やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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読者の皆様のご期待に沿えられているのか不安ですが、お待たせしました。

後世、奉仕部活動を開始です。

ただし、前世での歴史と若干異なる流れの後世の歴史‥‥

その流れの前に翻弄される奉仕部メンバーたちの奮闘ぶりをご覧ください。





75話

ヒンデンブルクと晴風が行方不明になった学生艦を捜索している中、千葉県千葉市にある総武高校では、

 

ボォォォォ~‥‥

 

総武高校にある学生艦停泊場所である港湾地区からは、総武高校がアメリカから購入したコロラド級戦艦三番艦で、総武高校の総旗艦である総武が汽笛を鳴らしながら出航していく。

そして、総武の他にも総武高校に所属するいくつかの学生艦も同じく出航していく。

その様子を雪ノ下は校舎から不機嫌そうな顔で見ていた。

総武に乗艦していたのは、雪ノ下たち、二年生ではなく、航海実習の経験がある三年生だった。

横須賀女子の学生艦行方不明事件の報告を受け、関東周辺の海洋学校に海上安全整備局から、捜索協力が入った。

強制ではないが、総武高校としては、実習単位の事情から、協力せざるを得なかった。

だが、本音を言うと総武高校側としては、他校で起きた事件での尻拭いなんて正直いい迷惑だった。

ただでさえ、その事件の影響で航海日数を切り詰め、二年生の授業にも影響を与えているのだから‥‥

晴風の叛乱疑惑は、既に誤報であると海上安全整備局から総武にも通達されていたが、それでも雪ノ下は、自分が行けば行方不明になった学生艦なんてすぐに見つけられると思い込んでいた。

反対に雪ノ下と同じ総武のクラスメイトたちはこれまでの雪ノ下との付き合いから、彼女と一緒に海上生活なんて、正直自信がなかったので、航海する日が延びることに胸をホッと撫で下ろしていた。

 

総武高校の学生艦が行方不明になった横須賀女子の学生艦を捜索しに出航していったその日の放課後、

 

「さて、そろそろ戸塚君の依頼が来るわね」

 

「そうだねぇ~」

 

奉仕部の部室で、雪ノ下と由比ヶ浜の二人が前世の奉仕部での依頼を振り返る。

奉仕部に持ち込まれた依頼‥‥最初は平塚先生が雪ノ下に八幡の更生を依頼した。

しかし、この世界には比企谷八幡と言う男子高校生は存在していないので、この依頼は持ち込まれていない。

次の依頼、この世界では既に奉仕部の‥前世では後の奉仕部部員である由比ヶ浜の依頼‥‥クッキーを作りたいと言う依頼も八幡がこの世界に存在しない事、そして、入学式の日に由比ヶ浜家の愛犬、サブレが事故に遭っていない事から、この依頼も自然消滅していた。

そして、剣豪将軍こと、材木座義輝からの自身が書いた小説の感想と意見を聞かせてほしいと言う依頼‥‥

これに関しても、二人は材木座と言う男子高校生の存在を忘れ、更に材木座本人も後世では、小説を書いていないのでこの依頼も奉仕部に持ち込まれなかった。

最も、この後世で材木座が仮に前世同様小説を書いていたとしても、奉仕部に持ち込まなかった可能性が高い。

前世では、八幡が居り、体育の時間に八幡が材木座とペアを組むことが縁となって、奉仕部に小説を持ちこんだのだ。

だが、この世界には八幡がおらず、材木座が単独で女子だけの部室にやってきて自身が書いた小説を見せるなどと言う行為は小心者な彼にはかなり困難な行動であろう。

そして、この後世における奉仕部の最初の依頼は戸塚のテニス部を強くしてほしと言う依頼からだと二人はそう思っていた。

 

「戸塚君の依頼は良いのだけれど、また前世みたいに三浦さんが邪魔しにこないかしら?」

 

雪ノ下の懸念としては、前世では、戸塚の依頼でテニスの強化中に三浦が「自分もテニスをさせろ」と乱入してきた。

この少し前に戸塚が転んで怪我をしてしまったので、雪ノ下は保健室に救急箱を取りに行ったので最初の顛末を雪ノ下は知らず、後から説明を受けた。

それによると、三浦の対処にはまず戸塚が彼女に事情を説明するも、三浦の眼光に威圧されて口ごもってしまう。

次に八幡が、自分たち奉仕部は生徒会とテニス部の許可を得て、テニス場を使用していると、説明するが、三浦は聞き入れず、逆にキモイと言ってくる始末だ。

更に葉山までもがそれに便乗するかのように「みんなでテニスをしよう」と言ってきた。

八幡が葉山たちに自分らが葉山たちとテニスをするメリットがないと説明するも三浦は早くテニスをしたいと葉山を急かし、葉山は自分のグループメンバーである三浦の願いを叶えたいと言う思いから、部外者同士でのテニス勝負を提案する。

本来ならば、八幡の言う通り、葉山たちの提案に乗る必要は全くなかったのだが、葉山たちは引こうとはせず、八幡がこの場の責任者である戸塚に決定権を委ね、戸塚は葉山の勝負に乗った。

葉山&三浦ペア、八幡&由比ヶ浜ペアでテニスの試合をすることになったのだが、八幡たちは相手チームの猛攻の前に失点を重ねる。

特に相手は由比ヶ浜一人に集中的にボールを打ち込んできた。

そんな中、救急箱を取りに行った雪ノ下が戻り、由比ヶ浜とチェンジしてプレイに臨む。

雪ノ下が入り序盤は盛り返すが、雪ノ下の体力のなさが仇となり、時間の経過とともに雪ノ下の動きが鈍くなる。

そして、同点となり、最後のポイントとなった時、八幡はお昼ごろにこのテニス場に吹く強風を利用してボールを飛ばす。

それを知らない三浦はコートのギリギリまで下がり、フェンスにぶつかりそうになる。

そこを葉山が助け、テニス勝負では奉仕部が勝ったが、結果的に三浦のテニスをしたいと言う希望とフェンスにぶつかりそうになった三浦を助けたことで葉山の人気を高めただけとなり、試合に勝って勝負に負けた様な結果となった。

 

雪ノ下はこの後世でも三浦が奉仕部の活動中に邪魔して来ないか心配になったのだ。

 

「あっ、それは大丈夫じゃないかな?」

 

しかし由比ヶ浜はこの後世では、三浦は乱入してくる事はないと言う。

 

「どういうことかしら?」

 

「優美子、なんかの部活のマネージャーやっているみたいで、その部活、昼練とかあるみたいだから、きっと来ないよ」

 

葉山が三浦を自分のグループに引き込む際、彼女が拒否した理由が、三浦は何処かの部活のマネージャーをしており、その部活は昼練もある大変な部活みたいだった。

ただ、葉山も由比ヶ浜も三浦が何の部活のマネージャーになっているのか知らなかった。

 

「それならいいけど‥‥」

 

「じゃあ、明日、彩ちゃんには話をつけておくね」

 

「ええ、任せるわ」

 

まず、戸塚との接触は由比ヶ浜に任せてこの日は解散となった。

 

 

翌日の体育の時間‥‥

 

後世でも、総武高校の体育は三クラス合同で行われ、月ごとに種目が変わる。

そして、今月の男子の体育はテニスだった。

 

「うし、じゃあお前ら打ってみろや。二人一組で端と端に散れ!」

 

体育教師の厚木先生がそう言って皆がペアを組みラリーを開始する。

前世では、八幡が居たことでペアを組んでいた材木座であったが、この後世では、その八幡が居ないので、彼は大抵、体育の時間は何かしら理由をつけて見学している。

そして、テニスコートでは、

 

「やっベー!!葉山くん今の球、マジやべーって!!曲がった!?曲がったくね!?今の!?」

「いや打球が偶然スライスしただけだよ」

 

(ふん、後世でも煩い奴だ‥‥)

 

葉山とペアを組んだ戸部がオーバーアクションをとっている。

そんな戸部を見て、葉山は若干の煩わしさを感じていた。

この後世でも葉山の周りには、常に人がいる。

 

「マッジかよ!?スライスとか魔球じゃん!!マジぱないわ!!葉山くん、超ぱないわー!!」

 

「それな」

 

「だな」

 

彼らは騒いでいるが、葉山自身が積極的に声を出している訳ではなく、彼の周り‥‥主に彼の取り巻き‥特に戸部が一番騒いでいる。

それはまるで、グループ内で目立って葉山に取り入りたい魂胆が見え見えであった。

実際に彼は葉山と同じサッカー部に所属しているので、グループ内では放課後、葉山と一番時間を共にしている。

そんな彼に対して、相模は葉山との時間を奪っている奴と認識をされており、グループ内の会話では弄られている場面が目立つ。

だが、クラスでもトップカーストの葉山グループの座に就いていたいのか、相模からの皮肉交じりの暴言にも日々耐え凌いでいる。

 

「スラーイスッ!!」

 

戸部の打った打球は全くスライスすることなく、葉山から大きく外れて戸塚の方へと向かって行く。

 

「っ!?」

 

戸塚は反射的に戸部が打ったボールを打ち返す。

 

「あっ、ごっめーん!!マジ勘弁。えっと‥‥戸塚?」

 

「あっいや、別に‥‥」

 

「それにしても戸塚もスゲーな!!」

 

咄嗟のことながら、戸塚はテニスボールを打ち返してきた。

 

「‥僕、一応、テニス部だから」

 

戸塚はそう答えて、再び前を見て、ペアになった相手の方へ視線を向けた。

 

そして、午前中の授業が終わり、昼休み‥‥前世では八幡のベストプレイスはこの後世では、戸塚と三浦のベスプレイストなっており、この日も戸塚と三浦はこの場で昼食を摂っていた。

昼食後は、テニス場にて昼練だ。

そして、三浦が自販機で飲み物を買いに行っている間、戸塚は三浦を待っていた。

そこへ、

 

「彩ちゃん」

 

由比ヶ浜がやってきて、戸塚に声をかけた。

 

「ん?ああ、確か‥由比ヶ浜さん。どうしたの?」

 

「ねぇ、彩ちゃん。彩ちゃんって、確かテニス部だよね?」

 

「えっ?うん、そうだけど‥‥」

 

「テニス部で何か悩みとかってない?」

 

「えっ?」

 

「例えば、もっと強くなりたいとか?」

 

「ん?」

 

「強くなりたいよね!?」

 

「えっ?あっ、うん‥‥」

 

由比ヶ浜のテンションと話しについていけず、困惑する戸塚。

 

「だったら、私たちにまかせて!!彩ちゃんの悩みを解決してあげるから!!」

 

「えっ?あの‥由比ヶ浜さん‥‥でも‥‥」

 

「大丈夫、大丈夫、私とゆきのんに任せて!!それじゃあ、明日の昼休みから一緒に練習しようね」

 

「えっ?あの、ちょっと‥‥由比ヶ浜さん」

 

由比ヶ浜は戸塚の返事も聞かずにその場を後にした。

 

「あれ?今のって‥‥」

 

そこへ、飲み物を買ってきた三浦が戻ってきた。

 

「今の、ウチらのクラスの由比ヶ浜じゃん‥‥彩加、なんかあったん?」

 

去って行く由比ヶ浜の後ろ姿を見て、彼女が戸塚に何か用があったのかを訊ねる。

 

「あっ、三浦さん‥‥えっと、さっき由比ヶ浜さんが来て、部活の事でなんか言っていたんだよ」

 

「テニス部の事を‥‥?」

 

「うん、なんか、『私とゆきのんに任せて』とか『明日の昼練から一緒に練習しよう』って言っていたけど‥‥」

 

「それって、由比ヶ浜もテニス部のマネージャーにでもなるってことなの?」

 

「先生からはそんな話は聞いていないけど‥‥」

 

テニス部の部長である戸塚に顧問の教師から由比ヶ浜がテニス部のマネージャーになると言う話は聞いていない。

 

「まぁ、今日の放課後にでもわかるんじゃない?」

 

「そうだね」

 

由比ヶ浜がテニス部のマネージャーになるのかと思った戸塚と三浦は、ひとまず、昼食を摂ることにした。

三浦お手製の弁当を食べた後、二人は普段通り昼練をした。

それから放課後になり、部活の時間になったが、テニス部の顧問からはこの時も新しいマネージャーが入るような旨は通達されなかった。

 

「結局、由比ヶ浜がマネージャーになった訳じゃなかったみたいね」

 

「女子テニスに入った訳でもなかったみたい」

 

「じゃあ、なんだったんだろう?」

 

「さあ‥‥でも、明日の昼休みに来るみたいな事を言っていたけど‥‥」

 

「マネージャーでもないのに?」

 

「うん‥‥」

 

マネージャーではなかったので、戸塚が顧問に訊ね、女子テニス部に由比ヶ浜が入った訳でもなかった。

マネージャーでもなく、女子テニス部に入部したわけでもなく、昼休みに言っていたことに益々困惑する戸塚だった。

 

 

戸塚が困惑している中、奉仕部の部室では‥‥

 

「ゆきのん、昼休みに彩ちゃんと会って、テニスの手伝いの事を言っておいたよ」

 

「そう、お疲れ様。由比ヶ浜さん」

 

前世では戸塚を奉仕部の部室に連れてきた時、由比ヶ浜はまだ正式な奉仕部の部員ではなかったが、この後世では、奉仕部設立の時点で彼女は部員となっているので、雪ノ下は戸塚との接触は全て由比ヶ浜に任せていた。

この時点で状況を深く確認しなかった雪ノ下。

それが、間違いの始まりだった‥‥

 

「やあ、なかなか部活から抜けさせて貰もらえなくて、遅れちゃってゴメンね」

 

そこへ、葉山がやって来た。

 

「それで、何か依頼は来たかい?」

 

そして、葉山は奉仕部に何か依頼が来たかを訊ねる。

 

「ほら、前の世界で彩ちゃんの依頼‥テニス部を強くする依頼が来たよ」

 

「あ、ああ‥‥あの依頼か‥‥」

 

戸塚の依頼に関しても葉山には含むところがあった。

 

「で、でも、今回、優美子はどっかの部活に入っているみたいだから、今回は邪魔しに来ないよ」

 

由比ヶ浜が葉山の事を察して、今回は三浦が邪魔しに来ることはないと助け船を出す。

 

「そ、そうだな‥‥それで、彼の依頼はいつからやるんだい?」

 

「早速明日の昼休みからやるつもりだよ」

 

「昼練だったら、僕も参加できるからね。今度は優美子の邪魔なしで、雪ノ下さんたちの力になって見せるよ」

 

今回は、三浦が邪魔をすることはないし、葉山も一応サッカー部と掛け持ちであるが、奉仕部の部員として在籍しているので、最初から手伝う気満々であった。

 

翌日、戸塚と三浦は昼食を食べ終わり、普段通りテニス部の昼練に来ていた。

テニス部の昼練は基本的に放課後の部活動と異なり、自由参加になっている。

しかし、前世と異なり、三浦のおかげでテニス部の部長としてそれなりにリーダーシップを取れている戸塚とオカン気質な三浦のおかげで、自由参加にもかかわらず、一年、二年の部活仲間が集まってくれる。

流石に三年生は受験の関係から、顔を出す日数や時間は短いがそれでも極力顔を出して後輩の指導に当たっている。

そんな中、

 

「やっはろー!!彩ちゃん!!」

 

そこへ、何とも気が抜けそうな声と共に由比ヶ浜、雪ノ下、葉山の三人がテニス場に姿を現した。

 

 

テニス場に来た雪ノ下、由比ヶ浜、葉山の眼前では前世と異なる光景が広がっていた。

前世では、戸塚の依頼‥‥テニス部の強化の依頼で昼練に参加していたのはテニス部部長の戸塚ただ一人だけであった。

しかし、三人の眼前には戸塚以外のテニス部の部員たちがテニス場に居り練習をしている。

そんな中、一際目立っていたのが、

 

「佐藤!!アンタ、まだ一歩目にまた迷いが出ているし!!」

 

「す、すみません!!」

 

「田中!!打撃がまだ甘いし!!」

 

「は、はい!!」

 

後ろ髪をポニーテールにして、ジャージを纏い、一年生の部員相手にラリーをしている三浦の姿だった。

三浦は一年生の部員の短所を述べつつもフォローをしながらラリーをしている。

そして、ラリーが終わった頃、雪ノ下たちは我に返り、雪ノ下は三浦に声をかける。

 

「ちょっと、三浦さん」

 

「あん?って、由比ヶ浜に葉山じゃん‥‥それと‥‥誰?」

 

「なっ!?貴女、私の事を知らないの!?」

 

「全然。第一、クラスが違うじゃん」

 

三浦は同じクラスの由比ヶ浜と葉山は知っていたが、違うクラスの雪ノ下の事は知らなかった様子。

 

「私は、二年生の首席なのよ!!大体、一年前の入学式でも新入生代表で挨拶したじゃないない!!」

 

「あれ?そうだっけ?」

 

「ふん、物覚えが悪い猿ね」

 

「あん?」

 

雪ノ下のこの一言で、不機嫌そうに顔を歪める三浦。

 

「み、三浦さん落ち着いて」

 

「ちっ」

 

そこを戸塚が三浦を宥める。

 

「えっと、それで、何か用かな?」

 

そして、戸塚が雪ノ下たちにテニス場に来た要件を訊ねる。

 

「由比ヶ浜さんが言ったでしょう。テニス部を強化するって‥‥それなのに、何故部外者の筈の三浦さんが此処でテニスをしているのかしら?」

 

雪ノ下は、前世同様、三浦がテニス部に圧力をかけてテニスを勝手にしているものだと決めつけ、三浦を睨みつける。

 

「部外者?何言っているし、あーしはれっきとしたテニス部のマネージャー‥‥関係者で、むしろ、部外者なのはアンタらだし」

 

「貴女がマネージャー?ふん、粗暴な貴女にマネージャーなんて務まるのかしら?」

 

「あーしは一年の時からマネージャーをしているし!!大体、強化するなんて言うけど、アンタらの中にテニス経験者はいるの?それにどんな方法で強化するの?」

 

三浦が雪ノ下に強化方法を聞くと、

 

「そんなの決まっているじゃない。死ぬまで走って死ぬまで素振りよ」

 

雪ノ下はドヤ顔で強化方針を言う。

 

「「‥‥」」

 

それを聞いた戸塚と三浦は( ゚д゚)ポカーンとする。

 

「さあ、さっさと始めるわよ」

 

二人が絶句している間に雪ノ下たちはテニス場に入り、彼女の言う『死ぬまで走って死ぬまで素振り』を部員たちさせようとする。

 

「ちょっ、ちょっと待って!!」

 

「アンタ、バカじゃないの!?」

 

我に返った戸塚と三浦が雪ノ下たちを止める。

 

「あら?バカにバカだなんて言われたくないわね」

 

「ふん、首席とか言っているくせに、テニス経験ゼロ、おまけに知識もゼロ‥‥少なくともテニスに関してはアンタより、戸塚やあーしの方が優秀だし」

 

「言ってくれじゃない、粗暴な猿の分際で」

 

三浦の返しに雪ノ下は顔を引き攣らせながらも、応戦する。

 

「大体、アンタの強化方法‥‥それって、怪我のリスクとか考えたの?」

 

「強くしてほしいって依頼よ。それぐらいしないといけないわよ。やっぱり言葉通じないのかしら?バカなのかしら?ああ、失礼、猿だから、人間の言葉が理解できないのね。でも、残念ね、いくら優秀な私でも猿語はマスターしてないの」

 

「バカなのはアンタの方よ、怪我をしたら強くなれないし、その怪我が原因で一生テニスが出来ない体になるかもしれないリスクだってあるの!!‥‥アンタ、人の事を何だと思っているの?」

 

三浦としては戸塚と共に手塩に掛けて育て、そして今育てている大切な部員たちを雪ノ下の訳の分からない強化方法で潰すなんて冗談ではない。

 

「そもそも手伝うとか言っているけど、彩加、アンタ、コイツらに手伝いを頼んだの?それにテニス場の使用許可も出したの?」

 

「えっ?ううん、昨日、由比ヶ浜さんがなんか一方的に話していたけど、返事をする前に行っちゃったし‥‥それにてっきり、由比ヶ浜さんがテニスのマネージャーになるのかと思っていたから‥‥」

 

「だそうよ、彩加はアンタらに頼んでいないって、分かったら、部活の邪魔だからさっさと消えて」

 

三浦は雪ノ下たちを追い払うように手で煽る。

 

「ぐぬぬぬ‥‥」

 

雪ノ下が悔しそうに顔を歪める。

そこへ、

 

「まぁ、まぁ、二人ともそう、喧嘩腰にならないで」

 

葉山がしゃしゃり出てきた。

戸塚と三浦はこのまま葉山が雪ノ下たちを引き取って、テニス場から出て行ってくれるかと思ったのだが、

 

「ここはみんなでテニスをして遊んだ方が楽しくないかい?」

 

などとほざいてきた。

 

「「‥‥」」

 

葉山の提案にまたもや( ゚д゚)ポカ―ンとする戸塚と三浦。

 

「ね、ねぇ、葉山君‥僕たちは遊びじゃなくて、部活動の一環で練習をしているんだけど‥‥」

 

我に返った戸塚が我慢するかのように顔を引き攣らせて葉山に言う。

彼の言った『遊び』と言う単語が戸塚には許せなかった。

他の部員たちもジッと葉山たちを睨んでいる。

自分たちは強くなるためにこうして昼休みを潰してまで練習をしているのだ。

それを『遊び』だなんて言われるのはあまりにも心外だ。

しかし、肝心の葉山はそんな視線や戸塚の態度にはどこ吹く風な様子。

更に、

 

「あれ?葉山君、テニスするの?」

 

そこへ、混乱に拍車をかけるかのように葉山グループの相模が葉山の姿を見つけて近づいてくる。

 

「や、やあ、相模さん。そうなんだ、みんなで、テニス部の手伝いをしようかと思ってね」

 

「えっ?そうなの!?じゃあ、ウチもやる!!」

 

と、更に部外者の相模までもがやると言い出す。

 

「ちょっ、葉山、何勝手なことを言っているし!!」

 

流石に見かねた三浦が声を荒げる。

 

「で、でも、みんなで楽しめるじゃないか」

 

「そうだよねぇ~、葉山君の言う通りよ。みんなが楽しめればwin-winじゃん」

 

葉山は爽やかな笑顔で言い放ち相模もそれに便乗する。

 

「ねぇ?葉山の言う『みんな』ってなに?子供がワガママ言う時の『みんな』なの?」

 

「ちょっと、三浦さん、葉山君にそんな態度はないんじゃない!?」

 

葉山の事をバカにされたと思い今度は相模が声を荒げる。

 

「はぁ?元々は、アンタらが日本語を理解できていないのが問題じゃん!!部外者なのに、許可も得ず、テニスをさせろって、ふざけてんの!?あーしらは、本気で強くなりたいって子らの為に放課後だけじゃなく、こうして昼休みも練習をしているの!!それに許可のない部外者を勝手に入れたら、怒られるのはこっちなの!!ちょっとは人の迷惑を考えたら!?」

 

「じゃあこうしないか?俺たちと戸塚と優美‥‥」

 

「気安く名前を呼ぶなし!!」

 

「ご、ごめん‥それなら俺たちと戸塚、三浦さんテニスで対決をしたらどうかな?そしたら丸く収まるし、上手い人とプレイした方が部員たちの練習にもなるだろう?」

 

葉山は、自分はテニスが上手いと遠回しで言うが、テニス経験は授業だけの葉山とこれまでずっとテニスを続けてきた戸塚と三浦‥‥どちらが上手いかなんてそんなのは火を見るよりも明らかである。

 

「そうだよ、三浦さん。葉山君の言う通りだよ。あっ、葉山君、ダブルスならウチが葉山君のペアになる!!」

 

(なっ!?何言ってんだこいつは!?僕は雪乃ちゃんとペアになるつもりなのに!!)

 

前世では対戦相手になったが、この後世では、ペアを組めるかもしれないのに相模は一方的に葉山とペアを組んでテニスをしようとする。

葉山の思惑は兎も角、既に彼の主張は完全に支離滅裂で、テニス部はもう昼練どころではない。

 

「なんだ?なんだ?」

 

「葉山たちがテニスするの?」

 

「いや、なんか揉めているみたいだぜ」

 

しかも、騒ぎを聞きつけ、野次馬も集まりだしてきている。

 

(ね、ねぇ、ゆきのん、ちょっとマズくない?)

 

ここにきて由比ヶ浜も空気を読んで自分たちが置かれている状況が不利になっているのではないかと思い始めた。

 

(そ、そうね‥‥これは‥‥)

 

雪ノ下自身もようやくここで自覚し始めた。

今、自分たちがしているのは、前世で三浦がした行為と同じではないだろうか‥‥?

戸塚と三浦が言うには、どうやら由比ヶ浜はテニス場の許可をもらっていない様だし‥‥それ以前に戸塚から正式に依頼を取り付けてもいないみたいだ。

前世では八幡が生徒会とテニス部に赴いて、昼休みのテニス場の使用許可を貰っていた。

だが、この後世では、由比ヶ浜が戸塚とのコンタクトを雪ノ下から頼まれたのだが、由比ヶ浜は前世で八幡が許可申請の為に動いていたことを知らず、許可なんて必要ないと思っていた。

だが、実際に使用許可は必要であり、雪ノ下たちはその許可を得ていない。

それにもかかわらず、葉山は前世同様、許可なしでテニスをしようと言う。

葉山のそんな横暴な態度に戸塚、三浦以外のテニス部員たちも自分たちを白い目で見ている。

しかし、相変わらず葉山はそんな視線を気にしていないし、相模も気づいていない。

今回の依頼‥雪ノ下が全て由比ヶ浜に任せ、確認事項を怠った結果である。

 

戸塚と三浦、葉山と相模の論争が激しくなっていく中、

 

「こら!!そこ!!何を騒いでいる!?」

 

そこへ、昼練の様子を見に来たテニス部の顧問がやってきた。

 

「せ、先生‥こ、これは‥‥その‥‥」

 

教師の登場に狼狽えだす葉山。

生徒間ならば、自分の持つカリスマ性で周りの野次馬を味方につけ、テニスをせざるを得ない状況に持ち込むつもりだったが、教師相手では話が違う。

 

「先生、実は‥‥」

 

「葉山くんたちが‥‥」

 

三浦と戸塚が顧問に事情を話す。

 

「今の話は本当なのか?葉山」

 

「そ、そんな‥二人の言うことは出まかせで、何かの間違いですよ」

 

と、この場を嘘で取り繕い、逃げようとする。

しかし、

 

「嘘じゃありません。これ、後輩たちのフォーム確認の為に撮っていたんですけど‥‥」

 

三年の先輩が後輩らのテニスフォームの確認の為に撮影していたビデオに葉山の証言が嘘である証拠映像が残っていた。

 

「葉山、ちょっと生徒指導室まで来てもらおうか?それにそこのお前たちもだ」

 

「な、なんで私たちまで!?」

 

「そうですよ!!私たちは‥‥」

 

雪ノ下と由比ヶ浜は、自分たちは無関係だと主張する。

しかし、

 

「この映像を見る限りでは、お前たちも葉山同様、テニス部の練習を妨害しているみたいだったが?」

 

映像が証拠として残っている以上、言い逃れはできない。

葉山、雪ノ下、由比ヶ浜、そして相模は生徒指導へと連れていかれた。

今回の被害者は戸塚たちテニス部であることは明白であるが、もう一人、相模もある意味では被害者であり、もう少し来るのが遅ければ‥‥もしくは、この近くを通りかからなければ、今回の件に巻き込まれなかっただろう。

生徒指導室では生徒指導担当の平塚先生が今回の件について穏便に済ませようとした。

その理由は彼女が生徒指導の他に奉仕部の顧問だったからだ。

しかし、教頭、学年主任を交えても許可なく他の部活動の練習を妨害して、全くのお咎めなしとはいかず、特に同じ運動系の部活に所属していた葉山は処罰が重く、サッカー部でのレギュラー枠から外され、一週間の部活への出禁、反省文、部活の出禁中は放課後、校内の清掃活動が命じられた。

雪ノ下たちにも反省文と一週間、放課後に校内の清掃作業の処罰が下った。

こうして奉仕部は、清掃活動で学校の美化に文字通り奉仕することになったのであった。

 

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