やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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今年最後の投稿になります。

皆さま、よいお年をお迎えください。


今回は八幡が居た世界の後日談が含まれています。

小町ファンの方には不快な内容になっているので、小町が酷い目に遭っているのは許せないと言う方はブラウザバックを‥‥




73話

横須賀女子の新入生たちの初航海にて、行方不明となった駿河はヒンデンブルクの手によって、無事に保護された。

しかし、行方不明になったのは駿河だけではなかった。

 

「校長!?大変です!!」

 

横須賀女子の校長室に教頭が血相を変えて飛び込んできた。

 

「どうしました?教頭先生」

 

「演習に参加していた比叡、鳥海との連絡が途絶しました!!」

 

あの新入生の初航海に参加した比叡と鳥海も駿河同様、行方不明となったと言う報告が横須賀女子海洋学校校長の真雪の下へと齎された。

 

「なっ!?」

 

「何ですって!?」

 

教頭からの報告を聞いて、真雪と秘書は驚愕する。

特に戦艦である比叡が行方不明の現状では、いつまた今回の駿河のような事態になるか分からない。

今回の被害は、武装している教員艦であったが、今後は非武装の民間船舶が被害に遭うかもしれない。

もし、比叡が民間船舶への攻撃を続けるような事態となれば、それこそ、海上安全整備局から比叡に対して撃沈命令が下り、学校側としても保護者や被害にあった船舶会社への賠償等で最悪の場合、廃校処分もありえる。

いや、非武装の民間船舶相手ならば、重巡洋艦でも十分驚異となる。

そういう意味では、鳥海の行方不明も十分に脅威だ。

 

「‥‥比叡、鳥海以外に所在不明の艦艇は?」

 

真雪は、急ぎ行方不明となった学生艦を確認する。

 

「比叡、鳥海を始めとして、摩耶、五十鈴、名取、天津風、磯風、時津風ならびにドイツより演習参加予定だったアドミラル・グラーフ・シュペー‥‥以上の学生艦が行方不明となっております」

 

あの新入生の初航海に参加した艦艇のうち、ヒンデンブルク、晴風、そして先ほど、保護された駿河を除く全ての参加艦艇が行方不明となっていた。

 

「そんなに!?‥‥今、動かせる艦は?」

 

真雪は行方不明になっている学生艦の数に驚愕しつつ、現在稼働可能な艦艇の数を教頭に訊ねる。

 

「補給活動中の間宮、明石、護衛の秋風、浜風、舞風、偵察に出ている長良、晴風、浦風、萩風、谷風、そしてドイツのヒンデンブルクのみです」

 

教頭は現在、行動可能な横須賀女子所属の艦艇の艦名を真雪に報告する。

 

「山城、加賀、赤城、伊吹、生駒はドックに入っていて、どんなに急いでも半年近くは動けません。航洋艦は、多少前倒しは可能ですがそれでもせいぜい三ヶ月はかかるかと‥‥」

 

秘書が横須賀女子に所属する戦艦、重巡洋艦は現在ドック入りの状態で使用不可能な状態であり、同じくドック入り中の駆逐艦は作業を急がせてもあと三ヶ月はかかる事を報告する。

晴風とヒンデンブルクにはこのまま学生艦の捜索を頼むしかないと思う真雪だった。

そして、

 

(周辺の海洋高校にも援助を求めなければならなくなりそうだけど、果たして協力してくれるかしら?)

 

真雪は横須賀女子以外にも周辺の海洋高校に援助を求めるつもりであるが、やはり学生の安全面から他の高校が協力してくれるかと不安もあった。

 

その頃、アスンシオン島沖で保護された駿河の甲板では、ウィルスに感染したクラスメイトたちへのワクチン投与、感染源であるラットの駆除の作業は粗方終わり、後はブルーマーメイドの到着を待ち、駿河と救助した東舞鶴海洋高校の教員らを預けるだけとなっていた。

 

「えっと‥‥あの‥‥い、碇艦長」

 

「ん?」

 

明乃は恐る恐るシュテルに声をかける。

 

「その‥‥シューちゃん?」

 

「あっ、どうやら思い出したみたいだね」

 

「う、うん‥‥その‥‥ごめんね。今まで忘れていて‥‥」

 

「いや、私の方も、ミケちゃんに声をかけていなかったのもあるし、お互い様だよ。でも、こうして思い出してくれたのだから、全然気にしていないよ」

 

「あ、ありがとう。それと、もかちゃんを助け出してくれて、本当にありがとう!!」

 

「もかちゃんも大事な友達だからね。当然だよ。でも‥‥」

 

「でも?」

 

「‥‥私にはもう一人、助けださないといけない人がいる」

 

「えっ?」

 

「それって、もしかして、ミーちゃんの‥‥?」

 

「うん‥‥シュペー艦長のテアも私にとっては大事な友達なんだ‥‥」

 

「「‥‥」」

 

「学校からの方針はまだ分からないけど、もし、可能ならば、晴風はこのままブルーマーメイド、駿河と一緒に横須賀に戻って‥‥ミーナさんも晴風からヒンデンブルクに移譲させて、後は私たちがシュペーを捜す」

 

学校側から新たな指令が出ていない以上、晴風には先に横須賀に戻ってもらい、シュペーに関しては、シュテルたちヒンデンブルクが捜索にあたるつもりでいた。

戦艦であるヒンデンブルクならば、継続して行方不明になった学生艦の捜索依頼は来そうだし、シュテルからも横須賀女子に打電するつもりだった。

 

「そんなっ!?」

 

「私たちなら、大丈夫だよ!!だから、私たちも‥‥晴風も一緒に行くよ!!」

 

「ミケちゃん!?」

 

「もかちゃん、先に横須賀で待っていて、他の学生艦のみんなを助けたらすぐに戻るから」

 

「ミケちゃん‥‥」

 

「シューちゃん、お願い!!私も一緒に連れて行って!!」

 

「ミケちゃん‥‥でも、それは艦長一人で決められる事じゃないだろうし、今回みたいに危険な場面に遭遇するかもしれないから‥‥」

 

まだ海に出たばかりの新入生たちにこれ以上の過酷な航海はさせたくないと思うシュテル。

そんな中、横須賀女子から連絡があり、晴風とヒンデンブルクには引き続き、行方不明となった学生艦の捜索が依頼された。

シュテル本人としては、晴風はこのまま横須賀に戻してやりたかったが、横須賀女子の方も稼動可能な艦船が限られており、一度晴風を横須賀に戻して、乗員を一年生から二年、三年の先輩たちに入れ替えると時間がかかるとの判断で、学校側もやむを得ず、明乃たち一年生が乗艦したままの状態で捜索活動の続行となった。

シュテルはこの学校側の依頼に対して、条件を加え、一年生が乗る晴風と行動を共にする事を条件とした。

真雪も二隻一緒に行動するよりも一隻でも多くの捜索にあたる艦艇を増やしたかったが、シュテルの言う事も、もっともだと言って晴風とヒンデンブルクの二隻での行動を許可した。

しばらくして、ブルーマーメイドの艦艇が現場に到着した。

 

「ブルーマーメイド、安全監督室情報調査隊所属、福内典子です」

 

福内と名乗るブルーマーメイド隊員はシュテルたちの前で自己紹介をする。

明乃ともえかは、ブルーマーメイド隊員とこうして接することが出来、なんだか緊張している様子だったが、シュテルは福内が頭に着けていた狸耳のカチューシャに目が釘付けだった。

 

(なんで、あんなカチューシャを‥‥?何かの罰ゲームか?)

 

福内が身につけている狸耳のカチューシャは何かの罰ゲームでつけているのかと思った。

 

「横須賀女子海洋学校所属、晴風艦長の岬明乃です」

 

「同じく、駿河艦長の知名もえかです」

 

「‥‥」

 

明乃ともえかが福内に自己紹介をするが、シュテルは未だに福内の狸耳のカチューシャが気になるようで、彼女の頭部をジッと見ていた。

 

「シューちゃん」

 

「ん?」

 

「自己紹介」

 

「あっ、失礼しました。ドイツ、キール校所属、ヒンデンブルク艦長のシュテル・H(八幡)・ラングレー・碇です」

 

明乃に促されて、シュテルは福内に自己紹介をした。

 

「今回は大変な航海だったわね。でも、無事でよかったわ。駿河の乗員は、こちらの医務室に収容し、様子を見て、横須賀に着いたら精密検査をしてもらうわね」

 

「はい」

 

「船体の方も、こちらで曳航するから」

 

「はい。お願いします」

 

「それとこれを、横須賀女子の宗谷真雪校長に渡してください」

 

美波とウルスラが纏めたラットに関する情報資料とワクチンの精製方法を記したファイルを福内に手渡すシュテル。

ワクチンを投与したとは言え、まだ眠っている駿河のクラスメイトたちはブルーマーメイドの艦艇に収容され、東舞鶴海洋高校の教員とブルーマーメイドの隊員が駿河に乗艦し、横須賀まで駿河を曳航することになった。

 

「それじゃあ、もかちゃん‥‥」

 

「行ってくるね」

 

「うん‥‥横須賀で待っているから」

 

シュテルと明乃はもえかと握手、そしてハグをして、再びしばしの別れとなった。

 

「通達する。艦長の碇だ。みんなのおかげで無事に駿河を救助することが出来た。しかし、未だに行方不明となったままの学生艦があるのもまた事実だ。先程、横須賀女子より、連絡があり、本艦は引き続き、行方不明となっている学生艦の捜索にあたる。そして、晴風も引き続き、本艦と同行し、学生艦捜索にあたる。以上」

 

シュテルはヒンデンブルクの今後の方針をクラスメイトたちに伝えると、晴風とヒンデンブルクは駿河、ブルーマーメイドの艦艇とは別々の方向に出航し、行方不明となった学生艦を捜しに向かった。

 

 

 

 

 

 

ここで視点は、かつて比企谷八幡が存在していた世界へと移る。

 

 

比企谷家は教育委員会、総武高校の調査にて、八幡の失踪が判明すると、世間体を気にして警察に八幡の失踪届けを出した。

しかし、警察は家出かもしれない一人の高校生の行方不明案件で事件性がないと言うことで、積極的に八幡の捜索をするわけでもなく、失踪届けを出してから七年の歳月が経ち、正式に失踪宣告が成立し、比企谷八幡はその姿も遺体も見つからないまま、死亡したと言うことになった。

その他に、総武高校の調査にて、八幡の虐めと海浜総合とのクリスマスイベントの失敗から雪ノ下へとの嫌がらせの他に、一年生の一色いろはと言う女生徒の虐めも明らかになった。

八幡が自らの命を断ってからすぐ後、奉仕部に当時の生徒会長だった城廻めぐりが一色を連れてある依頼をしてきた。

その依頼が、自分の後任を決める生徒会選挙にて、一年生だった一色いろはと言う女生徒が、生徒会長に無理矢理推薦されて困っているというモノだった。

当然一色は最初に自らの担任教師に相談するも、担任教師は彼女の相談に乗るどころか、反対にノリノリの状態で一色を応援する状況下となり、推薦を取り消すことが出来ず、そこで、めぐりと一色の二人は生徒指導の平塚先生に相談した結果、彼女たちは奉仕部を紹介された。

依頼内容を聞いて、雪ノ下は自らが生徒会長に立候補することでこの依頼の解決にあたった。

そして、行われた生徒会選挙で雪ノ下は生徒会長となり、依頼は解決されたと思われた。

しかし、雪ノ下は一色がおかれていた状況の本質を知らず、またアフターケアも一切行わなかった。

一色が無理矢理‥‥本人が知らぬ間に生徒会選挙に立候補されていたのは、元々の原因は、一色の性格が災いしたのだが、推薦した一色のクラスメイトの女生徒たちは、一色に生徒会選挙で大恥をかかせるために彼女を推薦したのだ。

そして、女生徒たちの思惑通り、一色は生徒会選挙で雪ノ下に敗北した。

その結果、一色のクラスでは、「一色さん、生徒会選挙で雪ノ下先輩に惨敗してやんの」 「だっさい」などと、一色に対する悪意がある言葉が充満した。

この件についても一色は担任教師に相談するが、虐め問題などと言う面倒な事には関与したくはないのか、担任教師は見て見ぬふりをした結果、一色はクラスメイトたちからの陰湿な虐めに耐えられなくなり、不登校になった。

当然、アフターケアをしていない雪ノ下と由比ヶ浜は一色が生徒会選挙後、どうなったのかなんて、知る由もないし、知りもしなかった。

と言うよりも、既にこの時には二人の記憶の中から一色の存在自体も忘れ去られていた。

その後の学校側の調査の結果、一色の担任教師は、担任教師不適格者としてクラスの担任から外され、一色の虐めに関与した生徒たちも当然処分を受けた。

事が大事になると、関与した生徒たちは責任から逃れようと「アイツが悪い」 「アイツの指示でやった」などと、簡単に犯人の名前を次々と上げ、調査はある意味でスムーズに行われた。

 

その年から数年の間は受験サイトや塾の口コミで総武高校は進学校とは呼べないほど、最低ランクとなるが、教育熱心な教師を多数採用することで、なんとか首の皮一枚で廃校は免れた。

ただし、八幡との同期の学年の生徒たちの内申点は低く、進学、就職率は総武高校開校以来の歴史の中で最低を記録した。

 

 

八幡の失踪宣告がなされ、彼の死亡が公式のものとなってから、とある霊園にある比企谷家の墓地には時折、花束やお線香が供えられることがあった。

その墓地には当然、彼の遺骨は眠っていないが、それでも来れずにはいられないと言う彼に少なからず一定の好印象を持っていた雪ノ下陽乃、戸塚、川崎姉弟、材木座、そして、八幡にとっては最後の夏休み‥無理矢理連れていかれた群馬県、千葉村で知り合った鶴見留美‥‥そして、彼に対して未だに罪悪感を覚えている海老名、修学旅行での真実を知った戸部らが来た証拠であった。

 

そして、彼の自殺の根源とも言える葉山の実家では、一人息子の事故死の悲しみが明けぬ内に、その息子の学校での不祥事が露わとなり、彼が好意を持つ雪ノ下雪乃を我が物にするためにクラスメイトの男子生徒を利用し、更に陰で彼の虐めを助長させていたことが学校、そして近所にも知れ渡った。

弁護士と言う信頼第一の職業にも関わらず、息子は自らのモットーであった「みんな仲良く」とは反対の行為を行っていたことが噂され、顧問を務めていた雪ノ下建設も自らに飛び火する前に消火として葉山弁護士との契約を打ち切った。

しかし、親会社である雪ノ下建設も不出来な次女がしでかしたことへの対処に追われ、県議会議員であった雪ノ下の父親は次期選挙にて落選し、雪ノ下建設の株価も落ちた。

長女の陽乃は、妹が昔から自分に対して対抗意識を持っていた事、そしていずれは自分に変わって雪ノ下家の当主の座を狙っていたことも知っていた。

陽乃としては、何の自由もない雪ノ下家の当主と言う鳥籠の中の鳥を目指しているなんて、信じられなく、妹が雪ノ下家の当主になると言うのであれば、家督権を譲るつもりだった。

だが、長女から見た妹はあまりにも非力で不出来だった。

両親と共に政財界の会合で集まった実業家、官僚、政治家相手に妹ではとても太刀打ちなど出来ない。

その為、自分は妹の成長を促すためにこれまで様々な方法で妹に発破をかけてきた。

妹が高校二年生の時の文化祭も妹の成長の為にと母校へと赴き、発破をかけた。自分が望む結果とは異なる結果となったが、自分が興味を抱いた八幡の行動は益々興味を抱く結果となった。

だが、自分が修学旅行の真実を知るよりも前に興味対象だった八幡は失踪し、残された妹や幼馴染、かつての恩師の対応に自分は失望した。

それから間もなく、妹は事故死した。

雪ノ下家の予備とは言え、後継者が一人死んでしまった事で、なし崩し的に自分が雪ノ下家を継がなければならなくなったことに彼女は、

 

(隼人もそうだけど、雪乃ちゃんったら、最後の最後まで使えない無能者だったなぁ~‥‥)

 

これまで妹の成長としてやってきた労力と時間、そして、面倒な雪ノ下家の全てを妹に押し付ける計画がこれでパァーとなった事、

 

(はぁ~‥‥私がもっと、彼の状況を知っていれば、違った未来もあったんだろうなぁ~‥‥)

 

自分が唯一興味を抱いた異性、八幡をぞんざいに扱った事で、既に彼女の仲から妹は大切な家族と言う枠組みから外れており、事故死した妹に対して悲しみと言う感情はなく、使えない駒が消えた程度の感覚しかなかった。

だが、その駒が消えたことで雪ノ下家を嫌々で継いだ彼女は雪ノ下家の為にしたくもない相手との結婚をする羽目になったが、彼女としては、これも八幡を救うことが出来なかった自分の罪だと割り切った。

結婚後、雪ノ下夫妻の仲は最初から冷え切った仮面夫婦のままだった。

その為、雪ノ下家に迎えられた旦那は外に女を作るようになり、陽乃は自分に子供が出来ると、旦那をあっさりと捨てた。

この頃には、雪ノ下建設も以前の様に景気回復を果たし、陽乃自身、八幡の様な子を出さないためにも政治家を志していたので、スキャンダルのネタになりそうな旦那は正直邪魔だったので、何の未練もなく、あっさりと離婚した。

その後、陽乃はシングルマザー議員として、教育改革の先鋒として政治世界に降り立った。

 

 

由比ヶ浜家は、一人娘を失った悲しみに追い打ちをかけるように、入学式の日、愛犬のサブレを雪ノ下家の車から身を挺して守ったにも関わらず、由比ヶ浜は救急車を呼ぶことも、救命処置をすることもなく、愛犬を抱いてその場から逃げた事、

その愛犬を助けた同級生に対して礼を言うどころか、常日頃から罵声を浴びせていたことがバレて近所中の噂になり、由比ヶ浜夫妻は逃げるように他県へと引っ越して行った。

 

 

学校で起きた不祥事の全てを被せられ、懲戒解雇となった平塚先生は、解雇当初は、理不尽な解雇に対して荒れに荒れて酒浸りとなり、街中で暴れては何度も警察のお世話になるようになった。

その後も、再就職もままならず、更にアルコール依存症となってしまった。

最終的に彼女は地方の田舎に引っ込み生涯、独神‥‥もとい、独身を貫くことになった。

 

 

そして、千葉県千葉市の某所にある住宅街‥‥

 

その住宅街の一角にある一軒家は異様な光景が広がっていた。

庭、玄関先、そしてベランダのバルコニーにはゴミが溢れかえっており、異臭と無数の羽虫が飛び交っていた。

そのゴミ屋敷の表札には、『比企谷』と書かれていた。

 

比企谷家の長女、比企谷小町の高校受験の失敗、そして長男である比企谷八幡の失踪宣告が受理され、彼の死亡が公式なモノとなり、更に幾年の歳月が経った結果が今の比企谷家の状態だった。

そのゴミ屋敷と化した比企谷家の一室では‥‥

 

「死ね‥‥雑魚が‥‥死ね‥‥死ね‥‥死ね‥‥雑魚が‥‥死ね‥‥」

 

小町は機械の様に同じセリフをブツブツ吐いて一心不乱にマウスをカチカチとクリックしていた。

パソコンの画面にはオンラインゲームの画面が繰り広げられており、小町が操作するキャラクターがモンスターを倒していた。

高校受験の失敗から引きこもりになった小町はあれ以来、外に出ることなく、家に引きこもり、パソコンの‥ネットの世界へと現実逃避する結果となった。

当初は、両親も定時制の高校や通信制の高校を勧めるもそれらの両親の行為も全て無駄に終わった。

小町は最終学歴が中卒のまま、既に四十代を迎えていた。

彼女が二十歳を過ぎる頃、両親は既に小町の更生を諦めていた。

妻はそんな小町にも夫にも愛想が尽き、夫に離婚を切り出した。

そこで、問題になったのが、小町の親権問題となった。

最終学歴が中卒で、引き籠りのニートとなり果てた小町は、今後の自分たちの老後生活において邪魔な金食い虫でしかなく、両親は小町を押し付けあうことになった。

 

「元々貴方の方が小町を甘やかしていたし、昔から小町の事を『天使だ』なんて言ってたじゃない!!それなら、貴方が小町を引き取って!!貴方にとって小町は天使なんでしょう!?」

 

「はぁ!?俺は男だぞ!?女同士のお前の方が何かと都合がいいだろう!?お前が小町を引き取れ!!」

 

もし、この光景を八幡が見たら、小町至上主義だった両親からは信じられない姿だっただろう。

最終的に収入が多少上である夫が小町を引き取ることになったが、両親の離婚後も小町は家から出ることもなく、引き籠ったままであった。

しかも、四六時中運動もせず、食っちゃ寝を繰り返していた結果、かつて、両親や八幡から『天使』と言われていた小町の体系は力士みたいにブクブクな体系となり、反対に父親は年老いていき、やせ細っていく。

もはや言葉だけでは小町を説得することは出来ず、引き籠り、現実からネット世界に逃げ込んでからと言うものの、両親が何か口答えするだけで、小町は癇癪を起して、親に対して物を投げたり、暴力を振ってくるようになった。

年老いた父親にデブと化した小町の一撃は強烈であり、父親は何も言うことはなくなった。

これまで比企谷家の家事はこれまで小町や妻が行ってきたのだが、引き籠りになって以降、小町は家事をやらなくなり、父親は家事レベルが壊滅的に出来ず、その結果が、今の比企谷家の状況だった。

生活レベルは底辺でゴミ屋敷となってしまった比企谷家は近所からも苦情が入り、報道番組でも取り上げられた。

こんな劣悪な生活にも関わらず、小町はこの自由気ままな環境下に甘えており、勉強をして何かの資格をとろうとすることもせず、働くこともせず、衣食住は確保出来るものだと確信していた。

親が働いている時は、親の貯蓄と給料‥‥

そして、定年した後は親の退職金と年金‥‥

親の死後は親の遺産‥‥

そして親の遺産を使い果たした後は生活保護を受ければ、それらの金でこの先も自分は不自由なく、自由気ままに生きていけるのだと思っていた。

だが、人生はそう甘くはない。

父親が等々亡くなった後、小町はその父親の遺産を頼りにしていたが、これまでの生活の中で、遺産何てなかった。

そこで、小町は生活保護を頼ろうとした。

小町本人はテレビで生活保護の存在自体は知っていたが、肝心の生活保護の申請方法何て小町は知らず、どうやって生活保護を貰うかなんて知らなかった。

お金がなく、食べ物もなくなり、小町は等々コンビニに押し入った。

コンビニに押し入った理由に関しても食べ物以外にもオンラインゲームの課金にもお金が必要となっていた。

しかし、何十年も外に出ず、ブクブクな体系となった小町が強盗に入っても上手く逃げきることなど出来る筈もなく、あっという間に店員たちに取り押さえられ、警察に捕まった。

初犯と言うことでその時は執行猶予となるが、その後も小町は外に出ることはあっても、その度に万引き、ひったくり、空き巣などの窃盗を繰り返し、等々実刑を受ける羽目になった。

 

 

 

 

「ふぅ~‥‥」

 

そんな八幡が居た世界の未来を選択の間でエリスはまるで映画鑑賞をするかのように見た後、一息ついた。

 

「八幡さんはもう知ることはないだろうし、関係ないけど、ちょっと気になったから見てみたけど、酷いわね‥‥まっ、これも自業自得なんだけどねぇ~‥‥せいぜい塀の中で、社会の常識を勉強してくるといいわ。さて、そろそろ戻らないと当直の時間になるわね」

 

そう言うと、エリスの姿が光輝く。

そして、光が収まった時、そこに居たのはエリスではなく、キール校の士官服を身に纏ったクリスの姿だった。

クリスは指をパチンと鳴らすと選択の間は誰も居なくなり、静寂に包まれた。

 

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