銃器を装備して、素手の相手を撃っていく‥‥救助と言うより、こっちが海賊やテロリスト‥‥言い方を良く言えば、強襲・制圧だな‥‥)

 

もえかが居る駿河の艦橋を目指しながら、ウィルスに感染した乗員を倒しながら、シュテルはこれが、救助とは言い難いモノだと思った。

ヒンデンブルクのクラスメイトたちの襲撃?は晴風の方でも確認でき、

 

「えっ?銃声?」

 

駿河の方から、銃声が聞こえてきた。

 

「ま、まさか、ドイツの先輩方、ウィルスに感染した駿河のクラスメイトたちを銃で射殺しているんじゃあ‥‥」

 

銃声を聞いて、西崎は顔色を青くしながら言う。

 

「‥‥」

 

(もかちゃん‥‥大丈夫かな?)

 

銃声を聞いてもえかの安否を気にする明乃だった。

 

「艦長、こちらは私たちに任せて、艦長たちは乗員の救助を!!」

 

「わかった。ありがとう」

 

シュテルの班は更に二つに分け、操舵室奪還の班ともえかたちを救出する班に分かれた。

その理由が、艦内からでは、もえかたちが初日にラッタルを固め、エレベーターを使用不能にしていたので、シュテルたちは外の階段からもえかたちの下へと向かわなければならなかったからだ。

そして、

 

「もかちゃん!!もかちゃん!!」

 

艦橋外部の扉にたどり着いたシュテルは扉を叩く。

勿論そこも、内部から鍵をかけられ、バリケードが構築されていたので、中からでないと開けられない。

そこで、シュテルは扉を叩き、中に居るもえかに声をかける。

 

「シューちゃん?」

 

もえかはシュテルの声を聞き、バリケードを崩し、鍵を開け、扉を開ける。

 

「シューちゃん?」

 

「コーホー‥‥コーホー‥‥もかちゃん!!」

 

「ひっぃ!!」

 

ガスマスクを着けたシュテルを見て、もえかは思わず悲鳴を上げる。

 

「コーホー‥‥コーホー‥‥大丈夫?もかちゃん‥」

 

「う、うん‥‥?えっと‥‥その声、もしかしてシューちゃん?」

 

「コーホー‥‥えっ?あっ、そうか‥‥」

 

シュテルは顔に装備していたガスマスクを取る。

 

「もかちゃん、迎えに来たよ」

 

「シューちゃん!!」

 

感極まって、もえかはシュテルに抱き着く。

 

「無事でよかった‥‥他のみんなも大丈夫?」

 

シュテルはもえかの他に艦橋に立てこもっていた角田、小林、吉田の三人に声をかける。

 

「は、はい」

 

「なんとか‥‥」

 

「大丈夫です」

 

「それは、よかった‥‥みなさんも知名艦長と一緒に保護します」

 

シュテルと行動を共にしていたヒンデンブルクのクラスメイトたちが角田、小林、吉田の三人を保護する。

 

「よく頑張ったね」

 

「大変だったでしょう」

 

正常組全員が保護され、シュテルは無線機で現状を報告し、別の班の現状を訊ねる。

 

「こちら、第一班、シュテル‥知名艦長ら他三名を無事に保護、他の班は現状を報告せよ」

 

「こちら、第一班別動隊、駿河の操舵室を奪還しました!!」

 

「こちら、第二班、クリス!!駿河の機関室を奪還!!」

 

「こちら、第三班、ハルトマン、現在、収容された駿河乗員へワクチン接種を続行中」

 

他の班もそれぞれ、役割を果たしている。

 

「メイリン」

 

「はい」

 

「晴風と横須賀女子に現状を連絡、それと近くのブルーマーメイドの部隊へ通報」

 

「了解」

 

シュテルはヒンデンブルクに残っていたメイリンに横須賀女子と救助者の収容と駿河の曳航のため、近海のブルーマーメイドを呼んでもらった。

そして、晴風にも現状を伝えた。

 

「ヒンデンブルクから、連絡」

 

ヒンデンブルクからの連絡を八木が晴風の艦橋メンバーに伝える。

 

「駿河の機関室、操舵室の奪還に成功。知名艦長らも無事に保護したようです」

 

「もかちゃん‥‥よかった‥‥」

 

明乃は、もえかの救助の報告を聞いて、胸をホッと撫で下ろす。

晴風の方も遭難していた東舞鶴海洋高校の教員らを救助し終えていた。

 

「すでにヒンデンブルクがブルーマーメイドを呼んでいるみたいです」

 

納沙がすでにブルーマーメイドがこちらに向かっていることを伝える。

 

「それじゃあ、本艦も駿河の横に接舷、救助者を駿河に一時収容して、ブルーマーメイドの到着を待とう」

 

駆逐艦の晴風よりも戦艦である駿河の方が、スペースがある。

多数の遭難者を置くのであれば、晴風よりも駿河の方がいいだろう。

晴風は駿河に横付けする。

ただ、遭難者を駿河に移乗する前にまだウィルスに感染した駿河の乗員が居ないか?

ウィルスの根源であるラットの発見と処分があり、ラットの探査にはヒンデンブルクのカマクラと晴風の五十六があたり、安全が確保できた後、遭難者を駿河へと移乗させた。

そして、あとはブルーマーメイドの到着を待つだけとなり、

 

「シロちゃん‥‥」

 

明乃は真白に恐る恐る声をかける。

 

「はぁ~‥‥わかりました。後はブルーマーメイドの到着を待つだけですから、後の事は私が変わります」

 

真白は呆れつつも、明乃に駿河へと向かうことを許可した。

 

「ありがとう!!シロちゃん!!」

 

明乃は満面の笑みで、駿河へ‥‥もえかの下へと向かった。

 

その駿河の甲板では、ヒンデンブルクのクラスメイトたちが倒した駿河のクラスメイトたちが担架で、ヒンデンブルクのクラスメイトたちの手によって運ばれていた。

甲板に運ばれた駿河のクラスメイトたちはウルスラがワクチンを打っていた。

 

「もかちゃん、どこだろう?」

 

明乃がもえかを捜していると、制服の上から毛布を被り、軽食を摂っていたもえかの姿を見つけた。

 

「もかちゃん!!」

 

「あっ、みけちゃん!!」

 

もえかは明乃の声に気づき、手を振る。

明乃は駆け足で、もえかの下へと向かい、

 

「もかちゃん!!よかった!!無事で!!」

 

と、明乃はもえかに抱き着いた。

それから、明乃はもえかの隣に座り、互いにあの航海中の出来事を話していた。

そんな中、明乃の視線が、甲板で駿河のクラスメイトたちの搬出を手伝っていたシュテルを捉える。

 

「うーん‥‥」

 

「どうしたの?みけちゃん」

 

「あの、ドイツ艦の艦長さん‥‥どこかで、会った気がして‥‥」

 

「もう、みけちゃん。忘れちゃったの?シューちゃんだよ。ほら、私たちが呉の施設に居た頃に会った‥‥」

 

「‥‥ああっー!!」

 

もえかに言われてシュテルが誰だったのかを思い出した明乃だった。

 

 

その頃、ヒンデンブルクから連絡を受けた横須賀女子では、

 

「そう、駿河を無事に保護できたと‥‥」

 

「はい‥‥ただ、東舞鶴海洋高校の教員艦の被害はかなりのモノとなりました」

 

学年主任は東舞鶴海洋高校の教員艦の被害報告が書かれた書類を真雪に手渡す。

 

「‥‥東舞校艦十六隻が航行不能‥‥でも、教員艦は最新鋭だった筈なのにどうして?」

 

「電子機器と誘導弾が全て機能不全を起こした模様です」

 

「乗組員は?」

 

「三重の安全装置は、伊達ではありませんね。死者はゼロ。軽傷者数名です。遭難者は晴風に救助されたようで、現在ブルーマーメイドが駿河曳航のため、向かっております」

 

駿河の乗員を無事に保護できたことに一応は、安堵する真雪であるが、この後の東舞鶴海洋高校との協議では、ややこしいことになるだろうと覚悟する。

そこへ、さらなる凶報が真雪の下に齎された。

 




フォン・リヒトフォーヘン級航空母艦


【挿絵表示】


紺碧の艦隊にて、第二次世界大戦後半、後世ドイツが建造した空母。

漫画版では、かなり独特な外見をしていましたが、アニメ版ではニミッツ級空母の船体を意識した造りとなっていました。

ただし、設定では急ごしらえの建造で、安定性が悪く横揺れするため船酔する者が続出するほどで、漫画版では大地中海艦隊第3機動部隊司令長官、トマス・フォン・ドルーデは船酔いしていました。

また溶接も甘く、継ぎ目から浸水するなどの不備も見つかりました。

しかし、アニメ版ではそう言った模写は無く、ちゃんと運用出来たモノと思われます。

ただし、紺碧艦隊や旭日艦隊と戦いやられ役と言う不運な役回りでした。

はいふりの世界では飛行機は存在せず、空母は飛行船母艦と言う名称で存在しており、飛行船大国であるドイツでもブルーマーメイドもしくは、海軍で建造されているかもしれません。
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