やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~ 作:ステルス兄貴
今年もよろしくお願いします。
駿河を無事に保護した後、駿河はブルーマーメイドと共に横須賀へと戻り、ヒンデンブルクと晴風は行方不明になった学生艦の捜索任務に就いた。
明乃は今後の晴風の方針をクラスメイトたちに伝えると、ミーナからは感謝された。
彼女もシュテル同様、シュペーに残してきたテアの事が心配だったからだ。
駿河と別れて少し経った頃‥‥
「あの、艦長、ちょっと良い?」
通信室勤務の八木が艦橋に上がり、明乃に声をかけてきた。
「ん?どうしたの?」
「さっきから全然通信が入らないんだけど、代わりに艦内から微弱な電波を拾っていて‥‥」
八木が言うには、通信は以前のまま不能の状態で、何か微弱な妨害電波が晴風艦内から発生していると言う。
「微弱な電波?」
「誰かの携帯とかじゃないの?」
「それがちょっと、違うんだよねぇ~」
「通信機が使えないままじゃあ、大変だよね‥‥分かった。原因を調査する必要があるね。八木さん案内して」
「はーい」
「シロちゃん、艦橋、少しお願い」
「だから、副長、もしくは、宗谷さん‥‥って、いないし‥‥」
「あははは‥‥」
真白が呼び方を訂正させる前に明乃は既に八木と共に艦橋から出ており、真白の空しい抗議を見て、鈴は乾いた笑みを浮かべた。
そして、明乃は八木と共に謎の微弱な電波が流れている場所へと向かう。
そして何故か、五十六を抱いた立石もついて行く。
その途中で、万里小路と宇田も合流し、八木がダウジングを使って、謎の妨害電波の発生箇所へと明乃たちを導く。
八木同様、晴風の電探もソナーも使えないとのことだった。
「それでお分かりになりますの?」
万里小路が八木の持っているダウジングの針金を興味深そうに見る。
「無理でしょう。そんなので電波が拾えたら‥‥」
宇田はダウジングに対して否定的な捉え方をする。
しかし、
「あっ!?こっち」
『えっ?』
八木が持っていたダウジングが反応を示した。
ダウジングが反応を示したのは‥‥
「此処?」
「うん」
反応があったのは医務室の中だった。
明乃が恐る恐る医務室の扉を開け、五人は医務室の中を見る。
すると、其処には‥‥
「うふふふ‥‥」
スタンドライトの灯りだけを灯し、怪しい笑みを浮かべ、手にはメスを持ち、例のマウスを解剖しようとしている美波の姿があった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁー!!」
美波のその姿を見た宇田は思わず悲鳴をあげる。
「あら?お化けですわ」
反対に万里小路はお化けと言う割には落ち着いた口調で冷静だった。
「いや、よく見て、アレは美波さんだから」
明乃が、冷静にツッコミを入れる。
「それで、美波さんは何をしているの?」
それから、明乃は見て分かるのだが、美波に一応何をしているのかを訊ねる。
そんな時、開けられた医務室に解剖されそうになっている例のマウスと毛皮の色が異なるが体形が同じマウスが一匹医務室に入ってきた。
仲間の危機を察して来たのだろうか?
「むっ!?」
医務室に入ってきたマウスは、そのまま美波を睨み、美波もマウスを睨みつける。
美波とマウスの睨めっこが繰り広げられる中、立石が抱いていた五十六がマウスの姿を見て、またも本能に目覚め、そのマウスに襲い掛かる。
『うぁぁぁぁぁぁ~!!』
五十六とマウスのドッタン、バッタンな大騒ぎで艦内は、夜にも関わらず、ざわめきあう。
そして、死闘の末、マウスは、五十六に捕獲され、明乃の前に引き出された。
「ちび可愛」
「五十六すごいね!鼠捕まえたんだ!!」
マウスを捕獲した五十六を明乃と立石は褒める。
「あれ?でも、この鼠‥‥」
明乃は五十六が捕まえたマウスに手を伸ばそうとした時、
「触るな」
美波がそれに待ったをかけた。
「ソイツはただの鼠ではない‥‥例のウィルスの原因となっている鼠とみて間違いないだろう」
美波はそのマウスの体形から、今回の騒動の原因となっている例のマウスと同一種であると断言する。
晴風で再びウィルス感染者を出すわけにはいかないので、美波は手袋をつけた手でマウスを拾い上げると、持っていたプラ箱へそのマウスを入れる。
すると、
「通信回復しました!!」
「電探復活、これでなんでも見えます」
「周辺の音がよく聞こえております」
これまで機能不全を起こしていた晴風の電子機器、通信機器の機能が回復した報告が上がってきた。
「えっ?ひょっとして、原因は‥‥?」
「如何やらコイツが原因だった様だな」
マウスを捕まえたと同時に機能回復する電子機器、通信機器‥‥
となると、機能不全の原因はこのマウスとみて間違いなかった。
「で、でも、こんな鼠が‥‥?」
明乃はプラ箱の中に居るこんな小さな動物が駆逐艦とは言え、軍艦一隻の電子機器の機能をマヒさせるなんて信じられなかった。
某ゲームで有名な黄色い電気ネズミとかならば、分からなくもないが、今、自分の目の前に居るネズミは一見どう見てもハムスターにしか見えない。
「これ何なの?」
明乃は美波にこのマウスの正体を訊ねる。
「遺伝子構造が鼠とは、僅かに異なっていて、更に変なウィルスに感染している‥‥そのウィルスは先日採取した砲術長の血液からも検出された‥‥それは駿河の乗員からも同じものが検出された」
「う、ウィルス‥‥」
「うぃ‥‥」
自分がウィルスに感染していたと言う事を聞いた途端、立石は、恐ろしくなったのか思わず明乃にしがみ付く。
「そんな怖い鼠を捕まえるなんて、五十六凄いね!!今日から提督って呼ぼう!!」
「大!!」
「大提督」
五十六は晴風の中で一番の上位階級となった。
「勝手に提督とか付けたら不味くないですか?」
納沙は、勝手に昇進するのに反対するが明乃と立石は、もう五十六を大提督とする事に決めた様だった。
晴風でその様な珍事が起きている頃、晴風の前方を航行していたヒンデンブルクでは‥‥
展望デッキで双眼鏡を覗き、周囲の見張りをしていた乗員が前方に浮かぶ何かを見つけた。
「ん?」
見張り員は一度、双眼鏡から目を離し、もう一度確認するように双眼鏡で見る。
「あ、あれはっ!?」
見張り員は、海上に浮かんでいる物体が何なのか瞬時に判断すると、急いで艦橋に電話を入れる。
艦橋では、クリスとレヴィが当直に当たっていた。
何事もなく、静かで穏やかな航海が続いている中、突如、艦橋の内線電話が鳴り響く。
ジリリリリ‥‥ガチャっ
「艦橋だ。どうした?」
クリスが電話に出ると、
「右舷前方に浮遊機雷です!!」
慌てた口調で見張り員から前方に機雷があると報告が入る。
「わかった。ありがとう。右舷前方に浮遊機雷!!取舵一杯!!」
「取舵一杯!!」
クリスの指示を受け、レヴィが急いで舵を左に切る。
ついで、クリスはテレグラフを操作して、前進から後進へ指示する。
急に前進から後進の指示が来た機関室では、ジークが同じ機関科のクラスメイトたちに夜食であるサワークラフトの煮込みスープを配ろうとしていた。
そんな中、いきなり前進から後進の指示が来た。
「機関長‥‥?」
「全速後進!!」
いきなりの後進指示で、実際に目で見ることは出来なくとも、ヒンデンブルクに何かあったのだと瞬時に判断し、ジークは機関科のクラスメイトに指示を出す。
艦橋では、レヴィが舵を急いで左に回していたが、
「取舵一杯きりました!!」
舵は左一杯に回った。
クリスはウィングに出て機雷がどのくらいヒンデンブルクに近づいているのかを目視で確認する。
「急げ!!」
機関助手が機関科のクラスメイトたちに急ぐように檄を飛ばす。
「蒸気圧を下げろ!!」
機関室では、先程までのゆったりとした夜食タイムとは打って変わって、機関科のクラスメイトたちがバタバタと動き回り、蒸気圧を下げるバルブを回し始める。
「慎重に‥‥」
ジークは蒸気圧のメーターを見ながら、エンジンを逆回転させるタイミングを見計る。
下手なタイミングでエンジンを逆回転させれば、エンジンの故障や破損の原因にもなるからだ。
蒸気圧のメーターは徐々に下がっていく。
そして、
「‥‥今だ!!エンジンを逆回転に!!」
ジークが指示を出すと、機関科のクラスメイトがレバーを下げて、エンジンを逆回転させる。
大きな金属音と共に今まで勢いよく動いていたピストンが止まる。
そして、徐々に今度は逆向きに動き始める。
しかし、動きは鈍い。
「どいて!!」
そこで、ジークは蒸気のメインバルブを操作していたクラスメイトをどかして自らがバルブを思いっきり回す。
すると、ピストンの動きが加速する。
ヒンデンブルクは回避行動を必死にとるが、
「直進している‥‥」
展望デッキに居る見張り員は、ヒンデンブルクが浮遊機雷に突っ込んで行くように見えた。
「舵はもう一杯!?」
「もう、これ以上は回せません!!」
クリスはレヴィにこれいじょう左に舵を回せないか訊ねると、レヴィはこれ以上舵は左には回せないと返答する。
「まがれ‥‥早くまがれ‥‥」
クリスは祈るようにつぶやく。
しかし、機雷との距離はドンドン縮まり、やがて‥‥
ドカーン!!
ヒンデンブルクは機雷を接触した。
「ぶつかった!!」
クリスは急いで防水隔壁の操作レバーを作動させ、念のため防水隔壁を閉めた。
「どうした?何が起きた?」
爆発音と衝撃から艦に何かあったのだと判断したシュテルが艦橋に上がってきた。
そして、当直者であったクリスに何があったのかを訊ねる。
「浮遊機雷です‥‥」
「‥‥」
「左に舵を切って、エンジンを逆回転させましたが、回避することが出来ずに接触してしまいました」
「防水隔壁は?」
「既に閉じてあります」
クリスから報告を受け、シュテルはウィングへと出て船体の状況を確認する。
「エンジン停止、それから後続の晴風にも注意喚起」
「了解、エンジン停止」
シュテルは動いているエンジンを停めて、後続の晴風にも機雷に注意する旨の通信を送った。
「‥‥艦の被害状況を確認」
「了解!!」
クリスは機雷が接触した箇所の被害調査へと向かった。
「航海長、これ以上の夜間航行は危険だ‥‥今日は夜が明けるまで此処で停泊する。機雷と接触した時刻と位置を航海日誌に記録」
「はい」
「CIC」
レヴィに機雷との接触についての記録を残すように指示した後、シュテルはCICに連絡をいれる。
「はい」
「ソナーで、周辺海域の探査を頼む。浮遊機雷だけでなく、海面下には敷設機雷もあるかもしれない」
「了解」
シュテルの指示を受け、聴音手がソナーを使い海面下の調査を行う。
浮遊機雷にかんしても、夜間で海面に浮いていた機雷もレーダーでは探知できなかった。
海図にもこの海域に機雷源があるなんて明記されていなかった。
シュテルとしても機雷接触の件でクリスに罰則をするつもりはなかった。
幸い、そこまで大きな機雷ではなかったので、接触し爆発してもヒンデンブルクに浸水などの被害はなかった。
「あぁ~‥‥せっかくの夜食が‥‥」
機関室では、ジークが夜食の煮込みスープが鍋ごと機関室の床にぶちまけられているのを見て、がっかりしていた。
「まさか、進行方向先に機雷源があるなんて‥‥」
「もし、先頭を航行していたらと思うとゾッとするね‥‥」
ヒンデンブルクからの報告を聞いて、真白はもし、晴風の方が先頭を航行していたら、晴風が機雷源に突っ込んでいたかもしれない事態にゾッとしていた。
それは真白だけでなく、艦橋に居た者たち全員が同じ思いだった。
「日が昇るまで、航海灯の他に探照灯をつけて、浮遊機雷には注意して、次直にも忘れずに報告をいれて」
「はい」
シュテルは夜が明けるまで、周辺には気をつけるように伝える。
やがて長かった夜が明けると、周辺は朝靄に包まれており、海上にいるにも関わらず、まるで雲の上‥雲海にいるみたいな光景だった。
「うわぁ~奇麗!!」
「まるで雲の上見たい~!!」
「凄いね~」
「でも、周りに機雷が有るんだよね~」
晴風の甲板では、朝靄に包まれた幻想的な光景に思わず感嘆の声を漏らす晴風のクラスメイトたち。
しかし、その幻想的な景色とは裏腹に周りには機雷が存在している。
甲板でクラスメイトたちが周りの景色に浮かれている頃、主計科の伊良子、杵崎姉妹は、竹棒で機雷を晴風から遠ざける作業をしていた。
「突っついて、大丈夫なの?」
あかねが竹棒で機雷に突っついて、大丈夫なのか伊良子に訊ねる。
「近くにあるのは、古い触発機雷だから、突起を押さなければ問題ないよ」
伊良子は機雷を突っついても機雷の突起物を押さなければ、爆発しないので、大丈夫だと言って、晴風に近づいてきた機雷を遠ざけた。
「全部爆破すれば良いんじゃない?」
ほまれが一気に全部爆破すれば良いんじゃないかと提案するが、
「霧が晴れないと周辺にどれだけ在るか分からないし、一つ爆発させて、それが連鎖したら怖いから‥‥」
伊良子は、その提案を却下した。
今現在、機雷がどれだけ敷設されているか不明な状態‥‥そんな状態で機雷を全部爆破すれば、更なる被害が出る可能性が大だった。
だからこそ、敢えて、この様な地味な作業をやらなければならない
『大変だね~』
伊良子の言葉に二人は、感心する。
ヒンデンブルクでも、同様の作業を行い、機雷を遠ざけていた。
シュテルがCICの聴音手に頼んでいたソナーによる海底調査の結果が出た。
朝食の席にて、聴音手が探査結果をシュテルに報告する。
「艦長、ソナーでの周辺探索結果が出ました」
「機雷の範囲はどれくらい?」
「おそらく、航路阻止を目的としているので比較的狭い範囲です。敷設された機雷の種類は不明ですが水深を考えると係維機雷・短係止機雷・沈底機雷だと思われます」
「昨夜の浮遊機雷はその鎖が外れて海面を浮いていたのか‥‥」
「おそらくは‥‥」
「この先を進むには掃海する必要があるな‥‥晴風とも協議しよう」
シュテルは朝食が終わったら、晴風と連絡を取り掃海手順の確認を取る必要があると考えた。
その頃、晴風の食堂でも機雷について協議されていた。
周辺海域の機雷について話している時、後ろで朝食を取るミーナは、納豆を箸で突っ突いて、何故か、顔を歪めていた。
ネチョ~‥‥
「う、うぇ~‥‥」
納沙が掃海についての草案を説明している中、納豆と格闘しているミーナは吐き気を催していた。
クラスメイトたちがあらかた食事を終え、伊良子が食器を片付けていると、
「ん!?」
ミーナが納豆を見て、顔を歪めている事に気づく。
「あれ?ミーナさん、納豆口に合わなかった?」
伊良子がミーナに納豆口に合わないのか問う。
「い、いや、そんな事はないじょ‥‥」
((あっ、噛んだ‥‥))
((噛んだね))
((噛んだのです))
ミーナの語尾が変だったことにその場に居た皆はミーナが噛んだのだと判断した。
「もしかして、ミーナさん、日本食が口に合っていないんじゃない?」
伊良子がミーナの食が進んでいないのは、日本食が口にあっていないから食が進まないのではないかと予測し、伊良子はミーナに訊ねる。
「い、いや、そんな事は‥‥」
それに対して、ミーナは、否定するが、
「でも、ここ最近、食事を残していたし‥‥」
「‥‥その‥実は‥‥ミカンの言う通りで、実は日本料理が口に合わなくて‥‥」
ミーナは気まずそうに本音を言う。
以前、ヒンデンブルクから食材を分けてもらったのだが、みんなドイツ本場の食材と言うことで、晴風でもそれは人気だったみたいで、短期間で無くなってしまった。
ミーナに関しては、三食ドイツ産のソーセージでもOKと言うぐらいのソーセージ好きなので、分けてもらったソーセージが短期間で無くなるのも当然だった。
しかし、短期間で消費してしまったので、追加をくれと言えるほど、ミーナは精神が図太くなかった。
だが、日頃の糧として食べなければ生きていけない。
ミーナは慣れない日本食を食べて過ごしていたのだが、限界もあったみたいだ。
「えぇ~!!そうなの!?気がつかなくてゴメンね。じゃあ今日はドイツ料理を作ろうか?」
ミーナの本音を聞いて、伊良子がミーナの為にドイツ料理を作るとミーナに言う。
「えっ!?ああいやいや!」
それに対して、ミーナは、居候の身なのに態々そこまでして貰わなくてもと恐縮してしまう。
「大丈夫だよ!!私、ドイツ料理得意だから!」
伊良子は胸を張ってドイツ料理は得意だからと言う。
「じゃ、じゃあ‥よろしく頼む‥‥」
「じゃあ、今日はドイツ料理祭りに決定!!」
ミーナは結局、伊良子の行為に甘え夕食にドイツ料理を作ってもらうことにしてもらった。
今日の夕食はドイツ料理と言う事で、伊良子と杵崎姉妹の三人は、早速夕食に向けての下拵えを始めた。
ただ、ドイツ料理を作っている中、伊良子はタブレットでドイツ料理を調べながら作っていた。
‥‥確か、ドイツ料理は得意なんじゃなかったっけ?
その後、晴風とヒンデンブルクとの間で掃海手順について確認された後、スキッパーを使用しての掃海作業が行われた。
掃海作業の開始は朝靄が完全に晴れてからの開始となった。
靄が残る状況下での掃海は機雷と接触する危険が高い。
ヒンデンブルク、晴風からはスキッパーが降ろされて、掃海作業をする。
スキッパーの船体の下に備え付けられた器具が海面下の敷設機雷のワイヤーを切り、ワイヤーを切られた機雷が海面に姿を現す。
そこを機銃で撃ち、機雷を撃破する。
立石と西崎は機銃とは言え、堂々と銃をぶっ放せることでテンションが高く、奇声を上げながら機雷を撃っていた。
掃海作業中、ヒンデンブルクのスキッパーに乗っていた生徒は、
「晴風のスキッパー、ちょっとスピード上げ過ぎじゃない?」
晴風のスキッパーのスピードが速すぎると思った。
「そうね‥‥ちょっと危ないかも‥‥」
危機感を覚えたヒンデンブルクの生徒は、
「ちょっと!!晴風のスキッパー!!」
晴風のスキッパーに乗っていた松永と姫路に声をかける。
「ん?なに~?」
「スピード上げ過ぎ!!もう少し、速度を絞って!!」
「えっ?なに?聞こえない!!」
スキッパーのエンジン音と波の音でヒンデンブルクの生徒の声が聞こえないみたいだった。
「だから‥‥!!」
ヒンデンブルクの生徒が思う一度、松永と姫路に注意を促そうとしたら、
ドカーン!!
晴風のスキッパーが引いていた掃海器具が海底の機雷に接触し、爆発。
その衝撃で晴風のスキッパーは転覆、松永と姫路は海上に投げ出された。
幸い、二人は救命器具を着けていたので、海面を漂っていた。
それを晴風の艦橋から見ていた明乃は救助しに現場へ行こうとしたが、近くにはヒンデンブルクのスキッパーが居たので、二人はすぐにヒンデンブルクのスキッパーに救助された。
転覆事故があったが、その後も掃海作業は続けられ、航路上の機雷は掃海された。
残りの機雷については、海図に位置を記録して、横須賀女子海洋学校に報告、その後、学校から残りの機雷については、ブルーマーメイドとホワイトドルフィンが掃海する事になった。
航路上の機雷が除去でき、ヒンデンブルクと晴風は、行方不明になった学生艦の捜索の為、進路を南へと取る。
そして、夕食になり、晴風では伊良子と杵崎姉妹が作ったドイツ料理が振る舞われる。
「えーと‥‥まず、ドイツ料理といえばコレ。アイスバイン!」
伊良子はアイスバインを出すが、
「うーん‥北方の料理でうちの方ではシュバイネハクセ‥‥つまりローストすることが多かったな」
「えっ?」
日本の料理でも同じ代物でも地方によって味付けや作り方が異なるそれと同じで、ドイツ料理でも地方によって、作り方が違う様で、ミーナの故郷とは違う作り方をしてしまい、ミーナからいきなりダメ出しを受ける美伊良子。
「じゃ、じゃあ次は定番!ザワークラウト!」
「チッ、チッ、チッ、サワークラウト。それとこれは酢漬けのキャベツじゃな。ホントは乳酸発酵させるのが本物じゃが‥‥」
二品目サワークラウトもダメ出しを食らう伊良子。
「うっ、つ、次はカツレツ!」
だが、それでも諦めず、今度はカツレツを出す。
「とんかつだね~」
「カツってドイツ料理なの~?」
松永と姫路がカツレツを見て、意外そうに呟いた。
「おお、シュニッツェルじゃな!‥‥ん?我が国では、こんなに厚く切らないぞ」
ミーナは伊良子の作ったカツレツの厚さを見て、ドイツとは、違い、厚く切り過ぎだとダメ出しを食らう。
「うっ、じゃ、じゃあこれぞ真打!ドイツ料理といえばやっぱりハンバーグ!!」
追い詰められた伊良子は、遂に最後の料理であるハンバーグを出す。
「これは?フリカデレか?ドイツではあまり見かけない料理だぞ‥‥」
「ええぇぇぇ―――!!」
ハンバーグは、ドイツ料理だと思っていた伊良子であったが、ミーナのダメ出しで彼女の作った料理はすべて全滅した。
「それよりこのふかしたジャガイモとアイントプフはおいしそうじゃな」
ミーナは、伊良子の作った料理より、隣に置いてある伊良子以外が作ったドイツ料理を気にいる。
「ワシは、他にヴルストがあれば海では文句は言わんぞ!」
「これ誰が作ったの~?」
伊良子は、涙を流しながら誰が作ったのかと問う。
すると、
『わ、私達です‥‥』
何とこの料理を作ったのは、杵﨑姉妹で、二人は気まずそうに手を上げる。
まぁ、厨房には普段から伊良子の他に杵崎姉妹しか居ないので、簡単に分かる。
「ガ、ガーン!!ま、負けた‥‥」
バターン
その事実を知った伊良子は、ショックを受け、その場に倒れた。
ミーナは美味しそうに杵﨑姉妹が作ったジャガイモを使ったドイツ料理を食べ始める。
「あの~ドイツ料理なら、向こうの艦の厨房員の方に聞いた方が良かったんじゃないでしょうか?」
更に追い打ちをかけるように納沙がミーナの好きな料理、本場のドイツ料理を作るのであれば、ヒンデンブルクの厨房員に聞けば早かったのではないかと伊良子に訊ねた。
「‥‥」
納沙のこの一言で伊良子は真っ白になった。
結果的に伊良子が作ったドイツ料理はモドキ料理になってしまったが、味は悪くはなかったので、晴風のクラスメイトたちは夕食に舌鼓を打った。
次回はいよいよ、後世奉仕部が活動を開始します。